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法務省は再犯防止対策を進めています
~今,再犯防止対策が必要な理由について~

政府は,「世界一安全な国,日本」を復活させるには,刑務所や少年院を出た人が犯罪を繰り返さないようにすること,すなわち,再犯の防止が極めて重要であると考えています。そこで,平成24年7月,全閣僚が出席する犯罪対策閣僚会議において,「再犯防止に向けた総合対策」が決定されました。
本欄では,再犯に関する最新の統計を紹介しながら,今なぜ再犯防止対策が必要なのか,再犯防止総合対策はどのような内容なのかについて,説明いたします。


日本における再犯者の実態・動向は?


日本の初・再犯者数と事件数グラフ

このグラフは,我が国における犯罪の実態について表したものです。法務省では,昭和23年から平成18年までの間に刑が確定した人のうち,100万人を無作為に抽出し,これらの対象者の傾向等について調査分析を行いました(詳細な内容は,平成19年版犯罪白書をご覧下さい)。
グラフにあるとおり,抽出した事件について,犯罪者別で見ると,初犯者が71.1%であるのに対して,再犯者は28.9%となっています。
他方,これをそれぞれが起こした事件の数で見ると,初犯者による事件は42.3%であるのに対して,再犯者による事件は57.7%となっています。
つまり,我が国は,約3割の再犯者により,約6割の犯罪が行われている実情にあるのです。
ですから,国民の皆さんが安全に安心して暮らせる社会を取り戻すためには,何よりもまず再犯を防止することが重要というわけです。


刑事施設(刑務所・拘置所等)への再入受刑者は増えているの?


■入所受刑者人員・再入者率の推移■


入所受刑者人員・再入者率の推移のグラフ

注1  矯正統計年報による。

注2 「初入者」は,受刑のため刑事施設に入所するのが初めての者をいい, 「再入者」は,受刑のため刑事施設に入所するのが2度以上の者をいう。

注3 「再入者率」は,入所受刑者人員に占める再入者人員の比率である。

このグラフは平成5年から24年までの,刑事施設への再入者の動向を示したものです。再入者数自体は,18年をピークに,その後減少していますが,入所者全体に占める再入者の割合は,16年から毎年上昇し続けており,24年は58.5%と約6割に至っています。


具体的にどのような課題があるの?


■出所受刑者の出所事由別累積再入率■

出所受刑者の出所事由別累積再入率のグラフ

注1  法務省大臣官房司法法制部の資料による。

注2  前刑出所後の犯罪により再入所した者で,かつ,前刑出所事由が満期釈放又は仮釈放の者を計上している。

注3  「累積再入率」は,平成20年の出所受刑者の人員に占める同年から24年までの各年の年末までに再入所した者の累積人員の比率をいう。

このグラフは刑事施設からの仮釈放・満期釈放別の再犯状況を示したものです。

仮釈放では28.9%の人が5年以内に再入所するのに対し,満期釈放では50.8%の人が5年以内に再入所しています。

仮釈放者に比べ,満期釈放者の5年以内の再入所率が顕著に高く,このことから満期釈放者対策が課題であると言えます。

■適当な帰住先の有無と再犯期間■

適当な帰住先の有無と再犯期間のグラフ

平成24年に刑事施設に再入所した受刑者のうち,前刑出所時に適当な帰住先がなかった人の52.5%は1年未満で再犯に及んでいます。
出所時の適当な帰住先の有無と再犯期間は関連しており,出所時の住居確保が課題であると言えます。


■保護観察終了時の職の有無と再犯率■

保護観察終了時の職の有無と再犯率のグラフ

保護観察終了時に無職であった人の再犯率は29.8%であり,有職であった人の7.5%と比べて約4倍となります。(平成20年から24年までの累計)
社会内における職の有無と再犯率は関連しており,対象者の就労支援が課題であると言えます。


「再犯防止に向けた総合対策」ってどんなもの?


これまでにご紹介した再犯を巡る現状等を踏まえ,「再犯防止に向けた総合対策」は,以下の4つの考え方に基づき策定されています。

 ●再犯の実態を踏まえ,効果的な施策を選択し,集中的に実施する

 ●再犯に至る要因について更なる実態解明を進める

 ●犯罪による被害の回復と犯罪被害者の安全・安心な生活に配慮して進める

 ●国民の理解と協力の下で,中長期的な視点に立った対策を継続的に進める

そして,こうした理念に基づき,以下の4つを重点施策としています。

1 対象者の特性に応じた指導・支援を強化する

  罪種,年齢,性別等,一人ひとりに応じた効果的な指導・支援を強化するとともに,施設内と社会内の働き掛けの有機的な連携に努める。

2 社会における「居場所」と「出番」を作る

  対象者が健全な社会の一員としてその責任を果たすことができるように,適切な生活環境と一定の生活基盤を確保し,社会復帰を促進する。

3 再犯の実態や対策の効果等を調査・分析し,更に効果的な対策を検討・実施する

  実態や対策の効果等を把握した上で,より効果的な施策を選択し,必要な資源を集中させ,総合的かつ一貫した取組の実施に努める。

4 広く国民に理解され,支えられた社会復帰を実現する

  対象者を社会的に孤立させることなく,社会の多様な分野で相互に協力しながら一体的に再犯防止に取り組めるよう,啓発活動や民間の活動の支援を推進する。


【数値目標について】

再犯防止総合対策では,政府の再犯防止施策としては初めて数値目標を設定しました。具体的には,「出所後2年以内に再び刑務所に入所する者等の割合を今後10年間で20%以上減少させる」という目標です。
この割合を具体的な数値で表すと,数値目標の基準値(平成18年から22年に刑事施設・少年院を出た人の2年以内再入率)は,刑事施設を出た人については20%,少年院を出た人については11%であり,これを10年間の取組により,刑事施設は16%以下,少年院は8.8%以下に減少させることとなります。
これを刑事施設を例に人数に換算すると,年間の出所者総数を約30,000人とした場合(平成24年は27,463人),過去の基準値では,2年以内に再び刑事施設に戻る人の数は6,000人となるため,その割合を20%以上減少させるということは,1,200人以上の再犯を防止する計算となります。


皆様へのお願い


刑務所出所者等の再犯防止対策は,平成25年12月に閣議決定された「「世界一安全な日本」創造戦略」において,2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会の開催を視野に,治安に関する7つの重点課題の1つとして取り上げられました。
法務省は,引き続き,関係省庁や民間団体と緊密に連携しながら再犯防止に継続的に取り組んでまいりますので,国民の皆様のご理解とご協力をお願いします。

※なお,「再犯防止に向けた総合対策」の各施策については,次回以降,詳しく説明させていただく予定です。