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ASEAN諸国における社会内処遇の推進

1 アジ研の支援

国連アジア極東犯罪防止研修所(アジ研)では,ASEAN10か国(※1)の社会内処遇(※2)を推進する活動をしており,以下のとおり,これまでに3回のセミナーをタイ法務省保護局及びタイ法務研究所と共催しました(「」内はテーマ,()内は他の共催者)。

  • ① 平成27年2月 タイ・バンコク 「社会内処遇の推進」(JICAタイ事務所)
  • ② 平成27年9月 府中アジ研   「市民・地域の連携」(日本の法務省保護局)
  • ③ 平成28年3月 タイ・バンコク等「薬物事犯者の処遇」

これらのセミナーにはASEAN諸国の社会内処遇を担当する政府機関の幹部職員や国内外の保護司が参加し,各国の社会内処遇や社会内処遇における地域・市民の関与等について協議しました。

※1 10か国とは,ブルネイ,カンボジア,インドネシア,マレーシア,ミャンマー,ラオス,フィリピン,シンガポール,タイ及びベトナムをいいます。

※2 刑務所などの刑事施設や少年院における処遇を「施設内処遇」というのに対し,「社会内処遇」とは,犯罪や非行をした人々を社会において指導・支援することにより,その再犯防止や立ち直りを図るものです。日本では,保護観察と仮釈放が代表的なものとして挙げられます。

2 ASEAN諸国における社会内処遇の現状

ASEAN諸国では,フィリピン,シンガポール,タイのように社会内処遇が制度として定着している国もある一方で,カンボジアやラオスのように,法律に規定はあっても社会内処遇の制度やその運用が十分ではない国もあり,その現状は様々です。また,マレーシアでは平成20年から仮釈放制度が,ブルネイでは平成22年から保護観察制度が開始され,ベトナムにおいても現在条件付釈放の導入が進められているなど,ASEAN諸国における社会内処遇は,まだまだ新しく,発展途上にあります。

3 ASEAN諸国における保護司制度

保護司制度は,フィリピン,シンガポール,タイにおいて導入されているほか,マレーシアやミャンマーでも少年の保護観察の実施に当たり類似の制度があります。各国の保護司やボランティアの役割は,保護観察や仮釈放中の指導・支援,社会奉仕活動の支援,学校などの関係機関との連携,犯罪防止活動,市民の意識向上など,日本と同様,多岐にわたりますが,フィリピンでは修復的司法における加害者・被害者との話合いに参加したり,タイでは治療共同体という保護観察対象者のグループワークに参加して保護観察官を補佐するなど,各国で独自の発展を遂げています。

4 今後

平成28年度から3年間,JICAの支援を得て,タイ法務省保護局とアジ研が中心となってカンボジア,ラオス,ミャンマー及びベトナムの社会内処遇を推進するための研修をタイにおいて行う予定です。アジ研は,今後もこれら4か国を含むASEAN諸国における社会内処遇の発展に寄与したいと考えています。

写真 セミナーにおける全体協議の様子
セミナーにおける全体会議の様子 平成27年2月 タイ・バンコク

平成27年2月 タイ・バンコク

セミナーにおける全体会議の様子 平成27年9月 アジ研

平成27年9月 アジ研

セミナーにおける全体会議の様子 平成28年3月 タイ・バンコク

平成28年3月 タイ・バンコク