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第2節 住居の確保等

第2節 住居の確保等
1 矯正施設在所中の生活環境の調整の充実

(1)帰住先確保に向けた迅速な調整【施策番号24】

 法務省は、更生保護法(平成19年法律第88号)の一部改正により、2016年(平成28年)6月から、保護観察所が行う受刑者等の釈放後の生活環境の調整※14の充実を図っている。具体的には、生活環境の調整に対する地方更生保護委員会の関与を強化し、地方更生保護委員会が、矯正施設収容後の早期の段階から受刑者等に対し帰住先※15等に関する調査を行うなどした上で、保護観察所に対して指導・助言・連絡調整を行い、保護観察所はこれを踏まえて、例えば薬物依存がある受刑者等に対し、薬物依存からの回復支援等を受けることができる民間団体等への帰住を調整するなど、適切な帰住先を迅速に確保するための取組を行っており、2019年(令和元年)は、地方更生保護委員会における受刑者等に対する帰住先等に関する面接調査が3,557件行われた。また、「再犯防止推進計画加速化プラン」(2019年12月23日犯罪対策閣僚会議決定)において、生活環境の調整の充実強化と仮釈放の積極的な運用を図ることを明記し(【第1章第1節】参照)、2020年度(令和2年度)からは、専ら当該調査及び調整を行う地方更生保護委員会の保護観察官を全国の刑事施設11庁に駐在させることとし、その運用の積極化を図っている。

(2)受刑者等の親族等に対する支援【施策番号25】

 法務省は、刑事施設において、受刑者の改善更生と円滑な社会復帰に資するよう、受刑者と親族や雇用主等との外部交通(面会、信書の発受及び電話等による意思連絡)の適切な運用に努めている。

 少年院において、保護者に対し、在院者に対する教育方針や教育内容・方法、社会復帰に向けた支援の実施等への理解と協力を得るため、在院者の処遇に関する情報提供、少年院の職員による面接の実施、少年院で実施する活動への参加の依頼等を行っており、2019年(令和元年)は、延べ898回の保護者会を実施し、延べ3,873人の保護者が参加した。また、保護者の矯正教育※16への理解を促進し、職員と協働して在院者の有する問題及び課題を解決するために努力する意欲を向上させること、在院者との相互理解を深めさせること、在院者を監護する役割についての認識を深めさせることを目的として、保護者参加型プログラムを実施している。2019年は、各種行事への参加や、非行問題に関する親子講座等、延べ290回の保護者参加型プログラムが実施され、延べ2,617人の保護者が参加した。

 保護観察所において、受刑者等の出所後の生活環境の調整の一環として、受刑者等の親族等に対し、受刑者等の改善更生を助けることへの理解や協力を求めるとともに、相談に応じたり、支援機関の情報提供をしたりするなど、必要に応じた支援を実施している。例えば、薬物依存がある受刑者等の家族に対しては、薬物依存についての知識、本人との接し方、他の関係機関や民間団体からの支援にはどのようなものがあるかといった助言等を行うため、引受人・家族会※17を開催している。2019年度は、引受人・家族会を210回実施し、1,914人の引受人や家族が参加した。

  1. ※14 生活環境の調整
    受刑者等の出所後の帰住予定地を管轄する保護観察所の保護観察官や保護司が引受人等と面接するなどして、帰住予定地の状況を調査し、住居、就労先等が改善更生と社会復帰にふさわしい生活環境となるよう調整するもの。調整結果に基づき、仮釈放等審理が行われるほか、受刑者等の仮釈放後の保護観察が行われる。
  2. ※15 帰住先
    帰住先とは、刑事施設、少年院に収容されている者が、出所・出院後、一定期間生活をしていく場所を指す。親族・知人宅のほか、就労先の寮、更生保護施設や自立準備ホーム、グループホーム等の社会福祉施設などがある。
  3. ※16 矯正教育
    少年院が、保護処分又は刑の執行として、在院者の犯罪的傾向を矯正し、並びに在院者に対し、健全な心身を培わせ、社会生活に適応するのに必要な知識及び能力を習得させるために行う体系的かつ組織的な指導。
  4. ※17 引受人・家族会
    保護観察所は、規制薬物等に対する依存がある生活環境調整対象者又は保護観察対象者の引受人や家族が薬物依存に関する正確な知識を持ち、薬物依存当事者に対して適切に対応する方法を身に付けることや、支援機関等の情報を得て家族等自身が必要な支援を受けることができるようになること等を目的として、医療・保健・福祉機関や自助グループ等と連携して薬物依存者の家族等を対象として定期的に引受人・家族会を実施している。