
第1節 学校等と連携した修学支援の実施等
(1)学校における適切な指導等の実施【施策番号58】
ア いじめの防止
文部科学省は、いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)等の趣旨を踏まえ、道徳教育等を通したいじめ防止のための取組を推進している。また、各都道府県教育委員会等の生徒指導担当者向けの行政説明において、必要に応じて心理や福祉等の専門家、教員、警察官経験者等の外部専門家の協力を得ながら、複数の教職員が連携し、組織的に、いじめをやめさせ、その再発を防止する措置をとるよう、周知徹底しているところである。あわせて、2023年(令和5年)2月に文部科学省から発出した「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について(通知)」では、犯罪に相当するいじめ事案については直ちに警察に相談・通報を行い、適切な援助を求めなければならないことや児童生徒への指導支援の充実等、いじめ対応において改めて留意すべき事項についても周知した。加えて、いじめ等の諸課題について、法務の専門家への相談を必要とする機会が増加していることを踏まえ、2020年度(令和2年度)から、都道府県・指定都市教育委員会が弁護士等への法務相談を行う経費が普通交付税措置され、2020年(令和2年)12月には弁護士による対応事例等を盛り込んだ「教育行政に係る法務相談体制構築に向けた手引き」(2022年3月改訂)※1を作成し、公表した。
イ 人権教育
文部科学省は、日本国憲法及び教育基本法(平成18年法律第120号)の精神にのっとり、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成12年法律第147号)及び「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成14年3月15日閣議決定、平成23年4月1日一部変更)に基づき、人権尊重の意識を高める教育を推進している。
ウ 非行の防止
文部科学省は、再非行の防止の観点も含めた学校における非行防止のための取組を推進しており、2022年度(令和4年度)は、全国の生徒指導担当者等が出席する会議において、再犯防止推進計画の趣旨や非行防止に関する具体的な取組について周知した。
また、各学校に対して、警察官等を外部講師として招き、非行事例等について児童生徒に直接語ることにより、犯罪についての正しい理解を図る「非行防止教室」や、中学生・高校生を対象に、犯罪被害者等への配慮や協力への意識のかん養を図る犯罪被害者等による講演会「命の大切さを学ぶ教室」の実施を促した。
さらに、警察庁との共催で、教育委員会、警察、保護観察所等の関係機関が参加する「問題行動に関する連携ブロック協議会」を中部地方と中国・四国地方で実施した。
エ 薬物乱用の防止
文部科学省は、「第五次薬物乱用防止五か年戦略」(【施策番号52】参照)を踏まえ、薬物乱用防止教育の充実に努めている。
学校における薬物乱用防止教育は、小学校の体育科、中学校及び高等学校の保健体育科、特別活動の時間はもとより、道徳、総合的な学習の時間等の学校の教育活動全体を通じて指導が行われるよう周知を図っている。
また、全ての中学校及び高等学校において、年に1回は薬物乱用防止教室を開催するとともに、地域の実情に応じて小学校においても同教室の開催に努めるなど、薬物乱用防止に関する指導の一層の徹底を図るよう都道府県教育委員会等に対して指導している(資4-58-1参照)。
さらに、大学生等を対象とした薬物乱用防止のためのパンフレット※2の作成・周知等を通して、薬物乱用防止に関する啓発の強化を図っている。

オ 中途退学者等への就労支援
文部科学省及び厚生労働省は、高等学校等と地域若者サポートステーション※3(以下「サポステ」という。)との連携強化を図ることで、高等学校における中途退学者(以下「中途退学者」という。)等への切れ目のない支援を実施している。具体的には、全国に177か所設置されているサポステにおいて、中途退学者等の希望に応じて学校や自宅等へ訪問するアウトリーチ型の相談支援を実施している。
(2)地域における非行の未然防止等のための支援【施策番号59】
内閣府※4では、子供・若者育成支援推進大綱(令和3年4月6日子ども・若者育成支援推進本部決定)に基づき、社会生活を円滑に営む上で困難を有するこども・若者への支援を重層的に行うための拠点(子ども・若者支援地域協議会※5)及びこども・若者育成支援に関する地域住民からの相談に応じ、関係機関の紹介その他の必要な情報の提供及び助言を行う拠点(子ども・若者総合相談センター※6)(資4-59-1参照)の地方公共団体における整備を促進するとともに、更なる機能向上等を推進している。2023年(令和5年)1月現在、子ども・若者支援地域協議会が141の地方公共団体に、子ども・若者総合相談センターが116の地方公共団体に、それぞれ設置されている。
また、地域におけるこども・若者支援人材の養成のため、相談業務やアウトリーチ(訪問支援)等に従事する者に対し、知識・技法の向上等に資する研修を実施している。

警察は、少年警察ボランティア(少年補導員※7、少年警察協助員※8及び少年指導委員※9)等と連携して、社会奉仕体験活動等を通じた問題を抱えた少年の居場所づくりのほか、非行の未然防止等を図るための街頭補導活動や学校における非行防止教室を行っている。また、少年や保護者等の悩みや困りごとについて、専門的知識を有する警察職員が面接や電話等で相談に応じ、指導・助言を行っている。
法務省は、地域援助として、少年鑑別所(法務少年支援センター)が地域の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等からの心理相談等を受け付けている。2022年(令和4年)の小学校、中学校、高等学校、教育委員会等を含む教育関係機関からの相談件数は、3,117件(前年:3,019件)であった。支援の内容は、問題行動への対応から発達上の課題を有する児童生徒本人の学校適応に関する相談、進路相談等に至るまで幅広く、知能検査や性格検査、職業適性検査のほか、暴力や性的な問題行動に係るワークブック等を用いた心理的支援等も行っている。特に、2023年(令和5年)2月に文部科学省から発出された「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について(通知)」(【施策番号58ア】参照)を踏まえ、2023年度(令和5年度)から東京及び大阪の少年鑑別所(法務少年支援センター)に、「地域教育支援調整官」として専門職を配置し、いじめ問題への的確な対応に向けた学校との連携強化に努めている。さらに、2019年度(令和元年度)からは、各地の少年鑑別所(法務少年支援センター)を主催者とした「地域援助推進協議会」を開催しており、学校や自治体等の関係機関とのより一層の連携強化を図り、地域における非行の未然防止等を推進している。また、保護司、更生保護女性会※10、BBS会※11がそれぞれの特性を生かして行う犯罪予防活動、「子ども食堂」等の地域社会におけるこども等の居場所づくり、非行をした少年等に対する学習支援等の取組が円滑に行われるよう、必要な支援を行っている。
文部科学省は、保護者や地域住民が学校運営に当事者として参画する「コミュニティ・スクール」と地域と学校が連携・協働し、幅広い地域住民の参画を得て行う「地域学校協働活動」を一体的に推進し(資4-59-2参照)、放課後等における学習支援、体験・交流活動、見守り活動等のこどもたちの学びや成長を支える地方公共団体の取組を支援する事業を実施している。
また、中途退学者等を対象に、高等学校卒業程度の学力を身に付けさせるための学習相談及び学習支援を実施する地方公共団体の取組を支援する事業を実施している(【施策番号65】参照)。
さらに、薬物、飲酒、ギャンブル等に関する依存症が社会的な問題となっていることを踏まえ、将来的な依存症患者数の逓減や青少年の健全育成を図る観点から、依存症予防教育の推進のため、依存症予防教育推進事業を実施している。2022年度(令和4年度)においては、厚生労働省との共催による全国的なシンポジウムを開催するとともに、各地域において社会教育施設等を活用した児童生徒、学生、保護者、地域住民向けの依存症予防に関する啓発を行う「依存症予防教室」等の取組を支援した。

厚生労働省は、ひとり親家庭のこどもを対象として、基本的な生活習慣の習得支援や学習支援を行う地域の居場所づくりの取組を支援しているほか、高等学校卒業程度認定試験合格のための講座の受講費用の一部を支給するなどの支援を実施している。また、生活困窮世帯のこどもに対しては、「子どもの学習・生活支援事業」(資4-59-3参照)により、学習支援、こどもや保護者に対する生活習慣・育成環境の改善に向けた助言等、こどもの将来の自立に向けたきめ細かい支援を行っており、2022年度(令和4年度)は、596(前年度:587)の地方公共団体において同事業を実施した。

(3)警察における非行少年に対する支援【施策番号60】
警察は、非行少年を生まない社会づくり(資4-60-1参照)の一環として、非行少年の立ち直りを支援する活動に取り組んでおり、修学に課題を抱えた少年に対し、少年サポートセンターが主体となって、少年警察ボランティアや、少年と年齢が近く少年の心情や行動を理解しやすい大学生ボランティア、関係機関と連携して修学に向けた支援を行っている。具体的な支援内容については【施策番号78】を参照。

- ※1 「教育行政に係る法務相談体制構築に向けた手引き」URL
https://www.mext.go.jp/content/20220301-mxt_syoto01-000011909_1.pdf - ※2 薬物乱用防止のためのパンフレット
https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1344688.htm - ※3 地域若者サポートステーション
働くことに悩み・課題を抱えている15歳~49歳までの方に対し、キャリアコンサルタント等による専門的な相談支援、個々のニーズに即した職場体験、就職後の定着・ステップアップ相談等による職業的自立に向けた支援を行う就労支援機関のこと。 - ※4 令和5年4月1日からはこども家庭庁に事務が移管されている。
- ※5 子ども・若者支援地域協議会
子ども・若者育成支援推進法(平成21年法律第71号)第19条で、地方公共団体は、関係機関等が行う支援を適切に組み合わせることによりその効果的かつ円滑な実施を図るため、単独で又は共同して、関係機関等により構成される子ども・若者支援地域協議会を置くよう努めるものとされている。 - ※6 子ども・若者総合相談センター
子ども・若者育成支援推進法第13条で、地方公共団体は、子ども・若者育成支援に関する相談に応じ、関係機関の紹介その他の必要な情報の提供・助言を行う拠点(子ども・若者総合相談センター)としての機能を担う体制を、単独で又は共同して確保するよう努めるものとされている。 - ※7 少年補導員
街頭補導活動を始めとする幅広い非行防止活動に従事している。 - ※8 少年警察協助員
非行集団に所属する少年を集団から離脱させ、非行を防止するための指導・相談に従事している。 - ※9 少年指導委員
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)に基づき、都道府県公安委員会から委嘱を受け、少年を有害な風俗環境の影響から守るための少年補導活動や風俗営業者等への助言活動に従事している。 - ※10 更生保護女性会
地域の犯罪予防や青少年の健全育成、犯罪者・非行少年の改善更生に協力する女性のボランティア団体であり、2023年(令和5年)4月現在の会員数は12万7,307人である。 - ※11 BBS会
Big Brothers and Sistersの略称で、非行少年等の自立を支援するとともに、非行防止活動を行う青年ボランティア団体であり、2023年(令和5年)1月現在の会員数は4,404人である。