
第1節 再犯防止に向けた政府の取組
2016年(平成28年)12月に、再犯の防止等の推進に関する法律(平成28年法律第104号。以下「推進法」という。)が成立し、施行されたことを受け、政府は、2017年(平成29年)12月、2018年度(平成30年度)から2022年度(令和4年度)末までの5年間を計画期間とする、第一次の「再犯防止推進計画」(以下「第一次計画」という。)を閣議決定した。
推進法と第一次計画により、刑事司法関係機関を中心として進められてきた再犯防止の取組は、国・地方公共団体・民間協力者等が一体となって取り組むべき施策へと発展した。
政府は、第一次計画等に基づき、例えば、満期釈放者対策の充実強化、地方公共団体との連携強化、民間協力者の活動の促進等、様々な取組を進めてきた。そうした様々な取組の結果、出所等年を含む2年間※1において刑務所等に再入所等する者の割合(以下「2年以内再入率」という。)を2021年(令和3年)までに16%以下にするとの政府目標※2を、2019年(令和元年)出所者で達成するなど(【指標番号3】参照)、再犯防止の取組は着実に成果を積み上げてきた。
しかし、第一次計画による取組によっても、刑法犯による検挙者に占める再犯者の割合は、依然として50%近くで高止まりしていることなどを受け、第一次計画による取組を検証し、今後の課題を整理した。その結果、「個々の支援対象者に十分な動機付けを行い、自ら立ち直ろうとする意識を涵養した上で、それぞれが抱える課題に応じた指導・支援を充実させていく必要があること」、「支援を必要とする者が支援にアクセスできるよう、支援を必要とする者のアクセシビリティ(アクセスの容易性)を高めていく必要があること」、「地方公共団体における再犯の防止等に向けた取組をより一層推進するため、国と地方公共団体がそれぞれ果たすべき役割を明示するとともに、国、地方公共団体、民間協力者等の連携を一層強化していく必要があること」等の課題が確認された。
以上を踏まえ、国・地方公共団体・民間協力者等の連携が進み、より機能し始めた再犯防止の取組を更に深化させ、推進していくために、政府は、2023年(令和5年)3月、「第二次再犯防止推進計画」(以下「第二次計画」という。)を閣議決定した。第二次計画においては、第一次計画の重点課題を踏まえつつ、第二次計画の策定に向けた基本的な方向性※3に沿って、以下の7つの事項を重点課題とした。
① 就労・住居の確保等
② 保健医療・福祉サービスの利用の促進等
③ 学校等と連携した修学支援の実施等
④ 犯罪をした者等の特性に応じた効果的な指導の実施等
⑤ 民間協力者の活動の促進等
⑥ 地域による包摂の推進
⑦ 再犯防止に向けた基盤の整備等
以上の重点課題は、基本的には第一次計画の重点課題を踏襲しているが、第一次計画の重点課題であった「地方公共団体との連携強化等」については、犯罪をした者等が地域社会の一員として、地域のセーフティネットの中に包摂され、地域社会に立ち戻っていくことこそが重要であることを踏まえ、第二次計画においては、「地域による包摂の推進」に変更した。また、第一次計画の重点課題であった「関係機関の人的・物的体制の整備等」については、施策の効果検証や広報・啓発活動の推進といった施策と一体のものとして、第二次計画においては、「再犯防止に向けた基盤の整備等」に変更した。
第二次計画では、上記の7つの重点課題に対し、96の施策を盛り込んでおり、計画期間は2023年度(令和5年度)から2027年度(令和9年度)末までの5年間である。政府は、第二次計画に盛り込まれた施策を可能な限り速やかに実施し、定期的に施策の進捗状況を確認しながら、施策の推進を図ることとしている。
- ※1 出所等年を含む2年間
出所等した年の翌年の年末まで - ※2 「再犯防止に向けた総合対策」における数値目標(「再犯防止に向けた総合対策」(平成24年7月20日犯罪対策閣僚会議決定))
過去5年(2006年(平成18年)から2010年(平成22年))における2年以内再入率の平均値(刑務所については20%、少年院については11%)を基準として、これを2021年(令和3年)までに20%以上減少させるというもの。出所受刑者の2年以内再入率については、2020年(令和2年)出所者について16%以下にすることが数値目標となる。 - ※3 第二次計画策定に向けた基本的な方向性
① 犯罪をした者等が地域社会の中で孤立することなく、生活の安定が図られるよう、個々の対象者の主体性を尊重し、それぞれが抱える課題に応じた“息の長い”支援を実現すること。
② 就労や住居の確保のための支援をより一層強化することに加え、犯罪をした者等への支援の実効性を高めるための相談拠点及び民間協力者を含めた地域の支援連携(ネットワーク)拠点を構築すること。
③ 国と地方公共団体との役割分担を踏まえ、地方公共団体の主体的かつ積極的な取組を促進するとともに、国・地方公共団体・民間協力者等の連携を更に強固にすること。