
第2節 住居の確保等
(1)居住支援法人との連携の強化【施策番号22】
法務省は、犯罪をした者等のうち、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成19年法律第112号)第2条第1項が規定する住宅確保要配慮者※31に該当する者に対して、個別の事情を踏まえつつ、賃貸住宅に関する情報の提供及び相談を実施している。また、更生保護施設退所者の住居確保の観点から、保護観察対象者等の入居を拒まない住居の開拓・確保にも努めている。
また、2023年度(令和5年度)からは、居住支援法人※32との相互理解を深め、連携を強化することを目的として、居住支援法人等の職員を矯正施設に招へいし、施設見学会及び意見交換会を各矯正管区が中心となって実施している。
(2)公営住宅への入居における特別な配慮【施策番号23】
国土交通省は、2017年(平成29年)12月に、各地方公共団体に対して通知を発出し、保護観察対象者等が住宅に困窮している状況や地域の実情等に応じて、保護観察対象者等の公営住宅への入居を困難としている要件を緩和すること等について検討するよう要請し、併せて、矯正施設出所者について、「著しく所得の低い世帯」として優先入居の対象とすることについても適切な対応を要請するなど、公営住宅への入居における特別な配慮を行った。また、通知の内容について、地方公共団体の担当者を対象とする研修会等において周知を行っている。
(3)住居の提供者に対する継続的支援の実施【施策番号24】
法務省は、保護観察対象者等であることを承知して住居を提供している者や公営住宅の事業主体である地方公共団体から、住居の提供に関する相談を受けた際は、更生保護官署において、その相談内容を踏まえて当該保護観察対象者等に指導及び助言を行うとともに、住居確保のための支援を行う協力雇用主に対する身元保証制度(【施策番号11】参照)の活用事例について情報提供等を行うなど、保護観察対象者等であることを承知して住居を提供する者に対する継続的支援を行っている。
(4)満期釈放者等に対する支援情報の提供等の充実【施策番号25】
法務省は、刑事施設において、出所後の社会生活で直ちに必要となる知識の付与等を目的として、講話や個別面接等による釈放前の指導を実施している。特に、適当な帰住先が確保できていないなど、釈放後の生活が不安定となることが見込まれる満期釈放者に対しては、刑事施設に配置された福祉専門官や非常勤の社会福祉士等が個別面接を行うなどして、受刑者本人のニーズを把握しながら、更生緊急保護※33制度や、社会保障等の社会における各種手続に関する知識を付与し、必要な支援につなぐための働き掛けを行っている。
地方更生保護委員会では、満期釈放が見込まれる受刑者等について、継続的に保護観察官による面接を実施し、更生緊急保護制度について説示し、矯正施設収容中の申出への動機付けを行うとともに、保護観察所に更生緊急保護の実施に必要な情報提供を行っている。そして、保護観察所において、矯正施設収容中に更生緊急保護の申出があった場合は、釈放後直ちに必要な支援を受けられるよう、必要な調査や調整を行っている。矯正施設収容中、あるいは釈放後の申出にかかわらず、帰住先を確保できないまま満期釈放となった更生緊急保護対象者に対しては必要に応じて更生保護施設等への委託をするほか、保健医療・福祉関係機関等の地域の支援機関等についての情報提供を行うなど、一時的な居場所の提供や定住先確保のための取組の充実を図っている。2023年(令和5年)は、更生保護施設及び自立準備ホームに対して、2,359人(前年:2,280人)の満期釈放者等への宿泊場所の提供等を委託し、これらの者の一時的な居場所を確保した。
三省(法務省・国土交通省・厚生労働省)協働による居住支援に係る取組状況
中国地方更生保護委員会調整指導官室
刑務所出所者等は、住宅の確保に特に配慮を要する者(以下「住宅確保要配慮者」という。)として国土交通省令で定められています。中国地方更生保護委員会及び広島矯正管区(法務省)、中国地方整備局(国土交通省)及び中国四国厚生局(厚生労働省)は、三省協働で、刑務所出所者等を含む住宅確保要配慮者に対する住宅の確保等の課題に対応するための地域における住宅・福祉・司法が連携した居住支援の体制づくりに向け、市区町村単位での居住支援協議会の設立や運営が円滑に進むように、地方公共団体や居住支援法人と連携を図っています。また、様々な問題を抱えた刑務所出所者等の居住支援の仕組みについての検討も行っていますので、その取組状況について紹介します。
1 居住支援協議会の設立に向けて
住まいに困っている刑務所出所者等に対し、住まいの確保や生活の安定・自立の促進に係る各種支援を実現するためには、支援ネットワークである居住支援協議会を設立し、同協議会と行政機関が連携し、支援対象者が必要とする支援を1か所の窓口で提供できる体制を整備することが効果的です。
そこで、居住支援協議会を設立するための支援の在り方について三省間で意見交換を重ねるとともに、三省合同で地方公共団体や居住支援法人を対象としたニーズ調査を行いました。さらに、今後は居住支援協議会設立に向けた機運を醸成するために、「居住支援セミナー」を開催する予定です。
また、地方公共団体や居住支援法人の方々が、刑事政策について理解を深めていただけるよう、矯正施設や更生保護施設を会場とした見学及び意見交換会を開催し、今後は自立準備ホームでも同様の意見交換会を開催する予定です。

2 様々な問題を抱えた刑務所出所者等にも対応した居住支援に向けた仕組みの検討
住宅セーフティネットの根幹である公営住宅への入居を刑務所出所者等が希望した際に課題となり得る事項等について抽出し、それらの課題について公営住宅の事業主体である県や市の担当者との間で三省合同で意見交換するなどしてきました。今後も課題等の把握及び解消に向けて取組を継続していく予定です。併せて、地域生活における総合的な支援を長期間実施するための方策も構築していく予定です。

- ※31 住宅確保要配慮者
低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子供を養育している者、保護観察対象者等。 - ※32 居住支援法人
住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律第59条に規定する法人で、住宅確保要配慮者の賃貸住宅への円滑な入居の促進を図るため、家賃債務の保証、円滑な入居の促進に関する情報の提供・相談、その他の援助等を実施する法人として都道府県が指定するもの。 - ※33 更生緊急保護
更生保護法(平成19年法律第88号)第85条に基づき、保護観察所が、満期釈放者、保護観察に付されない全部執行猶予者及び一部執行猶予者、起訴猶予者等について、親族からの援助や、医療機関、福祉機関等の保護を受けることができない場合や、得られた援助や保護だけでは改善更生することができないと認められる場合、その者の申出に基づいて、食事・衣料・旅費等を給与し、宿泊場所等の供与を更生保護施設等に委託したり、生活指導・生活環境の調整などの措置を講ずるもの。刑事上の手続等による身体の拘束を解かれた後6月を超えない範囲内(特に必要があると認められるときは、更生緊急保護の措置のうち、金品の給与又は貸与及び宿泊場所の供与については更に6月を超えない範囲内、その他のものについては更に1年6月を超えない範囲内)において行うことができる。
なお、2023年(令和5年)12月1日に施行された刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)による改正後の更生保護法においては、更生緊急保護の対象者に、処分保留で釈放された者のうち検察官が罪を犯したと認めたものが追加された。さらに、矯正施設収容中の段階から更生緊急保護の申出を行うことができることとされた。