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第1節 高齢者又は障害のある者等への支援等

第3章 保健医療・福祉サービスの利用の促進等のための取組
第1節 高齢者又は障害のある者等への支援等
1 関係機関における福祉的支援の実施体制等の充実

(1)刑事司法関係機関におけるアセスメント機能等の強化【施策番号26】

 法務省は、矯正施設において、犯罪をした者等について、福祉サービスのニーズを早期に把握し、円滑に福祉サービスを利用できるようにするため、社会福祉士又は精神保健福祉士を非常勤職員として配置するほか、福祉専門官(社会福祉士、精神保健福祉士又は介護福祉士の資格を有する常勤職員)を配置している(配置施設数の推移は資3-26-1参照)。また、2018年度(平成30年度)から、大規模な刑事施設8庁、2019年度(令和元年度)から女性刑事施設2庁を追加した合計10庁※1において、入所時年齢が60歳以上の受刑者を対象に認知症スクリーニング検査等を実施してきたところ、2023年度(令和5年度)からは、全国の刑事施設において、入所時年齢65歳以上等の受刑者を対象に認知症スクリーニング検査等を実施し、認知症等の早期把握に努めている。2023年(令和5年)は、2,096人に認知症スクリーニング検査等を実施し、そのうち医師による診察を実施した者の中で126人が認知症の診断を受けた。

 少年鑑別所(法務少年支援センター)では、地域援助(【施策番号85】参照)の一環として、検察庁からのいわゆる入口支援※2への協力依頼を受けて、被疑者等の福祉的支援の必要性の把握のために知的能力等の検査を実施しており、2023年は、検察庁から253件(前年:220件)の依頼を受け、援助を実施した。

 また、福祉的支援等を担当する保護観察官に対しては、福祉サービス利用に向けた調査・調整機能の強化のための研修を実施し、福祉的支援に関する講義を実施しているほか、社会福祉士会等が主催する研修や刑事司法関係機関と福祉関係機関が参加する福祉的支援に関する事例研究会に積極的に参加させるなどして、保護観察官のアセスメント能力の更なる向上等を図っている。

資3-26-1 刑事施設・少年院における社会福祉士、精神保健福祉士及び福祉専門官の配置施設数の推移
資3-26-1 刑事施設・少年院における社会福祉士、精神保健福祉士及び福祉専門官の配置施設数の推移

(2)高齢者又は障害のある者等である受刑者等に対する指導【施策番号27】

 法務省は、全国の刑事施設において、高齢者又は障害のある者等である受刑者の円滑な社会復帰を図るため、「社会復帰準備指導プログラム」(資3-27-1参照)を実施している。同プログラムは、地方公共団体、福祉関係機関等の職員や民間の専門家を指導者として招へいするなど、関係機関等の協力の下、基本的動作能力や体力の維持・向上のための健康運動指導を行うほか、各種福祉制度に関する基礎知識の習得を図るものである。2023年度(令和5年度)の受講開始人員は872人(前年度:367人)であった。

資3-27-1 社会復帰準備指導プログラムの概要
資3-27-1 社会復帰準備指導プログラムの概要

(3)矯正施設、保護観察所、更生保護施設、地域生活定着支援センター、地方公共団体等の多機関連携の強化等【施策番号28】

 法務省及び厚生労働省は、受刑者等のうち、適当な帰住先が確保されていない高齢者又は障害のある者等が、矯正施設出所後に、福祉サービスを円滑に利用できるようにするため、矯正施設、地方更生保護委員会、保護観察所、地域生活定着支援センター※3等の関係機関が連携して、矯正施設在所中から必要な調整を行い出所後の支援につなげる特別調整(資3-28-1及び【指標番号14】参照)の取組を実施している。この取組を促進するため、関係機関において、特別調整の対象者等に対する福祉的支援に係る協議会や、各関係機関等が有している制度や施策について相互に情報交換等を行う連絡協議会等を行っている。

 加えて、地域生活定着支援センターでは、2018年度(平成30年度)から、矯正施設入所早期からの関わりや地域の支援ネットワークの構築の推進を強化するなど、更なる連携機能の充実強化を図っている。

資3-28-1 特別調整の概要
資3-28-1 特別調整の概要
  1. ※1 2022年度(令和4年度)までの認知症スクリーニング検査実施10庁
    札幌、宮城、栃木、府中、名古屋、大阪、和歌山、広島、高松及び福岡刑務所
  2. ※2 入口支援
    一般に、矯正施設出所者を対象とし、矯正施設から出所した後の福祉的支援という意味での「出口支援」に対して、刑事司法の入口の段階、すなわち、起訴猶予、刑の執行猶予等により矯正施設に入所することなく刑事司法手続を離れる者について、高齢又は障害等により福祉的支援を必要とする場合に、検察庁、保護観察所、地域生活定着支援センター、弁護士等が、関係機関・団体等と連携し、身柄釈放時等に福祉サービス等に橋渡しするなどの取組をいう。
  3. ※3 地域生活定着支援センター
    高齢又は障害により、福祉的な支援を必要とする犯罪をした者等に対し、矯正施設、保護観察所、地域の福祉等の関係機関等と連携・協働しつつ、身体の拘束中から釈放後まで一貫した相談支援を実施し、社会復帰及び地域生活への定着を支援するための機関。2009年度(平成21年度)に厚生労働省によって「地域生活定着支援事業」(現在は地域生活定着促進事業)として事業化され、原則として各都道府県に1か所設置されている。