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第1節 持続可能な保護司制度の確立とそのための保護司に対する支援

5 国内外への広報・啓発【施策番号68】

 法務省は、幅広い世代から多様な人材を保護司として迎え入れるため、保護司セミナー※6による地域の関係機関等への広報、若年層にも訴求する多様な手法による広報を展開している。

 また、7月を強調月間として実施する“社会を明るくする運動”(【施策番号95】参照)において、保護司活動に関する広報を行うなどし、犯罪や非行の防止と犯罪や非行をした人たちの更生について理解を深めるとともに、地域の更生保護を担う保護司の社会的認知の向上を図っている。

 2024年(令和6年)4月にオランダで開催された第6回世界保護観察会議のプログラムの一つである「第2回世界保護司会議」において、4月17日を「国際更生保護ボランティアの日」とする宣言が採択されたことを踏まえ、保護司を始めとする更生保護の分野で活躍する地域ボランティアの認知度向上を図るため、国際会議における発表、広報動画※7の配信等の様々な方法によって、更生保護ボランティアの意義を継続的に発信している。

持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会報告書について

法務省保護局

 2023年(令和5年)3月17日に閣議決定された「第二次再犯防止推進計画」において、「法務省は、時代の変化に適応可能な保護司制度の確立に向け、保護司の待遇や活動環境、推薦・委嘱の手順、年齢条件及び職務内容の在り方並びに保護観察官との協働体制の強化等について検討・試行を行い、2年を目途として結論を出し、その結論に基づき所要の措置を講じる。」こととされたことを受け、法務省では、「持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会」(以下「検討会」という。2023年5月17日法務大臣決定)を同月から14回にわたり開催した。

 2024年(令和6年)10月3日に開催された第14回検討会において報告書が取りまとめられ、法務大臣に提出された。報告書には、今後講じていく施策等として78の取組が盛り込まれている。その概要は以下のとおりである。

(1)公募の取組の施行

 保護司の適任者確保については、保護司の人脈により、退任が予定された保護司の後任となる保護司候補者を発掘することが慣例化していたが、保護司の人脈のみに頼らず、保護司活動インターンシップや保護司セミナーの実施、地方公共団体の広報誌等を通じた広報・周知により保護司候補者を募集する、いわゆる公募の取組を保護司会の意向を十分に踏まえつつ試行すること。

(2)任期の見直し

 保護司に委嘱後、処遇活動や地域活動を理解・経験し、より長く保護司活動を継続していく意欲を喚起することができるのに十分な期間を確保する観点から、2年とされている任期の見直しを検討すること。

(3)保護観察官との協働態勢の強化

 保護観察官は、担当する地区の更生保護活動を「丸ごと我が事」ととらえ、粘り強く誠実かつ積極的に取り組むこと。また、保護観察官と保護司の適切な協働態勢を構築するため、保護観察官の育成を一層推進するとともに、各保護区の業務を複数の保護観察官が相互に協議・情報共有しつつ担当するユニット制の導入を進めるなど、保護観察所の組織体制を抜本的に見直し強化すること。

(4)報酬制について

 保護司活動は、労働の対価としての給与の支給を受けずに行われている崇高な社会貢献の取組である。保護司の無償性は、利他の精神や人間愛に基づく地域社会における自発的な善意を象徴するものであり、なお堅持していくべき価値があることから、報酬制はなじまないこと。

(5)保護司実費弁償金の充実

 幅広い年齢層の保護司が、保護観察等事件の担当の有無にかかわらず、無理なく保護司活動を継続できるよう保護司実費弁償金を充実すること。

(6)現役世代が保護司活動を長く継続できるようにするための環境整備

 国、地方公共団体、事業者等において、保護司活動に関し、兼職の許可や職務専念義務の免除について柔軟かつ弾力的に取り扱うことなど、保護司活動の環境整備の活性化のための仕組みを検討すること。

(7)保護司の安全確保

 定期的な保護観察事件の点検、保護司の不安等の適時的確な把握、保護司が相談しやすい関係性の構築、保護司複数指名制の活用、保護観察官による直接関与などの取組を強化すること。また、保護司の家族の不安や負担を軽減できるよう、必要な支援を充実すること。

 上記に加え、保護司の新任委嘱時上限年齢(原則66歳以下)の撤廃や、保護司法制・更生保護法制の見直しの検討、国際的な情報発信の推進、保護司と保護観察対象者等との面接場所・面接方法の選択肢の拡充などが盛り込まれている。

 より詳細な情報については、法務省ホームページを参照されたい。

  1. ※ 持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会
    検討会の議事録等は法務省ホームページで公表している。
    https://www.moj.go.jp/hogo1/kouseihogoshinkou/jizokuhogo05.html持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会のqr

再犯防止を支える民間協力者の方々 保護司

飯塚保護区保護司会 会長 大塚修一

1 保護司として活動するまでの経緯について教えてください。

①保護司として活動するまで、どのような仕事(生活)をされていましたか

 30年以上保護司活動に従事していますが、保護司に委嘱される前はサラリーマンをしており、親が亡くなったことをきっかけに地元に戻り不動産屋を立ち上げることになりました。現在も保護司活動と仕事を両立しつつ活動しています。

②どのような経緯、きっかけで保護司の存在を知りましたか

 地元の同級生が既に保護司をしており、是非一緒にやろうと誘われて保護司活動に従事することとなりました。保護司になったばかりの頃、研修に参加すれば自分の親のような方々ばかりで大変緊張したことを覚えています。

③実際に活動するに当たり不安を感じることはありましたか

 不安を感じることはあまりなかったですが、保護観察対象者が面接時間になっても来ない時に不安を感じることはあります。時間になっても面接に来ない時は、こちらから保護観察対象者の家に出向いて待つこともありました。

2 保護司の活動内容について教えてください。

 スケールの大きい話になりますが、市民の平和・幸福を守ることが保護司の活動だと思っています。保護司として保護観察対象者の相談に乗り、援助することや、広報啓発活動をすることも大切ですが、近年は子どもたちの見守り活動にも力を入れています。

 少子化により地元の子どもたちが少なくなっており、通学に不安を感じているのではないかと考え、5年ほど前から見守り活動を始めました。子どもたちが安心して楽しんで通学できるよう、挨拶に加え、「最初は、グー、じゃんけん、ぽん!」と声をかけて子どもたちとじゃんけんをしています。活動当初は子どもたちも緊張した面持ちでしたが、今では子どもたちの方からじゃんけんをしてくれるようになりました。子どもたちが笑顔で元気に通学している様子を見ていると、こちらもとてもうれしくなります。

再犯防止を支える民間協力者の方々 保護司

3 保護司の活動のやりがいを教えてください。

 対象者等に感謝されたとき、保護司としてのやりがいを感じます。

 対象者と関わる中で、裏切られることも多々ありましたが、真剣に向き合うことで更生を果たす人もいました。保護観察が終了するまで毎日対象者の家に出向いて話をし、説得することもありました。更生が困難だと感じた対象者に対しても誠心誠意向き合うことで、現在に至るまで真面目に仕事をして、社長になった人もいます。

 保護観察が終わった後、今でも交流が続いている人もいて、その元対象者の誕生日には家を訪れ、留守であったとしてもバースデーケーキを渡しています。保護観察を受ける人は家族や社会とのつながりが希薄な場合が多いため、寂しい思いをさせたくないと常々感じています。保護司として活動する中で困難なことが生じることもありますが、対象者から感謝されたとき、保護司をしていて良かったなと感じます。

4 保護司活動をする上で御家族の理解をどのように得ましたか。

 最初は、家族も対象者を家に入れることに不安を感じていたため、敷地内の事務所で面接するようになりました。家庭的な環境に不慣れな対象者もいるため、事務所を面接場所とすることで、対象者も緊張せずに面接できているのではないかと思います。

 家の中で面接をするとなると、何も知らない家族としては怖いと感じることは当然だと思いますが、家族も徐々に保護司活動を理解してくれ、妻が対象者にお茶を出してくれるようになりました。

再犯防止を支える民間協力者の方々 保護司
  1. ※6 保護司セミナー 
    保護司が地域の関係機関・団体、民間企業等に対し保護司活動等について紹介することにより、保護司活動に対する理解と関心を高め、保護司適任者を確保する間口の拡大及びそれら団体等の保護司活動への協力を促すことを目的としているもの。都道府県保護司連合会により開催されている。
  2. ※7 更生保護ボランティア広報動画
    日本語版 https://www.youtube.com/watch?v=CrKN00E4K4g更生保護ボランティア広報動画 日本語版のqr

    英語版  https://www.youtube.com/watch?v=1UPhw2Q_EKw更生保護ボランティア広報動画 英語版のqr