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第1節 特性に応じた効果的な指導の実施等

10 再犯の実態把握や指導等の効果検証及び効果的な処遇の在り方等に関する調査研究【施策番号87】

 法務省は、検察庁、矯正施設、更生保護官署がそれぞれのシステムで保有する対象者情報のうち、相互利用に適する情報について、対象者ごとにひも付けること(名寄せ)により、情報の相互利用を可能とする刑事情報連携データベースシステム(System for Crime and Recidivism Prevention、SCRP)を運用している。その上で、他の機関が個々の対象者に実施した処遇等の内容の詳細を把握できるデータ参照機能(対象者レポート表示)や、多数のデータを用いた再犯等の実態把握や施策の効果検証等を容易にするデータ分析機能(ダッシュボード出力、フリーデータ抽出)を整備・運用することにより、再犯防止施策の実施状況等の迅速かつ効率的な把握やそれぞれの機関における処遇の充実、施策の効果検証、再犯要因の調査研究等への利活用を可能とし、再犯防止施策の推進を図っている。具体的には、刑事施設における刑執行開始時調査の実施や、少年院における矯正教育計画の策定、更生保護官署における生活環境調整の重点的な実施に当たっての参考資料として活用した。また、2020年度(令和2年度)は、フリーデータ抽出を活用して刑務所出所者等に対する就労支援事業の効果検証を実施し、効果的な支援について検討を行った。そのほか、2019年度(令和元年度)は、再犯の状況や施策の実施状況を把握するための機能の充実やシステムを活用する職員向けの研修を実施したほか、2020年度には「矯正施設におけるSCRPデータの活用法が学べるガイドブック」を作成し、同システムの活用促進を図った。

 また、2019年4月に、矯正研修所に「効果検証センター」を新設し、矯正処遇、矯正教育、社会復帰支援、鑑別・観護処遇等に係る効果検証に加え、アセスメントツール(例えば、受刑者用一般リスクアセスメントツール(Gツール)(【施策番号66】参照)、法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)(【施策番号66】参照))や処遇プログラムの開発及び維持管理に資する研究等を体系的に実施している。2020年3月には、刑事施設における性犯罪者処遇プログラム受講者の再犯等に関する分析結果※24を公表したほか、2020年度には、各種アセスメントツールや指導プログラムの開発、効果検証等によって得られた知見等を実務に積極的に還元するため、研究法、認知行動療法、ギャンブル等依存症の理解等をテーマとして取り上げ、拡大研修会を計画的に企画・実施した。

 なお、2020年6月に性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議において取りまとめられた「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」においては、性犯罪・性暴力対策の抜本的な強化のための方策の一環として、仮釈放中の性犯罪者等にGPS機器の装着を義務付けること等について、諸外国の法制度・運用や技術的な知見等を把握し、その結果を踏まえて所要の検討を行うことが掲げられており、2021年度(令和3年度)末までを目途として、法務省において諸外国の調査を行うこととしている。

 法務総合研究所において、2020年3月、研究部報告62「薬物事犯者に関する研究」を発刊し、我が国における薬物事犯の動向及び薬物事犯者の処遇の現状、諸外国における薬物事犯者処遇の近況、覚醒剤事犯で刑事施設に入所した者への質問紙調査の実施結果等をまとめて報告している(【施策番号47】参照)。

  1. ※24 刑事施設における性犯罪者処遇プログラム受講者の再犯等に関する分析結果についてはこちら
    (URL:https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00005.html刑事施設における性犯罪者処遇プログラム受講者の再犯等に関する分析結果についてのqr