再犯防止推進白書ロゴ

第2節 広報・啓発活動の推進等

2 民間協力者に対する表彰【施策番号103】

 内閣官房及び法務省は、2018年度(平成30年度)から、内閣総理大臣が顕彰する「安全安心なまちづくり関係功労者表彰」(写真6-103-1参照)において、地域社会における防犯活動に加え、再犯の防止等に関する活動の推進において特に顕著な功績又は功労のあった個人又は団体についても表彰の対象とすることとし、2020年度(令和2年度)には、法務省を含む関係省庁や地方公共団体から推薦を得て、再犯を防止する社会づくりについて功績・功労があった合計8の個人及び団体を表彰した(資6-103-1参照。公益財団法人日本盲導犬協会島根あさひ訓練センターについては、【コラム11】参照。)。

写真6-103-1 令和2年安全安心なまちづくり関係功労者表彰式の様子
写真6-103-1 令和2年安全安心なまちづくり関係功労者表彰式の様子
資6-103-1 令和2年安全安心なまちづくり関係功労者表彰の受賞団体及び活動概要
資6-103-1 令和2年安全安心なまちづくり関係功労者表彰の受賞団体及び活動概要

COLUMN11 島根あさひパピープロジェクトの活動に国から「安全安心なまちづくり」の表彰

公益財団法人 日本盲導犬協会 島根あさひ訓練センター長 佐々木 重紀

 「島根あさひ社会復帰促進センターにおける盲導犬パピー育成プロジェクト(略称:島根あさひ盲導犬パピープロジェクト)」は、訓練生(受刑者)が盲導犬候補の子犬を育成するという日本初の試みとして2009年(平成21年)4月にスタートした。盲導犬候補の子犬を、訓練生とボランティアが協力しながら育てている。訓練生の社会復帰の促進と同時に、パピーウォーカー(子犬飼育ボランティア)の不足を補うことで盲導犬育成頭数増加にもつながる画期的なプロジェクトと言える。

 2020年(令和2年)11月には第12期を迎え、2021年(令和3年)5月現在、4頭の子犬が訓練生の手で育てられている。委託時には、その腕の中で寝息を立てていたパピー(子犬)たちが、10か月後には抱き上げることもできないほど立派に成長する。パピーたちが協会に引き渡される旅立ちの時に、訓練生たちの目に光る涙が、本プロジェクトの意味を物語っていると感じる。これまでに62頭が育ち、うち14頭が盲導犬として活躍している。

 これまでに課題も多数あった。センター内の規律を保ちながらも、パピーたちにとって快適な環境であること、将来、盲導犬になるために必要なしつけや社会性を育むことが求められている。訓練生の再犯防止と良質な盲導犬育成の両立へ向けて、関係者皆でプロジェクト内容の検討や改善を重ね現在に至っている。

 本プロジェクトと並行して、中四国地域唯一の盲導犬育成施設として島根あさひ訓練センターが2008年(平成20年)10月に開設された。担う役割は多岐にわたり、視覚障害者へ盲導犬や白杖での歩行指導を実施するほか、相談やリハビリテーション事業、盲導犬同伴でも問題なく活動できる社会環境整備などがある。全ての事業は、目の見えない人、見えにくい人の社会参加とQOL(Quality of Life)の向上を目的とするものである。

 これらの事業は、ボランティアをはじめ地域の方々の協力なくしては成り立たない。島根あさひ盲導犬パピープロジェクトでは、地域のパピーウォーカーが毎週末子犬を預かり、訓練生とともにひとつの命を育んでいく。訓練生とパピーウォーカーがパピー手帳を通じて子犬の様子を伝えあう中で、お互いの「つながり」も芽生える。このつながりが訓練生のその後に少なからず影響を与えているのではないかと想像する。協会も地域とのつながりを大切に育んできた。

 こうした地道な活動が認められ、2020年には嬉しい出来事があった。訓練生の改善指導プログラムとして「盲導犬パピーを育てる」という活動に11年間協力してきたとして、島根あさひ訓練センターが、内閣総理大臣が顕彰する「安全安心なまちづくり関係功労者表彰」(【施策番号103】参照)の受賞者に選ばれたのである。地域のボランティアとも連携して本プロジェクトを通して、2009年から2020年1月までに訓練生276人の社会復帰に寄与したことが認められ、このたびの受賞となった。2020年10月16日には、首相公邸で表彰式が行われ、井上幸彦協会理事長が参列し、菅義偉首相(当時)からは、受彰者に対して、「安全で安心な日常は、自助・共助・公助、そして人々の絆から生まれる。このような地道な活動は地域の絆をつくる」と、今後の活躍への期待が述べられた。

 ずっしりとした記念の楯をいただき、改めてこの12年間を振り返ると同時に、その期待と責任の重さを実感している。この栄誉は、協会だけのものではない。島根あさひ社会復帰促進センター、訓練生やそれを支える地域ボランティアや御支援者皆様との連携あってこそである。更なる活動へ向け、皆様とともに歩んでいきたい。

訓練のため島根あさひ社会復帰促進センターに預けられたパピーたち
訓練生がパピーたちを訓練する様子