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第3節 地方公共団体や民間協力者による取組

4 社会福祉法人白鳩会花の木農場における農福連携の取組

CASE

(執筆者:法務省矯正局)

 2017年(平成29年)12月に「再犯防止推進計画」が閣議決定され、一般就労と福祉的支援の狭間にある者の就労の確保策として「障害者雇用における農福連携の取組を参考に、ソーシャルビジネスとの連携を推進すること」が明記されました。また、2019年(令和元年)6月に農福連携等推進会議において決定された「農福連携等推進ビジョン」では、犯罪や非行をした者の立ち直りに向けた取組として、「刑事司法関係機関と農業、福祉関係者との関係づくり」や「就農等に向けた作業・訓練等の環境整備」等が掲げられました。さらに、2019年12月に犯罪対策閣僚会議において決定された加速化プランでは、「民間協力者の活動促進」の具体的な取組として、「犯罪をした者等を受け入れる農福連携等による立ち直りの取組を推進する」ことが明記されており、「農福連携」は再犯防止分野においても今後の更なる展開が望まれる重要な取組であると言えます。

特1-6 花の木農場の風景
特1-6 花の木農場の風景

 「農福連携」に積極的に取り組んでいる、いわゆる「ソーシャル・ファーム」※17の一つとして、「社会福祉法人白鳩会」があります。同法人は1972年(昭和47年)の設立以降、鹿児島県南大隅町にて「来る者拒まず」の精神を掲げ、法人全体で数多くの障害者等を受け入れています。中でも同法人の「花の木農場」では、45ヘクタールの広大な敷地で、触法障害者を含めた多様な人々が100名以上も働いており、20種類以上の野菜等の生産から牛や養豚などの畜産、解体・精肉、食肉加工、パン製造、レストランの接客に至るまで、作業のほとんどに障害者が携わっています。

 特に近年は、花の木農場と矯正施設や保護観察所などの法務省関連機関との連携が進んでおります。同法人全体としても、これまでに延べ30名以上の矯正施設出所者等の受入実績があり、地域における矯正施設出所者等の貴重な受け皿であると言えます。2019年度には、福岡矯正管区(九州・沖縄の8県内にある矯正施設の指導監督調整等を行う機関(地方支分部局))及び中津少年学院(大分県中津市に所在する、九州・四国・中国の各家庭裁判所から保護処分として送致された知的、情緒若しくは発達障害のある在院者(疑いを含む。)等を収容する少年院)との協議や見学を重ね、家族と疎遠であり帰住先が定まっていない在院者を花の木農場に迎え入れ、住み込みでの就農の機会を提供いただくなど、特に調整が困難と思われる矯正施設出所者等の帰住先確保につながったケースも出てきています。また、2020年(令和2年)2月に福岡矯正管区が主催した「令和元年度篤志面接委員と施設職員との合同研修会」では、白鳩会常務理事である中村邦子氏から、「社会福祉法人白鳩会が取り組む農福連携について」と題した御講演をいただくなど、積極的に再犯防止活動に御協力いただいております。

特1-7 農作業の様子
特1-7 農作業の様子

 花の木農場の取組は「農福連携」の一例であり、「ソーシャル・ファーム」は、出所後の帰住先や就労を確保し、“息の長い”支援を実現するために大いに期待されている重要な社会資源の一つです。法務省としても、ソーシャル・ファームとの連携を更に深化できるよう、積極的に関係づくりをしてまいります。

  1. ※17 ソーシャル・ファーム
    施策番号23】参照。