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第1節 特性に応じた効果的な指導の実施

2 性犯罪者・性非行少年に対する指導等

(1)性犯罪者等に対する専門的処遇【施策番号68】

 法務省は、刑事施設において、特別改善指導(【施策番号83】参照)として、認知行動療法に基づくグループワークによる性犯罪再犯防止指導(資5-68-1参照)を実施し、性犯罪につながる自己の問題性を認識させるとともに、再犯に至らないための具体的な対処方法を考えさせたり、習得させたりするなどしている(2021年度(令和3年度)の受講開始人員は433人(前年度:424人))。

 同指導では、知的能力に制約がある者を対象とした「調整プログラム※7」や、刑期が短いこと等により受講期間を十分確保できない者を対象とした「集中プログラム※8」を開発し、指導の充実を図っている。また、同指導については、2019年度(令和元年度)に効果検証の結果を公表しており、プログラム受講群の方が、非受講群よりも再犯率が10.7ポイント低いことが示され、一定の再犯抑止効果が認められた。2022年度(令和4年度)からは、対象者の達成したい目標や強みをより一層活用するとともに、特定の問題性や特性を有する者にも対応した内容にプログラムを改訂するなど、刑事施設収容中から出所後までの一貫性のある効果的な指導の充実を図っている。さらに、グループワーク指導担当者が効果的な指導を行うことができるよう、集合研修の充実化、指導担当者による事例検討会の定期的な開催、外部の専門家による指導担当者への助言等による指導者育成を行っている。

 少年院では、強制性交等、強制わいせつや痴漢といった性犯罪を始め、例えば、下着の窃盗等、性的な動機により非行をした在院者に対し、特定生活指導として性非行防止指導を実施しており、2021年(令和3年)は、126人(前年:134人)が修了した。また、男子少年院2庁(北海少年院及び福岡少年院)において、他の少年院から在院者を一定期間受け入れ、認知行動療法等の技法に通じた外部の専門家等の協力を得て、グループワークを中心とした指導を行うなど、特に重点的かつ集中的な指導を実施しており、2021年度(令和3年度)は、28人(前年度:19人)が同指導を修了した。これらの指導の結果は、少年院仮退院後の継続的な指導の実施に向け、保護観察所に引き継いでいる。

 保護観察所では、自己の性的欲求を満たすことを目的とした犯罪行為を繰り返すなどの問題傾向を有する保護観察対象者に対して、その問題性を改善するため、認知行動療法に基づく性犯罪者処遇プログラムを実施してきた。2019年度(令和元年度)に実施した効果検証の結果においては、プログラム受講群の方が非受講群よりも性犯罪の再犯率が11.1ポイント低く、一定の再犯抑止効果が示唆された。2022年度(令和4年度)からは、対象者の達成したい目標や強みをより一層活用することや性的な興味関心・問題への対処状況等の継続的な点検等を目的として、従前のプログラムの改訂を行い、性犯罪再犯防止プログラム(資5-68-2)を実施することとしている。

 なお、2022年度(令和4年度)以降の刑事施設及び保護観察所における性犯罪者等に対する専門的処遇の具体的な運用等については「特集第1節-②-(3)-ア」を参照。

資5-68-1 性犯罪再犯防止指導の概要
資5-68-1 性犯罪再犯防止指導の概要
資5-68-2 性犯罪再犯防止プログラムの概要
資5-68-2 性犯罪再犯防止プログラムの概要

(2)子供を対象とする暴力的性犯罪をした者の再犯防止【施策番号69】

 警察は、13歳未満の子供に対して強制わいせつ等の暴力的性犯罪をした刑事施設出所者について、法務省から情報提供を受け、各都道府県警察において、当該出所者と連絡を取り、同意を得て面談を行うなど、再犯防止に向けた措置を講じている。

  1. ※7 調整プログラム
    知的能力に制約がある者を対象としたプログラムであり、イラスト等の視覚情報やSST等の補助科目を効果的に取り入れるなどして実施する。
  2. ※8 集中プログラム
    刑期が短いこと等の理由で通常の実施期間を確保できない者を対象としたプログラムであり、通常のプログラムの内容を凝縮し、短期間で実施する。