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再犯防止に向けた総合対策
~対象者の特性に応じた指導及び支援の強化~

対象者の特性に応じた指導及び支援について

再犯防止に関する連載の第1回目として,「再犯防止に向けた総合対策」の4本柱の一つ目である,「対象者の特性に応じた指導及び支援の強化」を紹介します。

なお,再犯防止対策を推進する必要性については,前回(第44号)の特集記事をご参照下さい。

年齢,性別,非行や犯罪に至る要因等は一人ひとり異なります。そのため,再犯を防止するための指導・支援も,対象者の特性に応じて行うのが効果的です。


少年・若年者・初入者

■入所受刑者の保護処分歴別構成比(H24)■

入所受刑者の保護処分歴別構成比のグラフ

再入者は,初入者と比べて有保護処分歴者の割合が高くなっています。このことから,少年,若年者,初入者に対しては,再犯の連鎖に陥ることを早期に食い止める観点から,個々の問題を的確に把握した集中的な指導・支援が必要と言えます。

また,家族関係の調整や不良交友関係の解消など,対象者を取り巻く環境の改善も重要です。


高齢者・障害者

■高齢の入所受刑者人員の推移(H5-H24)■

高齢の入所受刑者人員の推移のグラフ

入所受刑者に占める高齢者率の上昇は顕著です。そして,高齢者又は障害を持った受刑者の中には,自立した生活が困難な人もいます。

このような人の再犯防止には,福祉につなぐための調整や,帰住先の確保が重要です。また,刑務所在所中から出所後まで切れ目のない指導・支援を行う必要があります。


女性

■入所受刑者の人員(罪名別)・女子比の推移■

入所受刑者の人員(罪名別)・女子比の推移のグラフ

入所受刑者全体に対する女子比は上昇を続けています。また,覚せい剤や窃盗事犯者が多い傾向にあります。さらに,被虐待体験による心的外傷や摂食障害などの問題を抱える者も男性と比較して多く,女性特有の傾向を踏まえた指導・支援が必要です。


薬物依存者

■同一罪種前科(検挙歴)の有無(H24)■

同一罪種前科(検挙歴)の有無のグラフ

覚せい剤取締法違反で検挙された者は,同一罪種前科のある者の割合が高くなっています。

そこで,薬物依存の問題を抱える者に対しては,個々のリスクに応じた指導プログラム,医療,福祉機関,民間支援団体等との連携による継続的・長期的な支援が必要です。

また,薬物依存者の家族等への支援も重要です。


性犯罪者

性犯罪の再犯率は他の罪種と比較して高くはないものの,被害者に対する被害が非常に重大であり,再犯を防ぐことが重要です。

このため,性犯罪者には,個々の再犯リスクに応じた一貫性のある指導・支援を行うとともに,諸外国の取組事例も参考とした対策も検討します。

刑務所のグループワークの様子の画像

刑務所のグループワークの様子


暴力団関係者等再犯リスクの高い者

■入所受刑者(暴力団関係者・非関係者別)の入所度数別構成比(H24)■

入所受刑者(暴力団関係者・非関係者別)の入所度数別構成比のグラフ

暴力団関係者はそれ以外の者と比べ再入者の比率が高くなっています。そこで,関係機関の連携による,離脱に向けた継続的な指導・支援が必要です。

また,問題飲酒や,対人暴力等の問題性の大きい者に対しては,その問題性を早期に把握し,適切な処遇・指導を実施することが重要です。

まとめ

以上のように,再犯を防止すべき対象者は多様であり,それぞれが抱える再犯リスクやニーズも異なります。

政府では,再犯防止対策を一層推進するために,各施策の効果等も随時把握しながら,関係機関や民間の支援団体等と連携して取り組んでいきます。

今回は対象者の特性別に,現状と必要な取組について紹介しましたが,今後,各取組の詳細について紹介していく予定です。

なお,次回の「あかれんが」では,総合対策の2つ目の柱となる,「社会における『居場所』と『出番』作り」を紹介する予定です。