記者が行く 〜番外編〜
法務省における東日本大震災への対応

この度の東日本大震災により被災された皆さま,また皆さまとつながりのある方々に,心からお見舞い申し上げます。

法務省においても,被災地に所在している法務局,検察庁,刑務所,保護観察所,地方入国管理局などで,地震や津波により業務を継続できないほどの被害を受けたところもあり,今もその機能を近くの関連する施設に移転するなどして業務を行っているところもあります。

被災地への救助・支援について,法務省は,防衛省や消防庁のように被災地に多数の職員を派遣して様々な支援を行う実働部隊を持っていませんが,その他のいろいろな面で被災された方への対応や復興への支援などを行っています。

今号は,「記者が行く」の番外編として,私が取材した「法務省における東日本大震災への対応」について,紙面の許す限りご紹介したいと思います。


まずは,国民の皆さまと密接に関連する『戸籍』についてです。

戸籍とは,日本国民がいつ生まれたのか,父母は誰なのか,兄弟姉妹はいるのか,いつ結婚したのかなどの親族的身分関係を登録・公証するもので,日本国籍を公証するものでもあります。その戸籍の正本が,今回の東北地方を襲った津波により滅失した市町がありました。そこで,戸籍の正本が滅失した市町を管轄する法務局において保存していた戸籍の副本などに基づき本年4月25日までに戸籍の再製データを作成し,現在では,全ての市町において,戸籍の再製が完了しています。


(避難所を視察する江田法務大臣)
(法務局を視察する江田法務大臣)

次に,皆さんも言葉は知っている?「民法」に規定がある『相続』についてです。

本来であれば,相続人が相続のあったことを知った時から3か月以内に「限定承認」または「相続の放棄」のいずれかを家庭裁判所に申し出なければ,相続人が「単純承認」したとみなされます。しかし,この大震災の被災者である相続人が,生活の混乱の中で,「限定承認」,「相続放棄」等を行うことができないまま3か月が過ぎてしまい,相続を「単純承認」したとみなされ,不利益を受けるおそれがありました。これを防止するために,相続人が被災者である場合に,この期間を平成23年11月30日まで延長することとした「東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をすべき期間に係る民法の特例に関する法律」が成立し,先月21日から施行されています。


※限定承認,相続放棄等申立の手続については,裁判所のホームページに詳細が掲載されています。


次に,法務省職員による被災地への支援などについてです。

先ほど,被災地に多数職員を派遣して様々な支援を行える実働部隊を持っていないとお話しましたが,派遣可能な範囲で,法務省職員が被災した自治体の要請に基づいて被災地に行き,避難住民への非常食の提供を行ったり,被災地域における救援物資の搬入・搬出作業などの応援もしています。


(刑務官による炊き出しの様子1)
(同様子2)

(刑務官による救援物資搬入作業の様子1)
(同様子2)

避難されている方は,避難所等で非常にストレスの多い集団生活を送っていることから,全国の少年鑑別所や少年院,保護観察所などで,非行や犯罪の心理臨床などに携わっている専門職員を現地に派遣し,避難されている方のメンタルヘルスケアや心理相談も行っています。

また,自治体等からの要請に基づき,刑務所,少年院,少年鑑別所などに勤務している医師が被災地で医療支援を行っています。


(心理技官と先方スタッフとの打ち合わせの様子)

長期化する避難所での生活等に伴うプライバシー侵害など,震災に伴って生じる様々な人権問題について,被災地などに特設相談窓口を設けるとともに,電話やインターネットによる相談も受け付けています。


人権イメージキャラクター

このようにいろいろな取組をしているほか,法務省から緊急メッセージを出していることもあります。

報道等によれば,原発事故のあった福島県からの避難者である小学生が避難先の小学校でいじめられるなどの事案があったといわれています。このような悲しい事態に対して,法務省人権擁護局では,『根拠のない思い込みや偏見で差別することは人権侵害につながります。震災に遭った人が,避難先で差別を受けたら,どんな気持ちになるでしょうか。相手の気持ちを考え,やさしさを忘れず,みんなでこの困難を乗り越えていきましょう。』といった緊急メッセージを出しました。また,こういった出来事を基にした,いっこく堂さんの全面的な協力による人権尊重に関する動画を作成し,人権啓発に取り組んでいます。


放射線被ばくについての風評被害等に関する緊急メッセージ 
http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00008.html

東日本大震災に伴う風評被害等に関する人権啓発デジタルコンテンツについて
http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken05_00009.html


(いっこく堂「転校生カンちゃんいじめられる」)
(いっこく堂「転校生カンちゃんいじめられる」)

【電話相談受付窓口一覧】(受付時間は平日午前8時30分から午後5時15分まで)

○全国共通人権相談ダイヤル(みんなの人権110番)
0570−003−110(全国共通ナビダイヤル)

○子どもの人権110番
0120−007−110(フリーダイヤル)

○女性の人権ホットライン
0570−070−810(全国共通ナビダイヤル)

【インターネット人権相談受付窓口(子ども用は子どもの人権SOS-eメール)】(24時間受付)

(パソコン)http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken113.html QRコード
(携帯電話)http://www.jinken.go.jp/soudan/mobile/001.html

また,「法テラス」では,日本弁護士連合会や各弁護士会と共催して,お住まいの借家が損壊した場合の修繕費用の問題や震災で解雇された場合などの法的問題について無料で電話による相談に応じています。法テラス・サポートダイヤルでも,震災に関する法的問題についてのお問い合わせを受け付けています。


「法テラス」http://www.houterasu.or.jp/eastjapaneq/


■東日本大震災電話相談 フリーダイヤル
電話番号:0120-366-556 (平日のみ10時〜15時)
■東日本大震災仙台電話相談 フリーダイヤル
電話番号:0120-216-151 (平日のみ10時〜19時)
■東日本大震災岩手電話相談 フリーダイヤル
電話番号:0120-755-745 (月曜日〜土曜日13時〜16時)
■法テラス・サポートダイヤル ナビダイヤル:通話料が発生します。
電話番号:0570-078374 (平日9時〜21時,土曜日9時〜17時)

最後に,私の勤務場所である法務省が入居している中央合同庁舎第6号館の食堂では,「東日本大震災被災地応援キャンペーン」として,被災地の食材,福島県産の野菜,玉子,岩手県産の鶏肉,玉子などを積極的に使用して,美味しいランチを提供していたので,私も毎日食べていました。とても美味しかったですが,ちょっと食べ過ぎて・・・


今回,私も取材してみて,法務省もいろいろなことで今回の大震災による被害の復旧,復興に関わっていることが分かりました。この他にも入国管理局における外国人の方々に対する対応など,たくさんの法務省としての取組もありますが,誌面の都合もありますので,これにて失礼いたします。

詳しくは法務省HPを御覧ください。

正直,難しい内容も多いですが・・・驚きました。まだまだ,震災の傷は癒えませんが,皆さんが一致団結して,この危機を乗り越えれたらと思うとともに,私自身も微力ながら震災復興の力になれたらと思います。

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