第5回GGセミナーで「腐敗防止」が議論されました

平成23年12月7日から9日にかけて,国連アジア極東犯罪防止研修所(略称「アジ研」又は「UNAFEI」)の主催する第5回グッドガバナンス(GG)セミナーが,法務省大会議室で開催されました。

GGセミナーは,東南アジア諸国における「法の支配」と「良い統治(グッドガバナンス)」の確立に貢献するため,平成19年度から毎年1回,アジ研が開催しているものです。第1回,第2回はバンコク(タイ)で,第3回,第4回はマニラ(フィリピン)で行われており,我が国における開催は今回が初めてです。

GGセミナーでは,毎回,特定のテーマを設定して議論を行っており,今回は,「腐敗防止のための効果的な方策」を取り上げました。東南アジア8か国(カンボジア,インドネシア,ラオス,マレーシア,ミャンマー,フィリピン,タイ及びベトナム)から各2名の実務家が参加したほか,国連薬物・犯罪事務所(UNODC)及び香港の反汚職独立委員会(ICAC)から客員専門家を招へいし,また,東京開催という条件を活かして,国際協力機構(JICA),公正取引委員会,外務省,金融庁,財務省,人事院といった国内機関からも出席を得ました。

セミナーは,アジ研次長の基調講演で幕を開け,参加各国による国別発表,客員専門家及び国内出席者によるプレゼンテーション,さらに,討議が行われました。UNODC及びICACの専門家からは,腐敗防止に関する国際的な議論の現状や,これまでに蓄積された実績・経験に関する詳細な発表があり,また,国内出席者からは,公務員倫理制度,官製談合規制,公共調達の適正化など,我が国における関連諸制度,取組,実績,課題などが発表されました。討議では,これらを踏まえた内容の濃い意見交換が行われました。特に,客員専門家や国内出席者に対しては数多くの質問が寄せられ,腐敗対策を前進させるための知見を得たいという参加各国の強い意欲が感じられました。最終日には,本セミナーの議長を務めたアジ研次長が総括を発表し,セミナーは盛況のうちに幕を閉じました。

腐敗の克服は世界的な課題であり,各国ともに対策に全力を尽くしています。このようなテーマについて,国際的な議論の場を設けて意見を交わし,経験や知見を共有していくことは,極めて大切です。GGセミナーは,そのためのフォーラムとして重要な役割を担っており,参加各国及び国連関係者からも高く評価されています。

第5回GGセミナーの詳細は,アジ研のホームページに掲載されていますので,是非ご覧ください。次回GGセミナーも本年12月に東京で開催する予定です。



第5回GGセミナー集合写真
同セミナー開催風景(法務省大会議室)


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中国の法制を学ぼう〜第16回日中セミナー

中国ってどんな国?

中国は,広い国土(世界第3位,日本の約25倍)と約13億の人口を擁する世界屈指の大国で,経済面でもGDPで世界第2位です。四大文明の発祥地で,日本とは東シナ海を挟んだ隣国同士ということもあり,昔から日中間の交流は盛んに行われてきました。現在では,日本の企業もどんどん中国に進出し,日中間の経済取引は活発に行われています。

私たちにとってこれほど身近な中国ですが,社会主義国でありながら市場経済を取り入れている中国の法制は,日本企業側からするとまだまだ分からない部分も多いのです。


北京市の天安門

日中セミナーって何?

法務総合研究所は,国家発展改革委員会(中国の行政機関)や財団法人国際民商事法センター(ICCLC),独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)と共催して,1996年から年1回,日中セミナー(正式名称:日中民商事法セミナー)を開催しています。この日中セミナーを通じて,日本側と中国側がお互いに関心のある法制度について情報や意見を交換し,日本と中国の相互理解を深めています。

2011年10月20・21日,東京と大阪の2つの会場で,第16回目の日中セミナーを開催しました。

このセミナーでは,「『中国独占禁止法』適用の現状」と「『中国労働法』適用の現状」の2つをテーマとして取り上げました。難しそうな印象を受けるテーマですが,独占禁止法は,企業による市場の独占や不当な取引制限(カルテル),不公正な取引などを規制し,企業の公正かつ自由な競争を促進するための法律です。労働法は労働者の保護や労使関係の調整を定める法律です。

例えば,日本の大手清涼飲料水メーカー「法務ボトラーズ」(注:名称は架空のものです)が中国に営業所を持ち自社の製品を販売しているとします。法務ボトラーズが,中国での市場拡大を狙って中国で合併をする場合,中国の独占禁止法の適用を受けます。さらに,法務ボトラーズがアメリカの大手清涼飲料水メーカー「あかれんがビバレッジ」(注:名称は架空のものです)と合併する場合,法務ボトラーズとあかれんがビバレッジを合わせた清涼飲料水の販売数が中国市場において大きな割合を占めるようになると,中国独占禁止法の適用を考えなければなりません。また法務ボトラーズは,中国に事業所を有し労働者を雇っていますから,中国労働法の適用を受けます。

このように,この2つの法律の適用や運用は,現在,中国に進出する日本企業の熱い注目を集めているテーマなのです。そのこともあってか,東京の会場には定員を超える多くの参加者が集まりました。

いずれのテーマについても,中国の独占禁止法の立法担当者や労働法制の運用担当者が大変詳しい説明をしてくれました。セミナーの講義録など詳しい内容は,ICCLC発行の機関紙に掲載しています(お問い合わせは,ICCLCのホームページをご覧ください)。


大阪会場の様子

日中セミナーに参加するには?

次回の日本での開催は2013年を予定しています。法務省,ICCLC のホームページにお知らせを掲示しますので,そこから申し込みください(参加費無料)。

(国際協力部教官 江藤美紀音)

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