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「法制度整備支援の現場から」

~地雷とアンコールワットだけじゃないカンボジア~

カンボジアという国名を聞くと,ポルポト派,虐殺,内戦,地雷といった暗いイメージが思い浮かぶ人も多いかもしれません。確かに,カンボジアは世界の多くの国の中でも特に悲しい歴史を背負った国であり,現在でも社会のあちこちにその爪跡が残っています。ですが,カンボジアは暗いイメージだけではありません。カンボジア人はもともと優しく慎ましやかな人々であり,お米やフルーツ,魚介類などのおいしい食べ物に恵まれ,料理の味付けは言わば辛くないタイ料理。最近では首都プノンペンで日本の大型ショッピングモールがオープンするなど,他の東南アジア諸国と同様に目覚ましい経済発展の様相を見せています。

~法制度整備支援と通訳の重要性~

カンボジアでは,日本の支援により民法と民事訴訟法が成立し,既に施行されていますが,それらの法律を十分に理解して使いこなせる人材がまだまだ十分ではありません。そこで法務省では,カンボジアにおいて人材育成のための法制度整備支援プロジェクトを続けています。農業や水産業,道路建設のような「モノ」を使う分野の支援と異なり,法制度整備支援の分野では「言葉」が命ですので,特に通訳が重要となります。法律用語自体が難しいのはもちろんですし,たとえ法律用語を知っていても,その背景にある法律概念や法制度の趣旨をきちんと理解していなければ,適切に通訳をすることはできず,かえって間違ったことを伝えてしまうおそれもあります。そこで私たちは,講義やセミナーなどをする前に,必ず通訳人に事前のレクチャーをして,法律概念や法制度の趣旨について確実に理解をしてもらうように準備をしています。たった一人の通訳人を相手に長い時間をかけてレクチャーをすることは,一見すると遠回りな作業のようにも見えますが,カンボジアの人々に間違ったことを伝えないようにするために重要な作業なのです。

(カンボジア長期派遣専門家 辻 保彦)

アンコールワットの様子

(アンコールワット)

通訳人へのレクチャーの様子

(通訳人へのレクチャー)