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法制度整備支援の現場から

「キラキラ」「ティダアパアパ」「サマサマ」これらは全部,インドネシア語です。それぞれ,「だいたい」「問題ない」「お互いさま」という意味です。これらの単語,インドネシアでは頻繁に耳にします。激しい渋滞,急に決まる休日。きっちりした予定を立てることは不可能です。だから,「キラキラ」9時からミーティングの予定,1時間たってまだ始まらなくても「ティダアパアパ」,「サマサマ」次は自分が遅れるかも。

このようにおおらかな国,インドネシアですが,人口は日本の2倍,資源も豊富で,高い潜在力を持っています。このインドネシアでは,平成27年から,最高裁,法務人権省法規総局及び同省知財総局という3つの機関をカウンターパート(実施機関)とする,「ビジネス環境改善のための知的財産権保護・法的整合性向上プロジェクト」が進行中です。私は,平成29年10月にインドネシアに赴任し,知財事件の処理の予測可能性を高めることを目標に,裁判官の研修,判決集の作成などを手伝っています。

文化の違いを感じることは多々あります。ミーティングの予定変更は日常茶飯事。判決集の原稿の締切が間近でも,悠然と判決の入替えを模索します。でも,「ティダアパアパ」。インドネシア人の辻褄合わせ力は,驚異的なものがあり,意外と何とかなっています。だからこそ成り立つ,時間のおおらかさかもしれません。

他方,一緒に仕事をしていると,法律家としての感覚は共通だと感じます。例えば,インドネシアでは,専門的知識は証人尋問で立証されますが,中立性の問題に悩むそうです。そこで,日本の裁判所調査官の制度を紹介すると,中立性の意味で優れた制度だと思うけど,透明性の面で問題ないのかと質問されました。また,日本の知財判例を紹介したところ,議論の筋道が分かりやすく,参考になると好評でした。

今後も,知財事件の処理の予測可能性を高められるよう,インドネシア最高裁のお手伝いをしていきます。

(インドネシア長期専門家 石神 有吾)

マナド現地セミナーの写真

マナド現地セミナー(平成30年11月)