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自筆証書遺言書保管制度が始まります!

はじめに

本年7月10日から,法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成30年法律第73号。以下「法」という。)に基づく,「自筆証書遺言書保管制度」が始まります。文字どおり「遺言書」を遺言書保管所(法務局)(※1)で保管する制度ですが,具体的にどのようなものなのかご紹介します。

遺言書保管所(法務局)(※1)として,全国312か所の(地方)法務局の本局及び支局(一部出張所含む。)でこの業務を取り扱います。詳細はこちらのURLからご確認できます。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00010.html

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制度の概要

この制度が求められる理由

この制度でお預かりするのは,民法(明治29年法律第89号)第968条の自筆証書によってした遺言に係る遺言書(以下「遺言書」という。)です。

自筆証書遺言には,自書能力さえ備わっていれば他人の力を借りることなく,どこでも作成することができ,特別の費用もかからず,遺言者にとって手軽で自由度が高いというメリットがあります。他方で,作成や保管について他人の関与が不要とされているため,遺言書を紛失したり,遺言者の死亡後,相続人に発見されなかったり,相続人の間で,遺言書の改ざん等を理由に遺言書の成立の真正や遺言の有効性,遺言内容をめぐって紛争が生ずる可能性があるというデメリットがあります。また,自筆証書遺言は,書面化に当たって厳格な方式が定められており,方式不備を理由として無効とされるおそれがあるというデメリットもあります。

そこで,この制度によって,法務局が,遺言者が作成した遺言書について,民法第968条が定める方式に適合しているか,外形的な確認をした上でお預かりすることにより,手軽で自由度が高いというメリットを損なうことなく,紛失や改ざん,方式不備による無効というデメリットを解消することが可能となります。

この制度でできること

1) 遺言者ができること
遺言書の保管の申請

遺言者は,自分で作成した遺言書の保管の申請をすることができます。手数料は,保管年数等にかかわらず,遺言書1通につき,3,900円です。また,遺言書の保管の申請は,遺言者が自ら出頭して行わなければなりません。これは,真正に成立していない遺言書の保管の申請がされることや遺言者の意思に反して遺言書の保管の申請がされることを防止するためです。なお,保管する遺言書は,遺言書原本及び画像データとして適切に長期間(遺言書原本は遺言者の死亡の日から50年間,遺言書の画像データを含む情報は,遺言者の死亡の日から150年間)保管されます。

遺言書等の閲覧

遺言書の保管が開始された後,遺言者は,保管されている遺言書について,原本又はモニターによる閲覧をすることができます。遺言書(原本)の閲覧と違い,モニターによる閲覧は,全国どこの遺言書保管所においても可能です。なお,遺言者の生前は,遺言者以外の方は遺言書等の閲覧をすることはできません。原本の閲覧の手数料は1回1,700円,モニターによる閲覧の手数料は1回1,400円です。

保管の申請の撤回

遺言書の保管が開始された後,遺言者は,いつでも,遺言書を保管している遺言書保管所の遺言書保管官に対して,保管の申請を撤回することができます。この手続には手数料は不要です。

2) 関係相続人等ができること
遺言書情報証明書の交付の請求等

遺言者の死亡後(相続開始後),遺言者の相続人,受遺者,遺言執行者等(以下「関係相続人等」といいます。)は,遺言書の内容を証明する遺言書情報証明書の交付や,自己が遺言者の関係相続人等に該当する遺言書についてその保管の有無等を証明する遺言書保管事実証明書の交付を請求することができます。遺言書情報証明書の手数料は1通1,400円,遺言書保管事実証明書の手数料は1通800円です。

遺言書等の閲覧

遺言者の死亡後(相続開始後),関係相続人等は,遺言書保管所で保管されている遺言書について,原本又はモニターによる閲覧を請求することができます。閲覧の請求をできる遺言書保管所や,必要な手数料については,遺言者による遺言書の閲覧と同様です。

3) その他本制度の特色
通知制度

遺言者が遺言書保管所に遺言書を保管しても,その事実を関係相続人等が知らないと,最終的に遺言書の内容が関係相続人等に伝わらないという事態も考えられます。そこで,遺言書をお預かりする法務局の職員である遺言書保管官は,関係相続人等に対し,遺言書情報証明書を交付し,又は遺言書を閲覧させたときは,その他の関係相続人等に対して遺言書を保管している旨を通知することとされています。

予約

本制度では,遺言書の保管の申請の手続を始めとする,遺言書保管所において行う全ての手続について予約が必要となります。予約は,「法務局手続案内予約サービス」の専用ホームページにおいて24時間365日可能です。予約は,本年7月1日から開始する予定ですが,詳しくは法務省ホームページにてお知らせします。

検認

遺言書保管所において保管されている遺言書については,家庭裁判所の検認は不要となります。

自筆証書遺言書保管制度の利用をぜひご検討ください!

高齢化の進展と共に,次の世代への財産等のスムーズな引継ぎが重要な課題とされています。本制度をきっかけとして,遺言をより身近なものに感じていただき,遺言の利用が進めば,残されたご家族等の遺産に関する権利が早期に確定し,ひいては社会問題化している所有者不明土地問題の対応としての相続登記の容易化にもつながることが期待されています。

ご自身の財産をご家族等へ託す方法の一つとして,遺言書を作成される際には,ぜひ,この自筆証書遺言書保管制度もご活用ください!

自筆証書遺言書保管制度のポスター

自筆証書遺言書保管制度のポスター