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法制度整備支援の現場から

インドネシアにおける活動のご紹介

インドネシア長期専門家 細井 直彰

インドネシアでは,平成27年12月から,最高裁判所,法務人権省知財総局及び同省法規総局という三つの機関を相手方機関とするJICA「ビジネス環境改善のための知的財産権保護・法的整合性向上プロジェクト」が進行中です。このプロジェクトには,法務省から検事2名(うち裁判官出身1名),特許庁から1名の計3名の専門家がアドバイザーとして派遣されており,私は,インドネシアの裁判所における知財事件の処理の予見可能性を高めることを目標に,裁判官の研修,判決集の作成などの支援業務を行っています。

当地インドネシアでは,以前と比べ少なくなってきたと言われるものの,模倣品や海賊版が市場において公然と売られているようで,知的財産侵害品と思しき商品を見かけることがままあります。こうした知的財産侵害品の流通は,法制度を整えれば直ちになくなるというような簡単な問題ではありませんが,もし知的財産権が適切に保護される体制が整っていなければ,先行する事業者の商品開発努力や信用にただ乗りして模倣品等を製造,販売するといった行為を法的に抑止することが困難となり,大きな社会的害悪をもたらすものと考えられます。当地における裁判官向けの研修などでは,こうした観点等から知的財産権保護の重要性を説明し,裁判所が知財事件を処理するに当たっても,知的財産権の本質を理解して適切に知的財産法を適用する必要があるということを理解してもらえるように努めています。

知的財産制度が安定的に運用されてその機能を果たすことは,インドネシアに投資をする外国企業にとってメリットがあるのみならず,インドネシアの国内産業が成長していく上でも重要なことだと思います。人材育成を通じた法運用の改善はすぐに果たせるような易しい課題ではなく,時間のかかる取組ではありますが,当プロジェクトの活動を通じて,インドネシアの法・司法分野の改善に少しでも貢献できればと思っています。

活動写真

活動写真
(令和2年3月に実施したバンダアチェ現地セミナー)