矯正施設で行われている医療

 矯正医療は対象者が収容者であるという特色がある以外は、基本的に一般社会の医療とは異なるものではありません。傷病を有する患者に接し、診断の下に医療措置を講じます。

健康診断

 矯正施設は、被収容者の健康管理を適切に行う責任を負っています。また、矯正施設では多数の被収容者を限られた空間の中で収容していますので、ニ次感染防止には特段の配慮が必要となります。
 これらのことから、矯正施設の長は、入所(院)時健康診断、定期健康診断等の健康を行う義務を負っています。さらに、被収容者は、法律に基づき健康診断のための採血、エックス線撮影その他の医学的処置を拒むことはできないこととなっています。
 なお、刑事施設では、これらの入所時・定期健康診断のほかに、特定健康診査、胃検診、乳がん検診、子宮がん検診なども行われています。

摂食障害治療

 摂食障害とは、体重・体型へのこだわり等の心理的要因に基づく食行動異常を呈する精神疾患の一種です。主に拒食症と過食症の総称で、極端な食事制限や過度な量の食事の摂取等を伴い、それによって患者の健康に様々な問題が引き起こされます。人間関係の問題などの心理的ス卜レスに対する耐性不足や、社会適応性の未発達、コミュニケーションの不全などが原因とされており、依存症と類似した側面もあります。
 摂食障害患者の約6割から8割には、リスト力ットのような自傷行為、アルコール・薬物の乱用、重篤な爪かみ、抜毛といった行為が見られます。また、昨今、摂食障害と常習万引きの関連性について注目されています。
 摂食障害の患者は、不合理な思考にとらわれる性格傾向(強迫傾)が強く、食行動の異常を指摘されても認めなかったり、認めても行動の修正は非常に困難です。矯正施設では、被収容者に対する食事の給与量が決まっているため、過食といった事態は発生しにくいですが、食事を隠匿して居室に持ち込む、 摂取した食事を嘔吐し、再度食べるなどの異常行動を取る者もいます。
 治療としては、行動制限を用いた認知行動療法などが行われています。

手術

 東日本成人矯正医療センター及び西日本成人矯正医療センターでは対応できる患者の手術を行い、一部の大規模刑事施設では比較的低侵襲な手術が必要な患者への対応を行っています。
 矯正施設では、一般・消化器外科(食道癌・胃癌・大腸癌・肝臓癌・膵臓癌・胆石症・ヘルニア・痔疾患など)、内分泌外科(甲状腺疾患・乳癌など)、胸部外科(肺癌・気胸・縦隔腫瘍など)、泌尿器科(腎癌・膀胱癌・TURなど)、血管外科(シャン卜作成術など)、整形外科、 産婦人科、皮膚科、形成外科、耳鼻咽喉科、口腔外科などの手術や、内視鏡的治療(EMR・ESD・ EVL・ EISなど)などが行われています。
 術前管理、術中管理(全身麻酔・硬膜外麻酔・腰椎麻酔など)、集中治療室での管理を含めた術後管理が関係各科の専門職員による緊密な協力体制のもとで行われています。
 また、がんなどの悪性疾患に対しては、術前・術後化学療法を含めた集学的治療を行っています。

緩和ケア

 昨今の矯正施設では、高齢受刑者の増加とともに慢性疾患の割合が増加し、受刑中にがんなどの慢性疾患に罹患し、あるいは検査により発見されて、その後、死亡する患者も少なくありません。
 社会では身体の痛み等の不快な症状の緩和とともに心の痛みにも目を留めて、全人的ケアを行うという「緩和ケア」の考えが認知され、理解が徐々に広がりつつありますが、こうした流れは、矯正施設においても例外ではなく、近年、緩和ケア専門医師を非常勤で配置し、 医薬用麻薬やステロイド等を併用したりすることにより、患者の症状を緩和し、終末期であっても患者の希望があれば、入浴や運動を実施し、行事に参加させています。

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