
第2節 住居の確保等
(1)更生保護施設における受入れ・処遇機能の充実【施策番号26】
法務省は、出所後の適当な住居等がない刑務所出所者等を更生保護施設※30で一時的に受け入れて、社会適応に必要な生活指導を行うなど、刑務所出所者等の居場所の確保に取り組んでいる。2022年度(令和4年度)の更生保護施設への委託実人員は6,565人(前年度:6,811人)であり、そのうち、新たに委託を開始した人員は5,120人(前年度:5,315人)であった。また、1日当たり1人を単位とした年間収容延べ人員は52万5,233人(前年度:54万2,407人)で、1人当たりの平均委託期間は80.0日(前年度:79.6日)であった。法務省は、刑務所出所者等がそれぞれの問題性に応じた支援を受けられるよう、更生保護施設のうち一部を、高齢・障害者等を積極的に受け入れる指定更生保護施設や、薬物依存からの回復を支援する薬物処遇重点実施更生保護施設に指定した上で、これらの施設に、専門の職員を配置すること等により更生保護施設の受入れ及び処遇機能の充実を図っている(指定更生保護施設については【施策番号37】を、薬物処遇重点実施更生保護施設については【施策番号46】を参照)。
また、2023年(令和5年)4月からは、新たに、保護観察所が更生保護施設に対して、入所者や施設を退所した者等の特性に応じた多様な措置(特定補導)の委託を開始している(資2-26-1参照)。

(2)更生保護施設における処遇の基準等の見直し【施策番号27】
法務省は、2019年(平成31年)3月、学識経験者等を構成員とする有識者検討会から、更生保護施設における処遇や支援の充実強化等を内容とする「これからの更生保護事業※31に関する提言」※32を得た。提言においては、更生保護施設退所者へのフォローアップの重要性等についての指摘がなされ、これを更生保護施設の処遇の一部として明確に位置付けるための制度の充実や見直し等が求められた。これを踏まえ、更生保護施設退所後の支援の充実を図るため、2021年(令和3年)10月から、全国8施設において、更生保護施設退所者等の自宅等を訪問するなどして継続的な支援を行い、これらの者の改善更生や地域定着を図ることを目的とする訪問支援事業を開始した。2023年(令和5年)4月からは3施設を新たに指定し、全国11施設において支援を行っている(【施策番号94】参照)。
(3)自立準備ホームの確保と活用【施策番号28】
法務省は、社会の中に多様な居場所を確保する方策として、「緊急的住居確保・自立支援対策」(資2-28-1参照)を実施しており、保護観察所が、更生保護施設以外のあらかじめ保護観察所に登録された民間法人・団体等に、保護観察対象者等に対する宿泊場所※33や食事の提供、生活支援(自立準備支援)を委託している。2022年度(令和4年度)の委託実人員は1,868人(前年度:1,863人)(そのうち、新たに委託を開始した人員は1,514人(前年度:1,474人))、1日当たり1人を単位とした年間収容延べ人員は12万7,486人(前年度:12万9,198人)であり、1人当たりの平均委託期間は68.2日(前年度:69.3日)であった。

- ※30 更生保護施設
更生保護事業法(平成7年法律第86号)第2条第7項に定める施設で、主に保護観察所からの委託を受けて、住居がない、頼るべき人がいないなどの理由で直ちに自立することが難しい保護観察対象者や更生緊急保護(【施策番号33】参照)の対象者を受け入れて、宿泊場所や食事の提供、社会復帰のための就職援助や生活指導、施設退所者に対する通所又は訪問による支援等を行う。
2023年(令和5年)4月現在、全国に102施設あり、更生保護法人(同法第2条第6項に定める法人で、更生保護施設の運営など更生保護事業(【施策番号27】参照)を営むことを目的とする団体が、同法の規定に基づき、法務大臣の認可を受けて設立する法人)により99施設が運営されているほか、社会福祉法人、特定非営利活動法人及び一般社団法人により、それぞれ1施設が運営されている。その内訳は、男性のみ受け入れている施設が87施設、女性のみ受け入れている施設が7施設、男女とも受け入れている施設が8施設となっている。収容定員の総計は2,399人であり、男性が成人1,884人と少年318人、女性が成人150人と少年47人である。 - ※31 更生保護事業
更生保護事業法第2条第1項に定める事業で、「継続保護事業」、「一時保護事業」及び「連絡助成事業」をいう。
継続保護事業とは、保護観察対象者等を更生保護施設に収容して、宿泊場所を供与し、必要な生活指導等を行い、その改善更生に必要な保護を行う事業。
一時保護事業とは、保護観察対象者等に対し、宿泊場所への帰住、医療又は就職を助け、金品を給与し、又は貸与し、生活の相談に応ずる等その改善更生に必要な保護(継続保護事業として行うものを除く。)を行う事業。
連絡助成事業とは、継続保護事業、一時保護事業その他保護観察対象者等の改善更生を助けることを目的とする事業に関する啓発、連絡、調整又は助成を行う事業。
なお、これらの更生保護事業については、2022年(令和4年)6月に成立した刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)による更生保護事業法の改正により、「継続保護事業」を「宿泊型保護事業」に、「一時保護事業」を「通所・訪問型保護事業」に、「連絡助成事業」を「地域連携・助成事業」にそれぞれ改めることとされた。本改正については、令和5年12月1日に施行することとされた。 - ※32 「これからの更生保護事業に関する提言」関係資料URL
https://www.moj.go.jp/hogo1/soumu/hogo12_00002.html
(法務省ホームページ「これからの更生保護事業に関する有識者検討会について」ページへリンク。) - ※33 自立準備ホーム
「緊急的住居確保・自立支援対策」に基づき、保護観察対象者等に対して、民間法人・団体等が提供する宿泊場所を「自立準備ホーム」と呼ぶ。2023年(令和5年)4月現在の登録事業者数は506事業者であり、その内訳は、特定非営利活動法人が163事業者、会社法人が135事業者、宗教法人が42事業者、その他が166事業者となっており、多様な法人・団体が登録されている。