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第1節 学校等と連携した修学支援の実施等

3 学校や地域社会において再び学ぶための支援

(1)学校や地域社会における修学支援【施策番号48】

 法務省は、保護観察所において、保護司やBBS会等の民間ボランティアと連携し、保護観察対象者に対し、例えばBBS会員による「ともだち活動」※14としての学習支援、保護司による学習相談や進路に関する助言等を実施している。また、類型別処遇(【施策番号62】参照)における「就学」類型に該当する中途退学者等の保護観察対象者に対しては、処遇指針である「類型別処遇ガイドライン」を踏まえ、就学意欲の喚起や就学に向けた学校等の関係機関との連携、学習支援等の処遇を実施している。さらに、2023年度(令和5年度)から、修学の継続のために支援が必要と認められる保護観察対象者に対し、個々の抱える課題や実情等に応じた様々な修学支援を複合的に実施する「修学支援パッケージ」を実施している(資4-48-1参照)。

 文部科学省は、2017年度(平成29年度)から、学力格差の解消及び中途退学者等の進学・就労に資するよう、中途退学者等を対象に、高等学校卒業程度の学力を身に付けさせるための学習相談及び学習支援のモデルとなる取組について実践研究を行うとともに、2020年度(令和2年度)からその研究成果の全国展開を図るための事業(地域における学びを通じたステップアップ支援促進事業)を実施しており、2023年度においては、6つの地方公共団体(群馬県、愛知県、京都府、高知県、大分県及び札幌市)が同事業を実施した(資4-48-2参照)。

資4-48-1 保護観察所における修学支援パッケージ
資4-48-1 保護観察所における修学支援パッケージ
資4-48-2 地域における学びを通じたステップアップ支援促進事業等の概要
資4-48-2 地域における学びを通じたステップアップ支援促進事業等の概要

(2)矯正施設・保護観察所職員と学校関係者の相互理解の促進等【施策番号49】

 法務省及び文部科学省は、矯正施設・保護観察所の職員と学校関係者との相互理解を深めるため、学校関係者に対し、矯正施設・保護観察所の職員を講師とした研修を積極的に実施するよう周知している。

再犯防止に向けた『WORK FIT』による修学支援・就労支援

株式会社リクルート

 株式会社リクルート(以下「当社」という。)は、「新しい価値の創造を通じ、社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指す」という基本理念の下、創業以来、社会に潜む様々な不(不満・不安・不便)を解消するために新しい仕組みやサービスを生み出してきました。『WORK FIT』 は、当社が取り組む、全ての人が自分らしく“WORK”を見つけるための社会貢献活動です。当社の人材領域の事業を通して培ったノウハウや知見を生かし、就職活動したくてもなかなか動き出せない、結果が出ない若者に向けて、就職活動に前向きに取り組むきっかけを提供する就労支援やキャリア教育のプログラムです。

再犯防止に向けた『WORK FIT』による修学支援・就労支援

 これまで、少年院における出院準備教育の一環として、自分の強みを整理し、1分間のスピーチで伝えてみるワークショップや、刑務所における就労支援の取組の一つとして、参加者同士の関わりの中で自分らしさについて考えるワークショップ等を提供してきました。社会での生活に向けて、自分自身と向き合う機会を作り、小さな成功体験を通じて自信をつけてほしいという思いから開発したプログラムです。矯正施設の中では異色のプログラムのようで、参加者からは「自分に強みなんてないと思っていたけれど、周りの人の力も借りて自分の強みに気づけた」、「周りの人から私の『自分らしさ』を伝えてもらえてうれしかった」といった感想が多く、自己肯定感の醸成にわずかながらも寄与できているのではないかと感じています。

ワークショップの様子

 2022年度(令和4年度)からは、法務省との協働で保護観察対象者向けのキャリア教育ツール『CANVAS』の開発を進めています。再犯防止には修学や就労が鍵となるので、社会復帰後、修学や就労を継続させるためにも、保護観察の中で、修学への動機付けや将来の希望に基づき、生活基盤の安定を図る指導をしていく必要があると考えました。

CANVAS ワークⅡ表紙

 保護観察対象者と保護観察官との面談の中で活用いただけるプログラムとして開発している『CANVAS』は、「自分のこれまでを考えてみよう」と「自分のこれからを考えてみよう」の二つのパートで構成されています。当社は、「自分のこれからを考えてみよう」のパートを開発しています。カードワークを取り入れ、自分が挑戦してみたいと思う仕事や自分には難しそうだと思う仕事を言葉にしてみたり、保護観察を経て働いている方のインタビュー記事を読んでみたり、いくつかのヒントを得た上で、最後は、自分がやってみたいと思ったことを言葉にしてもらっています。「将来〇〇になりたい」といったことをここで決める必要はありません。どんな小さなことでもいいので、そのときの自分がやってみたいと感じたことを言葉で残してもらうことで、残りの保護観察期間中、より有意義な支援につなげられればと思っています。『CANVAS』は、2023年度(令和5年度)から保護観察所での試行活用が始まり、プログラムの内容や運用方法もまだまだ改善途上ですが、活用いただいた保護観察官の方からは、「対象者の自己理解が進むだけではなく、保護観察官にとっても対象者理解が深まった」、「対象者の興味が具体的になり、意欲を引き出すことにつながった」という声もいただきました。   

 こうした取組がきっかけとなり、2024年(令和6年)7月12日、法務省と当社は、再犯防止を推進し、安全・安心な社会を実現することに向けた連携協定を締結しました。『WORK FIT』のプログラムを通じた体験が、自信や自己肯定感につながり、再犯防止に少しでも寄与できるよう、今後も支援を続けていきます。

協定締結の際の大臣表敬時の写真
  1. ※ CANVAS(Career education for Appreciating New Values and Adventurously Sailing against the wind)
    修学支援パッケージ(【施策番号48】参照)の実効性を高めるため、保護観察対象者の修学・就労への動機付けを高めることを目的に開発した、発達支援ツール。
  1. ※14 ともだち活動
    BBS会員が、非行のある少年等生きづらさを抱えるこども・若者と「ともだち」になることを通して、それぞれの立ち直りや再チャレンジを支え、自分らしく前向きに生きていくことを促す活動。