
第1節 地方公共団体との連携強化等
(1)犯罪をした者等の支援等に必要な情報の提供【施策番号80】
法務省は、地方公共団体が犯罪をした者等の支援を円滑に実施できるよう、矯正施設及び保護観察所において、地方公共団体の求めに応じ、当該団体が犯罪をした者等の支援等を行うために必要な情報について、個人情報等の取扱いに十分配慮しつつ、適切に提供している。
例えば、大阪府及び福岡県においては、条例により一定の性犯罪者に住所の届出義務を課し、それを通じて性犯罪者の所在を把握した上で、性犯罪者に対する社会復帰支援等を行うという再犯防止の取組が進められており、法務省としても、それらの府県が、条例で定める対象者であることを確認できるようにするための情報提供を始め、必要な協力を行っている。
また、検察庁においては、入口支援を実施するに当たり、犯罪をした者等の再犯防止を実現するため、関係機関等と十分なコミュニケーションを図りつつ、関係機関等に対し、適切な情報提供を行うこととしている。
さらに、矯正局では、2022年(令和4年)9月から、今後、再犯防止を一層推進していくに当たっては、矯正施設が被収容者に関する情報を適切かつ効果的に関係機関等との間で共有し、被収容者の立ち直りを支えていくことが極めて重要であるとし、被収容者等の同意がある場合において、再犯防止に資すると認められるときは、関係機関等への適切な情報提供を積極的に行うこととしている。
加えて、保護局では、これまでも保護観察所等において、個人情報の適切な取扱いに留意しつつ、地方公共団体等が犯罪をした者等への支援を行うに当たり必要な情報について、当該犯罪をした者等の同意を得るなどした上で、地方公共団体等への提供を行ってきたところ、2024年(令和6年)3月、保護観察所等において犯罪をした者等に対する処遇等を実施する中で得られた情報は、その者に対する支援を行う地方公共団体にとっても有用性が高く、これらの情報を適切に共有することは、再犯等の防止を推進する上でも有意義であることを踏まえ、改めて、これらの情報を地方公共団体に提供するに当たっての留意事項等を取りまとめ、更生保護官署に通知した。
(2)再犯の防止等の推進に関する知見等の提供及び地方公共団体間の情報共有等の推進【施策番号81】
法務省は、2018年度(平成30年度)及び2019年度(令和元年度)、再犯防止の取組における国及び市町村間のネットワークの構築等を目的として、市区町村の施策担当者を対象に市町村再犯防止等推進会議を開催するとともに、都道府県の施策担当者を対象に、再犯防止の取組等の情報共有を目的とした都道府県再犯防止等推進会議を開催した。2021年度(令和3年度)からは、地方における再犯防止の取組において蓄積された成果や課題等を全ての地方公共団体へ共有し、更なる取組の促進を図ることを目的に、地方公共団体における再犯防止の取組を促進するための協議会として、「全国会議※2」(対象:都道府県及び指定都市)及び全国6ブロックにおける「ブロック協議会※3」(対象:ブロック内の都道府県及び市区町村)を開催している。2023年度(令和5年度)は、「全国会議」をオンラインにて、「ブロック協議会」を対面及びオンラインのハイブリッド形式にてそれぞれ実施した。
また、職員を地方公共団体、司法関係団体等が開催する研修やシンポジウム等に講師として派遣するなどし、地方公共団体の職員や犯罪をした者等の支援を行う関係者等に対して、法務省における取組や支援に関する知見等を提供している。
さらに、矯正管区においては、2023年度から、矯正官署における再犯防止、地域連携等の取組について、地方公共団体や関係機関等の職員を主な対象として情報を提供する「地域連携セミナー」を実施している。
加えて、法務総合研究所では、毎年、研究部報告や犯罪白書において、犯罪をした者等に関する調査研究の成果を取りまとめ、公表している。2023年度には、研究部報告65「非行少年と生育環境に関する研究」(同年6月発刊)※4及び令和5年版犯罪白書※5の特集「非行少年と生育環境」(同年12月公表)において、いずれも非行少年の処遇や再犯・再非行防止に向けた取組を進めるための基礎資料を提供し、研究部報告66「女性犯罪者に関する総合的研究」(2024年(令和6年)3月発刊)※6において、女性犯罪者の処遇や再犯防止に向けた取組を進めるための基礎資料を提供した(【施策番号92】参照)。
(3)地域のネットワークにおける取組の支援【施策番号82】
一部の地方公共団体においては、刑事司法関係機関の職員、支援を行う民間団体の職員等を構成員とする会議体を設置し、再犯防止に係る取組の実施状況・課題の把握や対策の検討等を行っている。
法務省は、こうした会議への職員の参画や必要な情報提供等を通じて、公的機関や保健医療・福祉関係機関、各種の民間団体等の地域の多様な機関・団体におけるネットワークの構築や連携を支援している。2021年度(令和3年度)以降、これらの取組を更に促進するため、地方公共団体を対象とした全国会議及びブロック協議会(【施策番号81】参照)を開催している。
また、一部の保護観察所においては、2022年(令和4年)10月から実施している「更生保護地域連携拠点事業」(【施策番号84】参照)を通じて、地方公共団体を含めた地域支援体制の整備や支援者支援に取り組んでいる。
さらに、保護観察所においては、更生保護に関する地域援助(【施策番号83】参照)により、地方公共団体を始め、地域社会において犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生並びに犯罪の予防に資する支援等を行う関係機関・団体に対する援助として、更生保護に関する専門的知識を活用し、これらの関係機関等が支援している者への対応、更生保護又は犯罪予防に関する研修、広報等に係る必要な情報の提供、助言等を行うとともに、支援対象者が地域において必要な支援を円滑かつ継続的に受けるために必要な都道府県単位又は市区町村等の地域単位における関係機関等との連携体制の構築のための働き掛けを実施している(実績については【施策番号83】参照)。
- ※2 全国会議
地方における再犯防止の取組において蓄積された成果や課題等を全ての地方公共団体へ共有し、都道府県・指定都市による更なる取組の促進を図るもの。 - ※3 ブロック協議会
全国会議の開催を受け、全国6ブロックにおいて、再犯防止の取組を進める地方公共団体に対し、情報提供や意見交換等を実施するもの。 - ※4 研究部報告65「非行少年と生育環境に関する研究」
https://www.moj.go.jp/housouken/housouken03_00120.html - ※5 犯罪白書
各年の犯罪白書の全文を公表している
https://www.moj.go.jp/housouken/houso_hakusho2.html - ※6 研究部報告66「女性犯罪者に関する総合的研究」
https://www.moj.go.jp/housouken/housouken03_00129.html