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第2節 新たなステークホルダーの取組

事例4 静岡市

 第二次再犯防止推進計画では、再犯防止分野において、国、都道府県及び市区町村が担う具体的役割について明記されており、市区町村は、地域住民に最も身近な地方公共団体として、福祉等の各種行政サービスを必要とする者、とりわけ、こうしたサービスへのアクセスが困難である者等に対して適切にサービスを実施することとされている。静岡市は、再犯防止分野に理解のある市民を増やすことを目的として、令和5年度から「再犯防止に関する支援者養成講座」を実施している。この静岡市の取組は、市民を対象として、再犯防止に関わるステークホルダーの輪を広げようとするものでもあると言える。

語り:静岡市保健福祉長寿局健康福祉部福祉総務課 三室 智吉さん

濱  卓也さん

再犯防止に関する支援者養成講座受講者 鈴木いづみさん

1.講座の概要について教えてください。

 (三室さん)

 当市の「再犯防止に関する支援者養成講座」は令和5年度から実施しており、令和7年度で3年度目となります。静岡市内に居住する又は通勤・通学する方で、再犯防止に関心のある方を受講対象として募集させていただきました。

 講座の目的として、「市民が市民に寄り添う再犯防止推進」を掲げ、再犯防止や更生保護制度に理解のある市民の増加を図ることとしています。また、講座終了時に、再犯防止の推進に携わりたいと希望していただいた方を、本市が「静岡市再犯防止推進員」に任命しています。静岡市再犯防止推進員の方々には、満期釈放者や起訴猶予処分で保護観察が付かない人等を対象に、支援機関につなぐための最初の支援をサポートしていただいています。

 講座の内容については、実施年度ごとに若干マイナーチェンジを行っていますが、令和6年度は7単元分を実施しました。実施概要は次のとおりです。

実施概要

2.どのような検討を行い、この講座の開設に至りましたか。また、この講座の成果について教えてください。

 (濱さん)

 当市では、令和3年度から、保護司(【施策番号64~68】参照)の皆さんに、静岡市再犯防止推進員として、満期出所した方たちを福祉支援等の窓口につなぐ役割を担ってもらう事業と、生活の基盤が不安定な方に対する伴走型支援等のサポートを行う事業を実施しています。一方で、犯罪をしてしまった人への支援を求めるだけでなく、そもそも、市民の皆さんに再犯防止分野に興味を持ってもらうための広報・啓発を進めていくことも重要ではないかと考え、令和5年度からこの講座を実施することとしました。

 再犯防止に関心を持ってもらい、付き添い支援等を理解し、将来的には保護司についても関心を持っていただくことを視野に入れています。

 これまでの成果として、令和5年度については、修了者15名のうち4名の方を、また、令和6年度については、修了者15名のうち5名の方を、御本人の希望に基づいて静岡市再犯防止推進員に任命させていただきました。静岡市再犯防止推進員は年々着実に増えています。

3.実際に講座を受けた感想について教えてください。

 (鈴木さん)

 私は、当講座を受講し、現在は静岡市再犯防止推進員として付添い支援活動に携わっています。講座を受けたり、実際に支援を行ったりする中で思うのは、人が犯罪をしてしまう状況と、そうではない状況は紙一重であり、誰もが犯罪者になる可能性があるということです。

 また、再犯防止に向けた支援を行う立場としては、犯罪の背景にある、家庭崩壊や貧困、薬物依存等の多面的な問題について理解した上で、当事者に寄り添っていく必要があると考えています。

 講座の中では、薬物依存症者の自助グループであるダルク(【施策番号71】参照)の方の話を聞く機会がありました。私個人としても、支援されている立場の方の声を聞いてみたかったこともありましたので、色々と質問をさせていただきました。そのときのことは、支援活動を行っている現在でも時折思い出すなど、非常に印象に残っています。

4.一般の方に再犯防止分野に広く関心を持っていただくためにはどのようなことが必要でしょうか。

 (鈴木さん)

 一般の企業では、年に一度、防災訓練を行うことがあると思いますが、それと同様に、会社の行事として再犯防止のための集会等を定期的に行うことができたら良いのではないかと思います。例えば、地域で再犯防止のための活動をしている方の紹介や、再犯防止に関する広報のビデオ等を社員に見てもらうといった取組もいいかもしれません。静岡市や浜松市には、様々なバックボーンを持っている方も多くいらっしゃるので、そのような行事の中で関心を持った方々が、再犯防止の活動に協力してくれるようになれば、地域における再犯防止の取組がより良いものになるのではないかと思います。

5.当講座の今後の展望について教えてください。

 (三室さん)

 現在は、鈴木さんのような講座を受講した静岡市再犯防止推進員の方々に、刑事施設を出所してから、支援機関につながるまでの付添い支援等を行っていただいています。しかし、こうした支援により、出所者の方々にとって、一時的には安定した生活環境が整ったとしても、その生活を長期的に維持できるかという点については懸念が残ります。そのため、支援を受けた方がもっと長いスパンで生活を維持できるように、静岡市再犯防止推進員の方にもっと長期的に関わっていただくことができないかということを考えています。そのような観点から、令和8年度以降の支援者養成講座の編成や静岡市再犯防止推進員の取組についても、より良いものにできるよう、引き続き検討していきたいです。