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第1節 就労の確保等

2 就職に向けた相談・支援等の充実

(1)刑務所出所者等総合的就労支援を中心とした就労支援の充実【施策番号5】

ア 刑務所出所者等総合的就労支援対策

 法務省及び厚生労働省は、2006年度(平成18年度)から、刑務所出所者等の就労の確保のため、刑務所出所者等総合的就労支援対策(資2-5-1参照)を実施している。この取組は、矯正施設在所者に対しては、ハローワークと矯正施設が連携して、本人の希望や適性等に応じて職業相談、職業紹介、事業主との採用面接及び職業講話等を実施するなどして計画的に支援を行うとともに、保護観察対象者等に対しては、ハローワーク職員が保護観察官とチームを作り、本人に適した就労支援の方法を検討した上で、職業相談・職業紹介を実施するものである。2020年度(令和2年度)は合計6,947人に対して支援を実施し、合計3,194件の就職に結び付けた(【指標番号5】参照)。

 また、保護観察所とハローワークが連携して、求職活動のノウハウ等を修得させ、就職の実現を図ることを目的とする「セミナー」、実際の職場や社員寮等を見学させることにより、事業所の理解の促進を図る「事業所見学会」、実際の職場環境や業務を体験させる「職場体験講習」、保護観察対象者等を試行的に雇用した協力雇用主に対し、最長3か月間、月額4万円(最大)を支給する「トライアル雇用」等の支援メニューを提供している。2020年度は、セミナー・事業所見学会17回、職場体験講習2回を開催し、トライアル雇用により216人が採用された。

資2-5-1 刑務所出所者等総合的就労支援対策の概要
資2-5-1 刑務所出所者等総合的就労支援対策の概要

イ 矯正就労支援情報センター室(コレワーク)

 法務省は、2016年(平成28年)11月から、東京矯正管区及び大阪矯正管区にそれぞれ矯正就労支援情報センター室(通称「コレワーク」。以下「コレワーク」という。資2-5-2、資2-5-3参照)を設置しているが、2020年度からは、札幌、仙台、名古屋、広島、高松及び福岡矯正管区にもコレワークを設置し、各矯正管区が所管する地域の雇用情勢等に応じた、よりきめ細かな支援体制等の充実を図っている。

 コレワークでは、受刑者等の帰住予定地※9や取得資格等の情報を一括管理し、出所者等の雇用を希望する事業者の相談に応じ、事業者のニーズに適合する者を収容する矯正施設等を紹介するなどしており、2020年度は、事業者からの相談を1,715件受け付け、118件の採用内定に結び付けた。

資2-5-2 コレワークのポスター
資2-5-2 コレワークのポスター
資2-5-3 矯正就労支援情報センター室(コレワーク)の概要
資2-5-3 矯正就労支援情報センター室(コレワーク)の概要

ウ 更生保護就労支援事業

 法務省は、保護観察所において、2011年度(平成23年度)から試行的に実施した成果を踏まえて、2014年度(平成26年度)から、更生保護就労支援事業(資2-5-4参照)を実施しており、2014年度における実施庁は12庁であったが、2021年度(令和3年度)は、23庁に拡充している(このうち3庁での事業は更生保護被災地域就労支援対策強化事業と位置付けられている。)。この事業は、就労支援に関するノウハウや企業ネットワーク等を有する民間の事業者が、保護観察所から委託を受けて、そのノウハウを活用して刑務所出所者等の就労支援を行うものである。具体的には、矯正施設在所中から就職まで切れ目のないきめ細かな就労支援を行う「就職活動支援」及び就労継続に必要な寄り添い型の支援を協力雇用主及び保護観察対象者等の双方に行う「職場定着支援」の各取組を行っており、2020年度は、就職活動支援2,127件、職場定着支援1,167件を実施した。なお、2019年度(令和元年度)までは、協力雇用主の開拓、協力雇用主研修の実施等の「雇用基盤整備」の各取組を行っていたが、就労を維持するための継続的な支援の必要性が高いことから、2020年度からは「雇用基盤整備」に代えて、「職場定着支援」を実施している。

資2-5-4 更生保護就労支援事業の概要
資2-5-4 更生保護就労支援事業の概要

エ その他

 法務省は、矯正施設において、2014年2月から、刑務所出所者等の採用を希望する事業者が、矯正施設を指定した上でハローワークに求人票を提出することができる「受刑者等専用求人」の運用を行っている。

 2015年度(平成27年度)からは、ハローワーク職員が「就労支援強化矯正施設」に指定された刑事施設に相談員として駐在して支援を実施する取組も開始している。この取組では、刑事施設に駐在しているハローワーク職員が、受刑者に対して複数回にわたる職業相談・職業紹介等を実施するとともに、本人の帰住予定地に所在するハローワークとも連携するなどして、早期の段階から濃密な支援を実施しており、2021年度は刑事施設35庁、少年施設1庁に駐在している。

 また、2018年度(平成30年度)からは、ハローワークと連携して、矯正施設に刑務所出所者等の雇用を希望する事業者を招き、企業情報の提供や合同での採用面接等を行う「就労支援説明会」を開催し、事業者と就職を希望する受刑者とのマッチングの促進に努めている(写真2-5-1参照)。2020年度は、「就労支援説明会」を延べ51回開催し、これに、延べ4,629人の受刑者等が参加しており、9件の採用内定に結び付けた。

 さらに、法務省及び国土交通省は、刑務所出所者等を対象とした船員の求人情報の共有等の就労支援を実施している。

写真2-5-1 就労支援説明会の様子
写真2-5-1 就労支援説明会の様子

(2)非行少年に対する就労支援【施策番号6】

 警察は、非行少年を生まない社会づくり(【施策番号60】参照)の一環として、問題を抱え非行に走る可能性がある少年に積極的に連絡し、地域の人々と連携した多様な活動機会の提供や居場所づくりのための取組等によってその立ち直りを図る「少年に手を差し伸べる立ち直り支援活動」を推進している。

 そうした取組の一環として、少年サポートセンター※10が主体となって、就労を希望する少年に対し、就職や就労継続に向けた支援を行っている(写真2-6-1参照)。

写真2-6-1 就労支援の様子
写真2-6-1 就労支援の様子
  1. ※9 帰住予定地
    刑事施設、少年院に収容されている者が釈放された後に居住する予定の住居の所在地をいう。
  2. ※10 少年サポートセンター
    都道府県警察に設置され、少年補導職員を中心に非行防止に向けた取組を行っている。