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第3節 地方公共団体や民間協力者による取組

4 民間協力者3(保護司)

(1)序論

 保護司は、犯罪をした人又は非行のある少年が、実社会の中で健全な一員として更生するよう、保護観察官と協働して保護観察等を行うなど、更生保護の中核の役割を果たしており、地域社会の安全・安心にとって欠くことのできない存在である。

 2021年(令和3年)3月、京都コングレスのサイドイベントとして開催した「世界保護司会議」では、「世界保護司デー」の創設等を盛り込んだ「京都保護司宣言」が採択され、我が国の保護司制度は“HOGOSHI”として、国際的な評価と共感を得ることとなった。

 しかし、近年、保護司数は減少の一途をたどり、高齢化も進んでいる。その背景には、人口の減少や地域における人間関係の希薄化といった社会的要因に加え、保護司活動に伴う不安や負担が大きいことが指摘されており、保護司制度の維持が危惧される状況にある。(特3-4-1、特3-4-2参照)

 こうした状況を踏まえ、地域社会の変化に適応し、幅広い世代から多様な人材を保護司として迎え入れ、やりがいを持って長く活動できるよう、保護司活動に対する支援に取り組む必要がある。

(2)指標

特3-4-1 保護司数の推移
特3-4-1 保護司数の推移
特3-4-2 保護司年齢別構成の推移
特3-4-2 保護司年齢別構成の推移

(3)主な取組

 法務省において、保護司活動に対する支援のために進めてきた主な取組は、以下のとおりである。

ア 保護司の活動場所の整備

 保護司会を始めとする更生保護関係団体の活動の一層の充実強化を図ることを目的とした「更生保護サポートセンター」(【施策番号93】参照)を、2019年度(令和元年度)までに、全ての保護司会に整備した。多くの更生保護サポートセンターが面接室を備えているほか、保護司会活動の活性化や地域のネットワーク構築の拠点としても機能している。さらに、その立地条件や開所時間による制約を補うため、2021年(令和3年)7月以降、2022年(令和4年)4月までに、全国886の保護司会のうち103の保護司会で887か所の公共施設を、新たに面接場所として確保した。

イ 保護司活動のデジタル化の推進

 従来、保護司が保護観察所に提出する報告書は、情報セキュリティの観点から手書きにより作成しており、この作業は、保護司にとって大きな負担であった。これを踏まえ、2021年度(令和3年度)から、こうした報告書の提出などを、情報セキュリティを確保した上で、インターネットを通じて行うことができる保護司専用ホームページ(通称“H@(はあと)”)の運用を開始し、インターネット端末を所持していない保護司に貸与するためのタブレット端末を一部の保護司会に配備するなど、保護司活動のデジタル化に着手した。

 2022年(令和4年)7月1日現在、約1万5,500人の保護司がH@の利用を開始している。

ウ 保護司の複数指名の積極的な実施

 2021年(令和3年)3月、保護観察及び生活環境調整の事件における担当保護司を複数指名することにより、保護司の負担軽減や適切な役割分担による処遇の充実等を図る「保護司の複数指名」(【施策番号90】参照)を積極的に実施することを全国の保護観察所に通達し、同年6月からその運用を開始した。

 2021年度(令和3年度)は、保護観察1,267件、生活環境調整1,089件において、担当保護司の複数指名を行った。

エ 地方公共団体からの協力の確保

 2021年(令和3年)7月、総務省と法務省の連名により、全国の地方公共団体の首長に対し、①保護司適任者に関する情報提供及び職員の推薦等、②保護司が自宅以外で面接できる場所の確保、③保護司を始めとする更生保護ボランティアに対する顕彰等、④保護司確保に協力した事業主に対する優遇措置、⑤地方再犯防止推進計画の策定等における配慮、といった、保護司活動に対する支援を依頼する文書を発出した。これを踏まえて、各保護観察所において、管内の地方公共団体宛てに、個別に協力依頼を行っている。

(4)今後の課題と展望

 以上のとおり、保護司適任者の確保に向け、さまざまな取組を進めてきたところだが、なお保護司数の減少傾向及び高齢化が解消されたとは言い難い状況にある。保護司制度を将来に向けて持続可能なものとしていくためには、引き続き、保護司活動に伴う負担の軽減や活動基盤の強化といった保護司活動に対する支援を通じて、保護司適任者の確保を進めていくとともに、将来に向けて持続可能な保護司制度の在り方について、中長期的視点から検討していく必要がある。

【再犯防止推進計画等検討会 有識者委員からの講評】

森久保康男委員(更生保護法人全国保護司連盟副理事長)

 私は、保護司活動は、人と人とのつながりを取り持つ活動だと思っています。どんな問題を抱えた人であっても、信じて見守ることの大切さを実感しているからこそ、辛抱強く取り組んで来られましたし、そこにやりがいも感じてきました。

 足下を見れば、なり手不足の問題を抱える保護司制度ですが、近年は、「再犯防止推進計画」(平成29年12月15日閣議決定)の後押しを得て、保護司適任者を確保するための取組を、全力で進めてきました。いまだ課題は多く、道半ばではありますが、私は、この素晴らしい保護司制度を、変わりゆく地域社会にあっても、常にやりがいをもって活動できるものであるよう、しっかりと次の世代に継承したいと思っています。

 そのためには、次の5か年においては、これまでに行ってきた保護司活動に対する支援の取組を更に強力に進めていくことに加えて、保護司の待遇や活動環境、年齢条件の在り方など、制度の骨格に関することも含めて、検討する必要があると考えています。

 引き続き、再犯防止推進計画等検討会での議論に微力を尽くしてまいります。