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人権教育・啓発に関する基本計画 (中間取りまとめ)

第2章 人権教育・啓発の現状

1  人権を取り巻く情勢

○特に,女性,子ども,高齢者,障害者,同和問題,アイヌの人々,外国人,HIV感染者やハンセン病患者等をめぐる様々な人権問題は,現在及び将来にわたって人権擁護を推進していく上での重要課題となっている。
○また,近年,犯罪被害者の人権問題に対する社会的関心が大きな高まりを見せているほか,インターネット上の電子掲示板やホームページへの差別的情報の掲示等,新たな人権問題も生じている。

2  人権教育の現状

(1)人権教育の意義・目的
 ○人権教育とは,「人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動」(人権教育・啓発推進法第2条)を意味する。
 ○学校教育については,それぞれの学校種の教育目的や目標の実現を目指して,自ら学び自ら考える力や豊かな人間性などを培う教育活動を組織的・計画的に実施するものであり,こうした学校の教育活動全体を通じ,幼児児童生徒,学生の発達段階に応じて,人権尊重の意識を高める教育を行っていくこととなる。
 ○社会教育については,生涯学習の視点に立って,学校外において,青少年のみならず,幼児から高齢者に至るそれぞれのライフサイクルにおける多様な教育活動を展開していくことを通じて,人権尊重の意識を高める教育を行っていくこととなる。

(2)人権教育の実施主体
 ○人権教育の実施主体としては,学校,社会教育施設,教育委員会などのほか,社会教育関係団体,民間団体,公益法人などが挙げられる。
 ○学校教育及び社会教育における人権教育に関係する機関としては,国レベルでは文部科学省,都道府県レベルでは各都道府県教育委員会及び私立学校を所管する都道府県知事部局,市町村レベルでは各市町村教育委員会等がある。

(3)人権教育の現状
 ア 学校教育
  ○学校教育においては,幼児児童生徒,学生の発達段階に応じながら,学校教育活動全体を通じて人権尊重の意識を高め,一人一人を大切にした教育の充実を図っている。
  ○幼稚園教育要領,小・中・高等学校及び盲・聾・養護学校の学習指導要領等を改訂し,「生きる力」(自ら学び自ら考える力,豊かな人間性など)の育成を目指し,それぞれの教育の一層の充実を図っている。
  ○平成13年7月には,学校教育法が改正され,小・中・高等学校及び盲・聾・養護学校においてボランティア活動など社会奉仕体験活動,自然体験活動など体験活動の充実に努めることとされたところであり,人権教育の観点からも各学校の取組の促進が望まれる。
  ○学校教育をめぐっては,知的理解にとどまり,人権感覚が十分身に付いていないなど指導方法の問題,教職員に人権尊重の理念について十分な認識が必ずしもいきわたっていない等の問題も指摘されている。
 イ 社会教育
  ○すべての教育の出発点である家庭教育の充実を図るため,親の学習機会を提供するとともに,家庭でのしつけの在り方等を分かりやすく解説した家庭教育手帳・家庭教育ノートを乳幼児や小学生等を持つ親に配布している。
  ○生涯の各時期に応じ,各人の自発的学習意思に基づき,人権に関する学習ができるよう,公民館等の社会教育施設を中心に学級・講座の開設や交流活動など,人権に関する多様な学習機会が提供されている。
  ○また,社会教育指導者のための人権教育に関する手引の作成などが行われている。
  ○さらに,社会教育主事等の社会教育指導者を対象に様々な形で研修が行われ,指導者の資質の向上が図られている。
  ○加えて,平成13年7月には,社会教育法が改正され,青少年にボランティア活動などの社会奉仕体験活動,自然体験活動等の機会を提供する事業の実施及びその奨励が教育委員会の事務として明記されたところであり,人権尊重の心を養う観点からも各教育委員会における取組の促進が望まれる。
  ○社会教育をめぐっては,知識伝達型の講義形式の学習に偏りがちであることなどの課題が指摘されている。

3  人権啓発の現状

(1)人権啓発の意義・目的
 ○人権啓発とは,「国民の間に人権尊重の理念を普及させ,及びそれに対する国民の理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動(人権教育を除く。)」(人権教育・啓発推進法第2条)を意味する。
 ○その目的とするところは,国民の一人一人が人権を尊重することの重要性を正しく認識し,これを前提として他人の人権にも十分に配慮した行動がとれるようにすることにある。

(2)人権啓発の実施主体
 ○人権啓発の実施主体としては,全国各地に配置された国の組織として,法務省の人権擁護機関を挙げることができる。
 ○また,法務省以外の府省庁等においても,その所掌事務との関連で,人権にかかわる啓発活動を行っている。
 ○地方公共団体や公益法人,民間団体等においても,人権にかかわる様々な活動に取り組んでいるところであり,今後も人権啓発の実施主体として重要な一翼を担っていくことが期待される。

(3)人権啓発の現状
 ○法務省の人権擁護機関は,広く一般国民を対象に,人権尊重思想の普及高揚のために様々な啓発活動を行っている。
 ○しかし,昨今,その内容・手法が必ずしも国民の興味・関心・共感を呼び起こすものになっていない,啓発活動の実施に当たってのマスメディアの効果的な活用が十分とは言えない,法務省の人権擁護機関の存在及び活動内容に対する国民の周知度が十分でないとともに,その実施体制や担当職員の専門性も十分でない等の問題点が指摘されている。