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個人債務者の民事再生手続に関する要綱案(担当者第一次試案)

(前注)  この案において「法」とは、民事再生法をいう。

第一  少額個人再生(仮称)に関する特則

一  少額個人再生の要件等
1  個人である債務者のうち、将来の定期的収入の見込みがあり、かつ、再生債権の総額(第三の一2に規定する住宅貸付債権の額及び別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額を除く。)が〔三千万円〕〔五千万円〕を超えないものは、少額個人再生による再生手続を求めることができるものとする。
2  少額個人再生による再生手続を求める旨の申述は、再生手続開始の申立ての際(債権者が再生手続開始の申立てをした場合にあっては、再生手続開始の決定があるまで)にしなければならないものとする。
(注)  裁判所は、債権者が個人債務者についての再生手続開始の申立てをした場合において、再生手続開始の決定をしようとするときは、あらかじめその旨を債務者に通知して、少額個人再生による再生手続を求める旨の申述をする機会を与えるものとする。
3  少額個人再生による再生手続を求める旨の申述をするときは、将来の定期的収入の見込みがあることを疎明しなければならないものとする。
4  少額個人再生による再生手続を求める旨の申述をするには、次に掲げる事項を記載した書面(以下「債権者一覧表」という。)を提出しなければならないものとする。
一  債権者の氏名又は名称並びに各債権の額及び原因
二  別除権を有することとなる債権者については、その別除権の目的及び別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額
三  執行力ある債務名義又は終局判決のある債権については、その旨
四  第三の一2に規定する住宅貸付債権については、その旨
五  その他最高裁判所規則で定める事項
(注)  債務者が債権者一覧表に債権の額を記載することが困難な場合における手続について、なお検討する。
5  裁判所は、少額個人再生による再生手続を求める旨の申述があった場合において、再生手続開始の決定前に、当該申述が1の規定に違反してされたものであることが明らかになったときは、再生事件に通常の再生手続を適用する旨の決定をしなければならないものとする。
(注)  債務者が再生手続開始の申立てをした再生事件について通常の再生手続を適用する旨の決定があった場合に、債務者が通常の再生手続による手続続行を望まないときは、簡易に手続を終了させる措置を講ずるものとし、その具体的方法(例えば、債務者が、再生手続開始の申立ての際に、5の決定があった場合にも通常の再生手続としての手続の続行を求める意思があるかどうかを明らかにするものとして、その意思がない旨が明らかにされているときは、5の決定の時点で再生手続開始の申立ての取下げがあったものとみなすものとする等)について、なお検討する。


二  再生手続の開始に関する特則
1  少額個人再生においては、裁判所は、再生手続開始の決定と同時に、再生債権の届出をすべき期間及び届出があった再生債権に対して異議を述べることができる期間を定めなければならないものとする。
2  裁判所は、再生手続開始の決定をしたときは、直ちに、再生手続開始の決定の主文及び1の規定により定めた期間を公告しなければならないものとする。
3  再生債務者及び知れている再生債権者には、前項に規定する事項を記載した書面を送達しなければならないものとする。三1の規定による処分がされた場合における調整委員(仮称)についても、同様とするものとする。
4  知れている再生債権者には、債権者一覧表をも送達しなければならないものとする。
5  2及び3の規定は、1の規定により定めた期間に変更を生じた場合について準用するものとする。ただし、届出があった再生債権に対して異議を述べることができる期間の変更については、公告することを要しないものとする。
6  法第四十条の規定は、少額個人再生には適用しないものとする。


三  再生手続の機関に関する特則
1  裁判所は、少額個人再生による再生手続を求める旨の申述があった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、調整委員(仮称)による調整を命ずる処分をすることができるものとする。ただし、再生債権の評価の申立てがあったときは、当該申立てを不適法として却下する場合を除き、当該処分をしなければならないものとする。
2  裁判所は、前項の処分(以下「調整命令」という。)をする場合には、当該調整命令において、一人又は数人の調整委員を選任し、かつ、次に掲げる権限の中から調整委員に付与するものを指定しなければならないものとする。
一  再生債務者が再生計画案を作成するについて、その補助をすること。
二  再生債務者の財産及び収入の状況を調査すること。
三  再生債権の評価の申立てに係る再生債権の存否及び額並びに別除権者の有する再生債権のうち別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる額(以下「担保不足見込額」という。)を調査すること。
3  裁判所は、2の第二号又は第三号に掲げる事項を調整委員の権限とする場合には、当該調整命令において、裁判所に対して調査の結果を報告すべき期間をも定めなければならないものとする。
4  裁判所は、調整命令を変更し、又は取り消すことができるものとする。
5  調整命令及び4による決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
6  5の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。
7  5に規定する裁判及び5の即時抗告についての裁判があった場合には、その決定書を当事者に送達しなければならないものとする。
8  2の第一号又は第二号に掲げる権限を付与された調整委員は、再生債務者又はその法定代理人に対し、再生債務者の財産及び収入の状況につき報告を求め、再生債務者の帳簿、書類その他の物件を検査することができるものとする。
9  2の第三号に掲げる権限を付与された調整委員は、再生債務者若しくはその法定代理人又は再生債権者に対し、再生債権の存否及び額並びに担保不足見込額に関する資料の提出を求めることができるものとする。
10  法第五十四条第三項、第五十七条、第五十八条、第六十条及び第六十一条の規定は、調整委員について準用するものとする。
11  10において準用する法第六十一条第一項の規定により支払うべき費用及び報酬の請求権は、共益債権とするものとする。
12  法第三章第一節及び第二節の規定は、少額個人再生には適用しないものとする。


四  再生債権に関する特則
1  少額個人再生においては、再生債権者は、再生手続開始決定の時において、法第八十七条第一項各号に掲げる再生債権の区分に従い、それぞれ当該各号に定める金額の再生債権を有するものとみなすものとする。
2  債権者一覧表に記載されている再生債権者は、当該再生債権に関する記載内容を争う意思がない場合には、再生債権の届出をすることを要しないものとする。この場合においては、当該再生債権者は、二1の規定により定められた再生債権の届出をすべき期間の初日に、債権者一覧表の記載内容と同一の内容で再生債権の届出をしたものとみなすものとする。
3  再生債務者及び届出再生債権者(2後段の規定により届出をしたものとみなされる再生債権者を含む。以下同じ。)は、二1の規定により定められた届出があった再生債権に対して異議を述べることができる期間(以下「異議申述期間」という。)内に、裁判所に対し、届出があった再生債権(2後段の規定により届出をしたものとみなされる再生債権を含む。以下同じ。)の額又は担保不足見込額について、書面で、異議を述べることができるものとする。ただし、再生債務者は、2後段の規定により届出をしたものとみなされる再生債権の額及び担保不足見込額については、この限りでないものとする。
4  異議申述期間内に異議がなかったときは、その再生債権の額又は担保不足見込額は、確定するものとする。
5  3の規定により再生債務者又は届出再生債権者から異議が述べられた場合には、当該再生債権(以下「異議のある再生債権」という。)を有する再生債権者は、裁判所に対し、異議申述期間の末日から〔二週間〕〔三週間〕の不変期間内に、再生債権の評価の申立てをすることができるものとする。ただし、当該再生債権が執行力ある債務名義又は終局判決のあるものである場合には、当該異議を述べた者が当該申立てをしなければならないものとする。
6  再生債権の評価の申立てをする者は、その申立てに係る手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならないものとする。
7  6に規定する費用の予納がないときは、裁判所は、再生債権の評価の申立てを却下しなければならないものとする。
8  再生債権の評価においては、裁判所は、再生債権の評価の申立てに係る再生債権について、調整委員の調査の結果に基づき、その債権の存否及び額又は担保不足見込額を定めるものとする。
9  少額個人再生においては、法第四章第三節及び第四節の規定は、適用しないものとする。


五  再生債務者の財産の調査及び確保に関する特則
1  少額個人再生においては、再生債務者は、貸借対照表を作成することを要しないものとする。
2  少額個人再生においては、法第百二十六条及び第六章第二節の規定は、適用しないものとする。
(五関係後注)
 再生債務者が民事再生規則第十四条第四号の規定により再生手続開始の申立ての時点で財産目録を提出していた場合において、当該財産目録の記載内容が再生手続開始の時における財産目録に記載すべき内容と同一であるときは、その旨を記載した書面を提出すれば足りるものとする。


六  再生計画の条項及び提出に関する特則
1  少額個人再生における再生計画による権利の変更の内容は、不利益を受ける再生債権者の同意がある場合又は法第八十四条第二項に掲げる請求権について別段の定めをする場合を除き、再生債権者の間では平等でなければならないものとする。
2  再生債権者の権利を変更する条項においては、債務の全部又は一部を当該再生計画で定める弁済期間中に三月に一回以上の割合で分割払する旨を定めなければならないものとする。
(注)  期限の利益喪失条項をも定めなければならないものとするかどうかについて、なお検討する。
3  2の弁済期間は、再生計画認可の決定の確定から三年としなければならないものとする。ただし、特別の事情がある場合には、再生計画認可の決定の確定から五年を超えない範囲内で、三年を超える弁済期間を定めることができるものとする。
4  少額個人再生においては、法第百五十七条から第百五十九条まで、第百六十三条第二項、第百六十四条第二項後段及び第百六十五条第一項の規定は、適用しないものとする。


七  再生計画の決議に関する特則
1  裁判所は、異議申述期間が経過し、かつ、法第百二十五条第一項の報告書の提出がされた後でなければ、再生計画案を決議に付することができないものとする。異議申述期間内に四3の規定による異議が述べられた場合には、四5の不変期間を経過するまでの間(当該不変期間内に再生債権の評価の申立てがあったときは、再生債権の評価がされるまでの間)も、同様とするものとする。
2  裁判所は、再生計画案について法第百七十四条第二項各号(第三号を除く。)又は八2各号のいずれかに該当する事由があると認める場合には、その再生計画案を決議に付することができないものとする。
3  再生計画案の提出があったときは、裁判所は、1及び2の場合を除き、再生計画案を書面による決議に付する旨の決定をするものとする。
4  3の決定をした場合には、その旨を公告するとともに、議決権を行使することができる再生債権者(以下「議決権者」という。)に対して、再生計画案を記載した書面及び再生計画案に同意しない者は裁判所の定める期間(5、八3及び十において「回答期間」という。)内に書面でその旨を回答すべき旨を記載した書面を送達しなければならないものとする。この場合においては、法第百二条第四項及び第五項の規定を準用するものとする。
5  回答期間内に再生計画案に同意しない旨を書面で回答した議決権者が議決権者総数の半数を超えず、かつ、その議決権の額が議決権者の議決権の総額の二分の一を超えないときは、再生計画案を可決したものとみなすものとする。
6  四4の規定により額が確定した再生債権を有する届出再生債権者はその確定額に応じて、四8の規定により再生債権の評価がされた再生債権を有する届出再生債権者はその評価額に応じて、それぞれ議決権を行使することができるものとする。
7  少額個人再生においては、法第七章第三節の規定は、適用しないものとする。


八  再生計画の認可等に関する特則
1  少額個人再生において再生計画案が可決されたものとみなされた場合には、裁判所は、法第百七十四条第二項又は2の場合を除き、再生計画認可の決定をするものとする。
2  少額個人再生においては、裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合にも、再生計画不認可の決定をするものとする。
一  四4の規定によりその債権の額が確定した届出再生債権及び四8の規定により再生債権の評価がされた届出再生債権の確定額又は評価額の総額(第三の一2に規定する住宅貸付債権である届出再生債権の確定額及び評価額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額並びに法第八十四条第二項各号に掲げる請求権の額を除く。)が〔三千万円〕〔五千万円〕を超えているとき。
二(甲 案)四4の規定によりその債権の額が確定した届出再生債権及び四8の規定により再生債権の評価がされた届出再生債権(別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権、法第八十四条第二項各号に掲げる請求権及び第三の一2に規定する特別条項を定めた場合における当該特別条項に係る届出再生債権を除く。以下「確定債権」という。)に対する再生計画に基づく弁済の総額(以下「特定弁済総額」という。)が〔百万円〕〔二百万円〕(確定債権の総額が〔百万円〕〔二百万円〕を下回っているときは、確定債権の総額)を下回っているとき。
(乙 案)特定弁済総額が、〔確定債権の総額の十分の一又は百万円のいずれか多い額(確定債権の総額が百万円を下回っているときは確定債権の総額、確定債権の総額の十分の一が二百万円を超えるときは二百万円)〕〔確定債権の総額の五分の一又は二百万円のいずれか多い額(確定債権の総額が二百万円を下回っているときは確定債権の総額、確定債権の総額の五分の一が三百万円を超えるときは三百万円)〕を下回っているとき。
3  裁判所書記官は、回答期間内に再生計画案に同意しない旨を書面で回答した議決権者がなく、かつ、法第百七十四条第三項に規定する者からの同条第二項各号又は2各号のいずれかに該当する事由がある旨の意見の陳述がなかった場合には、その旨を記載した書面を作成するものとする。この場合においては、再生計画認可の決定があったものとみなすものとする。
4  少額個人再生において再生計画認可の決定が確定したときは、すべての再生債権者の権利(再生手続開始前の罰金等を除く。)は、法第百五十六条の一般的基準に従い、変更されるものとする。
(注)  四4の規定によりその債権の額が確定した届出再生債権及び四8の規定により再生債権の評価がされた届出再生債権以外の再生債権のうち一定のものにつき法第百八十一条第二項におけるような劣後的な取扱いをするかどうかについて、なお検討する。
5  4に規定する場合における法第百八十二条及び第百八十九条第三項の規定の適用については、第百八十二条中「認可された再生計画の定めによって認められた権利又は前条第一項の規定により変更された後の権利」とあり、及び第百八十九条第三項中「再生計画の定めによって認められた権利」とあるのは、「4の規定により変更された後の権利」とするものとする。
6  少額個人再生においては、法第百七十八条から第百八十条まで、第百八十一条第一項及び第二項並びに第百八十五条(第百八十九条第八項、第百九十条第二項及び第百九十五条第七項において準用する場合を含む。)の規定は、適用しないものとする。


九  再生計画認可後の手続に関する特則
1  再生手続の終結
 少額個人再生においては、再生計画認可の決定の確定によって当然に再生手続が終結するものとする。
2  再生計画の変更
a  少額個人再生においては、再生計画認可の決定があった後やむを得ない事由で再生計画に定める事項を変更する必要が生じたときは、再生債務者の申立てにより、再生計画で定める弁済期間を二年を限度として伸長することを内容とする再生計画の変更をすることができるものとする。
b  aの規定により再生計画の変更の申立てがあった場合には、再生計画案の提出があった場合の手続に関する規定を準用するものとする。
c  法第百七十五条及び第百七十六条の規定は、再生計画の変更の決定があった場合について準用するものとする。
3  計画遂行が著しく困難となった場合の免責
a  再生債務者がその責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが著しく困難となり、かつ、次の各号のいずれにも該当する場合には、裁判所は、再生債務者の申立てにより、免責の決定(仮称)をすることができるものとする。
一  特定弁済総額の〔三分の二〕〔四分の三〕以上の額の弁済を終えていること。
二  再生計画認可の決定があった時点で再生債務者につき破産手続が行われた場合における確定債権に対する配当の総額以上の額の弁済を終えていること。
三  2の規定による再生計画の変更をすることが極めて困難であること。
b  aの申立てがあったときは、裁判所は、届出再生債権者の意見を聴かなければならないものとする。
c  免責の決定があったときは、再生債務者及び届出再生債権者に対して、その主文及び理由の要旨を記載した書面を送達しなければならないものとする。
d  aの申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
e  免責の決定は、確定しなければその効力を生じないものとする。
f  免責の決定が確定した場合には、再生債務者は、履行した部分を除き、再生債権者に対する債務(再生手続開始前の罰金等を除く。)の全部についてその責任を免れるものとする。
g  免責の決定の確定は、別除権者が有する法第五十三条第一項に規定する担保権、再生債権者が再生債務者の保証人その他再生債務者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び再生債務者以外の者が再生債権者のために提供した担保に影響を及ぼさないものとする。
4  再生計画の取消し
 少額個人再生において再生計画認可の決定が確定した場合には、特定弁済総額が、再生計画認可の決定があった時点で再生債務者につき破産手続が行われた場合における確定債権に対する配当の総額を下回ることが明らかになったときも、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができるものとする。この場合においては、法第百八十九条第二項の規定を準用するものとする。
5  適用除外
 少額個人再生においては、法第百八十六条第三項及び第四項、第百八十七条並びに第百八十八条の規定は、適用しないものとする。


十  再生手続の廃止に関する特則
1  少額個人再生においては、回答期間内に再生計画案に同意しない旨を書面で回答した議決権者が、議決権者総数の半数を超え、又はその議決権の額が議決権者の議決権の総額の二分の一を超えたときにも、裁判所は、職権で、再生手続廃止の決定をしなければならないものとする。
2  少額個人再生において、再生債務者が財産目録に記載すべき財産を記載せず、又は不正の記載をした場合には、裁判所は、届出再生債権者若しくは調整委員の申立てにより又は職権で、再生手続廃止の決定をすることができるものとする。


十一  その他

その他所要の規定を整備するものとする。

第二  特定個人再生(仮称)に関する特則

一  特定個人再生の要件等
1  第一の一1に規定する債務者のうち、給与所得者(給与が出来高払制その他の請負制によって定められている者を除く。)その他その収入の額を確実かつ容易に算出することができる者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものは、特定個人再生による再生手続を求めることができるものとする。
2  特定個人再生による再生手続を求める旨の申述をするときは、1に規定する者に該当することを疎明しなければならないものとする。
3  裁判所は、特定個人再生による再生手続を求める旨の申述があった場合において、再生手続開始の決定前に、次の各号のいずれかに該当する事由があることが明らかになったときは、再生事件に少額個人再生の手続を適用する旨の決定をしなければならないものとする。ただし、当該申述が第一の一1の規定にも違反してされたものであることが明らかになった場合には、再生事件に通常の再生手続を適用する旨の決定をしなければならないものとする。
一  当該申述が1の規定に違反してされたものであること。
二  再生債務者が特定個人再生による再生手続を求める旨の申述をする前〔七年〕〔十年〕内に、再生債務者について特定個人再生における再生計画が遂行され、又は第一の九3a(四において準用する場合を含む。)若しくは破産法第三百六十六条ノ十一に規定する免責の決定が確定したこと。
(注)  第一の一5の注と同様の措置を講ずるものとする。
4  第一の一2及び4の規定は、特定個人再生による再生手続を求める旨の申述について準用するものとする。


二  再生手続の開始及び機関、再生債権並びに再生債務者の財産の調査及び確保に関する特則
1  第一の二から五までの規定は、特定個人再生について準用するものとする。
2  特定個人再生においては、法第八十七条の規定は、適用しないものとする。
(二関係後注)
 第一の五関係後注と同様の取扱いをするものとする。


三  再生計画に関する特則
1  第一の六の規定は、特定個人再生について準用するものとする。
2  裁判所は、再生計画案の提出があった場合には、異議申述期間が経過し、かつ、法第百二十五条第一項の報告書の提出がされた後、再生計画案を認可すべきかどうかについて、届出再生債権者の意見を聴かなければならないものとする。ただし、異議申述期間内に二1において準用する第一の四3の規定による異議が述べられた場合には、二1において準用する第一の四5の不変期間を経過するまでの間(当該不変期間内に再生債権の評価の申立てがあったときは、再生債権の評価がされるまでの間)は、この限りでないものとする。
3  裁判所は、再生計画案について6各号のいずれかに該当する事由があると認める場合には、その再生計画案について届出再生債権者の意見を聴くことができないものとする。
4  裁判所は、再生計画案について届出再生債権者の意見を聴くときは、その旨を公告し、かつ、届出再生債権者に対して、再生計画案を記載した書面を送達するとともに、再生計画案について6各号のいずれかに該当する事由がある旨の意見がある者は裁判所の定める期間内にその旨及び当該事由を具体的に記載した書面を提出すべき旨を記載した書面を送達しなければならないものとする。この場合においては、法第百二条第四項及び第五項の規定を準用するものとする。
5  4の規定により定められた期間が経過したときは、裁判所は、6の場合を除き、再生計画認可の決定をするものとする。
6  裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をするものとする。
一  法第百七十四条第二項第一号又は第二号(第三の一2に規定する特別条項を定めた再生計画案に関しては、第三の五1の規定による読替後のもの)に規定する事由があるとき。
二  再生計画が再生債権者の一般の利益に反するとき。
三  第一の八2第一号又は第二号に規定する事由があるとき。
四  一3第二号に規定する事由があるとき。
五  特定弁済総額が、次のイからハまでの区分に応じ、それぞれ当該各号に定める額からこれに対する所得税、住民税及び社会保険料の額並びにニに掲げる額を控除した額に二を乗じた額を下回っているとき。
イ  再生債務者の収入の額について、就業先の変更、賃金の増額若しくは減額その他これらに類する事由により再生計画案の提出前二年間の途中で五分の一以上の変動があった場合 当該変動があった後の期間の収入の合計額を一年分に換算した額
ロ  再生債務者が再生計画案の提出前二年間の途中で一1に規定する者に該当することとなった場合 一1に規定する者に該当することとなった時から再生計画案の提出までの間の収入の合計額を一年分に換算した額
ハ  イ及びロに掲げる場合以外の場合 再生計画案の提出前二年間の再生債務者の収入の合計額を二で除した額
ニ  再生債務者及びその扶養を受けるべき親族の最低限度の生活を維持するために必要な一年分の費用の額
7  6第五号ニの一年分の費用の額は、再生債務者及びその扶養を受けるべき親族の年齢及び所在地域、当該親族の数、物価の状況その他一切の事情を勘案して政令で定めるものとする。
8  裁判所書記官は、4の規定により裁判所が定めた期間内に再生計画案について6各号のいずれかに該当する事由がある旨の意見を書面で提出した届出再生債権者がなかった場合には、その旨を記載した書面を作成するものとする。この場合においては、再生計画認可の決定があったものとみなすものとする。
9  第一の八4及び5の規定は、特定個人再生について準用するものとする。
10  特定個人再生においては、法第七章第三節、第百七十四条第一項から第三項まで、第百七十八条から第百八十条まで、第百八十一条第一項及び第二項並びに第百八十五条(第百八十九条第八項、第百九十条第二項及び第百九十五条第七項において準用する場合を含む。)の規定は、適用しないものとする。


四  再生計画認可後の手続に関する特則
1  第一の九1から3まで及び5の規定は、特定個人再生について準用するものとする。
2  特定個人再生において再生計画認可の決定が確定した場合には、特定弁済総額が再生計画認可の決定があった時点で再生債務者につき破産手続が行われた場合における確定債権に対する配当の総額又は三6第五号に規定する額のいずれか多い額を下回ることが明らかになったときも、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができるものとする。この場合においては、法第百八十九条第二項の規定を準用するものとする。


五  再生手続の廃止に関する特則
1  特定個人再生において、次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、職権で、再生手続廃止の決定をしなければならないものとする。
一  届出再生債権者の意見を聴くに足りる再生計画案の作成の見込みがないことが明らかになったとき。
二  裁判所の定めた期間若しくはその伸長した期間内に再生計画案の提出がないとき、又はその期間内に提出された再生計画案が届出再生債権者の意見を聴くに足りないものであるとき。
2  第一の十2の規定は、特定個人再生について準用するものとする。
3  特定個人再生においては、法第百九十一条の規定は、適用しないものとする。


六  その他
 その他所要の規定を整備するものとする。

第三  住宅貸付債権に関する特則

一  定義
1  第三において「住宅」とは、個人である再生債務者が所有する建物のうち、次に掲げる要件のすべてを具備するものをいうものとする。
一  当該再生債務者が自己の居住の用に供するもの(その床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるものに限る。)であること。ただし、再生債務者が自己の居住の用に供する建物が二以上ある場合には、これらの建物のうち、再生債務者が主として居住の用に供すると認められる一の建物であること。
二  2において規定する住宅貸付債権又は当該債権に係る債務の保証人(保証を業とする者に限る。)の求償権を担保するために抵当権が設定されているものであること。
三  法第五十三条第一項に規定する担保権(二の抵当権を除く。)が、その上に存しないものであること。
(注)  「個人である再生債務者が所有する建物」には、個人である再生債務者が共有持分を有する建物を含むものとする。
2  第三において「住宅貸付債権」とは、住宅の建設若しくは購入に必要な資金(当該住宅の用に供する土地又は借地権の取得に必要な資金を含む。)又は住宅の改良に必要な資金の貸付けに係る再生債権であって、分割払の定めのあるものをいうものとする。


二  抵当権の実行としての競売手続の中止命令
1  裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、再生債務者の申立てにより、相当の期間を定めて、住宅についての抵当権の実行としての競売の手続の中止を命ずることができるものとする。
2  法第三十一条第二項から第六項までの規定は、1の規定による中止の命令について準用するものとする。


三  住宅貸付債権に関する再生計画の条項
1  再生計画においては、住宅貸付債権を有する再生債権者の権利の全部又は一部を変更することにより、五2に規定する権利にも影響を及ぼすこととなる条項を定めることができるものとする。この場合において、住宅貸付債権を有する再生債権者が数人ある場合には、これらの者のすべてを対象として当該条項を定めなければならないものとする。
2  1に規定する条項(以下「特別条項」という。)においては、3又は4に規定する場合を除き、住宅貸付債権のうち次の各号に掲げる部分について、それぞれ当該各号に定める内容を定めるものとする。
一  既に弁済期が到来した部分(再生債務者が期限の利益を喪失したことにより弁済期が到来した部分を除き、期限の利益の喪失に伴って生じた遅延損害金の部分を含む。) その全額を、住宅貸付債権以外の再生債権について再生計画で定める弁済期間(当該期間が五年を超える場合にあっては、再生計画認可の決定の確定から五年)内に支払うこと。
二  前号に掲げる部分以外の部分 住宅貸付債権に係る分割払の定めに従って支払うこと。
3  2の規定による特別条項を定めた再生計画を遂行することが著しく困難である場合には、住宅貸付債権に係る分割払の定めについて、十年を超えず、かつ、最終の弁済期における再生債務者の年齢が七十歳を超えない範囲内で、当該分割払の期間の延長をすることを内容とする特別条項を定めることができるものとする。この場合においては、当該分割払の定めについて、半年賦支払の方法を併用している場合にこれをやめ、又は新たに半年賦支払の方法を併用する旨の変更をも定めることができるものとする。
4  3の規定による特別条項を定めた再生計画を遂行することが著しく困難である場合には、特別条項において、3に規定する変更を定めるとともに、住宅貸付債権以外の再生債権について再生計画で定める弁済期間(当該期間が五年を超える場合にあっては、再生計画認可の決定の確定から五年)の範囲内において、住宅貸付債権の元金の支払を据え置き、又はその支払額を減額することをも定めることができるものとする。
5  特別条項に係る再生債権者の同意がある場合には、2から4までの規定にかかわらず、住宅貸付債権の元金、利息又は遅延損害金の一部を免除することその他2から4までに規定する変更以外の変更をすることを内容とする特別条項を定めることができるものとする。
(注)  住宅貸付債権に係る債務の保証人(保証を業とする者に限る。)が代位弁済をした後における特別条項の内容及び効力については、なお検討する。


四  特別条項に係る再生債権者の意見聴取等
1  特別条項を定めた再生計画案が提出されたときは、裁判所は、当該特別条項に係る再生債権者の意見を聴かなければならないものとする。法第百六十七条の規定による修正(特別条項に係る修正に限る。)があった場合における修正後の特別条項を定めた再生計画案についても、同様とする。
2  特別条項を定めた再生計画案については、当該特別条項に係る再生債権者は、議決権を有しないものとする。


五  特別条項を定めた再生計画の認可等の特則
1  特別条項を定めた再生計画案に関する法第百七十四条第二項第二号の適用については、同号中「遂行される見込みがないとき」とあるのは、「遂行可能であると認めることができないとき」とするものとする。
2  特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定したときは、当該特別条項は、法第百七十七条第二項の規定にかかわらず、住宅に設定されている抵当権及び特別条項に係る再生債権者が再生債務者の保証人〔その他再生債務者と共に債務を負担する者(当該債務を履行した場合に、再生債務者に対する求償権を取得する者に限る。)〕に対して有する権利にも、影響を及ぼすものとする。


六  その他
 その他所要の規定を整備するものとする。

第四  その他

一  管轄
1  法第五条第一項及び第二項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる者のいずれかについて再生事件が係属しているときは、それぞれ当該各号に掲げるその他の者についての再生手続開始の申立ては、当該再生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。
一  連帯債務者の関係にある個人
二  主債務者と保証人の関係にある個人
三  夫婦
2  法第七条の規定による再生事件の移送は、次に掲げる裁判所にすることもできるものとする。
一  1に規定する地方裁判所
二  1により前号の地方裁判所に再生事件が係属しているときは、法第五条第一項又は第二項に規定する地方裁判所
(管 轄関係後注) 少額個人再生及び特定個人再生の特則の適用がある民事再生事件の事物管轄も地方裁判所とするものとする。
二  清算型手続との関係
(甲 案)民事再生手続(少額個人再生及び特定個人再生の手続を含む。乙案において同じ。)と清算型手続を債務者が自由に選択することができるものとする。
(乙 案)可処分所得見込額が一定額以上の高額な者(税引後の年収に換算すると概ね〔五百万円〕〔七百万円〕以上の者)については、民事再生手続を試みた後でなければ、免責手続を利用することができないものとする。
(丙 案)可処分所得見込額が一定額以上の高額な者(税引後の年収に換算すると概ね〔五百万円〕〔七百万円〕以上の者)が清算型手続を選択した場合には、第一の八2第二号に規定する額又は第二の三6第五号に規定する額のいずれか多い金額まで配当又は弁済をしなければ、免責を受けることができないものとする。