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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和4年2月18日(金)

 今朝の閣議において、法務省案件はありませんでした。
 続いて、私から3件報告があります。
 1件目は、技能実習生に対する人権侵害行為への対応についてです。
 本日、岡山市の実習実施者1者について、技能実習生の人権を著しく侵害する行為を行ったことにより、技能実習計画の認定の取消しを行い、入管庁ホームページで公表しました。
 実習実施者による技能実習生に対する暴行等の人権侵害行為は決してあってはならないことです。
 今後とも、本件のような人権侵害行為等に対しては、技能実習生の保護を最優先としながら、実習実施者等に対する指導、勧告や行政処分等を通じて厳格に対応し、技能実習制度の適正な実施を徹底してまいります。
 2件目は、アジア太平洋刑事司法フォーラムの開催結果についてです。
 2月14日から15日の2日間にわたり、東京国際フォーラムで、第1回アジア太平洋刑事司法フォーラムを開催しました。
 このフォーラムは、京都コングレスの成果文書である「京都宣言」において、国際協力を強化し、法執行機関による地域ネットワークを構築する重要性が確認されたことを受け、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)との共催で開催したものです。
 第1回目となる今回は、アジア太平洋地域の約20の国・機関から、閣僚・次官級のハイレベルの方々にご参加いただき、全体テーマである「犯罪と戦うためのアジア太平洋における国際協力の強化」について、前向きな力強いメッセージをいただきました。
 また、捜査共助と矯正・保護分野の国際協力に関する2つの分科会では、各国の刑事実務家の皆さんによる充実した議論がなされ、各国の法制度や運用に関する相互理解が深まりました。
 このような議論を通じて、国際協力を促進し、刑事司法機関の能力向上を図ることは、我が国と密接な関係を有するアジア太平洋地域に、「法の支配」や「基本的人権の尊重」といった普遍的価値を浸透させ、ルールの下で安全・安心に暮らせる社会、「誰一人取り残さない社会」の実現に貢献するものです。
 法務省としては、今後も、本フォーラムを通じて、国際協力を促進し、「ルールに基づく国際秩序」の形成を主導してまいります。
 3件目は、法務大臣保安表彰の実施についてです。
 本日、全国の刑事施設のうち、優秀な保安成績を収めた刑事施設に対し、法務大臣表彰を授与します。
 今回表彰を受けるのは、黒羽刑務所、甲府刑務所、長崎刑務所、美祢社会復帰促進センターの4施設であり、重大な事故なく、3年ないし4年の所要期間を経過したものです。
 このうち、黒羽刑務所は、昭和46年の設置から50年を経て、令和4年3月末をもって廃庁となりますが、今回の表彰で有終の美を飾ることとなりました。
 コロナ禍の中、全国180の刑事施設では、感染防止対策の徹底にも尽力しているところです。今回の受賞施設を始めとして、全国の刑事施設が、引き続き適正な運営を継続し、罪を犯した者の立ち直りに大きく貢献していくことを期待しています。

技能実習生に対する人権侵害行為への対応に関する質疑について

【記者】
 冒頭発言にもありました岡山市の技能実習実施者の処分に関連してお伺いします。今回の事案の対応について、被害者側の記者会見が先行し、その後、入管庁が対応するという形に見受けられます。被害男性は令和3年6月に監理団体に被害を報告したが改善されなかったということです。
 処分の権限を持つ入管庁側にこうした情報が行き渡らないという点で、情報共有体制に問題はなかったのか、また、こうした事案を把握した場合、公表の仕方についてどう考えるか、大臣のお考えを教えてください。

【大臣】
 本年1月24日、入管庁、厚生労働省及び外国人技能実習機構から実習実施者に対して、技能実習生の人権侵害行為等が生じていないかを改めて確認すること、また、監理団体に対して、実習実施者における不適正な対応の有無を確認し、人権侵害行為等を把握した場合には、速やかな技能実習生の保護と、技能実習機構等への確実な報告・相談を行うことなどについて注意喚起を実施しました。
 この通知を受けて、各実習実施者及び監理団体においては、適切な確認等に努めていただいているものと考えています。
 また、これまでは、技能実習機構が人権侵害が疑われるなど緊急の対応を要する事案を認知した場合について、主務省庁である入管庁・厚生労働省に対して、その都度報告する取扱いにはなっていませんでした。
 そのため、同日付けで、入管庁及び厚生労働省において、この取扱いを見直し、緊急対応を要する事案を認知した場合には、直ちに報告するよう指示を行ったところです。
 事案内容の公表に当たっては、事実関係を正確に把握することはもとより、被害者を含め関係者のプライバシー等にも十分に配慮しなければなりません。
 本件については、事案の深刻さ、重大性に鑑み、対応の方針や処分等の状況を可能な限り御報告させていただきました。
 今後とも、事案内容の公表に当たっては、個別事案ごとの様々な事情を踏まえ、適切に対応していきたいと考えています。

【記者】
 実習実施団体の処分の関係でお伺いします。公表について、先月の大臣会見の中では、「岡山市内の企業で働くベトナム人技能実習生が職場で2年間にわたって暴行を受けていた」という報道内容を引用して、個別の事案をあえて特定する形で説明されていました。これについては、著しい人権侵害行為に当たる可能性があるという事案の重大性を考慮した発言だと考えていましたが、今回処分を行うに当たって公表された項目には、こうした具体的な要素が発表の中に入っていませんでした。
 個別事案の重大性や悪質性を発信していくという意味では、公表の中に盛り込んでもいいのではないかと考えますが、大臣としてはどのようにお考えでしょうか。

【大臣】
 先ほども申し上げたとおり、事案内容の公表に当たっては、事実関係を正確に把握することはもとより、被害者を始めとする関係者のプライバシー等にも十分に配慮する必要があります。
 個別事案の詳細を公表することについては、このような観点から、慎重な検討が必要であると思っています。

【記者】
 引き続き関連でお伺いします。今回の処分によって、向こう5年間は、当該企業は技能実習計画が実施できないという比較的重い処分だと思うのですが、こういう重い処分に至った理由を教えていただければと思います。

【大臣】
 具体的な内容について、つぶさにお話をすることはできませんが、飽くまでも法令に照らして、聴き取りを含め、調査を行った上で処分がなされたということです。

京都府宇治市ウトロ地区における放火事案に関する質疑について

【記者】
 昨年8月30日に京都府宇治市のウトロ地区で起きた放火事件について伺いたいと思います。間もなく半年ということになりますが、起訴された犯行に及んだとされる男性は、差別的な言動・動機を口にしていますし、他にも朝鮮半島ルーツの関連施設への放火で起訴されています。
 大臣として、あるいは、法務省として、これがヘイトクライムに当たる、あるいは、ヘイトクライムの可能性があると考えているのか、そして今後の対処についても伺えればと思います。

【大臣】
 個別事案について、法務大臣として言及することは、差し控えたいと思います。
 我が国が目指すべきことは、多様性が尊重され、全ての人がお互いを認め合い、尊重し合い、人権や尊厳を大切にしながら、生き生きとした人生を享受できるような共生社会を実現していくことが大きな目標であり、とても大事なことだと思っています。

入管収容施設における医療体制に関する質疑について

【記者】
 この間、入管の医療問題について続けて質問させていただきました。
 名古屋入管のスリランカ人女性死亡事件に関する調査報告書での12項目の改善策を受けて、有識者会議で提言と報告書を取りまとめていたり、健康状態が悪化した被収容者の外部医療機関との連携や仮放免の運用方針を見直す通達を、入管庁長官名で出したことについても御回答いただきました。
 しかし、実際の入管収容の現場では、大けがを負って長期間放置され、その結果寝たきりの収容生活が続いて、入院して手術が必要であるにもかかわらずリハビリのための介護施設に移されたり、別のケースですが、外部病院の医師や入管の医師から、仮放免して治療しなければ根本的な治療ができないと言われているにもかかわらず、対症療法的に毎日のように点滴を打って、血管に過度な負担を生じてしまったり、まともな治療が受けられないケースが発生しています。診断書などの医療情報も、本人や代理人は受け取ることができません。
 このような対応は、入管施設の責任者の判断ということだと思いますが、患者本人への医療従事者のインフォームドコンセントを無視していて、これは医療法や医師法に違反しているのではないかと考えられます。
 やはり、地方入管や入管センターの責任者が、医師の意見を受け入れた上で、本人や代理人に診療情報を全面的に開示して、適切な治療を受けられる対策を早急に協議する必要があるのではないかと思うのですが、被収容者は適切な医療を受けることすらできないのでしょうか。大臣の御見解をお願いいたします。

【大臣】
 体調不良を訴える被収容者に対しては、訴えの内容や症状等に応じて、医師の所見に従って、必要な診療・治療を適時・適切に受けさせており、御指摘の事実関係については、認識に相違があります。
 法務省としては、医療的対応を含めて、被収容者の処遇が適切に行われるよう、今後も努めていきます。

【記者】
 今の質問の続きです。なぜその診療情報を本人や代理人に開示しないのでしょうか。
 また、適切に判断したとおっしゃいましたが、一体誰が適切に判断しているのかも曖昧で、多分所長やセンター長の判断だと思うのですが、医師と患者のやりとりを通り越して入管局長なりが判断するというのは、医師法や医療法に反するのではないかと思うのですが、それについての見解をお願いします。

【大臣】
 繰り返しになりますが、体調不良を訴える被収容者に対しては、訴えの内容や症状等に応じ、医師の所見に従って、必要な診療・治療を適時・適切に受けさせているものと承知しています。

【記者】
 質問の答えに全くなっていないのですけれども、なぜその診療情報を本人や代理人に開示しないのでしょうか。そこはセンター長や所長等の入管責任者の判断ということでしょうか。お願いします。

【大臣】
 これも繰り返しになりますが、医師の所見に従って、必要な診療・治療を適時・適切に受けさせています。お尋ねについては、その前提の認識に相違があると受け止めています。

【記者】
 認識のそごと言うのですが、診療情報などが開示されないというのは、これはそごではなく、そういった事実があるからです。
 ですから、そこについて、特に健康状態が極度に悪化している場合に、当然自分の診療情報を知りたいと思います。しかも、今後の対処もできないわけです。なぜ、代理人を含めてそれを見ることができないのか、なぜそれを開示しないのかということについてお願いします。

【大臣】
 本人からの請求があれば、法令に従って開示がなされるものと承知しています。
(以上)