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法務大臣臨時記者会見の概要

令和4年7月26日(火)

 本日、加藤智大の死刑を執行しました。
 犯罪事実の概略について申し上げますと、休日でにぎわう東京・秋葉原の歩行者天国における無差別殺人を企てて、トラックを疾走させて通行人らに衝突させて跳ね飛ばし、3名の被害者を殺害し、2名に傷害を負わせたが殺害に至らず、さらに、トラックを降り、逃げる通行人らを鋭利な短剣様のダガーナイフで次々に刺すなどし、4名の被害者を殺害し、8名に傷害を負わせたが殺害に至らず、その上で、本犯を現行犯人逮捕しようとした警察官に、同ダガーナイフを突き出すなどしたが殺害に至らず、その際に、同警察官の職務の執行を妨害するなどした殺人、殺人未遂、公務執行妨害、銃砲刀剣類所持等取締法違反の事件です。
 本件は、周到な準備の下、強固な殺意に基づき、残虐な態様により敢行された無差別殺人事件であり、特に7名もの被害者の尊い命を奪い、10名の被害者に重傷を負わせるなど、極めて重大な結果を発生させ、社会にも大きな衝撃を与えた、誠に痛ましい事件です。
 突然の凶行により命を奪われた被害者はもちろんのこと、御遺族の方々にとっても、無念この上ない事件だと思います。
 本件については、裁判において十分な審理を経た上で、最終的に死刑判決が確定したものです。
 以上のような事実を踏まえ、法務大臣として、慎重な上にも慎重な検討を加えた上で、死刑の執行を命令した次第です。

死刑執行に関する質疑について

【記者】
 本日の執行を終了した段階での、刑事施設に収容されている確定死刑囚の人数を教えてください。

【大臣】
 本日現在で、法務省において把握している拘置所に収容されている死刑判決確定者は106名です。

【記者】
 前回の執行からおよそ7か月経っての執行となりました。今回の執行時期の御判断の理由を教えてください。また、執行がされていない状態の未執行の死刑囚が多くいる中で、今回、加藤死刑囚を対象に選ばれた理由を教えてください。

【大臣】
 個々の死刑執行の判断に関わる事柄については、お答えを差し控えさせていただきます。
 一般論として申し上げますと、死刑執行に関しては、特定の人数を定めて執行しているわけではなく、個々の事案につき、関係記録を十分に精査し、刑の執行停止、再審事由の有無等について慎重に検討し、これらの事由等がないと認めた場合に、初めて、死刑執行命令を発することとしています。今回も、同様の慎重な検討を経て、死刑執行命令を発したものです。

【記者】
 判断、サインをいつされたかということと、大臣自身がそのとき感じた思い、そして昨年12月に死刑を出したときも、アムネスティ・インターナショナル等々が、日本は死刑制度の存否について、慎重に十分国民世論に配慮しつつ、正義の実現のために慎重に検討すべき問題だということは言っていますが、慎重な検討という国民的な議論を重ねてきたのかという点では非常に疑問視をしていました。国内法という中では死刑制度が認められている状況ですが、やはり国際的に考えると、死刑の廃止を含めた人権に配慮した法改正をきちんと議論すべきではないかという指摘が出ています。こういったアムネスティ等々の批判に対して、大臣としての見解を教えてください。

【大臣】
 執行命令書にサインをしたのは、7月22日です。
 死刑制度の存廃については、国際機関における議論の状況や、諸外国における動向などを参考にしつつも、基本的には、それぞれの国において、国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方などを踏まえて、独自に決定すべき問題であると考えています。国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については、死刑もやむを得ないと考えており、多数の者に対する殺人や強盗殺人などの凶悪犯罪が、いまだ後を絶たない状況等に鑑みますと、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科することもやむを得ないのであって、死刑を廃止することは適当ではないと考えています。

【記者】
 今回の加藤死刑囚の再審請求の有無について、あともう1点、先ほど教えていただいた確定囚の人数の中で、再審請求中の人数を教えてください。

【大臣】
 今回、死刑が執行された者による再審請求の有無等については、法務大臣である私からお答えすることは差し控えます。
 そして、本日現在で、法務省において把握している再審請求中の者は61名です。

【記者】
 先ほど22日に署名されたということですが、そのときの大臣の思いという点と、7月8日に安倍さんが襲撃されたという事件があって、いまだにその衝撃も続いています。このさなかということでしたが、7月8日の安倍さんの襲撃事件との関連が果たしてこの22日の署名に関連してあるのか、その点をお願いいたします。

【大臣】
 申し上げるまでもありませんが、死刑は、人の生命を絶つ極めて重大な刑罰ですから、その執行に際しては、慎重な態度で臨む必要があるものと考えています。それと同時に、法治国家においては、確定した裁判の執行が厳正に行わなければならないということもまた、これは言うまでもないことです。特に、死刑の判決は、極めて凶悪かつ重大な罪を犯した者に対し、裁判所が慎重な審理を尽くした上で言い渡すものですから、法務大臣としては、裁判所の判断を尊重しつつ、法の定めるところに従って、慎重かつ厳正に対処すべきものと考えています。
 また、一般論として申し上げれば、死刑執行に関しては、個々の事案につき、関係記録を十分に精査し、刑の執行停止、再審事由の有無等について慎重に検討し、これらの事由等がないと認めた場合に、初めて、死刑執行命令を発することとしています。今回も同様の慎重な検討を経て、法務大臣の職責として、死刑執行命令を発したものです。
 お尋ねの安倍元総理の事件については、私としても強い衝撃を受けて、卑劣な凶行は断じて許されないものであると思っていますが、死刑執行の判断は、飽くまでも法務大臣の果たすべき職責として行ったものであって、安倍元総理の事件と今回の死刑執行の判断には、全く関係はありません。

【記者】
 死刑判決の確定から執行までの期間についてお尋ねします。法律上は6か月以内ということになっていると思いますが、今回7年余り掛かっていると思います。これについての御見解、一般論でも構いません。教えていただけますでしょうか。

【大臣】
 今回の執行は、刑の確定から約7年5か月を経た上での執行でした。御案内のとおり、刑事訴訟法第475条第2項本文において、死刑の執行の命令は、判決確定の日から6か月以内にしなければならない旨が規定されていますが、これは一般に訓示規定であると解されており、そのように判示した裁判例もあると承知しています。

【記者】
 今の質問にも関連しますが、死刑執行までの平均年数を教えていただけますか。

【大臣】
 平成24年から令和3年までの10年間において、死刑を執行された者について、確定から死刑が執行されるまでの平均期間は、約7年9か月です。

【記者】
 令和2年10月から、被害者の御遺族等への死刑執行の事実を通知するという制度が始まっているかと思います。本日の執行でその通知をされたかどうか、された場合は何人に対してどのような事実をお伝えになられたかを教えてください。

【大臣】
 御指摘のとおり、令和2年10月から、被害者の方の親族又はこれに準ずる方からの御希望に基づいて、死刑を執行した事実を通知する取扱いをしているところです。法務省と被害者の御遺族等との連絡状況については、その有無を含めて、被害者の御遺族のプライバシー等に関わる事柄であり、お答えを差し控えさせていただきます。

【記者】
 先ほど大臣の御発言の中で、「凶悪犯罪が後を絶たない状況を鑑みると、死刑を科すこともやむを得ない。」とのお話がありました。今回の加藤死刑囚の事件は、無差別に人々を次々に殺傷するという、極めて痛ましい事件ですが、その後も無差別の大量殺人や拡大自殺と言われるような事件も相次いでいます。そういう社会情勢の中で、今回の加藤死刑囚の死刑を執行することの意義についてどのようにお考えでしょうか。

【大臣】
 個別の事件についてコメントすることは差し控えます。御指摘のように、身勝手な動機によって、尊い人の命が奪われるという卑劣な事件は、断じて許されないものだと思っています。死刑は、先ほども申し上げましたが、人の生命を絶つという極めて重大な刑罰ですから、その執行に際しては、慎重な態度で臨む必要があります。しかし同時に、法治国家においては、確定した裁判の執行が厳正に行われなければならないということもまた、言うまでもないことです。特に死刑の判決は、極めて凶悪かつ重大な罪を犯した者に対して、裁判所が慎重な審理を尽くした上で言い渡すものですから、法務大臣としては、裁判所の判断を尊重しつつ、法の定めるところに従って、慎重かつ厳正に対処すべきものだと考えています。

【記者】
 今回の執行で確定死刑囚が106名ということでしたが、これは袴田巌さんを含んでいるものでしょうか。

【大臣】
 その中には含まれておりません。

【記者】
 改めて、死刑制度に様々な意見がある中で、一般に死刑制度を続けていくことの目的と意義について、大臣のお考えをお願いします。

【大臣】
 死刑制度の存廃は、我が国の刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題です。国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現など、種々の観点から慎重に検討すべき問題です。先ほども申しましたが、国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については、死刑もやむを得ないと考えており、多数の者に対する殺人や強盗殺人など、凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等に鑑みますと、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科することもやむを得ないのであり、死刑を廃止することは適当ではないと考えています。

【記者】
 国民世論の多数は死刑をやむを得ないと考えていると何度かおっしゃっていると思いますが、それは内閣府が5年ごとに行われている調査のことを想定されておっしゃっているのでしょうか。

【大臣】
 内閣府の世論調査は、大変大きな判断のよりどころとなっています。令和元年11月に実施された内閣府の世論調査によると、「死刑もやむを得ない」とする意見が80.8パーセント、平成26年11月に実施した世論調査の結果では、同意見が80.3パーセントなどとなっています。

【記者】
 凶悪犯罪に対して死刑をするのはやむを得ないという再三の話ですが、私が加藤被告の裁判を地裁で見ていた限りでは、死刑が求刑され、判決も出ましたが、その罪の重さを、十分ではないながらも、彼なりにかなり重い形で受け止めていたということを感じています。やはり、日本の中では、死刑制度の廃止についての議論、例えば14年前の事件は非常に凶悪でしたが、その後の14年の中で、加藤被告の心の中、また罪に対する思いがどうやって変わっていったのかを含めて、国民には全くその話は伝わってきていません。犯した罪が非常に大きくても、その後死刑囚がどういった気持ちで更生に向かっているのか又は向かっていないのか、こういったことを含めた情報の開示と、果たして死刑制度そのものが必要なのかどうかという議論は、岸田政権になってもほとんど進んでいなかったように感じます。こういったことに対して、今後死刑囚の現在の状況を含めた情報を開示していく、若しくは同時に、死刑制度についても、十分な国民的議論を重ねていく、こういった思いや考えがあるのかどうか、お聞かせください。

【大臣】
 国民的議論ということですが、死刑の在り方については、我が国の刑事司法制度の根幹に関わる問題です。議論をいただくとした場合に、法務省が主導するというのではなく、多くの国民の皆様が、その必要性を感じて自ら議論に参加するというような形で、幅広い観点から議論がなされることが適切であろうと考えています。そのような国民的な議論の動向については、当然、私としても関心を持って注視していきたいと考えています。
 また、死刑確定者の処遇の状況についての情報公開というお尋ねでしたが、死刑確定者が毎日どのような生活を送っているかという点については、個々の死刑確定者の心情の安定を害さないように配慮することが必要だと考えています。情報提供の内容やその方法については、慎重に検討していく必要があると考えます。

【記者】
 大臣は死刑の執行には立ち会われたのでしょうか。前に千葉大臣が立ち会ったことがあると思います。今後そういったことはお考えでしょうか。

【大臣】
 私は立ち会っておりません。また、今後その考えもありません。

【記者】
 ミャンマーの国軍が昨日、民主派の元議員4人の死刑を執行しました。テロの加担の罪ということで、政治犯では46年ぶりの執行でした。このことについての大臣の見解と、日本政府として、今国軍の一部幹部を留学制度で受け入れるなどしており、在日ミャンマー人等々から、国軍の留学生受入れを含めて日本の政府の対応は非常に問題ではないかという声も出ています。4人の死刑執行をミャンマー国軍が行った判断をどう思うのかということを、今回のお話とやや関係すると思いますがお聞かせください。

【大臣】
 お尋ねのミャンマーの件については、所管外であり、法務大臣としてコメントは差し控えたいと思います。
 いずれにしても、死刑執行に関しては、個々の事案につき関係記録を十分に精査し、刑の執行停止、あるいは再審事由の有無などについて慎重に検討し、これらの事由等がないと認めた場合に、初めて、死刑執行命令を発することとしています。今回も同様の慎重な検討を経て、死刑執行命令を発したものです。
(以上)