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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和5年6月30日(金)

 今朝の閣議におきまして、法務省案件として、政令が2件、主意書に対する答弁書が12件ありました。

技能実習制度に関する質疑について

【記者】
 先日、アメリカの国務省が発表した世界各国の人身売買に関する年次報告書で、日本の技能実習制度について、政府が見直しに関する有識者会議を設置したことなどを評価する一方で、強制労働の報告が続いているという指摘もありました。こうした声に対する大臣の御所感をお聞かせください。

【大臣】
 御指摘の報告書におきまして、「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」の設置を評価する一方で、技能実習制度下における労働搾取に関する報道が繰り返されているにもかかわらず、技能実習生の人身取引被害者が1人も認知されていないことなどが問題点として指摘されていることはもちろん承知しています。
 その上で、御指摘の報告書は、米国が独自の立場に基づいて作成したということでありますので、法務大臣として、その内容について、良いとか悪いとか、お答えすることは差し控えたいと思っていますが、技能実習制度につきましては、平成29年11月に施行された技能実習法に基づき、制度の適正化や技能実習生の保護の取組を着実に進めてきたところです。
 そして、政府におきましては、本年5月に提出された有識者会議の中間報告書を踏まえ、現行の技能実習制度を実態に即して発展的に解消して、人材確保と人材育成を目的とした新たな制度を創設する方向で検討することとされております。その際、人権侵害等を防止・是正できない監理団体を厳しく適正化・排除する方策についても検討することとされているところです。
 今後、有識者会議において秋頃に取りまとめられる予定の最終報告書も踏まえながら、制度の具体化に向けて関係省庁とも連携しながら、政府全体としてしっかり取り組んでいきたいと考えています。

司法試験及び司法試験予備試験のデジタル化に関する質疑について

【記者】
 司法試験の関係でお尋ねしたいのですけれども、6月の頭に、デジタル社会の実現に向けた重点計画で、2026年実施の試験から、いわゆるパソコンで実施する方式に変えていくということが明記されました。こちらを受けた法務省の対応を伺いたいのと、国家公務員試験ですとか、他の国家試験のいわゆる記述を伴うものだと、デジタル化しているものはあまりないようで、そういう意味では、先陣切っての取組になるという形になると、色々な課題に取り組まないといけないと思いますし、司法制度への信頼という意味では、ある種失敗の許されない難しい取組なのかなと思いますけれども、これに向けた大臣のお考えを伺えればと思います。

【大臣】
 まず、司法試験及び司法試験予備試験のデジタル化につきましては、受験者の利便性の向上や、試験関係者の御負担を軽減する等の観点から、2025年度(令和7年度)から出願手続等のオンライン化及び受験手数料のキャッシュレス化の開始を目指します。それから、2026年(令和8年)に実施する試験からCBT方式による試験の導入。これを目指して、現在、調査研究等が実施されているという段階にあります。
 司法試験等のデジタル化につきましては、政府方針としていわゆる骨太の方針2023等にも記載されておりますので、引き続き実現に向けた取組を進めていきたいということです。研究の余地があると思いますので、しっかりと調査研究をしていきたいと思います。

日ASEAN特別法務大臣会合等に関する質疑について

【記者】
 3点お伺いします。
 今日、東京新聞にも出ていますが、(7月)6日、7日、日ASEAN特別法務大臣会合及び(7月)7日のASEAN・G7法務大臣特別対話、ここに国軍で任命されたティーダー・ウー氏、検事総長等々も呼んでいるのではないかという指摘があります。法務省、招待者は調整中ということですが、ティーダー・ウーさんは、アメリカ、カナダ、イギリスでも民主主義と法の支配を損なわせたとして、経済制裁が発表され、国際的にも非常に強く批判されている国家統治評議会の一員でもあります。彼女を呼ぶのか、若しくは彼女以外の国軍の方を招待するのか、その理由ということ。
 それから大臣、読まれているか分かりませんが、6月28日付けでウィシュマさんの、30回、亡くなる前に面談等、手紙の交換等をしていた、START(スタート)という面会支援団体の方たちが、法案審議のさなかの5月、6月に、これまで10年以上にわたって仮放免状態で収容していなかったお子さんを抱えている女性たち含めて3人の方を、今、突如強制収容されているということなんですね。このことについても、なぜ突然、法案審議、一部は成立した後に収容されているということで、旦那さんもお子様も、今、非常に生活が困っているということです。なぜこのようなことをしているのか。把握されていないかもしれないですが、調べられて、発表していただけるのかという点。
 そして最後です。参与員制度、これまでたくさんの記者さんが質問していますし、私も聞いていますので、今までと同じ説明なら良いですが、見直さないという根拠ですね。(難民審査参与員の)柳瀬さんも、そして浅川参与員も、そして柳瀬さんのパートナーである参与員も、いずれも、お話を色々聞いている限り、難民認定率が0.0パーセント以下ということです。やはり、こういった参与員に対する不信感が非常に強まっています。やはり、私たちとしては、少しでも良い制度にするために、参与員制度、今の参与員の状況、柳瀬さん、これからあと2年あります。AARという組織も、彼女の発言によって様々な批判が集中しており、今回、先週の土曜日に彼女を理事会の決議で退任させるという決断をしております。こういった元々いた組織からも批判が出ている、この柳瀬さんを、継続的に難民(審査)参与員に位置付けるということは、やはり問題ではないのか。ちょっと恐縮ですけれど、私、上川さん(元大臣)や古川(元)大臣にもこの会見で結構厳しい質問を聞いています。上川さんなんかは、その場では問題ないんだと言っても、その後、記者の質問に対してどうなっているんだと、各担当官に問合せがきちんと来ていて、その後、やはり担当官のほうから、きちんとこちらでも対処して改善するので大臣への質問は控えてほしいということもありました。そのぶん、上川さんと色々質疑でぶつかることはありましたけれど、やはりその裏では、しっかり、どうなっているのかということで是正を促していただいたということも分かりました。ただ、私は齋藤さんに期待している部分もあるので、是非、見直さないということでなく、少しでも良いものにという、改善に向けた一歩、踏み込んでいただきたいですが、その三つ、お答えいただけますか。

【大臣】
 まず最初、ミャンマーのお話がありました。これはもう何度も、我々日本政府の立場で何度も申し上げているところでありますが、我が国政府は、一貫して、ミャンマー国軍によるクーデターの正当性というものは認めていないわけです。ですから、当然今回の会議におきましても、そうした立場を踏まえて対応していきたいと考えています。ただ、個々の、誰を呼ぶとか呼ばないとか、今どうなっているかという外交上のやりとりの途中段階のものは、差し控えさせていただきたいと思いますが、その上で、一方でASEANの会議でありますので、ASEANの考えというものももちろんあるだろうと思いますが、繰り返しますが、政府は一貫してミャンマー国軍によるクーデターの正当性を認めていないので、そうした立場を踏まえて対応していくということを強調させていただきたいと思っています。
 それから二つ目の質問。これは、申し訳ないですけれども承知しておりませんでした。これは調べないと何とも言えないと思いますので、そこは御容赦いただきたいと思っています。
 三つ目の参与員の話は、国会でも相当御議論がありましたので、私自身、もう何十回となく、どういう実態で審査をしているかということは、事務方と話を繰り返しやってきました。その上で、制度そのものを変えなくてはならないという認識は、今のところ私はその議論の過程の中で、そこまでは思っていないのですよ。しかし、一つ一つ、訴訟も起こっているぐらいですから、一つ一つ運用の中で問題を感じるようであれば、それは当然のことながら対応していくというふうにしたいと思っています。本当の難民の人を、追い返したいなんて思っていませんから。だから、そこはしっかりとやっていくということに尽きるわけでありますので、その運用はしっかり守っていきたいと。
 柳瀬さんに関しては、御質問がありましたけれども、私は過去、この間も御質問があって申し上げましたけれど、彼女の判断のものも見ています。その上で、過去の彼女の判断がおかしかったから今辞めてもらわなくてはならないという結論には至っていません。ですから、引き続き協力していただきたいというふうに思っています。

難民審査参与員等に関する質疑について

【記者】
 難民審査参与員に関しましての質問です。参議院の法務委員会で、先日、参考人として招致された浅川晃広氏、彼の共著として「ザ・在日特権」といったものがあります。こうした本で述べられている在日特権という言葉は、現実には存在しないものをあたかも存在するかのように語り、在日コリアンへの差別、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムを助長させるものですが、こうした言葉を用いることの危険性について、法務省の見解をお聞かせください。また、こうした本に共著者として名を連ねる人物が、難民審査参与員として難民審査に関わることは不適切かと思われますがいかがでしょうか。「お答えできない。」「お答えは差し控える。」ではなく、はっきりとした見解をお聞かせください。

【大臣】
 まず、御指摘の著書における筆者の意図について、私はこうだああだというふうに、法務大臣として申し述べることは適当ではないと思います。
 その上で、御質問の中でありました、「在日特権」という言葉を用いることの危険性につきましては、それが差別的な意図によるものということであるならば、それは一般論として私は適当ではないというふうに思います。
 いずれにしても、特定の民族や国籍の人々を排除しようとする不当な差別的言動は、あってはならないと認識しております。
 それから、参与員の選任についてお話がありました。参与員は、入管法の規定にのっとりまして、人格、公正な判断をすることができる、かつ、法律又は国際情勢に関する学識経験を有する者のうちから任命することになっています。
 具体的には、日弁連やUNHCR等からの推薦を受けるなどしつつ、事実認定の経験豊富な法曹実務家、地域情勢や国際問題に明るい元外交官や国連関係機関勤務経験者、国際法、外国法、行政法の分野の法律専門家等の中から選任していまして、御指摘の浅川参考人につきましては、こういう基準に照らして、在オーストラリア日本国大使館での駐在経験や名古屋大学・大学院国際開発研究科講師としての勤務経験があるなど、国際情勢に関する学識経験を有する者として、先ほど申し上げたような考えに合致する者として、適切に選任されたものと認識しています。

【記者】
 在日特権という言葉を使う方であっても、人格は高潔であると判断された意味ということでしょうか。

【大臣】
 先ほど申し上げたとおりです。

【記者】
 参与員を、制度の完全な見直しは必要ないということですけれど、彼女の過多な配分ですね、全国111人もいるのに、2022年全体の4分の1を振り分けておりました。これが入管庁の判断です。こういったことはやはりおかしいのではないか。配分について見直すおつもりはありますか。

【大臣】
 まず、それぞれの委員の先生方のお仕事の関係で、どれだけ時間を投入できるかという問題もありますので、したがって、率が高いから低いからということではなくて、柳瀬さんが判断された結果がちゃんと適正なのかどうかということが、私は大事ではないかと思っております。そういう意味では、私どもは今まで、私も随分中身をチェックさせてもらいましたけれども、先ほど申し上げたような結論に私は至っているということであります。

【記者】
 今の関連ですけれども、国際人権法の御専門でベテランの参与員の先生、具体的に言うと阿部浩己先生ですけれども、難民調査というのは、書類審査だけでは分からないことが多いし、インタビューを参与員自身の過去の経歴ではなく、やはり専門的なケーススタディが具体的に必要だというふうに常々おっしゃっています。そういったことで、5月30日にも、現役の難民(審査)参与員の方とか、それから2014年の専門部会で専門員だった弁護士さんが記者会見をして、現行難民審査の在り方とか参与員制度の問題点について詳細な報告をされました。このような方々との定期的な意見交換、柳瀬さんとかのそういったケースも含めてですが、そういった意見交換の場がやはり必要ではないかと思いますけれど、大臣の考えを聞かせてください。

【大臣】
 「意見交換の場」というものの私の受け止めが正しいかどうか分からないところがありますけれども、適切な難民認定手続を行うに当たって必要な情報につきましては、難民認定業務に従事する職員や難民審査参与員に対しては共有するという方針でやっています。
 今回成立しました改正入管法の審議の過程では、参議院におきまして、申請者に質問をする際の手続の透明性・公平性を高める措置を検討し、十分配慮すること等を含む附帯決議がなされておりますので、その趣旨を踏まえて、難民認定手続の更なる適正化、御指摘のようなことも含めて、不断に取り組むとともに、真に保護すべき者を、私は一層確実、迅速に保護できるように努力していきたいというふうに考えているところです。
(以上)