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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和5年7月11日(火)

 今朝の閣議において、法務省案件はありませんでした。
 続いて、私から、先週行った司法外交閣僚フォーラムについて御報告します。
 司法外交閣僚フォーラムは、先週の7月6日及び7日に、成功裏に終わりました。
 また、7月5日から8日にかけて行った、17の国や国際機関等の閣僚級との二国間(バイ)会談も滞りなく終了しました。
 参加いただいた各国代表団の皆様、特別イベントやユースフォーラム参加者の皆様、全ての関係者の皆様に対し、深く御礼申し上げます。
 全体を振り返りますと、国際社会がロシアによるウクライナ侵略という法の支配に基づく国際秩序への重大な挑戦に直面し、歴史的岐路に立つ中で、ASEANとG7という我が国の重要なパートナーとの連携や価値の共有の重要性を力強く打ち出すことができたと思います。
 そして、各会合についてですが、まず、日ASEAN特別法務大臣会合は、ASEANが、法務・司法分野において、域外国との間で初めて開催する閣僚級会合でありました。
 この会合では、自由で開かれたインド太平洋の要衝でありますASEANとの関係を一層強化することができたと思います。
 取り分け、ASEANとの間で法の支配等の価値の重要性を確認することができたこと、そして、ASEANから司法外交や法制度整備支援といったこれまでの我が国の取組について高い評価を得、今後の日ASEAN協力強化についてのコミットメントを得られたことは、ポスト友好協力50周年に向けた大きな成果であったと思います。
 続いて、G7司法大臣会合は、我が国では15年ぶりに開催されたもので、15年前は司法・内務大臣会合として実施したため、司法大臣単独の会合としては昨年のドイツに続いて2回目の開催となりました。
 この会合では、G7の法務閣僚が法の支配等の価値を堅持するべく一層連携していくことなどを確認して力強いメッセージを発信することができました。
 取り分け、我が国が提唱した「ウクライナ汚職対策タスクフォース」(Anti-Corruption Task Force for Ukraine。略して、ACT for Ukraine)の設置がG7の賛同を得て成果文書に盛り込まれたことは大きな成果と考えています。
 そして、ASEANとG7の法務閣僚による史上初の会合となったASEAN・G7法務大臣特別対話ですが、これは、今年が、日・ASEAN友好協力50周年、かつ、G7議長国という節目の年ということで実現できたものです。
 広島サミットで掲げられた、G7とASEANとの連携強化というコミットメントを、法務・司法分野で実行することができたという意義は大きいと思います。
 これは、アジア唯一のG7メンバー国であり、また、長年にわたる法制度整備支援等を通じてASEANとの間で信頼関係を構築してきた我が国だからこそ実現できた成果であると思います。
 また、今回1回限りの取組に終わらせることなく、今後も対話を継続するために、ASEAN・G7の若手法務省職員等による定期的な会合である「ネクスト・リーダーズ・フォーラム」の創設を提案し、各国の賛同を得たことも、今後の両者の関係強化において、極めて有意義であると自負しております。
 今後は、司法外交閣僚フォーラムの各成果文書で確認された事項等を着実に実施していくとともに、国際社会における法の支配の確立を目指す司法外交の取組を、引き続き積極的に進めてまいりたいと考えております。

司法外交閣僚フォーラムに関する質疑について

【記者】
 冒頭、発言のあった、司法外交閣僚フォーラムを受けた今後の司法外交の在り方について伺います。G7とASEANで設置する「ネクスト・リーダーズ・フォーラム」の開催時期について、現時点でのめどがあればお聞かせください。扱う議題など、現時点での想定はありますでしょうか。また、同様にG7で合意した「ウクライナ汚職対策タスクフォース」が活動を始める時期についても現時点での見通しなどありましたら教えてください。

【大臣】
 まず、今回、史上初となりますASEAN・G7法務大臣特別対話を開催し、今後の更なる対話に向けた道筋を開くことができたと。これは大変意義があると思っています。
 もとより、相互理解と信頼構築は一朝一夕に成し得るものではないことから、今後もこうした対話の機会を設けて時間をかけて取り組んでいくことが大事だと、私は思っています。
 そのような観点から、未来を見据えた重層的な関係構築を行う場としての「ネクスト・リーダーズ・フォーラム」の創設が各国の支持を得たことに、大きな手応えを感じています。
 同フォーラムでは、法務・司法分野の若手政府職員が、互いの知見やグッドプラクティスの共有等を通じて、息の長いパートナーシップを構築していくことが大事ですし、それを目指していきたいと思っています。
 ただ、同フォーラムは、金曜日に会議があったので、同フォーラムの開催時期や議題等の具体的な内容については、今後、各国と調整していく必要があると思っています。
 汚職対策について、健全な経済活動の基盤となるだけでなくて、ウクライナが復興するに当たり、公平・公正な資源の活用を行う上で重要であると。さらに、汚職対策は、ウクライナのEU加盟に向けて取り組むべき課題でもありますので、安全保障の観点からも喫緊の課題だろうと思っています。
 このタスクフォースの具体的な活動内容等は、これからG7各国と調整していくことになりますが、時宜を得た効果的な活動を行えるように、可及的速やかな活動開始を目指していきたいと考えています。

【記者】
 日ASEANの関係に関連して伺います。先週、日ASEAN特別法務大臣会合が初めて行われましたが、今後、日本とASEANの関係をどのように継続していきたいと考えているのか、特別法務大臣会合と同様の会合を考えているのかなど、具体的に、今後に向けて考えている方策などがあればお伺いします。

【大臣】
 本会合では、今後の日ASEAN協力の指針となる「共同声明」を全会一致で採択したわけであります。法務・司法分野において、我が国とASEANは、これまで長年にわたって法制度整備支援等を通じて連携してきましたが、こうした政治文書を採択するのは実は初めてのことでありまして、まずはこれを着実に実施することが最優先事項なのだろうと思います。
 取り分け、これまでは主として二国間で進められてきた協力について、この共同声明の採択を契機として、我が国とASEANという多国間での協力を進める足がかりができたことの意義は、私は大きいと感じています。
 法務省としては、ASEANとの法務・司法分野における協力を一層発展させていくために、今後もASEANとの合意に基づいて閣僚級の対話を継続していきたいと考えています。

【記者】
 G7・ASEANの法相会合に関してですが、LGBTQに関する前回質問させていただいた具体的な原理や法制度に関する突っ込んだ質疑がしっかりやられたかどうか。
 また、その場に、そのときも聞きましたけれど、法務省のサイトにはミャンマーが参加国には含まれていませんでしたが、これ、日本政府が参加を拒んだという理解で良いのか。現地報道によりますと、国軍の関係者は会合に参加するため来日していたが、最終的に不参加になったと出ております。これは事実でしょうか。もし、来日していた場合、具体的に誰が来ていたかも教えてください。

【大臣】
 司法外交閣僚フォーラムの各会合におきましてのやり取りの詳細というものは非公開で行っているので、差し控えざるを得ないわけでありますが、お尋ねのLGBTに関する議論の結果については、G7司法大臣会合の成果文書に盛り込まれているところです。
 それから、ミャンマーの件につきましては、今おっしゃったような事実は、私は承知していません。来られているとか、来られていないという話は。ただ、どういうやり取りがあったかということにつきましては、これは外交上のやり取りに関しますので、控えさせていただきたいというふうに思っています。ただ、結果として、御案内のように参加しておりません。

【記者】
 ミャンマー参加国のこと、分かりませんというのが回答になっていません。2週間前に聞きました。席が用意されていて、その場に国軍の方が来ていたそうです。ただ、出席できなかった。つまり、直前に、最終的にはやっぱり呼べないということが決められたんじゃないか。御回答できないということではまだしも、分かりませんという回答は、もう一度きちんと答えていただきたい。

【大臣】
 私の申し上げた趣旨は、国軍の方が来ているという事実を承知していないと。その事実関係を知らないということを正直にお答えしただけであります。

改正刑法及び性的姿態撮影等処罰法に関する質疑について

【記者】
 改正刑法と性的姿態の撮影を処罰する新法に関してお伺いします。明日、主な罰則等が施行される見通しかと存じます。大臣、国会と記者会見において、これらの法律が非常に重要である旨強調していただいていると思うので、改めて本改正の意義ですとか、国民の皆様に施行に合わせて考えていただきたいポイント等があればお聞かせください。
 併せて、刑事弁護が専門の弁護士の方から、一部、処罰範囲の拡大につながるのではないかと、懸念も一定示されていると思いますが、この点に関してもお考えがあればお聞かせください。

【大臣】
 明後日(本月13日)に施行される性犯罪に関する二つの法律は、いずれも、性犯罪の被害の実情を踏まえて、事案の実態に即した対処をする上で、大きな意義を有するものと考えています。
 不同意性交等罪・不同意わいせつ罪については、より明確で、判断のばらつきが生じない規定とするために、性犯罪の本質的な要素である、自由な意思決定が困難な状態で性的行為が行われたという点を、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」という文言を用いて統一的な要件として規定した上で、その原因となり得る行為や事由を具体的に列挙するというふうにしたものでありまして、刑法上の他の規定と比較しましても、明確性に問題はなく、これにより、現行法の下でも本来なら処罰されるべき、同意していない性的行為が、より的確に処罰されるようになると考えています。
 法務省のホームページには、ただ今申し上げた点を含めて、二つの法律の趣旨や内容を分かりやすくまとめた資料やQ&Aを掲載しておりますので、是非御覧いただきたいと思います。
 大事なことは、この二つの法律の趣旨や内容について、国民の皆様に、しっかりと御理解いただけるよう十分な周知をしていくことだと思っていますので、努力していきたいと思います。

再審事件に関する質疑について

【記者】
 昨日、検察、袴田さんの有罪主張へという報道が出ております。再審が長期化するということで、おそらく有罪立証、かなり見込みとしては難しい中で、なぜこのような判断をしたのか、世論の批判は高まっていると思いますが、お考えをお聞かせください。

【大臣】
 お尋ねの件は、お分かりになった上で質問されていると思いますが、検察当局が法と証拠に基づき慎重な検討を重ねた結果、7月10日に、今後の再審公判において被告人が有罪である旨の主張立証をする方針であることを、検察当局が表明したということだと承知しています。その上で、お尋ねは、今後、再審公判が予定されている個別事件における検察官の活動内容に関わる事柄でありますから、法務大臣としての私の立場で所感を述べることは差し控えたいというふうに思っています。

【記者】
 再審の決定手続についてお聞きします。袴田事件ですが、1966年に起きた事件で、袴田さんは有罪か無罪か、いまだに分からないまま死刑判決を受けて、48年収監されました。再審がようやく決定されましたが、更に数年間かかってもおかしくない。人間ならどう考えても異常です。人権の観点から、再審の決定プロセスの改革の必要性を感じていませんでしょうか。

【大臣】
 まず、袴田さんの件についての検察当局の判断について、法務大臣としてコメントするのは差し控えるべきだというふうに思っています。
 再審の制度については、法制審議会の部会において、1回議論がなされています。そこでは、再審請求審における証拠開示について、証拠開示すべきだという議論がありますけれど、一般的なルールを設けること自体が困難である、あるいは、再審請求審は通常審と手続構造が異なるので、通常審の証拠開示制度を転用することは整合しないといった問題点が指摘されていまして、これらを踏まえて慎重に検討する必要があるだろうというふうな結論が1回出ています。
 その上で、この点につきましては、平成28年成立の刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第9条第3項というものがありまして、そこで検討を行うことが求められています。それで、平成29年3月から、この検討に資するように「刑事手続に関する協議会」というものが開催されて、令和4年7月からは、同法附則第9条により求められている検討に資するため、「改正訴訟法に関する刑事手続の在り方協議会」というものが開催されておりまして、この協議会においては、例えば、再審請求審における証拠開示の話についても協議を行う予定となっているわけであります。現時点での我々の姿勢としては、この法律の附則の趣旨を踏まえて、これらの協議会で充実した協議が行われるよう、適切に対応していきたいというふうに考えています。

名古屋入管被収容者の仮放免に関する質疑について

【記者】
 START(スタート)という名古屋の入管の支援団体が、申入書というものを出しております。法改正の前後に、10年以上仮放免状態であった女性たちが収容され、そのお子さんやパートナーの夫の方が、非常に生活が混乱しているという状況です。これは具体的にABCという3人の方が不当な収容ではないかという申請が出ておりますが、これ、もう2週間前に質問を投げさせていただきましたので、大臣としてどういうふうに認識されているかお聞かせください。

【大臣】
 STARTさんの件については、記者さんからあった御指摘の申入書について、私も確認をしました。申入れにあった各事案について報告も受けました。申入れは、御指摘の3名の方の仮放免を求めるものであったと思いますが、これは個別案件に関する事柄ですので、その詳細についてお答えは差し控えさせていただきたいですが、あえて申し上げれば、そのうち2名の方については、既に仮放免されております。残りの1名についても、適切に手続を進めていくということです。これが私の答弁としては限界かと思います。

【記者】
 今の名古屋入管の件ですが、2名仮放免され、1名は今現在収容中だということですけれども、10年以上仮放免で、御家族なわけですね。それぞれ。国籍も違うということで、長期の仮放免ですから、通常であれば10年以上の仮放免で、在留特別許可が検討されてもしかるべき事案ではないかと思うのですけれども、再収容されて、申入れしたらすぐに2名は仮放免されたわけですね。これは何で収容する必要がそもそもあったのかということと、こういった在留特別許可についてきちんと見直すようにといった通知・通達のようなことを、大臣・法務省・本庁として、地方入管に対して出すようなことは考えていらっしゃるのかどうかということ。それと、在留特別許可も、以前は「定住者」というビザが結構出ていたのですけれど、最近は、非常に制限のある「特定活動」というビザが乱発されているような気がします。これは非常に制限がかかっていて、仕事ができなかったり、生活保護を受けられなかったり、色々なところで不自由ですけれども、何で「定住者」を出さなくなったのか。この2点についてお伺いします。

【大臣】
 まず、3人のうちのもう一人の方の話については、個別事案に関することですので、その詳細をここでお話しすることは控えたいと思います。
 その上で、一般論として、仮放免の許否判断及びそれに伴う再収容につきましては、入管庁において、個別の事案ごとに、法令に従って、様々な事情を踏まえて、適切に判断しているということであります。それに尽きるということであります。また、新たな指示のようなものを現時点で出すことは考えていません。
 それから、在留特別許可に当たって付与する在留資格についての話がありました。記者さんがそういう解釈をされているというのは、今、お伺いしましたが、この在留資格については、飽くまでも当該外国人が行おうとする活動や、当該外国人が有する身分若しくは地位に応じて個別に決定しているものであるということなので、一概にこうだということを言うのは困難だというふうに思っています。

【記者】
 先ほど、3人のうち二人がSTARTの申入れで解放されたと。すると、なぜ収容したのかと。申入れがあって大臣が察知することになったから早々仮放免が出たのかなというふうにも見えます。適切な収容だったのでしょうか。それだけお答えください。

【大臣】
 なぜ収容したかとかそういう点につきましては、個別の案件についての判断でありますので、この場でお答えするのは差し控えるべきであろうというふうに思っております。
(以上)