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司法外交閣僚フォーラムにおける法務大臣記者会見の概要

令和5年7月6日(木)

 本日、司法外交閣僚フォーラムが開会し、先ほど、初日のプログラムである日ASEAN特別法務大臣会合が終了いたしました。全ての参加者・関係者の皆様に心から感謝を申し上げます。取り分け、ここに御同席いただいております御両名、すなわち共同議長を務めていただいたマレーシア首相府のアザリナ大臣と、会合の準備に御尽力いただいたASEAN事務局のカオ事務総長には、この場を借りて、特に深く御礼申し上げたいと思います。
 まず、私から、開催国を代表して、また、共同議長として、議論の総括と私の思いを述べさせていただきます。言うまでもなく、ASEANは自由で開かれたインド太平洋の要であり、我が国法務省にとって重要なパートナーです。そのASEAN各国と我が国は、これまで長年にわたり、地道な法制度整備支援等の取組を通じて、着実に信頼関係を構築してまいりました。この間、我が国から実に多くの長期専門家がASEAN各国に温かく迎え入れられ、現地の方々と共に汗をかきながら、基本法令の起草、制度整備、人材育成等の支援活動に取り組んでまいりました。また、数え切れないほどの多くの研修等を通じて、貴重なネットワークが脈々と構築されてきました。今日の日ASEANの信頼関係は、双方の先人たちによる不断の努力のたまものであり、先人たちが情熱と理想を掲げ、時間を掛けて築き上げてきたものであることを思うと、胸が熱くなるものがございます。ASEANが域外国、つまりASEAN以外の国と、法務・司法分野における対話の場を持つのは、我が国が初めてであり、この分野における閣僚級会合の開催も、今回が初めてであると承知しています。日ASEAN友好協力50周年という記念すべき節目に、このような会合が開催できたことを心からうれしく思います。
 さて、本日の会合では、午前・午後の二つのセッションにおいて、皆様と共に、法務・司法分野における日ASEANの今後の協力について、忌憚のない意見交換を行いました。特に、午前のセッションでは、未来に向けたメッセージとして、本会合の成果文書となる共同声明を全会一致で採択いたしました。この共同声明には、重要なメッセージが数多く含まれますが、ここではそのいくつかを御紹介したいと思います。
 まず、法務省が推進している司法外交についてです。共同声明では、司法外交を含む法務・司法分野におけるASEANと我が国の協力と連携は、各国における法の支配の強化と共に法の支配や基本的人権の尊重といった普遍的価値を共有する平和で繁栄した国際社会の構築に貢献するものであることが強調されました。司法外交を旗印に掲げ、法の支配の促進に取り組んできた我が法務省にとりまして、司法外交をASEANの皆様に評価していただいたことは、感慨深いものがございます。
 また、共同声明では、司法外交の柱の一つであり、ASEANとの連携強化に大きな貢献をしてきた法制度整備支援の取組にも言及をされました。そこでは、我が国法務省の法務総合研究所国際協力部(ICD)と、法務省と国連が共同で設置・運営する国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)の両機関が果たす役割の重要性が確認されるとともに、両機関による法制度整備支援を引き続き強化していくことが確認されました。司法外交の立役者である取組の重要性をしっかりと確認し、これを更に発展させていくことへのコミットメントを打ち出せたことは、両機関の活動はもとより、我が国とASEANの法制度整備支援の今後に向けた大きなはずみ・飛躍の布石になると確信しています。
 さらに、ASEANと我が国は、友好、協力、イコールパートナーシップの精神に基づいて、様々なコミットメントの実現に取り組み、協力関係を更なるフェーズへと昇華させることを確認しました。こうした崇高な精神が、今後の指針として閣僚級の合意のもとに示されたことは、大変重要なことであると思います。そのような意味で、今回採択された共同声明は、日ASEAN友好協力関係50周年の節目にふさわしい内容になっていると自負しています。改めて、その策定・採択に御協力いただいた全ての関係者の方々に深く御礼申し上げます。
 午後のセッションでは、ASEANと我が国が今後取り組んでいく具体的活動を取りまとめた日ASEANワークプランを承認しました。このワークプランは、民商事・刑事といった具体的な法分野はもとより、領域横断的な取組をも盛り込んだ充実したものであります。こうした取組の実施や共同声明に掲げられたコミットメントの実現につながると確信しています。また、このセッションでは、国連開発計画(UNDP)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)、タイ法務研究所、そしてUNAFEIからも専門的知見に基づいた御意見・御提案を頂き、ワークプランの実施に向けた充実した議論を行うことができました。こうした専門的機関にも御参加いただき、SDGsでもその重要性がうたわれているパートナーとの連携、マルチステークホルダーアプローチを取り入れたことは、本会合の議論に深みを与えたと思います。
 本会合では、大変有意義な成果と、ASEANとの更なる連携強化に向けた確かな手応えが得られたと思います。しかし、この会合の成功がゴールではありません。私は、今日を新たな出発点として、ASEANの皆様と共に、日ASEAN関係を次なるステージへ昇華させる決意を新たにしています。

日ASEAN特別法務大臣会合に関する質疑について(法務大臣に対する質問部分のみ)

【記者】
 ASEANが第三国と法務・司法の分野で閣僚会合を持つのは今回が初めてということですが、議論の手応えをお聞かせください。取り分け、ウクライナ侵攻で重要度が高まる法の支配や基本的人権の尊重といった価値観の共有への理解は進みましたでしょうか。
 また、共同声明に対等なパートナーシップの精神と盛り込みましたが、法の支配などをめぐり、ASEANに対してどのような行動を求めていきたいとお考えでしょうか。

【大臣】
 まず、本会合では、私は大変有意義な成果とASEANとの更なる連携強化に向けた確かな手応えを感じることができました。取り分け、採択されました共同声明では、これまでに法務省が推進してきた司法外交をASEAN各国から高く評価していただいたということもありますし、長年にわたり実施してきた法制度整備支援を引き続き強化していくということ。そして、日ASEANの協力関係を次なるフェーズへと昇華をさせること。こういったことが確認されました。私は、日ASEAN友好協力50周年という節目にふさわしい内容になったと思っています。
 共同声明では、司法外交を含む法務・司法分野におけるASEANと我が国の協力と連携は、先ほど申し上げましたように各国における法の支配の強化のみならず、法の支配や基本的人権の尊重といった普遍的価値を共有する国際社会の構築にも貢献するものだという点が強調されておりまして、ASEANと我が国との間でこうした価値の共有について、共通理解が得られた。私は、これは大変な成果ではないかと思っています。
 その上で、共同声明にはイコールパートナーシップについて盛り込まれておりますが、私の考えを若干補足させていただきたいと思います。我が国として近年めざましい成長を遂げているASEANから学ぶべきことは多くあると感じています。また、人、物、情報の流れが一層加速化する中で、我が国とASEANとが互いに知見を提供し合い、取り組むべき共通の課題も増えてきていると認識しています。こうした実情も踏まえながら、国際社会の責任ある一員として、我が国とASEANが対等な立場で、法の支配や基本的人権の尊重という普遍的な価値の更なる共有ということも含めまして、共に手を携えて進んでいくパートナーであるという趣旨が、イコールパートナーシップの精神と私は考えておりまして、こういう意味では良い共通認識ができたと思っております。

【記者】
 法制度支援の強化と連携ということを共同声明の中にまとめられましたけれども、今後どのような強化を更に進めていくのか、また、日本としてはどのようなことが具体的にできるのかということを教えてください。

【大臣】
 まず、私は法務大臣になって感激したことの一つが、いかにこれまで法務省がASEAN各国を含むアジア諸国を主な対象としまして、基本法令の起草ですとか、制度整備ですとか、人材育成を柱とする法制度整備支援というものを、実に熱心に長いことかけてやられてきたということに、非常に感銘を受けました。そのやり方も、相手国と緊密に話し合って、その社会、文化、法制度等を尊重しながら相手の立場に立って支援を行うということを重ねてきたからこそ、今日のようなこういう会合ができるようになったのだという思いを強く感じています。そして、今回の日ASEAN特別法務大臣会合で採択された共同声明には、先ほど申し上げましたように法制度整備支援を引き続き強化していくということが盛り込まれました。これまで、この法制度整備支援は、主に2国間で実施されてきた支援・協力関係、言い換えれば点と点の関係を基盤としつつ行われてきましたが、これはこれで大事で、引き続き大事ですが、今後はこれを日本とASEAN全体という多国間の取組に拡大していくということなんだろうと思っています。また、共同声明には、日ASEANがイコールパートナーシップの精神に基づいて取組を進めていくことが掲げられておりまして、つまり互いに知恵を出し合って学び合っていくことを旨としながら、新たな協力関係へと発展してさせていくことでASEANとの連携がますます強化されるというふうに考えているところであります。具体的にというお話がありましたので、例えば、ASEAN各国から日本に来ている留学生を対象として共同研究を行うとか、それからASEAN各国を対象とした刑事司法に関する新たな研修などを開始する予定であります。これからも、外務省、JICA、関係機関との連携も必要です。積極的かつ戦略的に法制度整備支援を推進していきたいと思っております。私は、これは日本の外交の一つの大きな宝だと思っていますので、しっかりやっていきたいと思っています。

【記者】
 今回の共同声明に関してですけれど、齋藤大臣が重要だと思っているポイント、今回特にこだわったポイントなどがあれば、お伺いします。
 今回開かれた日ASEAN特別ユースフォーラムに関しても伺います。今回、勧告が出されたと思います。今回話し合ったユースの方たちは、今後国際社会を担っていく重要な存在だと思いますし、今回の勧告は、かなり重いものになるのかなと思いますが、今後、法務行政にどのようにいかしていくか、お考えをお伺いします。

【大臣】
 まず最初の御質問ですけれど、なかなか絞るのは難しいですけれど、あえて3点申し上げますと、まず私は、日本とASEANが法の支配や基本的人権の尊重といった普遍的価値の維持・促進に共にコミットするという意思がしっかりと確認されたということが、第一点大きなことではないかと思っています。それから、もう一つ有り難いことに、法務省が推進している司法外交というものが、これらの価値を共有する平和で繁栄した国際社会の構築に貢献するものであるという点が高く評価されたということが、二つ目の大事なポイントかと思っています。三つ目は、御案内のように国際情勢が激しく変動しています。我が国とASEANが取り組むべき共通の課題も増えてきている中で、我が国とASEANが対等な立場で共に手を携えて進んでいくべきパートナーであるという趣旨から、イコールパートナーシップの精神に基づいて協力関係を深めていこうということが明記されたということが三つ目の重要なところかなと思っています。直接、共同声明というのは、これにちょっと外れますが、繰り返しになりますけれど、私は、今まで法務省が本当に長年にわたって汗をかきながら共に手を携えて法制度整備支援をやってきたことが、多くの国の皆さんに評価されているということに強く感銘を受けましたし、うれしかったということを付け加えておきます。
 ユースフォーラムの件ですが、まず、このユースフォーラムの開催に当たっては、共催いただいたタイ法務研究所を始め、御協力いただいた関係機関の皆様に感謝を申し上げなくてはならないと思います。特別ユースフォーラムでは、日本、ASEAN及び東ティモールの若者約70名が会場に集まりまして、司法へのアクセスを強化するためのリテラシー構築、デジタル時代における法の支配への鍵というものを議題として、2日間にわたって活発で実りある議論が行われたと聞いています。この議論の成果は勧告として取りまとめられ、先ほど私が直接頂きました。目をざっと通しましたけれど、司法分野における幅広い教育や啓発の在り方、それから誰にでも利用しやすい司法制度の構築に向けた取組に関しまして、デジタルネイティブである若者ならではの新鮮な視点が盛り込まれていた点に、非常に刮目しました。
 また、2日間の議論を通じて様々なバックグラウンドを持つ日本とASEAN各国の若者同士の相互理解が深まって、次世代を担う若者たちのネットワーク構築がなされたという成果も、文章のほかにあったのではないかと思っています。法務省としては、今後もユースフォーラムなどの開催を通じて、国際社会に若者ならではの意見を届ける機会というものを提供し、若者のエンパワーメントを推進していけたらと考えています。

【記者】
 日本は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序というものを、これまでずっと推進してきました。細かいことで、今回の宣言で国際秩序という言葉に関しては言及がありませんでしたが、これはどう解釈したら良いでしょうか。
 もう一つ、ウクライナにおけるロシアの侵攻について、もし今回会合で、何か連携があれば、日ASEANで何か共通の見解や意見というものが、もし示されていれば、それについても教えてください。
                  
【大臣】
 国際秩序の話については、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序は安定と繁栄の礎であるという考えに基づいて、我が国は自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の理念を提唱しています。他方、ASEANは、インド太平洋に関する展望(AOIP)の理念を提唱していますが、私は、この両者は、基本的理念を共有するものであると考えています。かかる理解は、我が国とASEANの間でも共有されているのではないかと考えていまして、今回採択された共同声明におきましても、このFOIPとAOIPは、平和と協力に向けて基本的理念等を共有する旨が、この前文において確認されているところであり、そういう趣旨はしっかり盛り込まれているのではないかと考えています。
 それから、色々な議論がありましたので、私の記憶が、全て覚えているかというのは自信がないところがありますけれど、今回のロシアとウクライナの話について、こうすべきだとか、こうすべきではないという議論が具体的に出たという記憶は、私、今の頭の中にはないのですけれども、全部精査してみないと分からないので。ただ、共同声明にそういう記述はないということではありますが。
(以上)