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司法外交閣僚フォーラムにおける法務大臣記者会見の概要

令和5年7月7日(金)

 先ほど、司法外交閣僚フォーラムは全ての会合を終了し、閉幕いたしました。2日目となる本日は、午前中にASEAN・G7法務大臣特別対話を、午後にはG7司法大臣会合の両会合をそれぞれ開催いたしました。
 まずもって、全ての参加者、関係者の皆様に心から感謝を申し上げます。私からは、本日開催した二つの会合の成果を述べさせていただいた上で、司法外交閣僚フォーラムを総括させていただけたらと思っています。
 まず始めに、午前中に開催したASEAN・G7法務大臣特別対話は、ASEANとG7の閣僚クラスが対面で議論するという会合が、この法務・司法分野で史上初めて実現したという点において、歴史的な会合となったと思います。広島サミットで掲げられた、ASEANを含む地域のパートナーとの関与を、G7が強化していくんだというコミットメントを具体化する第一歩が、この法務・司法の分野で歩み出した。このことを強調しておきたいと思います。
 本対話では、「インド太平洋における法の支配推進に向けたG7とASEANの法務・司法分野での連携」というテーマの下、ASEAN、G7、そして、UNDPとUNODCの代表と共に、和やかな雰囲気の中、未来志向の議論が行われたと思います。私からは、ASEANとG7がそれぞれ有する文化・慣習・社会・法制度等の多様性を尊重しながら対話を継続することが両者の協力促進の鍵であるというメッセージを発信いたしました。各国からも、対話を継続することへの強い賛同の意を表明いただき、本対話が、これからのASEANとG7の連携強化・相互理解の促進に向けた確かな一歩になったのではないかと手応えを感じました。
 続いて、午後に開催したG7司法大臣会合は、昨年に続き、ロシアによるウクライナ侵略がまだ終わりが見えず、G7の連帯とG7が国際社会において果たす役割が問われる中で開催されました。会合では、「司法インフラ整備支援等を通じたウクライナ復興支援」、二つ目は「法の支配の推進に向けたG7の法務・司法分野での協力体制構築」、三つ目は「インド太平洋における法の支配推進に向けたG7とASEAN等との法務・司法分野での連携」。こういった三つのテーマについて、G7の間で忌憚のない意見交換をすることができました。
 ウクライナからは、マリュスカ司法大臣とコスチン検事総長にオンラインで御参加いただき、冒頭、この国難の中でもウクライナの「ビルド・バック・ベター」に向けた不屈の精神と精力的な努力の現状や、汚職対策や安全・安心な社会の基盤づくりのための刑務所運営支援などの支援ニーズを御紹介いただきました。引き続く協議では、我が国から、ウクライナの汚職対策を通じた復興を支援する観点から、「ウクライナ汚職対策タスクフォース」、英語にしますと、「Anti-Corruption Task Force for Ukraine」、略して「ACT for Ukraine(アクト・フォー・ユークレイン)」の立ち上げを提案し、G7から賛同いただきました。言うまでもなく、汚職対策は、あらゆる経済活動の基盤となるものであり、今後、ウクライナが復興するに当たり、また、より良い国づくりを推進する上で極めて重要な課題です。どこの国が発言したかは伏せますけれども、「今、ウクライナは二つの敵と戦っている。外の敵はロシアだ。内なる敵は汚職だ。」とおっしゃっていましたので、この汚職対策というものがいかに重要かというのが、この発言からも伺えるのではないかと思います。
 このほかにも、法制度整備支援や、法務・司法分野での人材育成、組織犯罪・汚職対策に関する国際協力等の諸課題に加え、午前のASEAN・G7法務大臣特別対話での議論結果を踏まえ、G7として、ASEANとの連携を一層強化していくことを確認しました。
 こうした議論を踏まえ、成果文書として、G7司法大臣会合コミュニケ、通称「東京宣言」を全会一致で採択いたしました。東京宣言では、G7司法大臣会合が法の支配や基本的人権の尊重といった価値を守り抜く決意を力強く表明した上で、ウクライナへの連帯を示し、ASEANを含むインド太平洋地域とも協力関係を強めながら、法の支配の促進のためG7が一致団結して連携していくことなどを確認しました。私は、この点、大きな成果が得られたと思っています。
 今回の会合を通じて、G7がこうした価値に基づく連帯を国際社会に発信することには大きな意義があり、今後もこうしたメッセージを発信し続ける必要があると強く感じています。
 そうした中、先ほど、次期G7議長国でありますイタリアのノルディオ司法大臣が、来年、ベネチアで司法大臣会合を開催すると発表されました。ノルディオ大臣の御英断を心から歓迎するとともに、我が国の惜しみない支援をお約束いたしました。G7の司法大臣がこれからも国際社会の平和と安定に率先して貢献していけるよう、全力で取り組んでいきたいと思います。
 また、今回の司法外交閣僚フォーラムでは、会合の合間に、実に17に上る国・機関との会談を実施しました。まだ残っておりますけれども、トータル17に上るかと思います。既に予定している大部分の会談は終えておりまして、我が国との個別協力を進める上で重要な成果を挙げることができたと思います。
 これに関連して、昨日、英国のチョーク大法官と協力覚書の署名・交換式を執り行いました。今後、本協力覚書に基づき、両省間の相互交流が活性化し、これまで以上に直接の意思疎通等が行われることにより、協力関係を深化できるものと期待しています。
 明日も引き続き会談を実施しますので、より多くの成果を挙げられるよう最後まで全力を尽くしたいと思います。
 昨日から本日にかけて、司法外交閣僚フォーラムを成功裏に開催することができ、司法外交の更なる推進に向けて大きな弾みがついたと実感しております。司法外交の歩みはこれからも続きます。変わりつつある国際情勢に鑑みると、むしろこれから一層加速させていかなければならないと思います。本フォーラムの成功を糧として、法の支配や基本的人権の尊重が浸透し、全ての人が平和で安全に暮らせる社会の実現に向けて、我が国法務省は持てる力を最大限発揮していく所存です。

ASEAN・G7法務大臣特別対話及びG7司法大臣会合に関する質疑について

【記者】
 2日間の司法外交閣僚フォーラム全体を終えられた御所感について、特に、全体を通して強調したい成果などを含めてお聞かせください。

【大臣】
 私も今まで、経済産業省などに長いこといて、様々な国際会議を経験してきましたけれど、今回の閣僚フォーラムには、大変感銘を受けたということは、まず強調しておきたいと思います。
 本フォーラム全体を振り返りますと、国際社会が、ロシアによる違法なウクライナ侵略という重大な挑戦に直面して、歴史的岐路に立つ中で、法の支配といった価値を守り抜くために、ASEAN及びG7という、我が国の重要なパートナーとの連携を力強く打ち出すことができたということに、確かな手応えを感じました。
 まず、日ASEAN特別法務大臣会合では、自由で開かれたインド太平洋の要衝でありますASEANとの関係を一層強化することができたと思います。取り分け、ASEANとの間で、法の支配等の価値の重要性を確認することができたこと、そして、ASEANから我が国の司法外交や法制度整備支援といったこれまでの取組について高い評価を頂き、今後の日ASEAN協力の指針を立てられたことは、ポスト友好協力50周年に向けた大きな成果であったと思います。
 また、G7の司法大臣会合では、G7の法務閣僚が法の支配等の価値を堅持するべく、一層連携していくことなどを確認して、力強いメッセージを発信することができました。取り分け、我が国が提唱した、ウクライナ汚職対策タスクフォースの設置がG7の賛同を得て成果文書に盛り込まれたことで、我が国のリーダーシップと国際貢献を示すことができたと思います。
 そして、先ほど述べたとおり、来年もイタリアで会合が開かれることが表明されましたが、そのことは、この現下の情勢において、G7司法大臣会合の重要性を示す証左ではないかと思います。
 そして、ASEAN・G7法務大臣特別対話は、ASEANとG7双方の閣僚級が一堂に会する会合が、これまでなかったわけでありますが、法務・司法分野において、史上初めて開催されたという点において、我が国にとって歴史に残る成果だったと思います。また、広島サミットで掲げられたASEANとの連携強化というコミットメントを、この法務・司法分野で実行に移すことができたという意義も大きいのではないかと思います。
 この背景には、長年にわたる法制度整備支援等を通じて、ASEANとの間で信頼関係を構築し、また、アジア唯一のG7メンバー国である我が国だからこそ、実現できたものであると思います。
 私は、今回一回限りの取組に終わらせることではなくて、今後も対話を継続するために、ネクストリーダーズフォーラムの創設を提案し、各国の賛同を得たことの意義も大きいと自負しています。
 本対話の開会式には岸田総理にも御臨席いただき、この会合がASEANとG7との更なる連携に向けた新たな出発点になること、我が国の司法外交にとっても重要な一歩になること、今後も対話を続けて次世代を見据えた連携・構築に取り組んでほしいこと等のメッセージを頂きました。これは、法務省の取組、そして司法外交にとって、力強い後押しになったと思います。
 さらに、フォーラムの合間に、各国との会談を精力的に行いまして、個々の協力関係を強化することもできました。本日もイタリア、ドイツ、EUとの会談を実施し、EUはこれからですけれど、今後の協力関係をしっかりと構築していきたいと思っています。
 本フォーラムは、本日で閉会しましたけれど、明日も引き続き2か国との会談を予定しておりますので、最後まで力を尽くしたいと思っています。

【記者】
 二つの項目についてお伺いします。
 一つ目が、今回の成果に関して、受け止めのところですけれど、ロシアのウクライナ侵略が続いている国際情勢の中で、司法分野で、G7とASEANが一堂に集まって議論の場を設けることができた今回の意義について、どのように考えているか。あと、今後の課題のところで、今後更にG7とASEANを始めとしたグローバル・サウスと呼ばれる国々との対話と協力を続けていくためには、どのようなことが必要かというところと、あともう一点、昨日、イギリスとの間で協力覚書の署名がありました。G7の国との覚書締結は初めてとのことですが、今回の締結の意義と、具体的にどのような形で情報交換や知見の共有など、交流を行っていきたいと思っているか、お伺いいたします。

【大臣】
 まず一つ目のお話ですけれど、繰り返しになりますが、本日開催したASEAN・G7法務大臣特別対話では、双方の法務閣僚が一堂に会し、法の支配や基本的人権の尊重といった普遍的価値を堅持するんだということの重要性、そして今後も対話を継続していくことを確認しました。ASEANとG7が、法務・司法分野でこのような対話の場を持ったのは史上初めてのことでありまして、そういう意味では歴史的な意義があったと認識しています。なぜなら、今、国際社会は、ロシアによるウクライナ侵略という国際法を無視し、基本的人権を無視し、国際秩序を揺るがす挑戦に直面しているためであります。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持すべく、国際パートナーとの連携強化に向けた対話を行うことの重要性は、私はかつてないほど高まっているんだろうと思います。こういう環境の中で、今後もASEAN・G7で、関係を継続していこうということになったのは、私は大変意義深いことだろうと思っています。
 このような背景の中で、折しも今年は日ASEANの友好協力50周年、また、我が国がG7議長国という地位にあることから、本対話の開催が実現したということでありますが、私は、先ほど申し上げたような国際社会におけるチャレンジが行われている現状において、これを一回限りの取組に終わらせてはならないと思っています。G7とASEANの双方が、多様性を尊重しながらも、今回のような対話を継続することが、私は国際社会にとって何よりも重要だと思っています。そして、私はこうした対話を継続するという観点から考えるとき、鍵となるのは、次世代を担う若手の存在だろうと思っていますので、そのため、私はASEANとG7の未来を見据えた重層的な関係構築を行う場として、「ネクスト・リーダーズ・フォーラム」の開催を提唱し、各国から支持をいただきました。双方の法務省等の若手職員が参加し、それぞれが抱える政策課題や法の支配等の推進に向けた取組等を共有し、多様性を尊重しながら、自由闊達な議論を行う、そういう対話を継続することで、相互理解を促進し、信頼関係の構築が図られるとともに、共通の価値観を築いていけるのではないかと思っております。
 それからもう一つ、イギリスとの協力覚書のお話ですが、これは法務省と英国司法省との間で幅広い法務・司法分野における協力を発展させようというのが目的であります。相互の直接の意思疎通はもとより、国連等の国際機関や第三国に対する協力などを通じて、国際社会に法の支配を浸透させるため、互いに連携していくということを内容としています。
 具体的な協力の内容は、今後、英国と共に検討することになりますが、今回の協力覚書の署名・交換によりまして、まずは「日英司法対話」、これは実務者級で行いますけれども、これを創設することになりました。今後、両省間の相互交流が活発化し、これまで以上に直接の意思疎通等が行われることによりまして、協力関係を深めていくことができるものと期待しています。

【記者】
 ウクライナの汚職防止のタスクフォースについてお問い合わせします。日本が主導する形になるわけですけれども、このタスクフォースを進めていくに当たって、取り分け日本が寄与できる、強みになるようなポイントというものはどのようなところにあるのか、お聞かせください。

【大臣】
 まず、ロシアによるウクライナ侵略を始めとする一方的な現状変更の試みに対抗して、法の支配に基づく国際秩序を堅持する観点からは、ウクライナの力強い復興を国際社会が支援すること、これ、非常に重要だと思います。ウクライナは、従前から政府を挙げて汚職対策に取り組んでいるわけでありますが、今後、復興に向けた動きが始まってまいりますと、復興資源の公平・公正な活用、我が国を含む外国企業の投資の促進、あるいは、ウクライナのEU加盟プロセスの支援という観点からも、汚職対策の重要性は一層高まると思います。
 御指摘のタスクフォースについて、G7の法務・司法担当者が連携をして、ウクライナのニーズに応じて、各々の知見やノウハウを提供するための具体的な方策について協議をする場としたいというふうに考えています。それぞれ色々な知見を持っていると思いますので。
 我が国法務省では、長年にわたりアジアを中心とする各国に対して、基本法令の整備や制度の運用、人材育成を柱とする法制度整備支援に取り組んでまいりました。その最大の特長は、相手国と緊密に話し合い、その社会・文化・法制度等を尊重しながら行う「寄り添い型」の支援である点が挙げられると思っています。これにより、相手国のニーズの的確な把握と効果的な支援策の策定はもとより、相手国の主体的・自主的な取組を促してきたわけであります。また、内容面におきましても、例えばUNAFEIでは汚職対策に関するセミナーを開催し、ウクライナの方々にも御参加いただいた実績もあります。こういった提供できる知見もあると考えています。こうした知見をいかして、ウクライナ・G7・国際機関等との調整に注力し、効果的な支援を打ち出していきたいと考えています。

【記者】
 今回、フォーラムの中では、法の支配の推進・浸透ということが大きなテーマであったと思います。今後、各国とどのように連携していくのか、また、日本としてどういうことができるのかというところを教えてください。

【大臣】
 まず、司法外交閣僚フォーラムでは、我が国がASEANとG7という重要な二つのパートナーの懸け橋となって、法の支配や基本的人権の尊重といった価値の重要性を確認することができました。繰り返しになりますが、これはASEANとの関係では、長年にわたる法制度整備支援等を通じて、共に汗をかきながら信頼関係を構築してきた、また、G7との関係では、アジア唯一のメンバー国として、アジアの国からの視点で議論に参加し、独自の存在感と信頼を培ってきた、そういった我が国だからこそ実現できた成果ではないかというふうに思うわけであります。
 今後も、この我が国ならではの立ち位置を最大限活用しながら、ASEANとG7の相互理解と信頼関係の構築に貢献をして、法の支配や基本的人権の尊重といった価値を、こういった国際情勢でありますので、国際社会に広げていくことこそ、我が国ならではの取組であると確信しています。こうした取組の第一歩として、ASEANとG7の法務・司法行政の次世代を担う若手を対象とした「ネクスト・リーダーズ・フォーラム」も、我が国ならではの貢献として実施していきたいと思います。

【記者】
 法制度整備支援に関してお尋ねしますけれども、今回、かなり鍵となるものとして宣言に盛り込まれたと思います。今回、G7の各国から、日本の法制度整備支援に関して期待の声が寄せられたようであれば、可能な範囲で御紹介いただけたらと思います。
 もう一点です。ウクライナのマリュスカ法相が今回オンラインで参加されて、先ほども言及はあったんですが、ほかにどのようなニーズですとか、G7に対して要望があったか、これも可能な範囲で御紹介をお願いいたします。

【大臣】
 まず、前者の質問につきましては、やはり日本の法務省がASEANを始めとするアジアの国々に、今まで「寄り添い型」で、皆さん御案内のように、職員を何年も派遣して、そして、先方のニーズに丁寧に応えながら汗をかいてきたということについては、私は高い評価を頂いたのではないかというふうに思っておりますので、こういった精神で、今後、ウクライナの汚職対策を含めた法制度整備支援にも貢献できるのではないかというふうに考えています。
 東京宣言で発表した以外にどんな議論があったかというのを、私がここで表に出すことはできないですけれども、確かに書いていないことも数多く議論が行われたというのは事実です。
(以上)