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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和5年12月8日(金)

 今朝の閣議ですが、法務省案件としては、「令和4年度再犯の防止等に関する施策」、いわゆる「令和5年版再犯防止推進白書」が閣議決定されました。そして、「令和5年版犯罪白書」が配布されました。それについて、私から簡単に説明したわけであります。閣議については以上です。
 白書の中身も含めて、私から3件ほど御説明させていただきたいと思います。
 「令和4年度再犯の防止等に関する施策」、いわゆる「令和5年版再犯防止推進白書」と「令和5年版犯罪白書」は、今回、それぞれが同じような特徴を持っています。というのは、当事者あるいは当事者の御家族・保護者にインタビュー(等の調査)をする。そして、どういう理由で非行に走ったのか。また、どういう形で非行や犯罪から離脱できたのか。犯罪という世界に入るのと、それから出るときに抽象的な分析、数字の分析だけではなくて、インタビューをする、あるいは特別調査をするということで、特集を組んだりインタビューの分析をしたりしています。再犯防止推進白書のほうでは、社会復帰を果たした4名の当事者の方の立ち直りの過程についてインタビューを行い、その結果を基に、犯罪・非行からの離脱要因の分析を試みているわけであります。
 また、一方で犯罪白書のほうでありますけれども、特集テーマとして「非行少年と生育環境」を取り上げまして、非行少年及びその保護者を対象とした特別調査をして再非行防止対策の在り方についての検討に結び付ける。こういう特色を持っています。
 更に申し上げれば、これは今日の報告の2件目ですけれども、再犯防止に関する広報・啓発活動も踏み込んでいっておりまして、タレントの陣内智則さんを主役に据えて、埼玉福興株式会社(において)、農業に従事する中で立ち直っていただくという現場の様子を取材して、そして「陣内智則がレポート「再犯防止の現場」~農園での立ち直り支援~」という再犯防止に関するYouTubeの動画をアップするという取組をしています。どういう形で犯罪・非行の世界から出ていけるのかという問題。この三つの取組が今回行われました。これを、現場の少年院あるいは刑事施設での処遇に現実的に結び付けていくことが非常に重要な課題だと思います。分析も、私もよくこれをしっかりと読みこなしたいと思いますけれども、是非皆さん方もお時間があれば目を通していただいて、犯罪に入るとき・犯罪の世界から出るときのリアルな姿を是非見ていただき、我々はもっとそれを深く分析し、それを現実にいかすということが非常に重要な課題になってくると思います。数字だけ見れば、コロナである程度減っていた犯罪件数が、また少し戻ったりはしています。出所後2年以内に再び刑務所に入る割合を、令和3年までに16パーセント以下にする(ことを目標として取組を進めてきましたが)、これが令和3年の出所者では14.1パーセント。(このように)目標を達成しているのですけれども、こういう数字に一喜一憂せずにしっかりと腰を据えて、こういった二つの白書、それから今申し上げた動画のレポート。こういったものを現実にいかす取組をしていきたいと思っています。
 3件目は、今週水曜日から木曜日に開催されました、法務省が主導しているG7の「ウクライナ汚職対策タスクフォース」第1回会合です。ウクライナから5名の専門家が来日されまして、G7からは多数の方々がオンライン参加しました。大変有意義な情報交換と状況認識、支援ニーズ、そういったものが議論されたわけであります。来年春頃に第2回会合を開催するということが決まりました。引き続きリーダーシップを発揮しながら取り組んでいきたいと思っています。

令和5年版犯罪白書に関する質疑について

【記者】
 冒頭、御発言のあった犯罪白書についてお伺いします。今回の犯罪白書では、非行少年の生育環境に関する特別調査で、少年院在院者の61パーセントが家族から殴る蹴るといった体の暴力を受けた経験があるということが明らかになりました。精神的暴力を受けた割合も43.8パーセントで、非行の背景にこうした小児期の逆境体験があると指摘されています。今回の調査結果に対する大臣の受け止めと、今後法務省としてこうした被虐待経験を持つ少年院在院者に対してどのような処遇を行っていくお考えか、お聞かせください。
 
【大臣】
 今、御指摘があったように、非行あるいは犯罪の背景に、その方の生まれ育ってきた生育環境の中で非常につらい体験があったと。暴力を受けたり、精神的に傷ついたり、非常に深いトラウマを負うような状態になったと。そういうことが多々あるという分析がなされたことは、非常に大事なポイントだというふうに思います。我々もしっかりそういう状況は把握しなければならないと思うのです。ちなみに、18歳までにトラウマとなるような体験をしている方が、特に女子に多いという分析も出ております。この調査の中では、18歳までの逆境体験の有無に係る12項目について質問し、1項目以上該当項目があると答えられた女子少年院在院者が94.6パーセント。男子少年院在院者は86.8パーセント。(男子少年院在院者の)9割弱、(女子少年院在院者の)9割超の人たちが、そういう苦しみを抱えている状況がはっきりと描き出されていると思います。これを何とかしなければいけないということであります。我々も全力を尽くしたいと思いますけれども、この部分にどういうふうに対処すればいいのか、どういう処遇をすればいいのか、どうすれば心に届くのか、どうすればトラウマを軽減することができるのか。これは不断の努力をこれからしなければいけないのですけれども、まずは、こういった方々への支援を行うNPO法人の方々に一つのノウハウが蓄積されていると思いますので、そういう方々を講師としてお招きして、職員に対してそういう理解、知識、技能を付与していただくということを実施しています。これを更に強めたいというふうに思っています。その中で、また我々の中で編み出せる色々なやり方、そういったものも研究を深めて、実践の場で取組をしながら、また検討もしっかりと進めていって、この犯罪白書での検討・分析が現実にいかされるように、先ほども申し上げましたけれども全力で取り組みたいと思います。

インターネット上の誹謗中傷対策に関する質疑について

【記者】
 インターネット上の誹謗中傷対策について伺います。先日、旧ジャニーズ事務所の性加害問題をめぐって、中傷を受けていた男性が亡くなったことを受けて、民間団体が小泉大臣や岸田首相宛てにSNSなどでの誹謗中傷対策の強化を求める要望書を出しています。誹謗中傷問題をめぐって、法務省の所管では既に侮辱罪の法定刑引上げなども行われていますが、抑止力が不十分との指摘もあります。そこで、今後刑法などの関連規定の更なる見直しについてのお考え、また、法務省として今後の取組の課題についてのお考えをお尋ねします。
 
【大臣】
 御指摘の要望書は、担当者を通じて受け取らせていただいております。侮辱罪の法定刑の引上げを行って、昨年7月から施行されています。まずは、その施行状況を見たいと思いますが、改正法の附則において、御指摘のように、本当にそれで十分なのかと、インターネット上の誹謗中傷に適切に対応できるのかと。そういう観点、また、逆に表現の自由、その他の自由に対する不当な制約になっていないかどうか、そういった問題を、施行後の状況をしっかりと踏まえて施行後3年を経過したときにしっかり検証を行いましょうという附則がありますので、この附則の趣旨をよく踏まえて、状況をしっかり把握するなどした上で、法務省としては3年後の見直しに向けて適切に状況を把握、また検討、適切な対処を進めていきたいと思っています。

戸籍上の性別変更に関する質疑について

【記者】
 昨日、静岡で手術していないトランスジェンダーの方が戸籍上の性別変更を認められて戸籍謄本を受け取られました。これについて、大臣として受け止めをお答えください。
 
【大臣】
 御指摘のような報道がありましたことは承知しております。これは本年10月に最高裁大法廷の決定があって、違憲の決定が出て、その決定に沿う取扱いをしてくださいというふうに法務省から各地方支分部局(法務局)に通達を出し、それに基づいて戸籍事務の取扱いを適切にやっていただいたという形であります。今後の違憲決定を踏まえて、立法をどうするんだという御質問も含んでいるというふうに理解しまして申し上げますが、これは立法府の中にも様々な議論があります。元々議員立法でできた法律、でも我々もしっかりと立法府の状況を見ながら適切な対応をしたいと。他官庁とも連携しながら適切な対応を今検討しているところであります。

難民不認定処分の取消し等を求める訴訟に関する質疑について

【記者】
 昨日、政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるとして難民認定を求めたウガンダ国籍の男性の控訴審判決があり、東京高裁が男性に難民認定を命じました。難民申請中の強制送還が可能となる改正入管法の施行を控えて、難民申請者の中に不安が広がっている中での逆転判決となりましたが、本判決を受けた対応・改善策などがありましたらお聞かせください。
 
【大臣】
 昨日、東京高裁で当該男性を難民不認定とした原処分を取り消す旨の判決言渡しが行われた、これは承知しております。個別の案件でありますので、中身に入るのは差し控えたいと思いますけれど、判決の内容を十分精査して適切に対応していきたいと思っています。

難民認定申請者への援助等に関する質疑について

【記者】
 前回5日の記者会見で、難民申請者の経済援助の事業に関する質問がありました。申請者が生活困窮しても根拠法令がない、RHQ(アジア福祉教育財団難民事業本部)の難民保護費に頼らざるを得ない状況ですけれども、難民保護費は申請条件も厳しいですし、手続にも時間が掛かります。ウクライナ避難民への経済援助は民間主導でしたけれども、その水準よりもかなり低いというNGOの調査報告もあります。シェルターの支援も、多くが民間の支援団体に頼らざるを得ない状態が続いています。大臣は、難民支援協会が今年10月に公表した難民申請者はどう生きていくかというレポートはお読みになったでしょうか。
 それから、この件で12月5日の記者会見で質問があったのですが、4日の東京新聞の報道にもあるように、難民申請者らが生活困窮して野宿生活を強いられることがないように、例えば自治体、それから外務省、内閣府などとも相談しつつ、例えば災害救助法の公的住宅の一時提供を適用して、公営住宅や国家公務員宿舎、あるいは民間の借上げ住宅などを無償提供するように応急対応をとることはできないのでしょうか。
 これとも関係してくるのですが、12月13日から日本政府が共同議長国を務めるグローバル難民フォーラムがジュネーブで開催されます。これは、UNHCR、政府、NGO、地方自治体なども協力しながら難民の受入れ体制を拡充していくという、そういった理念に基づいたフォーラムですけれども、こういった難民申請者への生活支援対策の緊急課題についても、今言ったように、外務省や内閣府、UNHCRや地方自治体なども協力して、そういった意見交換というのはされているんでしょうか。
 
【大臣】
 難民の方々が置かれている困難な状況を常に注視して、そして温かく包摂していくという考え方は非常に重要だと思います。我々もできる限りの努力をしてまいりましたし、またしていきたいというふうには思っています。具体的に、今、御提案があったまず公営住宅や国家公務員宿舎の無償提供については、法務省の所管ではないので、これはお答えを控えさせていただきたいと思います。外務省の取組としては、アジア福祉教育財団(難民事業本部)、先ほどおっしゃったRHQにおいて、保護費の支給などの援助事業を行っています。これについて十分か不十分なのか、そういう議論はあろうかと思いますけれども、ベストを尽くす、そういう方向性でやっていただいているというふうに思います。足りないところがあれば、それは改善をまずはしなければいけないと思います。また、我々ができることとしましては、一定の要件を満たした方々に特定活動として就労を認めると。特定活動・6か月という形で就労を認め、そういう在留資格を付与した上で、生活の安定に資するような就労についていただくというような取扱いもしておりますし、また、補完的保護対象者の認定制度が施行される前から、本邦へ避難し主に政府からの支援で生活していたウクライナ避難民の方々に対しては、補完的保護対象者と認定された場合であっても、引き続き、支援開始から最長2年間生活費支援を行うという措置もとってきております。国際的な議論が、またこの12月、行われます。しっかりと注視していきたいと思っております。
 それから、今、御指摘があったレポートですか。今現在私はまだ目にしていませんけれども、是非読んでみたいと思います。
(以上)