検索

検索

×閉じる

法務大臣閣議後記者会見の概要

令和6年3月29日(金)

 今朝の閣議ですが、法務省案件は、一般案件が2件、それから主意書に対する答弁書が1件、閣議決定されました。
 これを含めて、私から5件、御報告をさせていただきたいと思います。
 まず1件目は、「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」、そして「閣議」での決定であります。本日の会議及び閣議において、特定技能1号について、対象分野を12分野から新たに4分野追加し、16分野に拡大することを決定しました。また、この16分野の本年4月から向こう5年間の1号特定技能外国人の受入れ見込み数の総数を82万人と決定いたしました。そして、受入れ企業の責務として、地域における外国人との共生社会の実現に寄与することなどを基本方針に明記したところであります。引き続き、関係省庁としっかり連携して取組を進めてまいりたいと思います。
 報告の2件目でありますけれども、「令和5年度在留外国人に対する基礎調査」等であります。まず、外国人に対する基礎調査、これは令和2年から始められていて、今回が4年目です。また、今回初めて日本人を対象とした「外国人との共生に関する意識調査」も行いました。これらの調査結果を本日公表したいと思います。こうした調査結果を踏まえて、様々な制度論が、これから国会審議も含めて行われていきますので、こうした実態調査をしっかり踏まえて、関係省庁とも連携して、国会審議にも対応して、外国人との共生社会の実現を図っていきたいと思います。
 3件目は、日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助におけるひとり親支援の拡充策であります。法テラスの民事法律扶助についてはひとり親が受け取った養育費をこどものために、養育のためにそのまま確保できるようにしていこうということでありまして、弁護士への成功報酬について、法テラスが立替をするなど、そういったひとり親支援の拡充策として、来週月曜日(4月1日)から実施したいというふうに考えております。この拡充策によって養育費にお困りのひとり親の方々が、法テラスの民事法律扶助をより利用しやすくなるものと考えております。これまでもそういう配慮はあるのですけれども、それをより明確に、より強く、より拡充するというのが今回の措置の趣旨であります。
 それから、御報告の4件目は、「持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会」の中間取りまとめであります。昨日、中間取りまとめがなされました。お目通しいただいているかもしれませんが、幅広い問題について、一つ一つ丁寧な議論をしてきていただいております。まだ結論が出ていない問題もありますが、この中間報告を踏まえて、秋頃に最終的な報告書を取りまとめようかという予定でありますが、まずできることは、この運用で実施可能なものについては、この中間取りまとめの段階において速やかに取り組んでいくということも、努力していきたいというふうに思います。保護司の方々の後継者がしっかりと、頑張っていただけるような環境整備、改める点をより深めて秋の報告書につなげていきたいというふうに思います。
 報告の5件目は、法務局の地図作成事業の整備計画、その基本方針の決定であります。年限を決めて計画を作っているわけですが、令和6年度で一応今の計画の期間が区切られておりますので、令和7年度以降のこの次期地図整備計画の策定に向けて、まず基本方針を本日決定いたしました。防災とかまちづくりという観点をより明確にする。つまり、どういう地区を選んでいくのかという優先順位の判断をどうするかという点にも一つの眼目がありまして、防災やまちづくりの観点、こういったものを踏まえて選定基準を明確化する。そして、地方自治体の役割、自治体が一番実態を掴んでいますので、自治体からの御要望、こういったものをしっかり受け止められるような仕組みにしようということで進めていきたいと思います。(令和)6年度に次期地図整備計画の策定を進め、(令和)7年度以降、全国の事業実施地区を決定していくと、そういう予定であります。

特定技能の受入れ見込数の設定及び受入れ対象分野追加に関する質疑について

【記者】
 今ほど大臣から御説明がありました特定技能制度についてです。賛否の分かれる議論を経て、この制度が導入されて5年が経過しましたけれども、特定技能の労働者への社会のニーズの変化をどういうふうに捉えていらっしゃるでしょうか。また、受入れ規模が拡大する中で、特に充実させていかなければならないと考える課題がどの辺りにあるとお考えなのか、お聞かせください。

【大臣】
 特定技能でありますけれども、(施行から)5年を経過しようとしているわけですが、5年前に比べると、やはり人手不足への対応、その必要性は、日本の社会全般において高まってきていると思います。そういう意味では特定技能外国人の受入れへのニーズというのが高まっているし、これからも高まっていくことは、間違いないと思います。その時に、よりスムーズに外国人に来て、住んで、働いていただく。それは外国人にとっての重要なポイントであり、またそれを受け入れる国民の側も、不安やトラブルなく、良好な関係において外国人労働者を受け入れるということもしなければならない。その両面について、適切な環境整備をきめ細かく丁寧に図っていくことが一番大事だというふうに思います。大切にして受け入れる。また、ルールはしっかりと守っていただく。国民の側もしっかりと受け入れる気持ちを持って接していただく。そういうために、我々行政においてできることは、しっかりとやっていかなければならない。もう一つ、その受入れ企業の責務ということもあるのだと思うのですね。個人の問題であると同時に受入れ企業の責務。それを今日閣議決定しました基本方針に、地域における外国人との共生社会の実現のために寄与することが受入れ企業の責務であるということを明記いたしました。国民あるいは企業、行政、そういったものが、このより良き外国人労働者の受入れ、より良い適切な受入れに向かって、改めてスタートを切って色んなことをこれから実施していかなければいけないというふうに思います。

【記者】
 特定技能の分野追加に関してお尋ねします。今回4分野が追加され、各分野から深刻な人手不足状況が示されたかと思います。ただ、与党の議論では、国内の人材確保に向けて賃上げや労働条件を向上させるといった努力の余地がまだあるのではないかといった指摘もあったかと思います。こうした点に関しまして、改めて今回の外国人材受入れの拡大の意義などについて御見解をお聞かせください。

【大臣】
 確かに、外国人労働者をどれだけ受け入れるかについては、業界ごとに所管省庁が中心となって、業界団体も含めて議論し、調整し、進めてきていただいています。その中に、今いらっしゃる労働者の方の生産性を上げていくという方法、あるいは国内での雇用を拡大する努力、そういったものを踏まえて、それでもなおかつ足りないという場合には、外国人労働者に来ていただきたいなと。そういう段階を丁寧に踏んで、作業は進められてきたというふうに思っています。現時点では、昨年12月末の速報値で、特定技能在留外国人の数は20万8,462人です。今回、全業種の5年間の受入れ上限約80万人ということでありますから、大きい数字でありますけれども、この5年間に各業界の状況を見ながら進めていきますので、計画があってそれが上から降りてくるものではありません。積み上げです。そこには生産性の向上、あるいは国内における雇用の拡大。それがまずあって、その次の手段として、外国人労働者の受入れということは、今回もしっかりとその骨組みとして設定されています。ですから、そういう仕組みを十分機能させながら、適切な受入れを業界ごとに丁寧に見ていかなければいけない。そういうふうに思います。

嫡出推定規定の見直しに関する質疑について

【記者】
 離婚後に生まれたこどもの父親を推定するいわゆる嫡出推定の規定を見直した改正民法が4月1日に施行されます。離婚前の夫が父親になることへの抵抗感から出生届を出さず、こどもが結果として無戸籍になる問題が、改正の背景にありました。改正法の施行がどのような効果をもたらすと期待するのか、お考えをお聞かせください。

【大臣】
 令和4年12月に民法改正が行われまして、新たな嫡出推定の仕組みなどが(令和6年)4月1日から適用されますので、やっぱりおっしゃったように、これまでの推定の仕組みとか、あるいは母親とかこどもは、嫡出否認の訴えができないとかそういう問題がありましたよね。ですから、そういう問題を改めていくことによって、出生届を出すと、前の夫との嫡出子として認定されてしまうというおそれから、出生届をためらう方もいるというふうに受け止めていますので、そういう方々には、是非この制度を活用していただいて、理解していただいて、不安なくこどもが育てられるような対応をこの新しい民法のもとで、是非考えていただきたいなというふうに思います。現にいらっしゃる無戸籍者やその母親には是非ともこの機会に、まずはお近くの法務局に相談していただきたいと思います。
 経過措置として、(令和6年)4月1日より前に生まれたこどもやその母親であっても、1年間に限り嫡出否認の訴えを提起できる、今までは夫だけだったのですよね。嫡出否認の訴えは、母と子もできます。しかも経過措置でこの4月1日(より前)までに生まれたこどもも1年間に限り、嫡出否認の訴えができますので、我々も広報していきたいと思いますけども。是非皆様方も、広報できる機会があればお願いしたいと思います。パンフレットの配布、ウェブサイトを通じて周知を十分に行っていきたい、そんなふうに思っています。

相続登記の義務化に関する質疑について

【記者】
 来週月曜日からいよいよ相続登記の義務化が始まります。改めて国民への呼びかけをお願いしたいです。一方で、様々な広報活動を行ってらっしゃるのは知ってはいるのですけれども、いまだ認知度に課題が残ると思います。今後具体的にどのような周知を図っていくのか改めてお考えをお聞かせください。

【大臣】
 いよいよ4月1日、来週月曜日から相続登記の義務化が施行されます。これは所有者不明土地対策の中核をなす、非常に重要な制度であって、高齢化社会の中で多くの国民の方々が関わる、関わっていく、そういうテーマであると思いますので、簡単には広がらないのです。我々も努力してるのですけれども、まだ認知度が低いということは御指摘をいただいているわけでありますが、非常に重要な制度なので、また国民の皆さんの協力がなければこの制度は全く稼働しませんので、是非我々もテレビCMなどの広報により力を入れていきたいと思います。皆様方報道機関も是非、御協力いただける場合には、お願いをしたいと思うのです。今朝の朝刊でね、2紙、一面のこの辺(端)に、広告を入れさせていただきましたし、また3月23日と24日には、地方新聞で50紙に広告を入れました。40代、50代、60代の方にターゲットを絞らないと、20代、30代の方に相続の話をしても中々関心を持ってもらえないので、更に改良を重ねていきたいなというふうに思っております。相続により取得したことを知った日から3年以内ということでありますので、すぐ目の前に期限が迫っているわけではないので。日本が高齢化社会をしっかりとトラブルなく迎えていくためには必須の制度だと思います。是非そういう理解を我々も広げていきたいというふうに思っています。

人権侵犯事件への対応等に関する質疑について

【記者】
 3月22日の記者会見で、人権侵犯事件に関する御報告と質疑がありました。法務省の人権救済機関が救済措置を講じた事例として、学校のいじめ問題を取り上げていらっしゃいましたけれども、過去にあった政治家の差別発言で人権侵犯認定された事案について、公的な緊急措置はとられているのでしょうか。有名な事例として、自民党の杉田水脈衆議院議員のアイヌ民族や在日コリアンなどへの差別発言が人権侵犯認定され、何度も報道もされましたけれども、杉田議員はその後も差別発言を繰り返しています。再発防止対策や被害者への人権救済措置がとられているとは思えないのですが、どのようにお考えでしょうか。昨日もそのことに関する院内集会があって、9万3,000筆の請願署名が衆参両院の議長宛てに提出されたのですけれど、これは杉田議員個人の差別発言というだけではなくて、日本社会の過去の植民地政策に基づく構造的歴史的な要素を含んだ差別発言だと思うのですけれど、杉田議員の発言について、大臣は対応についてどういうふうに受け止めていらっしゃるのか。それから、被害者への人権救済措置がどうなっているのか。それから、国連人権機関の設置とか包括差別禁止法が必要だとお考えなっているのか。この3点についてお願いします。

【大臣】
 まず、個別の人権侵犯事件の有無及びその内容についてお答えすることは、申告者、相手方、また事件に関係する方々のプライバシーに関わる事柄でありますので、お答えは差し控えたいと思いますが、一般論として申し上げれば、法務省の人権擁護機関、これは人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、中立・公正な立場から、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な措置を講じているところであります。
 日本社会の構造的歴史的差別問題という御指摘の意味するところが必ずしも明確ではありませんが、アイヌの人々に対してアイヌであることを理由として差別するということはあってはならないということであります。特定の民族や国籍の人々を排斥しようとする不当な差別的言動は、いかなる社会においても決して許されないと考えています。
 引き続き、多様性が尊重され、全ての人がお互いの人権や尊厳を大切に、生き生きとした人生を享受できる共生社会の実現に向け、人権啓発活動、また人権侵犯事件への対応、こういったものへ全力で取り組みたいと思います。
 そして、人権救済制度の在り方についても、これまでなされてきた議論、あるいは状況も踏まえて、これは不断に検討していきたい、そういうふうに思っています。
(以上)