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平成29年 記者会見要旨  >  法務大臣閣議後記者会見の概要

法務大臣閣議後記者会見の概要

平成29年5月26日(金)

 今朝の閣議においては,法務省案件として,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律の施行状況に関する報告及び平成28年団体規制状況の年次報告についての報告が2件,主意書に対する答弁書が4件ありました。

民法一部改正法案に関する質疑について

【記者】
 この後開かれる参議院本会議で,民法の債権や契約の分野を大幅に見直す改正民法が成立する見通しです。制定以来120年あまりの大改正になりますが,今回の改正の意義と,かなり多くのものが変わるため経済界からも懸念を示す声もある中で,3年以内という,施行までの期間おけるに政府としての具体的な対応策についてどのようにお考えですか。

【大臣】
 昨日,参議院法務委員会で採決があり,可決していただき,本日,午前中に参議院本会議に臨みます。民法の一部を改正する法律案は,民法制定以来の社会・経済の変化への対応を図ることと,民法を国民一般に分かりやすいものとすることが主な目的です。
 改正法案については,民法のうち債権関係の諸規定を全般的に見直すものであり,国民の日常生活や経済活動に広く影響を与え得るものであることから,今後の契約実務や裁判実務等が適切に運用されるためには,法律として成立をした後に,その見直しの内容を国民に対して十分に周知することが重要であると考えています。そこで,改正法案においては,近時の民法基本法の改正と比較しても長期の準備期間を確保する趣旨で,改正法の施行の日を原則として「公布の日から三年を超えない範囲内において政令で定める日」としており,この間に十分な周知活動を実施することを想定しています。この期間における周知方法については、国会における審議の結果や各種関係団体等を含めた国民からの御意見と附帯決議も踏まえつつ検討していきます。例えば,全国各地での説明会の開催や法務省ホームページのより一層の活用,分かりやすい解説の公表などを考えています。法務省としては,改正法が適切に施行されるよう,国民各層に対し効果的な周知活動を行います。

テロ等準備罪に関する質疑について

【記者】
 これまでの大臣の答弁の趣旨についてですが,本年2月の衆議院予算委員会の階議員の質問に対し,大臣が「私の頭脳というんでしょうか,ちょっと対応できなくて申し訳ありません。」と答弁され,国会審議や報道でもよく取り上げられました。この点について,自民党の今野議員が本会議で,大臣の不信任案が出たときの反対討論において,「意味不明瞭な説明に対し,大臣は質問者の立場をおもんぱかって温情から殊更にへりくだって発言された。」と述べていますが,大臣も同じような認識でよろしいのでしょうか。

【大臣】
 私は,私自身から積極的に説明や言い訳をすることがあまり得意ではありませんが,ただいまの御質問にあえてお答えを申し上げるならば,不信任決議の反対討論の中で,確かに今野先生から私の答弁についての説明がありました。私も今野先生の反対討論を聞いていましたが,今野先生は,そのように理解しておられるのだなと感じ,私の考えを代弁されたように思えたので,強く私の記憶にあります。詳しくは今野先生の反対討論の演説が議事録に出ているかと思いますので,それを見ていただければよろしいのではないかと思います。一言だけ申し上げますと,私は予算委員会の場等でいろいろな質問を受けます。その受けた質問に対し,やはり私の性格というか,主義というか,角を立てないでその審議が円滑に進むことが非常に大切だと思っていて,長い間こういう考え方でやってきたので,その答弁の際もそういう表現が思いつき,申し上げました。質問の趣旨が分からない時に,「質問の趣旨が分かりません。」と言っても,それで済むのかどうかと思い,そういう表現を使いました。「私の頭で理解できるかどうか。」という言葉で御理解いただければ分かりやすいのかなと思って申し上げました。

【記者】
 実行準備行為について,日常生活の中での行為とどう区別するのかということが国会でも議論の対象となっています。この点で,花見と下見の区別が象徴的に取り上げられており,大臣は「ビールと弁当を持っていれば花見,双眼鏡と地図を持っていれば下見に当たる。」という見解を示していますが,このような理解でよろしいのでしょうか。

【大臣】
 法務委員会での質問の流れの中で,具体的な携帯品に話が及ぶときがありました。外形的事情から考えた場合にどういう違いがあるのかという質疑の流れの中で,「例えば花見であればビールや弁当,下見であれば地図や双眼鏡,メモ帳などを持っている。」と答弁したのは,外形的事情としての携帯品の例を申し上げたものにすぎず,それらの携帯品を所持していることから直ちに下見目的の実行準備行為と認定できると考えているわけではありません。これは法案に関わる非常に重要なことなので申し上げますが,外形的な事情や行為のみから実行準備行為該当性を判断するかのような誤解があるように思われます。
 しかしながら,ある行為が実行準備行為に該当するかどうかは,計画をした者による計画に基づく行為であると認められることが必要であり,その上で行為の目的などの主観面についても捜査や認定の対象とはなりますが,その際には,一般的な犯罪における犯意などと同様に客観的証拠や供述の裏付け証拠の有無・内容が重視されると思います。したがって,お尋ねのあった事例についても計画との関係で当該行為が計画に基づくと認められるか否かに加えて,当該行為をしている者の携帯品や当該行為をしている際の状況など,外形的な事情から散歩や花見目的か,下見目的か区別され得ると考えられます。携帯品を所持している事から直ちに下見目的の実行準備行為と認定できると申し上げているわけではありません。個別具体的な事実関係を離れて,例えばビールを持っているのか,双眼鏡を持っているのかという事情のみでお答えできる話ではないので,その点は良く御理解いただきたいと思っています。
 予算委員会や法務委員会等において,いろいろな質問を受けており,それらに対して,誠実に答弁をしてきたと思っています。私の答弁について,様々な受け止め方をされていることは承知しています。しかし,その一つ一つに対し,コメントすることは差し控えさせていただきたいと思っています。国会における議論には流れや文脈があり,質問の内容やそれまでの答弁の内容を踏まえ,答弁することになるので,一つ一つの質疑のみを切り取った場合には,答弁の趣旨が正確に伝わりにくいことがあると感じています。このことは御理解いただければ有り難いと思っています。

【記者】
 前回の会見で犯罪の計画だけでは処罰されずに,実行準備行為があって初めて処罰の対象となるということによって,処罰の範囲を限定しているので,犯罪の構成要件は厳格かつ明確なものになっていると大臣は述べられました。しかし,準備行為が構成要件か処罰条件かについて,これはあくまでも講学上の概念で,処罰条件だという学説もあり,政府としては構成要件だとも言えるという見解だったと思いますが,その見解は変わったのでしょうか。

【大臣】
 私の考えは基本的に変わっていません。構成要件の1つであると考えています。

【記者】
 テロ等準備罪の計画の部分の捜査について,2人以上で組織的な重大犯罪を計画した場合,いずれか1人が準備行為を行った時点で,まだ準備行為に及んでいない計画だけした者も処罰されると思いますが,その部分について,計画しただけで処罰されることに対して,内心の捜査につながるという指摘も出ていますが,計画に加わったかどうかは,どのように認定されるのでしょうか。

【大臣】
 計画に加わったかどうかの立証は,物証のほかに関係者の行動などの状況証拠,被疑者や関係者の供述など,捜査機関が刑事訴訟法に従い,適正な捜査を行って収集した証拠により行うことになるものと考えています。

【記者】
  内心の捜査にはつながらないという見解ですか。

【大臣】
  ほかの多くの密かに行われる罪の場合と同様の方法で,例えば,犯行手順が記載されたメモのような客観的証拠や計画の状況を聞いた者や他の計画に加わった者の供述などにより,立証することが考えられるので,内心の捜査には及ばないものと考えています。

加計学園に関する質疑について

【記者】
 加計学園の獣医学部新設をめぐって,昨日,前川前文部科学事務次官が会見し,総理の御意向などとする文書について,行政にゆがめられたとおっしゃっていますが,その点について,内閣の一員として大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】
 その記者会見をされているときに,私は民法の法務委員会において,一生懸命,審議に集中していたので,全くその報道を承知していません。ニュースで後から拝見しましたが,事実関係がよく分かりませんので,私の立場からのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。 
(以上)