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平成29年 記者会見要旨  >  金田法務大臣臨時閣議後記者会見の概要

金田法務大臣臨時閣議後記者会見の概要

平成29年8月3日(木)

 今日まで大変お世話になりました。皆さんとのこの1年を振り返っての思いを語る機会をいただいて非常に感謝いたしております。8月1日の閣議後記者会見でお話したことと重複するかもしれませんが,私は法務省の職員が大好きですので,法務省の皆さんと一緒に仕事をしていく中で,期待や思いを皆さんが受け止め,これからも一緒に日本の法務行政のために頑張っていただく努力が非常に大切なんだと思い,この機会をいただきました。いろいろなことがありましたが,法案審議については非常に大きなものであったと思います。これを始めとして難しい案件を乗り越えた満足感が今はあります。1年を振り返っての思いです。
 政治家になるまでの公務員として勤務していた時期を含め,これまで44年間にわたり,「公的なものへの献身」をするという気持ちで多くの仕事をやってきました。そうした中でも,この1年は大変有意義であったと受け止めています。
 一つは重要法案が成立したことだと思います。改正民法,改正刑法,改正組織犯罪処罰法,改正入管法,技能実習法,そして改正裁判所法,いずれも非常に重要な法案がそれぞれの局にありました。私が在任中に各局の皆さんの努力があり,そうした非常に重要な法案がいくつも成立をしたということ。そして,こうした法律が適切に周知される,運用されることが重要であるという考え方の基に,現在,適切に対応するように既に指示をいたしておりますし,それを各局において実行に移して頑張っているということを考えると,非常に有意義な1年だったと思います。それから,去年の臨時国会,それから今年の通常国会,最後の最後まで議論をしていたのは法務委員会です。記憶に新しいと思うのですが,法務委員会で熱心に御議論をいただいたことは有り難いことだったと思っています。これまでお世話になった記者の皆さんに,感謝の気持ちを申し上げたいと思います。明日は法務省の職員の方にお別れの挨拶をすることが予定されています。そういう機会をいただき,私は有り難いことだと思うのですが,まず,改めて記者の皆さんには感謝の気持ちを申し上げます。
 私は国会審議において,二千回近い答弁をしていると事務方から聞いています。中でも,テロ等準備罪処罰法については,千数百回に上る答弁の機会があり,私の答弁の一部が繰り返し報道されることが非常に多かったと思います。確かに法務委員会に限らず,予算委員会,それから決算委員会,その他内閣委員会で,それぞれ衆議院と参議院がありますから,非常にいろいろなところで皆さんにお世話になっていたと思います。その中で,同じ内容を表現する場合に異なる表現で答弁する場合もありますし,また,一貫した答弁を行わなければならないという思いの下に行う答弁は大事な部分の連続であり,担当の刑事局が厳格なチェックをしています。そうした中で,どういう点で議論がかみ合ってないのか,あるいはどういう点が質問者と答弁者お互いの理解に達していないか,そのような御指摘は意味があることだと思います。具体的に教えてもらうことが非常に有り難いなという思いを持ったことを伝えておきたいなと思っており,例えば,不安定な答弁という場合にどういう部分が具体的に理解しにくい部分なのかということを客観的に教えていただき,これから先のいろいろな法案審議を考えた場合に,対決法案であった場合には,質問側と答弁側で一緒に深みのある中身のある議論をするためにどうしたらいいのだろうかと,私は国会の運営の仕方について申し上げる立場にはありませんが,非常にそれが重要だなという思いを更に持ちました。一部通告がないとか,あるいはその技術的な細目的な部分については,閣法である場合には責任ある事務方の法案作成責任者が質問者側と答弁者側の議論の中に陪席をして,その議論の深みを増すことを助ける,手伝う努力は絶対に必要だという思いを持ちながらいたのは事実です。私の答弁の中で,これは通告をいただいていませんのでとか,あるいは陪席している非常に細目に詳しい,あるいは実務に詳しい,局長とかの答弁ができたらなというシーンが非常にあって,これから質問する側と答弁する側の詰めといいますか,お互いの答弁の中で解決していく部分なのかなと思う部分もありました。その点は御理解いただけるのかなと思っています。
 また,法務省職員への気持ちもあるのですが,各分野の課題が非常に多かった,そして法案の改正も多かったので,それだけにその都度,それぞれの担当するたくさんの職員の方が非常に優秀であることを私は感じました。一方で,私も公的なもの,法務行政に限らず,そういうものに長い間,関わらせていただいたものですから,私は自分に一つの哲学があります。動機と結果をつなぐ大事な役割がプロセスであると。プロセスはしっかりと考えること,これは役人の皆さんがもっとも得意とする部分です。このプロセスをしっかりやれば結果にも影響を与えることができると。政治家は,結果とその動機が大事だと先ほど申し上げましたが,これは非常に大きな影響を与えることができる,それが役人の強さであり,役人の大きな大きな課題であろうと思って見てきました。ですから,その私の思いを共有していただけるかなという思いで申し上げたことが何度もありました。それは良い意味でです。優秀な皆さんがいるのだから,それを活かして結果にまで影響を与えるような,そういうプロセスを大事にしてほしいと。そうすると,「霞が関一丁目一番地一号」という地番ふさわしい,霞が関をリードする役所になるのではないかと思います。今ももうリードしている部分もあります。名実ともに地位を堂々と誇れるような,そういう役所になるのだろうなと思います。あっという間の1年でしたが,職員の皆さんに対しては,たくさんの課題,たくさんの法案を処理していただいたことに,心から敬意を表したいと思います。私は立場が大臣でしたから,職員の皆さんと接点を持つことに非常に喜びを感じました。職員の皆さんが楽しく食事をしているかどうか非常に気になり,地下の食堂や20階の食堂に行くとたくさんの人が楽しそうに,あるいは疲れた顔で食事をしているのを横から見たりすると自分の思いが満たされました。そういう喜びがこの役所は存分にできるなという思いもしましたし,コンビニエンスストアに行って皆さんが何を買っているのか見ながら清涼飲料水を買って飲んだり,パンをかじったりするシーンもあったので,ちょっと意外な行動だなと思われたかもしれません。そういう皆さんとの接点といいますか,その思い出は非常に懐かしいものがあります。楽しそうな顔をしている皆さんの顔を見ると私も疲れが取れるようなところがあり,これが一体感につながっていくのかなと思いました。この1年,法治国家である日本にふさわしい法務行政との関わりのある仕事に取り組ませていただいたので,この1年皆さんと過ごした日々を糧にしながら我が国のあらゆる課題にこれからも自信を持ってチャレンジしていきたいと思っています。
 この1年は私にとって非常に有意義であったことを申し上げて,私の思いを冒頭の発言とさせていただきます。         

今後の法務行政の課題に関する質疑について

【記者】
 退任に当たり率直なお気持ちと大臣在任中に印象に残っていることを教えてください。また,次の法務大臣に託したい法務行政の課題はどのように考えますか。
 
【大臣】
 ちょうど1年前に就任してから何度も申し上げておりますが,「公的なものへの献身」ということで,心から感謝をしながら職務に邁進し,法務省が所管する法律を合計13本改正することができました。その間,法務行政の面からも様々な課題に取り組ませていただいたことに対しては,職責はしっかりと果たすことができたのかなという思いを持っており,その答えを職員の皆さんからいただくと非常に有り難いし,あの問題はつらかったけどよく乗り越えましたねと,お互いにそういう思いがあれば,なお更,この1年に対する感謝の気持ちが増えると思っています。法務省の皆様と一緒にこうした重要な課題を臨時国会,通常国会,最後の最後まで法務委員会が開かれてやっていたということは,記者さんたちとも一緒に苦労をともにしたという証ではないのかなと思っています。そして,経済問題や雇用問題など,いろいろな課題がありますが,法治国家である日本ということを考えた場合,法務省の役割は非常に重要であり,国民の皆様のことを考えた場合には,法務省が取り組むべき課題は非常に多いのではないかと思っています。国民生活に密接な関わりがある法務行政を改めて感じた次第です。次の法務大臣に対しては,過去1年間,法務大臣をお務めになった方ですし,非常に良い方が後任に選ばれたと思っていますので,重要な課題が山積している中でしっかりと対応していただけるものと考えています。特に2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて,テロ対策や治安対策などについては,猶予が許されないものと考えていますし,外国人旅行者数の急速な増加への対応といった課題もあると考えています。また,今回成立した各般の法案は重要法案ばかりですので,適切に周知・運用をしていただくことが極めて重要ですので,この点については,通達やホームページなどを使って,対応を適切に行うようにお願いしたいと考えています。

【記者】
 退任に当たり,安倍首相から何か言葉はかけられましたか。

【大臣】
 今日の閣議の終わりに際し,総理の思いをおっしゃられたときに法務省の課題を乗り越えるための努力を非常にねぎらっていただくような御発言がありました。そしてその後,総理から個別に呼ばれてお話した際,やはり,法務省は120年ぶりの債権法の改正となる民法の改正,それから110年ぶりの性犯罪の構成要件の見直し等による刑法の改正,それにテロ等準備罪処罰法案の改正など,本当に御苦労様でしたねという言い方をされたように記憶しています。これは労をねぎらっていただいた御言葉であると受け止めています。

【記者】
 大臣,1年間本当にお疲れ様でした。この1年というものが大臣にとって長かったのか短かったのか。また,後任大臣に託したい課題をおっしゃっていましたが,もう少し期間があったら,大臣として取り組みたかった課題があれば具体的に教えてください。

【大臣】
 私としてはこの1年間あっという間でした。去年の臨時国会も今年の通常国会も,最後の最後まで皆さん,職員の方々も最後まで一緒に働いていた役所がこの役所ではないかと思っています。もっと時間があった場合には,おそらく,毎日毎日,必死にやっていましたが,その時点でまた,課題が沸き上がってくるのではないかなと思います。

【記者】
 大臣はもともと大蔵省から始められて,「公的なものへの貢献」とおっしゃいましたが,法務省を去るに当たって,法務省に一言残すとすれば何を残されるかということと,一年間,閣僚を務められて,振り返って改めたい,もしくは戻れるのならばここをやり直したいということがあれば,思い浮かぶ中からお話しいただけますでしょうか。

【大臣】
 去るに当たって残したい言葉は,法務省の職員の皆さんに対して,その地番でよく言うのですが,「一丁目一番地一号」だと。この地番にふさわしい役所として,霞が関のリーダーになってほしいという思いです。本当に厳しいお仕事をされていて,その一方で,法務行政という人間が関わる大事な行政の分野があります。両方をこなしていくのは相当の努力が必要だと思います。ですから,その努力を効率的に,重点的に,力を結集して努力をしていく。そのときに,誇りを絶対に失わずにやることが大切なのではないかなと思います。一言で言えば,「一丁目一番地一号」にふさわしい,そうした役所に是非なってほしいと思います。
 そして2つ目については,そのときどきに必死でやってきましたので,もう1回こういうふうにやってみたいなという思いを持つことがなく,120パーセントで生きてきたような感じがする1年でした。

【記者】
 例えば,何か別の大臣をやりたいであるとか,今後の政治家としての目標をお願いします。

【大臣】
 政治家というのは,一人一人の方々を真剣に思う気持ちから行われる仕事だと思っています。したがって,課題は山のようにあると思っています。だから,何でも思いを馳せることができる,相手の気持ちを思うことができる,そういう仕事をするのが政治家だと思っています。そして,それは必ず動機につながります。動機は必ず結果につながります。その間はプロセスがあり,役所の人間が一番得意なところだと思っています。それはいろいろな課題について言えるわけですから,そのプロセスを大事にする役人の方を見つけると,私は嬉しいです。そして,結果まで影響を与える優秀な役人になってほしい。一生懸命,役人を応援したいと同時に,どんな仕事でもできるような自信というと変ですが,そういう思いをこの1年で本当に強く持たせていただいたことに感謝をしています。

【記者】
 この数か月間,森友学園や加計学園の問題でも,官僚と政治家,特に官邸との関係の在り方が問われていたと思うのですが,大蔵省の官僚出身として,政治家と官僚の関係について,この昨今の状況をどう見ていらっしゃいますか。

【大臣】
 政治主導という言葉がよく使われます。その政治主導という言葉が中身のある結果につながる,そういう政治主導であってほしいと思います。ですから,一人一人の皆さんに良かったと言っていただけるような政治主導とするために,例えば,委員会審議の在り方についても議論すべきだと思っています。重要な対決法案の議論をするときには,質問する側と答弁する側が深みのある議論になることが絶対に必要であります。そのためには前の日の質問通告を的確に行っていただく。そうすれば,優秀な職員がいっぱいいますから,端的な答弁になると思うのです。ところが,視点がどこにあるのか分からなかったりした場合は,非常に曖昧な答弁の連続になると思います。そういうのがいいのかということもあると思います。その逆に本当に詳しい人を呼べば,細目的,技術的な部分でも,実務からお答えすることができる。そうすると国民の方はそれを理解しやすくなります。ですから政治と行政の関わり方については,そのプロセスをしっかりと大切にするというのが行政であるという考え方を曲げていませんので,これを通していただければ,私は今御指摘の件については申し上げるほど情報もありませんし,前提も知りません。一般論として申し上げているのですが,今のような考え方を,是非役人も政治家も持っていただくことが,国民のために良い結果を生むのではないかと常にそう考えています。

【記者】
 この法務省に限らず,今,この内閣人事局で,ある意味,幹部の方の人事を官邸が握っているという状況の中で,官僚の方が非常に窮屈そうだなと感じられることはありますか。

【大臣】
 それはむしろ皆さんから,どういう御意見が客観的に出ているのかを御覧になっていると思うので,教えてもらいたいと思います。私は,今のところ,やり方に非常に問題があるというような御指摘を現実の話として伺ってはいません。

【記者】
 不安定な答弁という批判に関しては,大臣の方では終始一貫していると,常にお答えされていると思うのですが,更に省内の職員の方々に聞いても,大臣は重要法案を通していて,その中でも評判が良いといいますか,そういう声をよく聞くのですが,このタイミングで,大臣が交代となった理由というのは,御自身としてはどのようにお考えですか。

【大臣】
 交代した理由は私は分かりません。でも従来のケースを拝見しますと,意外と法務大臣の方の交代は早いです。このところ10年くらいを見ると,平均は数か月で皆さんお代わりになっているのではないでしょうか。そういう中で,しっかり皆さんと1年間お付き合いさせていただいたことの感謝の気持ちはものすごく大きいです。ありがとうございます。

【記者】
 在任中は,テロ等準備罪とか性犯罪の厳罰化など非常に重要な案件が多かったと思います。その中で,秘書官と過ごす時間が非常に長かったと思うのですが,大臣にとって秘書官とはどういう存在でしたか。

【大臣】
 はい,私にとりましては優秀な秘書官でした。
(以上)