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平成29年 記者会見要旨  >  上川法務大臣初登庁後記者会見の概要

上川法務大臣初登庁後記者会見の概要

平成29年8月3日(木)

  皆さんこんばんは。この度,法務大臣に就任しました上川陽子と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。私は,平成26年10月21日から平成27年10月7日まで法務大臣を務めさせていただきました。今回,再度就任となります。
 法治国家である我が国において,憲法を始めとする法体系の下,法の支配を貫徹することが重要であると考えており,そうした大きな考え方に基づいて取り組んでまいりたいと思っています。特に職務に当たっては,国民目線にしっかりと立ち,国連で採択されたSDGs,持続可能な開発目標において,打ち出されている理念である「誰一人取り残さない」社会という視点をしっかりと取り入れ,公平・公正に法務省の所掌事項にしっかりと対処し,国民の権利・利益の擁護に努めてまいりたいと考えています。
 本日は,総理から4つの課題について取り組むよう御指示がありました。第一に,国民に身近で頼りがいのある司法の実現に向けて,司法制度改革を推進すること。第二に,差別や虐待のない社会の実現を目指し,個別法によるきめ細かな人権救済を推進すること。第三に,関係大臣と協力をし,「世界一安全な国,日本」をつくるため,犯罪被害者の支援,刑務所等出所者の再犯防止や社会復帰支援,組織犯罪対策など,社会を明るくするための施策を総合的に推進すること。第四に,我が国の領土・領海・領空の警戒警備について,関係大臣と緊密に連携し,緊張感を持って,情報収集を行うとともに,事態に応じて我が国の法令に基づき適切に対処することの4点です。
 いずれも,国民生活にとって大変重要な課題であり,関係大臣等としっかりと連携しながら,その職責を果たしてまいりたいと考えています。
 さらに,総理からは,再度「特定秘密の保護に関する制度に関する事務」についても担当するよう御指示をいただいたところです。制度の適切な運用については,万全を期して取り組んでまいりたいと考えていす。

抱負に関する質疑について

【記者】
 法務大臣としての抱負と今後,重点的に取り組んでいきたい点があればお教えください。

【大臣】
 先ほど総理から4つの課題について,しっかり取り組むよう御指示をいただいたところです。法務行政については,全国津々浦々の国民の生活の安全を守り,また権利を擁護していくため,それぞれの課題について,深く関わりながら真摯に取り組んでまいりたいと思っています。先ほど,冒頭で私から御挨拶をさせていただきましたが,日本は法治国家であり,憲法を始めとする法体系が整備され,また,新しい時代に対しての課題に法制度をしっかりと整備し,運用を適切に図っていくことが大切であり,法の支配を貫徹することが何よりも重要であると考えています。そして,先ほど申し上げたとおり,国民の皆様の目線にしっかりと立ち,国内においても国際的に相互依存が非常に強くなっている状況ですので,誰一人取り残さないという考えの下,取り組んでまいりたいと考えています。
 2020年には,東京オリンピック・パラリンピックもあり,全国津々浦々の中で地方創生,その他,大きな動きが国家目標として設定されているわけですが,同年には,国際刑事司法分野における国際会議,コングレスが開催される予定です。「世界一安全・安心の国,日本」を対外的にも,また国内的にも実感していただけることができるようにしていくことが何よりも大切だと考えています。2020年は一つの目標でありますが,それ以降の私たちの社会,私たちの国,国際社会の中での日本をしっかりと踏まえた形で,新しい時代を切り拓いていくことができるようにしていくことも大事だと思っています。いろいろと取り組みたいことや新しい課題も出てくると思っており,これまで金田前大臣の下で積み上げてきたことについて,これからしっかりと検討させていただきながら,更にそれに一歩,二歩前進ができるよう,法務省の職員の皆さんと一緒に,前に向かって取り組んでいきたいと思います。

死刑に関する質疑応答について

【記者】
 死刑制度について伺います。7月13日に死刑が執行された2人のうち1人は再審請求中であったとされていますが,大臣は再審請求中の死刑執行について,どのようにお考えでしょうか。また,死刑執行の対象者の選択理由といった死刑の実情などの情報公開についてのお考えもお聞かせください。

【大臣】
 7月13日に死刑が執行された者による再審請求の有無等については,お答えは差し控えさせていただきたいと思います。一般論としてですが,再審請求の手続中は全て執行命令を発しない取扱いとするというのは,死刑確定者が再審請求を繰り返す事態が起き得るので,永久に刑の執行をすることができないことになり,刑事裁判の実現をしっかりとしていくことが不可能となりかねません。したがって,死刑確定者が再審請求中であったとしても,当然棄却されることが予想せざるを得ないような場合については,死刑の執行を命ずることもやむを得ないと考えています。
 死刑執行に関する情報開示という面ですが,刑罰権の作用については,本来死刑の執行に限られ,それを超えて国家機関が死刑の執行に関する情報を殊更に公表するということについては,死刑の執行を受けた者や関係者に対し,不利益や精神的な苦痛を与えかねないこと,また,他の死刑確定者の心情の安定を損なう結果を招きかねないことなどの問題があります。他方で,死刑の執行が適正に行われていることについて国民の理解を得るためには,可能な範囲で情報を公開する必要があります。また,被害者を始めとする国民からの情報公開の要請も高まっている昨今の状況を踏まえ,死刑を執行した日に執行を受けた者の氏名,生年月日,犯罪事実及び執行場所を現に公表しているところです。しかし,その範囲を超える事項については,公表を差し控えるのが相当ではないかと考えています。死刑執行の情報公開については,これまでの大臣がいろいろな場面の中で少しずつ問題提起をして実現したところであり,執行を受けた者の氏名,生年月日,犯罪事実及び執行場所の公表が適切ではないかと考えています。

【記者】
 国際的にみると死刑制度がある日本に対して,批判の声も一部にはあるのですが,大臣の在任期間中,死刑制度そのものの在り方について検討するお考えはありますか。

【大臣】
 海外や国際機関からの御指摘について,様々な問題提起がなされていることは存じ上げています。先程冒頭申し上げたとおり,日本は法治国家です。死刑は厳罰であり,命を奪うことにつながるわけですから,今ある制度の中でどのように対応していくのかを慎重にしていきたいと思っています。

【記者】
 制度そのものの在り方について,議論を進めるというお考えは特にありませんか。

【記者】
 今の段階で直ちに進めますということを申し上げるには,初めての法務大臣の時にも厳しく突きつけられた問題でもありますので,絶えず考えてまいりたいと思っていますが,今,この場所で明確にお答えする段階ではありません。

民法の成年年齢引下げに関する質疑について

【記者】
 民法の成年年齢引下げに関する改正案並びにその婚姻年齢を18歳で男女も揃えることについて,おそらく同時に提出することを法務省として検討していらっしゃると思いますが,秋の臨時国会が召集されれば少なくとも次の国会に法案提出のお考えはありますでしょうか。

【大臣】
 民法の成年年齢について,平成21年に法制審議会から,民法の成年年齢を18歳に引き下げるのが適当であるという旨の答申をいただいているところです。既に公職選挙法の選挙権の年齢については,18歳に引き下げられている状況であり,昨年の7月には,それに基づいて参議院議員の通常選挙から,18歳の選挙権が実施されている環境にもあります。
 今,こうした状況を踏まえ,民法の一部改正案の立案作業を実施しているところですので,できる限り早い時期に,国会に提出いたしたいと考えており,そのための準備についてもしっかりと精査しながら取り組んでいきたいと思っています。

【記者】
 それは次の国会に出したいという意欲があるという理解でよろしいでしょうか。

【大臣】
 そのとおりです。

性犯罪厳罰化に関する刑法改正に関する質疑について

【記者】
 性犯罪の厳罰に関する刑法改正が先の通常国会でなされました。この中の附則では,3年をめどに在り方について検討し,必要な見直しをするとなっています。3年目になってから見直すのではたぶん間に合わないと思うのですが,そこを踏まえて省内で新たな法改正に基づいた勉強会を立ち上げたり,新たな性犯罪被害者の団体から意見を聞いたりという場を設けるお考えがありますでしょうか。

【大臣】
 今,刑法の改正をした段階です。その折に国会で御議論をいただき,附帯決議が付けられたところであり,十分に考えていかなければいけないと思っていますので,3年後の見直しとはいえ,とにかく施行をする上では,適切にその趣旨に則って,施行しなければいけません。成立した後の段階で,どのように進めるのかについては,極めて大事な,大きなメッセージになると思っています。いろいろな形で運用が適切に図られ,性犯罪の被害者の皆さんのその思いについても,必要に応じて,ヒアリング等もさせていただくことがあろうかと思いますが,今の段階は,まず,しっかりとした運用をしていくことに全力を傾けたいと思っています。

【記者】
 改正刑法の附帯決議で,被害者への支援として二次被害を防ぐという部分がなされていると思うのですが,その点について大臣のお考えを伺えればと思うのと,この改正刑法では,性犯罪自体が非常に厳罰化されたこと自体について,大臣のお考えを伺えればと思います。

【大臣】
 性犯罪,性暴力の被害者の声を,いかに対応していくかということについては,長年,様々な声があり,法務省としても法制審議会にかけて,御議論をしっかりしていただきながら取り組んできた大変大きな課題です。その折,刑罰規定の厳格化を進めることと同時に附帯決議にも述べられた,その支援をどうするかということについては,政策的にはパッケージとしてしっかりと対応していく必要があると認識しており,関係する各省庁ともフォローをしていきたいと思っています。

再度法務大臣に就任したことに関する質疑について

【記者】
 内閣支持率が大きく低下する中での再登板となりましたが,御自身に求められている役割はどういうところかお考えを聞かせてください。

【大臣】
 行政,内閣が国民の皆様から信頼され,任せていただきながら様々な課題に取り組んでいくためには,その課題を解決する上で国民の皆様の御協力も御理解も必要になります。そうした相互作用,対話の中で施策はうまく進んでいくものと思います。支持率が下がっていること自体は,国民の皆様から大変厳しい表現をされていると思っていますので,謙虚にしっかりと受け止め,内閣を構成するメンバーとして,法務省の所掌の中で,内閣の活動が皆様から信頼されるよう,まず,司の中で全力で頑張ってまいりたいと思っています。

【記者】
 今回,防衛大臣と法務大臣が再登板となり,本国会を含めて厳しい批判にもさらされた部署での再登板というところについてはどういった受け止めをされていますか。

【大臣】
 安倍総理の話の中でも,私に対して,これまで法務行政に当たってきた実績をしっかりといかしてほしいという御期待,御要請があったところです。それは,再任されたことの大きな意味ではないかと思います。私自身は再任されたから1回目の延長であるとはいささかも考えていませんので,今の時点で与えられた,任命された意味を,自らにしっかりと問うていきたいと思っています。社会は,国際社会の中でも,国内も国際も大きく変わってきていますので,絶えずその中で「誰一人取り残さない」というメッセージも国際的には共通した大きな方向性として示されています。こういう事態も前の時にはそれほど明確ではなかったわけであり,今起きていること,そしてそういう中で,様々な利益や権利が侵害されているような事態が起こったとするならば,それは大変問題だと考えています。そういう意味で,もう一度新しい気持ちに立ち帰って,しっかりと曇らぬ目で,まっすぐに現場の皆さんの意見や,国民の目線を大切にしながら取り組んでまいりたいと思っています。

難民認定制度に関する質疑について

【記者】
 難民認定申請の問題について,申請数が昨年1万人を超える状況であり,多くが就労目的の偽装難民ではないかという指摘もあります。その点に関して問題意識や新たな対策が必要であるかどうか,お考えを教えてください。

【大臣】
 難民を取巻く問題は,いろいろな角度から指摘されており,私自身は強い問題意識を持っています。特にこれからグローバル化が進み,2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会のお話を申し上げたところですが,インバウンドも2030年には6千万人が国境を越えて行き来する時代であり,その中において,グローバル時代の一つの人の移動という面でかねがね問題意識を持っていたので,この点については更に掘り下げていきたいと思っています。

憲法改正に関する質疑について

【記者】
 憲法について,上川大臣自身,憲法改正推進本部事務局の事務局長をされていらっしゃったと思います。安倍政権でも改憲に強い意欲を持っており,閣僚の一人として改憲について所感を教えていただければと思います。

【大臣】
 任命前までは自由民主党の憲法改正推進本部の事務局長を務めていましたが,今は内閣の一員となりました。憲法改正の議論は全て国会での対応が重要です。これが肝であり,衆議院,参議院の憲法審査会がその大きな役割を果たすものです。閣僚の一人になった以上,私から改正について個人的な考え方を申し上げることができません。内閣の立場については,総理大臣と官房長官において内閣を代表して御発言なさることです。

辺野古移設差止訴訟に関する質疑について

【記者】
 辺野古移設をめぐる工事差止訴訟について,県と国が再び法廷で争うことになった点と今後どのように対応していくかを教えてください。

【大臣】
 訴訟提起がなされたということですが,報道の内容について十分に承知していませんので,具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思います。内容の精査をして適切に対処してまいりたいと思っています。

指揮権に関する質疑について

【記者】
 指揮権についてどのようなお考えをお持ちかお聞かせください。

【大臣】
 検察庁法14条に,法務大臣は,検察官を一般に指揮監督することができる,ただし,個々の事件の取調又は処分については,検事総長のみを指揮することができると規定されており,これが枠組みです。指揮権の行使については,検察権が行政権に属することによる法務大臣の責任と検察権の独立性確保の要請との調和を図る14条の趣旨に鑑み,検察権の不当な制約とならないよう,極めて慎重に対応する必要があると考えています。

靖国神社参拝に関する質問について

【記者】
 8月15日,終戦記念日ですが,大臣は靖国神社を参拝するお考えはありますか。

【大臣】
 私は,8月15日は毎年これまでずっと地元静岡の行事に参加していましたので,今年もそのような対応をしてまいりたいと思っています。

(以上)