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第213回国会(常会)衆議院法務委員会における小泉龍司法務大臣所信表明

令和6年3月8日(金)

はじめに

 武部委員長を始め、理事及び委員の皆様方には、平素から法務行政の運営につき格別の御理解と御尽力を賜り、厚く御礼を申し上げます。
 最初に、令和6年能登半島地震により亡くなられた方々とその御遺族に対して深く哀悼の意を表しますとともに、被災されたすべての方々に衷心よりお見舞いを申し上げます。
 法務省としても、例えば、地方公共団体と連携の上、金沢地方法務局輪島支局が入居する輪島地方合同庁舎において、被災した方々の受入れに対応するなど、できる限りの支援を行ってまいりました。引き続き、被災した方々に対し、法テラスにおいて適切な相談窓口等に関する情報提供や資力の状況にかかわらない無料法律相談を実施するなど、被災者の方々に寄り添った支援に全力で取り組みます。また、災害発生時に避難所としての機能を果たし得る、矯正施設を始めとする法務省施設の耐震化・老朽化対策にも、国土強靱化の視点も取り入れ、取り組みます。
 内外諸情勢の変化が極めて激しい中、法規範に対する国民の信頼をいささかもゆるがせにすることなく、他方で、大きく変化する経済社会や国民意識に適切に寄り添っていかねばなりません。何が国民の幸せにつながるのか、常に考え抜いていく必要があります。
 それでは、法務行政において当面する具体的課題を述べます。 
 
法務行政の具体的課題への取組

1 法秩序の維持に向けた取組

(再犯防止に向けた取組の推進)
 再犯者数は減少しているものの、刑法犯で検挙された者の約半数は再犯者という状況は依然として続いています。「再犯防止」こそが新たな被害者を生まない「安全・安心な社会」実現の鍵を握っています。第二次再犯防止推進計画に基づき、国・地方公共団体・民間協力者の連携をこれまで以上に進めます。地方公共団体や保護司等の民間協力者への支援などの一層の充実強化に取り組むとともに、満期釈放者対策等を着実に進めます。

(拘禁刑時代における新たな処遇の実現に向けた取組)
 令和7年6月に拘禁刑が導入されます。拘禁刑は、個々の受刑者の特性に応じたきめ細かな処遇の実施により、効果的な改善更生と円滑な社会復帰を図ることを目的としています。その導入に向けて、運用の検討を進めるとともに、刑務所等における適正な処遇の実施に努めます。

(性犯罪・性暴力対策の推進)
 性犯罪・性暴力は、被害者の尊厳を著しく傷つけ、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続けます。「性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針」等を踏まえ、昨年6月に成立した改正刑法等の趣旨・内容の周知、同法等による厳正な対処及び再犯防止施策の更なる充実強化等を図り、引き続き、性犯罪・性暴力対策を進めます。

(公共の安全の確保)
 安全保障環境が一層厳しさを増す中、公安調査庁においては、人工知能等の新たな技術も活用しつつ、公共の安全を脅かし得る偽情報の拡散を含む影響工作や経済安全保障、サイバー空間上の脅威、国内外におけるテロ関連動向に関する情報の収集・分析等にも努め、政府の施策に更に積極的に貢献します。
 北朝鮮に関しては、核・ミサイル関連の動向、日本人拉致問題を含む対外動向や北朝鮮内部の状況等について、関連情報の収集・分析等を進めます。
 我が国の領土・領海・領空の警戒警備に関しても関係機関と連携し、適時適切な情報提供を行います。
 いわゆるオウム真理教について、団体規制法に基づく観察処分の適正かつ厳格な実施やアレフに対する再発防止処分の実効性の確保等を通じた公共の安全の確保に努めます。

2 国民の権利擁護に向けた取組

(犯罪被害者等の方々への支援等)
 犯罪被害者等の方々に対しては、「第四次犯罪被害者等基本計画」及び「犯罪被害者等施策の一層の推進について」に沿って、きめ細やかな支援を実施します。
 生命や心身に重大な被害を及ぼす一定の犯罪の被害に遭った方々が、被害直後から弁護士による包括的かつ継続的な支援を受けられるようにするため、「犯罪被害者等支援弁護士制度」を創設することを内容とする「総合法律支援法の一部を改正する法律案」の今国会での成立を目指します。
 また、昨年12月から運用が開始された、いわゆる被害者等の心情等の聴取・伝達制度について、引き続き犯罪被害者等の方々に寄り添った制度となるよう、適切に運用します。犯罪被害者等の方々の思いに応える保護観察処遇等の充実にも取り組みます。

(困難を抱えるこどもたちへの取組等)
 父母の離婚等に直面するこどもたちの利益を確保するため、父母の離婚等に伴う子の養育の在り方に関する制度の見直し等を内容とする「民法等の一部を改正する法律案」について、今国会での成立を目指します。
 また、児童虐待については、政府で取りまとめた「児童虐待防止対策の更なる推進について」も踏まえ、関係機関と連携し、その根絶に取り組みます。

(様々な人権問題等への対応)
 いじめや虐待、マイノリティの方々に対する偏見や差別、インターネット上の人権侵害など、様々な人権問題への対応については、一人ひとりがお互いを尊重し合える社会を目指し、関係省庁等と連携し、人権相談や調査救済活動を充実強化するとともに、人権啓発活動等の取組を推進します。

(総合法律支援の充実・強化)
 様々な困難を抱える方々が、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供を受けられるよう、多様化する法的ニーズを的確に把握し、法テラスによる支援やその体制の拡充を図るなどして、総合法律支援の一層の充実・強化に取り組みます。

(「旧統一教会」問題への対応)
 「旧統一教会」問題については、関係省庁及び関係機関・団体等との緊密な連携の下、法テラスにおいて、必要な情報共有を図りつつ、総合的対応窓口による一元的な相談対応を行うとともに、先般の臨時国会において成立した「特定不法行為等被害者特例法」に基づく支援を着実に実施し、被害者の迅速かつ円滑な救済に万全を尽くします。

(性同一性障害特例法の違憲決定への対応)
 昨年10月、最高裁判所において性同一性障害特例法に関する違憲決定がされたことについては、厳粛に受け止める必要があると認識しています。立法府の動向等を注視しつつ、関係省庁と連携して、引き続き所要の検討を進めます。 

3 出入国及び外国人の在留の公正な管理を実現するための取組

(外国人との共生社会実現のための取組)
 外国人との共生社会を創造していくために、「外国人の人権に配慮しながら、ルールにのっとって外国人を受け入れ、適切な支援等を行うとともに、ルールに反する者に対しては厳正に対応する」ことを基本として取り組みます。
 引き続き、外国人支援コーディネーターの育成・認証制度の検討や外国人在留支援センター、FRESC等における支援等の取組を推進します。

(技能実習制度の見直し及び在留カード等とマイナンバーカードの一体化に関する法案の提出)
 共生社会の実現を目指しつつ、我が国を魅力ある働き先として「選ばれる国」にするという視点に立って、現行の技能実習制度を発展的に解消して、外国人材を育成、確保するための制度を創設します。併せて、我が国に適法に在留する外国人の利便性を一層向上させるとともに、行政運営の効率化を図るため、在留カード等とマイナンバーカードの一体化も実現します。
 これら外国人の権利の擁護と適正な出入国在留管理の実現を図る「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案」等について、今国会での成立を目指します。

(入管法等改正法の施行に向けた取組)
 先の通常国会で成立した入管法等改正法による諸施策の実現を着実に図るため、改正法の全面施行に向け、その準備に万全を期します。
 この入管法等改正法により在留特別許可の申請手続が創設され、その考慮事情が法律上明示されることに併せ、在留特別許可に係るガイドラインを改定するなど、制度の運用の一層の適正化を図ります。
 また、補完的保護対象者の認定制度の創設に関する規定等については既に施行されていますが、この制度を適正に運用します。 

4 法務行政における国際貢献に向けた取組等

(法の支配の推進に向けた国際協力及び司法外交の推進)
 国際情勢が引き続き緊迫する中、法務省では、「法の支配」や「基本的人権の尊重」といった価値を国際社会に浸透させるべく、司法外交を一層強力に展開します。
 私自身、機会を捉えて各国の大使らと意見交換を重ねておりますが、とりわけ、昨年、我が国が主催した「司法外交閣僚フォーラム」において合意された、「ウクライナ汚職対策タスクフォース」の設置・運営や、「ネクスト・リーダーズ・フォーラム」の創設等の成果を着実に実行に移すとともに、中央アジア諸国や太平洋島しょ国等との間で新たに「戦略的司法対話」を実施します。
 また、これまで法務省が長年にわたり続けてきた法制度整備支援や、国連アジア極東犯罪防止研修所、UNAFEIを通じた国際研修等については、人材育成支援を通じた底堅い信頼関係構築のために取組を一層推進します。我が国が誇る保護司制度を世界へ発信・普及させる取組も推進します。

(経済活動の国際化を支える環境整備)
 国際仲裁が紛争解決手続のグローバルスタンダードであることに鑑み、国際的な法の支配の促進に向け、我が国における環境整備を進めるとともに、東南アジア地域等における普及を図ります。国連国際商取引法委員会、UNCITRAL等の国際機関におけるルール形成を主導します。 
 また、国際商取引を円滑化し、対日投資を促進するための基盤として、関係省庁等と緊密に連携し、AI翻訳を活用するなどして、我が国法令の外国語訳を整備して国際発信する取組を一層加速させます。

5 時代に即した法務行政に向けた取組等

(法務・司法のDXに向けた取組等)
 刑事手続等において情報通信技術の活用を図るため、取り扱う書類について電磁的記録として作成・管理・利用することに関する規定の整備などを内容とする「情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(仮称)」について検討を進めます。当該技術の活用に不可欠となるシステムの整備についても、関係機関と緊密に連携しながら、スピード感を持って進めます。
 また、司法試験等について、令和8年に実施する試験からCBT方式による試験の導入等を目指すなど、試験のデジタル化に向けた取組を進めます。さらに、デジタル技術を活用した裁判外紛争解決手続であるODRの推進、法テラスにおける各種業務や更生保護行政のデジタル化に取り組むとともに、デジタル技術等の活用による出入国審査業務の更なる高度化を進めます。 

(所有者不明土地問題への対策等)
 所有者不明土地問題への対策は、将来を見据えて政府全体で取り組むべき課題です。この対策の中核をなす相続登記の申請義務化が本年4月から施行されます。国民各層に大きな影響を与えるため、関係機関と連携し、十分な周知・広報を実施するなど円滑な運用に向けた準備を着実に進めます。
 これと共通の課題があり、今後急増することが見込まれる老朽化マンション等についても、区分所有法制の見直しに向けて、しっかりと検討を進めます。
 土地に関する重要な情報基盤である登記所備付地図の整備については、全国において法務局の地図作成事業を推進するとともに、令和7年度以降の次期地図整備計画の策定に向けた検討を進めます。

(法教育の推進)
 自由で公正な社会を実現するには、社会を形づくる一人ひとりが自らの考えをしっかりと持つこと、そして、互いの考え方を尊重して生きていく力を身に付けることが重要です。その基礎となる諸原理や法の役割を理解し、法的なものの考え方を身に付けられるよう、法教育を積極的に推進します。

(高度・複雑化する法務・司法制度を支える人材育成等)
 高度・複雑化する法的需要に的確に応えるため、関係機関等と連携し、より多くの人材が法曹を志望する環境整備を推進します。また、法務省における訟務機能の充実にも取り組みます。

(司法の体制整備)
 裁判所の事務を合理化・効率化することに伴い、裁判官以外の裁判所の職員の員数を減ずることを内容とする「裁判所職員定員法の一部を改正する法律案」につき、今国会での成立を目指します。

結び

 今後とも、公正・公平な社会を目指し、副大臣、政務官、そして全ての法務省職員と一丸となり、全力で職務を果たしてまいります。そして、職員らの能力が最大限発揮されるよう、ワークライフバランスの実現にも引き続き取り組みます。
 武部委員長を始め、理事、委員の皆様方には、一層の御理解と御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。