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行刑改革会議 第1分科会 第4回会議

日時: 平成15年10月6日(月)
   14時06分~16時57分
場所: 法務省矯正局会議室(14階)



午後2時06分 開会


○宮澤(浩)会長 それでは,第1分科会の第4回の議事に入らせていただきます。
 たしか次回には全体会議の報告がありましたよね。そういう意味で,一つの区切りをつけるような議論ができればと。それから,先生方が御出席できないというのは,11月ですか。
○名取課付 次々回ですね。10月27日に分科会が予定されているのですけれども,この日は滝鼻先生と成田先生が御都合が悪いというふうに伺っておりまして,ちょっと別の日でもう一回日程調整させていただいて。
○宮澤(浩)会長 今やりますか。
〔次回日程調整〕
○名取課付 では,10月27日の分科会は,10月30日の午後2時からに変更ということでよろしくお願いいたします。
○宮澤(浩)会長 どうも,御協力ありがとうございました。

1.個別論点の検討

(1)懲罰制度について

○宮澤(浩)会長 それでは,今日は前回いただいた資料があるわけですけれども,「個別論点の検討」の懲罰制度というところに入るわけでありますが,前回この点しゃべり忘れたというようなことがもしなければ,懲罰制度というものへ入っていきたいと思います。
 これは,事務局からの話はあったんですかね。
○富山調査官 前回プレゼンはさせていただいております。御説明を忘れておりましたが,お手元にこの緑色の紙ファイルに入っているものがあるかと思いますが,監獄法令を4段表にまとめたものが,右から開いていただく縦書きの部分でございます。反対側から開きますと,左横書きで「主な訓令・通達」ということで,今回いろいろ御議論いただきます分類関係ですとか所持品の関係ですとか,戒具,保護房の関係,懲罰の関係といった訓令・通達を入れてございます。
○滝鼻委員 ちょっと読み方なんですが,監獄法が1段目にありますよね。その下に施行規則があるでしょう。それから累進処遇令があって,それから物品云々というのがありますよね。これ大体対応しているのですか。
○富山調査官 基本的には対応しております。ですから,監獄法のこの条文にかかることが,それぞれ下に規則ではこんなふうに書かれていると。
○滝鼻委員 そういうことですね。
○富山調査官 そういう対応での4段表になっております。
○滝鼻委員 それと,例のよくここで名前として飛び出してくる法律の法案だけれども,刑事施設法案はこの中に入っていないのですね。
○富山調査官 この中には入っておりません。
○滝鼻委員 それが,この監獄法の対応としては出てこないわけですね。対応にもならないのか。
○宮澤(浩)会長 あの当時は,あったような記憶があります。
○富山調査官 刑事施設法案,逆に法案をもとに,それが現行監獄法でどうなっていて,なおかつそれのもとになっている法制審の答申はどうなっていたかという,こういう3段表は別途ございます。これは最初にお配りしていたでしょうか,全体会議において。
○井嶋委員 配られたと思います。
○滝鼻委員 この中にあるの。
○富山調査官 ちょっと確認してみないと分かりません。もしないようでしたら,また準備いたします。
○井嶋委員 できたら,これはお配りした方がいいと思うのです。やはり,一応10年前に。
○滝鼻委員 直接の問題はともかくとして,現代用語に直すとこういうふうになるのかなということも分かるかもしれない。
○富山調査官 分かりました。
○井嶋委員 これはまとめというのは,10年前ですけれども,それなりに監獄法部会で議論してつくった当時の一番新しい。
○滝鼻委員 10年たっているわけですね。
○富山調査官 法律案ができて,最後に国会に上程してから10年以上たっていますが。
○井嶋委員 参考にはしていきたい。
○滝鼻委員 時代の変化もある。
○井嶋委員 これ,お配りできたら。
○富山調査官 分かりました。次回までには準備いたします。
○宮澤(浩)会長 皆さんそれぞれお分かりだと思いますので,もう自由に御発言いただければと思います。だから,懲罰制度というのがまず最初のテーマということになりますと,ここにありますように懲罰というものの種類とか,懲罰を執行中にまた何か問題があったらとか,あるいはいろんな理由でもって懲罰の変更というようなことがあるのだけれども,言ってみれば懲罰制度自体についての一般的な御議論と,それから今度はそれを科す手続について,現在の在り方に手直しをするとすればどういう問題があるかという,その二つの大きな論点があるわけですね。前回菊田委員の御発言もありましたけれども,昼夜独居とか懲罰房,そういう問題がちょっと何か概念的というか制度的な問題が少し混乱して議論したような私自身には印象があるわけですので,その辺を踏まえて2番目のテーマとして昼夜間独居の問題性,保護房の問題性といったようなものをそこでやってみたいなと思っています。
 まず懲罰制度について,いかがでございましょうか。現行の懲罰というのは,このいただいた資料で監獄法に種類がたしかずらずらっと並んでいたと思いましたが。懲罰,第11章賞罰,この中の懲罰が59条。60条が懲罰の種類。これが明治41年の規定でありますが,その後,昭和41年に法務省令が改められているというのはこれで分かるわけですが。そもそも懲罰という制度は要らないということはないでしょうね。これはどこの国でも,やはりそういう刑罰を執行している場所でまた懲罰という,これはいかんなんていうようなことがもし理屈としてあるとすればあるわけですが,やはり刑罰の場合は施設外で行われたことに対する問題でありますし,懲罰の場合は施設内のことで,しかし施設内でも殺傷事件なんてことがあれば,これは新しく手続が始まるわけですから。
○富山調査官 いわゆる事件送致を行うこともございますが。
○宮澤(浩)会長 ですから,この場合の懲罰というのは,あくまでもそういう外へ事件として送るというものは入らないということが前提でしょうかね。
○富山調査官 一応刑事罰と行政罰ですから,両方を科される可能性はある。懲罰は受けて,別途刑事事件として扱われる可能性はございます。
○滝鼻委員 「屏禁」という言葉が僕はピンとこないし,かつ概念もよく分からないのだけれども,これはほかの懲罰の種類,叱責から始まって減食に至るまでこれはよく分かるのだけれども,屏禁というのは概念の規定としてはどういうことを言うのですか。
○富山調査官 いわゆる昔で言いますと,閉門蟄居というような,これは江戸時代の話でございますけれども,それに類似した考え方でして,独居房の中に終日拘禁して,ずっとそこで反省させるといったようなことを内容とする懲罰でございます。これは監獄法の条文の中でこの屏禁の意味を60条2項,ちょうど今日お配りした資料,66ページになりますけれども,2項で「屏禁ハ受罰者ヲ罰室内ニ昼夜屏居セシメ,情状ニ因リ就業セシメサルコトヲ得」となっておりまして,要は独居房の中に昼も晩もずっといさせて,情状により作業も科さないことができる。実務の運用としては,懲罰中は作業を科さない方が通常でございます。更に重屏禁というのがございまして,この重屏禁はこの罰室を暗くして臥具を禁ず,すなわち部屋を真っ暗にして寝具も与えないというようなことが,この重屏禁になります。重屏禁は,戦後は運用しておりません。科された例はございません。
○菊田委員 これから,1~12までで現在使われていないのをちょっと教えていただければ。
○富山調査官 当局の方から通達をもってこれを使ってはならないと言っているものは,今申し上げた12号の重屏禁でございます。これは当局で禁止しております。
○滝鼻委員 これは,通達集のどこにあるのでしょうか。
○富山調査官 この通達集の中には,重屏禁の禁止ということまでは載っておりません。これは戦後間もないころに発せられた通達の中で,重屏禁は今後科さないということが言われておりまして,今回お配りしたものの中には入ってございません。それ以外の11種類の懲罰は,法令上あるいは当局から明文をもって禁止しているものはないのですが,事実上使われていないものは,まず2号と3号の賞遇の停止と賞遇の廃止。これは事実上使われておりません。なぜかといいますと,行刑累進処遇令ができてから,賞遇というものは行刑累進処遇令での優遇措置にとってかわられてしまいまして,賞遇そのものが基本的に運用されておりません。その関係がありまして,この賞遇を停止するとか廃止するということが意味を持たなくなっております。
 それから,あと実務上使う例が少ないという意味で言いますと,この請願作業の停止なども余り科される例はございません。
○滝鼻委員 5号。
○富山調査官 はい。5号でございます。これは別に禁止しているわけではないのですが,余りこれを懲罰として使っている例は少ないかと思います。
 それから,同じく8号の運動の停止なのですが,これもこれを単独で懲罰として使っているというというケースは余りないようです。
○菊田委員 それは,例えば軽屏禁中は運動禁止ということは。
○富山調査官 軽屏禁中は,閉居した関係上外へ出せませんので。
○菊田委員 あるわけでしょう。
○富山調査官 ただし,これは例えば2か月間の軽屏禁の間ずっと運動させないのかと言うと,そうではございません。ですから,懲罰としての運動だけを停止するという,この懲罰の類型は余り使われていない。ただし軽屏禁になりますと,部屋の中にずっと入れておくのが原則ですから,その関係で戸外での運動はできなくなるという効果はございます。これについては,保健衛生上支障がないように,頻度は落としますが運動の実施はさせております。いずれにしても,この8番の懲罰が科されるケースはまれでございます。
 あとは,減食罰,第10号です。これは食事の量を2分の1あるいは3分の1に減らすという懲罰なんですが,これもここ10年ぐらいは科された例は全くないと聞いております。ですから,当局から明示で禁止している12号のほかに,今申し上げたような懲罰が事実上ほとんど科されていない。
 あと前回お配りした資料でも御覧いただけますように,そのほか自弁の衣類,臥具の着用停止,すなわちこれは6号ですか,それから7号の糧食の自弁の停止,これも件数的には極めてわずかな件数しか実績はございません。ただし,若干の実績はあるようでございます。
○滝鼻委員 素朴な疑問なんですが,例えば重屏禁はもう科さない,これは通達で決まっている。それから,賞遇に関する2号と3号ですね,これは事実上使われていない。5号,8号,10号,それから6号,7号,これは件数としては使われないとか余り使われたことがない。5号以下はともかくとして,重屏禁は通達で禁止されている。2号,3号は事実上使われていない。この賞遇,賞遇というものが大体ないわけですね,今ね。
○富山調査官 はい,もう運用されていないということでございます。
○滝鼻委員 なぜ,こういうものを監獄法から削除しないのですか。
○富山調査官 なぜと言われますと非常にお答えしづらくて,そんなもの簡単に削ってしまえばいいじゃないかとおっしゃれば,おっしゃるとおりなんですけれども。
○滝鼻委員 簡単とは言わないけれども,実際やっていないものを載せるというのは,これは法律として何か抜け落ちているような感じがするのだけれども。
○富山調査官 結局変えるのであれば全部改正をしたいという思いがございましてやっていたものですから,そういう部分的な手当てを全然してこなかったというのが実際のところなのです。これ以外にも監獄法には,例えば陸海軍の監獄にはこれを適用しないとか,戦後およそ意味を持たない条文が残ったりしておるのですが,結局それらも手をつけられないままになっておりまして。
○滝鼻委員 それからもう一つ,これもちょっと青臭い質問なんですが,自由刑というのは自由をはく奪して,一定区域内に隔離することですよね。その中で更に懲罰,これは行政罰とおっしゃるけど,減食とか叱責とか,減食はやっていないのか,そういうような,10号まではともかくとして,自由を奪った中で更に自由を奪うわけですよね。自由ではないけれども,隔離するわけでしょう。これは基本的には,事務局より宮澤先生の方がいいかもしれないけれども,二重罰には当たらないのですか。よく税金なんか,タックス・オン・タックスはいけないと言いますよね。それと同じような考え方というのはないのですか。僕は懲罰はやめろと言っているのではなくて,その辺の理屈としての整理は何かできているのですか。
○宮澤(浩)会長 それはやはり,刑罰というものとこういう行政罰というものとは違う存在理由があるということで,教科書的には行政罰にはこういう目的,こういう目的,こういう目的といろいろな行政的な目的を達成するための罰というようなことで説明するのです。
○滝鼻委員 行政罰で,体の自由が奪われるという行政罰というのはあるのですか。
○宮澤(浩)会長 ほかの法令でという意味ですか。
○滝鼻委員 ほかの法令で,刑務所と関係なく。
○宮澤(浩)会長 どうでしょうね。あれなんかどうかな,例の児童自立支援施設なんていう,ああいうものの中にありますよね。
○富山調査官 どうでしょう。
○宮澤(浩)会長 厚生省の関係の法律ですね。
○富山調査官 今この場では何とも申し上げようがないのですが。
○宮澤(浩)会長 やはり施設でなければ。
○滝鼻委員 例えば刑法とか,あるいはそれ以外の自由刑を罰とした法律がいっぱいありますよね。それは刑罰だから分かるのだけれども,いわゆる行政処分としての罰ですよね。行政処分としての罰の中で体の自由を奪うという罰はあるのですか。
○宮澤(浩)会長 監置処分とかいうのはなかったですか,法廷秩序か何かの。
○井嶋委員 監置処分というのがあります。
○滝鼻委員 あれは刑罰ではない……刑罰。
○井嶋委員 裁判所,司法行政上のだから。
○滝鼻委員 司法行政上の罰。
○井嶋委員 法廷警察に基づく罰。
○菊田委員 それは,処遇の中での制裁の一つだと考えれば,それは幾らでもあるんだろうと思いますけれども。今宮澤先生がおっしゃった自立支援施設というところでも,本来あそこは自由に出入りできるのです,少年たちは。
○滝鼻委員 昔の教護院か何か。
○菊田委員 昔の教護院。その中に特殊房というのがあるんですよ。そこは鍵がかかるところがあるのです。そういう,拘束しなければならない場合は拘束するということですから。
○滝鼻委員 あれもそうですか。精神衛生法もそうですか。
○菊田委員 重症のは,最初から拘束して。
○滝鼻委員 あれは何ですか。刑罰じゃないですよね。行政罰でもないんでしょう。
○井嶋委員 あれは,治療なんでしょうね。
○富山調査官 罰ではないですよね。行政処分かもしれませんけれども,罰ではない。
○滝鼻委員 処分性はあるわけですよね。
○名取課付 そのように理解されていると思います。
○滝鼻委員 取消し求めて訴えなんか起こすことはできるんですか。
○名取課付 できますね。
○宮澤(浩)会長 もっとも患者のなかにもそいうのがいるだろうからね,合理性があるかどうかの判断はもちろん,第三者。
○滝鼻委員 刑罰の執行の中で行政罰を受けるということは,もう議論としてはクリアされたものなんですね。
○富山調査官 そうですね。行政罰というか行政上の懲戒罰でございますけれども。
○滝鼻委員 分かりました。
○菊田委員 ただ,この軽屏禁というのでは,要するに文字どおり今おっしゃったように独居の拘禁ということなのでしょうけれども,運動について言えば,今おっしゃったように権利として運動が保障されていることではないわけでしょう,現実的には。だから非常に長期にわたって運動させない場合もある。だからこの点は非常に問題だと。
 それから,例えば軽屏禁になりますとじっとしているわけですから,食事のA食,B食とありますよね。それなんかもA食がB食になるということはあり得るわけですよ。
○富山調査官 あり得るのではなくて,なるのです。作業をしないで居室内にいますので,いわゆるC食,未決拘禁者と同じ食事になります。
○菊田委員 事実上カロリーが減るわけですよね。
○富山調査官 これは,よりカロリーを消費しない生活になりますので,それに見合った食事になります。
○菊田委員 それと,作業賞与金の減額,これも軽屏禁になることによって,事実上自分の賞与金を受刑者は罰金と称しているのです。罰金ということはあり得ないのだけれども,差し引きされるということがあるようですね。
○富山調査官 軽屏禁ではなくて,賞与金の減削という懲罰が別にありますよね,この9号です。この9号の懲罰によって,賞与金計算高の全部又は一部を削るということはあります。
○菊田委員 だから,それがいずれも独立していればいいんだけれども,併科されるわけですよね。一つの違反行為に対して軽屏禁だけならともかくも,それに伴う同時に読書の禁止は当然というような形でなされるし,面会もだめだし,そういった併科がやたらとやられるというところが,やはり罪刑法定主義には反していますよね。
○富山調査官 併科とおっしゃるのは,軽屏禁と文書図画閲読の禁止の懲罰というのは,実務上通常併科しております。これの意味というのは,独居房の中でじっとさせておくのに,退屈しのぎの本があったのでは全然懲罰の効果がないということで,読書は禁止するということを併科するのがほぼ100%そうだと思います。今おっしゃった賞与金の減削なんですが,これは前回お配りした資料を見ていただくと分かるのですが,軽屏禁が3万4,183件年間ございまして,一方賞与金計算高の減削というのをほかの懲罰と併科した件数というのは2,093件なんです。ですから,この2,093件がどれと併科したかは必ずしも分かりませんが,仮に全部を軽屏禁と併科しているとしても,3万4,000のうちの2,093だということになりますので,その併科というのは決して多くはないと。ごく例外的なケースで併科していることがあるということは分かっていただけると思います。
○菊田委員 実態というか,理屈としてこういうことがいかがかということを議論してもらう必要はあると思うんですよ。
○宮澤(浩)会長 ちょっと待って。ちょっと分かりづらかったのだけど,3万4,000何々という軽屏禁があると。
○富山調査官 年間ですね。
○宮澤(浩)会長 だけど,それは軽屏禁という言葉の性質上読書はさせないと。
○富山調査官 いえ,そうではなくて,読書をさせないのは,文書図画閲読禁止という別の懲罰がございまして,それをあわせて科していることで軽屏禁中に読書をさせないということになっております。
○宮澤(浩)会長 だから,それが2,093の中に入るわけですね。
○富山調査官 いえ,2,093と申し上げたのは,賞与金の計算高の減削の方でございます。
○宮澤(浩)会長 ごめんなさい。では,この文書図画閲読の3か月以内の禁止の数は分かりますか。
○富山調査官 分かります。これはそれを主に科したのは233件なのですが,他の懲罰と併科したものが3万4,206件ということで,ですからむしろ軽屏禁の件数を上回っておりますので,軽屏禁以外のものに併科したケースがあるのだと思います。
○宮澤(浩)会長 それなら分かりました。分かりましたというのは,データが分かったという意味で。確かに退屈しのぎのことをするのでは軽屏禁にした意味はないというのも一つの理屈だけれども。
○滝鼻委員 2か月以内の軽屏禁でしょう。
○富山調査官 はい。
○滝鼻委員 文書図画の禁止は3か月以内の禁止でしょう。これを併科すると本読めない期間は,例えば2か月の軽屏禁としたら本読めないのは,併科すると本読めない者は。
○富山調査官 2か月の軽屏禁に文書図画閲読禁止を併科する場合には,同じ期間で併科しています,実務上は。
○滝鼻委員 併科してはいけないと言うけれども,第3項に「第1項各号の懲罰はこれを併科することができる」と一応法律には書いてあるよ。これを変えろと言っているわけ。
○菊田委員 本来読むことというのは,人間の基本的な権利ですから,軽屏禁というのが普通の人より違ったところに入れるぞという罰なんですね。だから,軽屏禁という罰を受けたために自動的にというか,半ば自動的に読書もさせないというのは,これは筋が違うのではないかと,こういうことです。
○滝鼻委員 筋が違うけど,効果がないという。
○菊田委員 いや,効果というのは軽屏禁をすることの意味なんですよ。
○滝鼻委員 そこでゆっくり本なんか読まれちゃったら,何だってことだ。
○井嶋委員 屏禁というのは,何も入れておくことだけではなくて,そこで自省,反省を求める。そういう行為を。
○菊田委員 だけど,本読むことが反省にならないかということにはならない。
○井嶋委員 ならないでしょう。好きな本読んでいたら反省も何もならないでしょう,それは。
○滝鼻委員 それは,経典とかバイブルとかそういうのならいいかもしれないけれども,好きなこういう,これは立派な本かもしれないけど,おもしろい。
○菊田委員 それを一切読ませないのです。
○井嶋委員 反省に自省に集中しなさいと,こういう意味で入れているんだろうと思うのですね。
○菊田委員 合理的な説明はそこなんですけど,しかしそれは軽屏禁というのは普通の生活とは違うんだよというところへ入れるのですから,それで十分ではないか。読書禁止なら,それはそれの刑罰を科すということで,独立して。
○井嶋委員 屏禁というのは,そういう意味を持った言葉なのだから,おっしゃるようなことなら,隔離とか何か別の用語になるはずなのでね。屏禁というのはやはりそういうところに入れて,自省を求めてそれに集中させるという意味があるんだろうと思うから。
○滝鼻委員 江戸時代に閉門蟄居ってよく武将がやられたよね。あのときは,本読んでいたの。
○富山調査官 多分そこまで規制をかけていないと思いますので,中では何をしていても多分特段の規制はしていなかったと思いますが。
○井嶋委員 門だけで,中は自由でしょう。あれとは違うんでね。閉門ではないので,蟄居ではないので。やはりそういう意味の刑罰,懲罰だろうと思うから,併科できるということで従来実務的にはやっているのだろうと思いますね。
○菊田委員 やっているのです。
○井嶋委員 併科できるということ自体は,新しい施設法案でも踏襲しているわけです。
○富山調査官 新しい施設法では,むしろ一つの懲罰にしてしまいまして,閉居罰という懲罰にしてしまって,その中で閉居罰の内容として読書もさせないというような中身になっていたと思います。
○菊田委員 個別に言い渡すわけですか。
○富山調査官 閉居罰という罰自体で,もう読書をさせない。
○井嶋委員 閉居という表現になっているのです,今度。
○滝鼻委員 新法の方。
○井嶋委員 今残っている部分が全部新しい施設法案では生き返っているんです,原則的に。ただ,中身は少しずつ変えていますけれども。
○滝鼻委員 そうなのですか。また2号,3号とか生きているわけ。
○井嶋委員 2号,3号は今規定していません。
○滝鼻委員 いやいや,していないけど,刑事施設法案には入っているわけ。
○井嶋委員 法案には,1号が入っていますとか,4号が入っていますとか,5,6号が入っていますというふうになってくるわけで,現在使っているものは。
○滝鼻委員 併科はどうなっているんですか。
○井嶋委員 併科は残っています。併科することができると。ただ,軽屏禁という言葉が閉居という言葉になっているのです。
○富山調査官 その閉居罰の中身として,閉居罰はということでその内容を書いた条文が確かあったはずです。
○井嶋委員 閉居罰の内容はある,ある。137条で,居室内において謹慎させる。
○菊田委員 謹慎させるということは,必ずしも。
○滝鼻委員 謹慎ということは,本読んだら謹慎にならない。
○井嶋委員 謹慎にさせる。この場合においては……。
○宮澤(浩)会長 普通学生に謹慎しなさいと言うときに,何もしないでただぼっとしていろとは言わないでしょうね。
○滝鼻委員 学生とはちょっと違うんでしょうね,これは。
○井嶋委員 禁止させるの中身として,書籍等の閲覧というのが入っているんですね。
○滝鼻委員 閲覧は禁止。
○井嶋委員 禁止させると中に入っているんです。
○滝鼻委員 じゃ併科じゃないけれども,事実上の旧法で言う併科になっているわけだな。
○井嶋委員 閉居の定義を決めたということです。この次の条文もあったらいいのだな。137条。これ御覧になって分かりますように,下の中段の中で今やめているものはみんな上へ上がっていないのです。しかも,例えば軽屏禁も閉居として,しかも2か月ではなくて30日以内と,期間を短縮しております。
○菊田委員 これは,「併科することができる」と書いてあります。だから,しないのが原則ですよ,これは。併科しないのが。
○富山調査官 いや,することができるというのは,どちらが原則ではなくて,施設長の裁量でそういう権限があるという意味です。
○菊田委員 だから,できるということであって,基本はしないことですよ。そういうはずですよ,これの意味は。
○滝鼻委員 「併科することができる」というのは,今の現行法でもそうなっているのですか。できる。
○宮澤(浩)会長 現行法と同じです。現代語版です。
○菊田委員 それを自動的にむしろやってしまっているのだから。
○宮澤(浩)会長 「併科す」ではないですね。
○富山調査官 そうです。ですから,どちらが原則というよりも。
○菊田委員 できるということは,場合によってはできるというのが日本語の筋ですよ。「独居拘禁に付することを得」というのもそうですよ。付することができるという意味では,それは。
○富山調査官 ですから,所長に裁量権限があるということを意味している条文だと思います。
○菊田委員 そうです。
○滝鼻委員 3番目は何ですか,これ。
○井嶋委員 これは要綱なのです。施設法案をつくる前の。要綱というのをまずつくりまして,それからそれを法案化するわけです。
○滝鼻委員 余暇活動への参加の全部又は一部の何とかというのは,法案には入ってこないのだね。
○井嶋委員 そうですね。こういうものを入れろということでやったのだけれども,結局法案化するときには一番上の欄のような形になった,こういうことです。要綱は,施設法の法制審議会の答申の要綱です。
○富山調査官 昭和51年に諮問していまして,昭和55年に答申が出まして,それに基づいて立案作業を行っております。
○井嶋委員 監獄法改正に関する法制審議会の答申の要綱です,一番下の段は。
○宮澤(浩)会長 あれはどんな議論をしたかちょっとあれなんだけれども,軽屏禁中の者が余暇活動に参加すること自体おかしいんじゃないというようなことを議論したようなことがありましたけれども。だから,余暇活動への参加というのは,それは独立した刑としてはあり得るけれども,それと……。これは種類の中にあれはないの。
○井嶋委員 入っておりません。136条では結局採用していないのです。
○菊田委員 例えば軽屏禁中は面会させないというのは,あれは通達か何かでやっているわけですか。
○富山調査官 通達というか,これは監獄法令の解釈としまして,軽屏禁というので部屋の中から外に出さないわけですから,当然面会はできない。ということで,軽屏禁執行中は面会はできません。
○菊田委員 アメリカで,そういう者に対しては,面会してきた家族にテレビのところで話をさせるんですよ。だから,そういうことは物理的には可能なわけですよね。だから,それは今おっしゃったように軽屏禁というのが反省させる,沈思黙考させるということではないわけですよ。今までの生活とは違ったところで不自由させるよというのが軽屏禁の意味なので,読書とか面会とかいう権利は,これはそれで自動的に譲ってはならないということは基本的に確立しなければいけないことなのですよ。
○富山調査官 現在の懲罰の運用ではこの罰室というものが特にありませんので,通常の独居房なのですね,軽屏禁を執行する場所というのは。部屋の中にあるものというのも,軽屏禁を執行するからといって特段変わりがありません。ですから,先ほど申し上げたように文書図画の閲読禁止を併科すれば図書は引き上げます。そういう違いしか出ないわけなのです。ですから,今の実務の運用では部屋の外に出さない結果として,例えば運動もできない。これは頻度が半分ぐらいになります。ほかの人の半分ぐらいしかできなくなる。入浴も同じです。ほかの人の半分の頻度になって,入れない日は体をふくことを認めるというような形になります。
○菊田委員 現状はそれでいいのですけれども,運動というのは軽屏禁したって1日少なくとも30分とか1時間運動するのは,人間として生きている以上は権利なんです,それは。だから懲罰としてそれは併科してはいけないことですよ。運動を懲罰で禁止するというのであれば別ですよ。軽屏禁に自動的に,運動できないからといって制限することは,これは理屈としてはおかしいのですよ。
○宮澤(浩)会長 例えば自分の居室でヨガとか太極拳,そういうこともできない。
○富山調査官 基本的には認めません。午前と午後と15分ずつぐらい房内運動の時間というのを設けている施設がございまして,そういう施設は多いと思うのですが,その時間帯に限っては,余り極端な音や振動を立てないような運動は認めますけれども,それを除けば基本的はそういう室内での運動は認めておりません。せいぜい背伸びをするとかその程度の話です。
○宮澤(浩)会長 成田先生に,いわゆる一般市民として考えたとき,何か所内の規則に反して一番重い懲罰である個室に屏禁,その内容が個室にいるということで十分であって,その個室にいるときに例えば普通の受刑者と同じように1日何分かあるいは何時間か体を動かすような余地を認めるとか,あるいはさっき屏禁だから外へ出られないということはあるかもしれないけれども,面会に来た家族とビデオを通じて話をするとか,あるいは屏禁中に正座とは言わないけれども,少し体を楽にするような姿勢で本を読むとかいうのは,やはり認めてはならないというふうにお考えになりますか。それとも,屏禁にはそこまでは入らないのではないかというふうにお考えになりますか。一般市民感覚としてはいかがなものでしょうか。
○成田委員 独居に入れるわけでしょう。もう入れて,自由を拘束,まあ体操ぐらいしたっていいんでしょうね。私なんかはそう思うなあ。
○宮澤(浩)会長 物を読むのは。
○成田委員 読んだっていいじゃないですか。それもだめ,それが余暇活動ですか。
○宮澤(浩)会長 余暇活動というのは,違うのです。また別なのです。合唱をやったり,囲碁クラブとか生け花とか。
○井嶋委員 クラブ活動です,いわゆる世間で言う。
○宮澤(浩)会長 滝鼻委員はいかがでしょう。
○滝鼻委員 僕は,さっき菊田委員が,人間が本来持っている権利。しかしともかく自由を奪われているんだから,本来持っている人間の行動の自由や何かは奪われているわけだよね。しかし,受刑者が持っている固有の権利というのか,その中には例えば本を読む権利だとか運動する権利だとか,それから家族や何かと面会する権利とか,飯を食う権利,法律で決められた飯をしっかり食べる権利というのを制限するのは,軽屏禁の執行を併科するのは,新法で言えば閉居の権限を越えたものだとおっしゃるわけでしょう。そうかなあ。そもそも受刑者が本来持っている権利というのは,そんなに幅広い権利を,行動の自由が奪われた以外の権利は大体持っているんですかね。
○宮澤(浩)会長 今の監獄法では,そうではないんですよね。
○滝鼻委員 今の監獄法ではね。だけど,この刑事施設法案だって,併科できるということになると,本来の受刑者が持っているかもしれないような権利まで制限しているわけでしょう。新法の方。
○菊田委員 新法は,これは解釈ですが,「できる」と書いているので,できないのが原則ではないかというのが私の主張なんです。
○滝鼻委員 だけど,できると書いてあったら併科はできるわけだよね。
○菊田委員 だから場合によってはしてもいいよ。
○滝鼻委員 場合によっては,悪質なやつに対しては併科できるということでしょう。そうすると,それでも原則論の受刑者の権利と言うのだったら,受刑者の権利の一部を制約することになるわけだよね。
○菊田委員 ですから,それは個々ケースによって所長なり,あるいは手続を経て,あなたは軽屏禁に入ったけれども反省が足りないとか何かで,では読書もやめましょうと段階的にやることについては,これはちゃんとその構成要件が定まっておればいいでしょうね。
○滝鼻委員 自動的に併科するのはおかしいと。
○菊田委員 現行法はそうなんです。自動的に全部,しかも正座して沈思黙考させて,横向いてもいけない,厳しいところは。そういうことをやっていることが問題ではないかということを申し上げているのです。
○井嶋委員 中身の問題ですね。新法の136条という条文をちょっと御覧いただけますか。これはさっきの懲罰の種類がこういうふうに整理されている。現行法の中段から上の段に整理されたということが分かりますね。その次の137条というのが閉居罰の内容という条文なのです。これは私ももうすっかり忘れましたけれども,恐らくこれは今菊田委員がおっしゃるように閉居罰の中身が争いになるので,これは特に定義しようということでこういう定義規定ができたのだと思いますが,この内容を御覧になると分かりますように,次の掲げる行為を停止するとなっているわけです。その1,2,3とありますが,自弁の衣類その他の物品の使用,摂取は禁止,停止。それから,2項は宗教上の儀式への参加も停止なのです。3番目に,書籍等の閲覧が禁止。4番目は,面会と信書の発受の禁止,停止。これだけが閉居罰の中身だよということを明定しようというのが,この監獄改正案の10年前の考え方なのです。
ですから,今菊田委員は恐らくこれは反対されるのかもしれませんけれども,少なくとも論争の的になる閉居罰については,こういうふうにはっきりさせようということで。
○滝鼻委員 しかし,そうなるとそれは併科じゃないですね。
○井嶋委員 内容としてこうなりますので。
○滝鼻委員 軽屏禁の中身の中に,もう既に読書の禁止だとか面会の禁止だとかそういうものが入ってしまっていると。
○井嶋委員 だから,そういう意味での今度は併科はなくなるわけです,これが施行されれば。しかしほかの罰との併科はあり得るから,やはり2項の併科はできるということは残っているわけです。ですから,この新法の閉居罰の考え方というのは,やはり宗教上の儀式にも参加させない。信書もだめだよと,書籍も読ませないよということは,それだけ自省,反省をしなさいということを求めるよということの裏返しだろうと思うのですね。だから単に閉居させるという,名前は閉居となりましたけれども,中身はやはりこういう秩序罰的な中身を持っているものだというふうに新法では理解しているのだと思うのです。それをどうするかという問題はこれはからの議論ですけれども,一応今まで過去10年の流れはそういう考え方で来ているということです。
 それからちょっとさかのぼって恐縮ですが,135条の懲罰という規定のコピーが配られました。これは,先ほど滝鼻委員がおっしゃったように,こんな大体懲罰というのは何だということがはっきりしないし,刑罰との違いもはっきりしない。特に現行の監獄法では,懲罰というのは「在監者規律ニ違ヒタルトキハ懲罰ニ処ス」という条文だけなものですから,非常に大ざっぱで,どういう場合に懲罰を科せれるかという権限的なものが何も書いていないということから,この新法の考え方はこの135条でもってこういう場合に限定されるということを,懲罰を発動するときにはこういう場合に科すことができるのだということを明定するためにこういう条文をつくったわけですね。ですから,これを見ると分かるとおり,決して刑罰とは思いませんけれども,秩序罰というか行政罰だということはここではっきりするわけですね。それを踏まえて種類を整理したというのが,新法の考え方なんです。ですから,先ほど滝鼻委員がおっしゃった非常にあいまいとした懲罰というものの中身というのものが,やはりこういう形で今後ははっきりさせていくことがまず基本的に重要だろうということは,大いに私も賛成だし,そういう方向に行くべきだと思います。
○宮澤(浩)会長 これはやはり秩序罰であっても,構成要件的に明確にしなければいけないということで,こういうふうなことを書いたのですね。
○井嶋委員 罪刑法定主義の一つの変形みたいなものですね。まず限定をかけてね。
○宮澤(浩)会長 これはどうですか,この内容の第2号の「職務の執行を妨げること」というのは,例えば口答えするなんていうのは入らないのですか。
○富山調査官 口答えですか。その口答えが職務の執行を妨げるようなものになるかどうかですよね。ですから一概には。
○宮澤(浩)会長 暴行はもってのほかだけど,脅迫……。
○富山調査官 いわゆる公務執行妨害も脅迫とかが要件になりますよね,暴行,脅迫が。そこまでは行かないにしても,それに近いようなある程度の口答え。ただ単に,いえそれは違いますと言っているだけなのに,そんなものは職務妨害だということはないと思うのですね。
○宮澤(浩)会長 自己に危害というのは,これは自傷。
○富山調査官 自殺とか自傷。自殺は別ですか,自傷ですか。それも入りますかね,ほかに条文がないですね。
○井嶋委員 これは,あおり,そそのかしも入っているんです,7号で。あおり,そそのかしなんていうのは,なかなか難しいのですけれども。そういうのも一応学問的には入れているのですね。
○成田委員 逃亡の相談だとかね。
○井嶋委員 親分がそそのかしたとかね。
○滝鼻委員 暴行,他人のものを棄損するというのは,それ自体刑法違反でしょう。
○井嶋委員 それは,刑罰に触れることは他方あるわけです。
○滝鼻委員 これは,刑事手続が始まるのではないのですか。
○富山調査官 その態様次第です。軽微なものであると,あえて事件送致にまで至らないということがございますので,それでも所内で懲罰に科すことはある。
○滝鼻委員 そのときは,送致しないときにはこの秩序罰でいこうと,こういうことなのだね。
○富山調査官 しないときはというか,実務上は送致もする,懲罰も科すということもあります。ダブルでいく場合もあります。あくまで全然別個の手続であると考えておりますので。
○宮澤(浩)会長 もう内容にまで入っていますね。そうすると,問題は透明性の確保という問題が更に重要なことになるわけですよね,懲罰手続をどうするかという。
○成田委員 ですから,こういうやつはもし決まれば,獄にあれしたときにはちゃんとこれを犯したときには懲罰に処すというやつが出てくるのでしょう,あるいは明示されているのですか。
○宮澤(浩)会長 これは収容者心得みたいなものは,分かりやすくは書いてあるのですね。
○富山調査官 いわゆる遵守事項でございますね。前回もプレゼンの際の資料で,これが府中の遵守事項でということを整理してお配りしたのがございますが。
○井嶋委員 懲罰の中身はどうだった,種類は。
○富山調査官 これは所内生活の心得の方に,かみ砕いて書いてあります。こんな懲罰を受けることがあるということを。
○井嶋委員 中身は事前に告知されているはずです。現在の監獄法に基づく,この中段の分ですね。もっともやってないのは,廃止したのは入れてないはずですけれども。
○富山調査官 重屏禁は,多分書いていないでしょうね。
○成田委員 映画か何か見て,何かこういうたぐいで違反するでしょう。違反するとき,例えばおまえはあれだと,第何条何々によって君はそれに違反したとか言ってやっている映画,外人がやったときに,そういうのを見たような気がするのですが,割とそうすると,全員が知っている,あ,こいつ違反したんだ。だからおれはやるんだよというようなことを,何かそういう慣行みたいなものが恐らくやっている人たちもいるんじゃないのかな。そういうことをしたら,君はそういうそそのかしをやったと。これは何々,第何条7項に違反すると。査問委員会にかけるだとかいうようなことを何かやってやると,ああ,こいつは悪いことをしているんだということが。
○井嶋委員 おっしゃっているのは,手続の明定性というか,透明性の問題だと思いますけれども,したがって今のような監獄法では非常に大ざっぱなものしか決めていなくて,あとは通達みたいなものですから,それでは非常に分かりにくい。だから,やはりきちっと法律である程度きちっとした目的も書き,種類も書き,しかもその弊害が起こりそうなものは定義もきちっと置いて,そして明らかに示して,しかもそれをやる手続もあと規定にきちっと書くという,まずその手続の明定というのは絶対必要だし,近代行刑の基本だろうと思いますから,これを通達や何かで包括的なものにするということは絶対よくないということは言えるのだろうと思いますね。それは,そういう方向に行くべきだということは提言できると思います。
○成田委員 よく刑務所で,こうやって刑務官が「異常なし」と言うじゃないですか。君のあれはこれの違反であるとか言ってね。
○菊田委員 だから,おっしゃるとおり本当に現場の指示,それが一番大きな違反事項になるのです。だから,ここにあるように「遵守事項を遵守しないこと」とありますけれども,非常にこれは抽象的に書いているけれども,前回配付になったように府中刑務所の遵守事項なんかありますね。だから,何十,何百というものが何々しないこと,しないこととある。それ以上にまた,現場の職員の指示に違反した,これになってしまうわけです。ここはやはり明確なものにしないと,恣意的な働きがもうずっと優先するんですよね。
○成田委員 特に最近は,そういうことをメディアなんかは言っているわけでしょう。だから,公示する,公開する,その場で。そうすると,証人に立つことだってできるでしょうし。
○菊田委員 やはりきちっと事件なら事件という形でその内容が客観的に書かれて,それに対して後日不服申立てができるという方向でやっていくということですよね。
○井嶋委員 今おっしゃったことで,私も前回申し上げたのだけれども,遵守事項というのははっきり書いていますから,割にはっきりするのですが,指示に反するというやつは,指示というのがもちろん全くの恣意に基づく指示ではいけないわけですけれども,きちっとした根拠がないといけないのだろうけれども,どうももう一つあいまいなところがあって,また人によって運用が違うみたいなことが起こることが,今日の非常に大きなトラブルの,日常起こるトラブルの大きな一つではないのかという気はどうしてもするのです。ですから,指示というのはどういう場合に指示ができるとか,あるいは指示何回以上やったら懲罰だとか,そんなできるだけ客観化したようなものができないのだろうかという気が僕も,そういう意味では菊田さんのおっしゃることもよく分かるのですが。ほかの遵守事項というのは中身はともかくとして守れということを書いて示すわけだから,これはいいわけだと思いますが,指示というのは,職員が研修してどういう場合に指示するのだということを習うのだとおっしゃるけれども,やはり個人差があったり経験の差があったりして違いがあるとした場合に,相対的なものなのですから,その場合に懲罰まで高めることができるだけの客観性を持たせられるのかねということが一つ疑問ではあるのですが,その点はどうですか,当局の人は。
○富山調査官 確かに指示違反というのは非常に難しい面があるのはおっしゃるとおりでして,現場の運用としては,ただ指示に違反したからすぐ懲罰ということは基本的にはだめですよ。あくまでも,所内生活の心得ですとか法令に基づく指示がもちろん当然前提だと。まずそれが大前提である。それから,指示したことに例えば職員に反抗する意図を持ってあえて従わないというような場合,あるいは多勢に自分の力を示すために従わない。こういう場合は1回でも懲罰に付することがあるのですが,そうではなくて従わないというのであれば,何度も注意をしてそれでも聞かないというようなときに懲罰を科す。
○井嶋委員 それは何かに書いてあるの。
○富山調査官 いえ,これはそういう運用をしろということで。
○井嶋委員 研修で教えるわけでしょう。
○富山調査官 研修で教えたり,当局で指導をしたりという形で,確立してきております。なかなか何回もというのは,では何回だというのがなかなかこれ実は難しいところがございまして,ちょっと書くのがしんどいというのがあるのです。いろんな場面で指導としてきていることは事実なんですけれども。
○成田委員 例えばアンパイア,サッカーの人がイエローカードと出すわけでしょう。そうじゃないけれども,何回目だと。学校の先生に怒られるときに,君は何回もあれするねと言われて納得することだってある。
○井嶋委員 あれはおっしゃるとおり,選手もそうだし観衆もあれを見て,あ,イエローだと。次は赤だと分かるのです。客観性があるわけです。ところが,今の話は看守と相手だけの間ですから,ほかの人たちから見たら分からないわけですね。そういう意味では,客観性がイエローカードはレッドカードと比べれば少ない。
○成田委員 自分は君,違反しているよ。これは懲罰審査会に出すよというようなことを言うなり何なりして,例えば第三者,同室にいる人たちが理解すれば,何かそういう味方をつくるということも必要なのじゃないかな。全部力,権力のあるものが悪い,悪いという。それで,委員会というか,懲罰審査会なり何なりあったときも,例えば人によって非常に違うと思うのですよ。こういう小さいことだってあれする。そんなことはないじゃないかと。
○井嶋委員 細かい人が細かくやるのと,大ざっぱな人が大ざっぱにやるのとは,同じ指示でも違いが出てこないかと。
○富山調査官 ちょっと手続の話になるのですが,これも前回流れ図をつくって御説明したのですけれども,要は職員が規律違反行為があると考えると,まず当然上司に報告するわけですね。前回私もやったことがあると言いましたが,通常首席矯正処遇官クラスの職員が,あ,なるほどそういうことをやったのではあれば,これは取調べにして懲罰を科すかどうか考えなければいけないと思いますと,決裁をとって本人に取調べの告知というのをするのです。これは,君がいついつこんなことをやったということで職員から報告が上がったので,この件について取調べに付すということを本人に告知しまして,告知を受けたものは原則的には独居拘禁になります。ただしその必要がない者は,雑居に置いたままということもあります。原則は独居拘禁にして取調べが始まりまして,以前にも御説明したとおり原則は14日以内で懲罰に科すか科さないかということを決定する。ですから,個々の職員の指示は確かにばらばらになることはあり得るのですが,少なくともまず首席のところにこういう指示をしてこういうことを言ってきましたということで,そこである程度の担保はされるわけです。そのくらいだったら口頭の注意でいいじゃないかということで,じゃおれが注意をしておくよということを言ったり,そういうスクリーニングがかかるのです。あとは,ただその首席がまた施設によってみんな厳しいとか緩いとかが違うじゃないかと言われてしまいますと,それ以上上の所長まで判断を仰いでも,基本的には首席が多分取調べをすべきですと言えば,よほどのことがないと所長もそうですねとそこは言うと思いますので,ですからそこから先の担保となると,あとはその状況をきちんと記録に残して後日の検証にたえるようにしていくしかないのかなとは思うのですけれども。
○成田委員 それと私は,例えば刑務官が,「君はいつもこんなささい過ぎるよ」というようなことで,ここで採点するということだってあるわけでしょう。例えば我々私企業の中では,「おまえ,何いつまでもそんなことばっかり言っているじゃないか。そんなことじゃなくて,もうちょっと説得のしようがあるんじゃないの」というような形で普通やっています。人によっては,本当にもう重箱の隅をつつくようなことを言うし。何言っているんだいというようなことで,逆にそういう人間は査定されていくわけ。だから,私はそういう一つのプロセスもあれじゃないかな。
○井嶋委員 そういう意味では,今の手続の方である程度透明性というか客観性を担保していくのだという考え方だから,それはあわせて。あわせてということは何でしょう,確かに指示違反というのはこういう書き方しかできないから,指示違反の中の重要なものとか何とか,そんな限定のしようもないしね。ですからそれはそういうことなのだと思いますけれども,少なくとも懲罰を科す要件として,指示違反というのは非常にあいまいな点があるなという気がしておるということが一つです。
 それから,種類の点では菊田委員がおっしゃったとおり,閉居というもののあいまいさがあるので,これは新法のように定義づけをきちっとするというのをやはり今回も提案すべきだろうというふうに私は思いますが,それ以外はほとんど新法の精神で踏襲していっていいのではないかと思いますが。
○滝鼻委員 併科はいかんという話ですが,先ほど菊田委員がおっしゃった。屏居はしようがないと。そこで反省させというか,閉じ込めておく。これは独房なのでしょう。
○富山調査官 そうです。独居房です。
○滝鼻委員 そこに読書禁止とか面会禁止とか,それから運動の禁止を併科するということは,その受刑者の基本的人権あるいは人間本来持っている権利を侵害する部分になるのではないかと,そうおっしゃったですよね。であるならば,読書禁止とか運動禁止とか,それから面会の禁止という処分そのものも,懲罰そのものもいかんということになりませんか。
○菊田委員 私が今議論のプロセスの中では,段階的に軽屏禁というのが原則としてありますよ。更にそこでこの人間についてより強固な軽屏禁にしなければならない場合に,読書を禁止ということは次の措置としてそういうことがあるじゃないかということを先ほど申し上げたのですけれども,もっと広い意味では今おっしゃったように懲罰の種類として読書とか運動とか,これは本来受刑者であってもとってはいけないものだという考え方はもちろんあるのです。あります。
○滝鼻委員 だから,そういう考えをお持ちでなければ,併科するのは権利侵害だということは成立しなくなるよね。
○菊田委員 段階的に,今言ったような前者の場合はあり得ると思いますよ,それは。読書が基本的な問題だとはいえ,例えば読書させることが本人の反省にどうしても結びつかないのだというようなケースの場合は,読書を禁止するというようなことはあるだろうと思います。
○滝鼻委員 それは受刑者の人間としての権利を侵害することにはならないわけ。
○菊田委員 ですから,国際的には基本的に読書とか運動とかそういうものは懲罰としては消極的,使うべきではないというのが基本です。日本でどこまでそれを取り入れるか,それは無理だと思いますけれども。
○滝鼻委員 ちょっとよく分からなくなってきてしまったけれども,段階的に併科するのはいいというわけですか。
○菊田委員 今は包括的なのですよ。軽屏禁入れたら自動的に運動も読書も禁止する。
○滝鼻委員 読書禁止というだけの懲罰はないの。
○富山調査官 いえ,文書図画閲読の禁止だけを科すこともあります。
○滝鼻委員 それはあるんでしょう。
○富山調査官 あります。
○滝鼻委員 それは,雑居房にいて,複数房にいて,おまえは本は与えないよということを言い渡すわけ。
○富山調査官 雑居房でというのは,他人が本を読んでいますので,事実上は意味がありませんので,通常一番多いのは軽屏禁を科すことができない病人の場合なんかですね。病気で病舎で寝ているような者について懲罰を科さなければいけないというときに,軽屏禁はできませんので。
○滝鼻委員 そうするとますます自分の頭が混乱するのだけれども,読書禁止という単独の秩序罰,懲罰というのは,事実上はないわけ。
○富山調査官 非常に少ないです。ですから,この統計でも例えばこの文書図画閲読禁止を主に科しているのは,平成14年で233件しかありません。
○滝鼻委員 単独で,それは。
○富山調査官 単独か,あるいはより軽い懲罰との併科ですが,ほかの懲罰と言っても適当なものがないでしょうね。多分単独かもしれません,233件。
○滝鼻委員 それが病人が多いというわけ。
○富山調査官 と思います。私の今までの経験ですと,軽屏禁を科せない者ですね。
○滝鼻委員 それは読書禁止レベルの罰だというよりは,本当は軽屏禁を科したいのだけれども,それができないから。
○富山調査官 むしろそういうケースが多いのではないかと思います。
○滝鼻委員 そうすると,菊田さんが言うように,軽屏禁の中には読書禁止とか面会禁止とか運動禁止という要素がもう含まれているということだね。
○富山調査官 実務上併科,文禁を併科しているというのは,そうしないと全然効果がないということからやっているわけです。
○滝鼻委員 そうすると,この新しい刑事施設法案の中を見るとよく分かるのだけれども,閉居罰の内容には本を与えたり面会,信書はだめだと書いてあるでしょう,これ。そうすると,しかし同時にこれは併科できるとも書いてあるわけだ,種類の方で。
○富山調査官 別の懲罰……ただしこれをよく見ていただきたいのですが。
○滝鼻委員 これ何と何が併科できるわけ。
○富山調査官 この136条の2項を見ていただきたいのですが,ただし書きがございまして,「同項第6号の懲罰は」と,これが閉居罰です。「同項第5号以外の懲罰とあわせて科することができない」となっておりまして。
○滝鼻委員 そうしたら併科できないじゃないの。
○富山調査官 ですから,すなわち閉居罰と併科できるのは,この5号の報奨金支給予定額の3分の1以内の削減。これのみ併科できる。あとは併科できない。
○滝鼻委員 そういうことだね,これはね。
○富山調査官 ということなのです。
○滝鼻委員 そうすると,併科なんていうことを入れること自体,余り意味のないことじゃないの。
○富山調査官 なぜ5号だけ残っているのかということは,これは例えばあと3日で釈放になる者が,もうどうせおれは釈放になるのだから何やったって何もできないだろうといって規律違反をやるようなケースが実際にございます。そういうものは,軽屏禁といっても結局後3日しかいなければ3日しか科せない。
○滝鼻委員 満期になってしまうからね。
○富山調査官 そういうときに,あと残った手段というのはそんなやんちゃなことをやるなら,あなたの作業賞与金の計算高を削りますよ。出所のときの支給額を削りますというような懲罰を科すケースがあるのです。これは,多分そのことを想定して,併科できる。5号と6号だけ併科できるというのは,恐らくそういうケースを念頭に置いているのかなと。あとは,非常に財産的な損害を意図的に国に与えているようなケースで,もちろん損害賠償してもいいのでしょうけれども,それに対して賞与金の削減という懲罰をもって臨む必要があるケースなどを想定しているのかと思います。
○成田委員 詰めて考えているんだねえ。
○滝鼻委員 屏居の中に,もう読書の禁止,面会の禁止,信書の禁止,運動の禁止が含まれるのだ。
○井嶋委員 運動は入っていませんよ。
○滝鼻委員 運動は入っていないのか。
○富山調査官 運動は,37条2項で制限ができるとなっています。これは一切させないのではなくて,一切させないと保健上問題がありますから。
○井嶋委員 もう運動の禁止は,懲罰から外していますから,種類として。
○滝鼻委員 だから,読書と信書,面会,これを閉居の中の懲罰の中に含まれているのだ。
○井嶋委員 中身に入れてしまったわけです。入れたから。
○滝鼻委員 いうことになると,この併科という問題は余り意味がなくなってくるね。今みたいに,満期近くになって乱暴狼藉を働くというやつ以外はね。
○宮澤(浩)会長 だから,立法者としてもう立法解釈してしまったんですよね。現行法の場合は何々が「できる」,だから判断者によってまあいいだろうというふうになることもある。だけど,今度のというか,我々の議論した施設法案では,もう閉居罰の中にはもうこれらは入ってしまうわけですよね。
○菊田委員 現実はもういいかげんなところがありまして,例えばこれ閉居罰の中身として作業を行わせ教化指導を受けさせるとあるでしょう。こんなのは,読書以前の問題として本来できないことが,何か作業も行わせ,教化指導を受けさせるとあるんですよね。
○富山調査官 それはむしろ例外ですよね。「限度において」と書いてありまして,この場合において「謹慎の趣旨に反しない限度において行わせる」ですから,むしろ例外的な措置として書いてあるのですね。
○菊田委員 例外にしてもできるということは,当然のごとく閉居罰の中に含まれているというような強硬な趣旨とはちょっと違うわけですよね。やはりそこはちょっと矛盾しているし,謹慎措置を更に越えなければならない面はあると思いますよ。
○富山調査官 それはむしろ全く逆なのです。受刑者にはということで,要は本来なら閉居罰をした以上当然こういうことはできない。だけれども,受刑者の教化のために必要であれば,この謹慎の趣旨に反しない限度で作業させたり教化指導させることはできるということですよね。限度において。
○菊田委員 それでは,読書は基本的にだめだというのは,作業よりももっとあれじゃないですか,読書そのものは緩やかなものではないですか。
○富山調査官 いや,逆なのではないですか。受刑者ですから作業をする義務があったり,あるいは教化科指導を受けさせる必要があるケースがあって,それは謹慎の趣旨に反しなければ懲罰中といえどもやってもいい。
○菊田委員 読書は。
○富山調査官 読書は全然話が違いますよね。ただ教化指導の一環としての読書がもしあり得るのであれば,教化指導ということでの読書みたいなものが出てくるのかもしれませんが,基本的には読書というのはあくまでも本人のある意味娯楽ですよね。楽しみのために読む。教化的な意味合いがもしある部分であれば,その教化指導の方で読めるのかもしれません。
○滝鼻委員 今若者の活字離れとか本離れとか言っているんだから,一人でぶち込んだときには本ぐらい読ました方がいいかもしれないね,だけどね。面会は,どうもおれは釈然としないけれどもね。これは未決は外したんだよね。面会は,未決は外したんだよね,これは。
○富山調査官 外していると言うのは。
○滝鼻委員 施設法案。未決の者に対しては,面会を制限してはいけない。懲罰房に入れても。
○富山調査官 弁護人とかとの,防御権の行使のための面会は制限はしてはいけないということになっておりますが。
○菊田委員 これは後でもちろん議論になると思いますけれども,2か月以内の軽屏禁とあるでしょう。これも,実際には2か月以上続くことが通常なんですよ。なぜかというと,いったん2か月で切って,雑居なら雑居に戻して,もう明くる日もまた継続する,こういうようなことが行われているわけです,実務上。
○滝鼻委員 たらい回しみたいなもの。
○菊田委員 たらい回しじゃないんですね。
○富山調査官 おっしゃっている意味がよく分からないのですが,2月が上限ですから,1件の懲罰はどんなに長くても2月を超えることはできないのです。ですから,その次に引き続き懲罰にもし何かするのであれば,懲罰期間中にまた規律違反行為をやったというケースはあり得ると思いますけれども。
○菊田委員 それが軽屏禁中に手を伸ばしたというようなささいなことだけで,いったん出した上でまた延期する,その行為に対して,というようなことで延々と続くことがあり得るのですよ。
○富山調査官 それは先生,余りにも極端な例じゃないですか。そんなの聞いたことないですよ。
○菊田委員 いやいや,それはあるのですよ。
○滝鼻委員 今度,今アンケート調査やっているのでしょう。そういうところに出てくれば,それは。受刑者に対してもアンケート調査やるわけでしょう。
○富山調査官 少なくとも公式な記録というのは残っていますから,そういう事案でいつとかどこでということを言っていただければ調べて,その案件がどんな案件だったということは,もちろんこの場で名前とかは出せませんけれども,説明できるのです。
○成田委員 そんな嫌がらせやった,嫌がらせをやるわけ。
○菊田委員 嫌がらせですね,事実上のね。後から出てくるこの昼夜独居もそうですよね。延々と何十年も入っているのがいるわけですか。これはどういう根拠でやっているかということですよね。本来やれないはずですよ,そういう厳正独居です。何十年も厳正独居に入っているのが事実いるわけですからね。軽屏禁がこの2か月で終わるはずがないのですよ。
○宮澤(浩)会長 もし2か月で終わらないとして,更に続ける場合には,やはり何か手続があって,軽屏禁中にこんな違反がありました,目撃者はだれです。所長が,ではこれはもう一回入れるかというようなこと。
○富山調査官 そうです。ですから同じことの,また懲罰審査会を開いてという形になりますから,ちゃんとそれはぶっ通しではなくて,どこかで隙間は入っているはずなのですね。
○井嶋委員 つまり別件なんでしょう。
○富山調査官 そうです,別件です。
○井嶋委員 別件でなければ,そんなことできっこないわけだから。
○富山調査官 ですから,前科40犯なんていう,非常に刑期の短い犯罪ですとそういう人もいますけれども,それと同じで切れているのだけれども。
○井嶋委員 また何かやっているという場合にね。
○菊田委員 いったん切りますよ,もちろん。
○井嶋委員 もちろん切らなければできないですから。しかし,そのときはまた手続。
○滝鼻委員 また何か規律違反犯したら,また処罰受けるというのはしようがないんじゃないの,それは。
○井嶋委員 手を伸ばしたからといって,延ばすのは極端な例だと思う。
○菊田委員 そこなんですよ。だから軽屏禁というのは,人とも話もできないし,本も読めないし,沈思黙考ですよ。その中で,なぜ規則違反が新たに出てくるかと。ささいなことで,規律違反を取り上げるわけですよ。
○成田委員 いじめられているわけ,態度が悪いといって。
○菊田委員 結果的にはいじめられていると私は思いますけれども。
○井嶋委員 そんなケースがあるのかどうか分かりませんが。
○菊田委員 正座を崩しただけで,もう規律違反だということで,また新たな軽屏禁で処罰すると。
○富山調査官 先生,それは基本的にあり得ない。個別のケースでもしそんなことがあれば,それはその措置が違法なのです。
○菊田委員 違法とはいえ,現実にそれが多いんですよ。だから,そういう問題をやはり取り上げないと,違法だといったって現実にあるんだから,ないわけじゃないんだから。多いのです。
○富山調査官 ですから,先生それは多分受刑者の言い分と違うのですよ,記録が。
○菊田委員 法的にぴしっとしなければいけない。法的に。
○宮澤(浩)会長 言い分が正しいのか,記録が正しいのか。
○富山調査官 ですから,懲罰を科すときにそんな,ただ足を開いたとか手を広げたなんていうことでもし本当に懲罰を科していたら,それは裁判になったら明らかに国が負けます。そんなのは違法ですよ。
○菊田委員 裁判になったって負けますよ。それはなぜかといったら,説明省きますけれども,それは本人以外にだれも証明する人いないのですから。全部刑務所側の言い分だけになるわけだから,裁判やる以前の問題なのですよ。
○滝鼻委員 それは,そういう受刑者から先生のところに投書か何か来るわけ。
○菊田委員 いや,それは私個人,受刑者だけではなくて,もう日常的に言われていることですよ。
○井嶋委員 だれなんですか,それは。
○菊田委員 もちろん受刑者を含めてですけれども,日常的に言われていることですから。
○宮澤(浩)会長 それが事実だとすれば,それは問題だけど。
○井嶋委員 そんな話聞いたこともないのだけれども。
○菊田委員 正座するというのは,今は安座ですか。あぐらですか,させて。要するに窓の方を見ていなければいけない,ドアの方を。
○富山調査官 懲罰中は,要は用がなければ部屋の中央に座っていなさいということです。
○菊田委員 そんなことが何で必要なのかということですよ。それ自体が,もうささいなことを問題にするようなことはやめたらどうですか。入れているんですから,3畳一間に。そこで自分で歩ったり,立ったり,座ったり,いいじゃないですか,何も。それが軽屏禁にならないというのはおかしいと思いますよ。そこに拘束しているのだから。それを,安座を崩したの何のと規則違反にするというのは。そんなことやっているから。
○富山調査官 ですから,そんな崩したって直ちに規則違反になんかしません。
○菊田委員 幾ら刑務官をふやしたって,足りないですよ,そんなことばっかりやっているから。監視するために。
○富山調査官 先生,確かに出所した受刑者の一部の人かもしれませんけれども,そういうことを言っている人がいますよ,知っていますけれども。
○菊田委員 あなたは幹部だったか何か知らないけど,そういう現状を知らないからそういうことを言ったって,だめです,それは。
○富山調査官 先生,現場で首席と言うのは,1日何度も巡回するのですよ,現場を。見ているのです,この目で。
○井嶋委員 今おっしゃった軽屏禁の場合安座するとか何とかというのは,何に書いてあるの。
○富山調査官 これは所内生活の心得で,原則として部屋の中で正座か安座で座っていなさい,用がなければ。
○井嶋委員 所内生活の心得に書いてある。この前いただいた遵守事項には書いてないね。
○富山調査官 遵守事項ではありません。
○井嶋委員 それよりもうちょっと下の行動規範みたいなもの。
○富山調査官 そうです。ですから,別に立って歩いていたからといって,それですぐ懲罰ということではありません。何か用があるのかと尋ねるだけです。
○井嶋委員 ただ,問題は菊田さんがおっしゃった具体的事例は僕は知らないから何とも言えないけれども,少なくともそこに書いてあることが極めて人間的でないとか何とかいうようなことがもしあるのだとすれば,それはこの際きちっとクリアしなければいけないという問題なのです。それはだから,ちょっと問題が違うのです。おっしゃるように,安座しなければならないというのがいいのかどうかということを今書いてあるのだとすれば,そのことを議論するのは一つの僕は議論だと思いますよ。
○成田委員 正座というのはできないと思うよ。
○富山調査官 正座しろというところは多分ないと思います。要は一定の場所に座って,用がなければ立ち歩かないで座っていなさいという。
○井嶋委員 それはどんな項目があるのですか。僕は今手元にないので分からないけれども。軽屏禁の場合に。
○滝鼻委員 正座か安座か。
○富山調査官 前回のは,点検時の話だったと思うのです,朝と夕方。
○井嶋委員 その中に極めて非人間的なものがあっておかしいよというのがあったら,それは直さないといけないと思うのですけれども,それはどうですかね。ありますか。それは今の問題は安座ですか,先生がおっしゃるのは。安座はしなければならないと書いてあるわけ。
○富山調査官 ええ,正座か安座で,もちろん足が悪い人は別ですけれども。原則的には正座か安座で,部屋の中央に座っていなさい。ただし,足の悪い人が別に足を投げ出したりすることは全然問題ありませんので。
○菊田委員 足の悪い人のことを今言っているのじゃないですよ。普通の人のこと言っている。
○井嶋委員 この動作要領という,これですか。
○富山調査官 それも一つです。それは特に軽屏禁を念頭に置いて書いていません。
○井嶋委員 軽屏禁の場合はどうしなさいというのを書いたのがあるのですね。
○富山調査官 所内生活の心得なんかに,多分こういうふうにしなさい。要は用がないときは座っていなさいという形が書いてあると思います。
○菊田委員 まあそういうことがいっぱいあるから,ちょっと常識的に言って異常なことは,この際改めていくという方針で。
〇井嶋委員 その取決めを一般的に見直してもらうということは必要だということは言えるのだと思いますね。現在生活に合わないことを規律化しているのではおかしいのだから。正座なんていうのは規律に合わないというのであれば,それはもし書いてあれば外した方がいいということになるのだろうと思うのですがね。
〇富山調査官 正座を強制しているわけではありませんので。
〇井嶋委員 ただ,その部屋の真ん中でいなければならないなんていうことが書いてあるのだとすれば,それは確かに合理性があるのかどうか。
〇宮澤(浩)会長 それは,壁に寄りかかったりしてはいかんということですよね。
〇富山調査官 懲罰中は,基本的にはそうですね。ただ,それでも言うこと聞かないともうどうしようもないのですけれどもね。それはもうどうにもならないのですけれども。
〇宮澤(浩)会長 今言うこと聞かないとどうしようもないということは,そういうような者を一人の職員でなくて,またやっているよ,そうだななんていってみんな申し送りして,それで軽屏禁中に違反があったから懲罰委員会にかけるというようなことにはなるか。
〇富山調査官 それはもうやっても意味がないのです。それを例えば部屋の中で大の字になって寝ていたと,軽屏禁罰中に。それを注意,指導しても聞かないと。また懲罰をかける。また寝ているだけですよね。もうそうなってしまったら,手のつけようがないのですね。ですからそうではなくて,部屋の中央で座ってなさいと言ってちゃんと反省して座っていれば,ああ,この人はもうやり直す気があるのだなという形で,逆に評価するのです。それで懲罰期間を短くしたりですね。むしろ逆なのです。そうやってふてくされられてしまうと,あとは同じこと繰り返しても何もならない。手間ばかりかかってしまうということになってしまうのです。
〇成田委員 ほかの利権を減らしていく。ボーナスを減らしていくと。
〇富山調査官 ですから,そうやってふてくされてしまった人間というのは,はっきり言ってもう手のつけようがないのです。懲罰だって怖くないと。
〇成田委員 面会だめだとかいうことをやるのでしょう。
〇富山調査官 そんなもの全然怖くないという者はいっぱいいるわけですよね。そうなったときにはもう手のつけようがないのですが,まあ今のところは大半の受刑者は懲罰中はちゃんと座っています。そういう姿を見れば,免罰という制度がありますので,例えば10日間の軽屏禁だったのをじゃ7日間でやめて,あとの3日間はもう早目に終わりにしましょうと,そういう運用はするわけなのです。
〇成田委員 インセンティブがないとね。まじめにやったらそれは加点してやるよと。
〇宮澤(浩)会長 ですから,その辺も今までの運用の惰性に流れてそれを続けるのではなくて,やはりその辺はこの際。
〇成田委員 公開するとか。
〇宮澤(浩)会長 今までの軽屏禁に関するこれまでの措置がやはり今の人の生き方には合わないのではないかという,そういう点での意見の一致が,一つ。
〇井嶋委員 そういう観点からの見直しというのは提言してもいいのでしょうね。
〇滝鼻委員 できないことを強制することは難しいからね。正座していろと言ったってできないのだから。正座させてないというから,あぐらかかせているのでしょう。
〇富山調査官 そうです。もちろん正座でもいいのですけれども,本人がするのであれば。
〇滝鼻委員 だけど悪いことして入っているのに,不自由な生活をしてもらわないとね。それはしゃばと同じように自由な生活,ただ隔離しているだけだというのだったらおかしいよな,それは。
〇菊田委員 軽屏禁というのは,狭い部屋の中に閉じ込めているのですからね。留置場の中に更に。
〇滝鼻委員 ルール違反を犯したからそうなっているわけでしょう。
〇菊田委員 だから,その中では,3畳一間の中では別に正座でなくてもいいではないかということですよね。
〇井嶋委員 それは反対ですけどね。
〇滝鼻委員 寝転がってもいいわけ。
〇菊田委員 私はいいと思いますよ。
〇滝鼻委員 今独房というのは,普通の刑に服している独居房あります。それは寝転がっててもいいわけ。
〇富山調査官 いや,昼間の時間帯は勝手に寝ていれば注意をします。具合が悪いとかそういうことがあれば別ですけれども。
〇滝鼻委員 あぐらならいいわけ。
〇富山調査官 もちろん構いません。
〇井嶋委員 壁にもたれていてもいいのですね。
〇富山調査官 壁にもたれるのは,規制しておりません。
〇宮澤(浩)会長 多くは,何か袋張りとかひも通しとかいうようなことをやってはいる。
〇富山調査官 もちろん作業時間中であれば,壁に向かって休んでいればそれは注意しますけれどもね,当然ですけれども。
○成田委員 袋張りを独居房でやっていますね。あの人たちは共同の仕事はできないということであそこに入れているのですか。
〇富山調査官 いろんなケースがあります。これからのプレゼンでも御説明する予定ですけれども,規則違反をやった取調中で作業をやっている場合もありますし,いわゆる昼夜間独居というのですか,保安上,処遇上の独居拘禁ということで,ほかの者と一緒にできないので独居にいるというケースもあります。あと分類調査中で独居というようなケースもあります。いろんなケースがあるのです。
〇滝鼻委員 行き過ぎた,余り今の時代の普通の生活パターンに合わないような正座して真ん中にいろとか,そういうのは少しもうちょっと緩やかというか,できないことはやらせられないのだから。
〇菊田委員 正座は今少ないのですよ,安座ですよ,ほとんど。
〇滝鼻委員 あぐら。だけど,もう寝ても立っても逆立ちしても同じ空間の中どんなにしていてもいいというのはどうかね。それは僕は菊田説には余り賛成できないけれどもね。
〇菊田委員 いや,ベッドだったら,中の単独室でベッドだったらね。
〇滝鼻委員 ベッドじゃないのでしょう。
〇菊田委員 だから,ベッドだったら寝ることもあるだろうし,今はベッドじゃありませんけれどもね。
〇滝鼻委員 畳みたいなあれだった。
〇菊田委員 日本ではね。
〇成田委員 例えば壁に寄りかかったっていいという。
〇菊田委員 私はいいと思います。
〇富山調査官 懲罰中は部屋の中央にいなさいということで。
〇菊田委員 だめなのですよ。
〇富山調査官 基本的には寄りかかれなくなってしまうのですけれどもね。
〇菊田委員 作業中でも,絶対に壁にぶつかって作業なんかしたらだめなのですよ。
〇富山調査官 作業のときは大丈夫ですよ。それで作業ができる位置であれば。
〇菊田委員 いいの。
〇富山調査官 はい。さぼっていてはだめですよ。そうではなくて,ちゃんと作業やる形で背中に壁があるのなら,それは構わないです。
〇菊田委員 ああ,そう。
〇富山調査官 はい。
〇井嶋委員 例えば今成田さんがおっしゃったように,あぐらは認めているのだそうですから,安座で中央でなければいけないという意味は,壁に持たれてはいけないということだけれども,安座でもいいけれども壁にもたれてはいけないというのは,軽屏禁の規律として現代的に合うか合わないか,例えばそういう議論になりますね。それは合わないという考えの方と,やはりそれはもたれているという感じではいけないという気持ちの人と,いろいろあるのだろうと思うのですけれども。まあ,僕はそこまでやる必要あるのかなという気はしないではありません。ただ,横になっていいというわけにはいかんだろう。
〇成田委員 ゴロンとなってはいかんけれども。
〇井嶋委員 ゴロンとなってはいかんけれども,そういう意味での見直しみたいなものは,あってしかるべきかなと。
〇滝鼻委員 健康な人はゴロッとしているのだったら,それはやはり軽屏禁にならないでしょう。懲罰にならないよね。ただ空間に入れておけばいいということだったら,そっちの方が僕は,空間の中で何やってもいいという方があれだと思うな。厳し過ぎると思うな。
〇菊田委員 実際は,今の刑務官がずっと歩いてくるでしょう。通り過ぎた後ゴロンとしてみて,見つかれば懲罰ですよ。だけどそれ,要領のいいやつはうまくやるわけですよ。だから刑務官も,行ったつもりでさっとまたもとに戻って,「何だ」とやった。こうやるわけですよ。だから,そこが刑務官と受刑者がお互いに不信と不信ですよ。それが競合しているわけですよ。
〇宮澤(浩)会長 そこがちょっと僕に分からないのは,だから懲罰になって,だから2か月以上長く延びるという理屈は,ちょっと論理的に合わないような気がするんだけどね。ゴロッとなったのを見つけたから直ちに懲罰で,また軽屏禁というのはちょっと難しいんじゃない。だって軽屏禁というのは一番重いわけだから。叱責はあるかもしれないけれども。
〇菊田委員 軽屏禁は軽いんですよ。
〇富山調査官 懲罰の中では,多分重屏禁を除けば一番重い懲罰ですよ。
〇菊田委員 厳正独居だってあるわけだから。厳正独居は懲罰ではないと言うけれども,事実上厳正独居というのは懲罰の一種で使われているわけだからね。軽屏禁というのは……。
〇宮澤(浩)会長 前回も続いたのだけど……。
〇菊田委員 今おっしゃったように,何万という人が軽屏禁を受けているのでしょう。何万でしょう。受刑者7万ぐらいしかいないうちに,何で何万の人が軽屏禁受けるかということですよ。軽屏禁そのものは,事実上そういう重いものとして受けとめていないわけですよ。ただ部屋に入れられる,共同作業に入れられないという,そういう管理に使われているわけだから。
〇宮澤(浩)会長 同じ人間が,例えば1年にもし軽屏禁3回受けたら三つに数えるのですね。
〇富山調査官 もちろんそうです。ですから年間,14年ですと4万件ぐらいですか,科されていますけれども,ただ少なくても服役期間中に一度も懲罰を受けない者が6割近くいて,1回だけのが2割いるというのは前回もお話ししたとおりで。
〇菊田委員 要領のいいやつがそういうふうにして軽屏禁でも要領よくうまく過ごしたり,それでないまじめなやつが非常に苦しんでいるというのが軽屏禁の実態として出てくるなら,やはりそこのところは限界がありますよ。刑務官だって,見つけるのは。もうお互いにいたちごっこですよ。そんな細かいことをやった,やらないなんてやっているから,刑務官だって神経使うし大変な仕事になるわけですよ。お互いにだまし合っているのだから。行ったつもりでぱっと帰って,向いて,どうだと現場を見つけるとか,ゲームみたいなものですよ。そんなやりとりはやめるべきですよ。お互い信頼関係というのがあって,おまえは悪いことをしたのだからここから出さないよということで,基本的にいいではないか。そこにいかなければいけない。非常にそこのところが,刑務官と受刑者が信頼関係なくして,お互いにだまし合っている。それが刑務所でもう慣れてしまった。要領のいいやつほどうまく刑務所をすり抜けていくわけでしょう。
〇富山調査官 なかなか先生,24時間監視されていますから,要領だけでは過ごせないですよ。
〇菊田委員 そんな24時間監視しようと思うのが行き過ぎだと思いますよ。もっと相手を信頼する方向で基本的にやる。それはいろんな,自傷行為とか物理的に困ったようなことが起こることについては防がなければならない義務があるけれども,そんな細かいことまで見つけた,見つけられたということ自体が,今の刑務所を非常に忙しくしていますよ,刑務官の仕事を。
〇滝鼻委員 ある一定の空間に入れて,20日間なら20日間入れて,中で何やってもいいというふうにした方が,やはり人間性というのは無視されたと思うだろうね。
〇菊田委員 その辺は議論のあるところでしょうけどね。
〇滝鼻委員 僕はそうだな。ある程度反省だからそこに,正座とまでは言わないまでもゴロッと1日寝ていていいも構わないよ,本も自由だ,面会もやりなさい。ただおもえはこの空間に軽屏禁として入れておくと言われた方が,やはり人間として無視されたというふうに思うでしょうね。
〇成田委員 人によるんじゃないかな。
〇滝鼻委員 要するに,こいつはもう,はしにも棒にも引っかからない。なら隔離するだけだという言渡しだから,それは。
〇菊田委員 今皆さんがおっしゃったように,常識的におかしいことはやめましょうという程度で,私はもう今日の議論はその点で賛成ですけどね。
〇滝鼻委員 それからさっきの透明性の確保の問題ね,これはやはりどういう法律に書くのか僕には分かりませんが,懲罰の手続というのはやはり法律事項だと思いますよ,僕は。これは省令とか施行規則とかそういうのではなくて,やはり刑罰の中の懲罰だから,かなり重大な不利益事項でしょう。それから公権力の行使そのものですよね。これは僕は,透明性を確保するためにも,やはり法律,法定すべしという僕の考え方ですね。
〇宮澤(浩)会長 問題はですから,それをどういう委員会なら委員会組織にするとして,その構成メンバーに例えば外部の人も入れるのか。入れるとすればどういう人かというようなことも。
〇滝鼻委員 年間に全国でこの軽屏禁だけで3万件もあるわけでしょう。そんなことに外部の人が一々かかわって,刑務所周辺の教育委員だか学校の先生か弁護士か分からないけど,ワークしますかね。
〇宮澤(浩)会長 実はそういう議論が出てこないかなと思って,少しそそのかしたわけなのですが。
〇井嶋委員 弁護士会は,弁護士入れろという考え方,提言をしている。
〇滝鼻委員 弁護士は言うことは言うけれども,本当に来てくれるのかな。
〇井嶋委員 それは来れません。
〇菊田委員 それは,どうしても受刑者が部外に訴えたいというケースについて弁護士が立ち会おうということであって,全部について出てくるということではないのです。
〇井嶋委員 それは再審みたいな話の場面ですよ。再審査みたいな場面の話であって。
〇滝鼻委員 懲罰の再審ね。
〇井嶋委員 ですから,まず懲罰を科す手続に一々弁護士が入る,あるいは地域の第三者が入るというのは,とても僕はできないのではないか。現実的ではないです。
〇滝鼻委員 構成員は,今はどうやって……。
〇井嶋委員 所内の職員。
〇滝鼻委員 これが数とか内容がやみからやみに葬られるようではまずいと思うのだね。それはどこか,夜中に公表せよとは言わないけれども,プライバシーもあるだろうからね,何かちゃんときちんとしたところに,例えば矯正局とかそういう所内だけではなくて,施設の中だけではなくて,矯正管区とかそういうところの上部組織にきちんと報告して,法律どおり行われているかどうかというのは一定期間集めて監査するとか,そういうことは必要なのではないですかね。
〇成田委員 報告小委員会かなんか。
〇宮澤(浩)会長 アメリカは保安局なのですか。
〇菊田委員 アメリカも,基本的には所内で所長の責任で処理するということです。
〇宮澤(浩)会長 それで,その記録は。
〇菊田委員 もちろん記録,全部あるわけです。そして受刑者がそれに対して不満なときは,訴訟を起こす。アメリカは訴訟が多いですね。直接訴訟を起こす。
〇滝鼻委員 だけど訴訟なんか起こしたって,訴訟が確定するまではもう出ちゃっているんじゃない,その人たちは大体。日本の裁判所は遅いから。
〇菊田委員 簡易裁判ですけどもね。即決する。
〇宮澤(浩)会長 それはだから,日本は行政訴訟というのはそもそも,行政裁判所というのもないしね。
〇滝鼻委員 それは東京地裁に行政部があるだけですから。
〇宮澤(浩)会長 そうですね。だからその辺のところは国によって大分違うので,ほかの国の制度をそのまま日本には持ってこれないとは思うけどね。でも,やはり被告,その疑われた者あるいは違反だと言われた者の権利を守るために,例えば今では施設の分類課だとか,そういう人がいろいろ弁護人の役割をして懲罰に関する手続ではやっているらしいのですけどね。更に加えて,例えば矯正管区からそういう何か係の人が行くか。しかしそれも,90近い施設に管区は八つしかないわけだし,管区の方々もそう人数がいるわけではないから,そういうのを提案しても余り意味がないかなと思ってみたりね。どうやって透明性と公正さ,権利が無視されるなんていうことなしにできるかなというのをいかに考えたらいいか。
〇井嶋委員 そこでちょっと現在の手続なのだけれども,現在は懲罰の場合は管区へはどういう報告をしているのですか。件数だけですか。中身も。
〇富山調査官 件数も,矯正統計年報をつくる関係がありまして,司法法制部にはこの統計年報上の統計を出すための報告していますけれども,特に上級機関に対しての報告というのはありません。
〇井嶋委員 こういう懲罰をしましたということを一件書類をつけて送るというようなシステムはやってないね。
〇富山調査官 基本的にはありません。
〇井嶋委員 それを今おっしゃったように例えばやるとかね。それは少なくとも,やると透明性は高まりますよね。
〇成田委員 第三者にたえ得るよね,そういう報告は。
〇井嶋委員 たえ得るような処分をしたのだということでなければいけない。やみからやみではいけませんよということを。
〇成田委員 そういうチェックシステムをね。それは僕も必要だと思うな。
〇井嶋委員 それは必要なのかな。
〇菊田委員 第2分科会では第3委員会に向かって議論されていますから。
〇宮澤(浩)会長 そっちの方がやることなのでしょう。
〇井嶋委員 懲戒手続について,第三者を入れてやれというのは,私は反対です。それでは懲戒処分というものの即効性がありませんので。秩序罰というのは,秩序違反に対して罰を加えて,秩序を回復させることに意味があるわけですから,これは早くなければ意味がないのであって,1か月も2か月も後にやったって意味がないわけですから。これはもうそういう意味で,手続の透明性を後で事後的な透明性の確保は必要かもしれないけれども,当該審査に第三者を入れるとかいうような議論はもう僕はだめだと思います。
〇宮澤(浩)会長 刑務官の個人的感情でもってねらい撃ちするとか,そういうような濫用がなされるというような疑いを持たれないようなやり方であってほしいのですが,どうやって書くか難しいですね。
〇菊田委員 そこで一つの案は,目安箱というのを,アメリカの刑務所は置いているのですよ,廊下に。本人がこういうことをやられたという,もちろん理不尽な言い方もあるのでしょうけれども,とにかく文句を言うのが箱に入れまして,刑務官側は一切見られないのですよ。外部の人が来てそれをあけて事情を聞くというようなことが行われているのですよね。
〇滝鼻委員 外部って,だれですか。
〇菊田委員 その第三者委員会のようなもので。民間人。
〇滝鼻委員 刑務所と関係ない人。
〇菊田委員 関係のない人。部外者。
〇滝鼻委員 その人も大変だろうね。
〇菊田委員 そうですね,大変ですよ。
〇滝鼻委員 大変だね。なり手あるかな,それ。
〇菊田委員 だから,今度の第三者委員会の設置は,そこまでも考えているように思いますけどね。そうしないと,第一線の受刑者の不満がどうしても外に出ないのですよ。内部だけの処理ではやはり不満がある。それを第一線で早いうちに処理するというのには目安箱をつくるということも,一つの手段としてですね。
〇成田委員 その人たちはどこにあれするのですか。
〇菊田委員 それはイギリスなんかの訪問者委員会とかそういうのがあって,受刑者と刑務官に事情を聞いたり,そういう措置をとる。
〇宮澤(浩)会長 菊田さん,その場合にその委員会のメンバーにどのぐらいの手当が出るのだろうか。僕は頼まれて今日実は第2分科会に30分その話をしに行って,ドイツのを調べたのです。そうしたら,1日日本円にして1,500円なのですよ,手当が。それでいろんな労働組合の代表だ,それから市役所,村議会,そういう人たちが5人ないし7人。3人出席すればいいという。一月に1回やれと。そういうところで受刑者の不満があれば,そこへ訪ねていくとかどうのこうのというけど,現実問題としてそれになったら大変だな。3年任期なのです。だからそういう意味で,日本でそれをやって施設ごとにそれをやるとしたら,なり手があるかなということを,紹介のために書きながら非常に感じました。かといって管区ごとに一つでは,とても機能しませんよね。
〇井嶋委員 そういう委員会は,何か非常にワークしなくなったということが,この前鴨下さんか何かのあれのときに出ましたね。
〇宮澤(浩)会長 本当は立法事項なのだけれども,行政が州の司法省の役人の人たちがちょろちょろっと規則つくってしまったのですね。それがおかしいというようなことで議論したりしているようですけれども。
〇井嶋委員 現実性がないのですね。
〇宮澤(浩)会長 それはそうですよ。
〇井嶋委員 そうだと思いますね。
〇宮澤(浩)会長 3年任期ですから,3年苦労すればいいと,まるで外部の服役みたいなもの。
〇滝鼻委員 やはり今裁判員制度の問題が議論になっているでしょう。国民の司法参加ですよね。なかなか日本が難しいなと思うのは,正義の実現というのは,日本の場合,やはり自分たち,市民というか国民というか,自分たちがやることが正義の実現に通じるのだという考え方よりは,どっちかというとお上頼みというのが日本国民としては強いわけでしょう。ところが刑務所でも第三者委員会があるように,アメリカ社会というのはやはり正義の実現は市民が実現するのだ。お上はその道具とは言わないけれども,その組織そのもの,装置としてあるのであって,という考え方の違いが相当違うところがあると思うのですよ。したがって,日本で第三者委員会,それはここのテーマではないからいいけれども,懲罰にしても,懲罰の手続にしても,刑務所外の人を入れるということになると,これは形はいいよ。形はよくて格好いいかもしれないけれども,なり手はないし,果たしてそういう人を入れた方が正義の実現に本当に近づくかどうかというのも分からない。我が社会はやったことないからね。余り外部,外部,外部がすべて正しくて内部がすべて悪だ,間違っているのだという考え方に立ってこういう議論をすると,僕は方向性を間違ってしまうのではないかと思うね。
〇井嶋委員 僕も同感です。
〇宮澤(浩)会長 文献でしかまだ僕は知りませんが,そういう審議会の委員になると,世間では非常に高く評価されると書いてあるわけですよね。そういう地盤があれば,それは喜んでなるでしょう。だけど日本は。
〇滝鼻委員 我が日本には残念ながらないのだね。そういう,例えば外部委員とか,それから裁判員だってそうでしょう,これからなる。それから今あるのは民生委員とか何とかって。そんな高く評価されているか。高くは評価されているけれども,今さっき言ったように手当も何もなくてただ働きというのが非常に多いわけでしょう。そういう社会ではないのですね,日本は,残念ながら。そういう社会の方が多分いいと思うけれども,いきなりそういうシステム変えたって,なかなかそこで正義の実現にたどり着くかどうかというのは非常に難しいと思う。
〇菊田委員 やはり,そういう国々の積重ねがやはりないと成功しないということだと思いますね。
〇滝鼻委員 だから後ろ向きにすることはないのだけれども,いきなりやってもなかなか難しい。
〇菊田委員 いきなりなのだけれども,いきなり数段飛び上がってやるのではなくて,やはり開かれた刑務所に向かって今ある密行主義を,やはりその中の中心は規則違反をした人間をどう客観的に処理していくかということ,その手だてをやはり日本的な在り方の中を踏まえた上で一歩先を行かないと。
〇滝鼻委員 だから,少なくともちゃんと法律に明記してくれと。法律に細かいことまで書いてくれと。
〇井嶋委員 手続を透明化する。
〇滝鼻委員 手続も法律で書いてくれということですよ。法律というのは,我々の代表が一応国会で議論することになっているわけだから。
〇井嶋委員 事後的なチェックシステムを取り入れるということですね。
〇滝鼻委員 そう,事後的なチェックもできるように。
〇井嶋委員 それで僕はいいと思います。
〇宮澤(浩)会長 ただ,ドラフティングする側からすれば,そういう大体のあれはいい。
〇滝鼻委員 ドラフトをつくってくれるとしても,ドラフトをまたここで議論するわけですから,それはそう僕は心配していませんけれども。
〇宮澤(浩)会長 できるだけ不満な受刑者について,その不満を吸収するような所内におけるきちっとした権利保障のシステムをつくってほしいということですね。何も部外の人が加わる必要はないけれども。
〇滝鼻委員 懲罰についてね。刑務所全体の問題は別のところでやっているから,それは第三者機関という提言はあるかもしれないから。少なくともこのルール違反の刑務所内懲罰については,近隣の人に来てもらってそこでやってくれというのは実現ができないと思うのだな。
〇宮澤(浩)会長 なぜかというと,外部の人にすべて事情を説明すれば,行政的に処理なんか早くできませんよ。そのことだけでも2か月かかる。
〇滝鼻委員 時間がかかる。
〇宮澤(浩)会長 時間がかかってしまう。だから,やはり受刑者の言い分をきちんと。それからもう一つは,証人と言うけど,受刑者仲間が証人というのは,これは難しいでしょうね。
〇滝鼻委員 本当だったら看守同士ですね。刑務官同士が。だけど刑務官同士がある刑務官と相反する目撃をしたとしても,なかなか正直に証言するというのはあるのかな。医者が医者同士で隠してしまうのと同じようにね。
〇宮澤(浩)会長 しかも判定する人はいわゆる行政側,組織で2~3年でぐるぐる回ってくる人でしょう。
〇滝鼻委員 だから上の人が,幹部の人は転勤族だけれども,幹部じゃない人ももうちょっと流動性持たさないと,同じ刑務所に長年いるとか同じ管区だけしか動かないとか,もうちょっと,それはここでやる議論ではないのだろうけれども,動かした方がいいと思いますよ。
〇宮澤(浩)会長 ああいう地方の刑務官というのは動かないの。
〇滝鼻委員 それも聞いています。もう動きたくないという人がいることもよく知っているのだけれども,だからといって地つきの人ばかりでやると,やはり問題起こすと思うな。
〇菊田委員 今の話で,広島刑務所で問題になったのは,ある受刑者が反則をやった。その反則した受刑者が弁護士会に訴えを出して,弁護士会はそれに面会はしたのだけれども,そのやられたというAという受刑者を目撃したBが受刑者がいるわけです。そのBの受刑者に今度は弁護士会が面会しないと客観的情勢が分からないから面会を申し込んだところ,所長が拒否した。こういう事件があるのです。だから少なくとも弁護士は,部内の中から訴えがあったときに,弁護士会の人権委員会にですね,そういう意味での面会をさせろということを今主張しているわけですけどね。そういう細かいことになると,やはり開かれた刑務所という点では,少なくとも専門家の弁護士には刑務所側は面会させる義務があるように改正すべきではないか。
〇滝鼻委員 訴えた張本人には面会できたのですね。だけど,それを目撃してきた受刑者に対しては面会できなかった。
〇菊田委員 というのは,その受刑者A本人は主張しても,刑務官はそういう事実はなかったと強硬に主張しているわけですね。だからAはBという証人がいるということになって事件が,その証人をとらないと弁護士会は判断できないというところから申し込んだら,所長の権限でだめだという問題が具体的に起こっているわけですね。
〇滝鼻委員 所長権限って,そんなに強いわけ。
〇菊田委員 強いですよ。
〇富山調査官 恐らく,今のケースは受刑者ですよね。ですから,むしろ法律の原則は親族にしか会わせないというのがありまして,所長の裁量でその原則を解除できる。ですから例えば弁護士会に今言ったように訴えをしたということで,その訴えた本人に会いたいと。それは多分解除して会わせたのだと思いますね。ただそれ以外の受刑者にも会いたいということになると,どこまで広がってしまうのだということで,恐らく当時の所長がそれはできませんと多分とめたのだろうと思うのです。
〇宮澤(浩)会長 弁護士は自由には会えないの。
〇富山調査官 今の監獄法の原則では,受刑者はあくまでも親族が原則ですので。
〇宮澤(浩)会長 そこがちょっと,もしかするといけないかもしれませんね。
〇成田委員 何かそういう緊張をつくる,あるいは解除するというような,何かそういうものがあればいいのだな。刑務所側と……。
〇宮澤(浩)会長 例えば弁護士と受刑者との文通は一切チェックしちゃいかんというのが,ドイツでは普通なのですよね。それは権利だから。受刑者からヨーロッパ人権裁判所へ手紙を出すこともコントロールしないでフリー。
〇滝鼻委員 確定した受刑者については,もう弁護士とその受刑者との契約というのは切れているわけでしょう。
〇宮澤(浩)会長 それは切れている。
〇滝鼻委員 もう切れているのですよね。そうすると,そこに弁護士がのこのこ乗り込んでいくというのは,例えば弁護士会の人権擁護委員会に訴えられたとか,任務を持った人じゃなければなかなか行けないよね。だれでも行けるというのだったら混乱してしまうものね。
〇井嶋委員 ですから,そういう公の権限のある者との面会をどうするかということは,一つのテーマになります。単に面会は親族だけだよなんていうルールだけで対処できないという問題なのですね。国会がもし調査に来るといったら,国会だめですよと言えないでしょう。同じことで,権限のある者が来るという場合にどうするのかという問題として検討しないといけないと思います。ただ今のようなB受刑者については,今度はB受刑者の処遇上の問題,あるいは刑に服しているわけですから,その改善のために有害か無害かというようなことも刑務所として考えなければいけないだろうし,いろんなことを考えないといけないのですよね。
〇滝鼻委員 B受刑者が会うの嫌だと言ったらどうなるの。
〇菊田委員 本人はこのケースについては会うらしいのですけどね。
〇井嶋委員 ですからいろいろな問題はあると思いますけれども,その辺はこれから裁判になるのだろうと思うのですけどね。
〇滝鼻委員 しかし暴力団同士とかそういうふうになると,しゃばに出てからまた報復受けるとか,そういうこともあるのだろうね。
〇井嶋委員 それも嫌だしね。
〇宮澤(浩)会長 それだから恐らくかかわりたくないということを言うのなのでしょうね。
〇滝鼻委員 所長から見て,これは弁護士に会わせても問題ないのだけれども,弁護士に会ったということが分かっただけでこの男が所内で起きるし,出たときに何か報復を受けないかという配慮もあるかもしれないよ。
〇菊田委員 それは本人が希望すれば。
〇井嶋委員 いろんなことがあって,それは配慮はしているのだと思います。でもやはり,親族しか面会できませんというルールだけで公的な機関の調査を拒否するということはできないだろう。
〇滝鼻委員 親族しか会えないというのは,それも監獄法ですか。
〇富山調査官 はい,監獄法で受刑者は親族しか,これは45条の2項。
〇井嶋委員 あれはどうだったかな,今度の施設法は。
〇富山調査官 施設法案は若干広げておりまして,親族以外に例えば正に法律関係の処理のために来る人とか。
〇井嶋委員 だから一定のルールで,権限があるような人とか。
〇富山調査官 45条の2項で,親族以外の者とは面会を許さずということになっております。
〇宮澤(浩)会長 それは施設法……。
〇富山調査官 今の監獄法の話です。施設法はまた別でございます。
〇井嶋委員 施設法はどうでしたっけ。
〇富山調査官 刑事施設法では92条という条文がございまして,外部交通の話なので他の分科会の話なのですけれども,まず親族とは当然面会できるということに加えて,ちょっと長いのですけれども,「婚姻関係の調整,訴訟の遂行,家計の維持その他身分上,法律上又は業務上の重大な利害にかかる用務の処理のため面談をすることが必要な者」とか,あと「面会により受刑者の改善更生に資すると認められる者,その他の刑事施設の長が相当と認める者」これとは面会できると。類型をはっきり書いてある点が違います。
〇井嶋委員 少しは広がったけれども。
〇宮澤(浩)会長 でも入らないね。今のケースは入らないね,施設法でも。
〇菊田委員 第一,Bですからね。
〇滝鼻委員 明治の法律を相手に議論していると,相当落差がありますね,やはり。
〇宮澤(浩)会長 ありますよ,それは。
〇菊田委員 面会はここの分野ではないのですかね。
〇富山調査官 外部交通は第2分科会です。
〇菊田委員 第2分科会ですよね。だけど面会そのものをどうするかということは,やはり受刑者の懲罰をどうするかというのと密接な関係がありますから,そこのところは切り離して考えられないのですよ。
〇宮澤(浩)会長 当たらずと言えども遠からずというやつかな。接点かもしれませんね。外国の制度のことを言うと,本当にそのままだと怖いのは,ドイツの場合は法律事情が物すごく発達していますから,手弁当でやる必要がないのですよね,そういうことがあれば。日本はほとんど手弁当でやっているでしょう,広島の事件なんかだって。そういうので権利を守るためにというので弁護士会が1日つぶしていったって,一銭にもならないのではないですか。
〇井嶋委員 それはならないですよ。正にNGOですよ。
〇宮澤(浩)会長 そういう意味で,こういう制度があるから日本もというようなことは,口では言えるけれども,実際には難しいかもしれませんね。
〇井嶋委員 会長,昼夜独居拘禁と保護房収容の第2のテーマについてちょっと説明をさせていただいて。
〇宮澤(浩)会長 そうですね,ごめんなさい。
〇井嶋委員 資料がせっかくできていますので。
〇宮澤(浩)会長 はい。

(2)昼夜間独居拘禁,保護房収容について

〇富山調査官 それでは,お手元の資料に基づきまして,昼夜独居拘禁と保護房の収容について説明させていただきます。
 まず1枚目の色がついた資料ですが,これは昼夜独居拘禁の種類等をまとめたものでございます。まず一番上にありますとおり,監獄法第15条によりまして,「在監者ハ心身ノ状況ニ因リ不適当ト認ムルモノヲ除ク外之ヲ独居拘禁ニ付スルコトヲ得ル」という条文がございます。この「不適当ト認ムルモノ」ということについては,監獄法施行規則で若干かみくだいておりまして,「精神又は身体に害があると認める者」がこれに当たるというような条文がございます。こういったことが書かれていますように,昼夜独居拘禁というのは特に長期にわたりますと心身に悪影響を及ぼすおそれがあるということが言えるかと思います。これについては,実務上では医師による定期的な診察ですとか,職員や篤志面接員等によるカウンセリングを行ったりしております。また特に少年につきましては,規則の27条2項で拘禁期間を短くしております。
 独居拘禁の中身としましては,右側の緑色の部分に書いてありますが,「他の収容者と交通を遮断し,召還,運動,入浴,接見,教誨,診療又はやむを得ない場合を除くほか,常に一房の内に独居させる」ということになっておりまして,独居拘禁というのは原則としては独居房の中に入れておく。ただし,やむを得ず外に出る場合がある。こういうときには出しますということが,軽屏禁とは取扱いが違うというところかと思います。
 独居拘禁の期間につきましては,原則6か月以内。ただし,特に継続の必要がある場合には以後3か月ごとに更新ができるとなっております。
 では,具体的にどういうものが独居拘禁の対象になるのかということで,まず監獄法施行規則の25条1項に,特に定めがある場合を除いては,次の順序で独居拘禁にしなさいということで,余罪や刑期限内の犯罪によって審問中の者,いわゆる余罪受刑者でございます。別の犯罪を犯した疑いで現在裁判にかかっているとか,そういった者です。それから,刑期二月未満の者,刑期の非常に短い者。3番目が,分類調査のため必要と認められる者。これが25条1項で,この順番で居房があいていたら独居拘禁にしなさいと書いてあります。
 25条で「特に定めがある場合を除く」とありまして,そのほかの定めとして下の方に6種類まとめてございます。まず新たに入監した者。新たに入ってきた者は,とりあえず独居拘禁にしなさいというのがございます。その下が,戒護のため隔離の必要がある者(規則第47条)。これに基づく独居拘禁が,いわゆる「保安上の独居」あるいは「処遇上の独居」と呼ばれているものでございます。その下が,懲罰事犯について取調中の者(規則158条)。これは懲罰の手続の際にも御説明しましたが,規律違反行為をやった疑いがある者について,原則的には取調べに付す。その場合に独居拘禁ができるとなっております。
 右の段に行きまして,新たに入監した者及び在監中の者で分類調査を受ける者。これは行刑累進処遇令の方でこういった規定がございます。それから,父母の訃報に接し,就業を免ぜられた者。いわゆる接訃免業と呼んでおりますが,就業しない,冥福を祈りたいので作業をしないで部屋で祈っていたいという希望を有する者については,規則に基づいて独居拘禁ができます。最後に,規則167条で,刑期が終了することによって釈放されるべき受刑者。釈放直前も独居拘禁にするというようなことが,法令上は認められております。
 この中で恐らくいろいろと問題があると言われているのは,この規則47条に基づきます戒護のため隔離の必要がある者の独居拘禁であろうかと思います。実際に先ほども菊田先生からのお話もありましたが,長期にわたって昼夜独居拘禁を継続せざるを得ない,そういうケースがございます。処遇困難者のプレゼンの際に,平成12年のころの昼夜独居拘禁者が約2,000名ぐらいいるというようなことを申し上げましたが,その中でも5年以上昼夜独居拘禁にされている者というのが65名そのときの調査でいることが分かっております。やはりその程度の数の者が,長期間にわたって昼夜独居拘禁になっている。
 今回このプレゼンに先立ちまして,医療刑務所に恐らくそういった受刑者がいることは容易に予測がつきますので,医療刑務所以外の長期受刑者を収容している施設に電話をしてみまして,今長期間にわたって独居拘禁になっている人はどんな理由でしているのですかというのを電話で聞いてみました。それを口頭で御紹介しますが,一つ目の事例は,これは精神科医の診察で心因反応がうかがわれるので集団処遇の適用が困難という所見が示されて,その後の診察でも妄想,幻聴を伴う覚せい剤中毒精神病があって,突発的な粗暴行為に十分注意を要する幻覚妄想状態と診断されているというのが一人目です。
 次の人間は,対監獄闘争関係者と自ら名乗りまして,受刑生活の方針が決まっていないなどと述べて工場に出ることをずっと拒否し続けているという者でございます。
 次の者は,職員が職務上の指示をしても一切会話をせず無視し続ける状態が継続している。ただし,たわいのない世間話を職員とすることもあるそうです。精神科医の診察の際も全く無言のままで,集団生活をさせることができないというふうに認定されている者ということです。
 それから次の者は,精神科医から被害関係妄想,自我意識障害と診断され,幻覚,幻聴の症状が継続しておって,集団生活をさせることができないと認められる上に,組関係の同僚受刑者から危害を加えられたり殺されるとの被害妄想から,本人自身も工場出役を頑なに拒否している,そういう事例でございます。
 次は無期受刑者なのですが,自分は釈放になるという妄想に固執しておりまして,支離滅裂,誇大妄想的な言動を繰り返して,精神科医からも妄想的な言動があると診断されていて,集団生活をさせることができないと認められるという者。
 6人目のケースですが,精神科医から心因反応,異常性格,妄想念虜と診断されていて,月に数回は夜中に扉をたたいて支離滅裂なことを言い放つなど,常態的に不安定な精神状態にあって,自己中心的,協調性に欠け,態度が横柄で攻撃的なため,集団生活をさせることができない。
 これは,長期の受刑者を入れている幾つかの施設に,それぞれあなたのところで今長く入っている者でどんな理由なのですかというのを電話で聞き取った結果です。なかなか問題はある受刑者なのかなと,聞いた限りでは思っております。
 次の方に入りますが,2枚目の資料をめくっていただきたいのですが,これは保護房の収容の要件などを取りまとめたものです。保護房の収容も,法令上から見ますと先ほどの昼夜間独居拘禁と同じでして,監獄法15条と施行規則47条に基づく措置というふうに理解しております。保護房とは,ではどんな居房なのかということなのですが,これは被収容者の鎮静,保護に充てるために設けられた相応の設備,構造を有する独居房と通達で定義されておりまして,具体的な構造は皆さんにも見ていただいたと思いますが,次のページには参考までに写真で府中刑務所の保護房を写したものを載せてございます。実際に御視察いただいたと思いますので,こういった何もないのっぺらぼうの部屋だということが分かるかと思います。
 受刑者を保護房に収容します要件は,2ページに戻っていただきますが,2の収容の要件というところがありまして,次のいずれかに該当する被収容者で,かつ普通房に収容することが不適当と認められる場合というわけで,要はそのまま普通の房にはとても入れておくことができない緊急の状況にある場合に保護房を使う。その受刑者が何か規則違反をしたとかしなかったかとかいうことではなくて,あくまでもこのまま放置できないという緊急の必要性がある場合に保護房に入れるということでやっております。収容するかしないかは,そういった緊急の場面で行いますので,通常は非常事態通報を受けて現場に行きました首席矯正処遇官あるいは統括矯正処遇官が指揮をしまして,保護房に収容して,収容後速やかに所長に報告をするというケースが大半であります。収容後は医者に連絡をしまして,以後保護房に収容されている間は少なくとも1日に1回程度様子を見てもらっています。また,できる限り早期に収容が解除できるように,幹部職員が巡回する際に声をかけてみたりもしますけれども,特に精神変調ぎみの者についてはなかなか早期に解除が難しい場合があります。特に中には保護房に入りたいという者がおりまして,その保護房に入るために大声を出したり扉をたたいたり。入れてあげるとおとなしくなるのです。おとなしくなったのでじゃ出そうかとすると,出すとまた大声を出したり暴れたりするというようなケースもあります。現在収容期間としては,原則は収容してから3日目の午後5時までには出すということになっておりまして,しかしそれでも出せない場合には,以後48時間ごとに期間を更新するということになっております。なお,平成11年11月にこの保護房収容の通達を改正するまでは,最初7日間以内収容できる,その後3日ごとに更新ということになっておりましたが,11年11月に収容期間を改正しております。
 保護房収容中の動静につきましては,15分に1回以上の割合で書面に記録をするという運用をしておりますが,先般の名古屋刑務所での事件を踏まえまして,後日の検証のためには保護房収容中の状況はすべてビデオ録画するという方向で,できることなら来年4月1日までには設備,機器の改修を行って実施に移すことができますように,今財務省との折衝など必要な手続を進めているところでございます。
 次の次の4ページ目を見ていただきたいのですが,横長の表でございますが,これは1年間における保護房収容件数を過去10年分まとめたものです。下側の青い折れ線が保護房の収容件数,上の赤い点線での折れ線グラフが,各年の1日平均収容人員でございます。これを見ますと,保護房収容の件数,収容人員がふえるに従ってふえてきているということが大ざっぱには言えるかと思うのですが,特に平成11年から12年にガクンと件数がふえているのですが,これは先ほどちょっと申し上げましたように,平成11年の11月に通達を改正しまして,それまで収容期間が7日原則3日で更新というのを,原則3日というようなことに変えてしまいましたので,その関係がありまして,恐らく出してみたもののまた入ってしまったというようなことで件数がふえたのではないかというふうに考えられます。
 次の5ページを見ていただきたいのですが,これは昨年1年間における施設別の保護房の収容件数をまとめたものです。非常に字が小さくて読みづらいかと思いますが,各施設の多い順に並べると,この左側の小さな字で書いてあるような順番になります。ただ順番に並べても余り意味はないのですが,一番上位の5施設と下位の5施設をちょっと大き目に拡大して表示してありますが,上位の5施設は大阪,府中,名古屋という基幹施設のB級施設は,やはり収容人員も多いこともあり,また処遇困難な者も多いということもあるのでしょうか,数が多くなっております。それ以外に東京と大阪の拘置所も,非常に件数が多くなっております。これは収容人員が多いということも一つの影響だとは思うのですが,それだけではなくて過剰収容等もあって,いろいろストレスが高まっているということもあるかもしれません。
 逆に非常に件数が少ないのは,ほとんどがA級の施設で,特に交通事犯を入れている市原などはゼロ,全くないということで,ちょっと意外なのが旭川,ここはLB級を入れているB系列の施設なのですが,3件しかないということでございます。なぜ少ないのか,ちょっとよく事情は分かりません。
 それから次のページに,6ページ目でございますが,これは過去3年分,ただし平成10年については10月分までしか統計がないのですが,どういう理由で保護房に入れたのか。先ほど保護房収容の要件がございましたが,どの理由で入れたのかということで取りまとめたものでございます。一番多いのは,やはり大声とか騒音を出している。うるさくて周囲の者に迷惑になっているというケースが約半数でございます。次に多いのが暴行のおそれ。大体3分の1程度が,暴行のおそれで保護房に入っています。その次に多いのが自殺のおそれでして,おおむね12~13%というところでございます。そして糞尿を投げるとか,あるいは部屋を壊すとか,異常な行動を反復するおそれがある者は大体4~5%。逃走のおそれというのは極めてわずかでして,0.3とか0.4,ほとんどゼロに近い数値。収容の要件別の件数ですと,このような割合になります。以上でございます。
〇宮澤(浩)会長 どうもありがとうございました。
 それでは,今の御説明を踏まえて,この(2)の昼夜独居等々に関する御質問を,どなたからでも,それからどの項目でも構いませんので,御発言いただければと思います。
〇滝鼻委員 さっき,65人のうちの幾つかの刑務所に対して電話で問い合わせてその原因,理由を聞いたところ,いろんなことをおっしゃっていましたね。この65人という,5年以上の人ね,長期滞在者,その人とそれから今最後に説明された収容要件別の割合というのがありますね。これをダブらせると,この65人の人というのは,5年以上入っているという人ですね。
〇富山調査官 65人というのはあくまでこれは昼夜独居拘禁ですので,一番後ろの要件別の保護房ですので,全くこれは別のものになります。保護房はさすがに,5年とかそんな長期間入れるということはもちろんありませんで,もっと短期間で解除はしますので。そうではなくて,通常居房自体は保護房ほどのっぺらぼうな部屋ではなくて,まあまあそこそこの設備はあるのですが,集団生活がさせられないということでその独居房に入れっぱなしになっている人たちがおりまして。
〇滝鼻委員 この収容要件別の大声,これは分かる。暴行,これは収容者同士の暴行ですよね。
〇富山調査官 両方あります。職員に暴行するおそれがある者も含まれます。
〇滝鼻委員 異常行動というのは,どういうのですか。
〇富山調査官 例えばそれこそ糞尿を投げちらかすとか,あるいは部屋の設備をたたいて壊しまくるとか,どうにもならないそういう……。
〇滝鼻委員 ここが一番あれなのかな,処遇しにくいところなのですか。この異常行動をとる人が。
〇富山調査官 要するに精神的におかしくなっているような人が,正にこれに当てはまると思うのです。自殺のおそれというものも,場合によってはそれに近いようなかなり混乱した精神状態になっているケースもあるのですけれども。
〇井嶋委員 このちょっと手続を教えてほしいのですが,緊急事態ですから,当然緊急事態を認知したら,見つけたら直ちにやるのでしょうが,所内的にはどういう決裁的なことをやるわけですか。
〇富山調査官 実際の実務の流れを御説明しますと,まずは何か暴れているとか大声を出しているというと,指揮をできる者,看守長以上の階級にある者がとにかく現場へ駆けつけます。その現場の状況を見て,これは保護房に入れなければだめだと思えば,保護房収容という指揮をします。現場で指揮をします。その指揮に従って,駆けつけた職員が手足を押えて保護房に連れていく。そして保護房に入れてドアを閉めます。まずそういう事実行為が先行します。その上で,指揮をした者は通常ですとその足ですぐ所長室まで行きまして,口頭で概要を報告して,こういうことで保護房に収容しましたと報告をします。通常は口頭で所長の方から,分かった,それでよろしいという了解が得られるのが通常でございます。その後事務手続になるのですが,その現場にいた職員が報告書を書いたりして,その報告書をもとにして次には視察表と呼ばれる書類をつくるのですが,それでこれこれこういうことがあったので保護房に収容したのを報告しますというような形で視察表に書きまして,所長まで決裁を受けることになります,書面でですね。その決裁自体は,結構時間がかかることもございます。通常はそういった形で保護房に入りますと,時間がとれれば所長自身も保護房まで出向いていって様子を見たりという形で,本当に要件があって入れたのだろうなということを確認したりということもすると思います。
〇井嶋委員 上級庁への報告は義務づけられているのですか。
〇富山調査官 現時点では義務づけられておりません。
〇菊田委員 要するに別の言葉で言うと,厳正独居と言われるのがこれであるわけですよね。
〇富山調査官 厳正独居というのは,いわゆる昼夜間独居ですね。保護房とはまた違います。
〇菊田委員 だから1ページのカラーでかいてあるのは,それを中心にかいているわけでしょう。
〇富山調査官 これは正に昼夜間独居拘禁です。
〇菊田委員 その中で一番問題なのは,下の方の「上記のほか,特に独居拘禁に付す旨の定めがある場合」の,おっしゃったように左の二つ目ですよね。戒護のためこれが必要な者。
〇富山調査官 これがいわゆる保安上処遇上の独居拘禁。
〇菊田委員 これは本当の独居ですよね。これがほぼ2,000人近くいるわけですよ。
〇富山調査官 ちょっと待ってください。この間御説明したのは,12%ぐらいの者が全部で数えると独居拘禁がいると。全部でですね。そのうちの4~5%が,この保安上処遇上,正に47条に当たる者だということです。
〇菊田委員 ですから,この保安上の厳正独居というものをやはり直の問題にしなければいけないわけですよね。問題にしなければいけないと思うのですよ。というのは,保安上というのは何だというのは,非常に抽象的ですよね。この前申し上げた札幌の刑務所に厳正独居で何十年も入っている人は,訴訟を起こしている。訴訟を起こしていることで,他の受刑者と通常のつき合いができないというので厳正独居に入れているというわけですね。保安の目的で。
〇宮澤(浩)会長 これは無期刑。
〇菊田委員 無期刑です。
〇富山調査官 先生が今言われたのは,札幌刑務所だと無期刑はいないはずなのですけれども。
〇菊田委員 札幌でなければ……どこですか。
〇富山調査官 北海道でしたら,Lは旭川に入っていると思います。
〇菊田委員 旭川ですね。有名なケースですからだれでも知っていることなのです。
〇富山調査官 それは訴訟になっているケースですか。
〇菊田委員 本人が訴訟を起こしている。
〇富山調査官 要するに,昼夜独居拘禁が不当であるということで訴訟を起こしているケースですね。
〇菊田委員 いや,昼夜独禁に限らないで,所内のやり方についていろいろの訴訟を起こすわけですよ。
〇富山調査官 それはいいのですけれども,その昼夜独居拘禁自体も訴訟になっているケースではないのですか。
〇菊田委員 じゃない。
〇富山調査官 なってない。
〇菊田委員 そこは,今詳しく知りませんよ。正確には答えられませんけれども,要するに訴訟絡みで厳正独居に入れられているわけですよ。
〇宮澤(浩)会長 好訴癖になってくるのですか。
〇菊田委員 まあそう言われても仕方ないでしょうね。要するに,訴訟を起こすことが他の受刑者と団体生活ができないということで,厳正独居に入れるわけですよね。それは保安上という意味なのでしょう。そこが問題なのですよ,厳正独居の問題は。
〇富山調査官 今言われているケースがもし私が承知している事案であれば,少なくとも地裁段階では判決が出ている事案だと思うのです。これは結構有名な裁判だったので,判例時報とか法律時報みたいな本にたしか概要が載っていたと思うのです。次回それをお配りしますので,そこに多分施設がどういう理由で独居拘禁に付したかということが載っていると思います。そのケースであれば,訴訟を起こしているというだけではなくて,もっとほかにも理由があったと思うのですが,いずれにしてもそのケースであれば……。
〇菊田委員 私の知っているのでは,例えば雑居に入って他の受刑者と一緒に入浴したときに,水を泡を飛ばしたということで,集団生活になじまないというのでまた独居に戻されたというふうな事例が,一つ思い出したけれども,あるのですよね。要するに厳正独居というのが問題は保安のための厳正独居ということについて,やはりそこに入っている人間の多くが長期間入れられているわけだけれども,精神的に非常に異常を来してきている。来しているからなおさら出せない,こういう悪循環が続いているわけです。だから50年以上も入っているのが1~2名いるはずですよ。そういう病気だから出せない。入れているから病気になる。こういう悪循環がこういう弊害を生んでいるということが現実にあるのですよね。だから,これはそういう者については精神科医の診断をさせて,やはり病院で治療する対象にするとか,目的的な方策をとらない限り,入れている限りは精神障害は治らないですよ,ただ拘束している。そういうようなことをきめ細かく議論する必要はあると思います。
〇宮澤(浩)会長 御苦労さまですが,次回までにもし可能であれば,ちょっとそれ電話なり何なりで聞いてみていただけますか。旭川にそういう例があるのかどうか。
〇富山調査官 多分私が承知しているその裁判事例だと思いますので,念のためにほかにそういう事例がないかどうか確認してみますけれども,恐らく菊田先生がおっしゃっているのがかなり有名な案件なのですよね。受刑者の名前をこの場で言うわけにいきませんので申し上げられませんけれども。
〇菊田委員 言ってもいいのですよ。
〇富山調査官 議事録に残っても,それはプライバシーの侵害になりますので。
〇菊田委員 いや,いいのです。それは公にされていることですから。私の「日本の刑務所」にも本名で出していますから。
〇富山調査官 国の議事録には,余り受刑者の個人名は載せたくないですので。ただ,多分後でお聞きして確認させていただきますので。その上で訴訟の裁判の紹介文章なんか探してきますので。
〇滝鼻委員 50年以上入っているというのは,どういうことなのだろうね。
〇宮澤(浩)会長 無期。
〇滝鼻委員 無期の人ですか。
〇宮澤(浩)会長 ということは,仮釈にもならないという。
〇滝鼻委員 仮釈にならない。
〇菊田委員 もう親族もいないしですね。
〇宮澤(浩)会長 そうしたら,もう80近い人。
〇菊田委員 そうです。
〇富山調査官 今言われた50年というのは,確かに無期受刑者で50年以上服役している受刑者はいたと思います。これは以前質問主意書が国会から出まして,それに答えたときにたしかそういう回答をしたケースがあったと思うのです。ただ50年その人が独居拘禁だったかどうかというのは,ちょっと違うかもしれません。そうではないかもしれません。ただ,50年間服役している人がいるのは間違いないですね。
〇成田委員 保護房ではないですか。
〇菊田委員 いや,保護じゃない。保護房はそんなに長く入れられないもの。
〇滝鼻委員 昼夜間独居拘禁に付されている人,50年以上も付されている人が二人もいるわけでしょう。
〇富山調査官 50年かどうかは,それは質問主意書に答えてあったはずです。
〇菊田委員 50年以上がいることは間違いないです。
〇富山調査官 服役している人はいるのです,間違いなく。ただ本当に昼夜独居拘禁かどうか,質問主意書で答えていますので,これも次回までに調べておきます。調べれば分かることですから。
〇滝鼻委員 昼夜独居拘禁というのは,要するに作業をやってない人だよね。
〇富山調査官 作業は部屋の中で作業しています。
〇滝鼻委員 集団で作業はしてない人だね。
〇富山調査官 はい。
〇井嶋委員 独居房というのがありますね。そこに入っているのが2種類あって,簡単に言えば,要するに昼夜間というのはこういう類型の人で,そうでない独居の人は昼間は工場へ出て作業して帰ってくる,こういうことになっています。
〇滝鼻委員 それは正常な方ね。
〇井嶋委員 それは正常な方。ただ,房の収容状況によって入れられたり,独居へ入れたり雑居へ入れたりするのは,分類によって決めているわけだから。
〇宮澤(浩)会長 しかし50年入っていたら,そのこと自体で異常になるでしょうね。
〇菊田委員 異常だから出せない。
〇宮澤(浩)会長 その異常という意味がね。
〇滝鼻委員 仮出獄にもならないのでしょう,そういうのは。
〇菊田委員 無期ですからね。
〇滝鼻委員 無期だって仮出獄する人はいる。
〇井嶋委員 精神的におかしいから。
〇富山調査官 それは恐らく医療刑務所の案件だと思いますので,当然精神科医が診ています。
〇菊田委員 仮釈放は,本人が出るという希望も出さなければいけませんからね。それすらできないのではないですか。
〇滝鼻委員 出願もしてないのだ。
〇宮澤(浩)会長 家族もないのかね。
〇滝鼻委員 出てきても大変だよ,だけど,これ。
〇井嶋委員 八王子医療刑務所に置いておくことはできない,程度なんですか。
〇富山調査官 今の先生が言われた案件は,多分医療刑務所に入っている受刑者だと思いますね。
〇井嶋委員 医療刑務所で,ベッドの休養ではなくて昼夜独居に入っている,こういうことですか。
〇富山調査官 要するに休養中でも昼夜独居は昼夜独居ですから。もし仮に独居の病室に入ればですね。
〇宮澤(浩)会長 ということは,北海道ではなくて東京かもしれないという意味。
〇富山調査官 50年云々というのは,たしかこれは質問主意書で答えていたと思うのですが,城野医療刑務所という北九州の方にある医療刑務所での受刑者だったと思います。
〇井嶋委員 そういうのは特異なケースなのでしょうけどね。ですから,特異なケースは議論がちょっと難しいのですけれども。
〇菊田委員 いずれにしても,独居拘禁の収容期間というは無期限に更新できるのですよね。
〇井嶋委員 無期限なのですか,本当に。
〇富山調査官 六月と三月,三月ごとに更新をしていくということで,正に上限はないです,確かにおっしゃるとおり。
〇井嶋委員 更新の手続は,具体的にはどういう手続になっていますか。
〇富山調査官 手続自体は,先ほども言った視察表というやはり書面で所長まで決裁を仰ぐのですが,この独居拘禁に関しては考える時間が十分ありますので,分類審査会というところで審査もしまして,事前には本人との面接もしていろいろ働きかけもしたりというようなこともやった上で,最終的には分類審査会の意見を添えて所長の決裁を仰ぐという形になります。
〇井嶋委員 やはり書類上の審査をするわけですね。
〇富山調査官 はい。確かに5年以上の者が平成12年の調査で65名いたということは事実でして,ただこれは当局の方から説明させていただきますと,むしろそういった長期間にわたる独居拘禁者というのは非常に扱いが大変ですから,できることなら集団処遇したいのです,我々の方も。決して意図的に独居になんかしているわけではないというのは分かっていただきたいと思うのです。ただ,どうしても集団処遇に編成すると他の者とのトラブルになったり,あるいは施設の規律が維持できないような状況が出てきてしまう。どうしても出せないという判断をせざるを得ない。それが結果として三月ごとの更新が積み重なって5年を超えてしまったものが65名現実に当時の調査でもいた。今でも恐らく,同じぐらいの人数はいるのだろうと思います。そういうケースがどうしてもあるのだということは,分かっていただきたいと思うのですが。
〇菊田委員 ですから,それは厳正独居といえ,運動にしても他の受刑者と一緒に運動させるとか,あるいは1日のうち1時間,2時間はそういう他の受刑者と談話,話すような場所を設けるとか,そういう方法は幾らでもあると思うのですよ。厳正なるがゆえに一切他の受刑者と話もさせない,運動も一人でさせる。そんなこと続けている以上は,ますますその人は悪くなりますよ。悪いから出さないのではなくて,悪くしているのではないかという面も考えなければいけないことなのですよね。初めから精神障害であったから刑務所へ来たわけではないのだから。そこのところですよ。
〇滝鼻委員 それはどういう字を書くのですか,ゲンセイ独居というのは。
〇菊田委員 厳しいですね。
〇滝鼻委員 厳しい,正しい。
〇菊田委員 ええ,そうです。
〇滝鼻委員 それは,このカテゴリーから言うとどこに当たる。
〇菊田委員 法律用語としてはないのです。
〇井嶋委員 実務用語ですか。
〇菊田委員 実務用語です。
〇富山調査官 実務上厳正独居と言っているケースがございまして,要は戒護上の独居で他の者と一切接触をさせないと。
〇井嶋委員 戒護上の隔離の,これに当たるのですね。
〇富山調査官 規則47条による独居拘禁の中でも,要は他の者と,例えば正に菊田先生が言ったように運動ぐらいは一緒にできるという身柄もいるのですね。そういう人は運動だけは例えば集団でやっているというケースがあります。それは緩和独居とかいう呼び方を実務上しているのです。独居というのは,本来はここの緑のところに書いてありますとおり,「他の収容者と交通を遮断し」と,これがある意味独居拘禁の方法としては一番正しい,厳かに正しいという意味で厳正なのですが,このとおりにやるとだれとも一緒にはしないということになるのですが,だれとも一緒にせずに部屋から出さないということになるのですが,ただしそこまでしなくても大丈夫な,ちょっと運動のときぐらいはほかの者と一緒にしても平気だというような者は,緩和独居と呼びまして運動だけ5~6人の小集団でやらせたりというようなことがあるのですが,それもできない者を実務上厳正独居と呼んでいまして,運動も正におっしゃるとおり一人で。
〇菊田委員 それが,今これ2,000名いるということでしょう。
〇富山調査官 いえいえ,緩和独居も含めてです。
〇菊田委員 緩和を含めてですか。
〇滝鼻委員 しかし保護房に入っている人は,この厳正独居とは違う。
〇富山調査官 とは呼ばないのです。あくまでも臨時に入れているというようなことですので。ただ法令上の根拠としては,正にこの47条に基づくものですので,その意味では法令上は同じなのですが,保護房収容というのはあくまでも急場しのぎの臨時の措置ということでやっておりますので。
〇滝鼻委員 そこで長い人というのはいないわけ。
〇富山調査官 それはさすがにいないですね。何とかしてでも出さないといけませんので。
〇滝鼻委員 こののっぺらぼうのところに何年もいるという人はいない。
〇富山調査官 それはあり得ません。やはりどうにもならないと思っても,例えば風呂に入れなければいけませんので。1週間も入っていたらもうあかだらけになってしまいますから,1回とにかく連れ出して体洗ってやって,それでちょっと様子を見てだめなら,また暴れ出すのならまたやむを得ず入れますけれども,とにかく1回は出すということを必ずやります,この保護房の場合は。
〇井嶋委員 緩和独居も含めた2,000人というと,新入とか分類中の者も数に入るわけですね。
〇富山調査官 それは入りません。前々回でしたか,処遇困難者のプレゼンの際に円グラフみたいなのをたしかお示ししたと思うのですが,あの中でオレンジ色の部分というのが,正にこの47条による独居拘禁なのです。ですから,全体の4%程度ということで,大体2,108人ですか。保安上,処遇上2,108人。これが正に47条に基づく独居拘禁の数になります。あとそのほかに,懲罰執行中ですとか取調中ですとか,それ以外の分類だとか出所前とか,そういうのが別途いる。ですから,どうしても47条,集団生活をさせることができないという判断をされている者が2,100人ぐらい直近の調査ではいた。その中には,今申し上げた緩和独居の者と厳正独居の者が両方入っている。
〇菊田委員 厳正独居の数というのは分かっているわけでしょう。
○富山調査官 これは,今言った形態が施設ごとに実はさまざまでして,なおかつ厳正独居なんていう言葉を使ってない施設もあるのです。ですからなかなかそのとり方が非常に難しくて。
〇菊田委員 少なくとも,定期的に精神科の診断をさせるとか,そういうやはり厳格な歯どめをぴしっとつけるというようなことが必要ではないですかね。
〇宮澤(浩)会長 それはしてないの。
○富山調査官 医師の診断は原則的にはやっていますけれども,ただ精神的におかしいという者は当然精神科医の診断になるのですが,例えば先ほどちょっと申し上げた例の中で,自ら対監獄闘争関係者を名乗って,受刑生活の方針が決まっていないと言ってずっと工場へ出ることを拒んでいる。この人は別に精神状態がおかしいわけではないので,こういった人は多分精神科医の診断を受けてないと思いますね。
〇井嶋委員 確信犯だからね。
〇宮澤(浩)会長 相当長くいるわけ,この人は。
○富山調査官 これも,少なくとも5年はいると思います。長期の施設にかけて,5年以上入っている者でどんな人がいますかということで聞きましたので。
〇宮澤(浩)会長 罪名まではわからない。
○富山調査官 すいません,それは聞いておりません。
〇井嶋委員 この昼夜独居に入っている人は,原則的に作業をしていると考えていいのですか。それとも,やはりしてない人の方が多いのですか。
○富山調査官 原則的にはしております。ただ,それこそ府中のレッドゾーンを御覧になったように,しているといってもというケースはあると思います。あり得ますけれども。
〇井嶋委員 そんなことはないと思うけれども,本当はこの定義されているような選別要件以上に,何かこいつはしち面倒くさいことばかり言うから,面倒だから入れておけみたいな運用がありはしないかなというようなことはないのでしょうね,やはり。
○富山調査官 実務的に言いますと,昼夜独居にする方が面倒なのです。というのは,確かに昼夜独居拘禁が長くなるのは菊田先生がおっしゃるとおり心身に悪影響が及ぶおそれは現実にあるのです。ですから,我々も今2年に1回施設に行きます巡閲という制度を御承知かと思いますけれども,その中では1年以上昼夜独居拘禁を継続している受刑者はいるか,いたらどんな受刑者ですか。それを全部聞いて調べてくるのです。要は我々の方で,上級官庁の目で見て,その記録を点検して,もうちょっと何とかならないのかというケースがないのかというのは探すようにはしているのです。そのようなことは,我々もやはり問題意識は持っていまして,長期間にわたるのは決していいことではないというのを思ってはいるのですが,それでも調べていくとそういう,やはり何十人かは5年を超えているような人がいる。
〇成田委員 世の中に出てくると困るでしょう。
○富山調査官 それこそ引きこもりみたいな形になってしまうか,引きこもっているのならまだいいのですけれども,場合によったら重大犯罪につながる可能性だってないとは言えないですよね。
〇成田委員 菊田先生は,これを面倒見なくてはいけないということなのですか。先生が言われているのは,何とか。
〇宮澤(浩)会長 更生保護施設も困るだろうね。
○富山調査官 極めて長期にわたるケースって,無期受刑者のケースが結構ありますから,そうなるともうずっと刑務所で最後まで面倒を見ることになってしまうと思うのですけれども。
〇成田委員 運動もしなくて,歩きもしないね。
〇宮澤(浩)会長 この65名について,罪名の分類ができるなんていうことは,やはり無理。
○富山調査官 この当時の調査で,そこまで調べてないと思うのです。ただ,必要でしたらまた同じ調査ができますので,この時点ではなくて現時点で,今5年以上いる者について何人いて罪名は何だというのは,調査できます。若干時間をいただければ,多分次回の分科会までにちょっと時間があいていますので,その意味ではできると思いますが。
〇宮澤(浩)会長 もし可能なら,ちょっと知りたいですね。
○富山調査官 分かりました。手配いたします。
〇宮澤(浩)会長 やはりそうですね,我々がいろいろ何か提案するとすれば,現状どうなのだということが分からないと,鉄砲撃ってもどこに当たるか分からないから。
〇菊田委員 国会で相当資料を提出を要求されて出したはずですよ。前回私も言ったけれども,国会で。
○富山調査官 昼夜間独居拘禁は,多分質問主意書にお答えして出した資料があったと思うのですが,それはちょうど平成12年のときの調査結果がそれを引用していまして,それではたしか罪名なんかは出てなかったと思うのですよね。いずれにしても,また調べれば分かることですし,最新のデータの方がより意味があるだろうと思いますので。
〇宮澤(浩)会長 なぜかというと,先ほどの成田委員の質問でふっと思ったのは,やはり出して社会に迷惑かけることがあったら困りますのでね。できるだけそういう昼夜独居から即社会というのを避けたいなというふうに個人的に思ったものですから。一体罪名が,窃盗でどうしようもないというようなのも困ることは困るけれども,殺人とか性犯罪とか放火だったりすると,やはりちょっと自信ないですね。
〇井嶋委員 施設法案では,56条で,「受刑者の居室は矯正処遇の実施上共同室を適当とする場合その他の法務省令で定める場合を除き,単独室とする」と書いてあって,独居拘禁という規定はないのですよ。これはどういう考えだったのでしょうか。
○富山調査官 それ以外に隔離というたしか規定があったと思いまして,いわゆる昼夜独居拘禁に当たる部分は隔離ということで。
〇井嶋委員 それは保護房……。
○富山調査官 保護房とは別で。
〇井嶋委員 隔離というのは,処遇上ですか。
○富山調査官 これは36ページ以下の規律秩序の維持の部分でたしかあったと思うのですが。38ページの40条で。
〇宮澤(浩)会長 やはり理想から言えば,自分が自分で好きなことができる場所を与えてやりたいというようなことから,独居房の方が多くあった方がいいというような発想なのですよね,たしか。雑居の場合はフレキシブルに運用できるから,便利は便利だということもあるのだけれども,やはり人と一緒に四六時中他人を意識しなければならない受刑生活というのもつらいなと思うしね。
〇菊田委員 だから受刑者によっては,希望して独居に入るのがいるのですよ。厳正独居に入るのが。
〇井嶋委員 新法では,隔離して独居,隔離独居ということなのだな,考え方としては。
○富山調査官 はい。
〇井嶋委員 隔離の期間は3か月とすると書いていますね。継続の必要がある場合は,1か月ごとに更新と書いてある。
〇宮澤(浩)会長 暴力団の組長なんかは,やはりどうしても雑居には入れにくいなんていう話を前に聞いたことがある。
○富山調査官 やはり影響力がありますので,なかなか配房が難しいですね。工場もどこへ出すかというのは,組長なんか気を使いますよね。同じ組の若い衆なんかが一緒にいる工場に出せば,何かみんな組長,組長と寄ってっちゃいますし,かといって反目するのがいればいいかというと,それまた今度は逆に親分の玉とればまた名が上がるなんて思われたら大変なことになってしまいますので,その辺はやはり相当気を使った配役が必要ですね。
〇菊田委員 厳正独居の場合は,特に無期懲役の,終身刑の無期懲役の場合が問題なのですよね。結局有期ならどんなにあれしても出してしまうのだけれども,無期懲役が長くなるのですよ。厳正独居にいる以上は仮釈放がありませんからね。
〇宮澤(浩)会長 それは,そういうふうに言って構わない。
○富山調査官 厳正独居に置かなければいけない身柄というのは,多分仮出獄は難しいだろうと思いますね。本人を守るために厳正独居にしているケースは別なのですけれども,周りから襲われる心配があるというようなことで昼夜独居にする場合は全く別なのですが,そうでないほかの者と協調して集団生活ができないという理由で昼夜間独居になっていますと,恐らくそう簡単に仮出獄ということはないと思うのですよね。
〇菊田委員 そもそも累進処遇が上へ上がらないのではないですか。
○富山調査官 3級に上がるケースは多分あると思うのです。ただそれ以上上というと,やはり集団と協調して生活ができない人の累進級を上げられるかというと,難しいですよね。
〇菊田委員 そこが足かせになって仮釈放もできない。
○富山調査官 仮出獄自体は,3級でもなるケースがありますので,その累進級の縛りではないのですけれども,やはり他人と協調して生活ができないということがあると難しいと思います。

2.その他

〇宮澤(浩)会長 かなり我々議論をいたしましたが,その他で別段何か,今日やっておかなければならないという問題はないのですか。
○富山調査官 特に事務局の方からは……。
〇宮澤(浩)会長 何も5時でなければならないということはありませんので,もし話題が尽きたならば終会にしてもよろしいかと思いますが。
〇名取課付 保護房の関係で,いろいろ問題がありまして,法務省としてもこの保護房収容の適正を期すということで,その収容期間中のビデオ録画をこれから全件についてしていきましょうということで考えているのですけれども,この関係では,一応そういう方向で大体よろしいというようなことで御意見いただけるのか,まだほかに何かした方がいいというような御指摘があれば。
〇宮澤(浩)会長 私ちょっとおやっと思ったのは,「第二種手錠を使用した際は,その間を」と書いてあるので,使用しない場合は撮らないのかなと思ったのですけれども,これは関係ないのですか。この保護房要件の4の(5)。
○富山調査官 これは,現在そうしているということなのです。現在でも保護房内で第二種手錠を使用した際は,その間はビデオ録画する。これはもうやっております,現在既に。そして16年4月1日を目途としまして,すべて録画する方向にしたいと。
〇宮澤(浩)会長 保護房収容の全期間をというわけね。
○富山調査官 ただ,これは何分にも予算措置が要るものですから,財務省の御了解を得なければいけないということで,今鋭意折衝している最中ということで,ですからまだ予定と言うとちょっと実は言い過ぎなのかもしれなくて,そういう方向で頑張っているというふうに御理解いただきたいと思うのですが。
〇井嶋委員 当委員会もそれをサポートするような意見であればいいわけでしょう。ただ,これは物すごく予算食うし,保管も大変だし,本当にここまでやるのかねという問題はあるけれども。
○富山調査官 それは相当数ありますよね。府中刑務所でしたら10数か房ありますし,それが常時入っているとなればすごい量のビデオテープになりますよね。
〇井嶋委員 本当にそれだけの必要性があるのかという問題は確かにあるのですよ。勢いからすれば,やめろとは言えません。何かもう少し選別的にやるとか,何か合理的な方法はないのかということは言えると思うのですが,それは財務省の言うことであって,こちらは要求する側からすれば必要だとあくまで言うと。
〇宮澤(浩)会長 インフォーマルにお話ししたのですけれども,画面に時間,分,秒が明示できるような,そういう装置もつけるらしいから,そうなるとなお高くなりますね。
〇井嶋委員 なお高くなるし,それだけの必要性がどこにあるのかね。何かあったときには必要だけど,何かないことが圧倒的に多いという場合は,物すごいロスだなと。財務省的にはそういうことを言うだろうと思いますよ。
〇滝鼻委員 保管期間なんていうのは定めているのですか。
○富山調査官 これからそれを検討するのですが,やはり最低でも5年ぐらいは持ってないと,犯罪捜査に必要と言われたときに困りますので。
〇井嶋委員 後から犯罪捜査とか言われると,やはり時効になるまでという話になってしまうわけですよね。
○富山調査官 一つ考えられるのは,解除したときに全くけがも何もないというのであれば,例えばある程度短い期間にして,ちょっとけがをしているとかいうときはずっと長く持っているとか,やり方もあるとは思うのですけれども,それでも最低でも3年ぐらいは持ってないと,やはりあとで検証できないですよね。
〇滝鼻委員 刑務所の倉庫,そんなに大きい倉庫はあるのですか。
〇菊田委員 9月1日付で出ていますよね,矯正局長から通達が。これ,皆さんにお配りすべきではないですか。戒具の使用及び保護房の収容についての通達が出ている。
○富山調査官 それは,今回の主要訓令の中には入ってなかったですか。入れていませんか。
〇菊田委員 これはやはり問題だと思うのですよ。
○富山調査官 この55ページからで,戒具の使用,保護房への収容ということで,9月1日付のこの通達を入れてあるのですが,これですよね。
〇菊田委員 そうです,そうです。入っていますね。ごめんなさい,入っています。
〇井嶋委員 これちょっとまだ今日読んでないから読ませてもらいますが。
○富山調査官 すいません,今日お配りしたばかりですから。
〇菊田委員 そうです,これです。
○富山調査官 左から見て55ページの方です。
〇宮澤(浩)会長 どこが問題なの。
〇菊田委員 何か,第二種手錠というのですか,これにはビデオのことが書いてない,抜けている。
〇成田委員 監視用テレビカメラにより,綿密かつ頻繁に視察しと書いてある,56ページ。
〇宮澤(浩)会長 56ページに,「戒具使用中又は」と書いてある。これでカバーできるんじゃない。
○富山調査官 録画については,この通達自体には書かれてないのですが。
〇菊田委員 前の方には書かれて……。
〇宮澤(浩)会長 収容中の者については,巡回,監視用テレビカメラ等による綿密かつ頻繁に視察し。そうか,テレビカメラだから録画ではないのですね。
○富山調査官 そういったものでよく見なさいというだけでありまして,録画の話は別途これ以前に,緊急的な措置ということで指示が出ていましたので,録画に関しては今はそちらでやっているのです,手錠使用中の録画というのは。
〇井嶋委員 録画の通達ではないですね,これは。
○富山調査官 それは違います。その4月1日以降というのは,予算措置がつくことが前提なのですが,つけばまた何か通達なり通知なりを出して,これはもう全部録画をする。録画したテープはこうやって保存するのだというような形を流すことになるかと思います。
〇井嶋委員 その方向は維持したいわけ。
○富山調査官 当局としては,ある意味我々の正当性を示すためにも,全部の記録はありますということで,いざ問題視されたときには,どうぞ見てくださいという形にしたいと。
〇成田委員 どのぐらいなのですか,お金は。
○富山調査官 すいません,幾ら要求しているのか。これ全然ポジションが違うものですから。
〇成田委員 人間一人雇うのとどうなの。
〇滝鼻委員 人間一人雇うよりは安いはずですよね。
〇成田委員 だからやってもらっていいんじゃないの。これ,何回か使えたりなんかするの,5年残して,その間にあれでしょうけどね。
〇滝鼻委員 8万人収容の刑事施設をつくると言っているのだから。
〇成田委員 私は金額は大したことないと思うな。
〇井嶋委員 意味があるかどうかはともかくとして,全件そういうふうにするということですかね。
〇宮澤(浩)会長 やはり我々の意見を一つのてこにして,矯正当局がいろいろ予算要求するとか,やはり世論としてはこういう希望があるのだから,それにこたえなければいけないというような,そういうあれは意味があるのではないでしょうかね,こういう時間を使って議論する意味というのが。
〇井嶋委員 保護房の施設の中をリニューアルするという話はなかったのでしたっけ。
○富山調査官 特に大声を上げるだけで入っている人たちというのは,必ずしもあんなようにのっぺらぼうな部屋にしなくても,もうちょっと生活の便宜が考えられた部屋でも防音さえできればいいという考え方はありまして,それはもちろんお金もかかりますし,別のスペースが必要なのですけれども,今局の施設係と官房の施設課で保護房の種類をもう少し変えることができないのだろうかと。
〇井嶋委員 保護房に,用途に応じて少し多様化する,様式を。
○富山調査官 要は,本当に危ない人はのっぺらぼうな部屋しかないわけなのですけれども,ただ大声で歌ったり叫んだりするだけで暴れないというのであれば,もうちょっと日常的な備品や設備があってもいいのではないか。ただ音が漏れなければいいではないか。なかなかそれがどこまでうまくできるかとかいろいろあるのですけれども,そういったことも今検討はしているようです。
〇井嶋委員 そういうものも検討してもらうというのは,提案しておきましょうかね。
〇成田委員 しかし,今何か全部不足しているのですね。獄舎じゃないけれども。この間あそこへ行ったときも,小山の,行ったけれども,600何人収容のところに,800人ぐらい入っているわね。それで3人部屋を4人部屋にして。何かそういう点には,本当大変だなという気がしましたね。
〇宮澤(浩)会長 大変ですよね。
〇成田委員 1.5畳に一人。畳1畳半。
○富山調査官 1.5畳。本来はそのぐらいスペースがあったのでしょうけれども,今はそれ以上に詰め込んでいるかもしれないですね。
〇宮澤(浩)会長 居住性という点からいったら,それは大変でしょうしね。
〇成田委員 集まらないらしいね,刑務官が。特に女性の場合ね。やめていくんですって。
〇宮澤(浩)会長 女性の刑務官。それは前から深刻な問題にはなっているのですよ。宿直という問題が大変なんですよね。
〇成田委員 男の刑務官が巡回するわけにいかないのね。
○富山調査官 なかなか,どうしても女性の施設にはやはり女性が必要なのですよね。
〇成田委員 それで,手洗いが別になっている。部屋の中にない。そうすると,移動するわけ,夜中でも。そうすると,やはり悪い人がいるからね。
〇宮澤(浩)会長 でも,女子の施設で舎房内に手洗いのないところなんてないだろう。ある。
○富山調査官 いわゆる開放的な寮になっているところが結構多いですから。
〇宮澤(浩)会長 外へね。
○富山調査官 ですから,その建物の中にはトイレがあるのですけれども,部屋から出てトイレに行くという構造のところが結構あるのです。
〇宮澤(浩)会長 なるほど,そういう意味ね。
〇成田委員 そうする,やはり刑務官がついていかなくちゃいかんわけでしょう。
○宮澤(浩)会長 まあ,夜男性が女性の施設で働くというのは,余り好ましいことではないですよね。これはもう,社会福祉でも同じことでしょうね。それでは,3分まだ時間がありますが,どうも今日はありがとうございました。では,次回は全体会議。
○富山調査官 次回は全体会議で,そこでまた御報告いただくということになります。
〇井嶋委員 分科会はないのですね,次回は。
○富山調査官 次回はございません。
〇宮澤(浩)会長 日程は先ほど。
〇井嶋委員 二十日ですか。
○富山調査官 二十日の2時から全体会議でございます。
〇滝鼻委員 これは全体会議ですね。
○富山調査官 はい。
〇井嶋委員 第1分科会ではこういうことをしましたという報告は,そちらでつくっていただくのですか。
○富山調査官 原案を会長にお示ししまして。基本的には,今までの議事概要をつくっておりますので,それをベースにということで。
〇井嶋委員 会長がそれをチェックしていただいて,御一任ということでよろしいですね。
○富山調査官 それから次回の30日の分科会でございますが,一応予定ですと所持品がまだ積残しになっておりますので,被収容者の所持品と,それから担当制,刑務作業ということで準備はさせていただきます。全部がその日で終わるかどうか分かりませんけれども。


午後4時57分 閉会