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行刑改革会議 第1分科会 第6回会議

日時: 平成15年11月10日(月)
14時00分~16時47分
場所: 法務省矯正局会議室(14階)



午後2時00分 開会


○宮澤(浩)会長 それでは,時間になりましたので,第1分科会の第6回の議事を始めたいと思います。

1.個別論点の検討

(I)仮釈放制度の見直しについて

○宮澤(浩)会長 本日は,一つの論点といたしまして,仮釈放制度,これがその対象になります。この仮釈放制度につきまして,保護に関連する問題でもあり,もちろん矯正局ともかかわりのある,そういう性格を持っておりますので,現在の仮釈放に関する動向,あるいは将来を見据えた方向について,本日わざわざこの席上に鈴木観察課長がお見えになっておられます。お伺いをいたしまして,議論の参考にしたいと存ずる次第であります。
 それでは,恐れ入りますが,そちらで御発言を賜ればと思います。



a保護局説明


○鈴木観察課長 ただいま御紹介いただきました保護局の観察課長の鈴木でございます。仮釈放及び保護観察,保護局の所管でございますので,保護観察,仮釈放について説明させていただきたいと思います。
 簡単でございますけれども,資料,私どもの説明として使いますのは,1ページから3ページのもので,「仮出獄の流れ図」,それから「仮出獄について」及び「参考条文」この三つに沿って御説明をさせていただきたいと思っております。
 1ページの「仮出獄の流れ図」に書いてあります数字,例えば中ほどにあります刑務所から地方更生保護委員会というa身上調査書送付となっておりますが,次に御説明する2ページに書いてあります手続のところの振ってあります数字と同じ流れでございますので,御承知おきいただければと思っております。
 まず,身上調査書の送付というところから入らせていただきたいと思いますが,刑務所で新しい受刑者が入りますと,速やかに施設を管轄している地方更生保護委員会及び本人が希望する帰住地を管轄する保護観察所に対して,本人の身分関係であるとか執行関係,心身の状況,生活歴等が記載された身上調査書を送付するということになっております。
 それを受けまして,保護観察所におきまして本人が希望する引受人及び釈放後の帰住予定地につきまして,その社会復帰が円滑になされるよう,環境調整というものを行うわけでございます。環境調整におきましては,引受人及びその家庭の状況であるとか,被害弁償の状況や,被害者のお気持ち,それから矯正施設に収容前の生活状況,交友関係,釈放後の学業又は職業及び生計の見込み等,これにつきまして調整を行うわけでございますが,率直に申し上げて,だんだんとこの環境調整が難航するといいますか,難しくなってくるケースが増えておりまして,特に親元等親族のもとへの帰住というものがなかなか厳しくなってきているという状況にございます。
 したがいまして,私どもとしてはもう一つありますのが,更生保護施設というものがあるわけでございますけれども,そこへの受入れにつきまして調整をとるということで進めているわけでございますが,この環境調整の結果いかんが事実上仮出獄の適否を左右する,あるいは仮出獄後の保護観察の成否を決するといっても言い過ぎでないような状況にありますので,この環境調整の充実につきましては一層の充実につきましてやっているところでございますけれども,一方では今申し上げたようななかなか引受先帰住地を設定するのが難しくなってきているという状況にもあるというところを,御理解いただきたいと思います。今後とも一層この環境調整の充実,それからもう一つは収容期間を考慮した迅速な事務処理につきましてもやってまいりたいと思いますが,何分例えば平成14年末で言いますと,一人の観察官が保護観察事件を116件,環境調整事件を94件担当しているような状況でございまして,そういう中でこれを一層充実・強化していくということはなかなか難しい問題もあるというところも御理解いただければと思っている次第でございます。
 一方3に入るわけでございますけれども,地方更生保護委員会の事務局というのがございまして,ここに所属する保護観察官が―この保護観察官は保護観察所の保護観察官を経験した者が,ベテランの観察官が多いわけでございますけれども―仮出獄審理の準備のために受刑者と面接したり,刑務所等にあります記録,例えば身分帳であるとか通信票であるとか,そういうものを閲覧するということによりまして,仮釈放審理のための基礎的資料をつくって,それを委員に報告するという手続になっています。
 それら等も踏まえまして,4番といたしまして刑務所長からの仮出獄申請ということになるわけでございますけれども,刑務所内部における仮釈審査,内部審査によりまして,これは先ほど申し上げた環境調整の結果等も参考にされた上でということになりますけれども,仮出獄の許可基準に該当するか否かを審査することになります。
 特に該当すると認められた者につきまして申請という形に結びつくわけでございますが,仮出獄の基準につきましては,3ページの「参考条文」のところに記載させていただいておりますが,これは今さら申し上げることはないかと思いますけれども,刑法28条に「改悛の状があるとき」というふうになっておりまして,これを受けまして「仮釈放及び保護観察等に関する規則」,これは法務省令でございますが,この32条に四つの事項について総合的に判断する。保護観察に付することが本人の改善更生のために相当であると認められるときに許すものとするということになっておりまして,一つとしては悔悟の情が認められること,二つとしましては更生の意欲が認められること,3としましては再犯のおそれがないと認められること,4といたしましては社会の感情が仮出獄を是認すると認められることというふうなことになっています。
 これ,aからcにつきましては,ほぼ同じようなことになるかと思います。更生の意欲というのか,いわゆる再犯のおそれがないということに集約されるかと思われますけれども,内面的な問題ということも言えるわけでございます。もう一つd番の社会感情の中には,被害者感情も一つの要素として入るというふうに理解して運用いたしているわけでございます。最近におきましては,先ほど環境調整の中で申し上げましたように,帰住地の設定がなかなか厳しくなってきている。もう一つは,被害者感情の問題でございまして,なかなか仮出獄というものにつきまして厳しい感情を持っておられる方が多いという状況にあるというところでございます。
 5の方に入らさせていただきますと,地方委員会委員による仮出獄審理ということになるわけでございますが,地方更生保護委員会,これが刑法28条に言います行政官庁に当たるわけでございますが,地方更生保護委員会におきまして,申請を受けますと仮出獄の審理を開始する。これは,地方更生保護委員会と言いますのは,全国八つの高等裁判所管内ごとに置かれておりまして,3人から12人の委員で構成されており,53人の委員がいます。そのほかに非常勤の者が二人おられますけれども,という形になっておりまして,3人の委員で一つの合議部を構成している。その三人のうち一人が主査委員という形で任命されまして,原則としまして受刑者本人と面接を行うということになっています。
 面接を行いまして,どんなことに留意しながら面接を行うかということについてちょっと説明させていただきますと,本人の陳述内容であるとか,態度その他から仮釈放の許否の判断をするために必要な事項を把握して,的確な心証を得るということ,それから,あと本人の社会復帰を円滑にするための相談に応じて助言を行うこと,それから的確な心証を得る過程で,特別遵守事項について具体的に考慮すること,特別遵守事項についてはまた後ほどちょっと御説明させていただきたいと思いますけれども,そのようなことをやります。
 それと,保護観察官による先ほどした事前調査等の結果,これを調査票にまとめておりますが,その結果等を参考にしながら仮出獄を許すか否か,仮出獄を許可する場合は,その時期,それから特別遵守事項等について合議体で審議をした上で決定をするということになっております。本人との面接等を含めまして,一人の委員の負担が大体月30~40件ぐらいありまして,施設で面接をし,それをまとめた審理票というものをつくる。そのために,ほとんど最近で言いますと土曜,日曜自宅で処理するという状況になっております。委員の負担が非常に厳しくなってきているというところもございます。
 遵守事項につきまして,ちょっと御説明させていただきたいと思いますけれども,遵守事項といいますのは保護観察に付されている者は,その期間中特定の事項を遵守しなければならないと犯罪者予防更生法等に記載されているわけでございますけれども,犯罪者予防更生法では,保護観察における指導監督の方法としまして,保護観察に付されている者と適当に接触を保ち,常にその行状を見守り,遵守事項を遵守するため必要かつ適切と認められる指示を与え,それから必要な措置をとることと定めているわけでございます。この遵守事項といいますのは,保護観察を受ける者の行為規範,生活指針に当たるもの。また保護観察を実施する方といたしましては,指導,監督の目標ないし基準になるものでございますけれども,この遵守事項に違反いたしますと仮出獄の取消し等の措置がとられるということで,非常に強い規範性を持ったものでございます。
 法律の中で規定している遵守事項と,それから本人の個別事情に応じて定めるものという二通りございまして,法律で定めている犯罪者予防更生法34条2項で定めている法定遵守事項と言っておりますけれども,これが四つございまして,一つは一定の住居に居住し,正業に従事すること,二つとしては,善行を保持すること,三つとしましては,犯罪性のある者又は素行不良の者と交際しないこと,四つとしましては,住居を転じ,又は長期の旅行をするとき,長期の旅行は一週間以上というふうに解釈いたしておりますけれども,長期の旅行をするときはあらかじめ保護観察を行う者の許可を求めることということになっております。
 それから特別遵守事項につきましては,保護観察の基礎的な状況をつくり上げるための事項であるとか,更生を促し,再犯を防ぐための事項,あるいは本人の再犯防止と直接関係はありませんけれども,社会ないし第三者の利益のための事項というものを具体的に定めるということになっておりまして,保護観察の基礎的な状況をつくり上げるための事項としましては,例えば仮釈放者については帰住日の指定,いついつまでに帰住先に帰ることということ,あるいは保護観察所へ出頭することというふうなこと,それから更生を促し再犯を防ぐための事項といたしましては,過度の飲酒をするなとか,あるいは薬物乱用の禁止であるとか,心身の治療の指導だとか,そういうふうな項目を定めるのです。
 もう一つ本人の再犯防止と直接関係はありませんけれども,社会ないし第三者の利益のための事項としましては,例えば家族の扶養に努めることであるとか,必要であれば被害者に対する慰謝について誠意を尽くすこととか,そういうふうなことを規定する,特別遵守事項として定めるというふうになっております。
 それらのことが決定いたしますと,仮出獄許可決定しますと,刑務所に通知がなされる。また保護観察所にも通知がなされ,8番としまして仮出獄指定日に受刑者は刑務所から仮釈放され,指定された帰住地において刑期満了まで保護観察に付されるということになっております。
 これが保護観察の流れでございますけれども,私どもといたしましては,仮出獄につきましては仮出獄者の再犯率を低く抑えることだけではなく,仮出獄の運用を適正に行いまして,仮出獄の効果を受刑者に妥当な範囲で広く及ぼして,出所者全体としての再犯率を最小限に抑えること,これを目指しているというところを申し添えまして,簡単ですが説明にかえさせていただきたいと思っている次第でございます。
○宮澤(浩)会長 どうもありがとうございました。
○滝鼻委員 さっきちょっと飛ばされたのですが,4のところですね,刑務所長からの仮出獄申請,これは現行の運用だと申請者というのは刑務所長に限定されているわけですよね。
○鈴木観察課長 あと委員会の職権というのが制度してあるわけですけれども,ほとんど運用は。
○滝鼻委員 それは,ケースとして少ないんでしょう。
○鈴木観察課長 ええ。
○滝鼻委員 これは,刑務所に申請者が限られているというのは,法律によるとどういう法律に基づくのですか,これは。
○鈴木観察課長 刑務所に申請の問題……。
○滝鼻委員 所長に限定しているということは,何法の何という。
○鈴木観察課長 犯罪者予防更生法の第29条でございます。失礼しました。これは審議の開始でございますね。
○宮澤(浩)会長 いざとなると出てこないね。
○菊田委員 後で答えてもらっていいんじゃないですか。
○滝鼻委員 というのは,よく弁護士会とか弁護士が言うのだけれども,職権審査は別として所長に限られるということは,自分が収容されている刑務所の所長ですね,申請してくれるのは。そうでしょう。そうですよね。
○宮澤(浩)会長 まあ,形式的ではあるでしょうけれどもね。
○滝鼻委員 したがって,そうなると受刑者が担当にごますったりそういうことがあるのではないだろうかと,こういう疑念を言う人もいるので,その疑念が正しいかどうかは僕は分からないからそれはいいんだけれども,なぜ更生保護委員会の職権以外で申請するときには所長の申請に限定されているのか,あるいはどこか法律で決められているなら何という法律でしょうかという,こういうお尋ねなんですよ,質問なんです。
○井嶋委員 予防更生法にないですか,鈴木さん。
○滝鼻委員 法律行為ではないんですか,申請というのは。
○鈴木観察課長 申請にはちょっとありませんね。規則の方の第20条の方に……。
○滝鼻委員 あなたが説明した2ページのところの4のところに,刑務所長からの仮出獄申請とあるでしょう。「刑務所内部における審査により,仮出獄の許可基準に該当すると認められた受刑者について,刑務所長から地方更生保護委員会に対して仮出獄申請が行われる」とこうありますから,この刑務所長というのは形式的なというふうに宮澤先生はおっしゃったけれども,要するに所長名でやるわけでしょう。ということは,刑務所が判断するということなんですよ,やはり。
○宮澤(浩)会長 そもそもはね。
○滝鼻委員 アクションを起こすということでしょう。
○鈴木観察課長 審査申請については,この規則の方に……。
○滝鼻委員 アクション起こしてくれなきゃ,ともかく仮出獄の手続ルートに乗らないわけでしょう。
○井嶋委員 これは条文はなかった。規則にあるの。
○鈴木観察課長 いわゆる,刑務所の中での審査を行わなければいけないというのがあります。
○井嶋委員 それはあるけど,申請権限を所長に限っている条文はあるの。
○鈴木観察課長 それはちょっと今,調べておりますけれども。
○井嶋委員 そっちで分からないか。
○鈴木観察課長 ちょっと今手元に……。
○滝鼻委員 多分法務省では,そんなこと当たり前じゃないかとか思っているんだろうけどもね。
○井嶋委員 いやいや,そんなことはありません。それは絶対に書いてあるはずです。
○滝鼻委員 何かに書いてあるんだろうね。
○鈴木観察課長 ちょっとお待ちください。
○井嶋委員 当たり前なんです。書いてあるはずです。
○菊田委員 予防法というのにはないと思います。
○宮澤(浩)会長 そこのところがもし何か問題があるとすれば,外国では家族からも,それから本人からも一応こういう時期になったんだから出たいというふうに言うんですよね。
○滝鼻委員 3分の1とか,無期だったら10年たったら,本人とかあるいは家族とか,それは許すか許さないかはともかくとして,申請権があるのかないのか。なきゃないでいいんだけれども。
○宮澤(浩)会長 ただ法律には,無期の場合には何年で出すとか,有期の場合には3分の1経過したら出すとかという,そういう形式的には仮釈放の要件はこんなときに発生しますよという規定はあるのですよ。
○滝鼻委員 だれが言い出すかというのは,だって……。
○宮澤(浩)会長 それがだから問題なんだというのが,おそらく弁護士会の。
○井嶋委員 だから,本人に与えろというわけでしょう,請求権を。
○鈴木観察課長 犯罪者予防更生法ですね。先ほどちょっと申し上げた29条でございますけれども,「地方委員会は,受刑者又は労役場に留置中の者について監獄の長から,仮出獄,仮出場又は仮退院の申請があった場合には,仮出獄……」
○井嶋委員 受ける方の立場として書いているけれども。
○鈴木観察課長 ですから,ここで仮出獄を監獄の長から……。
○滝鼻委員 「監獄の長」と書いてあるわけですか。
○鈴木観察課長 「監獄の長」ですね。
○滝鼻委員 ということは,そこで限定しているわけでしょう。
○鈴木観察課長 仮出獄について限定して申し上げておりますので,少年院については少年院の長になるわけですけれども。
○滝鼻委員 施設の長と書いてあるわけでしょう。
○鈴木観察課長 「監獄の長」となっています。
○井嶋委員 監獄法を受けていますから,監獄になるんですけどね。29条ね。
○鈴木観察課長 29条です。
○井嶋委員 だから,受ける方から書いているわけですね。書いてあるから,そういう規定の仕方になっている。
○滝鼻委員 そういう意味では,受刑者の権利というのは,要するに明文規定が非常に少ないということですよね,権利にしても何にしても。
○井嶋委員 それは,まあ,そういうものはなかったんでしょうね。規定の書き方としてもね。
○鈴木観察課長 以前から仮出獄は権利かどうかということで議論はされているわけですけれども。
○井嶋委員 権利性があるかどうかという問題が。それはまた議論しましょう,後で。
○滝鼻委員 恩恵だという説もあるわけですか。
○井嶋委員 あります。
○鈴木観察課長 あるというか,そちらの説が現状では強いのではないですか。
○井嶋委員 今はそれで動いています。
 弁護士会なんかの意見もあり,仮釈放の運用そのものが,例えば刑の執行率も相当半分以上より上でなければ,60%,70%までいかないとならないとか,あるいは全体として数が少ないとか,いろんな議論があるわけですが,今お聞きしていて,手続の中で観察官が例えば環境調整するとか,委員がいろんな決定書を書くとか,事務がたくさんあるわけです。そういった事務が,先ほど負担の分をおっしゃったけれども,最近の過剰収容状況に応じてそういうものの数がどんどん上がってきているのかどうか。つまり逆に言えば,議論としてもっと早くしたらどうかという議論があった場合に,観察所ではそういう事務をクリアする以上は増員がこれだけ要るとか,あるいは現在の委員では足らないかどうかとかいったような観点から,ちょっと今の数字の問題を教えてください。
○鈴木観察課長 2点から言えるかと思うのです。一つは,収容者自体が,これは矯正局の方からの御説明があったのではないかと思いますけれども,収容者自体が非常に処遇が困難というか,難しいケースが増えているという問題と,それともう一つは積極的に出すということによって数が増えるという問題と,その二通りあるかと思うのですけれども,先ほど申し上げたように現在の保護観察官の負担状況,それからあと保護司さんに行っていただく状況等を考えますと,私どもの認識としては現在が手いっぱいではないのか。それ以上に,どんどん……。
○井嶋委員 拡大していくことは……。
○鈴木観察課長 それでなくても,現在環境調整というものにおいて,刑務所が増えることによって全員について環境調整をやるわけですので,満期が予想されるような者につきましては一応原則身上調査票というのは全員に送られてくる。そういう中でやっているわけですので,それで増えてきている,負担になってきているということは確かなことです。現実に,以前でしたら親元に行って引き受けてくれるかと言ったら大体すぐオーケーだったのが,いや今はちょっととか何とかいろいろな理由をつけて少なくなってきている。
○井嶋委員 だから,数も増え,実質も悪くなったから非常に負担が多くなっているし,これがリミットだと,こういう御意見ですね。
○鈴木観察課長 はい。
○井嶋委員 そういうことが積み重なってきたから,結果的に日本の仮釈放の運用が全体的に後ろ倒しになっているんだということにはなるんですか。そこまでは……。
○鈴木観察課長 いや,それだけではなくて,やはり適期といいますか,いわゆる積極的に出せという御意見の方もおありになることは確かですけれども,一方では早過ぎるんではないかと。もっと慎重に行えという御意見も,特に被害者団体等を中心にして,現状の中ではあるわけです。そのところのバランスをとるということになると,現状のような,個別に見て,それこそ仮釈放することによって保護観察の中で更生に導いていけるという者が増えて・・・。
○宮澤(浩)会長 それは,そのときそのときの社会の変化等々を踏まえて,保護局長の通達か何かで比較的早く出すようにというようなときもあったし,例の神戸の事件か何かを契機にして,あれは少年の問題ですけれども,もう少し退院についての運用をフレキシブルにしろという形で,もうちょっと慎重にしたらどうだというような,あれ更生保護の現状とかいうのをずっと20年分見たりすると,それがそのときそのときの状況で動くなという感じがしますね。今恐らく被害者団体の圧力なんていうのはもうここ数年の問題で,
我々も音を上げているところなんですよね。
○鈴木観察課長 被害者の意見だけにとらわれても,またこの仮出獄の運用というのは,被害者感情というのか被害者の気持ちを聞きに,仮釈放についての御意見をお聞きしたら,ほとんどの方が,いや断るということをおっしゃるわけです。その辺のところとバランスをとりながらという,ですから社会感情というものの中の一つの要素として,被害者感情は考えさせていただいているというところになるわけですけれども。
○宮澤(浩)会長 それは,審理に関する地方更生保護委員会に属する保護観察官などの予備審査というべきか審理に対する報告書というべきか,そういうようなものの中にも入るのですか,委員の判断だけではなくて。
○鈴木観察課長 基本的には,保護観察官の作る調査書と言っているのですけれども,これにつきましては客観的事実を原則として書く。帰住地に行ったらどういうふうなことをやるつもりであるとか,そういうふうなことをするというふうにやっていますけれども,ただ先ほども申し上げましたように保護観察所で保護観察官を長くやってきた者が多いという状況で,保護観察の中でこれがうまくやっていけるかどうかというところについての意見というのも触れることはできるという形になっておりますけれども。


b矯正局説明


○名取課付 運用のことについては,もう既に御議論入っておるようですけれども,ちょっと矯正局から仮釈放の運用状況について説明をさせていただいて,意見の参考にしていただけたらと思います。
○宮澤(浩)会長 両方絡まるから。
○富山調査官 資料の4ページから6ページまでで,仮出獄の最近10年間の状況を数字で取りまとめたものを資料として用意してあります。
 まず4ページの図1なのですが,これは仮出獄になった人員と受刑者全体の数の推移をグラフにしたものです。折れ線で上っていっているのが,各年の1日平均の受刑者の収容人員です。見ていただきますと,平成5年は3万7,209人しかいなかったのが,平成14年では平均人員で5万5,132と著しい伸びを示しております。
 棒グラフの方です,白い柱のようになっている方が,各年の仮出獄になった受刑者の数です。見ていただきますと,平成5年が1万2,510人。途中少し数が減りますが,平成14年には1万5,310人と伸びてきており,このような状況になります。
 これをパーセンテージで見るということにしたのが,次の5ページのグラフでございます。同じこの10年間について,では受刑者全体の何パーセントの者が仮出獄になっているのか。この場合の数値は,その年に出所した受刑者,これは満期と仮釈がいるわけですが,そのうちの仮出獄になった者の割合を出しております。真ん中のこの丸い折れ線グラフ,これが全受刑者の仮出獄になった者の割合です。年ごとに若干の移動はありますが,おおむね少なくとも56%以上,多いときで58%ぐらいが仮出獄になっている。
 これを初入者と再入者,刑務所に一度しか入ったことがない者を見ますと,上の四角型の折れ線グラフなんですが,多いときには80%を超え,少なくとも75%ぐらいの者は仮出獄になっています。逆に再入者,二度以上刑務所に入っている者につきましては,多いときでも44%程度,少ないときには39%程度というような形で推移をしていることが分かるかと思います。
 次の6ページ目なのですが,これは仮出獄になった者につきまして,刑期の何パーセント程度を執行して仮出獄になったかということをグラフにしたものでございます。これを見ていただきますと,受刑者全体がやはり丸の折れ線ですが,おおむね83%が一番上,平成14年がちょっと落ち込んでいますが,80.9%。刑期の大体8割からもう少しを執行して仮出獄になっているということが見てとれます。これも初入と再入に分けて考えますと,再入者については9割弱から少なくとも87.7%程度の執行で釈放になっている。初入者につきましては,多くても78%ぐらい,少ないと77%ぐらいというあたりで仮出獄になっているということが分かるかと思います。最近10年間の統計数値でございます。以上です。


c仮釈放の在り方


○宮澤(浩)会長 法律では3分の1とあるけれども,実際はこれぐらいいるということですね。
○富山調査官 そうですね。
○宮澤(浩)会長 ということは,やはり選ばれた者が刑務所に入っていくということなのでしょうね。
○菊田委員 これは,5ページも6ページも,要するに残刑が幾らということはこれは分からないわけですから,仮釈放を受けた人間というのはあと3日でも1週間でも仮釈放になればそれが受けたことになるわけですから,この数字はこのまま見て仮釈放になった人間の数が6割,7割いるというのは,それだけでは余り意味がないということだと思うのですけれども。今おっしゃられましたけれども,もともと戦前は仮釈放審査権というのが刑務所にあったわけですよね。それが保護局に移ったというのは,やはり受刑者の帰る社会を担当する側が責任を持っていつ仮釈放するかということで思想が変わったところに,根本的な変化があるわけですよね。だから,そのために常駐保護観察官とか入所と同時に環境調整に入るという作業がずっと出てきたわけですよ。結果的にはその手続が非常に煩雑になってきて,最終的には刑務所内で上級にならなければ仮釈放にならないとか,そういうまず大きな枠組みがありましたよね。と同時に,さっきおっしゃった職権の調査ということはまずやらないということになると,どうしても保護委員会の方が刑務所側の依頼に応じて面接をするということになるわけですから。そうすると,結局は,刑務所側は環境担当をする保護側に任せるということになるし,それで保護の方はどうかというと,今度は逆に自分たちの決定で平均よりも早く出したら,再犯したら社会的非難,あるいは被害者側の感情を害するということでびびるわけですよ。いずれにしても,自分の責任を回避することによって,最終的には受刑者がもう本当に棚の上のぼたもちで,満期釈放の1週間前にしか出さないということで,いろんな形の所内秩序の維持のために利用されるということに対する批判が根本的にあるわけですよ。だから,被害者問題というお話もありましたけれども,それは無視するわけにいきませんけれども,先ほど会長からもありましたけれども,一時不景気のときに行財政改革の中で,長く刑務所に置かないで早く出せ,財政上,という指令が出たことがあるのですね,10年以上前。そのときに,一応早く出したんですよ。それまでは,早く出すと暴力団なんかは特に再犯率が高くなるということでびびっていたのを,思い切ってある程度早く出したけれども,再犯率は上がらなかったんですよ。だから,環境調整といっても一体何が環境調整か。環境調整に手間取るということは,本人の再犯防止の割合とどういうふうにかかわってくるのかということは,まだ科学的な証明もできていなというふうに私は理解しているのですよね。だから,お互いにびびって,結局は有期刑については,1週間でも10日でも出ますよ。だけれども無期になったら,ほとんど昔は10年超えて13~14年で出たものが,最近は常識的に20年経たなければ仮出獄にならないと,こういう現状になってきているわけですよ。だから,そういう点では一番犠牲になっているのは,そういう自分の力で仮釈放を申請したり権利を得るという,そういうシステムがないために,全部周りの組織でお互いに責任をなすりつけ合っているというか,極端に言うとそういう面でシステムが動いていないというような私は印象を持っていますがね。
 それと,先ほどちょっと数字だけお伺いしたいのですけれども,委員さんが非常に忙しいということをおっしゃいましたね。これは確かにそうなのですけれども,これを20人,30人という数字は少年院は入っていないわけですか。少年院の仮釈放の面接もやりますよね。だから,その数字は……。
○鈴木観察課長 これも入ったやつです。それは,委員の負担の……。
○菊田委員 刑務所だけではないですよね,これは。
○鈴木観察課長 観察官の負担の方も,すべて仮出獄者だけじゃなくて。
○菊田委員 ですよね。そうすると,今考えられるのは少年院と婦人補導院はもうほとんどないから,少年院だけですね。その辺のこれは,刑務所だけのが分かればまたあれかと思いますけれども。
○鈴木観察課長 委員の負担の。
○菊田委員 ちょっと違いますよ,数字が。分かりました,とりあえず。
○滝鼻委員 今満期の3日前でも仮出獄は仮出獄だと菊田先生がおっしゃったけれども,ここの刑の執行率,6ページですね,これを見ると,これは満期に対する執行率の話でしょう。
○富山調査官 そうです,はい。
○滝鼻委員 したがって,総数で言えば大体平均して80%,それから再入の人は80%でも90%に近いところ。初めて入った人は77~78%,こういう数字ですよね。だから満期ぎりぎりということはないんじゃないの,これは。
○鈴木観察課長 そこをちょっとはっきりさせておきたいと思ったのですけれども,満期の前の何日とか,少なくとも最低一月以上ということで運用いたしておりまして,現在の平均仮出獄期間というのは5.3か月ほど,仮出獄者の平均の仮出獄期間というのは。10年ほど前に比べますと,約一月ぐらい延びている状況にあります。
○滝鼻委員 それともう一つ,無期の場合はこの執行率の100%は何年にとっているのですか,これは。
○富山調査官 無期の場合は,この統計に入っておりません。
○滝鼻委員 15年でとっているわけではない。
○富山調査官 そうではありません。
○菊田委員 刑期ごとに出せばもっと違ってくると思うのですよ。短期の者と長期の。
○鈴木観察課長 執行率であるとかそういうものは,刑期によって……。
○菊田委員 これだけでは,平均ではほとんど意味がないですよね。
○滝鼻委員 もう一つ基礎的なことを。地方更生保護委員会の地方更生保護委員というのがいらっしゃるわけでしょう。それは1委員会で3人から12人。3人で合意を形成する。それで,一人が30件から40件持って土日もやっている。この委員の方というのは,どんな人なのですか。
○鈴木観察課長 主として私ども保護のプロパーと言いますか,観察所長等を経験した者と,それからあと……。
○滝鼻委員 OB。
○鈴木観察課長 OBといいますか,そういうことです。
○菊田委員 OBじゃなくて,現職の公務員ですよ。
○滝鼻委員 現職。この人たちは,常勤の人なんですか。
○鈴木観察課長 常勤でございます。
○滝鼻委員 常勤の委員。
○鈴木観察課長 はい。
○滝鼻委員 お給料もらって働いているわけ。
○菊田委員 公給の公務員。
○鈴木観察課長 公務員です。そのほかに,矯正の施設の長を経験された方とか,あるいは人事院の方でこういう……。
○滝鼻委員 弁護士なんかは入っていないわけ。
○鈴木観察課長 弁護士は,入っておりません。あと,検察庁で事務局長等をやられた方。
○滝鼻委員 だれが任命するんですか,これ。
○鈴木観察課長 これは法務大臣でございます。
○滝鼻委員 法務大臣といったって,法務大臣が一人一人分かっているわけじゃないんでしょ,これは。形式的には法務大臣だろうけど。
○鈴木観察課長 そういうことで言いますと,人事権は保護局の方で。
○滝鼻委員 保護局が選んでいるんでしょう。
○鈴木観察課長 ということになります。
○宮澤(浩)会長 要するに,通常の保護観察官の方が早く定年になるわけですか,委員……。
○鈴木観察課長 いわゆる一般の公務員は60歳が定年ですけれども,委員の場合は63歳までできるという。
○井嶋委員 再雇用みたいな格好で。
○滝鼻委員 優秀な人がそうなるわけ。
○井嶋委員 優秀な人が任命される,選考されて。
○滝鼻委員 刑務所の所長さんをやった人とか。
○井嶋委員 保護観察所の人と,刑務所の人と,検察の事務官。
○鈴木観察課長 多くは保護観察所の所長の経験者でございますけれども。
○井嶋委員 検察の事務官。
○鈴木観察課長 多くは,保護観察所の所長の経験者ということなのですが。
○井嶋委員 多いのは,圧倒的に保護観察の系統です。
○菊田委員 ですから,先ほどおっしゃった環境調整が非常に困難になっているとおっしゃられることは事実ですけれども,環境調整というのは非常に漠然としていまして,現実問題として。
○鈴木観察課長 引き受けていいよと。
○菊田委員 ですから,私は保護局だけを責めることはできないということを申し上げたいのです。と言うのは,やはりほかのところでも議論してきましたけれども,刑務所での例えば受刑者との面会一つとっても,親しい友人とか家族はできるけれども,非常に面会が限られていますよ,30分以内とか何か。いろんなことで社会復帰後の相談をしようと思っても,30分しか面会できないとかいろんなことがあるわけですよ。だから,そういうことをトータル含めて環境調整にやはり家族との絆というものを間にもっとするということとの大きな枠の中で考えていかないと,環境調整がこんなになっているから,だからちょっと審査もこんなのだという,立場としては分かりますけれども,矯正局だけのことではない。大きな中で考えなければならないと思いますよ。
 それと,環境調整が今は引受人といっても,引受人というものがどのようなもっと幅があるものであってもいいと思うんですよ。何も家族へ行かなくたって,いろんなところがあるわけですよ。だから,極端に言っていろんな組織の中に入るのでも,これは再犯を起こしていないというデータもありますから,組織に帰ることが必ずしも環境がよくないというなことからもう取っ払って,最も広い意味で引受人というものを考えていく。これは保護局だけの話ではないけれども,社会全体がやはり考えないといかんと思いますよ。
○滝鼻委員 そういう議論はここでやるんじゃなくて,彼に議論吹っかけたってしょうがないんじゃないの。
○菊田委員 おっしゃるのは,環境調整が困難だから非常に手続が遅れていると,こういうことをおっしゃるから,そういう意味の幅広い考え方を持ってもらいたいということを申し上げているわけなんですよ。
○井嶋委員 こちら向きの議論でなければおかしいので。
○滝鼻委員 それともう一つ,お礼参りというのはあるんですか。要するに,仮出獄した,しかし,それはもちろん仮出獄条件に反するわけだろうけれども,被害者の家族のところに行ったり,被害者のところへ行ったり,あるいは法廷に出た証人のところに行ったり,脅かしたとか,威迫したとか,そういうケースというのはありますか。
○鈴木観察課長 余り聞いてはおりませんけれども,もし可能性としてあるとすれば,現在は再被害防止の手続をとることになる。警察の方にいついつ仮出獄する。被害者の方が希望して,そういうことで危険であるとかということで出所情報等をお伝えすると同時に,警察の方にそういうことで。
○滝鼻委員 それはどんな事件でも,そうやっているんですか。
○鈴木観察課長 それは被害者の方が希望したりする場合ですね。
○滝鼻委員 被害者は分からないじゃない,いつ出るかなんてことは。
○鈴木観察課長 それをお伝えする。
○滝鼻委員 それはすべての事件について,被害者に,あなたを傷つけた人は何月何日に出ますよ。
○鈴木観察課長 それは被害者が希望されれば,出所情報というのはお伝えするという制度になっています。
○滝鼻委員 被害者はいつの段階で希望するのですか。
○鈴木観察課長 最初です。裁判の段階で確定したりしたときに。
○滝鼻委員 そういう手続があるわけですか。
○鈴木観察課長 出所情報につきましての。現在,2~3年ほど前から出所情報につきまして。
○滝鼻委員 そのときに,被害者の意見も聞くわけね。絶対出すなとか,あるいはある程度改善されたら出してもいいとか。
○鈴木観察課長 大体そういうことを希望される,出所情報について教えてほしいということを希望される方というのは,基本的には余り被害者感情というのはよくない方。
○滝鼻委員 要するに,出さないでくれという。
○鈴木観察課長 ストレートではないですけれども。またこれは,一応委員会の方で改めて仮出獄の段階におきまして重要な事件につきましてはそのお気持ちをお聞きするとかという手続をとるわけです。
○井嶋委員 もう一つ質問していいですか。非常に細かく見たらの場合ですけれども,この6ページの表を見て,先ほどの矯正の説明のグラフがあるでしょう。これ見ると,刑の執行率なのですけれども,平均で見ても大体ずっと横なんですね。先ほど滝鼻さん御指摘になったように。ただ,14年のところで82.2が80.9と。この表で見る限りそんなに大変な下降じゃないけれども,この数で言えば相当な数が早くなっているという印象があるのですが,他方先ほど私冒頭で御質問したように,非常に入所者の数がどんどん増えていって,過剰収容になっている。事務が増えてきた。にもかかわらず,13年までの統計を見ると,刑の執行率で見るとずっと横ばい,全くほとんど変わりない。14年にぐっと統計で見る限り下がっているわけですね。非常に事務が大変忙しくて負担が大変で,かつ入所者が増えて急増しつつあるのに,逆に刑の執行率が下がってきているということに,何か最近そういう努力をされているのか,何かこの辺の事情は説明できますか。
○鈴木観察課長 これにつきましては,特に保護局の方で指示したとかそういうことはございませんで,たまたまこういう形になったのか。それと被収容者の増えるのと,実際に仮出獄に至るまでにはタイムラグがございますので。
○井嶋委員 相当ありますね。
○鈴木観察課長 そういうのがありますけれども,これがどういう事情によって下がったのか,それについてはちょっと承知しておりませんけれども。
○井嶋委員 結局,今度は逆に事務が過重になり,人員が増えてもずっと同じ率でいくということは,大体その辺に目安を置いて事務を運用しているということの結果なのかな。
○鈴木観察課長 結局裁判における判例に基づいてやっているのと同じように,大体先例といいますか,いわゆる相場といいますか,みたいなことで運用していくというふうな。
○井嶋委員 だから何年経ったからと,そういうことですね。
○鈴木観察課長 ではないのかなというふうに。
○井嶋委員 そういう中で下がったのが意味がちょっとあるのかなという気がしたのですが。特別の措置をとられたわけではないんですね。
○成田委員 それは全然関係ないんでしょう。
○井嶋委員 だけども,早くなっていた。
○滝鼻委員 私は,今,井嶋さんが言ったような疑問持ったね。これは増えてきたから,在庫調整というのはあれだけれども,出したのかなと思った。
○井嶋委員 そういうこともあるかもしれないしと思ったけれども,説明は先ほど会長が言われたような別に通達が最近出たわけではないのですか。
○鈴木観察課長 それが出たのはもう20年ほど前,58年,59年のころでございますけれども。
○菊田委員 ただそのころの仮釈率というのは,執行率がもっと低かったはずですよ。ずっと上がってきている。だから,もっと長期にわたって統計見れば,これは80なんてここ10何年以上の間ですよ。その前は,もっと執行率は低かったはずですよ。
○滝鼻委員 執行率が低いということは,早く出しているということ。
○菊田委員 そうです。
○鈴木観察課長 多分それは違うというふうに思っておりますけれども。大体これは先ほど宮澤先生がおっしゃったような積極化策というふうなのを打ち出したときから,このぐらいの数字のところでの一つのめどみたいなものがあるというところだと思います。それ以前は,相当逆に執行率が高いといいますか,いわゆる先生がおっしゃったような例えば2週間ぐらいの仮釈だとかそういうのもあったりしたことは事実です。20年以上前ですね。それが今はもう,少なくとも保護観察の期間というのを確保するという意味から,一月以上というふうなことになっていまして,先ほどお示しした今の平均で言うと5.3か月分ぐらいが仮出獄になっている。
○宮澤(浩)会長 今のところも重要なんですが,保護観察をやるのにある程度の期間を確保しないと。なぜかと言うと,日本の法制では残刑主義だから,残った刑の間しか保護観察を科せられないわけです。そこでどうしても,少しでもとにかく保護観察かけて,出てから後少し慣らし運転の時間を持ちたいというのが,やはり保護としては大事なんですよね。
○滝鼻委員 保護観察期間というのは,満期を過ぎちゃいけないんですか。
○宮澤(浩)会長 そうなんです。残刑期間。
○鈴木観察課長 ですから,1年2か月の執行刑期であれば,そのうち1年で仮出獄しますと,残りの2か月を保護観察を受けるというふうな。
○滝鼻委員 だけど,数字とか証明はできないかもしれないけれども,保護観察と刑務所と,何か余り激変はないわけですよね。何か,それ一体となった相場感みたいなのはあるんじゃないですか。そういうのはない。
○鈴木観察課長 相場感と言いますか,例えばこれは類推になりますけれども,申請をする方の立場の刑務所長さんも,大体このケースであればどのくらいかなとか。
○滝鼻委員 あうんの呼吸みたいなのがあるの。
○鈴木観察課長 もお考えになられるのではないかというふうには思いますね。余りとっぴなことで出されても,多分棄却されるというだけになってしまうという。
○宮澤(浩)会長 余り棄却率が高いといけないんですよね。
○富山調査官 棄却率というのは非常に少ない,せいぜい2~3%とかそういうふうなものというか。
○滝鼻委員 そうすると,所長も大体分かっているわけだな。これならいけそうだなというのが。
○井嶋委員 だから,先ほど会長が言われたように,裁判と同じで委員会の判例が蓄積されてくるから,それを見ながらやるからどうしてもそうなってくる。
○菊田委員 そういうものを早く申請したら棄却されるとなると,やはり申請した側のメンツにかかわるから,やはり十分検討してもうほとんど通るという見込みでやるから,どうしてもどんどんどんどん遅れるわけですよ,申請それ自体が。
○滝鼻委員 個人差ってないんでしょうね。所長によって個人差というのは,多分ね。
○宮澤(浩)会長 それは実態調査してみないと分からないですね。あるいは委員会ごとに,この委員会は甘いけど,こっちは辛いというようなことが,実態調査なら出てくるけれども,外国ではね。でも日本ではそこまではやはりね。
○鈴木観察課長 それに委員会の所管する刑務所も,A級のところとB級のところ,例えばA級が多いところはやはり執行率も下がったりとか,そういう問題がありますから,一律にこの委員会が甘い,この委員会は厳しいとかと言えないかと思いますけれども,ただ委員会制度をとっている準司法的機関として扱っている立場で言いますと,ある程度のばらつきというのは,これは制度としてのやむを得ない範囲内なのかなというふうには思いますけれども。
○井嶋委員 ただこの地方委員会というのは,管区に置いてあるのであって各都市ごとにあるわけではありませんから,高検,高裁所在地と同じところにある。
○滝鼻委員 支部もないんですね,これは。沖縄だったら,福岡まで来なければ。
○鈴木観察課長 沖縄には,分室というのを置いているのですけれども。一人の常勤の委員と二人の非常勤委員で沖縄の中でのやつをやっています。それ以外は……。
○滝鼻委員 土日もないんですか,今。宅調しているわけ。
○鈴木観察課長 まあ,結局施設へ行って面接するわけですね。それの結果等を書く。
○滝鼻委員 報酬はどのぐらいになるんですか,この更生保護委員というのは。
○鈴木観察課長 これは保護観察所長とか刑務所長とか経験された方がなっておられる。そのまま引き続いていますので,給料につきましては。
○滝鼻委員 下がらないわけ。
○鈴木観察課長 刑務所長さんの場合は,ちょっと下がる場合があるかもしれませんけれども。級で言いますと,9級から11級とか,そういうふうな形になるわけですけれども。
○滝鼻委員 63歳が定年だと言ったでしょう。
○鈴木観察課長 原則ですね。それを超える人はいないんですけれども,その前にやめるという方も中にはおられますけれども。
○滝鼻委員 それで公務員の定年は60歳でしょう。60代の人がほとんどと,こういうことですね。60~62歳ぐらいまで。
○鈴木観察課長 実質は50代の方もおられますけれども。
○滝鼻委員 だけど,高齢者と言っては悪いけれども,そうばりばりやるような体力や気力というのは,もう難しいですよね。
○鈴木観察課長 その辺はどういうふうに……。
○宮澤(浩)会長 保護観察官もおられるでしょうし,実際に事務処理をする,判断をする。
○滝鼻委員 事務局があるわけ。
○宮澤(浩)会長 事務局と言うとあれですけれども,ケースをきちんと調べたり何なり,細かいことは。
○鈴木観察課長 これは,面接した結果につきましては,その審理票というものに,これもなるべく合理化するようにやっているわけですけれども,それに整理するというふうなことで,その書類づくり等があるというふうなことがありますけれども。
○滝鼻委員 大体保護観察官が作成する調査書とおっしゃいましたね。これを見てやるのですね。
○鈴木観察課長 これも一つの資料。
○滝鼻委員 尊重するわけですね。
○鈴木観察課長 尊重といいますか,これも一つの資料でございまして,あと刑務所にあるまたこれもいろんな資料,身分帳であるとかそういうのもまた印刷して見られたりとかという形の中でやっていく。いわゆる委員の一番重要なのは,心証を得るということになりますので,面接した上で。
○滝鼻委員 じゃ,調査書の言いなりになることはないわけだね。
○宮澤(浩)会長 それはないと思いますけれどね。
○鈴木観察課長 それはやはり観点が違いますので。観察官の作る調査書というのは,あくまでもやはり基礎資料という,いろんな情報,本人の今までの経歴であるとか,それから仮出獄したときにはどういう成績だったとか,そういうふうなもの等も含めて書いてあるわけです。そういうのを総合的に見ながら,委員さんが会って本人と直接面接した上で心証を得るということになるわけです。
○成田委員 私,この5ページのグラフを見ていまして,これはどういうことなのかなと。5ページの一番上の四角ですね。この人たちは,初入所で,仮出獄されたパーセンテージ。
○鈴木観察課長 そうですね。
○成田委員 それで,再入で仮出獄したというのは,そのパーセンテージが低くなっているということなんですね。ところが,再入獄したという人たちは仮出獄というのはなかなかさせないということなんでしょうね。それで,私これ見てて,仮出獄というのをやはり制度としてやった方がいいのか,あるいはもうこういうものは一つのグラフ化して,大体社会的な精神環境の変化というのはありますけれども,入獄した人たちの実際再犯率だとか何だとかというものから判断して,何かある数値ができないのか。何かそこに仮出獄を本来的にするべきじゃないのか,あるいはやはりしなくてはいけないのか,何かそういうようなことを考える必要はないのかなという気がしたんですよね。
○宮澤(浩)会長 でも,どうでしょうね。国際的に見て仮出獄採用してない国なんて,ないんじゃないでしょうか。だから,全部それぞれその人その人によって点数でもってあらかじめ全部決めてしまうなんていうのはやはりいけないので,所内にいるそこでの成績というようなものを,やはりダイナミックに考えて。それは結論してはこのぐらいのパーセンテージということはありますけれども,でもこの中にいろんなのがあって,それの集約がこういうパーセンテージになっているというふうに考えた方がよろしいかと。
○成田委員 これは,要するに平成5年~14年までの10年ですよね。その前にもおそらくデータがあったと思うのですけれども,私はこのカーブの線というのは大分違っているんじゃないかしらというような気がしますね。
○宮澤(浩)会長 余り大きな開きはないと思いますよ。
○井嶋委員 どうでしょう。10年単位で見て。
○鈴木観察課長 宮澤先生がおっしゃったように,余りこれについてそんなに極端に,それは制度ができた昭和20年代,24年からですけれども,その当時は別としまして,ある程度安定した中では大体このような状況ではないか。
○成田委員 それであれば,私はそれでいいと思うのですが。むしろ仮出獄,こういうような形でやるべきではないかと。何パーセントはやったっていいのではないかと。しかし仮出獄,なぜ出させるのか。おそらくは早く出して,早く社会に出したいというものもあるし,改善されていると,あるいは刑務所がもういっぱいになるからある程度出した方がいいのか,何か。
○菊田委員 成田先生がおっしゃるのは,私は分かるんですよ。というのは,そもそも仮釈放というのは,特にこの3号観察という保護観察は,法律上もう御存じのように本当に社会内処遇で積極的にそういうものを処遇するという体制ができていないんです,少年の保護観察なんかと比べて。ですから,これは本当に仮釈放やるぞという所内秩序のための維持として,道具として使われているという弊害面が非常に多いのです。だから,また説教するような形になりますけれども,要するにあと1週間とか,あるいは1か月でも2か月でもいいですよ。2か月ぐらいで仮釈放もらうんなら,もうやりたいことやって満期までいようという受刑者も出てくるんですよ。それは,かえって仮釈放もらった方が保護観察所へ行かなければいけないし,行っても再犯,犯さない限りは取消しにならないということもあるけれども,いずれにしても出てからまだ引きずるということよりも満期で出た方がいいという,開き直るやつが出てくるんですよ。だから,そういう意味でこれは秩序維持のために使われているという面が非常に強いです。だから,この辺をどう,3分の1なら3分の1で出すという勇気を持ってやるような対策はできないか,あるいは外国でとっているようにグッドタイムシステムというように,自分の努力で自分の刑期を決めていくということを,私はこれ実は別の理論がありますけれども,提案している人もありますよ。だから,そういう形で自動的に努力して早く出るという形をとらない限り,先ほどから私が申し上げているように,受け入れる側も出す方も自分の責任,あるいは被害者とか,社会の感情を重視すればするほど出したくないんですよ。そういう点で,せっかくおとなしくやってきてもいろんな形で嫌がらせされて,規則違反だと言われて,累進処遇を下げられたり,そしてもう物理的に仮釈放できないような,申請できないようなシステムになっていたり,いろんな弊害がありますよ。だから,そういうことをトータルに考えて,抜本的なことを,これこそ保護局に言ったってしようがないと思いますけれども。
○鈴木観察課長 例えば再犯可能性がある者とか,被害者感情が悪いような受刑者をどんどん出せばいいのかというところの国民感情が,果たしてそれで納得してくださるのか。
○菊田委員 出せと言っていませんよ。
○鈴木観察課長 保護観察において,社会の中で処遇しなければいけないわけですね。その中で,国民の皆さんの支持がなかったら,仮出獄制度そのものについてももう崩壊しますし,保護観察の実施も難しくなってくる。
○菊田委員 そのとおりです。だけれども,満期になったってどうせ出さなければいけないんだから,それを2か月早く出すか出さないか,それは大きな問題ではなくなって,だから刑務所処遇というものと出てからの問題というものをトータルに考えて,余り仮釈放がどうのこうのということを考えるようなことが現実にはできていないということを申し上げているのです。
○鈴木観察課長 成田先生がちょっとおっしゃられていた,仮出獄した方がいいのかどうかというところをちょっと説明させていただきたいと思いますけれども,ほんのあるいは一月とか二月という短い保護観察であったとしても,満期でぼっと社会に放り出すというよりは,やはりそこでソフトランディングさせるように何とか少しでも援助してやりながらしていくというのが大事なんじゃないかなと。
○成田委員 どちらが大事なんだという価値判断をするならしたらいいじゃないかと。
○菊田委員 ですから,仮釈放できるような身分の者は,やはり中間施設へ昼間行って夜刑務所へ帰ってくるとか,そういうような形での開かれた刑務所の方向づけをしていけば,いきなり明日満期で出すというようなことにはならないわけで,トータルにやはりいろんな工夫はできると思うのですよ。これもまた……。
○鈴木観察課長 それはちょっと仮釈放と私どもの所管とは違うところの話で。
○菊田委員 だから,さっきから私申し上げているのは,非常に消極的になっているのですよ,出すことに。いろんなことを出してきて。
○宮澤(浩)会長 それは,もう少し20~30年で見た方がいい議論かもしれませんよ。特にこの数年というのは,やはり相当施設があっぷあっぷしているでしょうしね。ですから。
○成田委員 だから私は,仮出獄はやはりこの制度は持続すべきだと。そうすると,やはりこういう問題に関しては,もっとシビアにやっていこうだとかいうようなものがなされていくことの方が大切なんじゃないかと。
○宮澤(浩)会長 ということは,こうではないでしょうか。ある意味では,危険予測ですよね。出して大丈夫かという予測が,今のところは委員さんの経験,勘がそれを理由づけるところの観察官の資料の分析とか,あるいは施設から来る恐らく現場の担当さんだとかそういう人たちの意見なんかが施設の中の,名前は何か忘れましたけれども,そういう審査会みたいなのは施設でもあるんでしょう,違いますか。
○富山調査官 もちろんございます。
○宮澤(浩)会長 それで,ある程度施設長の名において申請するための材料,そこに予測があると思うのです。これは大丈夫かと。
○鈴木観察課長 私は,今の仮出獄制度が菊田先生おっしゃるように刑務所の秩序維持といいますか,そういうふうにあるいは活用されているというのが全くないとは言えないと思います。ただ,収容者の励みにもなっているだろうと思いますし,また向上すれば執行期間の調整というのが実質なされるというふうなことになる。それからまた,保護観察によって再犯防止もできる,更生を促進することができるということから言えば,この仮出獄というのは現状の中でやっている,できるだけ全体として一番最後に申し上げましたけれども,仮出獄の再犯率を下げようと思えば,どんどん仮出獄する人間を本当に絞り込んでいけばいいわけですけれども,そうではなくて,そういうところのバランス,出所者全部の仮出獄を運用する中で再犯をどう下げていくか,そこを目指して私どもはやっているところでございますので,そこをちょっと御理解いただければと思います。ですから,何でも出せばいいというわけでもないし,また出さなければいいというものでもない。その中でどうバランスをとっていくかというところが,一番私どもに求められているところではないか。国民の皆さんが納得してくださるところはどこなのかというところです。
○滝鼻委員 仮出獄の4条件ってさっきありましたよね。a,b,cがこれは似たような条件なんだけれども。
○鈴木観察課長 改悛というようなことかと思いますけれども。
○滝鼻委員 dの社会の感情なんですが,社会の感情の中には犯罪被害者の感情も含まれている。
○鈴木観察課長 一つの要素として入るのではないか。
○滝鼻委員 そのほかは何なんですか,この社会の感情というのは。
○菊田委員 やはり凶悪なことをした人間に対して,そんな早いのは困るという一般的な抽象的な議論があるんですよ。
○滝鼻委員 被害者の感情は被害者特定できるからそれは聞いてみれば分かるんだけれども,そのほかの社会の感情というのは何なんですか。
○鈴木観察課長 一つとして言いますと,私どもの一つの判断材料にいたしておりますのは,公益の代表としての検察官の意見を聞くとかという形で,重要凶悪事件なんかにつきましてはそういう形でやったりもいたしておりますし,またいわゆる環境調整を担当する保護司さんが地域の中でうわさであるとか,そういうふうなもの等を状況をつかまえまして,その地域の中でどういうふうにうわさされているか,評価されているかということを考えて。
○滝鼻委員 地域を担当している保護観察官。
○鈴木観察課長 保護司です。保護司の皆さんは,民間の方で地域に住んでおられるわけですので,そういう方がその犯罪地区のところで,今もうここ何年もたった中でもまだそれがうわさになっている者。
○宮澤(浩)会長 あいつもう出てくるのというような,そういうことでしょう。
○鈴木観察課長 そういうようなものを総合的に見ながら考えられているというようなことがあります。
○滝鼻委員 検察官というのは,起訴した検察官ですか。
○鈴木観察課長 ではなくて,事件が係属した検察庁の検察官です。
○滝鼻委員 起訴した検察庁の検察官。
○鈴木観察課長 記録に当たられた上で,御意見を言っていただくという形になっております。
○宮澤(浩)会長 それは,特別に凶悪な事件ですよね。
○鈴木観察課長 例えば無期とか長期のケースとかということになりますけれども。
○滝鼻委員 これをどういうふうに更生保護委員会に持ち出すのですか。
○鈴木観察課長 これは事務局の方で調査して。
○滝鼻委員 何か数値化するような表でもあるのですか。
○鈴木観察課長 いや,それは特にございません。
○滝鼻委員 今おっしゃったのは,被害者,検察官の意見,それから保護司。
○鈴木観察課長 社会の感情というものを代表するのかなと思っているわけですけれども。
○滝鼻委員 公益の代表者だからね。それから保護司。大体この三者ですか。
○鈴木観察課長 一般的には,そういうことになるかと思います。あとは,特に重要凶悪であればマスコミの論調であるとか,そういうのも参考にはなりますけれども,そのすべてのケースについて報道されるわけではありませんので。
○成田委員 それは,極秘で調べるわけ,保護観察官なり何なり,こういう……。
○鈴木観察課長 基本的には,公表して調べるということはいたしておりませんし,また被害者の方には保護観察官が直接会ってお聞きする。
○成田委員 公表してあれするといったら大変だね。私は,酒鬼薔薇何とかっているじゃないですか。ああいうのは,もう出てくるよという恐怖があるわけですよ,世論として。特にその子弟を持つ方たちは。こういうことに対する私は刑務所というのは一つのコストなんだと,これは。何とか国で保護する,逆にね。何か,そういう面があるんじゃないかなと。酒鬼薔薇だけじゃないですよ。何か今,いろいろ。
○宮澤(浩)会長 それはそうなんですけれども,やはり成人なり少年なりでかつて罪を犯したからといって,未来永劫にわたってレッテルが張られるのでは,これはちょっと非人間的な制度になりますから。
○成田委員 しかし,そういう判断を間違えて出した,これがまた実際やっているケースというのは。
○宮澤(浩)会長 でも,やはりああいうケースでも,医療少年院におそらく今でもいるのか,そこはよく知りませんけれども,やはり出しても大丈夫だというふうに担当した少年院の教官とか心理技官という方がおられるかどうか知りませんが,そういう方たちがいろいろ考えて,そして社会のことも考え,かつ少年のことも考えて出すことに決断をされるとすれば,我々はやはりそれに従わざるを得ないなというのが僕の意見なんですが,それに対して余り世間の感情とかいうようなことを強調し過ぎると,これは刑事政策的に言って私は非常に保守的なものになってしまうので,それはやはり気をつけなければいけないのではないかなというふうに私は考えるのです。正に,それこそ専門家を信頼する以外にないですもの。おそらく非常に慎重に判断しておられると思いますよ。
 実を言いますと,最近ロンドンへ行きましてそこで被害者の関係のことで勉強してきたのですが,その中で一つ出てきたのは,法律上重大な危険な者について,それの仮出所の情報を必ず伝えなければいけない。それをやるのが,イギリスの制度では保護観察官なんですね。もっともイギリスの場合は保護観察官のうちのプロベーション,それから特にスペシャリストなのかどうか知りませんが,パロールについても裁判所所属の保護観察官というのがおられるらしいのですけれども,その人が判断して,そういう人を社会に出すときにはその被害者とそれからその者が帰っていくところの管轄の警察に,それを通報する義務があるというのですね。そうすると,保護観察官の良心と,それからその法律によって通報しなければならない,被害者を保護するためにそういうことをしなければならないという,その役割の良心とが衝突して非常に苦しまないだろうかと質問したことがあるのですけれども,実際は大変な問題を背負い込んでしまったというのが正直なところのようですね。ですから,その辺は今後日本ではもっと重大な問題として出てくると思うのです。イギリスで,例の二人の10歳の少年が2歳か3歳の子を殺して,それで列車にひかせたという大事件が10年前にあった。あの二人の少年は,もう出ているのですね。出る前に,戸籍を全部変えたんだそうです。名前も変えたし,過去を消した。
○成田委員 それは本人が。
○宮澤(浩)会長 いや,政府がやったんですって。日本は,そこまで徹底はしないでしょう。だから,そこで中途半端になるので,おそらく政府が自分の責任において二人の少年を,過去にそんなひどいことをしたんだけれども,その人間にも人生があるわけだし出直そうと決意して,その決意を実現すべく一生懸命努力した結果,これは出してもいい。そのかわりもう過去を消すのだ。違う人間として生まれ変わったんだということを制度としてやってしまったというところに,イギリスは日本と違ってそういうことを徹底して責任持って国がやるというのはすごいことだなと,話を聞きながら思いましたけれども。だから,日本はそこまでいかないとするならば,ではどうするか。これは今の既存の法制度を使って,矯正の方々のお考えと法のお考えがうまく合致して,そして立ち直って社会へ戻る人のためになるようにするには,どういうふうにすればいいかということを考えるのは,我々日本の法律家の,あるいはこういうところで法律家に対して制度提案をする人たちの判断だと思いますけれども。
○成田委員 まあ,そういう考え方なら考え方というのをはっきり納得できれば,私はいいと思うのですよね,半端じゃなくて。それは,おれは反対だという人もいるでしょうけれども。
○滝鼻委員 かなりの司法予算使っているんでしょうね。
○宮澤(浩)会長 イギリスですか。もちろん,ものすごいです。
○滝鼻委員 内務省か何かでしょう。あそこは。
○宮澤(浩)会長 ホームオフィスという,巨大な官庁があるんです。
○滝鼻委員 だから,そういうのを我々国民が社会的費用として甘受できるかどうかという一つの司法に対する成熟度みたいなものもありますよね。
○宮澤(浩)会長 ありますね。イギリス一国の予算が,EUの各国の予算の総額を使っているというのです。だから,やはり本気,半端じゃないなということを感じました。
○菊田委員 ですから,その路線でいけば,やはり今駐在保護観察官なんて各刑務所にいますけれども,それは全国の刑務所にいるわけじゃないでしょう。だから,ぽつんぽつんしか数がいないからできないんですよ。やはり全国の刑務所にそういう人たちが駐在して,そして入ったと同時に社会の処遇との連携を常にやりながら保護司と連絡をとるという形で密接に,つまり開かれた刑務所の一環として保護観察官とかいろんなカウンセラーが入り込んで,社会環境との間を調整するとか,本当に出入りする人がたくさん出てこなければいけないですよね。という意味では,人を必要とするし,予算を必要とするし,金も使わなければいけないんですよ。今の保護観察官なんて全然,戦後1,000人からスタートして全然変わっていないですから。今,事実上800人。それは戦後50年経っても1,000人が変わってないので,しかも事実上……。
○滝鼻委員 医者の問題は別の分科会でやっているけれども,医者すら刑務所には行きたくないという医者が多いのだから,そういう誇りを持った職業としての……。
○菊田委員 ちょっと,まだ今私は発言中だから,ちょっと待ってください。保護観察官が戦後できて50年,約1,000人のところから始まって,今ほとんどそのままなんですよ。事実上実務的に働いているのは800人ぐらいです。全国でですよ。ところが警察官というのが,年に何千人と増えているんです,毎年ですよ。警察官と保護観察官は全然また違うけれども,社会内処遇をする保護観察官に対して全くといっていいぐらい金使ってないですよ。これは,やはりいろんな意味で社会内処遇とかあるいは刑務所の金使うことを思えば,社会内で結局刑務所へ入っている人たちを引き受けて社会内で処遇しているわけですから,これはもっともっと金をかけるべきなのですよ。全くかけてないです。そういう現状です。
○宮澤(浩)会長 それはだから,結局国民の意識にもかかわるし。目の前に見えるんだもん,警察官の場合は。保護観察官は見えない。
○菊田委員 そうじゃなくて,刑務所に金をかけることから比較すれば,余りにもかけなさ過ぎているということを。
○滝鼻委員 どういう人がなるんですか。
○宮澤(浩)会長 国家公務員です。
○滝鼻委員 大学卒業して保護観察官になるわけ。
○宮澤(浩)会長 心理学,社会学,教育学という三つの……。
○滝鼻委員 今,なり手は多いのですか。
○菊田委員 多いですよ。多いけれども,定員が限られているから,非常に厳しい試験があるのです。
○滝鼻委員 刑務官はどうですか。
○菊田委員 刑務官も,それは今は就職難ですからね。だから刑務官になるのも難しくなってきます。
○成田委員 この間栃木刑務所へ行ったら,女性の刑務官,なる人がいないと言ってましたね。だから,大変だと思う。
○滝鼻委員 職業,プロフェッションとしての誇りというのを,やはり高めなきゃいけないよね。
○成田委員 それもあるね。
○菊田委員 意識が高いですよ。家裁調査官と同等の意識で,非常にすぐれた人がたくさん戦後採用されているわけです。いかんせん数が少ないですから,処理できないのですよ。だから,民間の保護司に,5万2,500人の保護司に頼ってしまって,保護司を管理するという仕事,ケースワーカーの仕事よりもデスクワークの仕事に追われて,現実のデスクワークも非常にできにくくなっている。
○滝鼻委員 保護司というのはボランティアでしょう。
○菊田委員 ボランティアです。だからその人たちに頼っちゃって,その人たちを管理することのために保護観察官が追われてしまっているのですよ。だから,これは本当に広い意味での行刑の一環としては,これは我々と関係ないにしても,保護観察官は抜本的に見直してほしいと思いますね。増やすべきです。
○成田委員 鶏と卵じゃないけれども,ニューヨークの治安がこれだけよくなったというのは,前の市長がかなり警官を増やしたでしょう。そういうことで犯罪率が少なくなった。私は今,日本は非常に検挙率も下がっているということで,かなり悪辣な犯罪も起こっている。むしろ入った刑務所で,これもいっぱいだ。起こらないように警察官でも増やしてやった方が,コストとしては……。
○滝鼻委員 デスクワークが多過ぎるんじゃないのかな。警察官もそうなのですよね。足りない,足りないと言いながら,問題はやはり警察官のデスクワークが多過ぎちゃって,実際に町歩くパトロールの時間がなくなる。今菊田さんの話を聞いても,保護観察官が本当に受刑者との間の信頼関係とか……。
○宮澤(浩)会長 ちょっと交通整理させてください。今日の式次第では,仮釈放の在り方というテーマにもう入ったわけで,これは保護局だけの問題ではありませんので,いったん保護局の観察課長にこちらの席へ戻っていただいて,今我々の議論をもう少し続けて,そしてそれぞれ保護局では我々の議論をどうお考えになりますとか,矯正の方ではどうでしょうかとかというふうなことで,3時半ちょっと回ったぐらいのところで第1議題を終えて,次の議題へというふうに進ませていただきたいと思いますが。かなりもうこの仮釈放の在り方の方へ入っていると思います。
○井嶋委員 私も今日は仮釈の在り方だからというので意見を申し上げようと思ったところなのですが,仮釈放をどうするかという問題については,先ほど成田委員が問題提起をされましたけれども,先ほど鈴木課長が説明されたように,やはり今後ももちろん再犯率をできるだけ低くするということは目的ではありますけれども,目の前の当面の目的であっても,やはりそれをもっと広く及ぼしたいという保護局の考え方というのは,私は賛成したいと思います。そして,やはりこういう過剰収容状態になっていますから,そのことがひるがえって過剰収容の一つの解決のあれに資するのであれば,それは副次的な効果として採用できるのではないかと思うわけでありますが,広く及ぼしたいと保護局がおっしゃっても,先ほど来手続の説明がありましたように,そもそもこの仮釈放手続というのは矯正局が,矯正の方がアクションを起こさなければ始まらない制度であるということなのですから,保護局が一人広く及ぼしたいと言って,さあいらっしゃいと言っていても,矯正局の方から来なければ何もならない。その矯正局の方がどういう考え方を持っているか,あるいは矯正局と保護局がその辺についてどういうすり合わせをするのか,どういう方針を毎年協議しながら打ち立てていくのかということが大事なのであって,そのことを抜きにしては,一つの局だけを責めるわけにはいかない。少なくとも保護局については,かなり受け身になっているという形がありますので,これをやはり少しでも積極化するために,一つの方法として先ほど菊田委員が言われたような駐在保護観察官を各施設ごとに置くぐらい増員をするというようなことがあれば,それは連絡が密になるから,その分矯正局のアクションが多くなり,保護局の方がそれを受けられるという形で広く及ぼすことができるということになるのだろうと思います。
 そういう意味で,この仮釈放手続が持っている現状を,やはり両局が現在の過剰収容そして処遇困難者を抱えている矯正の現状を踏まえて,もう一度矯正局と保護局がしっかり協議をして,そして広く及ぼす方法について更に具体化を進めていただいて,かつそれに応じて保護局の方の増員もあわせて大いに検討してもらうということが大事なのだろうと思います。制度としては,この制度をより広く運用していく以外にないのだろうと思います。ただ,先ほど負担率のことをちょっと言われましたけれども,今滝鼻さんも言われましたけれども,余り事務で,事務の負担が多いから手続が遅れるみたいなことになると困りますので,この辺はもっとコンピューターを使うとか何とかいろんなことを考えて,もっと事務を簡素化して,あるいはもっと客観化した要件,要素を取り入れて,もっと単純に判断できるように,委員の皆さんの判断もばらつきがないように,そしてかつ単純に迅速にできるような制度を構築してもらって,そしてもっと運用していくというふうにすればいいのだろうと思いますので,要はここで矯正と保護がもう一回そういった現状を踏まえてしっかり協議をして,新しいやり方を構築していっていただきたいというのが,私の委員としての希望であります。
○宮澤(浩)会長 今の御発言にコメントがありましたらどうぞ。
○菊田委員 全く賛成です。
○滝鼻委員 特に手続の簡素化は必要だと思いますね。判子を幾つ突いているんだか知らないけれども,最後決定するまでいっぱいあるのでしょう,判子が。
○菊田委員 ありますよ。めちゃくちゃなんですよ。
○滝鼻委員 だから保護観察官と更生保護委員会,これで決めればいいじゃないですか。
○宮澤(浩)会長 それから,これは保護の方に伺った方がいいのか矯正なのか,たしか施設駐在官というのは全国で10人でしたかね。
○鈴木観察課長 10か所でございます。
○宮澤(浩)会長 10か所か。でも,10か所は10人ということですか。
○鈴木観察課長 いや,複数でやっているところも。例えば月火水と水木金とかいうふうな形でやったりしているところがあります。
○宮澤(浩)会長 ただ,あれはたしか8年以上の執行刑期の受刑者を持っている施設ではなかったでしたっけ。
○鈴木観察課長 いえ,大規模施設です。
○宮澤(浩)会長 あ,そうですか。
○鈴木観察課長 ですから,この辺ですと府中であるとか横浜だとかというふうなところです。
○宮澤(浩)会長 では千葉だとか熊本とかというふうに,L級でないといけないということはない。
○鈴木観察課長 ということではありません。
○宮澤(浩)会長 ただし,10人じゃ少な過ぎないかな,やはり。
○鈴木観察課長 10か所でございますけれども。
○菊田委員 全国に置くべきだと。
○宮澤(浩)会長 全国というのは,全施設。
○菊田委員 全施設です。
○宮澤(浩)会長 全施設といったら……。
○菊田委員 それは,もう置かなきゃだめです。
○宮澤(浩)会長 一体,50……。
○富山調査官 74庁になります。
○井嶋委員 少なくともそういう気持ちを持って見直してみたらどうかなと。議論をしてもらいたいなと。
○宮澤(浩)会長 数の点は,我々がリコメンドするだけですからね。それから,今施設がいろんな地方へ偏在しているから,矯正管区としては小さいけれども,受刑者の数としては多いなんていうこともあるでしょうね。その辺のすり合わせはどうなのでしょうか。お考えになれるのでしょうか。
○富山調査官 その人間を増やせというのは,実は矯正と保護とすり合わせてもちっとも実りがない話ということもありまして。
○井嶋委員 それを半分ずつで政府にぶつけるということですよね。
○宮澤(浩)会長 ではそういう希望で,ひとつ是非,今のこの厳しい状況は分かるけれども,しかしそういうところでしわ寄せが受刑者に行くというような,あるいはしわ寄せが現場の職員に行くというようなことを避けるのを是非やってほしいということでしょうね,我々が言えるとすれば。
○成田委員 客観的データで言ったらいいですよね,人間がこれだけ増えて受刑者は増えているのですからね。それに対する刑務官の数はあれですから,それはそういうことを言うのは当然でしょうね。私はこの間,本当女子刑務所を見て,あの所長さんが涙流さんばかりに言ったのが非常に残っているな。もう将来心配だというのですからね。
○宮澤(浩)会長 それは男子の職員以上に,女子の職員に非常に深刻な問題があるというのは前から言われているところですよね。
○滝鼻委員 行刑改革会議の答申というのは,法務大臣にするのでしょう。
○宮澤(浩)会長 そうです。
○滝鼻委員 だから,他の局,例えば今回の場合は保護局だけど,にまたがっても構わないわけでしょう。
○宮澤(浩)会長 それはそうです。
○滝鼻委員 矯正局だけの話ではないのでしょう。
○井嶋委員 昔は矯正保護局と,一つの局だった時代もあるのです。
○滝鼻委員 そうですか。
○宮澤(浩)会長 それではいかがでしょうか。ちょっと5分ぐらい休憩をして,これは下手なことになると神学論争になる危険がありますが,懲役刑と禁錮刑について,単一刑と言うとこれは言葉の上では我々の問題ではないことになるかと思いますけれども,一応先生方の感触を伺うというのはいかがでしょうかね。そんな刑の名前を裁判段階でガチッと決めて,それが金縛りみたいになって犯罪者の処遇等々にまで及んでいくというのは,ちょっと合理性がないのではないかというような議論を少しやらせていただいて,というふうに次の段取りに進みたいと思いますので,ちょっと休ませてください。
 では,3時35分ぐらいにしましょうか。


午後3時27分 休憩


午後3時35分 再開

(2)懲役刑と禁錮刑の単一化について

○宮澤(浩)会長 それでは,本日の1の(2)になりますが,この問題は本来から言えば刑法改正のテーマなのですよね。それにちょっと関連して,昔の思い出話をして恐縮なのですが,この懲役と禁錮というのを単一化すべきだというのは,昭和40年代の刑法改正のところで一つの大きなトピックスだったのです。ところがこれは神学論争になる危険があるのですけれども,懲役というのは悪いことをした,いわゆる一般の人間の常識から見て許せない行為をしたのが,これが懲役刑だ。これに対して禁錮刑の方は,政治的あるいは世界観的,宗教的な一つの信念に基づいて,自分の考え,自分が正しいと思う考えを実現しようとして失敗して犯罪者となった。裁判官は,君の考え方もよく分かるけれども,しかしそれは今の秩序が認めるものではない。したがって,一般の泥棒とか人殺しとは違う,名誉を尊重しつつもしかし秩序を守るために刑務所に入れる。だからそれは禁錮なんだ。こういうふうに懲役の方はいわゆるモラルに反するような行為,禁錮の方はモラルに反するとは言えないけれども,一つの価値秩序というものに対する反対の価値秩序に基づいた行動だから,それを情をくんで禁錮というふうに言うのである。したがって,それは裁判官による分類である。正にそういう裁判官による分類というのは,そういう価値観を共有するか共有しないかという根本的な法と倫理とのかかわりがあるから,これは単一などとんでもないという主張がありまして,そういう考え方に同調される,私たちの恩師の世代はかなりそういう考え方に同調されました。
 我々よりもちょっと上の世代が反対するのは,そういうのは正に矯正に任せるべきで,実際にその人を処遇する,その処遇する見地から見て,その処遇が困難である。その困難であるという理由が,いろんな道徳と絡んだような困難さといいますか,犬畜生に劣るような行為をした人間を改善するということの困難さというのと違った,一つの信念に基づいたものを社会の中に取り込むというのはどうすればいいかというので,そこで良心犯人とか確信犯人,それに対して名誉を重んずる自由刑というふうな議論をするべきか,するべきでないのか。そうではなくて,自由刑というのは要するに自由を奪うのである。ちょうど死刑が生命を奪うように,罰金刑等々が財産を奪うように,自由を奪うということだけが共通であって,あとはその処遇を受ける人々の特徴に応じて刑の内容を考えればいいのだというのが,いわゆる単一刑ということなのですね。日本の刑法は,ドイツの刑法に従っていましたから,モデルでしたから,その当時の古い思想であったドイツ刑法が一九六九年までは,そういうふうに懲らしめの刑罰と自由を奪う刑罰というふうに刑の名前を変えていたのですが,それが多くの国々と同じように次第次第に自由刑,自由を奪う刑という非常に抽象的な名称を使うようになりました。
 実は最後まで頑張っていたのがスイスなのですけれども,スイスの連邦刑法が去年の12月に,まだ施行はされていませんけれども両院を通過した刑法を見ますと,遂に一本化した自由刑という名前に踏み切りました。
 というようなことが,この懲役と禁錮の単一化のいわゆる刑法的な議論であります。我々はそれを,刑名を一本化すべきだという議論はちょっと管轄を越えると思いますので,自由を奪うというこの刑の内容を実質的に見れば,この前にいただいた資料であるように,禁錮の受刑者もほとんどが請願作業といって作業をしている。つまり,もういまや日本の自由刑のほとんどは作業をするということが,刑を名前を変えても実質はそう余り意味のないものになっているとするならば,それではその自由刑である懲役の受刑者のその刑罰内容というものを,もう少し見直そうではないかということで,前回皆様のお考えに従って,懲役だから1日8時間,月40時間というようなかた苦しい枠をやめて,それぞれ受刑者の特徴に応じた,作業をどのぐらい,あとの時間はこういうふうにするというふうなフレキシブルなことをしてはどうかとか,それから1日少なくとも1時間の体育のための時間を割くというようなことは当然ではないかというような御意見でありました。そのほか,これまでお考えのほかに,何か懲役と禁錮の単一化というものを念頭に置いた御意見が伺えればと思いますので,いかがなものでございましょうか。
○菊田委員 私はもう既にほとんど議論が尽くされているので,この委員会としては単一化に向けて改正を願いたいというような申入れみたいな形で,私はもういいのではないかと思いますけれども。
○宮澤(浩)会長 またちょっと蒸し返すというか,あるいは少し混乱するようなことになったら撤回しますけれども,例えば自由刑をなるべく限定した方がいいのではないかという,つまり半年,6か月の自由刑を科すぐらいだったら罰金を優先すべきであるとか。しかし,そうすると罰金を払えない者が大体自由刑ということで労役場に来るのだったら意味がない。だとすれば,土曜,日曜の週末に公共に役立つ労働をさせて,そのさせた時間で刑務所に行くののかわりにするなんていうのも,形を変えた自由刑単一化の問題に近いのですよね。
○菊田委員 自由刑の単一化ですか,それは。
○宮澤(浩)会長 そうじゃないんだけれども,関連してそんなことはどうかななんて。
○菊田委員 それはそれで結構ですけれども,単一化の問題は,今私の申し上げたことでまとめていただいて。
○宮澤(浩)会長 それでいいのではないかと思いますがね。僕はもう御異議がないだろうから,少し自由刑に直接関係はないけれども,そういうふうなこと。
○菊田委員 短期自由刑の。
○宮澤(浩)会長 そうですね,短期自由刑の弊害というのはまだ議論していませんでしたね,そういえば。ただ問題は,日本の場合そう短期自由刑といっても,6か月以下の自由刑が相当数いるというなら議論してもいいけれども,それほどはないでしょう。
○富山調査官 はい,余り多くないです。
○宮澤(浩)会長 諸外国と比べて,比較的刑期が短いということの一環で,1年未満とか6か月未満の自由刑というのは,日本の場合だと実刑になる場合が少ないのですかね。執行猶予とかいうことになってしまうのでしょうね。
○井嶋委員 そちらで実務上扱ってしまっているわけです。
○宮澤(浩)会長 その辺はだから,もうこちらとしては言わなくてもいいかな。
○菊田委員 その点は,成田委員が前回もおっしゃったように,有意義な社会奉仕ですか,そういうものに受刑者をもっと開いた意味でやるべきではないかとおっしゃったのを覚えていますけれども,やはりそういった短期といいますか,今短期の見直しというのが世界的にも出ていますから,短期は短期なりにある意味では3S主義という形でそういった精神的なものを含めてやっていく,開けた刑務所の一環でもあるでしょうし,それはそれなりに私は提案していただければ有り難いとは思いますけれども。
○宮澤(浩)会長 おそらくでも,この間の成田委員の御発言は,僕は実はあれは自由刑の執行の一つの在り方としてそういうものをお考えになって発言なされたのかな。もしそうだとすれば,日本の場合A級受刑者,若しくは開放に適するような処遇をしている施設では,外部で掃除させたり何なり,そういう勤労奉仕を仮釈放の前にやらせるというようなことは実務上はやっている。それから,一時期外部の企業に受刑者を通勤させておったことがありましたけれども,今はもうやめているのですか。
○富山調査官 今でも一部ですけれども,施設のそばにある工場等で作業をさせているケースはございます。
○宮澤(浩)会長 そうですか。
○井嶋委員 市原でもやっていました。
○宮澤(浩)会長 あれは,やはり手数がかかるからいけないということなのですかね。
○富山調査官 手数ということはなくて,今の制度では戒護職員がついていかなければいけないのですけれども,それは中の工場でも外の工場でも,逃走の危険が非常に少ない受刑者であれば,職員がそんなに大勢いるというわけではありませんので,むしろやはり受入側がなかなか,人数が変動したり刑期が来ればいきなりいなくなってしまう,あるいは仮釈放になればぱっと消えてしまうというような形で人数の変動等もありますので,なかなかそういう条件でもいいよと言っていただける企業が少ないということがあると思います。
○宮澤(浩)会長 成田委員の御発言は,要するに自由刑の受刑者の具体的な執行の在り方として,そういう有用な作業などをするのがという。
○成田委員 生産にさほどプラスにならないと言っては失礼だけれども,それよりかもっと何か表に見える社会的な貢献の高いものに参画すれば,また違った誇りも出てくるのではないかなということで申し上げたので。
○井嶋委員 コストの見返りというか,コストをかける分やはり国民一般に納得させるためには,もっと公的な作業とか,公的に効果のある作業を入れたらどうか,こういう御意見だったと思いますので,自由刑そのものがどうかという話ではなかったと思います。
○成田委員 私の基本的な考え方としては,制度というのはやはり,懲役にしても何にしても,あることを犯したのだから,その罰として何かあるわけなので,それはやはりシャバにいると同じようなことをあれするのはおかしいのではないか。何かこれに対してやはり一つの規制,自由を規制するだとかいうことはあっていいのではないか。そこのところは,けじめをはっきりした方がいいのではないですかというようなことをこの間申し上げたのですよね。
○井嶋委員 自由刑の思想ですね。自由を束縛する。
○菊田委員 それは刑務所がある以上は,自由を拘束するのは物理的にしろ精神的にしろそれを外すわけにいきませんから,ウエートをどこに置くかは問題ですけれども。
○成田委員 だから,今おっしゃったような形で私は理解できますし。
○菊田委員 前回も申し上げたように,カリフォルニアのあの火災なんかも,山林の木を切ったりするのは受刑者がやっているのですよね。だからそういう意味では,社会的に感情的には非常に貢献しているのですよ。
○宮澤(浩)会長 戦争中の造船部隊というのもそうでしょう。木造船か何かをつくった。
○菊田委員 日本ですか。
○宮澤(浩)会長 日本で。
○成田委員 炭鉱なんかの労務者もそうでしょう。
○宮澤(浩)会長 それは知りませんけれども。
○成田委員 北海道の炭鉱のね。
○宮澤(浩)会長 南の方に行って大分殉職した人もいるんですよね。それは異常事態だから。
○菊田委員 昔のことを言えば,北海道の道路はほとんど受刑者が作ったのです,開拓して。
○井嶋委員 網走刑務所。
○宮澤(浩)会長 今の時代で,何かそういう,目に見える形での貢献というのは確かにいい表現ですよね。
○菊田委員 昔のあれと誤解されると困るわけですよね。昔はもう人のやらないことを過酷に使ったわけですから。
○宮澤(浩)会長 そうしますと,この懲役刑と禁錮刑の単一化というのは,法律論は刑法改正に譲るとして,実質的には処遇内容というものを,処遇を受ける受刑者の特徴というものを十分考慮に入れて,合理的な処遇というものを是非工夫していただきたい。今大変難しい経済状況ですから,無理に刑務作業というふうに決めてしまいますと,作業を確保するためにどうしたらいいかというふうな,そういう現場にしわ寄せするようなことのないような,何も刑務作業で刑務所の費用の何パーセントを賄わなければいけないというようなことではないわけですから,企業化できないようなもので,しかし社会に貢献できるような仕事というのはいろいろあるだろう。何か公害やなんか,例がありましたね。産業廃棄物というようなことをするとか,そういうようなことも工夫していただければ。
○成田委員 そういうものに参加できるだとか,何かあり得るのではないですかね。
○井嶋委員 個別処遇の精神でもって矯正が運用していけという今の新しい考え方は,ある意味ではその辺のところを矯正の処遇に任せるということが前提なんだろうと思いますね。先取りといいますか。ですから先取りをしてやれるのだろうと思いますし,だから法律議論の今回はする必要はないというのは,私の考えですが。
○菊田委員 そうですね。

(3)処遇制度の見直しについて(第2ラウンド)

○宮澤(浩)会長 そうしますと,前々から問題になっております,一通り今まで必要な議論を終えたことにしまして,第2ラウンドに入って,これまでの議論を更に深める,あるいはそのとき議論したときには見落としていた,若しくはそのうち,そのうちと思っているうちにやはりこれが大事だったんだというようなことになってきたと思いますので,そこで処遇制度の見直しというようなことを一つの最大眼目といたしまして議論を煮詰めていきたい。煮詰める前に,我々の判断をするのに必要な情報を当局から示していただきたいということで,そこで今日のプログラムによります(3)のaについて話を伺いたいと思います。



a矯正局説明


○富山調査官 お配りしました資料の7ページからの3枚物の資料でございますが,これが現在行刑施設において行なわれております処遇類型別指導という,一種の教育活動についての説明資料でございます。特に覚せい剤受刑者の処遇の在り方が今のままでいいのか,あるいは処遇困難者をどうしていくのかといったような話がございましたが,現在私どもがやっているこの教育活動の一端を御紹介することで議論の参考にしていただければと思います。
 この処遇類型別といいますのは,1番に書いてありますとおり,罪名や犯罪に至る原因となった性向,その他円滑な社会復帰の障害となり得る要因に着目しまして,社会適応上の問題点を改善することを目的として,同じような類型に属する者を小さなグループにしまして指導を展開しようとするというような形で行われている教育活動のことをこのように呼んでおります。これは,平成6年ごろからこの処遇類型別指導というものに関する調査研究を当局において開始いたしまして,何回かに分かれて各施設で試行的にいろいろなことをやったりということで,だんだんに実践を積み重ねて少しずつ形があるものになってきているというものでございます。
 平成14年度,昨年度の実績をこの2番に基づいて御説明いたしますが,いろんな処遇類型別指導がございます。代表的なものが,この実施状況にありますように,一番の代表が覚せい剤乱用防止教育。これは,74ある行刑施設のうち72庁で実施されています。実際には市原刑務所など全く対象者がいない施設がありますので,全庁と評価してもよろしいかと思います。そのほか,酒害教育が45庁。被害者問題,しょく罪指導,生命尊重教育といった,特に人の命を奪ってしまったような人たちを対象としたような教育,34庁,暴力団の離脱指導,33庁,交通事犯防止あるいは交通安全教育,これが17庁,累犯窃盗の防止教育が11庁,高齢受刑者の指導,11庁,そのほか性犯罪防止教育ですとか,ギャンブル防止教育,若年者の教育,各施設工夫を凝らして実施しているものがございます。
 各指導の内容あるいは施設における特徴がいろいろありますので,一概にまとめることは難しいのですが,強いてまとめてしまいますと,現時点では週1回あるいは2週間に1回,大体1時間程度の時間をとって指導をする。指導期間は3か月から半年程度というような形で行っているケースが多いと承知しています。
 実施人員なのですが,数名から10数名程度,余り大規模な集団にはしないという形でやります。また暴力団離脱指導は,集団でやるというよりも個別にやるケースが多いと聞いています。
 指導担当者は,まず教育業務を担当する施設の職員。それに加えまして,次のページにもありますが,篤志面接委員,教誨師,医者,警察関係者等の部外講師の協力なども得ております。74庁のうち,部外の方も協力していただいている施設が66庁ございます。このうち特に民間の自助団体を呼んでいるケースとして,ダルクを呼んでいる施設が3庁,断酒会を呼んでいる施設が15庁それぞれございます。
 指導の方法はさまざまなものがありまして,講義,VTR視聴,集団での討議,課題作文の作成,個別の面接,意見発表,体験発表といったようなものもありますし,ロールレタリングと呼ばれます役割交換書簡,これは,まず例えば被害者の遺族の立場になって自分あてに手紙を書かせてみる,次に,その手紙をもらった自分の立場でまた返事を書いてみるというように,いろんな人の立場になって手紙を書いていく,あるいは自分を心配している親の役割になって手紙を書いていくというような形で,手紙を書かせることでいろんなことに気づかせるという手法です。あるいはカウンセリング,グループワークなども取り入れている施設も増えてきております。
 ここで主な類型ということで,特に覚せい剤の関係と性犯罪を犯した,異性問題に関する指導を御紹介させていただきたいと思います。覚せい剤につきましては,72庁で実施しているということを申し上げましたが,主な指導事項としては,まず薬害を認識させるということ。それから,覚せい剤の使用に至った原因をよく本人に考えさせる。また,それに伴って家族や周囲の方に与えた影響,それによって家族との関係がどうなっていったのか,そういったことも自分自身で振り返えらせる。更に,実際に,では覚せい剤をこれからやめるためにはどうすればいいのか,そういった具体的な方法を自分で考えさせるといったようなことを主な指導事項にしています。
 指導の状況は,ここに書いてあるとおり,先ほど申し上げました標準的な傾向で行っている例が多いと思います。指導者につきましては,教育,医務,分類の職員を使っているほか,72庁のうち46庁が外部の方を招いています。ダルクを呼んでいる施設もありますが,お手元にお配りした別のつづりの資料で,こういう横にとじた本のコピーがあるかと思います。これは横浜刑務所の覚せい剤等乱用防止教育,正に処遇類型別指導について今年の3月,「刑政」と言われます私ども職員の教養誌に紹介された内容でございます。これは逐一読んでいても意味はないわけなのですが,実際にダルクを呼んでこんな指導をしていますということが書かれております。いろいろ現場での実践例,苦労があるわけなのですが,この中身をざっと紹介させていただきますと,横浜刑務所でも大体10名程度の人員を集めて,半年間残刑期がある者について10回コースでこの覚せい剤防止教育をやっている。やるに当たっては,いろいろやはりグループで自分の体験などを話す者には抵抗感があるので,あらかじめよくそういったやり方を説明する。また,グループワークのための雰囲気づくりに努めているといったような苦労をしているようです。
 この10回程度の講義ですと,なかなか受講者の考え方を本当に変えさせるというところまでは難しい。ただ,依存症からの回復のための何らかのきっかけをつかませるということが,とりあえずの目標となるかなというような感じを現場の担当者は持っているようです。特にダルクの力をいろいろ借りているわけなのですが,このダルクのミーティングのやり方というのが,ある意味言いっぱなしの聞きっぱなしとここに書いてあるのですが,自分の言いたいことをだれのためでもなく自分自身のために言う。そして,ほかの人が発言することも批判せずにそのまま聞く。これが何かダルクのミーティングのやり方の基本なのだそうです。それを今回この横浜では参考にして,グループワークをやっている。ダルクの方のスタッフ自身も,こういう刑務所の中でいろいろと経験のある人の話を聞くことは大変参考になるということで,指導に来ていただく方のスタッフの方からも,これは非常に役に立つミーティングであると言われているようです。受刑者の方にとっても,このダルクのスタッフが指導に入ることで,依存症にあった人が今こんなふうにちゃんと自分たちの指導をできるまでに回復しているのだ,そういうモデルを目の当たりにできるという意味で励みになるというようなこともあるようです。
 いろいろこの受講した受刑者からアンケートをとった結果などもこの中には紹介されているのですが,もちろんグループワークですので,たまたまできたグループの雰囲気でいろいろな違う結果も出てきているようです。ただ,少なくともこの本指導を受講して出所した者がダルクに行って更に指導を受けるというようなケースも少しずつ出てきているというような形で,願わくばこういった実践例がもっと増えて,覚せい剤防止に役立つことができればと考えております。いかんせんまだ指導対象者の数も少ないというようなことで,現在の正に作業中心の処遇をやっている中で,教育活動を考えていきますと,こういった実践例が今のところは精いっぱいのところかなというふうに思われます。
 またもともとの資料に戻っていただきますが,8ページの性問題に関する指導。これは性犯罪者が覚せい剤ほどべらぼうには多くありませんので,すべての施設というわけではありませんが,現在五つの施設でこの性犯罪を犯したような者に対する指導教育を行っております。また被害者の視点を取り入れた指導という中で,性犯罪の被害者の苦悩といったものを教えているケースというのも4庁ございます。
 ここでは主な指導事項としては,命の尊厳あるいは性の尊厳,そういったものを考えさせるということ,被害者の心情を考えさせる。それから,なぜ自分はそういった性犯罪を犯すに至ったのかという原因を考えさせる。そして,自分の行った行動が問題ある行動なのだということの認識を強化させる。最後には,再犯をしないための決意を固めさせるというような形で,やはり2~3か月の指導期間を置いて週1あるいは2週間に1回程度,比較的少人数の受刑者を対象に指導を実施しているというような実績がございます。
 こういった活動を平成に入ってから順次拡充してきてはおりますが,なかなか実施に当たってはいろいろと課題がございます。まず指導者の養成というのが大きな課題でございます。内部にいる職員,もちろん心理学あるいは社会学,教育学の素養を持った職員もおりますけれども,やはり数が十分ではございません。こういった処遇をもっと幅広く展開していくためには,指導ができる職員の養成も必要かと思います。もちろん現在そういった担当者が養成できるような集合研修を実施して,指導者の養成にも努めております。
 それから,指導体制の確立というのもやはり大きな問題でして,現在では主に教育を担当する職員を中心にやっているわけなのですが,もっと幅広く実施するためには,やはり受刑者の日常生活に密接にかかわる処遇部門の一般刑務官も,こういった指導に積極的に参画してもらわないと,人的な体制としても十分ではないといったことがあろうかと思います。
 それから医療関係者との連携,特に覚せい剤の場合につきましては,やはり覚せい剤精神病等にかかっている者もいるということで,医療的な措置をとること,特に精神科医との連携,これをもっと緊密にとることがやはり不可欠ではないかということが問題として挙げられます。
 それから,もう一つ非常に現実的な問題なのですが,現在の過剰収容の状態で,本来であれば教室として使うべき部屋を改装して居房にしてしまっているというようなことで,教育スペースがなくなってきております。これが教育を充実させようとしているにもかかわらず,その場所がないというような,非常に矛盾する状況をつくり出しておりまして,こういった点でも現場施設は今大変苦労しているという状況がございます。とりあえず,こういった教育活動の御紹介をさせていただきました。以上です。



b収容,処遇のための分類の在り方(処遇困難者,覚せい剤受刑者など)
c覚せい剤受刑者に対する処遇の在り方


○宮澤(浩)会長 ただいまの御説明に御質問がおありになれば,是非お聞かせください。
 皮切りで申し訳ありませんが,この一番最後の9ページに,釧路と山形と三重と滋賀という四つの施設が性問題に関する指導を行っているというふうになっておりますけれども,何かこの四つの施設の教育担当あるいは医務の先生で,そういう問題についての御関心かあるいは御専門の方がおられたためにここでそういうことをやっておられるのかどうか。どうしてこの四つにそういうことがなされるようになったのかという点,もしお分かりでしたらお教えください。
○富山調査官 この4庁は,性問題の方の指導は上にあります5庁が専門でやっておりまして,この4庁は被害者の視点を取り入れた指導の中で,ただし性犯罪者に対する指導もやっているということなのでございますが,ちょっと当局としては具体的にこの4施設が何か人的なスタッフに恵まれているとか,そういう状況にあるかどうかはちょっと承知しておりません。申し訳ありませんが。
○宮澤(浩)会長 東京拘置所が入っているのは,どういうわけなんだろうな。これ,未決でしょう,まだ。
○富山調査官 東京拘置所にも,当然経理係,所内のいろいろな仕事をする受刑者が数百名実際に就業しております。その中には,この性犯罪を犯してしまった者もいるということで,施設が大きいですから拘置所でもそういう受刑者を集めて教育できるだけのスケールメリットが既にあるのですね。それでやっているということでございます。精神科医なども常勤の者がおりますので,体制を組みやすいということもあろうかと思います。
○宮澤(浩)会長 分かりました。なぜ釧路で被害者なんだろうな。
○菊田委員 そういう該当者については,強制的におまえ来いと言ってやらせているわけですか。
○富山調査官 いえ,教育活動ですから強制的にはできませんので,基本的にはオリエンテーションのときにこういう教育がありますよ,まず希望者は申し出なさいという紹介はします。それから,それだけですとなかなか手挙げて来ませんので,該当しそうな者には声をかけて,どうだ,やってみないかとまでは言いますけれども,結構ですというのを,いいから来いというところまではやっておりません。
○菊田委員 それは累進処遇とは関係ないでしょう。
○富山調査官 累進処遇とは全く別です。
○菊田委員 初犯も累犯も関係ないでしょう。
○富山調査官 施設ごとにもともと初犯と累犯は分かれてしまっていますけれども,それは関係ありません。
○井嶋委員 先ほどのお話からいうと,まだまだ実施の調査研究過程のまだ一環という形で,特定の指定庁に実験的にやってもらおうというような感じでやっているような印象ですが,そんなものですか,まだ,感じとしては。
○富山調査官 そうですね。特に性犯罪指導とかまだまだ全庁に広がっていない。
○井嶋委員 特に施設に意味があるわけではなさそうですね。
○富山調査官 各施設いろいろ研究テーマを設けてもらっていろいろやってもらって,それを何とか全国標準にして広げていきたいとは思っているのですけれども。
○井嶋委員 でも,いい着目点は着目点なので,今我々が議論している新しい処遇という面から言えばね。
○菊田委員 ただ,少しでもやり始めて要するに刑務官が少ないということの中で,将来どういうスタッフを増やすべきだとか,そういうことは既にもう出ているわけでしょう,データとしては。
○富山調査官 スタッフのデータというよりも,今はどういうカリキュラムでどんなことを指導していけばいいかということを重点にやっていまして。
○菊田委員 だけどそれ以前に,今申し上げたようないろんな何もないところから始まっているわけだから,これを全国的にもあるいは充実していくためには,いろんな外部の補助をもっと積極的に入れるとか,あるいは刑務官を増やすとか,あるいはカウンセラーを増やすとか,あるいは医者もそうだけれども技官を増やすという,特別な要望というのは当然出てくるわけでしょう。それはもうどんどん出すべきだと思いますね。刑務官どころか,そういった技官をもっと,これを展開するためには必要だということを強調してもらわないとね。
○富山調査官 ありがとうございます。そういう正に教官,技官の要員も是非必要だと思っております。
○菊田委員 そこをやはり人を増やさなければいけないですよね。
○富山調査官 あと,もちろん公務員の増員には限界がありますので,外部の方の協力ももっといろいろと取り入れてということは必要だと思いますね。
○菊田委員 と同時に,やはりこれは時間も短いけれども,やはり刑務作業をもっと減らしてこういうことをやるべきだという意見も,委員会ではこちらとしては出ているわけだから,それと一緒に並行してやってもらえばいいですよね。
○富山調査官 そうですね。もっとこれを充実するためには,何よりもまず教育を実施する場所の問題,それから小集団をつくればつくるほど職員がいっぱい必要になってくるという,非常にその辺の問題があるのですね。そこをクリアするためにどうしていけばいいかということも,これからもっと数を広げて大々的にやっていくことになりますと,課題になろうかと思います。
○宮澤(浩)会長 今の点,もう少し受刑者を信用して,集団が増えれば職員も増えるというのではなくて,いろんなそれから最初から4級,3級,2級というのではなくて,いい人はとにかくそれにふさわしいような処遇環境を与えるというふうに割り切れば,その人たちにはそんなにたくさんつかなくてもいいだろうとかというふうな,もう少し発想を柔軟にしていただけるような何か言葉が。
○菊田委員 何か刑務官さえ増やせばいいというようなことではないと思うけれども,それとられると困るのですよね。
○富山調査官 ただその小集団と申し上げているのは,私実は先週京都の刑務所とか拘置所とか,巡閲に行ってきたのです。今京都などは,80名いる工場でもやはり一人なのですね,担当が。本当に人が足りなくて苦労していまして,これは受刑者を信頼しているといっても,要は別に10人の集団を二人の刑務官で見ておれなんていうことを言っているつもりでなくて,10人の者を移動させるだけでも,あるいは外部の方を連れてくるだけでも職員が要るわけですよね。そういう環境をつくるのに,今80名を一人で持っているから何とかぎりぎりになっている。80人を小集団に分ければどうしても人手がないと動かないということは分かっていただきたい。外国でもかなり自由にいろんな教育活動をやっていますけれども,圧倒的に職員の数が違うというところを御理解いただきたいと思っています。もちろん技官も教官も必要ですけれども,刑務官も全く足りない。そこは是非御理解いただきたいと思いますので。
○菊田委員 それは本当に主張してもらわないとね。外国から比較したって,圧倒的に少ないのですよ。これは大きな問題ですよね。ただ私は,ウエートを保安だけを増やせばいいという問題じゃないということを,御存じだと思いますが。
○滝鼻委員 薬物について伺いたいのですが,先ほど薬物のいろんなプログラムの説明がありましたけれども,前にほぼ合意されているのだろうけれども,処遇の内容については1日8時間の刑務作業にこだわることなく,もうちょっと弾力的に昼間の時間を使う。したがって,その使う時間の中身については,ただ労働させるというか,役務作業をさせるだけでなく,こういうものにもう少し時間を使うべきではないかということだと思うのですね。したがって,さっきこういうプログラムに対しては強制か希望かという質問に対して,それは希望者のみだという話がありましたけれども,こういう薬物の犯罪あるいは薬物によって起こされた犯罪,いずれにしても薬物に汚染されている,体がおかしく,あるいは精神状況がおかしくなっているためのリハビリテーションは,やはり希望者だけ,手を挙げた者だけにそれを受けてもらうというのではなくて,やはり義務として薬物から離脱する,酒のことも同じだろうけれども,やはり一番多いのはドラッグだと思うので,そういうものから離脱する教育,リハビリなどは,希望する人は治してやるよというのではなくて,やはり強制と言うと言葉は強くなるかもしれないけれども,義務的なプログラムの中に取り込まなければいけないのではないかと思いますね。
○富山調査官 現行法のもとでやりますと,どうしても教育ということになってしまいまして,作業と違って義務づけができないという発想があるものですから。ただ,これは法律を変えれば,そういったプログラムを受ける義務があるのだという形で法律を書けば,そこで対応が可能だと思いますので。
○滝鼻委員 先ほど宮澤先生がおっしゃった,自由刑の場合は受刑者の特性,特徴に対応できるような執行の在り方を考えるべきだというのは正にそういうことであって,刑務作業だけが役務の内容ではないと思うのですよね。だから,特にこの薬物問題については72庁も,必要があるから実施しているのだと思うのですね。必要性から実施しているのだと思うので,こういうものについては処遇の中身の見直しの一環として,やはり希望者のみに受けさせるというのではなくて,義務的にやってもらうという方向へ,それは法律上障害があるのならそういう法律の見直しが必要だと思うので,そっちの方向でやってもらいたいと思いますね。
○成田委員 私もそう思うな。むしろそういうことが矯正につながるんじゃないのかね。教育というのを,要するに私はむしろやるべきだ。性の問題にしても何にしても,何かそういう人間教育をやるのは自由じゃなくて,半強制的に1日何時間だとかやって構わないと思うな。
○宮澤(浩)会長 誤解を招くような表現が公的な文書に時々出てくるのですよね。それは何かというと,最近の刑務所には暴力団関係者,累犯者,そして覚せい剤受刑者のように処遇困難な人が増えているからと,こういう一くくりにされているのですよ。だけど,覚せい剤の受刑者だから処遇困難ということは,まあないのだろうと思うのです。同じ覚せい剤受刑者とくくられた中にも,いろいろな理由で覚せい剤に手を染めているというふうなのがあるでしょうから,その中で特に覚せい剤の怖さだとか他人に及ぼす影響だとかということを懇切丁寧に指導して,そういうものに手を染めないようにするというのを義務として,事業というか訓練の,そういうことは今両委員のおっしゃったこととかかわると思うのですよ。
○成田委員 それが原因で入っているわけですから,それは罪に対してこういう薬害があるのだよ。これは君,どういう結果を生むのか分かるかというような形での教育を,私はすべきだと思うな。それは分かっていてやるのでしょうけれどもね。しかし,そういう分からない人だっているでしょうし。何か,私はそういうこと,やはり矯正というのはそういう教育というものがあるのではないかな。
○宮澤(浩)会長 外部の社会と折合いがつくような人柄にするとかね。おそらく彼らの中でも,非常に不安を持って刑務所から社会に戻ったりしたらまた元のもくあみになることもあるでしょうから。
○滝鼻委員 同じことが言えるのは,問題は次は性犯罪でしょうね。暴力団からの離脱とかいうのは,それは数的にはそんなに,それもあるけれども,ある程度可能性があるのだけれども,非常に難しいのはやはりこの薬物と,あと性犯罪でしょうね。
○富山調査官 これは外国でも同じです。
○滝鼻委員 これもやはり,精神科医の助けを得ないとなかなかできないテーマだと思うので,この性犯罪が,今のところ非常に先端的科学知識を要するものだから,非常に数箇所しかないですよね。やはり性犯罪というのは,一歩間違えると凶悪犯罪ですからね。決して軽犯罪法とか単なる風俗,そういう問題じゃなくて,性犯罪自体が凶悪犯罪ですから,やはりこれのリハビリというのかな,どうするかというのは大きな問題。
○宮澤(浩)会長 それと,性犯罪者で殺傷事件などとの絡みだとかなり刑は重いんだけれども,そうでないような。
○滝鼻委員 性犯罪のみってやつね。
○宮澤(浩)会長 いやいや,いわゆる幼児に対する。
○滝鼻委員 幼児虐待,それから強姦ですね。
○宮澤(浩)会長 そういうものが刑期が短過ぎるでしょう。だから,刑務所の中で処遇というのが中途半端になってしまうということを,この前高等精神医療学会の報告で聞きまして,なるほど難しい問題があるなということを感じました。
○井嶋委員 ちょっと覚せい剤乱用防止教育の72庁というのは,ほとんど全国になるのだけれども,その対象者は覚せい剤の罪名で入っている人から選んでいるのですか。
○富山調査官 基本的には自己使用者ですね。
○井嶋委員 覚せい剤の自己使用者から選んでいるのですか。これは先ほど会長が言われたような,一般的な乱用防止教育だろうと思うのですが,私従来述べてきていることの一つは,先ほど滝鼻さんも言われたけれども,覚せい剤,薬物ですが,薬物の乱用によって精神的,身体的な障害を持った者,この受刑者,これがおそらく覚せい剤の罪名が4分の1いるとすれば,その中の相当数にそういった者がいるだろう。そういった者を取り出して,ある意味で集禁をして,集めて,そして作業だけじゃなくて,むしろ成田委員も言われたようにそれに適切な処遇を与えることが必要ではないのか。少なくとも数的にそれだけあるのだから,ほかの犯罪はともかくとして,それだけでも少なくとも特化したものをやれということを僕は言っていたわけですが,そういう意味では一般的な薬物あるいはアルコール乱用防止教育というのはもちろん必要で,今やっているのは正にそういうことだと思いますが,これをもう少し特化して,そういう非常に悪い中毒症状になっている,処遇もできないような受刑者が相当数いる,潜在的な者も含めているはずですから,そういう者を集禁して,作業中心ではなくてこういう適応教育をしてもらいたい。治療をしてもらいたいということを,この委員会の提案としては一つ出したいと思っているわけです。ですから,そういう意味で一般教育と特化教育と少し議論が二つごっちゃになっているのですが,処遇の少なくとも目玉としてはそういうものをひとつここでは出していただきたいと思っているわけで。
○滝鼻委員 僕のお願いしたのは,一般教育じゃなくてその特化教育の方ですね。いつか全体会議で,PFI方法による医療センターの話がありましたよね。医療センター構想というのがあった。あの医療センターの中には,こういう覚せい剤中毒からの離脱だとか,あるいは精神科医がカウンセリングするとか,そういうものも構想の中に入っているのですか。
○富山調査官 あの構想自体はまだそんなに煮詰まったものではないのですが,ただそういったものも入れる余地はあると思います。
○滝鼻委員 心臓が悪いとか腎臓が悪いとか,そういう臓器の病気じゃなくて,そっちの方は考えて……。
○富山調査官 精神系の疾患も考えていると思います。いろんな高度医療ももちろん考えているのですけれども。
○滝鼻委員 かなり専門化しないと,特化しないと,一般の刑務所の医務官じゃなかなか難しいと思うんだね,僕は。プロパーのプロが行かないとやはり。
○井嶋委員 ですから,まずやはり集禁をしないといけないと思いますね。
○滝鼻委員 集めるということ,一か所に。
○菊田委員 例えば皆さんがおっしゃっているとおり,同じ意見です。その前提として,やはり今ある収容分類というものをいったん解消するということを強力に提案していかなければいけないと思うのですよ。
○井嶋委員 私もその点は同意見です。
○菊田委員 その上で個別化をし,性犯罪やあるいはその他の依存症等々についての,先生がおっしゃったようにグループ化していく,グループ集禁化していく。一つの施設の中でもいいから,その中を人間をグループに分けてやっていくということをまずスタートすることは可能だし,是非そう主張したいと思いますね。
○富山調査官 非常に理想的な在り方だと思うのですが,ただ問題は,今現に入っている施設がみんな満杯状態で,それを入れかえなければいけない。
○菊田委員 だから,それは時間がかかりますよ。
○富山調査官 そうなのです。そこは徐々にやっていかないとできないということも,御理解ください。
○菊田委員 そうそう,徐々にやっていけばいい。
○滝鼻委員 1日で引越しは無理。
○富山調査官 もちろん,1日という意味でもありませんし。
○井嶋委員 もちろんそういうことも踏まえているから,決して何でもかんでも5万人いるなら5万通りの収容分類しろと言っているわけではないので,それは最小限度この時代だから薬物中毒ぐらいは何とかしなさい,あるいはできたらもう一つ暴力団ぐらいやる必要があるのかなぐらいなことを考えるわけで,全部やれとは言ってない。ただ考え方として,収容が先にあって,そして分類が後からついてくるという考えではなくて,処遇を先に考えて,それに応じた分類をする,収容分類をするという発想に切りかえてもらいたい。その一つとして,今の覚せい剤乱用者の集禁とか,あるいは性犯罪もできたらそうできればいいけれども,そこまでいくかどうか。そういう検討をしてもらいたいと,こういうことを言っているわけです。
○菊田委員 基本的に今おっしゃったとおりで,今あるですから分類制度そのものも,抜本的にもう考え直してもらって,今先生がおっしゃったように個別グループ化する。とにかく薬物関係でもう2割が入っているのでしょう,全受刑者の。
○富山調査官 2割以上です。
○滝鼻委員 自己使用というのはどのぐらいあるの。
○菊田委員 大変な数ですよ。
○富山調査官 かなりの割合はあると思いますね。
○井嶋委員 8割ぐらいは自己使用ということでしょう。あと売買があるけれども,これは頭のいいやつで。
○宮澤(浩)会長 でも,売買しているのはやはりやっちゃうらしいですね。
○井嶋委員 そうですね。それは自分もやっているから。
○滝鼻委員 そうですかね。売買して自己使用してたら,ビジネスにならなくなりませんか。
○宮澤(浩)会長 要するにお金でくれるかわりに,1割ぐらいただの包みをもらったりしてね。
○滝鼻委員 現物支給。
○宮澤(浩)会長 うん,現物支給。それを売ってもうければいいのに,ちょっとやっぱりやっちゃうらしいんですね。
○成田委員 ただ怖さも知っているだろうから。やるだろうなあ。
○菊田委員 性犯罪関係というのは,どのぐらいになるんですか,大ざっぱなところ。
○富山調査官 性犯罪の数ですか。
○菊田委員 いや,割合です。性関係。
○富山調査官 性犯罪者の割合。これはそんなに多くはないです。
○井嶋委員 多くはないでしょう。
○富山調査官 全然多くないです。
○井嶋委員 ですから,これは一般的な刑務所での一般的な教育の中でやるのが,現在なら精いっぱいでしょうね。集めてというところまではいかないでしょう。集めてやるものとしては,一つこの薬物中毒というのがあるのだろうと思うのですけれども。モデル的と言ったら語弊がありますけれども,当面やらなければいけないし,またやれるものとして考えてみたらどうかという感じはするのですけれども。
○宮澤(浩)会長 あと何かないですかね,そういう。
○井嶋委員 暴力団があるんですけどね,暴力団は集禁するというのもなかなか大変なのかな。ある程度,ほとんどB級に入っているのですね。
○富山調査官 今でもA級の施設に暴力団というのはいないようにしているつもりなのです。
○井嶋委員 B級には入れているのですね。
○富山調査官 はい。ただ暴力団だけとなると,なかなかこれは集団編成が難しくて,同じ組の者と反目する組の者,どちらも一緒にしてはいけないというなかなか難しい要請がありまして。
○菊田委員 あと,今のは主として薬物だけど,アルコール依存症とかね。それも含めますね。それと同時に常習窃盗犯とか,そういう分け方も出てくると思うのですよ。そういうのを集禁するというような形。だから,性犯罪なんて,全国的にいけば,全国の性犯罪を1か所に集めてある刑務所の1区画に入れるということだって,将来的には考えれるわけでしょう。
○富山調査官 物理的にはできるのですが,例えば家族との面会の便宜とか考え出すと,またなかなかそこまで集禁してしまっていいのかという問題はあると思うのですね。
○菊田委員 だって,今だってそんなことはやってない,余り。考慮してないでしょう。
○富山調査官 それでも,基本的には確定した地で収容するのが原則ですから。
○滝鼻委員 累犯窃盗防止行為というのは,これはどういうことをやっているのですか。
○富山調査官 結局,累犯窃盗をする人というのは,もう価値観が人のものをとった方が早いというような価値観になってしまった人が結構いるのですよね。そうやって生活した方が楽で,刑務所に来ても全然構わないと。それを何とか変えさせようということで,いろんなことをやっているのですけれども,そういうことに取り組んではいるのですけれども。
○井嶋委員 多いのは,やはり賽銭泥棒か。
○富山調査官 もありますね。
○井嶋委員 それからスリですね。
○富山調査官 スリ,万引き。
○井嶋委員 なかなか難しいですね。
○宮澤(浩)会長 難しいですよ,これは。今問題なのは,例の少年,中学生の新古書店へドサッと盗んだのを持っていくと,簡単に金にかえられちゃうんですよね。だから,あれじゃ泥棒教育じゃないかといって。
○成田委員 あれで書店がつぶれるんですってね。
○宮澤(浩)会長 書店はつぶれて新古書店がはやっているという。
○成田委員 すごいらしいね。
○宮澤(浩)会長 その辺からしっかりやってくれないと。
○成田委員 テレビでやるところを映したりなんかするからさ。
○宮澤(浩)会長 あれ,だけど,盗癖ってなかなかいったん身につくととれないんでしょう。泥棒っていうのは,なかなか。
○富山調査官 累犯性が高いですよね。ですから,それをどうやって解消するかは難しい課題なのですけれども。
○成田委員 でも,初めはちょっとおもしろいあれでやっていて,やはりやっちゃいかんということも自分なりに反省していくというのが大半なんじゃないかね。だれだって,そういうことはやった経験があると思うのよ。
○富山調査官 少年のころ,それこそ庭先の柿をもいで食べちゃったとか,そういうふうなことはだれにでもある経験だろうと思うんですけれどもね。
○成田委員 そういうところは,私はやはり教育の問題が来ると思うんですよね。
○宮澤(浩)会長 外国人はお手上げってこと。
○富山調査官 外国人の指導ですか,類型別の。おそらくコストパフォーマンスを考えますと,そちらに労力は余り割けないかと。
○宮澤(浩)会長 今1,000人ぐらいでしたかね。
○富山調査官 いえ,もっとおります。
○成田委員 何かこの間聞いたんですけれども,外国人,これは大きな声では言えないんだけれども,例えば中国人って悪いのがいると慎太郎さんなんか言っているでしょう。本当やはり日本でやって,悪いことをして逃げる,あるいは捕まっても刑務所へ入ったって大したあれじゃないということで,非常に日本を無視しているというか,稼ぎ場だというようなあれは多いらしいですよ。向こうだったら,本当殺されるらしいんだね。
○井嶋委員 向こうではもっと極刑がありますからね。
○菊田委員 でも今回,受刑者移送条約というのが批准されましたからね,だからあれによってやはり帰す者は帰した方がいいという議論になると思うのですよ。
○富山調査官 まだ欧米が中心に加盟しているものですから,一番たくさん収容されている中国とかそういう国が対象になってないのですけれども。
○井嶋委員 そういうのも努力すべきですということは提言していいんじゃないかと思いますけれどもね。
○滝鼻委員 外国人収容所ってありますよね,大村かどこかで。
○富山調査官 入管の収容所ですね。
○滝鼻委員 大村と,それからどこか……。
○富山調査官 茨城の牛久にもございますし,品川にもございます。
○滝鼻委員 あれの中には,犯罪者もいるのですか。
○富山調査官 原則的には,あそこに入っているということは退去強制を待つ者が入っているということで。
○滝鼻委員 犯罪者はいない。
○富山調査官 犯罪を犯してということになると,拘置所や警察署に逮捕,勾留されますので。
○滝鼻委員 オーバースティの人ばかりいるわけ。
○富山調査官 基本的にはオーバースティ,あるいは犯罪を犯したけれども執行猶予となって退去強制になるのを待っている。
○井嶋委員 あるいは刑が終わって,ただ出すわけにいかないから入管に引き渡すというような形で引き継ぐ人たちですね。
○宮澤(浩)会長 だから,ある意味では社会復帰というのは意味ないんだよね。日本的な社会へ社会復帰するわけじゃないから。
○井嶋委員 そうなんです。基本的には,やはり外国人受刑者は外国へ送り返すのが一番いいんです。ですから,ヨーロッパはもう全部そういう条約を作っているわけですね。ですから,アジアというか,極東だけでもやはりそういうものを作るべきだと思いますね。そういう提言はしていいのだろうと思いますが。
○滝鼻委員 ドイツのトルコ人なんか大変なんでしょう。
○宮澤(浩)会長 今はむしろ,旧東欧の方が。トルコ人は,だって社会保障の年金で生活するようなのもたくさん出てきましたからね。もう彼らが合法的に仕事ができるようになって40年ぐらいになりますから,時間的には。あとは何かありませんかね。
○井嶋委員 さっきちょっと私が言いましたのをもう少し整理して申し上げれば,このペーパーのb収容と処遇のための分類の在り方という部分が,先ほど言いました,まず収容ありきじゃなくて,まず処遇ありきというスタンスで,収容分類をまず見直してほしい。今はA級,B級,L級というものを基本にして,あと外国人と性の違いということを基本にしているわけですよね。それでは余り単純だ。もう少し新しい近代行刑を進めていくには,もう少しきめの細かい分類を考えたらどうか。その一つとして,今の薬物中毒者みたいなもの,あるいはもうちょっと処遇困難というものが何かうまく類型づけできれば,そういうものも含めて検討してもらいたい。要するにそのときの基本的なスタンスは,まず収容分類ありきじゃなくて,まず処遇分類ありきで,処遇を何をするかによって分類をしてくる,あるいは区画を決めてくださいということを僕は言っているということです。
 それからcのところでは,その中で特に覚せい剤受刑者の中の薬物中毒者についての在り方ということで,先ほど言った特化した処遇というものを,この際せめてこれぐらい考えることはできないのだろうか。ぜいたく言えば,それにプラス性犯罪があればということだけれども,あるいは暴力団ということかもしれないけれども,そこまでいくかどうか分かりませんが,それは方向性としては検討の課題かもしれませんが,当面この過剰収容の中で問題を起こしたということから契機として発足したこの委員会としては,まず当面それぐらいひとつ実現できるように努力してもらいたいということを言いたいということが,僕の意見であります。
○成田委員 適正な教育ができるというか,そのためにはやはり分類して。その方が年中できるわけですからね。だから,それは考えた方がいいな。
○宮澤(浩)会長 だとすると,今大部分がG級だとか生活指導だなんて,あんなことやっちゃだめですよね。経理作業適それから開放処遇適だとかっていう,あそこの方ですよね。
○成田委員 それと異常者的な人もいるでしょう。
○井嶋委員 これはあと来週の次の議題になるのでしょうけれども,そういう処遇の在り方から決まった収容分類に応じて,規律,所内規則といったものも緩厳よろしきを得た形に作っていくというふうにすれば,より個別処遇は実現できるのではないかということで,それは来週の議論になると思うのですが。
○成田委員 合目的的にね。
○井嶋委員 そうです。合目的的にやってもらいたい。
○成田委員 それで差別化して。
○井嶋委員 今までのような,単純に刑務作業をさせるということで一律でやるようなことでは,これだけのコストかけていて何やっているのという話になってしまうのではないのというだと思いますね。
○宮澤(浩)会長 急に全部という意味じゃなくて,徐々にやる。やる方向はこうだというふうになってくれば,刑務官の中にも張合いが出てくるんじゃないでしょうかね。人に教えることが好きな人なら教育担当というようなことで,特にそういう管区の学校か何かがあるでしょうから,そこで特別授業受ける。
○井嶋委員 それから,これから入ってくる人たちも,こういうことができるのだということで入ってくるというやはり方向があるだろうと思うのです。少年院へ入ってくる,希望する教官,教官として入ってくる人と刑務官として入ってくる人で,やはり区別して入ってきているわけですよね。試験受けてくるわけですが,やはり刑務官もそういう少年院の教育的なものが入ってくるとなれば,そこがもう少し広くワイドになってきて,人材がそれだけうまく分かれていってくれるのかなという気はするのですね。ですから,やはり警備,警護中心の刑務官というイメージからそこは変わってくるとなれば,またそれにふさわしい職員も増えてくる。甘いかもしれないけどね。
○宮澤(浩)会長 だから,今日いただいた資料の7ページ,8ページも,今のように,これはどっちかというと8時間労働プラスアルファで考えているのですね。だけど,それを4時間労働で,あと4時間をこういうふうにするというふうになれば。
○井嶋委員 そうなのですけれども,4時間というふうに先に決めるのではなくて,何と何と何をやるからとっていって,残ったものをやれ,刑務作業だということでいいと僕は思うのですけれどもね。
○菊田委員 今まで職業補導もやっているわけですから,十分やれるわけですよ。
○宮澤(浩)会長 私は矯正協会が怒ったんじゃないかなんて,密かに心配したんだけれども。
○井嶋委員 それは僕はそこはもう無視しちゃって,怒られちゃうかもしれないけれども。
○菊田委員 あれは,今はその方が歓迎するんじゃないですか。刑務作業をするためにえらい苦労をしているのですから。
○井嶋委員 でも,歳入は減りますよ。
○菊田委員 時期としてはいい時期ですよ。そのために苦労しているのですから。
○井嶋委員 100億あるというから,最近は。
○富山調査官 国の歳入が100億弱です。80億ぐらいでしょうか。
○井嶋委員 それは,今のような議論をすれば減ってくることは減ってくるのですけれども。
○滝鼻委員 そういうお金をそれに使えばいいんだね。
○井嶋委員 特別会計になってないから,一般歳入で入ってくるのです。

2.その他

○宮澤(浩)会長 大分議論があれしましたので,例えば何か今日ここにお配りになっている資料についてコメントでもあれば。できるだけ最終が夕方5時で,それより前に終われば解散ということでもいいかと思いますので,そちらから何か御紹介ありますか。
○井嶋委員 一応僕まとめたのだけれども,そのプラスとしてあなたが言っていたような問題点,つまり指導者の養成とか指導体制の確立とか,医療関係者との連携とか,教育スペースの確保とか,予算的なものを伴うものは当然必要なことは間違いないから,これも絶対必要だということをあわせて提言しますから。ちゃんと漏れなく書いてください。
○名取課付 前回の全体会で,井嶋委員の方から,実施しました受刑者アンケートの対象者について,属性を調べてみたら参考になるのではないかということで,既にファックスでお送りしてあったかと思いますが,今日きれいにしたアンケート結果をお配りしています。一つのまとまりが円グラフにした,これは3枚組みのもの。それから次が,表形式のものが2種類ありまして,一つはピンク色で人数のところを色づけしたもの。それからブルーで色づけしたもの。こういった3種類ございます。円グラフの方は,A級,B級,LA,LBという各級別は既にアンケートの本体に分類として入れてあったのですが,それを更に例えば罪名別で見た場合にはどういう比率になるのか。それから2枚目としては,年齢別で見たらどうなるのか。3枚目として,暴力団関係の有無について見た場合どうなるのかということをちょっと調べてみたものでございます。
 これは御覧のとおりでございまして,例えば罪名別でいきますと,A級,B級は当然ながら窃盗とか覚せい剤が多い。LA,LBになりますと,殺人それから強盗致死傷罪というかなり悪質な犯罪を犯した者が多いというようなことになっております。暴力団関係などもかなり端的に出ておりまして,これは関係者ということで,暴力団組員そのものではなくて交友があるというところまで含むものですから,若干A級にも暴力団関係があるというふうに自分で答えた者がおりますけれども,数としては少ない。B級ですとかLBになると非常に多くなるというようなことになっております。
 それから,アンケートの各回答項目について,同じように少し細かく分析してみて,その結果を表形式にしたものでございます。一つは暴力団関係があるかないかによって,回答ぶりに何か違う有意的な差があるかという観点から調べたものでございます。これはなかなか,ここにあらわれた差をもってそう言い切ることがどうかというのはいろんな評価があろうかと思いますけれども,大まかな傾向で言いますと,少し乱暴かもしれませんけれども,暴力団関係者の方が所内のいろんな規律等について厳しい意見を持っております。それから取調べあるいは懲罰,保護房収容の有無等についても,暴力団関係があるという人の方が数が多いというような傾向が見てとれるかなと。大体10ポイント程度差があらわれておるということでございます。
 それから3点目のこのブルーの表ですけれども,これはやはり回答内容について,罪名別に比較してみた場合にどういうことになるかということで調べてみたものでございます。この表についても,いろいろな評価があり得るかなと思いますけれども,このピンクの表と同じような見方をするとすれば,殺人ですとか強盗,強姦,放火,こういったいわゆる粗暴犯を犯した者については,これは刑期が長いということも影響しているのかもしれませんけれども,所内の生活について不満を抱いているパーセンテージが高くなっておりますし,それから取調べや懲罰を受けたことの有無についての回答のポイントが高くなっているということが言えるかと思います。それに比べまして,窃盗とか詐欺罪を犯した者については,比較的職員が公正だったと見ている割合が高かったり,それから守るのがつらかった,又は改めるべき規則の有無のところなんかを見ていただいても,そういう規則があったとする回答のポイントが比較的低いというような傾向がある程度うかがえるところであります。ちょうどその中間ぐらいに位置するのが,この一番右に掲げてあります覚せい剤の受刑者というような感じが,大まかに言えるのかなというふうに思っております。
 次回,この規律の問題ですとかもう一度第2ラウンドとして議論していただく上で,もし御参考になればということで提供させていただきました。
○宮澤(浩)会長 どうもありがとうございました。何か関連して御質問がございますれば,お願いいたします。
○井嶋委員 大変お手数かけまして,ありがとうございました。
○宮澤(浩)会長 あとは別にあれですかね,何か日弁連からの申入書とかいうのは。ここにありますのは,これも日弁連から来た資料ですね。
○名取課付 刑事処遇判例集は,これは東京弁護士会の方からお配りしてほしいというような要望がありましたので,席上配付させていただきました。
○宮澤(浩)会長 分かりました。まだ時間15分ほど残っておりますけれども,この第1分科会というのは非常に重要なテーマが割り振られておりまして,毎回ぎりぎりまで御協力を賜っているわけでありますが,たまには息抜きを15分しても罰せられまいということもありますので,特に御発言の御要望がなければ,今日は大変スムーズに,しかし非常に重要な意見の一致などを見ましたので,残り……。
○滝鼻委員 来週あるのですよね。
○名取課付 来週は全体会になりまして。
○滝鼻委員 全体会議だけですか。
○名取課付 ええ,来週は全体会議です。
○滝鼻委員 じゃ,早目に終わるかしら。そうでもない。
○名取課付 全体会が海外の視察結果の報告,それから前回座長から提示のありました我が国の行刑の沿革をちょっと御説明するのと,それから各分科会の検討状況の報告という,かなり盛りだくさんになるものですから,おおむね夕方5時ごろまでかかる。
○滝鼻委員 今日の続きはいつですか。
○名取課付 12月1日になります。
○滝鼻委員 ここまで行っちゃうわけね。
○名取課付 はい。
○井嶋委員 だから,答申をドラフトするのに必要なことで,ちょっとまだ書けないという部分があったら,次回全部出してもらわないと。こういう意見はちょっと不十分だとか,ここはどうだったかというところを,全部ある程度ドラフトしながら考えて出してくださいね。そうして,皆さんと議論しないといけませんので。
○名取課付 また,ちょっと必要に応じて先生方のところにお邪魔して,事前にいろいろ御相談するかと思いますけれども。
○井嶋委員 12月1日ですから,ドラフトを当然やらなければいけない。お願いします。
○宮澤(浩)会長 では,どうも今日はありがとうございました。


午後4時47分 閉会