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トップページ > 省議・審議会等 > その他会議 > 行刑改革会議 第2分科会 第4回会議

行刑改革会議 第2分科会 第4回会議

日時: 平成15年10月6日(月)
13時00分~15時36分
場所: 最高検小会議室(20階)


午後1時00分 開会

開会

○南会長 それでは,ただいまから第2分科会第4回会議を開催いたします。
 なお,本日,瀬川委員,曾野委員は御都合により御欠席でございます。
 前回は,イギリスの状況につきまして九大の土井教授からお話をいただきました。
 本日は,ドイツの状況について宮澤委員からお話を伺うことにいたします。宮澤委員,お忙しい中,当分科会にお越しいただきましてありがとうございます。ドイツには訴願の制度や行政施設ごとの市民参加の機関としての刑事施設審議会があると聞いておりますので,そのようなドイツにおける透明性の確保のための方策についてお話をいただければ幸いでございます。
 それでは,宮澤委員,よろしくお願いいたします。

1.ドイツの行刑における透明性の確保について

(宮澤浩一委員からのヒアリング)

○宮澤(浩)委員 貴重なお時間をいただきまして,大変畏れ多いと思っています。30分ということでございますので,最初の15分で御説明して,残りの時間を使って御質問を受けたいと思います。
 二つのテーマでありますが,どうも後でいろいろ考えてみますと,権利救済に関しては,こちらの分科会長が御専門でおられると思われますので,重点を施設審議会の方に置いてお話をしたいと思います。
 この施設審議会でございますけれども,審議会という言葉に少しこだわりたいのです。何か非常に重要なもの,重大なものというように思われるのですが,このバイラートという言葉はどちらかというと評議会のようなものでありまして,いろいろ出てきた案件について意見を述べ,勧告をするといった程度のものであります。しかし,法務省の資料として翻訳が出ておりますので,審議会と呼ばせていただきます。
 それから,いわゆる審議会のほかに執行支援員といいましょうか,矯正支援員といいましょうか,素人がかなり活躍しておりまして,熱心に活躍している支援員の中から審議会のメンバーに選任されるという,興味のある関係もありますので,後半にそのことをお話しいたします。
 それから,権利救済でございますけれども,法治国家であるドイツとして,行政行為にかかわる事件は,行政裁判所で手厚く対応がなされているということであります。どの程度手厚いかを調べるため「司法ハンドブック」により数を数えまして,行政裁判所の数や行政裁判所の専任裁判官の数を計算してみました。これも後で御紹介いたします。
 さて,施設審議会に関する法規は行刑法にありまして,162条以下に規定されております。1967年に発足いたしました行刑法改正委員会の審議の第10回がこの審議会に関する議論でありました。そこでは,「行刑に対する公的な参加」,副題が「施設審議会」となっております。初めてドイツでこういう制度が生まれたのかというと,それは違うのでありまして,ドイツでは,1846年にバーデンにブルッフザール刑務所ができました。そのときに,諸外国の例を見ながら一種の執行に対する公的な統制と同時に施設を支援する制度として,監督委員会ができたわけでありまして,これにさかのぼると言われています。
 アルバート・クレブス教授の社会歴史的な考察という論文がありますが,それによりますと,外部の者が施設内をチェックする制度は,16世紀末,オランダに男子懲治場,女子懲治場が設立され,当初はやや厳しい懲らしめの罰という性質を持っていたのに対して,その後,当時の啓蒙思想によって教育改善という考えを加味するという発想で,1600年ごろにアムステルダム懲治場令ができたのだそうです。この懲治場令の中に,名誉職として活動する役職者,レゲントという言葉を使っているのだそうでありますが,その規定があり,これがその後,各国の同種の制度に影響を及ぼしたと書いてあります。例えばアメリカのフィラデルフィア刑務所の1787年,インスペクタースという制度がそれであり,フランスでは1789年に監督委員会,コミッション・デ・サーベイランスという制度がそれなのだそうであります。そういうような制度を加味したのが,先ほど言いましたドイツの制度であった。これがクレブス氏の論文の趣旨であります。要するに社会から隔離された刑務所という場で,そこに収容された受刑者の権利を守り,施設外との関係を維持するのに,施設の職員だけに任せておくのは問題である。外部の人を関与させて風通しをよくする,これが必要だということでできたのだそうであります。
 現行行刑法に戻りますが,施設審議会の機能には,その収容者を世話し,社会に統合させるための機能がある。つまり被収容者の所内生活の世話をし,施設外の一般市民の生活に戻り,社会生活へと円滑に再統合できるような働きかけをする役割。次に助言の機能,受刑者の要望によって,日常生活はもとより釈放後の生活に関する有益な助言をする。そして統制の機能,これは歴史的に一番古い機能なのだそうでありますが,ただ単にコントロールするということではなくて,これは一種の,特に法治国家的な構成部分である。施設の側で,審議会の提案に対して受け入れる,その心の準備ができるには,施設側と審議会との間で信頼のきずながあって初めてできることなのだ。そういう意味で,助言者としての審議会が余り統制するという意識を持ちますと,いわゆる機能の役割葛藤になってしまう。悪意で監督をするのではなくて,施設側と協力し,積極的にコントロールする,そういうコントロールは,それぞれの立場を相互に尊重しながら施設長側と審議会の間で交わされる対話から生ずると書いてあります。それから,公開の機能,これは一般社会と施設内という閉鎖社会との仲介者の役割を演ずるものであります。要するに外部に開かれているという実質をいかに実現するかというのが重要なことである。そのために構成委員として,外部社会の目をいかに具体的に,しかも効果的に取り入れるかということが重要である。レジュメにありますように,施設所在地の住民の代表である地方議会の議員を加える。マスコミ関係者をも任命する。ただ,施設内ではいろいろな守るべきプライバシーがあります。そういうものに対する世間の好奇の目にさらすことのないように,例えば施設長とよく話し合って,必要最小限のことを外に書くというようにマスコミの人には自制を促すと実務家のシーボルとゼンフの論文の中で指摘されています。
 ところで,体系書として一つのスタンダードな本でありますが,マインツ大学のベーム教授の本の中で,各州の法律によって定めると書いてあるけれども,残念ながら法律で定めている例はなくて,そのすべてが州の司法省の内規である行政規則に規定しているのが現実である。その実施の例をいろいろ挙げているのですけれども,労働組合の代表とか,経営者団体の代表,あるいは職人組合,その他の社会的諸機関と連携をし,受刑者の社会的再統合に当たって援助するように努める。さらに,励ましたり,提案をしたりして協力をする。さらに,受刑者の要望によってその話を聞き,受刑者と矯正職員の間の調和を保つ仲介行為をし,監督官庁に提案をする。こういういろいろなことのできる市民を得るのは非常に難しいとも指摘しています。さらに,行刑法では,審議会の任務に関して,施設を訪問し,職員にチェックされることなく受刑者と連絡を取り合う権利がある等々のことも書いています。それから,受刑者の執行の事例に関して異議がある場合に,その異議については,行政裁判所等々の機関がありますので,この審議会はそういう意味で異議を扱う機関ではない。したがって,受刑者に関する医師の書類を閲覧する権利はない。そのような地位にあるのだということです。そして,地方自治体の議員,市会議員,郡の議員,あるいは執行施設の所在地にある市や郡の官署の幹部,郡行政委員会,市の参事等々のメンバーが,司法大臣に審議委員として任命を提案され,その提案を受けて大臣が任命する,そのようなことであります。
 以下,ベーム教授が述べている州の制度の一例を示します。非常に偶然に,私はこのラインランド・ブファルツ州の行刑法規集を持っておりまして,そこに完全な形で執行令があり,かつ施設審議会令があるものですから,それを箇条書き的に書いてみました。ここにあるように,非常に詳しく,構成メンバーがどういうものであるか,議員だとか自治体の代表者であるとか,それから,利害関係のある者はいけないとか,そういうようなこと。そして,どういう委員が選ばれるか,その議決については3名の出席でいい,多数決によるとか,それから,非常に問題のあるような人の任命を撤回するにはどういう手続があるとか,それから,審議会のメンバーの権利・義務についても,ここにありますように書いてあります。それから,おもしろいことに,日当なども出ております。受刑者の処遇については,どういうことをやるかというと,この4ページの一番上のところにあるような事項について調査する権利があるというふうになっております。そして,その場合に,指名した矯正職員を会議に呼ぶことができる。その場合には施設長に事前に断りをし,そして,施設長はその会議に出席をさせるというようなことも出ております。それから,委員会として報告書を出すとか,そういうようなことが出ておりました。
 これは1990年代でしたか,96年かその頃ですけれど,日当が出ていまして,かなり安い日当でやっているようであります。同一の日に数回の会議,例えば今日みたいなことでしょうけれども,そういう場合に二倍を超える収入減,二回分ですか,それ以上の減収があったら,それを補てんするというようなことが書いてあります。それとか,旅費とか,そういうことです。
 そして,施設支援員というものについて,同じ位置づけのメモがやはり行政令の中にありまして,名誉職の委員というのは,施設長の個別命令に良心的に従うという義務づけがある。それから,その被収容者や家族から贈り物を受けてはいけないとか,同意なくいかなるものも渡したり,あるいは受け取ったりしてはならないというような細かい義務規定がありまして,内容的には,先ほどの被収容者が余暇活動するときの,音楽の指導とか絵画の指導とか,生活についてのいろいろな不安などについての相談をするといったようなわけで,日本で言いますと矯正保護婦人会のメンバー,あるいはBBSの人が,もし可能であるとすれば少年の施設に行っていろいろな活動をするようなものかなというふうに思いました。そういうメンバーから委員が選ばれるということであります。
 もう時間がありませんが,ドイツの行政裁判所について少し話します。日本はほとんどが行政委員会で処理されまして,行政訴訟でもって争うということは余り一般的ではありません。ドイツでは,これは非常に一般的であります。行政事件の最高裁判所はベルリンにある連邦行政裁判所です。ドイツは15の州から成っておりますが,その15の州にそれぞれ高裁レベルの行政裁判所があり,地裁レベルの行政裁判所は52庁あります。1998年のデータでありますが,行政裁判所にかかわりを持つ裁判官の総数は約2,500人,そのほかに約140人の,正式メンバーではありませんけれども,いわゆる試用期間の行政裁判官がいるということであります。
 最後に,国内での権利救済手段が尽きても,ヨーロッパ共同体に属する国には,ヨーロッパ人権裁判所に手紙を送ることができる,検閲を受けないで送ることができる。そして,その申立状に合理性があるということになりますと,ヨーロッパ人権裁判所で,それに対する審理がなされる。余り多くの例はないと言われています。
 最後に,ヨーロッパ人権委員会の査察が抜打ち的に行われるということが,ヨーロッパ共同体に属する国の矯正関係者には一種の脅威で,もし問題があると,受刑者からの問題提起等々に合理性があるというようなことが委員会によって確認されますと,その委員会はその施設を統括する国又は州の政府に対して,委員会としての意見,勧告を出すということで,受刑者の人権を守っているということです。
 日本の府中刑務所のドイツ人の受刑者が,ヨーロッパ人権裁判所にそれを出そうと言い,それをどうしたらいいかということで日本の法務省が大分悩んだという話を,ドイツ領事館の人から聞きましたが,「日本は無理でしょう。アジア人権裁判所というものができたら話は別でしょうけれどね。」というようなことを話したことが記憶にあります。
 大変申し訳ありません。時間をオーバーしましたけれども,皆様の方の御都合で,お許しいただければ,知っている限りでお答えいたします。
○南会長 ありがとうございました。
 海外視察に関する打ち合わせが午後1時30分から予定されております関係で,余り時間がございませんが,せっかくの機会でございますので,御質問がありましたら,どうぞよろしく御発言ください。
○久保井委員 お尋ねしますが,この行政裁判所の中における行刑に関する事件数というのは,どのぐらいあるのでしょうか。
○宮澤(浩)委員 申し訳ありません。この短い時間で,そこまではとても調べられませんでした。
○久保井委員 それから,この権利救済ですが,ドイツでは行政裁判所に提訴するということであり,日本でも普通の裁判所に提訴する道が開かれておりますが,その裁判所に行くまでの訴願,そういうものは日本と同じようなことなのでしょうか。
○宮澤(浩)委員 私が読んだ限りでは,無償で請願を施設に出して,施設から管轄の行政裁判所の方に送られるという方法と,この辺がまだ十分に調べがついていないのですが,ドイツにはいわゆる執行裁判所という制度があります。シュトラフロフォルツークスカンマーといいます。これは地裁レベルで,地方裁判所の中に特別部として置かれているのだそうです。執行裁判所というと,日本では特別な裁判所が別にあるのかと思われるかもしれませんが,特別な建物があるのではなくて,地方裁判所の中に令状部みたいな形でフォルツークスカンマーがあって,これは単独審なのだそうであります。フォルツークスカンマーに異議が行くことが教科書に書いてあります。ですから,行政事件として争うというような場合と,それから,いわゆる地方裁判所の一種の執行部に行くものを,どうやって分けるかというのは,そこまでの調べはできていませんが,教科書の中では権利救済のところで出てくるわけです。
○久保井委員 ドイツについては教科書の上では,労働裁判所とか行政裁判所とか,専門の裁判所が,例えば青年後見については後見裁判所とか,そういう言葉が出てくるのですが,この行政裁判所というのは,日本の裁判所の行政部みたいなもので,建物の中にそれを扱う部があるというだけではなくて,独立の建物の行政裁判所というのがあるのでしょうか。
○宮澤(浩)委員 普通はそうなのです。
○久保井委員 あるのですか,別の裁判所が。
○宮澤(浩)委員 はい。というのは,裁判所の所在地を見ても,地方裁判所の所在地と違う市にあったりするのです。
○久保井委員 建物自体が別にあるわけですね。
○宮澤(浩)委員 はい。おもしろいなと思ったのは,ドイツは,いわゆる旧西ドイツはそうなのですが,旧東ドイツが統合した後の1992年に行きましたとき,旧東ドイツには裁判制度がほとんどきちんとしていなかったので,グライフスワルトでは,昔の国家保安局の建物を使って,看板が五つぐらい出ていまして,これは労働裁判所であり,行政裁判所であり,地裁であり,社会裁判所であるとなっていました。戦後の日本でも地家裁が一つの建物にあったことがあります。ドイツ統合直後の旧東ドイツはそうでした。ところが旧西ドイツは,最初はそういうところもあったのでしょうけれども,だんだんと経済的によくなって余裕が出まして,固有の裁判所の建物をどんどんつくりました。これは,今度いらっしゃったら是非それを見ていらっしゃってください。
 それから,ドイツの場合,区裁判所という一番下の裁判所がありますが,あれは少年裁判所を兼ねることがあるのです。少年裁判所というのは独特の施設とかシステムはなくて,区裁判所の少年部という形で少年裁判所と名乗っています。ですから,理論的には400から500ぐらい,網の目のように少年裁判所があるのです。日本でいう簡易裁判所レベルですけれども,訴訟物はずっと大きいのです。
○久保井委員 それから,私だけお尋ねして申し訳ありませんが,この施設審議会は,イギリスの訪問者委員会とよく似ていると思いますけれども。
○宮澤(浩)委員 施設ごとにあるわけです。
○久保井委員 施設ごとにあるのですね。それで,この審議会の委員というのは,一般の市民が委員を務めておって,それで日当をもらったりするということで……。
○宮澤(浩)委員 一般の市民というか,例の選挙人名簿で選ばれるような一般の市民とはどうも思えませんで,市民代表ということで市会議員だとか郡会議員とか,そういう人が出てくるということはあるようです。というのは,5人から7人ぐらいですから,審議会のメンバーは。
○久保井委員 そうすると,イギリスの場合は,要するに刑務所の運営が適法に適正に行われているかどうかをウォッチする機関として市民の訪問者委員会と,それから,今度は国家機関としての査察といいますか,査察局による査察と二つが相重なって適正な運営をウォッチングしているということですが,ドイツの場合は,施設審議会と国の機関によるものはどうなっていますか。
○宮澤(浩)委員 それは,官庁による監督という別のものがありまして,監督官庁,多くは司法省か,あるいは,何しろドイツは地方自治体が非常に強い力を持っていますから,そういうところの行政委員会のメンバーが査察委員というふうになって,そういうコントロールが別にあると思うのです。しかし,施設審議会の場合は,その施設ごとの評議会みたいなものですから,一つの州にはものすごくたくさんの委員がいるわけです。
○久保井委員 英国の訪問者委員会もそうです,施設ごとですね。そうすると,国の機関による査察制度というものはどうなっていますか。
○宮澤(浩)委員 それは州だろうと思います。
○久保井委員 そうですか。先ほどのペーパーの中に,査察権限のことが出てきましたが,あれは何でしたか。
○宮澤(浩)委員 項目が別になっておりまして,実は私も日ごろは教科書でさっと読んでいるものですから,細かい内容を今回調べて,こういうことまで決まっているのかということを初めて知ったようなことでありますので。
○久保井委員 このヨーロッパ人権委員会というのは,EUの加盟国はみんなこの人権委員会の査察を受けているわけですね。
○宮澤(浩)委員 それこそEUの加盟国である以上はその下にあるわけでありますけれども。
○久保井委員 これは,別に個別的な案件を審査するのではなくて,抜打ち的に刑務所がどうなっているかを調べているのですか。
○宮澤(浩)委員 そういうことだと聞いております。場合によって,受刑者からの話によると,これは問題だというようなことで行くということです。ですから,こう言っては何ですけれども,ギリシャ,スペイン,ポルトガルというようなところは,恐慌を来たすようなことがあると聞いていますけれど,ドイツなどの場合は,フランスにしても,余り手を抜いていると,人権委員会の査察があるぞというようなことでの威嚇力が発揮されているようなことを聞いておりますが。
○久保井委員 どうもありがとうございました。
○大平委員 一点だけ,メンバーについてですけれども,先ほど先生がおっしゃったように議員の方とか,そういう方ということなのですけれども,広く一般市民の中からメンバーを構成しない理由というのは,特別にあるのですか。
○宮澤(浩)委員 それは,先ほどのベームの教科書の中に指摘されていたように,いろいろな官庁等,労働組合とか経営者団体とか,それから職人連合,そういったところの意見などを聞くには,そのメンバーが委員として出てくるのがいいのですけれども,一般市民でそういうようなものにまでいろいろなルートを持っていて,それでメンバーになり得るというのは相当難しいことだということなのです。しかも,月に一回は会合に参加するようになっているでしょう。ですから,そういう意味で,普通の人が選挙人名簿で選ばれることは相当難しいのだろうなと推測しています。
○大平委員 例えばその選挙人名簿で,抽選でとか,そういうことではなくて,例えば地域のそれぞれの団体からの推薦とか,もう少し幅広いということが,なぜドイツではできないのかなと。どの文献を読んでも,なかなか書いていなかったものですから,すごく疑問だったのです。
○宮澤(浩)委員 ドイツで人に会う予定ですから,そのことを聞いておきます。それでうまい答えがあったら,帰ってきてから文章で出します。先ほど施設の執行支援員というのがいると言いましたが,これは完全なボランティアです。それで,この支援員の中から評議会のメンバーが選ばれるというふうになっている意味というのは,実はそういう一般の市民でも矯正に関心があり,いろいろな受刑者の問題に協力している人を選ぶ道をつくってあるので,選挙人名簿で選ばれる裁判委員制度のようなものにしないのかなということが一つです。
 もう一つは,非常に重要なことが,カイザー教授の本の中に出ているのですけれども,いわゆるオンブズマンという制度がありますね。オンブズマンというのがいろいろな国では発達しているらしいのですが,ドイツの場合には,残念ながら施設オンブズマンという制度がない。それに代わる制度として,施設審議会があって,そこで外部の意見が反映する,とあります。やはり矯正関係は特殊な技術とか経験が要るので,素人がメンバーになっても,本当の意味での受刑者に対する支援とか保護ができないのではないかという配慮があるのかなと思いますが。来週ドイツ犯罪学会がミュンヘンであるので,今の御質問をぶつけてみます。
○大平委員 時間がないのですけれども,義務付け訴訟はドイツでできますね。そのケースで何か御存知ありませんか。
○宮澤(浩)委員 知りません。これは,むしろ南先生の方がお詳しいと思います。
○大平委員 では,後にいたします。
○南会長 時間もまいりまして,いろいろお聞きしたいこともたくさんございますが,本当に残念でございますけれども,宮澤委員にお伺いするのはこの程度とさせていただきたいと思います。
 なお,御質問事項等がありましたら,事務局を通じて宮澤委員にお尋ねをさせていただきますので,事務局に御連絡をお願いしたいと思います。
 宮澤委員,お忙しいところ本当にどうもありがとうございました。
○宮澤(浩)委員 いろいろ不十分で申し訳ありませんでした。
○南会長 どうもありがとうございました。
 それでは,当分科会は海外視察の打ち合わせのため,一時休憩としまして,午後2時から再開いたします。よろしくお願いいたします。


午後1時34分 休憩
午後2時07分 再開

○南会長 それでは,ただいまから開催をいたします。
 かねてお話ししておりました行政不服申立制度について,私の方から報告をさせていただきたいと思いますが,本日は,参考のため,矯正局の渡部矯正監査室長,佐伯専門官に同席していただきたいと思いますが,よろしゅうございますか。

<異議なし>
 それでは,私から,法律の専門の先生を前にしてお話しするというのも非常に恐縮でございますが,お配りをいたしましたレジュメに従って報告させていただきたいと思います。
 その前に,先ほど久保井委員から宮澤先生に御質問がありましたが,刑務所長に対する訴願というのは,これは先ほどのドイツの資料の108条というところにありまして,もう一つ,109条は裁判所に対する申請というものがあるのです。これは,行政裁判所ではなくて,109条以下にかなり詳しい規定がございますが,これは通常裁判所の,先ほど言いました刑執行部というところに申し立てるということです。だから,刑事裁判所です。その中に刑執行部というものがあるのです。そこへ申し立てて,そこでだめな場合には,今度は通常の高等裁判所の,やはり刑事部というのがあるのです。ストラフゼナートと言いますが,高裁の刑事部に対して,抗告をするというのがあるのです。これが行刑法に定められているのです。抗告については,117条が管轄を定めています。
 もう一つ,監督はどうなっているのかというお話がございましたが,監督については,151条に,行政施設に対する監督の章,第2章の151条にありまして,これは意外に機能しているようです。
○久保井委員 これは行政ですね。なるほど。
○南会長 行政監督です。
 もう一つは,先ほど言った162条の施設審議会というものがある。大体そういうことによって,いろいろな組み合わせによって適正な運営を期しているということのようです。
 そのほか,憲法裁判所への憲法訴願があります。

2.我が国における行政不服申立制度について

(南会長からの説明)

○南会長 それでは,私から説明させていただきます。新聞の報ずるところによりますと,野沢法務大臣は衆議院解散によって人権擁護法案は廃案になるというような見通しを示しましたが,これは修正の上で国会に再提出する。その際,これは日弁連もそうだと思いますが,野党側が人権救済機関の人権委員会を法務省でなく内閣府の外局として設置することを求めていることに対して,否定的な見解を示した。これは9月26日付の新聞報道です。それで,一体なぜ内閣府の外局でなくて,法務省の外局とするか,あるいは法務省の所轄とするかについては,これは述べられておりません。受刑者の権利救済機関ですが,それについても日弁連は刑事施設審査会は法務省の外に置かれるべきであるという提言を行っております。受刑者の権利救済の制度設計に当たりまして,一体,不服審査機関,あるいは権利救済機関というものをどこに置くかというのは,とても重要な問題でございますので,今日私から,日本の憲法及び行政組織の基本構造についてお話をいたしまして,そして,皆様の御意見を承りたいというふうに考えております。報告は,お配りいたしましたレジュメに大体従って行わさせていただきます。
 まず,「不服審査制度の基本構造」で,(1)の「訴願法から行政不服審査法へ」とありますが,我が国におきましては,法治国の体裁を整えるために明治23年,これは明治憲法ができた年でありますが,訴願法が制定されました。訴願法というのは,御存知のように権利救済の制度としては不備不完全であるということが指摘され,何遍も改正案が出たのでありますが,昭和37年まで存続いたしました。それはなぜかといいますと,政府において改正の意欲がなく,また,占領軍も訴願法の改正には関心を示さなかったということによるわけです。占領軍といいますか,GHQの主な関心は,司法制度の改革,すなわち行政裁判制度というものを廃しまして,司法裁判所が行政事件の裁判を行うということにしたことと,それから,個別の行政領域,例えば国税関係領域における不服審査の制度を改革することに向けられたわけであります。
 昭和37年に,やっと訴願法が改正されまして,そして,これに代わるものとして現行の行政不服審査法が制定されました。この法律は,やはり訴願法をベースとして制定されたので,私の見るところでは不備欠陥が少なくなく,そして,実際にも権利救済の実が上がっていないというのが実情でございます。その理由は,不服審査を専門に扱う職員がいない。全くいないわけではないですが,ほとんどの場合いないということにもよるわけでありますが,それ以外にも,私は,不服審査制度自体の構造的欠陥によるものと考えているわけです。構造的欠陥と申しますのは,一つには不服審査機関の構造というものと,それからもう一つは不服審査手続の構造,この二つに要約できると思うのです。
 次に(2)になりますが,我が国の行政不服審査制度というのは,処分庁に対する異議申立てと,それから,その上の上級庁,監督上級庁でありますが,それに対する審査請求。処分庁に対する不服申立てのことを異議申立てと言い,それから,上級庁に対する不服申立てを審査請求とする。形式的な区別ですけれども,その二つから成り立っております。これは,いわば自分がやった処分を自分が審査決定するというようなことであって,自ら蒔いた種は自分で刈り取るというようなことからいいますと,そういうふうな自制作用とか自浄作用というようなものも必要かもしれません。
 しかし,英米法には,事件の当事者は裁判官となることはできないというような原則があります。審査に当たっている者というのは,自分ではいかに公正に当たっているつもりでも,これを国民の目から見ますと,自分のした処分にこだわるのではないかとかというようなあらぬ疑いも持たれることになるわけであります。公正な審査も大事ですけれども,また,公正らしさといいますか,そういう外形的,外観的な公正性も大事だと思うわけであります。
 そういう公正らしさを確保するためには,処分をする者と審査をする者とは分離されなければいけないと考えます。しかし,我が国では,およそ行政権というのは,処分権と,そしてまた,その処分を見直して裁決をする裁決権,この二つから成り立っている。処分権はいわば首だとすれば,裁決権は尻尾に当たるわけでありまして,その二つを,処分権と裁決権とをあわせ持つことによって行政権というものが首尾一貫するという考え方が非常に強いわけです。
 裁判所によってコントロールされるのは,これは憲法の定めるところだからやむを得ないけれども,自分以外のそういう行政機関によってコントロールされるべきではないと。それで,もしそういうことが認められるなら,その処分庁側にもやはり出訴権というものを認めるべきだという考えが非常に強いわけでありまして,現行の行政不服審査法はこのような建前に立っているわけです。これが明治以来の行政権の独自性とか,あるいは自己完結性と呼ばれるものであります。
 (3)でありますが,異議申立ては処分庁に対する不服申立てであり,そして,これは異議審理庁と言っておりますが,異議審理庁と異議申立人とが相対して審査,審理決定を行うというような,これは一般に対面審理構造と言っておりますが,対面審理構造がとられているわけです。異議審理はまさに処分庁と異議申立人とが相対して審査するというものですが,審査請求の方は,一見,処分庁と審査請求人とが対立して,そして,審査庁が第三者的立場から審理,裁決するというように見えますが,実は処分庁の存在というのは,審査庁の陰に隠れてしまって表には出てこないという構造になっているわけで,審査請求人と処分庁との接触というようなものは全くないわけです。そうしますと,やはり審査請求にしても異議申立てと同じように審査庁と審査請求人とが相対して審理するという対面構造がとられているわけです。このように審査庁の第三者性がなく,しかも,審査請求人の防御権の保障というものは不十分でございまして,このことから,我が国の不服審査制度は構造的に見まして,私は原処分庁側に有利にできているというように考えております。
 3の「独立行政委員会」でありますが,私は昭和25年に旧制の大学に入りました。ここに昭和26年版の小六法があります。これが残っておりまして,大六法は高くて買えなかったのです。この小六法でも当時300円したのです。これを見ますと,国家行政組織法というものが既にできているのです。昭和23年に国家行政組織法ができていますが,そこで,各府省の外局として挙げられている委員会は,これは人事院を除きまして何と24もあるのです。独立行政委員会が24あります。だから,人事院を加えると25ということになります。廃止されたものもありますから,もっと多かったのではないかと思うのですが,現在のものを調べてみますと,現在は内閣府に置かれているところの国家公安委員会,そして,今度,公正取引委員会が内閣府に置かれましたが,この二つと,それから,各省に置かれる委員会は四つなのです。だから,六つにすぎない。25もあったのが,今では六つに整理されてしまったということです。
 我が国で,独立行政機関と行政法学上呼んでおりますものには,会計検査院と人事院があります。会計検査院は憲法に根拠を持っておりますので,これは行政組織の中には組み込まれていないので,国家行政組織法にはこれは掲げられておりません。人事院は,これも御案内のようにフーバー勧告によって導入されたものでありますが,その人事院の設置に当たりましては,GHQのフーバー等と,それから,日本政府との間に大変な激論が交わされたわけです。
 実は私は,そのときの英文の資料ですが,入手いたしまして,これは膨大な資料ですけれども,要約して申しますと,日本政府は,行政権は内閣に属している,だから人事行政も行政権の中に入るわけだから,内閣から独立の人事院を設置するということは三権分立に違反し,憲法に違反するということを,これは強硬に主張しているわけです。これに対しましてGHQの方は,国会は国権の最高機関なのだと。だから,内閣から独立する機関も法律で定めれば,これは設置できる。国会は国権の最高機関だから,法律で定めれば内閣から独立の機関も設置できると言っているわけでありますが,結局大論争の末,国家公務員法の中で,これは3条の2項というところですが,内閣の所轄のもとに人事院を置く。人事院を内閣の所轄の下に置くと定められて,決着を見たわけです。
 なお,所轄というのは,いかにも管轄するところというふうに思われるのですけれども,法令用語としては,所管とは違ってかなり独立性が高くて,しかも,大臣の指揮監督権が及ばないというような意味に用いられております。
 (3)の旧土地調整委員会でありますが,この土地調整委員会というのは,これは私も委員を務めておりまして,現在の公害等調整員会の前身であります。この公害等の「等」の中には,土地調整委員会の仕事が入っているわけです。
 この土地調整委員会はGHQの勧告によって設置されたものでありまして,鉱業であるとか,砂利の採取業であるとか,岩石など,それから一般公益,あるいは産業との調整の機関として,これは,例えばここは鉱業をやってはならないというような鉱区の禁止区域を定めるとか,そういうふうな規制機関として,アメリカの制度を見習って昭和25年に設置されたものであります。
 昭和26年に,土地収用法の改正に当たりまして,実は建設省と土地調整委員会との間に,これまた大論争がありました。土地調整委員会の当時の委員長は,民法の我妻栄先生だったのですが,GHQにはR.ダンカンという,この人はそういう土地の利用調整についての専門家ですけれども,およそ土地収用の事業認定処分,これは当該土地を収用するのが収用に値する公益性を有する事業であるかどうかということを認定するわけでありますが,そういうふうな事業認定処分というものは建設省から独立した公平な機関である土地調整委員会の権限とすべきだというふうに主張したのですけれども,建設省は猛反対をしたのであります。そこで,とうとうGHQも土地調整委員会の方も譲歩いたしまして,事業認定権は,これは本当はおかしいのですけれども,事業主体でもある建設大臣に属することとしたのですが,せめてその事業認定に対する不服申立ては,土地調整委員会に申し立てて,そして,土地調整委員会が公平かつ独立の立場から審査,裁決することができるようにというような案を出したわけであります。
 ところが,これに対して建設省は,こういう理由を挙げております。大臣のした事業認定処分を土地調整委員会が覆滅することになる。もう一つは,大臣処分を覆滅し得るのは閣議か裁判所以外にはあり得ないと。こういうふうにして,どうしても譲らなかったのです。結局,これは大論争に発展したのですけれども,そのころ,法務省の前身である法務府法制意見長官が調整に入りまして,その事業認定あるいは収用の裁決についての不服申立てについては,建設大臣が裁決を行う前に土地調整委員会の意見を聞かなければいけない。裁決をする前に意見を聞かなければならないと。これは現在でもそうです。現在でも,事業認定とか収用裁決についての不服申立てがあった場合には,建設大臣は公害等調整委員会の意見を聞かなければならない。事前に意見照会をするというふうなこととされて,ようやく決着を見たということであります。
 (4)の旧協議団,これは昭和23年にシャープ勧告が出されました。シャープはその勧告の中で,課税処分を行った者が,不服の審査を行うのでは,納税者から見て到底公正な審査であるとは見られないであろうとして,アメリカのコンフェランス・グループスと言いますが,協議団制度の導入を勧告したわけです。アメリカのその協議団制度というものは,税務署と納税者の間に入りまして,協議を進めまして,そして,第三者的な立場から不服を解決するというような制度でありますが,日本側はまた,この制度の導入にも非常に強く反対をいたしまして,結局,国税局長が不服審査の裁決をする場合には,その国税局の付属機関,実質は下級機関になりますけれども,その協議団の議に付しまして,そして,その協議団の議を経て裁決を行うということになったわけであります。
 このように各府省に独立の行政委員会というものを設置するということは,占領下に占領軍の力をもってしてもできないぐらい強い官僚の抵抗というものがありまして,講和条約の発効,このときとばかり独立の行政委員会はその大部分が廃止され,あるいは,その諮問機関とか審議会に改組されたわけであります。
 このように独立規制行政委員会について,そういうふうなものができないとする考え方というのは,実は次のような憲法理論及び行政組織法理に支えられているのであります。これが,4の「行政組織をめぐる理論上の問題点」です。
 憲法65条は,行政権は内閣に属するというふうに定めております。しかし,内閣がすべての行政事務を処理すると,内閣というのは合議制の機関で,少数の大臣の集まりですから,それがすべての行政事務を処理するということは不可能ですから,各府省の大臣がそれぞれの行政事務を分担管理することになっております。これは国家行政組織法の5条1項です。すなわち行政事務を府とか省に分担管理させることによりまして,そして,権限を分配するといいますか,行政事務の抵触を防ぐとともに,その省が所管するところの事務の管理については,その一番トップである大臣が責任を負う。これは大臣責任制と申しておりますが,大臣が責任を負い,そして,大臣は内閣に常に列席しているわけでありますから,内閣を通じて国会に対して連帯責任を負うというような体制がとられております。
 このような組織体制の下におきましては,行政事務はどこかの府省に所掌させなければならないわけでありまして,内閣であるとか,あるいは各府省から完全に独立した組織を設置するということは,結局その事務を所管する大臣が責任を取ることができなくなるわけでありまして,憲法及び国家行政組織法等に違反することになるというような考えが理論的な支柱となっているわけです。
 以上は,これは政府の公定解釈でありまして,また,公法学会,憲法・行政法学会の通説といえると思います。
 実を言いますと,私は違った考えを持っているのです。私の考えというのを申し上げます。これはごく少数説ですが,憲法41条は,国会は国権の最高機関であって,国の唯一の立法機関であると定めている。憲法76条は,すべて司法権は裁判所に属すると書いてある。これに対しまして,行政権は一体どうなのかといいますと,「最高の」とか,すべて司法権というような「すべて」とか,あるいは「唯一の」というような言葉がなくて,単に行政権は内閣に属すると定めているにすぎないわけであります。また,憲法を見ますと,内閣の統括下に行政事務を分担管理する行政各部を置くということについては,どこにも書いていないわけです。これはどこが定めているかというと,結局それは国家行政組織法で行政事務の分担管理というものを定めているわけであります。
 さらに,これは根拠になるのかどうか分かりませんけれども,英文憲法を見ますと,行政権が内閣に属するというのは,実はアメリカと同じくエグゼクティブ・パワーとなっていて,執政権です。執政権は内閣に属するというふうに書いてあるわけですが,これを知ってか知らずか,分かりませんけれども,その翻訳に当たって,行政権は内閣に属すると定められたわけです。
 アメリカにおきましては,執政権は大統領に属するとなっておりまして,実はアドミニストレーションとか,あるいは行政権,アドミニストラティブ・パワーという言葉は憲法には一言も出てこないわけです。要するに大統領,あるいは大統領以下の各省は,いわば政策の企画立案や政策決定に当たる省でありまして,規制的な事務というのは,今は少し変わってきたのですけれども,行っていないのです。だから,その規制事務を行うのはどこにやらせるかということで,これは裁判所も議会もできないし,それから,大統領も憲法上定められた権限がありますのでできない。今言ったような国家の重要施策にかかわるような企画立案等の決定だけです。それから,裁判所も議会もそういうことはできないというようなことで,結局独立規制委員会が,いわば政府の,頭なき第4部門としてできたのであります。私は,そういうふうないろいろな見地から内閣及び各府省から独立した行政委員会というものを置くことは,憲法に違反しないというのがねてからの主張であります。
 しかし,この私の考えに対しましては,例えば久保井先生が師事されたという柳瀬良幹先生は,すべてとか,唯一のとか,最高というのは,「やっ」とか「おっ」というようなかけ声にすぎないと,言われていました。単なるかけ声にすぎないのだと。こういうふうなかけ声論というのが,これが本当に公法学会の通説になっているわけでありまして,私の考えというのは,残念ながら少数にすぎないのです。「すべて」とは確かに憲法には書いていないけれども,これはすべて行政権は内閣に属するという意味だというのが政府見解であり,学会の通説でございます。
 しかし,それでも私のような考えは,一時多少支持者がありまして,勢いを盛り返してきたこともあるのですけれども,こういう私の考え方,見解を封ずるという意図があったのかもしれませんけれども,昭和58年でしたか,国家行政組織法の改正によりまして,第3条の国の行政機関,例えば省には,「法律の定める所掌事務の範囲内」と,自分のところの定めている所掌事務の範囲内で不服審査事務を司らせるための合議制の機関を置くことができると,こういう規定ができ(8条),これを私は知らなかったのです。いつの間にかこういうものが定められているわけです。だから,所掌事務を所轄する,そういう事務を所轄するところの省に,不服審査事務を司らせるための合議制の機関を置くことができると,こういうふうにしまして,当該事務を所掌する各府省に不服審査機関を置くこととされまして,この結果,国家行政組織法上,規制事務から組織上完全に分離独立させるということは不可能になったと言えると私は思います。
 のみならず,先般の行政改革によりまして,いわゆる官主導よりも政治主導というものがこれらを強化して,そして,大臣責任を明確化するという名の下,閣議決定等により,第三者機関である不服審査機関,その他の審議会等の権限というものが縮小されました。それから,設置することも制限され,権限も縮小されました。そして,大臣処分に対して法的な拘束力を与えるような,法的に拘束するような,そういうふうな審査機関というものは作れなくなってしまっているわけで,意見を申し出るとか,せいぜい勧告をするとか,そういうふうな純粋な諮問機関にされてしまったわけです。これは,最近できました証券取引等監視委員会であるとか,情報公開審査会などを見ましても,みんな勧告権しかない。それから,今度の人権委員会もそういうふうな勧告権ということになっております。
 このように第三者機関を新たに設置するには,その事務を所掌する,扱うところの省に置くこととされているわけでありまして,人権擁護法案が人権委員会は法務省の法務大臣の所轄に属すると書いてあります。法務大臣の所轄に属するとなっておりまして,内閣府に置かれなかったというのは,これは人権擁護に関する事務は法務省の所掌事務とされております。これは,国家行政組織法にもありますし,それから,中央省庁等改革基本法にも人権擁護に関する事務は,法務省の所管事項だと書いてあるわけであります。そういうことで,人権擁護に関する事務は法務省の所掌事務とされまして,内閣府の事務とはなっていないから,人権委員会は法務省の外局とされたのだと思います。
 聞くところでは,人権擁護法を作成するための推進審議会でしたか,その審議会におきましても,人権委員会を法務省に置くということは,当然のこととして,どこの省に置くかということは全く議論されなかったということを聞いております。
 もっとも,今申しましたように法務大臣の所轄の下に置くとしましても,所轄というのは独立性が高くて,法務大臣の指揮監督権は及ばないということではあるわけであります。
 独立の行政委員会といいましても,例えば公正取引委員会もありますけれども,公正取引委員会も,改正前までは,総務大臣の所轄に属するとか,あるいは中央労働委員会も厚生労働大臣の所轄の下に中央労働委員会を置く。それから,国家公安委員会も内閣総理大臣の所轄の下に国家公安委員会を置くとされております。そういうわけで,当該事務を所掌するところの府省に置かれているわけです。
 そこで,5のところになりますが,こういうふうに現行法の下におきましては,不服審査機関は規制事務を所管する府省に置かれまして,その所管省以外の他の省,例えば内閣府に置くことは,これはできないことになっているわけです。他の省に,例えば内閣府に置くとすれば,所掌事務を,例えば人権擁護事務まで内閣府に持っていかなければ,これは置けないと,そういうふうに移管しなければならないのでありますが,これはとても不可能だと思うわけで,だから,そういう所管省に置きながら,一体その規制と審査とをどうやって機能分離を図るかということが問題になるのではないかと考えているわけです。
 ただ,実は私も,長年,不服審査事務を実際にやってきたわけでありますが,実際問題としては,審査機関が規制機関から遠くなればなるほど,この真相究明というものが非常に困難になる,分かりにくくなってくる,監視の目が行き届かなくなるというのは,これは事実として言えるのではないかと思います。完全に独立した裁判所の場合には,余計これは難しくなるのですけれども,遠くなればなるほど,積極的な協力が得られないからかも分かりませんけれども,真相の究明というものが困難になってくるというように思います。
 それから,いろいろその実例を挙げますと,遠くなればなるほど真相究明が困難になる一つの例として,原子力委員会及び原子力安全委員会の例がありますが,従前は原子炉の設置許可処分については内閣総理大臣の権限だったわけです。ところが,その後は,原子炉の許可権が通産省だとか文部省だとか科学技術庁,それから運輸省というように移管されてから,原子力委員会あるいは原子力安全委員会の監視の目というものが行き届かなくなってしまって,いろいろな不祥事が出たことからも分かりますように,その機能を急速に失っていったと一般に言われているわけです。
 内閣府に置きますと,独立性,公正性というものが担保されまして,その目的や機能というものが発揮できるかというと,必ずしもそうではなくて,例えば国家公安委員会,あるいは今言いました原子力委員会の実績が示しているのではないか。
 逆に,例えば中央労働委員会は厚生労働省の所轄に置かれていますけれども,その機能も発揮していますし,あるいは,国税不服審判所も国税庁に置かれておりますが,その実績は評価されているわけであります。
 もう一つは,やはり審査機関が規制機関から遠くなりますと,どうしても処理の遅延ということを招いて,迅速な解決ができなくなるというような点も指摘できると思います。
 長々とお話をしてまいりましたが,人権委員会につきましては,法務省に置くことを当然の前提として議論をされたと聞いておるわけです。中央省庁等改革基本法によりますと,矯正・更生は法務省の主要な行政機能とされております。それから,法務省設置法でも,刑務所に関する事務は法務省の所掌事務とされているわけです。広く人権にかかわる人権委員会ですら,これは内閣府でなくて法務省に置かれることとされている経緯を見れば,広い意味での人権の中の部分集合である受刑者のみのための権利救済機関を,法務省の所轄外といいますか,すなわち内閣府に置くということは,法令を改正しない限り,私としては不可能だというように考えているわけです。ですから,やはり現実可能な案としましては,人権委員会が設置された場合に,受刑者の人権にかかわるところの救済は,人権委員会に吸収されるというのが相当ではないかと考えておりますが,ただ,受刑者の人権の特殊性にかんがみて,どのように吸収されるか,あるいは今の法案のような人権委員会がそういう受刑者の権利救済というものを果たせるかどうか,そういう点については検討しなければいけないと思います。
 それから,仮に吸収するとしても,そこに至るまでの,人権委員会が設置されるまでのつなぎの救済機関というものを検討しておかなければならないわけであります。これを一体どういうふうにするのか。それから,年間6,000件にも及ばんとしているそういう情願制度,そのようなものも,これは簡易迅速な手続でありますが,簡易迅速な手続で処理する方法も考えなければいけない。そういういろいろな問題がありますが,法務省に置きながら,しかも,規制からは独立しているというような,そういう効果的な第三者機関の在り方について,皆さんのお知恵を拝借したいと考えているわけです。
 これをもって私の報告は終わらせていただきます。

3.透明性の確保(不服申立制度)について(議論)

○南会長 それでは,御質問と御意見をどうぞ,私としても,実際に自分の今までとってきた考え方と違うものですから苦しいのですけれども,しかし,この分科会では,人権委員会のときとは異なり,やはりどこに置くかということも御議論の必要はあると思うのです。
○久保井委員 今日のお話は非常によくわかりましたし,また,十分に理解できますが,これは今の国会で廃案になるというか,なったというか,人権擁護法案について野党はこぞって外に置くということを求めています。それに対して,国家行政組織法とかそういう基本になる法律の改正をすれば可能なわけですか。つまり国家行政組織法の3条とかを。
○南会長 そこは先ほど言いました憲法理論から出ていて,憲法を具体化したものが国家行政組織法だというのが政府の見解であり,学会のほぼ多数説です。私のように,そういうものをすべて行政権ではなくて,それ以外に置いても構わないのだと考えれば別ですが。
○大平委員 申し訳ありませんが,今のところがよく分かりません。憲法のことを書いたのが行政組織法だとおっしゃいましたね。憲法で行政は内閣に属するということで,この国家行政組織法の中にこの規定がされているわけですね。ただ,この国家行政組織法の中の細部までも改正ができないというのがよく分からないのです。
○南会長 この中ですか。
○大平委員 そうです。3条の3号です。「委員会及び庁は,省に,その外局として置かれるものとする」という文言がありますが,これを,省に外局としてという,ここを何とか改正すれば,今回は内閣府ということですから,法務省よりも別のところに設けることができるのではないかと思うのですけれども。
○南会長 要するに内閣府は内閣府の所掌事務というのが決まっていますよね。その決まっているところにそういう審査機関を置くことになっているわけです。
○大平委員 その審査機関を置くことになっているということを改正することはできないのですか。
○南会長 それは,実は何遍も何遍も議論して,特に行政改革で決まって,そして中央省庁等改革基本法という中に書いてあるのです。そして,それを受けて,今度また,国家行政組織法ができているわけですから,そういうようなずっと流れがあって,もう何遍も何遍も議論した末にそうなっているのです。たがら,人権擁護に関する行政というのは,法務省が所管することになっているのです。それを受けて法務省設置法ができているわけです。だから,おっしゃるとおり,それを変えてしまえばいいのですけれど,だけど,先ほど言いましたように日本の考え方が,所掌事務を扱うところの大臣が責任を持つわけだから,それを覆滅するようなものはやはりいけないわけなので,建設省ではないですけれど,そこに置くとしても,それはせいぜい勧告が精いっぱいだと。特に大臣が一切の自分の所管事項については責任を持たなければいけない,大臣責任制というところから来ている。
○久保井委員 それが憲法の建前ですか。
○南会長 そうです。
○久保井委員 だから,憲法のその「すべて」という言葉がないから,だから,内閣はすべてを持っていないと。「すべて」という言葉があれば,内閣総理大臣で内閣に所属すると言えるわけですか。
○南会長 私の考えはそうなんです。だから,行政権は何も内閣だけが担当するのではないというのが私の考えですけれど,今度の行政改革会議で私の考えというのはたたかれて,こういうことになってしまったのです。
○久保井委員 これは,二つの大臣,三つの大臣にまたがる場合は許されるわけですか。
例えば人権問題でも,法務省の人権もあれば,いろいろな他の省庁にまたがる人権問題が,またがっている場合がありますね。
○南会長 あります。
○久保井委員 それを特定の大臣のもとに置けないから内閣府に置くというのは。
○南会長 内閣府に置くということはありますね。
○久保井委員 それは許されるのでしょう。
○南会長 内閣府としては,国の重要施策に関する内閣の事務を助けるということがあって,その後にずっと内閣府の所掌事務というのが書いてあるのですけれど,その中に人権擁護は入っていないのです。それで,おそらく法務省としても,これを英語で言えばミニストリー・オブ・ジャスティスですから,そのような正義の省だから,長年の実績もありますし,人権擁護行政を扱ってきたと。それで,内閣府ではなくて……。
○久保井委員 もう一つよく理解できていないですけれどね。
○南会長 先生がおっしゃるのは,人権関係というのはみんな各省にまたがるものではないかと。またがるようなものは内閣府でやってもいいではないかということでしょう。
○久保井委員 そうです。
 それと,憲法の解釈でできないというのは今まで聞いたことがなかったです。
○南会長 さかのぼると,そうなるのです。
○久保井委員 憲法のどの条文に違反するのか。
○南会長 行政権は内閣に属する。内閣というのは,自分で全部行政事務をやることはできないから,その下に行政各部を置く。それで,行政各部というのは全部所管事項というのが決まっていて,それについては大臣が最終的な責任を負う。
○久保井委員 それが憲法の建前だから,憲法を改正すればできるわけですね。
○南会長 できます。
○久保井委員 でも,憲法の改正というのは到底無理だから,憲法の解釈としてできないというのが……。
○南会長 だから私は,「すべて」と書いていないところに根拠を持って言っているのです。だけど,三権分立というものが非常に強くて。
○久保井委員 何かちょっとあれですね。
○大平委員 三権分立はいいと思うのですね。だから,行政の中にあって,法務省が刑務所の中のこともやっていて,その不服申立てについても審査するというところにやはり大問題があるということで,皆さん,内閣府に置くべきだと言っているわけですね。これは両方とも行政ですよね。だから,行政の中に外務省があって,法務省があって,いろいろあるその法務省のものを,法務省ではなく別のところの行政機関,そこに委員会を置けばいいということで,野党の方はみんなおっしゃっていると思うのです。それがよく分からないのですが。
○久保井委員 あれはどうなのですか。この間,7月からスタートした食品安全委員会というのがありますね,食品安全基本法に基づいてできた。
○南会長 あれはどうなっていましたかね。
○久保井委員 あれは内閣府でしょう。
○南局付 はい。内閣府にございます。
○久保井委員 なぜそれが可能だったのですか。
○南局付 お手元の参考条文として配付いたしましたものの「内閣府設置法」の4条16号に,食品の安全性の確保を図るための環境の総合的な整備に関する事項というものが内閣府の所掌事務として定められております。
○久保井委員 それは,追加したりできるのでしょう,それだったら。例えば矯正に関することを内閣府に置くという,この16号と同じように。それがどうしてできないのか分からないですね。
○南会長 そこのところに人権擁護というようなものを持っていってしまえばね。
○久保井委員 人権擁護を全部持っていかなくても,矯正に対する不服審査とか,そういうものに限って4条の中に追加をすれば,それが立法政策的に反対という御意見はあるかも分からないけれども,法律的には可能ではないでしょうか,4条の中に追加すれば。
○南会長 法律を改正すればいいのでしょうけれど,例えば国家行政組織法では,所掌事務の範囲内で不服審査を司らせるための合議制の機関を置くと。だから,所掌事務があって,初めて不服審査というものがあるわけです。もともとその考え方というのは,処分をした者が自分で審査をすると,これでもう……。
○久保井委員 でも,4条は初めからこういうふうに決まっていたものではなくて,必要性に応じてずっと加えていったものでしょう。
○南局付 食品安全に関しましては,御承知のように国家的な問題ということで取り上げられまして,内閣として対応すべきことということで,このようになっていると理解しておりますが。
○大平委員 刑務所問題も国家的な問題ですよね。
○久保井委員 だから,別に不可能だと,それが今の国会で通る,通らない,あるいは現在の内閣としてそういう政策をとることに反対だという御意見は理解できるけれども,法律的に不可能だという御意見は納得できないですね。ただ,そこまでしなくてもいいではないかという政策論として反対だとおっしゃるのなら分かるけれど,憲法に抵触するから不可能だというようなことを言われると,納得できないですね。
○南会長 それは私の見解ではなくて,そういう考え方もかなり多いということです,学会では。憲法の具体化であると見ているわけです。それが,先ほど私が申しましたように,規制事務と審査とを分ける,これは私は当然だと思うのですが,規制する者がやはり審査するという基本的な考え方が強いと思います。
○久保井委員 そういうことを言われても,私は,そうですかとは納得できない,理解できないですね。
○南会長 それはさておき,私の考えは,人権委員会ですら内閣府に設置できなかったわけです。そうすると,こちらの方の権利救済機関だけ向こうに持っていくというのはできないだろうと。だから,政策論というか,そういうことを前提として,私は一番いいと思うのは,人権委員会が法務省に設置される,そこへ吸収されないかなと思っているのです。
○久保井委員 大体初めは少なくて,もう忘れたけれど,初めはこれほどたくさんなかったのです。どんどんふえていって,政府がやろうと思えば追加していったわけです。だから,やる気がないから,それは追加できないとおっしゃるけれども,やる気があれば追加されると思います。
○南会長 ですから,私は現行法を前提として今申し上げているのであって,現行法ではそう解さざるを得ないだろうと。要するに所掌事務のあるところにと,それは法律がそう定めていますので,それは先生のおっしゃるように改正してしまえば,私はできると思います。
○久保井委員 今度の刑務所改革は聖域のない議論をすると。それで,国際的に恥じない大改革をせざるを得ないということで来ているわけで,その中で現行法の改正を伴わない範囲内の答申ということでいいのかどうかと思いますけれどね。そこは難しいだろうということは私も分かっていましたから,それをこの分科会でどういう原案を出すか。
○南会長 そこが一番,私も……。それで,今日あえて全部私は申し上げたわけです,こういう議論があるということを。やはりそれを避けては通れない問題だと思ったので,御意見を伺いたいと。
○久保井委員 今までが余りにもひどかったから,今の人権擁護法案は法務省の外局につくるということでも,今までよりはかなり前進するわけです。
○南会長 外局というのが独立だという考えなんですよ。要するに大臣の指揮監督は及ばないわけですから。それから,職権行使の独立性がありますね,身分保障があるというようなことで。だから,人権委員会そのものはかなり独立性の高い機関だと思いますね。
○久保井委員 国税不服審判所みたいなものですか。
○南会長 いや,もっと高いです。
○久保井委員 そこは随分問題点になっていますから,実質をとるということで,本当に今までに比べれば,今の情願制度とか,そういう本当に採択事例がゼロパーセントという報告をこの前聞いて,指導例が145件あるということもありましたけれども,採択されたものがゼロパーセントというような,そういうことでは到底今回の改革は済まされないですから,外局にすればそういうことはないと思うかも分かりませんけれど,かなり一歩前進には違いないと思いますから,その辺で妥協するか。政策的に第一段階としてはそれで数年間やってみて,またゼロパーセントであれば,その段階ではそれこそ国家行政組織法を改正して内閣府に置くことにしても,徐々にステップ・バイ・ステップだから,ある意味ではやむを得ないと思いますけれども,しかし,憲法上で不可能だ,国家行政組織法の改正もできないのだということであれば,了解できないです。それはそれで置いておいて,今回は今までよりはかなり前進ですから,法務省の外局にするだけでも,ある程度やってみて,それは仕方がないかなとは思うけれども,
○南会長 かなり前進ですから,人権委員会ができれば,そこへ受刑者の……。
○久保井委員 人権委員会ができない場合は,だけど,あれでしょう。矯正だけ,それを待てというわけにはいかないから,やはり人権委員会ができた場合に設置されるであろうというものを,特殊矯正問題だけ,行刑問題に限って,限られた委員会をつくるより仕方がないでしょう。
○南会長 それは当然考えなければいけないです。
○久保井委員 それができるまで置いておくというわけにはいかないですから。
○南会長 そうです。できなければ,それでいいというものではありませんから。
○久保井委員 できたら,吸収合併するのは,それはその段階で統合するのはいいと思いますけれども。
○南会長 でも,それも限られたものになると思うのです。それ以外は,また,やらなければいけないわけだから。
○久保井委員 そうでしょう。だから,将来統合することがあったとしても,それができないからと,今,不服申立制度をつくらないで置いておくわけにはいきませんでしょうから。
○南会長 いきません。非常に充実したものをつくりたいとは思っているのです。
○久保井委員 手本になるものをね。
○久保井委員 でも,この人権委員会が将来できた場合は,そちらが人権一般を扱うから,矯正に関する人権,行刑に関する人権も当然そちらに移管されるのは,それは結構だと思いますけれども,それができる,できないを問わず,我々の改革案としては,そういうものを,少なくとも行刑に関する不服審査機関,査察機関を提唱しなかったら,これは我々の職務怠慢になると思います。
○南会長 だから,要するに矯正行政について,だれが一番最高の責任を負うかということが問題になってくるのですね。今の考え方としては,これは現行法制になりますけれども,やはり法務大臣ということですね。
○久保井委員 それはそうでしょうね。それは分かります。だから,実質を運用の面で譲歩するとしたら,それは仕方がないけれども,運用の面で誰を充てるかという問題もあって,英国の話でも,どうも内務省で,同じ内務省の中から査察にしてもやっていますし,外にはないですね,見てみますと。だけど,現実にそこに就任している人が,役所の中の人が選ばれるのではなくて,外部の人が選ばれて,NGOの事務局長が選ばれたり,あるいは全然別の人が選ばれたりしているから,うまくいっているような,運用でうまくいっている面もありますね。
○南会長 非常に第三者性とか公正性があるわけですよね。
○久保井委員 だから,その辺のことは法律事項ではないですけれど,恥ずかしくない原案をつくらないと,何をしていたのかと言われますからね。私は,外につくるべきだと思いますけれども,しかし,やはりこういう問題というのはステップ・バイ・ステップでやっていくということも分かりますから,だから,そういう意味では外局でとりあえずやってみて,その経過を見た上で,これでも刑務所の適切な運営が確保できない場合は,次の段階ではというステップにしていくというふうにするのはやむを得ないと思います。
○南会長 そうやって考えていくということですね。
○久保井委員 その理由をつけて,法務省の考えに従っても構いませんけれど,しかし,少なくともその場合は運用を,法務省の役人の内部昇格でポストの長を当てはめるとか,そういうことはやめなければいけないでしょうし,やはり外国の例のように純粋な第三者を充てるようなこともしなければならないでしょうし。
○南会長 その話が出ないとだめですね。
○久保井委員 それと,狭い意味での不服だけではなくて,査察機能も持たせなければいけないと思いますね。
○南会長 そうですね。
○久保井委員 英国みたいに,査察はまた別と。二本立て,三本立てにするという方が本当はいいのかも分からないけれど,一遍にそれほどたくさんの組織はつくれないということもあるだろうから,同じ機関で不服の審査もし,それから,国家としての査察作業もするということでいいと思いますけれどね。
○大平委員 官民と分けるべきだと思いますね,メンバーにしても。先生がおっしゃっていたように二つの弊害があるというのは,まず,人員的に事務が膨大だということ,こちらはクリアできると思うのですが,もう一つの方は,やはり刑務所のいいところも評価している人たちが片一方で不服の申立てをするのは適切ではないと,二つおっしゃっていたと思うのです。だから,後者の方を予防するためには,同じところにありましても,部局といいますか,中身は完全に分けるという,事務を,それは必要だと思います。
○久保井委員 だから,組織としては一つであっても,部としては分離している。
○大平委員 完全に。それが分かるようにする必要があると思います。
○久保井委員 それぐらいでやってみて,5年,10年やってみて,効果がなければ,今度はより独立性の強いものに見直すということにしなければ仕方がないでしょう。今の段階で,すぐ法務省の外につくれといっても,恐らく難しいでしょうからね。
○南会長 今回は,本当に聖域なき議論をするということですので。
○久保井委員 社会なり,国会なり,マスコミなりが注目していますから,やはり,なるほど,これなら期待できるというものを出さないと,何のために我々が選ばれたのか。
○南会長 私もずっと不服審査だとか,そちらをやってきましたので,本当に恥じないものを,恥じないというより,誇れるようなものにしなければとは思っているのです。
○久保井委員 そうですね。それと,極端に言うと,この原案が8掛けで出たら,立法段階では6掛け,5掛けになるのです。だから,初めから現実的なことばかり考えた原案をつくると,値切られて,値切られて,最後は半分ぐらいになりますよ。
○南会長 私は,そうでなくても,皆さんに聞いていただいたら分かりますが,非常に理想に走り過ぎるとよく言われるぐらいなのです。
○久保井委員 南先生の説明をずっと聞いていると,非常に苦慮されて御報告いただいているのはわかりますし,だから,そのことは本当によく理解した上で,現実的に……。
○南会長 よく御理解いただきまして,しかし,私は初めから言っていますように,皆さんの意見というものを十分尊重して原案をつくりたいということですので,原案といっても私案ですから,何も分科会長としてつくるわけではございませんので。ただ,一番私として苦慮していますのは,どこに置くかということです。日弁連さんからも出ていますでしょう。これは難しいなと。
○久保井委員 そうですね。そこは,あくまで日弁連の案でなければ私としては賛成できないとまでは言いません。だから,それはやむを得ないと思います。やむを得ないと思いますけれど,実質的に機能するようにしていただかないと。
○南会長 私も,本当に実質的には全く独立といいますか,そういうふうなものを考えております。だから,運営の問題なんですね。だから,人選だとか……。
○久保井委員 そうです。だから,答申案にそういうことを書いたらいいですよ。
○南会長 それから,手続も問題になります。それから,権限なども,実質的にやはり影響を及ぼすような形にしたいなというように思っているのです。
○久保井委員 現在に比べればものすごく前進ですからね,今の案でも。
○南会長 私は,正義の省の法務省ができなかったら,どこができるのだろうというような気もあるのです。本当を言えば,法務省がきちんとしなければいけないことだというように思いますけれどね。
 今日の報告は,決して原案のたたき台でも何でもなくて,全く私としてのレポートといいますか。
○久保井委員 今日は欠席者も多いですし,また十分審議し……。
○南会長 また,ほかの委員の方にも……。
 ただ,外国のものを見ましても,余り離れたところには置いていないのですね。
○久保井委員 そうですね。それはそう思います。
○南会長 今日のドイツもね。
○久保井委員 ドイツにしても,あるいはイギリスにしても,内務省の中での組織になっていますから。
○南会長 だから,本当にいろいろ,先生,幾らでも忌憚のない御意見を伺って,まとめますので。
○久保井委員 憲法,行政法のことも,最近の学会の動きとか勉強していませんから,もう少し勉強しなければいけないでしょうけれど,憲法の解釈なんてどうにでもなるのです,言ってみたら。例えば最高裁の非常勤裁判官は憲法違反で受け入れられない,制度として憲法改正がない限り非常勤の裁判官を弁護士から登用したりすることは不可能だと言われていて門前払いだったのに,やはり世の中全体の動きから,受け入れるということを最高裁が言って,憲法の解釈はどうにでもなりますと自分から言い出しているわけです。だから,微妙な憲法の解釈などは,やろうと思ったら無視してもできるのですね。それは違憲という解釈も可能かも分からないけれど,合憲という解釈も可能なので,明らかにものすごく極端な条文に違反することだったら,それも難しいかも分からないけれど,構造から来る解釈などというのはどちらでもいい解釈が多いですから,だから,そういうものはやる気になれば,無視して進んだらいいと思います。ただ,そうは言っても,二段階,三段階を一挙に飛躍するわけにもいかないでしょうから,今回の改正はマイルドな形で収めることはやむを得ないと思いますけれども。
○南会長 そこに行く一つのステップといいますか,そのようなことで。本来はやはりそうだと思いますけれどね。
○久保井委員 司法改革のときも大分論争がありました。
○南会長 それはおっしゃるとおり,憲法の改正は,政府自らいろいろ拡大・拡張解釈したり,いろいろ,それは自由自在なんです,法解釈というのは。私も,それは割と柔軟に対応していく方ですから,それは分かります。分かりますけれども,やはり韓国の制度みたいに,韓国はやはり大統領制だから……。
○久保井委員 韓国は独立性が強いですね。
○南会長 あれはよくできていますね。あれは大統領府に置いているのです。あれの条文を見たのですけれども。
○久保井委員 韓国並みにというか,それは一つの今度の改革の指針にはなると思います,この問題だけではなくて。
○南会長 むしろ人権の,ですね。
○久保井委員 はい。
○南会長 しかし,今回の行政改革ですか,これを受けた閣議決定等によって,何かがんじがらめになったという感じがしますね。かえって分かりにくくなっていますしね。あれができるまでは,行政改革までは割と柔軟にいろいろできたのですが,あの中でのいろいろな議論を通じて,だんだん縛りをかけられてきたという。
○久保井委員 あの改革の哲学は,佐藤幸治先生がかなり活躍されて,内閣府の権限を強化する方向でなさったのですね,各省大臣の権限を小さくして。
○南会長 実を言うと,公害等調整委員会なども,およそ公害関係というようなものは全部の省や国民一般にかかわることでしょう。ですから,私は当然内閣府に置くべきだと強く主張したのです。ところが,行政改革会議では,これは環境問題ではないか,だから環境事務を所管する環境省に置くべきだという議論があったのです。それで,大分私もやり合って,中をとって総務省になったのです。だから,なかなか現状としては大変なのです。
○久保井委員 所轄の問題も大問題ですけれど,機能をしっかりした機能にする。
○南会長 また,それについていろいろ御意見をお伺いしたいと思いますので,今度は海外視察もありますので,私も,これは最後の仕事と思っておりまして,それだけの決意を持っておりますので,よろしくお願いします。
○久保井委員 やはり国際社会に恥じないものを,せめて韓国並みにはしないと,我々も……。
○南会長 そうですね。やはりそういうものでないと。

4.その他

○南会長 それでは,私の話はこのぐらいにしまして,矯正局の情願の処理体制について御説明ください。
○佐伯専門官 御説明いたします。一枚紙のペーパーをお配りいたしておりますけれども,前回,御指示がございました情願処理体制の現状のものをペーパーとしてまとめております。
 上の段の「矯正局における処理体制」,前回,監査室長が口頭で御説明いたしましたが,現状では矯正監査室というものが総務課のもとに置かれておりまして,監査室長ほか係員が7名おります。この室長を含めて8名の者で,現実に起案等をするのは7名でございますが,7名ですべての大臣情願を処理しているということでございます。
 矯正局における実際の事務というのは,進達された情願を受け付けたり,その他の事務関係,矯正管区に,中身を精査いたしまして,実情を調査するもの,あるいは全くの希望というものはその場で落とすということもございますが,実情を調査するものを振り分けまして矯正管区の方に指示したり,あるいは,一部直接調査する事案もございます。そういったもので,事実の確認できたものにつきまして裁決等の処理を行う。これを矯正局の方で担当しております。
 続きまして,「矯正管区における処理体制」という下の段でございますが,矯正管区においては,裁決等は全く行っておりませんで,矯正局から指示を受けた個別の事案につきまして,施設,現地に赴きまして,本人から実情,主張等を聞き取ってまいりまして,その他,実情調査を行うという業務を担当しております。
 矯正管区は全国に8管区ございます。札幌から福岡まで,それぞれ矯正管区の下に第二部保安課というものが置かれております。
 保安課の業務につきましては,その下に記載してございますが,被収容者の処遇というあたりで,おそらく,こういった処理というところを読んでおるものと思っております。
 東京,名古屋,大阪,福岡といった大きな組織の管区には不服審査調査官という者が1名置かれております。この人は,第二部の業務のうち,被収容者の不服及び苦情の処理に関する事務を行うことになっておりまして,正に情願関係の事務がぴったりということで,東京,名古屋,大阪,福岡の不服審査調査官は情願の処理等を担当しております。
 その他,保安課のいわゆる訟務担当者と呼ばれる配置についておる職員が,お示ししたとおり,札幌,仙台は1名,東京3名,名古屋1名,大阪2名ということでお示ししておりますけれども,こういった体制で現実の情願の調査の実施がされております。
 なお,当然,最近は非常に件数が増えておりまして,これだけの人数では賄い切れるものではございませんので,下に米印で記載しておりますように,現実には情願処理以外の業務を本来割り当てられております警備係でありますとか,あるいは管区の保安課長も一担当者として受刑者のところに赴いて事情聴取したり,あるいは局に対する回報文書というものも作成しておるというのが実情でございます。
 矯正局及び矯正管区の情願処理体制の現状ということで御説明させていただきました。
○南会長 何か御質問はございませんか。
○久保井委員 矯正施設の巡閲監査というのは,今の段階で,どのぐらいの頻度で,どういう形で行われているのでしょうか。二年に一回というのはこれですか。
○佐伯専門官 巡閲につきましては,二年に一回以上ということで監獄法で定められておりますが,今回お配りしたものは,法務大臣に対する情願が出された場合の処理ということです。
○久保井委員 そういう意味ですか。わかりました。
○南会長 ほかにありませんか。
○大平委員 年間6,000件くらいとおっしゃっていましたね。その中で,実際にこの方々が調査するのはどれぐらいの割合ですか。これは明らかに内容が分からないとか,そういう場合は事務局の方で判断されるのですよね。それで,実際に必要があるものだけを調査ということにすると思うのですけれど,割合はどれぐらいですか。
○佐伯専門官 少し不正確になるかもしれませんが,私どもで実際に実務を担当していての感覚では,半分以上は調査をしております。
○大平委員 では,3,000件ぐらいですか。
○佐伯専門官 それぐらいはしております。
○大平委員 矯正管区が八つで,単純割りをしましても,一つの管区にかなりの数が行きますね。すごく少ないので,毎日刑務所に行っているような感覚になるのですけれども,実際はどうですか。
○佐伯専門官 東京などでは4人,ここの中では4人,あとは応援を入れて実際は6人ぐらいで回っているようですが,東京というとエリアが非常に広うございまして,関東ブロック,甲信越全部入りますので,大体10件ぐらいためて,例えば長野方面であれば10件ぐらいたまるまでということで行っているのが実際のようなのですが,大体一施設に半月に一回ぐらい,多いところだと一週間に一回ぐらいは担当者が行っているような運用のようでございます。
○大平委員 わかりました。
○南会長 それでは,よろしゅうございますか。
 今日は大変,私の報告に対していろいろ有益な御意見をいただきまして,ありがとうございました。
 本日は午後1時から分科会を開催しまして,長時間御議論を重ねていただきましたので,この程度にさせていただきたいと思います。
 次回,10月28日の分科会ですが,私と久保井委員が独仏,大平委員が英仏の行刑施設等の視察をしてまいりますので,速報という形になると思いますが,その結果を簡単に御報告したいと思います。よろしゅうございますか。
 異議がありませんようですから,そのようにさせていただきます。
 また,前回,今後の議論の進め方について御検討いただきましたとおり,これまでの御議論等を踏まえまして,視察委員会,情報公開,不服申立制度の各論点について,私の方で作成いたしました私案を提出したいと思いますので,それをたたき台に御議論いただきたいと思います。
 次回の分科会は,10月28日,火曜日の午後2時からとなっておりますので,時間までに法務省20階談話室にお集まりください。
 本日はこれにて閉会といたします。


午後3時36分 閉会
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