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行刑改革会議第3分科会 第2回会議議事概要

1 日時

平成15年9月22日(月)14時00分から16時45分

2 場所

法務省矯正局会議室(14階)

3 出席者

(委員等,敬称略)
 (会長)高久史麿(自治医科大学学長)
 (委員)江川紹子(ジャーナリスト),野﨑幸雄(弁護士・元名古屋高等裁判所長官),宮澤弘(元法務大臣)(委員・50音順)

4 議題

(1) 村瀬尚哉氏(横浜刑務所医務部保健課長)ヒアリング
(2) 谷修一氏(国際医療福祉大学学長)ヒアリング
(3) 議論(医療体制の在り方)
ア 矯正医療の基本的理念
イ 矯正医療の医療水準
ウ 矯正医療の保安からの独立性の確保,医療の透明性の確保
エ 医師の確保
オ 被収容者の死因確定手続
カ その他
(4) その他

5 会議経過

(1) 事務局から配布資料(別紙1【PDF】,別紙2【PDF】,別紙3【PDF】,別紙4【PDF】及び別紙5【PDF】)について説明があった後,村瀬氏からヒアリングを行った。村瀬氏の説明概要及び主な質疑応答は以下のとおり。
<説明概要>
・ 横浜刑務所には部長以下6名の医師がおり,24時間体制で対応している。
・ 横浜刑務所の支所の中には非常勤医師しかいないところもあり,そのような支所からは電話で対応を求められることがある。
・ 医師としては,医師以外の医療スタッフの不足を強く感じている。
・ 医療機材の多くは老巧化しており,市中開業医以下である。
・ 施設で対応できない病気・怪我については,八王子医療刑務所や外部の病院に対応を依頼している。
・ 1日に行う業務は,病舎に収容されている者の診察,懲罰・解罰時の診察,隣接している横浜拘置支所の被収容者の診察,工場回診の結果診察が必要とされた者の診察などであり,これらを普通は3人の医師で行っている。
・ 被収容者のうち約60%が投薬を受けており,約17%が精神科の患者である。
・ 歯科は受診待ちが約8ヶ月,眼科は約3ヶ月である。
・ 現在の矯正医療では,医師の確保が至上命題だと思う。
・ 刑務所の医師になるメリットとしては,拘束時間が短いため研究などをする時間が持てるということが挙げられると思う。デメリットは,勤務に魅力がないことであり,経験が長くなるほど不満が強くなる。
・ 医務と保安の分離という点については,医務と保安を完全に分離すれば医師は患者が納得する治療を施せばそれでよいということになり,精神的には楽であるが,詐病が多く,外医診察や投薬要求が強い中で,限られたスタッフで全ての要望に応じるのは現実として不可能である。医師に全ての責任がかかることにはストレスを感じるが,医務と保安が協力してバランスの取れた医療を行うことが刑務所医療では必要ではないか。
<主な質疑応答>
・ 精神科の患者への対応はどうなっているか。
(回答:精神科の患者は多いが,精神病の者には精神科の医師が対応している)
・ 睡眠薬を求める声は強いか。
(回答:強いが,刑務所の睡眠時間は約10時間と長いため,精神科医師が必要と判断した場合のみ投薬している。)
・ 診察中身の危険を感じたことはあるか。
(回答:ある。精神科医師の医師は特に多い。刑務官の立会いにより対処している。)
・ 保安に外医治療を止められたことはあるか。
(回答:外医治療をするかどうかは医師の責任・判断であり,必要があると判断すれば必ずやっている。)
・ 外部病院は受け入れに協力的か。
(回答:公立病院でも,過去にトラブルがあったりするとなかなか協力が得られない。他方,私立病院でも礼を尽くしてよい関係を築けば協力が得られている。)
・ 医師以外のスタッフはあとどのくらい必要と感じるか。
(回答:どの職種も足りないが,薬剤師と回診担当の准看護師に不足を感じている。)
・ 社会的に意義のある仕事をしていると感じるか。それとも生活のためと割り切っているか。
(回答:若い医師は,研究の片手間という意識が働いてしまうこともあり,どうしてもアルバイト感覚になってしまうことがある。自分に関して言えば,仕事中は熱中しているが,時々このままでいいのかと思うことはある。)
・ 給料を上げればどうか。
(回答:給料への不満よりも,医師としても知識・技術を維持,発展できないのではないかという不安のほうが強い。ここにストレスを感じる。
・ 診療を求めるものは多いか。セレクトする必要はあるのか。
(回答:受刑者の60%程度が投薬を受けており,セレクトしないと診療できない。実際には,准看護師の資格のある刑務官が回診してセレクトしている。)
・ 刑務所に体調が悪い人が集まるのか,それとも,刑務所に入ってから悪くなるのか。
(回答:入ってくる時点でフィジカル的に落ちている人は多い。)

(2) 谷氏から,資料(別紙6【PDF】及び別紙7【PDF】)のとおり説明があり,これを踏まえてヒアリングを行った。主な質疑応答は以下のとおり。
・ 国立病院は厚生労働省の指示に従うのか。
(回答:厚生労働大臣の指揮は及ぶが,具体的な医療の中身については院長に委ねられる。)
・ 厚生労働省が刑務所に医師を派遣しろと言えば,国立病院は派遣するか。
(回答:国立病院は19分野について医療を行うこととなっており,独立行政法人化後も同じである。刑務所に医師を派遣させるのであれば,国立病院の目的に入れなければならないのではないか。国立病院本来の業務とすることは難しいと思うが,地域の医療機関として協力することはできるだろう。)
・ 国立病院の目的に加えるにはどうすれば良いか。
(回答:刑務所医療を厚生労働省に移管することになるので,法律で規定する必要があるだろう。)
・ 医師の確保について何かアドバイスは。
(回答:医師として魅力を感じるようにするため,医療機器の充実等が必要だろう。国立病院でもへき地では医師が足らず定員割れしており,地域の医療施設から派遣してもらっている。刑務所でも組織的な協力関係が必要ではないか。都道府県との協力を検討してはどうか。
・ 受刑者に健康保険を適用することについてはどう考えるか。
(回答:全額自己負担というリスクをカバーすることが保険制度の目的である。国が全額負担するのであれば,保険制度を適用するメリットはない。また,保健医療機関は一般に開放されていなければならず,診療を行う対象を限定するということは保険制度になじまない。)
・ 厚生労働省への移管についてはどう考えるか。
(回答:刑務所の医療は,医療だけ独立しているわけではなく,矯正の一環として行われているのではないか。一部だけ切り離して丸投げするということが適切なのか。仮に今のまま切り離しても何も変わらないだろう。)
・ 厚生労働省への移管により医師の供給は楽になるか。
(回答:厚生労働省に移管したからといって,医師がどんどん来るということにはならないのではないか。医師は役所の都合ではなく,現場がどうであるかということを考える。)

(3) 「医療体制の在り方についての論点細目」(別紙1)に沿って議論を行った。主な発言は以下のとおり。
ア 矯正医療の基本的理念について
・ 健康保険を適用するといっても,保険料や自己負担分を払えない者が多いだろうし,現在の国保の財政状況を考えれば国保側が拒否するだろう。
・ 保険医療の水準は公開されているが,高い方の医療水準を定めているのであって,低い方を定めているわけではない。審査支払機関も過剰診療をチェックしている。健康保険適用により保険医療の水準を確保されるという意見があるが,医療水準の底上げにはならない。
・ 今でも刑務所医療の水準は低くないと言えるのか。
(矯正局:水準というものがよく分からないが,現在でも必要な医療は行っている。)
・ 医師の診察を受ける前に刑務官のスクリーニングがあるのはよくないという意見があるが,これは保険の問題ではなく医務のキャパシティの問題ではないか。
・ 現在は,医務に関する費用が全て無料のため,無意味な診察・投薬は受けないという抑制力が働かない。そのため自己負担をさせたらどうかという話になる。
・ 健康保険適用のメリットは詐病を防止できることぐらいで,その他は別の問題ではないか。
・ 刑務所では必要な医療を行っているはずなので,自費診療を求めることによるメリット・デメリットは特に生じないのではないか。
・ 所持金の有無によって受けられる医療に差がつくのは,収容側にとって大きな問題である。
イ 矯正医療の水準について
・ 前回のヒアリングではいろいろな事例が挙げられていたが,これらは医療水準の問題ではなく,医師等が少ないことによるもので,結局医療体制の問題ではないか。
・ 施設に対して,行ってはいけない治療を指示しているのか。
(矯正局:そのような指示はしていない。必要な医療は行っている。)
・ 刑務所医療は複雑に問題が絡まっているので,総合的に考えなければならない。単純に厚生労働省に移せば解決するというものではない。
・ 医師が使いたい薬がないということはあるか。
(矯正局:あると思うが,民間病院でも同じことはあり,同じ効能の安い薬を使用するなどして対処している。また,他の施設から管理換えしたり,次の購入の際に医師の希望を取り入れたりするなどの対策をしている。)
・ 刑務所全体で薬の在庫管理をしてはどうか。
・ 入所時の健康診断はどのようなことをしているのか。
(矯正局:一般の健康診断ほど項目数はないが,基礎的なものを行っている。必要があれば更に検査を行う。)
ウ 矯正医療の保安からの独立性の確保,医療の透明性の確保について
・ 完全な分離はできない。
・ 警察では捜留分離を実施した。医務と保安を完全に切り離すことはできないとしても,何か打ち出せないか。
・ 保安部門がスクリーニングを行っていることが問題である。保安部門による問診結果を医師がチェックするべきである。
・ 医師が全てチェックするのは現行体制では困難で,かえって必要な医療が行えないことになる。
・ 誤ったスクリーニングによる弊害を防ぐためには,むしろ救急体制の充実が効果的である。
・ 本人からカルテの開示請求があれば開示しているのか。
(矯正局:していない。しかし,出所後の治療のために紹介状を書くことはある。)
・ カルテの開示は透明性確保の一つではあるが,それが全てではない。
・ カルテを見られる制度があるということが透明性の向上につながるのではないか。一般病院ではどうなっているのかを調べる必要がある。
・ 健康保険を導入すれば透明化されるというが,レセプトのチェックは過剰診療の防止のために行っているので,透明化につながるかどうかは疑問である。
エ 医師の確保について
・ 医師の確保について,フランスのようにドクターをプールして行刑施設に派遣することができればよいが,現状では,公立,自治体病院でも基準を満たすために名義貸しを受けるような状態であり,ドクタープールは無理ではないか。
・ 医師の確保は,現在は所長個人の仕事になってしまっている。都道府県に協力を依頼することは可能か。
(矯正局:現在でもやっているが,都道府県から派遣してもらうのは難しい。)
・ 常勤医師の確保が難しいのであれば,アルバイトのような非常勤を増やしてはどうか。
(矯正局:非常勤を増やすことは可能だが,支払える給与が民間よりもかなり少ないので,なかなか来てもらえない。)
・ 民間並みということで,謝金の額を増やせないか。
・ 医師の給与水準を上げることはできないか。
(矯正局:俸給表の適用を受けるので,刑務所の医師だけ高くするということは困難ではないか。)
・ この機会に医師の兼業禁止や待遇改善について意見を出す必要がある。
・ 給料を上げるよりも,勤務形態をフレキシブルにするほうが効果的ではないか。
・ 大学病院では,施設長の許可があれば兼業ができる。文部科学省でできるなら法務省でもできるのではないか。
・ 独立行政法人国立病院で,刑務所で勤務することを条件として医師を採用するということができればよいが,難しいだろう。
・ 卒業後刑務所に勤務することを条件とする奨学金を設けることはできないか。
(矯正局:現在でも矯正医官の奨学金制度はあるが,本来の目的を達成するまでには至っていない。)
・ 知識・技術の向上が望めないという点ではへき地医療と刑務所医療は似ているが,へき地医療では,地域の人の役に立っているという精神的な満足を得られる場合がある。しかし刑務所ではそれも難しい。
・ 医師の定員が1名だとどうしても内科の医師を充てざるを得ないとのことであるが,医師の定員を増やして,精神科を充実させる必要があるのではないか。
・ 医療スタッフの増加は訴えなければならない。
オ その他
・ フランスの改革を日本に現状でそのまま当てはめることはできないが,将来の検討課題として掲げるべきではないか。

6 今後の日程等

・ 次回は,9月29日(月曜日)午後2時開催。
・ 次回は,医療体制の在り方について更に検討を行う予定。
(文責行刑改革会議事務局)
-速報のため、事後修正の可能性あり-

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