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行刑改革会議 第3分科会 第6回会議

日時: 平成15年11月10日(月)
14時05分~16時17分
場所: 法務省会計課会議室


午後2時05分 開会

1.議論(職員の人権教育などについて,その他)

○高久会長 この分科会はあと2回ということでして,次回には,法医学の専門家の方からのヒアリングを含めて医療問題についてはある程度結論を出したいと思いますので,本日は,前回も御議論いただきました,人的・物的体制,職員の執務環境の改善,職員の人権意識の改革の三つのテーマにつきまして,引き続いて御議論をお願いしたいと思います。
 前回のときに,人的・物的体制の整備と職員の人権意識の改革について,お手元に論点の細目をお配りしましたが,同じものを本日もお配りしています。この中で,前回も議論になりましたが,どの程度の規模の増員が必要であるか,それから,数字を出すことが望ましいのですが,数字を出すとすれば,その根拠であるとか,それからもう一つ問題なのは,アウトソーシングなどによってどの程度人員を減らすことができるのかということなどが議論になったと思います。そして,前回のときに,事務の方に,増員の関係で具体的な資料を出せるかどうかということを検討するようにという宿題が出ていましたが,その宿題に関連した資料を事務局の方から説明させます。
○柴田官房参事官 それでは,御説明をさせていただきたいと思います。
 本日は,席上にお配りしてあります,このカラーで印刷した資料と,もう一つは,「行刑施設の人的体制作り(試算)」という,これはモノクロの資料でございますが,数字が並んでいる資料の2枚を用意いたしました。これに基づいて,宿題となっております事柄につきまして御説明申し上げたいと思っております。
 まず,カラーで印刷したものでございますけれども,この資料は,前回お示しした資料と基本的にはグラフは同じでございます。ちょっと表し方が異なっておりますけれども,考え方は全く同じでございまして,今後向こう5年間というようなお話がありましたので,5年間までシミュレーションをしてみた数字でございます。
 まず,上の方のグラフですが,折れ線グラフの赤い線がずっと比例的に延びておりますが,これは過去3年の平均を事務的にといいますか,自動的に延ばした数字で,それぞれ数字の帰趨を見たものでございます。
 赤い四角と緑の四角がグラフの中にあると思いますけれども,これは,参考に申し上げますと,その年に増えるということを想定した資料でございます。例えば16年度で申し上げますと,5,850人が年末には増えるだろうと。それから,その次の年はそれが根雪になりまして,更に5,340人,その翌年は更にそれが根雪になって,更に5,800人と。以下同文でございますが,こういう増え方をしていくであろうと計算したものでございます。
 これによりますと,グラフの下に細かい数字が並んでおりますが,その下の「収容者数」というところを見ていただければ有り難いのですが,これでいきますと,行刑施設の収容実人員の見込みが,平成17年度末には約8万人,18年度末には9万人,20年度末には10万人をそれぞれ超えるであろうという結果が出てきております。これは,前回御説明した内容と変わっておりません。
 そこで,この収容をどうするかということが一つテーマになるわけでございまして,その下に,新たに必要な収容規模を確保しなければいけない数字,これらのシミュレーションをしました。平成20年度末に10万人になるだろうという一つの仮説を立てておりますし,それから,ちょっと恐縮でございますが,折れ線グラフと「収容者数」というこの数字を並べました表の真ん中に,細かい数字の表を並べてありまして,ブルーでマーキングしております。最終的に,本年度16年度以降,特に定員の手当てをしなければ,20年度末には約2万9,000人強,3万人弱の定員不足が計算上生じるということになりますので,「新たに必要な収容規模」の表に戻っていただきたいのですが,最終的な合計欄の二重の四角で囲ったところですが,3万人規模の収容能力を確保しなければ,収容実人員と定員が合わないであろうというふうになろうかと思います。
 では,これをどのように手当てしていくかと考えたのが,この「新設によるもの」と,「新設以外のもの」と,この二つに分けております。
 この「新設によるもの」といいますのは,今までは,例えば,被収容者が寝泊まりしている場所を確保する当面の手当てとして,倉庫でありますとか集会室,そういったところを模様がえしたり,あるいは刑務所の中の空き地を利用して建て増しをしたり,そういう対症療法的なことをやってきたのですけれども,それでは多分間に合わなくなる数字でありますので,新たに施設を建てなければいけない,何らかの方法でですね。その方法で約1万4,900人分は新しい施設をつくらなければならないだろうと。
 そのほかに,「新設以外のもの」と書いてございますけれども,これは,従来の手法を繰り返すといいますか,空いているところに舎房という被収容者の寝泊まりする場所,あるいは工場などを建てるという方法のほかに,全国,例えば刑務所・拘置所は合わせて74ございますけれども,この施設の建て替えをしなければいけないと,経年の変化によりましてですね,そういうものもたくさん出てまいりますので,これの建て替えをするときに,あわせて収容能力を増強していくという方法でございます。
 この二つの方法を使いまして,都合3万人の収容定員を確保しなければいけないだろうというような試算を出しております。
 では,この3万人を収容するために職員がどれだけ必要かということを,その後更に試算いたしました結果,「新たに必要となる人員」,都合6,700人という試算結果が出ました。
 ただ,この6,700人というのは,従来の手法でやりますと,いわゆる公務員全員で増員というようなことになるわけでありますけれども,そうもいかないということで,備考書きしてございますが,この6,700人につきましては,一部増員,その余につきましては民間活力の導入というのを一方では考えるし,もちろん我々部内でもいろいろ,業務の合理化・省力化といったことを検討いたしまして,こういう大技,小技の方法によりましてこの6,700人というのを手当てしなければいけないのではないかと,こういうような考え方をとった次第でございます。
 では,次の資料を説明させていただきたいと思います。「行刑施設の人的体制作り(試算)」という資料がございます。先ほど6,700人と申し上げました,その内訳を記したものでございます。
 大きく,今の処遇体制を維持するために必要な人員と,もう一つは,中ほどに書いてございますが,処遇体制を改善するためにという,この大きな二つのくくりとしております。
 維持というのは二つありまして,一つは,今,収容人員がどんどん伸びていますので,業務量が増加します。被収容者が増えることによりまして,書信とか護送業務,運動の立会とか,いろいろ付帯業務が出てまいりますけれども,これに必要な人員というのが約1,400人ほど,計算上出てまいります。ちなみに,16年度要求では250人余りの増員要求をしております。これも含まれた人員でございます。
 もう一つは,収容人員の増加のために,いろいろ施設の増強のための施設費を要求しておりますので,これに要する-都合3万人の手当てをしなければいけませんで,そういう施設の増改築の対策のために3,800人が必要になる,こういう要員が必要になるという計算になる。ちなみに,16年度要求では146人の増員要求をしております。
 これが,現体制を維持するために最低限度必要であると試算した数字でございます。
 もう一つは,改善という要素。これは三つありまして,一つは,先日来問題になっております,休みが取れないといいますか,年休が取れない,週休が取れない,これを一般公務員並みに手当てをするにはどれぐらい必要かということを試算いたしました結果,約600人を手当てしなければ所要の改善が図れない。現在,一般の国家公務員は平均11日ぐらいの年次休暇を取得しているという実態がございますけれども,これに並ぶためには所要の人が必要になるということでございます。
 2番目は,「40人処遇単位の実現策」と書いてございます。これは,現在,工場で受刑者を働かせている工場では,大体,職員が一人,極めて多いところでは二人でやっている施設もありますけれども,大体一人。70人,80人の受刑者を刑務官一人が見ている状態があるわけですが,私ども,これは正常な状態とは毛頭考えておりませんで,学校の学級の人員に比較するのもどうかと思うのですが,やはりそこそこの人員でないと,人心の掌握といいますか,できないだろうというような考えがありまして,せめて40人の単位ぐらいには絞り込みたいというふうに理想形をつくったわけでございますが,それに要する人員というのが500人ぐらいになるという計算が出ております。
 最後は,医療・心理スタッフ等の充実策でございます。これにつきましても,刑務所の医療はいろいろ問題がある,改善しなければいけないという方向性も出していただいておりますし,将来は所要の手当てをしなければいけないわけでございますけれども,例えば医師でありますとか看護師・薬剤師・作業療法士といった医療関係のスタッフ,それからもう一つは,先日御説明しましたけれども,問題受刑者のための心理技官,面接等をするための心理技官,場合によってはソーシャルワーカー,そういう人たちをある一定の基準に基づきまして配置するために必要な人員が都合400人ほどかかるというようなことで,全部合わせますと約6,700人という試算結果が出たわけでございます。
 重複いたしますけれども,下の方の四角の中に入っておりますが,この6,700人というのは試算でございまして,これを,一つは増員,もう一つは,先ほど申し上げたような,総務系統の業務,あるいはほかの事務部門でありましても,民間委託,民間の力を入れる,外の人の力を借りて事務処理ができるようなものについては積極的に行い,現在検討しておりますPFI方式の刑務所についてもそういう考え方を導入し,かつ,常勤職員でなくて,非常勤の職員,あるいはパート的な仕事で十分今の業務がこなせるような内容とそのポストについては,そういった非常勤の職員を積極的に導入するというようなことを導入したいと。
 それともう一つは,当然のことながら,必要だから比例的に要るということだけでは到底国民の納得が得られないと思いますので,我々の業務の集約化といいますか,省力化・合理化,これも一方では図りたいというふうに考えていまして,こういう合わせ技を用いまして,でき得れば,この6,700人という,5年後には必要となる,このまま人員が推移すればそういう計算になりますので,手当てすることについて,我々,努力したいと考えている次第でございます。
 駆け足でございますけれども,以上でございます。
○高久会長 どうもありがとうございました。
 ある程度具体的な数を出していただきました。その推計のもとになっているのは,平成20年度に被収容者が10万人になる。平成10年度に比べると2倍になるという推計のもとにこの数を出していただいています。実際に刑務官を増やす方策としては,増員と民間活力の導入がある。それから,建物に関しましてもPFI方式,これは運営にも関係すると思いますが,PFI方式をとり非常勤職員等を有効に使う。それから,業務の合理化・省力化ということもうたっていまして,前回の会議で,本当に必要なら,その数をはっきり出して,具体的なことについては,事務的に検討していただく方がいいのではないかという御意見でした。その意味で,非常に大きな数ではありますが,6,700人という数を出していただきました。これにつきまして,何か。
○江川委員 二つあるのですけれども,一つは,この6,700人のうち,看守など,つまり民間に委託することが不可能な部分というのは大体どれぐらいと考えたらいいのですか。
○柴田官房参事官 細かい計算になりますと,これから詰めて,どれができて,どれができないか-PFIでも検討していますけれども-ということになるのですが,例えば一つのメルクマールとして,先ほど,16年度に増員要求をしておりますと申し上げましたが,あれが一つの考え方になろうかと思うのです。今,刑務官を400人要求しているのですけれども,計画削減というのが不可避でありまして,差し引き大体二百四,五十の数字が出てくるのですけれども,これはやはり,刑務官でやらなければいけない最低限の業務だと考えて要求しております。例えば,先ほど申し上げた年休とか週休ですね,これは,要員は,なかなか刑務官の手当てというのは難しいかもしれない。それから,先ほど申し上げた,総務系統の仕事を外部の人にお願いして,そこで浮いた職員を中に入れて,例えば年休とかの処理は玉突きでやるという方法もいろいろあると思いますが,その考え方を総合いたしますと,この6,700人に対して,大体1,300から1,500人ぐらいは,もう最低限度,刑務官で運営しないと,多分,刑務所としての体をなさない可能性が出てくるかなと。つまり,刑務所はどうしても公権力の仕事という部分が非常に多うございまして,それを考えますと,もうぎりぎり……。
○高久会長 6,700人の中の刑務官の数というよりは,今まで働いている人を含めて6,700ということになります。刑務官としては1,000人とか1,300人ぐらい。
○柴田官房参事官 大体1,300から1,500人ぐらい,その余を引きますと5,000人ぐらいになるのでしょうか,は何とかして業務の合理化-業務の合理化というのは,ちょっとつけ加えさせていただきますと,バックオフィスといいますか,もう既に民間なんかではやっているのでしょうけれども,例えば,今,刑務所が74ありますけれども,そこで同じ業務をやっているといいますか,庶務・会計の仕事とか,調達の仕事とか,そういうのは,もうコンピュータが発達していますし,まとめてどこかにヘッドオフィスをつくりまして,そこで全部やってしまえば,そういう総務的な仕事を統合できます。先ほど,内部で少し改善したいと申し上げたのは,一例はそういうことなのですが,そういうふうなことをやりまして,ぎりぎり削ぎ落として,1,500がアッパーリミットかなという……。
○宮澤(弘)委員 人的施設,物的施設によっていろいろ違うと思いますし,ところによっても違うと思うのですけれども,施設の増改築の観点からだけ一言申し上げると,今,学校なんかが随分空いているんですよ。ところによって違いますよ。ですから,ああいうところに少し手を入れて活用していくわけにはいかないですか。学校ばかりではなくて,例えば,昔大いに栄えた工場地帯が,もうあんな煙突から煙を出すのが工業じゃなくなってしまいましたでしょう,そういう場所だって,物的施設の利用という点だけから言えば,空いているのが随分あると思いますから,人的な刑務官はなかなかカバーするのは難しいけれども,物的施設は,何かそういうものを,ところによって利用するわけにはいかないですか。
○柴田官房参事官 宮澤(弘)委員おっしゃるように,入れ物だけを考えれば,非常に効率的な発想だと私も思います。
 ただ,難しいのは,刑務所の運営というのは刑務所だけではなかなかできないところがございます。先日も御説明したと思いますけれども,外部の協力者の方,篤志面接委員の方とか教誨師の方,そういう心の支えになるようなことを話してくれるような人の協力を得たり,それから一番問題になりますお医者さんとか,そういった方々を確実に確保できるような体制,それからもう一つは,やはり何百人も職員及びその家族がおりますので,生活が非常に困るような場所というのは避けたいというのが一つあります。それともう一つは,これは遠い将来の話,例えば,おっしゃった学校とか,あるいは離れた工業地帯のところに適当な施設を建てて,そこに入れることができるような身柄を,処遇を特化した施設を入れて,そこで何か特別な処遇をするというような施設をつくるということであれば考えられなくもないのかなというふうに思いますが,今は,過剰収容ということで,とにかく100%を超えている身柄をどうやって入れようかということで,なかなか身柄を,ガラガラポンといいますか,できないものですから,今直ちにおっしゃったようなことを手当てするというのは難しいかもしれませんが,将来は……
○宮澤(弘)委員 将来ではなくて,今こんなに急ぐならば,学校なんか随分空いているのだからやったらいいのではないかと思うんですよ。
 それから,余り初めから雑談しちゃいかんのかもしれませんが,私は原宿に住んでいまして,原宿のあの繁華街を留置場に使おうという話は都に持っていったのかな,そうしたら,都知事は大賛成だと。とにかく,今,外国人の犯罪が多いんだから,都としては協力してやらなきゃいけないとか何とか言って。それで,地元の人たちは冗談じゃないと。何千人近い-犯罪者じゃないんですね,今留置場に入れてもらっている人は-犯罪者が町に来られちゃかなわないというので,さあどうなりましたかな,あるんですけれどもね。
○柴田官房参事官 原宿の話は私も聞き及んでおりまして,いろいろ都の方から情報をもらったりしているのですが,あれの難しいのは,反対の火の手が上がって大変だということを聞き及んでおります。
 同じことが刑務所にも言えまして,本当は,例えば東京がやはり一番の犯罪都市,犯罪の発生率も検挙率も高いですし,刑の確定率も高いと思いますので,そういったことから考えますと,受益者負担という言葉がこういうケースで使えるのかどうか分かりませんけれども,本当は東京都にでかい拘置所,でかい刑務所をつくって,そこへどんと入れれば,ほかの地方に迷惑がかからない計算になるのですね。多分,その発想がその原宿なんだろうと思うのですが,やはり総論賛成,各論反対で,反対のむしろ旗が立ちかねない。今は,刑務所は,全国に50カ所ぐらい,自治体の方から誘致がありまして,是非来てくださいという話をいただいています。これは一昔前だったら考えられないことなのですけれども,そういう引き合いもいただいていますので,そういったところに,将来,先ほど,新設という言葉を使いましたけれども,今,刑務所はそういう場所を持っていませんから,場合によってはそういうところで候補地を探しまして建てることになるのではないかなと。ただ,学校とかになりますと,非常にいい場所にありますよね,住民の生活が安定したところにということになると,なかなか……。
○宮澤(弘)委員 いい場所だっていいじゃないですか。原宿に刑務所なんておつなものです。(笑声)
○柴田官房参事官 それはもう,我々としては願ってもないのですけれども。
○江川委員 うちの前の小学校も廃校になって,それは老人ホームになったのですけれども,老人ホームなのに反対運動がありましたから。つまり,そこに人が住むと前の人にのぞかれるとか,何でこんなに言うのかなというぐらいでしたから,刑務所だともっと大変だと思います。
○高久会長 一部自治体が呼びたがるのは分かります。それは,自治体の長の人の政治力というか説得力に任せるよりしようがないと思います。確かに宮澤(弘)委員がおっしゃったように,廃校になった学校など,自治体が自分で探してくる。改築は必要でしょうが,そういうのは当然,新設の中に入るわけですね。手を挙げる自治体に,適当な土地と,それから建物もある程度提供してもらう条件で移れば,PFI方式をどの程度採用するかは別にしましても,自治体にとっては雇用の機会を増やすチャンス,自治体の活性化ということで,まわりの反対はあるかもしれませんが,それは法務省の仕事ではなくて,自治体の仕事ということで良いのではですか。条件をつければ良いと思います。
○宮澤(弘)委員 石原さんなんてあんな大きなこと言ってるんですからね,これは喜んで受け入れてくれないと。
 要するに,私が申し上げたのは,非常に緊急で急ぐと,それに対して対応することであって,この施設増改築対策というものが非常に急ぐのであれば,今みたいなことをお考えになったらどうでしょうかというだけのことです。
○江川委員 もう一つの質問なのですけれども,この被収容者の伸びですね,この3年間の平均を当てはめてとおっしゃいましたけれども,それにはほかに何か根拠があるのでしょうか。例えば警察庁なり何なりが今後の犯罪の傾向について見通しを立てていらっしゃるのと大体一致しているとか,この数字の根拠は何かと言われたときに,ただ3年間の平均という以外に,何か要因みたいなものを説明できるものはありますか。
○柴田官房参事官 検討の手法は確かにいろいろあると思います。いわゆる検挙率,逮捕とかですね,そういう方法があると思うのですが,実は,そういうデータというのはたくさん入り組んでおりまして,私どもも,過去,本当にこの方法しかないのかと。こういう即物的な推計だけではなくて,もっと合理的なものが何かあるんじゃないかと。例えば失業率,大体2年おくれで似たようなカーブを描くのですね。失業率のアップダウンの2年後に受刑者がアップダウンするような傾向,不思議と合うのです。かといって,不況だから窃盗とかそういう財産犯が増えているのかというと,必ずしもそうではないのです。何なんだろうかと思うのですけれども,分からないけれども非常にカーブが似ているというようなこともありますので,今,江川委員がおっしゃった,これ以外の方法で推計して,似たような曲線を描いているから,ゆえにこれが間違いないという結論は,まだ矯正としてはないのです。
○高久会長 ないと思いますが,3年間でなくても,過去5年間を見てもずっと増えている。5年間でみるともう少し低くなりますね。
○柴田官房参事官 そうですね。
 本当はこういう直線的に伸びるのではなくて,例えば,非常に長期化傾向とかですね。在所期間というのは非常に長くなってきておりますので,そういった人たちが,いずれ,満期にせよ,仮釈放にせよ,出ていくということになりますと,次に来る人たちがまた刑の長い人が入ってこなければ,こういう直線的な数字というのはないはずなんですね。同じですと,いつかは平行線になるはずなのですが。多分,こういう直線ではなくて,いつかは……。なかなかこういう二次曲線的に……。
○江川委員 だから,これぐらいのカーブが続きそうだと,つまり,今後も刑務所に入ってくる人の数が同じように増えていくという仮定の根拠ですよね。例えば,刑がこれだけ長期化しているとか,あるいは犯罪がこれだけ増える予測があるとか,何かそういうのを幾つか要因として出しておいた方がいいのではないでしょうか。この伸び率に比例してこれだけ人を増やすのだと言うからには,これだけ伸びるということをもう少し固く脇を固めておいた方が説得力があるような気がしましたけれども。
○柴田官房参事官 そうですね。
 以前,資料でお示ししたことがあるのではないかと思うのですが,例えば刑の長期化ですけれども,平均在所期間というのがありまして,無期から非常に刑の短い人を全部一緒にした加重平均が,一昔前は18か月ぐらいだったのですが,それが最近は28か月ぐらいで,ここ10年ぐらいで10か月伸びている。一人で10か月平均伸びているということは,もうそれだけ滞留期間が長くなっているわけです。そういったようなデータも実はありますので,そういったところの,直接的な証拠というよりは,傍証みたいなもの,それを総合して,今の傾向がありますと。ただ,実は,この5年間というのが本当にここまで行くのかどうかというのは我々もはっきり分からなくて。少なくともここ二,三年は間違いないだろうと踏んでいるのですが,5年間になると……。
○野﨑委員 統計から見ると平成12年の後半で定員と収容人数が交わるわけでしょう。収容人員が定員より低い,つまり余剰があった時代というものが何十年も続いてきた。被収容者の方が少なかった時代が何十年もある。それが急に上がってきた。これはなぜか。この不景気の問題と関係がないとは言えない。しかし,不景気が続き,世情がそれを後追いして悪化していって,それが犯罪の増につながる。犯罪が増えてくると,こんな短い刑でいいのかという批判が当然出てくるわけで,最近は犯罪被害者の声が非常に強くなってきました。例えば,18年なんていう刑に対して,そんなのおかしいじゃないか。あるいは死刑にするべきだといった議論が強くなってきた。これはかつてはなかった。かつては,人権の感覚から言うと,被害者がそういうことを強烈に言うのはおかしいんだみたいな風潮があったし,言わさなかったですね,裁判で。しかし,だんだんそういうことが言えるようになってきた。日本の刑が軽いと言われてきましたが,昔は軽くても治安が維持できたんですね。しかし,今は,軽くては治安を維持できないんじゃないかという世相になりつつある。だから,刑の長期化というものが一つの傾向になって,それが被収容者の増にもつながってきた。不景気,失業者数の問題がそれを加速させている。
 このカーブは永久に伸びるように描いておられるのだけれども,本当はやはりどこかで平行線になり,どこかで下がってくることだってあるし,我々はそうなることを期待するわけです。そういうことを考えると,この増え方というのはかなり異常な増え方なのだから,それに対応するのに,恒常的な対応をしてはいけないんですね。つまり,ある程度は増やしていくけれども,どこかで線が落ちたらそれをやめられるような,そういうアローアンスのある対策をつけていかないといけないと思うのです。そうしないと国費の無駄遣いになりかねない。
 だから,この線の立て方は一応分かりましたけれども,これが世に出たり,あるいは財務省に予算要求をされると,私が今言ったようなことは必ず言われるわけですから,それにどう対応するのかということを,やはりちゃんと用意しておかないといかんと思うのです。
 先ほど宮澤先生の言われた小学校の問題だって,これは日本全国で空いてきているんですね。公共施設や工場が。だから,もし応急的につくれるところがあればということは考えていいと思うんです。もし地方の工場なんかが空いてきていて使えるものがあれば,そういうものを使うということを考えてもいい。ただ,刑務所にするときに相当の金がかかるということは考えないといけないですね。それが果たして安上がりかどうかというのは,それなりの試算をしないといかんと思うんです。しかし,最初からのけておくことはない。これを借りるといった使い方をしておくと,収容減に転じたときに,もうこれでおしまいですということも言いやすいわけですね。
 だから,いろいろな方法を知恵を働かせて考えていかないといけない。今,一人で何人見ているから,同じ割合でいけば何千人も要るんですという理屈がなかなか通らないと思うのです。それと同じで,いろいろなことを工夫してしのぐことを考えました,しかしこれだけはどうしても足りないんですというものを出していかないと,増員要求というのは立たないと思うんですね。もう少し緻密にやらないといけないんじゃないかなという気はします。
 それから,さっきのお話で,6,700要求している中で,1,000から1,700ぐらいが看守として使われるということを言われたでしょう。そうすると,4,000というのは後方要員になってしまうのですか。そうすると,何かえらく後方要員が重いような気がするのですが,いかがですか。
○柴田官房参事官 私が申し上げたのは,その後方というのはロジの要員ではなくて,コアの部分でない仕事でも,ロジの仕事ではない仕事というのは実はたくさんあるわけです。そういった人たち,例えば,先ほど,6,700人というふうに申し上げましたけれども,その中には,看護師,医師,薬剤師,心理技官,カウンセラー,もうたくさん入っている,計算上入っておりますので。こういった方々は刑務官ではありませんし。
○宮澤(弘)委員 私,前から考えているのですけれども,この問題を一法務省の矯正局の問題として考えるということにちょっと無理があるのではないかと思うのですね。
 どういうことになっているか知りませんが,数日前に新聞を見たら,あれは警察庁も恐らく明年の予算で警察官の増員を要求していたんでしょうね。それをもう要求するのをやめたと,何か財政のあれで新聞にちょっと出ていたんですよ。私が見ましたのは。
 今のは警察の話で,これも同じ治安の問題ですね。本当に治安の問題をもう少し抜本的に,国として,政府として考えるならば,何とか治安対策閣僚会議-まあ,会議をつくるのは日本人好きですけれどもね,閣僚会議でもいいけれども,要するに法務省や警察庁の問題だけでなくて,石原流で言えば,我が国の国全般の治安の問題というふうに政府全体の問題として取り上げていって,取り上げさせて,その中で急ぐものからやっていくというようなことが,この問題の本質でもないけれども,現実的に解決させる一つではないだろうかと,私は実は前からそう考えておりましたものですから。
 要するに,よその,あなたの方で何か警察庁と相談なされている。しかし,それは法務大臣と警察担当の大臣の話じゃないですね。閣議全般で,日本の今の公安・秩序というものをもっとちゃんとしなければいかんと。それには警察官も必要だろうし,行刑の職員も必要だと。そこまで踏み出せなければ,問題は結局中途半端になりはしないだろうかと。
○高久会長 おっしゃるとおりなのですが,現実に収容人員がどんどん増えてきて平成12年度の半ばからは定数をオーバーしてきた。過去3年間と言わずに,過去5年間を見ましても,かなり直線的に増加してきている。それにどう対応するかということになりますと,当然,被収容者が増えれば,働く人を増やさざるを得ない。民間委託とか,どういう方策をとるにしても,被収容者が増えれば,当然,面倒をみる人を監視の人を含めて,数として増やさざるを得ないということで,この数が出てきました。この前の議論のときも,5年ぐらい先を見越した数を出しておけということで,6,700人という数が出てきたと思うのです。予算は人を含めて毎年要求するわけですから,この増加の伸びが減れば当然減ってくるわけです。
 ただ,前提として,過去3年と同じような状況で被収容者が増えるならば平成20年度までにはこういう人員が必要になるという数は出さざるを得ないと思います。仮定のもとにつくっているわけですから,増えなければ,もちろんこういうふうにならないが,その予測はできない。増えない可能性は,少なくともまだ二,三年はないと思いましたので,平成20年度までの,推定ではこういう数を出しても悪くはないと思います。
 宮澤先生,最終的な座長は先生ですので。
○宮澤(弘)委員 今お話がございましたけれども,これはもう,私は日本の治安問題というのをもう少し深刻に考えて,どうせお巡りさんも増やさなければいけないと。今までのように,300人を350人にするとか,そんなちゃちなことでは対応できないですよね。ですから,治安全般の問題をもう少しみんなで考えることをやって,そのうちの一つとして,この刑務所の問題,行刑の問題というものが取り上げられるのが……。
 どうも,やや評論家的ですが。ここでやめますけれども。
○高久会長 ほかに。
○広瀬委員 この,40人学級ではないけれども,40人単位でいきましょうというやつですね。今は五,六十人になっているのですか。
○柴田官房参事官 多いところは80人,100人の施設があるかどうか。
○広瀬委員 仮に採算だけ別だとしますね。作業勘定というのがあって,そこでまず仕事を職員が探してきて,分けて,監督して仕事をやらせて,今度はそれを売りに出して,その収支というのは大体赤字なんでしょう。
○柴田官房参事官 そうですね。受刑者に仕事をさせまして,そこで物をつくって,そこに投じるコスト,勤務する職員とかその施設のメンテナンス,電気代とか水代があるのですが,そういうコストを全部投下して,その稼ぐ額は,もう完全にあがなっていないです。
○広瀬委員 市原みたいな,みそ・しょうゆを請け負ってやっている,それであれだけの大きな施設をもっておけば,あれはプラスぐらいになるかもしれないけれども,ああいうふうに需要先が決まっていて,大きな設備があって,そこで物をつくるという,そんな合理的なところはよそにはそうなさそうで,仮にこれが赤字としますね,そうすると,無理に8時間労働なんていうのはやめて,4時間労働にすれば,職員は,その分,少なくとも作業場の職員は半分で済む。つまり,500人これから必要だというその500人が消えるどころか,このぐらいの人だってちょっと余るかもしれないぐらい。
 それで,この作業量の問題というのは,第1分科会から早く結論を聞いて,4時間労働にしますというなら,その前提に立てば,かなりここは減るんじゃないですか。
○柴田官房参事官 おっしゃるとおり,計算上は,1日8時間,週40時間で,一般国民と同じ労働時間,我々と同じ勤務時間イコール作業時間にしておりますので,計算上,半分にしてやれば,その分だけ働く絶対時間がなくなるわけですから,この必要人員がなくなるという計算は成り立つと思います。
 おっしゃった作業に関して,第1分科会の方でどういう御結論になるか分かりませんけれども,今,矯正局としましては,8時間の作業べったりの日課から,少し教育的な処遇手法を取り入れるような,そういう軸を-半分とまでは実は考えていなかったのですけれども,少し作業時間を縮めて,受刑者の改善更生のためになる,そしてその反射的利益として職員が要らなくなるといいますか,そういうようなことになればいいなということは内々検討しております。
○広瀬委員 例えば,大工のできる連中ならば,義務の4時間が終わった後の数時間,時給幾らで刑務所が雇ってやって,それこそ刑務所の施設でもつくらせたならば,ただで施設はできるわ,彼らの更生には役立つわ,職員は助かるわ,ある種の対価を出してでもいいから,実になることを残りの時間やらせるとか。そして,それがあるいは被害者の救済につながるとか,そういうことになれば,少しは刑務所の中も経済原則が働くんじゃないかなという気もするのですけれどね。
○柴田官房参事官 受刑者に働かせて物を建てるというのは,今でも部分的に少しやっているのですが,昔は自給自足の原理というのがありまして,いわゆる営繕といいますか,手に職を持った受刑者が一生懸命建物を建てたり,現在でも建物を補修したりはするようにしています。ただ,ああいう堅牢な建物を全部建てるだけの能力というのは集まらないかもしれませんが,おっしゃるような,部分的に国の仕事をさせて,そこで経済的にコストパフォーマンスが出るような,そういう考えを導入するということは可能ではあります。適格者がどれほどいるかというのも一方ではありますけれども。
○江川委員 今の議論で言うと,労働を少し減らして,改善更生のためのことに充てるとなると,今度は逆に個別に対応しなければならなくなる話になりますから,それで職員の数が減らせるという話にはならないんじゃないですか。
○柴田官房参事官 部分的に,例えば,Aという受刑者にはこのプログラム,Bという受刑者にはこのプログラムというような方法もあるのですが,例えば,週の特定日に,この日は1日4時間で昼から休むという方法もあるのでしょうけれども,特定日に作業を何もやらないで,本人は例えばここで宗教教誨を受けたいとか,あるいはいろいろな悩みごとを聞くタイミングをここでセットしたいとか,ここではいろいろ本を読んで,あるいは通信教育をやって,自分のために何かで時間を過ごしたいというような,人それぞれの過ごさせ方をするということであれば,少なくとも工場で朝から晩まで働くということが昼間はなくなりますので,その分,舎房の方で仕事をするか,あるいはどこかに集めてやるかということになりますので,すっぽり人が減るということにはならないのですが,少し職員が浮くかもしれないという計算にはなろうかと思います。細かい計算はまだできていませんけれども,考え方としては,先ほど広瀬委員がおっしゃったような,やり方によっては職員が浮く計算にはなろうかと思います。
○江川委員 でも,今のような状況で,雑居房にかなりたくさんいるような状況ですよね。そういうところに人を入れておいたら,それこそまたけんかが起きるとか,トラブルがあるとかで,逆に問題が起きて,それに手当てする職員が要るとかいうことにはなりませんかね。
○柴田官房参事官 多分,そういうところで活躍するのがカウンセラーとか心理技官とか,そういうことなんでしょうね。例えば,自分のことをいろいろやりたいという受刑者もたくさんいるかもしれない。そのときに,部屋の中に入れて,例えば工場担当なり特定の職員から,この被収容者は少しおかしくなってきているから面接してやったらどうだというようなシグナルが出てくれば,そこでいろいろ……。
○野﨑委員 僕がこの間ドイツ,フランスの刑務所を見て思ったことは,向こうは非常に開放が進んでいますよね。日本に比べてかなり自由のある刑務所です。これはいずれ全体会議で報告があるでしょうから,私はそこに詳しく入るつもりはないのですけれども,そこで考えたのは,刑というのは何なのかな,刑務所というのは何をするところなのかなというところだったですね。
 だから,この間,宮澤先生でしたかね,言っておられたのは,日本の刑は労役を課することになっているからということを言われた。これは,本当は8時間でも7時間でも均等分労役を課するというのは一つの教育だろうという前提だったと思うのですが,今,話が出ているのは,そんなに仕事はなくなってきていますよね,それでどうするかという問題。だから,刑務所で一体受刑者をどう処遇するかということを基本に考えていくことは非常に大切なんですよね。というのは,コストだけ考えるべき問題でもない,しかしコストは考えないといけない,そういう問題だと思うんですよね。
 だから,今,議論が出ているのだけれども,例えば被収容者を4時間しか働かせなかったら,ほかの時間どうするのかということになると,今,あなたが言われるように,コンサルタントをつけるとか,宗教をやるとか,それはまたものすごく金がかかるわけなので,コストの軽減にはならないわけです。
 だから,本当は,刑務所の在り方というのを,私は,今,非常に悩んでいるのですけれどね。ああいう自由な刑務所,例えば,ドイツの最後に見た刑務所なんかは,24時間中8時間しか拘束していないんですよ。朝,受刑者がタイムレコーダーを押して出勤していくのです。それで外で働きまして,最後の8時間を過ごすために夜帰ってくるという,そんな刑務所があるんですよ。これは日本ではとても考えられないものだし,周りの住民だって,そういう人が毎日出ていくのを別に何も言わなくなっている。そういうことはなかなか日本ではあり得ないことなんですね。だけど,方向としては,だんだん自由になっていくのがどうも方向らしいなという気はするんですよ。ただ,その中で日本が,刑というもの,それから刑務所というものをどう考えて,それに対してどう対応していくかということが,非常に基本的な問題としてあるような気がするのですね。
 だけど,さっきから話題になっているように,何とか労働させるために愚にもつかないような労働をさせることは決してプラスにもならないわけですよね。しかし,被収容者というのは,案外働く場に出たいんですよね。時間を過ごすためには。
○江川委員 72.6%と。
○広瀬委員 懲役でも何でもないのに,みんな働くと言ってるんですよ。
○野﨑委員 それは,個室なり房にいることのつらさなんですね。だから,仕事をさせてやるのも,実は刑務所を平和に治める一つの方策ではあるんです。だから,いろいろなことを考えていかないといけないなという感じがしますね。
○広瀬委員 とにかく,もうちょっと役に立つ仕事はないかなということです。
○野﨑委員 おっしゃるとおりです。
○高久会長 雑談ですが,例えば,改築をするならば,その改築の刑務所に大工の腕のある受刑者を全部集めて,その受刑者が改築する刑務所をずっと移っていけば安上がりです。
○広瀬委員 そういう組織をつくって,足りない刑務所つくってしまえばいいじゃない。
○高久会長 そうだと思うのですが。10万人,今は8万人,その中には,100人ぐらいか200人ぐらい,大工の経験のある人もいるのではないですか。それを改築の順番に移すといって,1日8時間,自分の住むところをよくしてもらえば,ある程度は……。まあ,冗談ですが。
○野﨑委員 フランスだったと思いますけれども,調理学校を持っている刑務所がありますね。調理師の資格をつけてやると。日本だとどうなのかよく分かりませんけれども,向こうは,調理師の資格があると前歴にかかわらず割合仕事があるんだというようなことを言っていましたね。
○高久会長 大工の仕事というのは日本でも結構あるんじゃないですか。改築というのは結構はやっていますから。
 まあ,それは冗談にしましても,結局,この試算は,あくまでも条件つきでこういう数を出しましたということですから,ほかの分科会の結論でありますとか,そういうことによって当然変わってくるけれども,現状のまま見通したことで20年度までを考える,5年間を考えるならこういう数になりますということ,これは仕方がないんじゃないかと思うのですが。
○野﨑委員 各年要求ですから,3年になって伸びがとまったら,そこでやめざるを得ないということですね。
○高久会長 そうですね。当然のことですね。
 それから,医療・心理スタッフの400人が気になるのですが,現在,医療・心理スタッフと両方集めて何人いるのですか。
○古市補佐官 心理の関係でございますが,本年度,行刑施設,89人でございます。医療(一),医師でございますが,226人でございます。
○高久会長 「イチ」というのは何ですか。
○古市補佐官 医療職俸給表(一),医師でございます。
○高久会長 看護師は当然このスタッフの中には入るわけですね。だから,現在,医療・心理スタッフ総括して何人いるか。
○古市補佐官 心理技官が89人,医師が226人,看護師が252人で,合わせまして567人でございます。
○江川委員 薬剤師は。
○古市補佐官 薬剤師等は医療(二)になっておりますので……。合わせまして656人になります。
○高久会長 656人。ですから,かなり大幅な増。まあ,20年までですが。
○野﨑委員 現在の656を400増やすというのは,どういう割合になりますか。
○広瀬委員 7割ぐらいかな。
○高久会長 収容人員が,現在の試算ですと3割ぐらいですかね。現在の7万4,000人が10万人ですから,3割。受刑者より伸びは多いですね。
○野﨑委員 それは医療の充実という部分が入っているわけですね。
○高久会長 特に,精神科医や心理コンサルタント。心理士が必要。心理士の人がそんなにたくさんいるのですか。
○広瀬委員 野﨑さんの話ではないが,最近は検挙率が悪いのに,5,000人ずつも増えるというのは,ちょっと想像もつかないですね。何でですか。やはり長期化しているということですか。
○柴田官房参事官 さっき説明を漏らしましたけれども,まず,入所人員の方が出所人員よりも多いということがあるから増えるわけですが,その原因は,一つは刑が長くなってきているのですね,全体的に言えることは。それが一つです。
○野﨑委員 入所が多いということは,やはり犯罪が増えているということですね。
○柴田官房参事官 そうですね。犯罪が増えている,有罪人員が増えているから。
○野﨑委員 だから,広瀬委員の言われるように,検挙率は低いにもかかわらず,やはり刑事事件は増えている。
○高久会長 犯罪が増えているということですね。
○野﨑委員 だから,検挙率が低くても増えているというのは,相当増えているということですね。
○広瀬委員 もう帰すことが第一ですよ。(笑声)
○高久会長 早く帰してもらっても困りますね。
○柴田官房参事官 刑がしっかり長いですから。
○高久会長 それから,この部会の中のもう一つのテーマが,人権教育のことでして,お手元の論点の細目の2の方にありますが,人権教育の積極化ということで,人事異動の適正化,幹部職員の異動サイクルの適正化,一般職員の人事異動の活発化,それから職員研修の見直し,人権研修の強化・充実ということですが,何かこれにつけ加えることは。
○江川委員 さっきの,人を増やすのも合わせてですけれども,職員の団結権の問題ですね,あれはやはりここで議論する……。
○高久会長 議論をしていかなければならないと思います。
 団結権のことについては,国家公務員ですから国全体の問題になりますね。
○江川委員 ただ,諸外国の例を見てもそうですし,今回は一応こちらの方で提言するということになりますけれども,刑務所の問題というのは,これからずっと,いろいろな問題が出てきてはそこで解決しなければいけないことというのはありますよね。そういうときに,やはり職員の人たちが,もちろんスト権とかいうのは仕事の性質上無理だと思うのですけれども,団結していろいろな交渉に当たるという権利は保障すべきであるとか,望ましいとか,そういうのは入れておいてもいいのではないかと思うのですが。
○高久会長 それは,団結権というのか,職員の不満の受入の窓口というふうになるのですかね。
○野﨑委員 僕も一つの大きな問題だと思いますよ。ただ,ここで議論している人権というのは,職員と被収容者との関係での人権が主な問題だと思うんですね。
○江川委員 いや,ただ,職員の-例えば過剰収容とかそういうのを含めて,職員の人権が保障されなければ,職員がほかの人の人権を大事にできるわけがないというのが私の考えなんですけれども。
○野﨑委員 それはそういうことになるのかもわからないが,公務員の団結権の問題というのはものすごく大きな問題だから,ここがその議論をするべき場かというのは一つの問題だと思います。ここで団結権を与えるべきだとか,与えるべきでないとかいう議論をするのは,ちょっと場が違うのではないでしょうか。
○江川委員 だからこそ大事だと思うんですね。つまり,今,例えば何人増やせというのはある程度提言はできますけれども,今後長いことにわたって,いろいろな労働条件とか労働環境とかというのをきちっと整えていく環境整備として,例えば団結権というのが保障されれば,こういう枠組みができたんだから自分たちで努力しなさいという,そういう形になると思うんですよね。今回の問題は,アンケートの調査を見ても,いろいろな緊張関係というのは,もちろん人権教育も大事だけれども,看守の人たちの労働の環境というのも整えないといけないということを本当に示していると思うので,「すべきである」という,そこまで強い表現になるのか,「望ましい」というもう少しやわらかい表現になるのかは別として,やはり入れておいた方がいいのではないかと私は思っています。
○高久会長 いかがですかね,その問題は。「団結権」というとちょっと抵抗があると思うのですが。何かうまい表現が。確かに,年休もろくに取れないということは問題ですね。
○広瀬委員 よく知らないんだけれども,給料は人事院でちゃんと勧告しますね。賃金の問題はそれでいいとしますね。労働時間の問題とかああいうのは,一般国家公務員は人事院に文句を言えるのかな。申立てができるんですか。休みが取れません,全然取れておりませんとかいうのは,人事院でやるべきことになっているのですか。
○柴田官房参事官 おっしゃるとおり,いろいろ勤務条件に関する不服は人事院に対して。
○広瀬委員 だから,救済措置がないということではないと思うんだよね。
○江川委員 ただ,個人個人が,私は文句ありますという,そんなふうに手を挙げられるような環境ではないと思いますよ。だから,これは一つの職場の,これは組合というのか何というのかはともかくとして,それの代表者が持っていくというのが,やはり一番言いやすいんじゃないですかね。
○高久会長 そうですね。
 確かにおっしゃるとおり,私が国立病院に勤めているときに,人事院に病院から内部告発がありました。某医師はよそで勝手に稼いでいるということを。それまで皆知らなかったのが,誰か内部の人が人事院に訴えて,調査が入って,実際そのとおりで,罰せられました。だから,訴えは名前が出なくてもできないことはない。無記名で,某刑務所では職員が休みを取れていないということを人事院に訴えることはできますね。手紙でも何でも。
○広瀬委員 程度の問題だから,そういう国家公務員に対しても団結権を認めるべきだという意見はよく分かるけれども,ただ,先日から言われている刑務所の刑務官の勤務状況,年休が数日しか取れませんという,これは一般企業でもそうですね。恐らく我が会社で聞いても,土日の分を償えればそれはいい方で,まずは年休的なものは二,三日しか取れていないだろうという気が。つまり,組合に訴えたり,団結権を持っていて,それが政府と交渉したりという,そこまでいけばもうかなりひどい話なんだけれども,刑務官の場合も,そこまでいかずにこうやっているというのが実情じゃないですか。
○江川委員 それは,テレビ朝日がそんな……。テレビ朝日は,じゃあ夏休みもとっていないんですか。
○広瀬委員 とってないですよ。
○江川委員 それはそういう人もいるかもしれませんけれども,1日も取れていないという人がいたり,6割が3日というのはやはり異常な状況だと思うんです。これはほかもそうだから当たり前だと思ったら……
○広瀬委員 週休二日は取れているのでしょう。週休二日取れている世の中の人たちというのは,今10%ぐらいだと思うよ。
○柴田官房参事官 4週で8までいっていませんね。そういう数字は出ていませんね。まあ,7。ひどい施設は5,6代。
○高久会長 病院でも,私立の病院は土曜日も全部オープンしていますから,週休二日は取れていないですね。国立病院は週休二日になっていますが。
○野﨑委員 休暇が取れている,取れていないのいうのは,団結権とはまた違う問題だと思いますがね。ただ,ここの場で団結権の問題を議論していくのかということはちょっとどうかと思います。
 しかし,刑務官の労働状況というものを見たときに,それを是正するための何らかのシステムみたいなもの,メカニズムみたいなものをつくらないといかんじゃないかということは考えないといけない。
○広瀬委員 こういう会議が,きちっと増員などを要求するということになるわけだから。
○高久会長 増員の理由に挙げていますから。
○野﨑委員 もう一つあるのですが,刑務官の処遇を見ていると,級別等数でいくと3級というのがものすごく多くて,そこでとまってしまうような傾向が非常に強い。僕はこれは改めるべきだと思いますよ。裁判所の書記官だとか法務省の検察事務官とか法務事務官と比べても,5等級以上というのは非常に少ないんじゃないですか。パーセンテージで言っても非常に少ない。この間,公安職員と一般職員の給与の比較のあれがあったけれども,年齢が上がっていくと低くなる,しかもあれは公安職としての手当をつけて,なお低くなっているわけだから,それは基本給の号俸が低いということなんですね。ここで伺っていると,上級,中級,初級という採用したときの,初級もほとんど大卒であるという現状を見ると,やはり待遇の改善として,そこを考えていかないといけない。よそに比べて号俸が低い,つまり,もらうお金より級が低いということは非常にコンプレックスにつながるし,おもしろくないという感情を生むことになると思いますね。だから,これは考えていかないといかんという気がしているんです。
○高久会長 それは,論点の中にあります人的・物的体制の中の一つになりますね。
○野﨑委員 なると思いますけれどもね。
○高久会長 それを提案するのはもちろん構わないのですが,ほかの職階との関係がよく分からないのですが。
○野﨑委員 3級ぐらいが多いことは間違いないでしょう。
○古市補佐官 はい。
 刑務官の場合,公安職俸給表(一)というところで,いわゆる下に厚い俸給表になっております。それは,実は,他の官庁のいわゆる行政職俸給表とか,少年院や少年鑑別所に勤務する法務教官の公安職俸給表でも(二)の方で申し上げれば,やはり順次昇格して5級,6級になる。ところが,公安職俸給表(一),いわゆる刑務官が適用されている俸給表と申しますのは,昔の一階級一等級制が尾を引いております。看守である場合は1級で,看守部長になって初めて2級になります。そのときの俸給表の流れが今に至っておりまして,階級が上がらないと給与も上がりませんという前提があります。
○野﨑委員 階級を上げようと思っても,級別定数があるからね。定数の問題がありますよということを僕は言っているんです。
○古市補佐官 例えば,今,刑務所の中で,級という部分では5級,6級あたりの部分を厚くして,一般職員もそこまで行ってというふうなことになりますと,今の俸給体系はちょっと取れなくなると考えております。今後,俸給体系そのものも含めて,人事院とも相談しながら,刑務官の待遇改善について是非検討はしていかなければいけないかなというふうに考えております。
○野﨑委員 そういう趣旨です。つまり,低い号俸に固めてしまうと,それはおもしろくない。何だかんだで手当をもらっていても,いつまでたっても給与が上がらないじゃないかというのは非常に不愉快なことだと思うんですよ。そういうのがいろいろな問題につながってくるので,やはり生きがいを考える必要がある。-それをトータルの収入に影響しないように上げる方法は幾らだってあるわけですから。ほかのところでは官職をつくるのにみんな一生懸命になってきた歴史があります。公務員の場合は。だから,矯正関係でも少し考えていいんじゃないかなという気はしますが。
 それから,人権の問題に関してですけれども,やはり人権の意識の改革というのは絶対必要だろうと思いますし,研修というのが非常に大きな手段ではあるのでしょうけれども,人権研修というのはえてして,憲法にどう書いてあるとか,日本の人権の歴史とか,そういうことになるんですよね。しかし,そういうことではなかなか問題の解決にはならないと思います。この間ヨーロッパの刑務所を見て,問題が起きたときはどうするんだということを聞きましたら,時間かけて説得するんだということを言っていましたね。話し合うんだと。
○高久会長 それは職員が。
○野﨑委員 刑務官と被収容者が。被収容者に問題が起きると,そういうことをよく考えてみろと,話し合うんだというのです。自分らはそういうことをするためのトレーニングを受けているということを言っていましたね。さっき,心理職とかという話がありましたけれども,恐らくそういう見地からいろいろなトレーニングを受けているのだろうと思うのです。それはすごく大切なことなんですよね。
 向こうの刑務所を見ると,ドイツとフランスの刑務所を見た限りでは,日本の刑務官に見られる軍隊意識みたいなのはないですね。例えば,日本で見られる入っていくと,「総員何名,異常なーし!」といったものは見られない。それから,非常に水平的な話し合いをしていますね。また,その入っている連中は私服を着ていいわけですから,区別がつかんみたいな状況で,「ハイ,ジョン」というような状況にありますね。軍隊的意識になると,上官,部下みたいな感じになって,どうしても,言うことを聞かないとゴンというようなところが出てくる。つまり,看守の在り方というものもよく考えてみないといけないと思うのです。日本では小学校から体罰が非常にあるわけだから,体罰を科する精神的土壌が日本ではあるんです。私は人権を担当してきた者としてもそれが一番嫌で,それはおかしいよという啓発をしてきたのだけれども,親なんかが学校に行って,一つや二つ頭殴ってくださいみたいなことを言うものだから,いつまでたっても,法律ではしてはいけないと書いてあることが,体罰がなくならない。
 僕は,刑務所の在り方の中で,今度起きたような事件の再発を防止されるなら,看守と被収容者の在り方とか,どうしたら問題が起きたときに平和裏に対応できるのかということを中心として研鑚を積む場があってもいいと思う。
○広瀬委員 それも,刑務所文化と言っては何だけれども,日本の刑務所の担当制の問題だとか,オイチニ,オイチニだとか,それは第1分科会でやっているわけでしょう。第1分科会でどういう結論を出そうとしているのか。そこの人権教育の積極化,それから今の団結権の話にしたって,かなり第1分科会と絡むところがあるので,会長さんに一度話してもらったらどうですかね。我々はこういうふうに固めようとしているんだとかね。
○高久会長 そうですね。
 時間はありますかね。
○杉山次長 次回の全体会で,各分科会から,またこの間のように報告をいたしますので。
○広瀬委員 その辺をよく説明してくださいと言っておいてくださいよ。
○杉山次長 はい。
○野﨑委員 例えば,この間の受刑者のアンケートを見ていても,何か言うと,「おまえ,仮釈がもらえないぞ」とか,いきなりそういう反作用が出ている。しかし,それは非常にまずい対応ですよね。もっと平和裏に,そういうことを分からせる方法は幾らでもあるので,そんなことを言うと相手は非常に反感も持つし,言いたいことも言えなくする意味で人権抑圧にもなっている。いろいろな事態にどう対応するかという研修とか,プロを入れたトレーニングをやってみると,うんと違ってくるんじゃないかと思います。
○江川委員 これからやる人権教育の教材では,そういうロールプレイとかを随分取り入れるようになっているんですよね。そういう,実戦に即対応できるようなトレーニング的な教育というのは,これはどれぐらいの時間を要することになるんでしたでしょうか。
○柴田官房参事官 これはまだ案の段階で。
○野﨑委員 ロールプレイもすごくいいと思うけれども,ロールプレイの前に,なぜそういうことになるのかという,人間の心理とか精神状態なんかについてよく勉強してみる,そこからスタートしないと,ロールプレイだけでいきなり入ってしまうと,きれい事になってしまうんですね。その辺はよく考えたらいいと思います。
○高久会長 職員のメンタルヘルスについては,この希望どおりにすれば,心理士やカウンセラーを増やしていただくということになっていますから,その人たちに被収容者と一緒に職員の面倒も見てもらえばいいわけですね。当然だと思います。刑務官はストレスが随分強いだろうと思います。ですから,それに対するケアという意味でも,是非,心理士,カウンセラーを増やして面倒を見てもらう必要がある。
 ただ,人権教育は,おっしゃるとおり,講義だけではほとんど意味がない。話し方のうまい人が,実際の例を挙げてうまく説明して下されば,一番良いのですが。
○野﨑委員 やはりプロをちゃんと入れて,きっちり見てもらうべきですね。
○高久会長 今はビデオの時代ですから,講義よりは,ちゃんとしたビデオをつくって,それを見せて,それにあわせて講義をするとか,いろいろなやり方があると思うのですが。もちろんロールプレイも将来的にはやる必要があると思います。ですから,そういう形で教育強化という……。強化と言うのは簡単ですが……。
○江川委員 いかに,講義を受けるだけではなくて,実際に即したトレーニングとしての教育を強化するということじゃないでしょうか。
○高久会長 そうですね。実地トレーニングが本当は一番良い。そうすると,上の人が,要するに,どこの世界でも,自分より上の人がやるのを見てそれをまねてやっている。上の人がちゃんとしないと,新しく就職する人はそのまねをします。ですから,職場に良いモデルがないとだめでしょうね。
○野﨑委員 そのことに関連してですが,私はそういう話を聞いて帰ってきたのですが,本当にどういうふうに行われているかというのは分からないわけですね。海外を見て,これからいろいろな提案をされるのでしょうけれども,ドイツでこうやっているからこれがいいんだとか,フランスでこうやっているからこれがいいんだというのは非常に短絡的なことだと思うんですね。実際に何が行われているかということを知らないといけない。それが日本に持ってこれるかということも考えないといけない。僕は,そういう意味で,刑務官を年に何人か,ヨーロッパでもアジアでもいいのですけれども,外国の刑務所に6か月ぐらい行って,現地を見ながら研修するような機会を与えるような制度をつくってほしいという気がするのです。現地を見てくると,ああ,こんなにうまくいくんだとか,これはうちの国の方がいいなとか,いろいろなことが分かってくると思うんですね。そういうものを持ってきて,よく状況を把握して,大きな改革というものに入っていく必要があるのではないか。だから,是非,そういう制度を設けられたらどうかなと。
○江川委員 言葉はどうするんですか。
○野﨑委員 アメリカでもドイツでもフランスでも,刑務官でそこの研修をやるぐらいの素質を持った人もいるし,研修したらすぐ行けると思いますよ。それから,自分が刑務所で扱うわけではなく,やり方を見ているわけですから,それは十分やっていけると思いますよ。
○江川委員 全然分からなくてもですか。
○野﨑委員 全然分からなくてもということはない。例えば在外公館に行くときにも,言葉の問題は行くことが決まってからの問題としてやってきましたから。
○高久会長 いろいろな役所で職員を外国での研修に出していますよね。法務省も出しているのですか。
○野﨑委員 こういう現場には出してないと思います。
 それで,こういう現場は,言葉の問題というのは,江川さんが考えられるよりはないと思いますよ。
○江川委員 私,いきなりフランスへ行けと言われても,困っちゃうなという感じは……。
○野﨑委員 派遣適格者は刑務官にいっぱいいると思いますよ。現に矯正から相当の数の人が在外公館に行っていますよ。
○柴田官房参事官 そうですね。
○野﨑委員 ドイツでもお会いしたし,フランスでもお会いしました。その人たちはみんなフランス語なりドイツ語でやっているわけです。何十人も送ろうというわけではないですから,そういう候補者は必ずいると思います。
○高久会長 在外公館にいる方が,短期,刑務所で少し研修をすれば。
○野﨑委員 その人たちは本来の仕事がありますから。
○高久会長 できないですか。義務づければ。例えば2週間延長するかわりに,2週間は刑務所に。
○野﨑委員 2週間では見れないんじゃないですか。
○高久会長 1月でも。
○野﨑委員 さっき僕は級別定数の話をしましたが,例えば,人権意識改革の有力な手段としての人事異動をと言っておられるけれども,人事異動というのは,みんな望むとは必ずしも限らないので,何かポジションなり号俸の調整がないと,なかなか行かないと思うんですね。だから,さっき申し上げた給与体系の問題は,こういう転勤をスムースにするためにもお考えになる価値はあるんじゃないかと思います。
○高久会長 確かに,人事異動で,いいモデルになるような刑務所に時々回した方が良いでしょうね。変なところに行くとかえって……。
○野﨑委員 あそこに行けば等級を上げてやるとか,このポジションにつけてあげるというようなのが普通の異動の仕方なんですね。
○高久会長 まあ,いろいろなところを回るようにされた方が,刑務所の透明化にもつながりますし,本人の勉強,経験にもなりますから。
○野﨑委員 でも,喜ばないですよ,なかなか。
○高久会長 本人はですね。
○野﨑委員 やはり転勤をさせようというのは,それなりのことを考えないと。
○高久会長 幹部の人はいろいろ転勤するわけですね。
○野﨑委員 幹部の人はポジションつきですから。
○高久会長 幹部の条件としてですね。それで,一般の職員はそうかもしれませんね。単身赴任をすればお金もかかりますしね。
○野﨑委員 単身赴任なんかなかなかできないでしょう,この号俸だと。
○高久会長 そうですね。
○江川委員 全部官舎ですよね。
○柴田官房参事官 全部ではないですが。
○野﨑委員 単身赴任をするということは,旧官舎を確保することを考えておられるのかと思いますが,そういうことはできない。つまり,横須賀から黒羽に行くときに,家族を横須賀の刑務所に置いておくということはできない。だから,それはとても大変なことで,自分の金でアパートを借りるなりしないと単身赴任というのはできないのです。
○高久会長 子供の教育の問題があったりして。
○野﨑委員 だから,転勤というのは大変なことなんですよ。
○高久会長 そうですね。人事異動の適正化と言うのは簡単ですが。
○野﨑委員 ちゃんとできるような体制を組んであげないといかんと思います。
○高久会長 分かりました。
 それから,女子職員の増加,男子刑務所における女子刑務官の増ということが,この論点の細目にありますが,女子刑務官ですと,少し仕事の範囲が限られますね。そうすると,また人を増やす必要があるということですか。
○野﨑委員 そんなことはないんじゃないですか。これは,男子刑務所における女性の採用もあるのでしょう。入れるんでしょう。
○高久会長 項目としてはですね。
○野﨑委員 和やかになるといいですね。
○高久会長 これは矯正局の方で何か説明ありますか。
○柴田官房参事官 今のお話で,例えば男子刑務所に女性職員がいるかいないかというと,原則的にはいないですね。一部,例えば未決,男子の刑務所でも,受刑者ばかりの施設と,そうではなくて,拘置所といいますか,未決を入れる能力を持った施設がありまして,そこには女性の被告人,被疑者が入ってくる可能性がありますので,そういった人たちのために,ごく少数ではありますけれども,女性の刑務官を採用しているという実態はありますが,総じて男子職員は男性の刑務所に,女性の刑務所は女性の職員と,大体,今,そういうふうにはっきり分かれているのが実情であります。
 この,男女をどういうふうにして勤務するような形をつくり上げるかというのは,実は矯正はまだ未熟でありまして,男女共同参画という大きなテーマがありますし,先日御説明したPFI,新しい中で,500人・500人の男子・女子の刑務所を一つのテストケースとして考えているのですけれども,将来的には,野﨑委員がおっしゃったような,性の違う職員がお互いに刺激し合った職場になるという,いい方向に向かうような職場づくりは,今後,閉鎖性の高い刑務所の中では必要なことかなと思っております。ただ,現実問題として難しいのは,やはり男系社会というのが徹底しているところもあります。今後の広報の在り方にも問題になってくるでしょうが,なかなか男子施設に勤務するという女性職員が多くありません。今,刑務官の採用区分は男性と女性とは分かれておりまして,ある程度,毎年全体の2割弱でしょうか,女性を採用しているのですが,専ら女性の施設か,あるいは東京拘置所には大きな女区というのがありますのでそこに勤務する,というような傾向がありますので,将来的には,例えば,採用の段階から,男性刑務所でも勤務することを条件に採用されることを希望しますかとか,今後は男性刑務所に行きますよというような一般職員の異動の区分をつくることによって,裾野を広げていくという方法があるかと思います。
 もう一つは,幹部の登用というのを積極的にやるべきだろうということです。今,幹部はまだシェアが非常に低うございまして,矯正局でも,将来の幹部候補生というのが14名ぐらい,これは実は昨年に比べると今年は増えたのですが,それでも全体で14人ぐらいしかいませんで,これは今後増やしていく必要があるなと。現場施設も,施設長,刑務所長は何人かおりますけれども,例えば総務部長でありますとか,それから何とか課長というのは,女性もちらほら登用するようになってきておりますので,これはどんどん裾野を広げていきたいなというふうに考えています。
 ただ,難しいのは,いわゆる公権力の行使という,先日来からお話が出ていますけれども,処遇部門にほとんど刑務所の大半の職員が勤務しているのですね。そこにいかにして女性職員を配置できるようなポストを考えるのかというのが,私たちの今後の課題になってきたのかなというふうに考えております。
○高久会長 夜間当直なんかはやはり女性にはできないでしょうね。
○柴田官房参事官 施設によりましては,夜間当直をするようなポストにつけられた女性職員がいるのですが,その人はかなり苦労しているみたいですね。女性一人だとなかなか,男性の受刑者が寝静まっているところに一人で歩かせるというわけにはいかないケースもありまして。その逆も同じなんですけれどね。
○高久会長 逆もあるでしょうね。
○柴田官房参事官 女性の施設に男性の職員が一人で歩くというのは,いろいろと差し障りが出てくる場合がありますので。
○野﨑委員 フランスの重罪刑務所は所長が女性でした。試行錯誤を繰り返していくもので,一挙に物事を進めるというのは無理ですが,そういうことだって,実際に現地を見るということで,どうしたらうまくいくのかということの勉強ができると思いますね。
○高久会長 外国では,男性の刑務所に女性の職員は結構多いのですか。
○野﨑委員 そんなに割合が多いとは思いませんでしたが,中に何人も入っていました。割合平和裏に中へ入ってきますね。
○江川委員 ただ数を増やすだけではなくて,やはり女性が働き続けられるような環境整備というのが必要だと思うんですよね。この間の栃木のときも,結構やめていくとおっしゃっていました。
○高久会長 女性の職員が。
○江川委員 そうです。過剰収容で本当に大変だから,例えば結婚して子供ができて,そういうので続けられないという,そういう環境であれば,どんどん若い人を採用しても。やはり,ずっと働き続けられる職場というための環境整備というのが必要だと思うんですけれどね。そうしないと幹部にもなれないですものね。
○高久会長 そうですね。そうすると,保育所をつくらなければならないとか,いろいろなことが必要ですね。
○江川委員 そこに保育所をつくるかどうかは別として,例えば産休・育休がとりにくい職場というのは,やはり他の人に申し訳ないから辞めてしまうということになりますよね。それは職員の採用の人数の問題にもかかわってくると思うのですけれども,そこのところを何か改善というか,工夫が……。
○高久会長 そうですね。
○野﨑委員 それから,刑務官のOBというものをもう少し活用されたらいいと思いますね。パートタイムでもいいですから。そうすると,例えば房の中に入れてもいいわけです。今はパートタイム裁判官をつくろうかという時代なんですから,パートタイム看守がいたっていいわけです。その方が,常勤の人を雇うよりははるかに調整もしやすいわけですから。
○江川委員 定年は幾つですか。
○柴田官房参事官 60歳です。
○野﨑委員 それで,中に入るのは体力が要るばかりではないですから,ロジスティクスだけではなしに,中へ入る人としてそういうOBの人を活用する道もある気がしますね。
○高久会長 私の知っている老人病院で,定年を過ぎた医師をもっぱら雇っていました。そうすると,給料は年金プラスアルファで。患者さんは老人ばかりだけれども,老人はかえって年寄りの医師を喜ぶのですね。まあ,限度はありますが。
 確かに,経験者をパートタイマーとして再雇用するということを考えないと。もちろんやっておられるわけですね。
○柴田官房参事官 先ほど,6,700人の中に民間とか非常勤という手法もというふうに申し上げました。中身は,今,野﨑委員がおっしゃったような,矯正職員のOB,再訓練の必要がほとんどありませんから,すぐ実戦に入れますので。それから,現に女性の職員が産休とかいろいろ休まれたときに,手近なところで採用が可能な矯正の人が,現に今でも,部分的ではありますけれども,第一線の職員でやっていただいておりますので,これを今後は裾野を広げていって手当てするということでございます。
○野﨑委員 今おっしゃられたことに関係すると,裁判所なんか,女性の裁判官が出産をすると,1年とか2年休んで,それからまた採用してほしいというと採用する。少しそういう弾力性のある運用をされて,正式職員として任命したり,あるいは臨時職員として任命したり,いろいろなことを考えていくのも,さっきの育児とかそういうものとの絡みでは大切なことだと思います。
○高久会長 そうですね。分かりました。
 ほかに,この論点細目では,最後の方にメンタルヘルスと団結権ということですが,外国ではどういうふうに。
○柴田官房参事官 お隣の韓国はILOに入っていないらしいのですが,これは当然,団結権はないと。憲法でそういうことがうたってあるというふうに聞き及んでおります。原則として,憲法上,公務員には団結権は認められていないというお国柄のようでございます。
 ほかの,ILOの条約を批准している国に関しましては,ILO条約勧告適用専門委員会というところからの情報でしか私は承知していないのですが,その情報では,団結権を認めていない国は,トルコ,ナイジェリア,スワジランドという,この三つの国というふうに聞いております。それ以外は,多分あるのではないでしょうか。
○高久会長 それから,その他の論点ということで,これはこの部会でなくていいんじゃないですかね。死後の検死とか,そういうのは含んでいないのでしょう。ほかのところですよね。
○江川委員 団結権の話はどうなったんでしょうか。くどいようですが。
○高久会長 個人的な考えですが,国家公務員になるから難しいのではないかと。
○江川委員 国家公務員だって,職種によっては労働組合はあります,もちろん。
○高久会長 ああ,ありますね。
○江川委員 むしろ,一般職員は入っている人が多いんじゃないですか。
○柴田官房参事官 団結権は,今,日本国政府として,監獄職員は認めておりません。ナショナルレポートといいますか,政府見解では,警察に含まれるからだめなんだと,消防職員と同じように,ということで認めていないのですが,遠い将来はやはり認める時代も来るのかなというふうに思います。
 ただ,今は難しいと思います。なぜならば,先ほどのグラフを見ていただいたら分かりますように,満足に休みも与えられないような状態で,これは管理者側の理屈になるのかもしれませんけれども,団結権を認めても勤務条件の改善は何一つできないわけですね。幾ら言われても,お金がない,人が手当てできないのだったら,もう不満がたまるようになってしまうわけですね。私としては,ある程度人の手当てがされて,過剰収容状態がある程度解消されて,十分な処遇ができるような,収容率80%とか-矯正は80%ぐらいの収容率が一番運営しやすいと経験的に思っているのですが,そういう状態になった状態で,職員も十分休みができて,休みをしっかりとるというような状態のときに団結権を認めて,今後の勤務改革をやっていくかというようなことを……。これは管理者側の理屈になるかもしれませんけれども……
○高久会長 逆なんですね,そこは。逆でしょうね。
○柴田官房参事官 なぜこういうことを申し上げるかといいますと……
○野﨑委員 江川さんも,ここで,第3分科会で団結権を与えようということを決めようということを言っておられるのではないと僕は思うので,そういう議論が将来の問題としてあったということを書くか書かないかぐらいのところじゃないですか。
○江川委員 例えば,今回アンケートをやっていろいろな状況が明らかになったり,私たちが実際に現場を見せていただいていろいろな人たちから話を聞いて,初めていろいろなことが分かったのですけれども,でも,それを今まであの方たちは言わずに,ずっと中だけでぶすぶす沸騰していたわけですよね。やはり,そういう団結権を認めるということは,すぐにそれが改善に結びつくかどうか分からないけれども,例えば組合として社会に訴えるとか,そういうことだってできるわけで,問題があるということを知らしめる。それは密告するのは本当に大変なプレッシャーの中でやることになると思うんですね。やはり,そういうある程度のものを,できれば本当は今すぐあった方がいいと私は思いますけれども,それがいろいろな環境の問題で難しければ,やはり,今までは検討もされていなかったわけで,それはある種検討して,今後改善するために引き続き議論しておくべきだということぐらいはどこかに入れていただきたいなと思います。
○高久会長 分かりました。
 この問題を議論の中に入れても構わないと思います。まとめるときに少し気になっているのが,人的・物的体制の整備と,職員の人権意識の改革ということで,体制の整備だからいいとは思うのですが,刑務官を増やせ,もう少し高い給料の人を増やせということと,それから団結権といいますと,何か刑務官をどんどん優遇する。行刑改革会議がスタートしたときには,もう少し被収容者の待遇をどうにかしろということで議論をしていたのが,この分科会では,刑務官の待遇改善ということに終始している。人権教育の積極化という項目はありますが。
○江川委員 あと,人事異動がありますよね。
○高久会長 人事異動。まあ,そういうことでいいですかね。
○江川委員 第2分科会の方で透明性のためにいろいろ,むしろ監視するという方はあるわけですよね。
○高久会長 そうですね。
○広瀬委員 今,認められていないのは,警察とここと,消防もそうですかね。
○高久会長 自衛隊もですね。
○江川委員 ILOの勧告とか,そういうのは出ていないですか。
○柴田官房参事官 出ています。
○高久会長 ILOは出すでしょうね。
○柴田官房参事官 ILOは,この前の説明の資料で……,消防職員,監獄職員の団結権を認める法改正を政府に求めるというのが,2002年にILOから出ていますね。それで,2003年6月にも同じものが出ています。
○江川委員 国際的な機関から見てそういう勧告を受けているのは,やはりちょっと恥ずかしい状態だと思うんですよね。
○高久会長 いかがですか,矯正局としては。
○柴田官房参事官 外国と-確かに,国際の流れがそうだという考え方もあるのでしょうが,これはちゃんとしたお答えになるかどうか分かりませんけれども,いわゆる刑事司法の手続が,やはり根本的に思想が違うので,そういう仕組みから見ないと難しいんじゃないかなという気がしてならないのですね。
 それともう一つは,いわゆる警察は団結権を認めていない,これは外国も多分同じだと思うのですが,日本の刑務官というのは限定的な警察権も持っているのですね。所内での司法・警察の権限を持っていて。所内の犯罪とかですね。そことの整合性をどうするのかという問題もあるからこそ,従来から無理だということを言ってきたのだろうと思うのですね。
○江川委員 伺っていると,とにかくこれはやらないということを前提にいろいろ議論が行われていませんか。だから,例えば,ILOから勧告が出て,それはどうやったら是正できるのかどうかという議論が全然なされていないで,だめな話ばかり考えていらっしゃる感じがしますが。
○柴田官房参事官 だめな理由ばかり考えて申し上げているわけではなくて,冒頭,先ほど申し上げた,団結権付与というのは将来の検討課題としなければいけないことは私は認めます,これは。
○江川委員 でも,なるべく速やかにというところもやはり大事だと思うんですよね。だって,それは刑罰の形はいろいろ違うかもしれませんけれども,アメリカだって,フランスだって,イギリスだって,ドイツだって,団結権を認めている国を挙げれば数限りないわけですよね。今おっしゃったように,認められていないのはトルコとナイジェリアとスワジランドだけですか,それにプラス日本ですよね。
○柴田官房参事官 外国は,例えば職員の異動というのは,そこの施設の施設長の権限で採用できて,縁故採用ができるという仕組みに,イギリスなんかは,私も何箇所かの施設長に聞いたことがあるのですが,そういう仕組みなんですね。ところが,日本のルールというのは,全国の名簿から,どこの刑務所というのがありまして,例えば,今,刑務所は団結権を認めておりませんけれども,少年院の職員はやっていいことになっているのですね。沖縄の少年施設と本土のある少年施設には組合ができております。そこから来る要望というのは,給料を上げろとか,超勤,休み,出てきます。我々も団体交渉に出てやります。だけど,先ほど申し上げたように,なかなか実現しないのが一つ。
 それともう一つは,異動のことについて組合に相談しろと言われるわけですよ。本来であれば,これは勤務条件ではなくて管理運営事項ですから,これは団体交渉の中には入ってこないのでしょうが,最終的にその人の生活に影響を与えるとかいうようなことがあるものですから,それに絡み合わせて交渉事項として持ってくるわけですね。
 一方では,職員の異動をやるべきだと,一般職員の,幹部のみならず,ということを一方で言っておきながら,団結権を認めますと,多分,組織として刑務所は機能しないかもしれないと私は思います。
○江川委員 だけど,一般の企業は……
○柴田官房参事官 それともう一つ言わせていただくと,幹部になる職員が多分いなくなるだろう。それはなぜならば,所長を頂点とする階級制社会で,何かあったときにはぴしっとやらなければいけない階級制が崩れるのです。それとて管理者の論理だと言われるかもしれないのですけれども。
○江川委員 その体質そのものが今問われているんじゃないですか。上からの命令でガーッと抑えるという。それがまずいと言われて議論しているわけですよね。つまり,今のお話は,さっきも言いましたけれども,とにかくこれはやらないということを前提に,その理屈を一生懸命探していらっしゃるような気がするんですね。
 これをやるにはどうしたらいいかと。例えばこういう弊害があるなら,ここのところを改善してと。組合の在り方だって,全国,世界,全部統一ではないと思うんですよね。だから,例えば,刑務所でもしそういう団結権を認めるとしたらどういう在り方が考えられるかというのもやはり検討していただきたいと思うわけですよ。
○柴田官房参事官 もちろん,検討を全くしないという意味ではないですよ。
○江川委員 そして実現に向けての検討をしていただきたいということです。
 それで,将来というのはいつごろの話でしょうか。
○柴田官房参事官 それは,先ほど申し上げたように,過剰収容がおさまって,職員が十分……
○江川委員 だから,それが逆なんですよ。(笑声)
○野﨑委員 「「団結権」について」というのを標目で挙げられた趣旨はどういうことなんですか。
○杉山次長 7月ごろに論点整理をいたしましたときに,委員の方,どなたかは失念しましたけれども,意見書の中で,ここを論点として取り上げるべきだということで出されたということでございます。
○高久会長 人的・物的体制の中に入りますからね。
○野﨑委員 今の団結権の問題というのは,私は,いわゆる公安職員といいますか,警察だとか,そういうもの全般の問題として,将来,労働上,国家公務員の労働環境をどうするかというところで議論しないといけない問題だし,ILOからの勧告も引き続き来ているわけだから,早急に対応すべき問題があろう思います。しかし,ここで議論をしていいのかどうかという点で私はためらっているだけなのですが,しかし,この点についてある委員から議論があったと,団結権を認めるということが今回の問題の解決につながるという意見があったということを書くかどうかというところだと思うんですよね。
○高久会長 それは書いても一つも悪くないと思います。意見があったわけですから。
○野﨑委員 一遍,そういう点で検討してみられて,差し障りがあるなら,こんなところが差し障りがあると言われたらいいし,そういう意見があるということを書くことについて問題がなければ,ある委員からそういう指摘があったということを書く方法もあると思いますね。
○高久会長 議論したことですから,書いて差し支えないと思います。
○野﨑委員 会長にお任せして検討してもらえばいいと思います。
○広瀬委員 私自身は,今回の事件とはやや迂遠な感じがするけれどね。施設だとか過剰勤務だとか,それからオイチニ,オイチニの刑務所文化とか,そういうのが大いに関係するけれども,年来のテーマになってきた団結権と結びつけるというのは,やや,何もかも一緒くたにしてしまうような気がしないでもないと思うんだけれどね。
○野﨑委員 まあ,これは公務員全般の問題だとは思うんですね。私もそういうことは思いますよ。
○広瀬委員 江川さんなり何なり,これは団結権とかなり強い結びつきがあるんだという実感があるなら,そこをちょっと聞きたいと思うんだけれど,しかし,実際の組織というのは,むしろ,今回のような場合に,彼は組合員であったとか,組合員を抜けていたとか,職場と組合の妙な関係になってみたり,かえってそれを覆い隠すとか,変なぐあいに動きかねない。かつての陰惨な国鉄事件を思い出すわけじゃないけれども,団結権があれば民主的にいくというふうには思わないけれどね。
○江川委員 これで全部解決するなんて思わないですけれども,今回の会議の目的というのは,確かに名古屋事件をきっかけにではありますけれども,やはり刑務所あるいは行刑の在り方全体を考えていこうということですよね。ですから,例えば規則の問題とかそういうことも含めてですし,それから労働をどうするかということも論議されたりするわけですよね。だから,そういう中で刑務所の問題を,今の状態で改善するだけではなくて,今後をずっと見据えて,こういう問題が二度と起こらないように,そしてもう少しいい状況に持っていくためにはどういうことができるかということを考えた中の一つのオプションだと思うのですね。これで全部が解決するなんていうふうには私は思っていませんけれども,さっきも申し上げたように,一番の出発点は確かに看守と被収容者の問題ですけれども,被収容者の人権を問題にするときには,その看守の労働環境や看守の人権だって保障されていなければ,人権が抑圧されている人がほかの人の人権を尊重できるとは思えないので,やはり一つの労働者としての権利みたいなものはある程度守っていくという,そういう姿勢は必要だと思うんですよ。ただ,それはやはり,仕事の関係上いろいろな制約がある職場というのはたくさんあると思うし,この刑務官というのもそうだと思うのですけれども,職場でのいろいろな不満だとか,あるいは労働条件の改善についていろいろ外に出したり,あるいは交渉したりするという窓口としての組合なり,何という名称にするのかよく分かりませんけれども,そういうのはあっていいのではないかなと私は思いました。
○高久会長 私も国立関係の所でずっと働いてきました。病院,医療関係が多いのですが,総論的に言うと,組合は,組合員の待遇の改善を要求して,患者さんの待遇の改善は要求しませんでしたね。組合はエゴイスティックになっていて,病院長などが非常に苦労してきていました。スト権はありませんが,組合は常に要求をしてくる。東大病院では,婦長を組合員が選挙で決めていたことがあった。そうすると,組合に入っていないと婦長になれない。病院長も指名できない。そういうひどい状態の時がありました。その後時代が変わってなくなりましたが。
 ですから,国家公務員が団結権を持って組合をつくることが,本当に被収容者にプラスに働くかどうかは分からないですね。自分たちの待遇の改善を要求するということが主になる。そうすると,被収容者にはかえってマイナスになる場合が,少なくとも私が病院で見た限りでは患者さんにマイナスになるような要求が出ていました。勤務時間を短くしろとか。組合の代表は,組合員のために,組合員の労働条件を良くする,より楽にするという要求を管理者に持ってくる。
○江川委員 組合が全部職場を支配するわけではなくて,もちろんいろいろな規則があったり,交渉事になるわけですよね。
○高久会長 結局,数で来ますから,管理者は弱くなります。団体交渉に出ますと,これはかなわないです(笑声)。私も何回か出たことがありますが。
○江川委員 高久先生はおやさしいから。(笑声)
○高久会長 どういう表現にするかということは検討するにしても,御意見があったことは間違いないですから。
 ほかに何か。
○広瀬委員 大体,いい刑務所とは何かという。被収容者が居心地がいいというのが何かいいような話になるね。(笑声)
○野﨑委員 ただ,フランスに行ったら,ものすごく開放的なんですよ。僕が,なぜこんなことになったんだと聞いたら,刑が長期化するに従って,被収容者がみんなものすごく希望を失ったと言うのです。それでいろいろな問題が起きてきた。だから,自由にしてあげて,つまり,少し発散させるような方向に持っていかないと秩序が維持できないということでした。
○江川委員 そういうふうにすると,また戻ってきたくなる人というのはいませんか。(笑声)
○野﨑委員 それはないと思いますがね。自由を失うわけですから。しかしヨーロッパでは厳罰を受けた被収容者というものを平和裏に収容する点にあまりにウエイトが置かれていることを知り,僕は,果たして何のために刑務所に入れているのかというところに問題があるように思いました。
○高久会長 それは根本的な問題で。
○野﨑委員 刑とは何なのか,刑務所とは何なのかというところに非常に突き当たったですね。
○高久会長 分からないところがありますね。
 今,事務局の方から,弁護士会の提言の中に内部告発者の保護という項目が出ている。この分科会で議論することになりますかね。内部告発者の保護はほかの分科会でも良いのではないか思うのですが。
○野﨑委員 人権問題としてやるのですか。
○江川委員 第2じゃないですか。
○杉山次長 職員の人事管理ということで。職員からのものです。受刑者からではなくてですね。
○江川委員 第2分科会のテーマじゃないんですか。透明性は。
○杉山次長 弁護士会の方で第3分科会あてにそういう要望が来ているのですけれども,要するに,人事管理の側面として,内部告発したような職員に対していろいろ不利益が科されるのではないかと。そういうことで内部告発,中のあれが外に出てこないんじゃないかという,そういう議論をしているのです。
○高久会長 それこそ人事院に告発すれば……。大体,内部告発はだれが告発したかということは分からない場合が多いですね。だから,不利益を与えようがないのではないですか。
○江川委員 職員の告発というのは,今は結構あるのですか。
○野﨑委員 今,内部告発というのは会社なんかでも大きな問題ですよね。これはコンプライアンスの問題として取り上げられており,私もいろいろ関係していますが,例えばある会社では,原発事故がありまして,内部告発にはきっちり対応しないといけないのだということで,企業倫理委員会というものをつくり,会長,社長が委員長,副委員長となり,社外の委員を入れた委員会で,そういうものを取り上げている。その基礎にあるのは,一挙にテレビや新聞に持っていかれるよりは,内部でそういうものを吸収してそれを是正する道を持った方が企業としてもはるかに得策であるということに基づくのですね。だから,大きな問題に直面した会社ほど,そういうものを整備しようとしている。そしてこれにならい,一般の会社も形をつくろうとしている傾向があります。だから,そういうものを裏切りみたいに考える風潮はだんだんなくなって,むしろ,中でもって処理ができれば,決して悪いことではないという考えがだんだん育ってきている,大きくなってきているという状況だと思います。
○高久会長 だから,刑務所にとっても,人事院に直接提訴されるよりは,そういう窓口みたいなところがあった方が良い。
 それはカウンセラーではだめなんですかね。
○野﨑委員 カウンセラーというのはそういう役じゃないのではありませんか。
○高久会長 ちょっと違いますね。心理士とも違いますしね。
○野﨑委員 だから,そういう内部告発を受ける委員会みたいなものをつくる,あるいは会社によっては外の弁護士事務所に全部委託してしまうというようなやり方をしているのですが,刑務所の場合は外へ委託ということはないでしょうから,中でもってそういうものを処理する方法というものを考えることも一つだろうと思います。
○高久会長 そうすると,刑務所の中よりは矯正局に窓口をつくって。
○野﨑委員 そうですね。ただ,そういうものを本社につくると,全部本社に上がってくる,本社はどうするかというと,現地に戻すんですよね。だんだん,下でもって吸収できるものは吸収してもらって,上へ上がるものだけ上げてもらいたいという方向へ行くのですね。だから,初めから上にも持ってこれる,それから所長のところにも持っていけるというようなやり方にするのが一般ではないでしょか。企業の中のコンプライアンスの関係は。
○広瀬委員 確かに,組織内部で,その長でも何でもに訴えると,組織の保護というようなことからむしろ押さえつけるから,彼が今度は外に持っていって発表するという,そういう構図が多いんですよね。だから,最初のところで押さえつけるというのが愚の骨頂で。
○野﨑委員 そうなんですよ。そこなんです。
○高久会長 上司の態度が影響するわけですよ。ちゃんと受けとめて話を聞いてやれば,人事院にぽんと行かないでしょうし。
○野﨑委員 だから,そういう制度なんですね。改善できるところがあれば,すればいいという受けとめ方なんですね。
○高久会長 矯正局に直接行かなくても,本当は上司がちゃんと聞いてあげればいいんじゃない。
○西田企画官 私はこの3月末まで,1年間,刑務所の所長をやっていたのですけれども,今,我々の世代が所長をやるような時代になっていまして,そういった内部告発を簡単に聞くという姿勢なんですね。我々の世代はもう。それで,実際に私が1年間所長をやったときも,3人の職員-これは一般職員です,現場の-から,話を聞いてくれということがあって,間に立った処遇首席とか処遇部長が,どうしましょうか,こっちで処理しましょうかというようなことも言ったのですけれども,私は,そんなことを抑える必要はない,所長室に呼びなさい,聞きましょうと言って聞いたわけです。そうすると,やはり,一般職員というのは,所長に聞いてもらったらそれだけで満足するわけですね。それから,私もそのときに,3人のうちの一人だけは,その幹部の言っていることがちょっとおかしいと思って,その幹部を指導したりしたことがありました。やはり,事実我々が聞いてやれば,それで解決するんですね。
 ですから,矯正も,これから我々の世代が所長になるような時代ですから,そういったことに特に目くじら立ててというのではなくて,私はむしろ興味があって聞きたかったぐらいですから……
○高久会長 ですから,そういうふうに所長に対する教育もするということですね。
○野﨑委員 平和裏に事をおさめたいという希望が強いんですよ。そして,そうなるんです,現実に。やってみると,非常にくだらない話がいっぱい出てくるんだけれども,それを厭ってはいけない。実際運用してみますと,そういうシステムですね。
○高久会長 分かりました。
 では,まあ,そういうことで。
 それでは,きょうはずっと御議論いただきましたので,少し早目ですが,これぐらいで終わらせていただいてよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。


午後4時17分 閉会