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トップページ > 省議・審議会等 > その他会議 > 行刑改革会議 第1回会議

行刑改革会議 第1回会議

日時: 平成15年4月14日(月)
14時05分~16時38分
場所: 法務省第1会議室



午後2時00分 開会


○事務局 ただいまから,行刑改革会議第1回を開催いたします。

1.法務大臣挨拶

○事務局 初めに法務大臣あいさつがございます。
○森山法務大臣 法務大臣の森山眞弓でございます。
 本日,行刑改革会議の第1回を開催することになりました。まず,委員の皆様方には御無理申し上げて委員に御就任をいただきまして,また,後藤田先生におかれましては相談役をお引き受けいただきまして,誠にありがとうございました。
 私は,一連の名古屋刑務所事件を深刻に受けとめておりまして,この事件を契機に顕わとなったさまざまな諸問題を解決し,国民の矯正行政への信頼を回復するためには,行刑運営の在り方を徹底的に見直しまして,抜本的な改革を行わなければならないと決意いたしているところでございます。
 そこで,まず,省内に行刑運営に関する調査検討委員会というのを設けまして,所要の調査及び抜本的な再発防止策の検討策定に省を挙げて取り組んでまいりました。その中間報告が,後ほど事務局から報告させていただきます「行刑運営の実情に関する中間報告」でございますが,その報告において,改革の実現のために検討しなければならない諸点といたしまして,職員と被収容者の新しい関係の在り方,被収容者の法的地位及びその救済申立制度の在り方,職員の人権意識の改革の方策,過剰収容下における行刑処遇の在り方,職員の執務環境の改善,人的物的体制の整備などが取り上げられたところでございます。また,このほかにも,国会等で御指摘をいただきました行刑施設における医療体制の在り方なども検討しなければならない課題だと考えております。
 この行刑運営の抜本的な改革を行うに当たっての私自身の思いは,国民に理解され,支えられる刑務所をつくることにあります。そのためには,できるだけオープンで外からも分かりやすいこと,人権が尊重されつつ必要な規律は保たれること,改善更生が適正に行われることなどが重要であると考えております。
 これらのことが順調に行われている刑務所も今でもたくさんございます。しかし,とかく刑務所というところは閉ざされたところと言われまして,一般とは異なる面が強調されがちでございます。そこで働く刑務所の職員も特別な仕事をする人と見られまして,自分たちもそう思い込んでしまっている,そういう傾向がありまして,仲間だけの社会をつくってしまいかねないということがございます。そうした仲間の内の常識が世間の一般常識からかけ離れてしまってはいないだろうか,もしそうだとすれば,それを正していくための意識改革を遂げなければならない,そうした意識改革を可能にするようなオープンなシステムを考えなければならないのではないでしょうか。
 それと同時に,犯罪情勢が悪化している中で,国民が安心して暮らし,平和な生活が守られますよう,罪を犯した人を改善更生させて社会に送り返すことは日本の刑務所の大きな使命でありまして,また誇りでもあります。これを,限られた物的,人的資源の中で効果的に行えるようなシステムにしなければなりません。そして,新しい人権意識を持った刑務所の職員が,誇り高く,生き生きと日々の職務に精励することによりまして,国民に支持される行刑運営の改革が達成できるのだと思っております。
 こうした行刑の改革を行うためには,何よりも,広く国民の御理解と御支持の下で推し進めることが不可欠でございまして,そのためには,民間の叡智を結集し,国民の視点に立って,幅広い観点から更に検討することが是非とも必要であると考えまして,行刑改革会議を立ち上げました。そして,本日,皆様にお集まりいただいた次第でございます。
 皆様方におかれましては,それぞれのお立場から,先ほど申し上げた中間報告を議論の素材としつつ,それにとらわれることなく,行刑の改革のために必要不可欠であるとお考えになられる問題を,一切の聖域なしに,御議論,御提言いただきたいと思います。
 法務省といたしましては,この会議において充実した深い議論が行われますよう,行刑改革会議の御要望に従い,必要な検討,調査及びこれらに基づく情報提供を行いたいと考えております。そして,できる限り早期に,少なくとも年内には改革の方向をいただければ有り難いと考えております。その御提言をいただき,これを最大限尊重いたしまして,具体的な行刑改革の実現に向けて省を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。私自身もその先頭に立ってこれを推し進める決意でございますので,どうぞよろしくお願いいたします。

2.座長挨拶

○事務局 では,次に,宮澤弘座長にごあいさつをいただきます。
○宮澤(弘)座長 この会議の座長を仰せつけられました宮澤弘でございます。どうぞよろしくお願いいたします。一言ごあいさつを申し上げたいと思います。
 一連の名古屋刑務所事件に端を発しまして,矯正行政に対する国民の信頼が揺らいでおります。誠に残念でございます。早急に行刑の改革を行う必要があると考えられます。
 この会議におきましては,その改革のために,国民の視点に立ちまして,幅広い観点から,行刑の在り方そのものについて聖域なしの検討を行いたい,徹底的な議論,検討を行いたいと思っております。そして,抜本的な改革を行うための提言の取りまとめをいたしたいと思っております。したがって,検討すべき事項は恐らく非常に多岐にわたると思っております。
 同時に,先ほどもお話がありましたとおり,早急に改革を図る必要がございます。法務大臣からのお話もございましたが,ひとつ年内にある程度の方向性を出してほしいというお話もございました。無論,あらゆる問題について慎重に議論をし,検討をしていただくことは当然でございますけれども,同時に,行刑改革の実を上げますために一日も早く案を備える必要がございますし,また,法務大臣からも今年のうちに何か方向性というものを出してほしいというお話でございます。もとよりいろいろな事項について精緻に議論を展開するということが基本でございますけれども,同時に,ただいま申し上げましたような事情もございますので,どうか委員の皆様方には議事の進行・運営についてまた格別の御協力をいただきたい,このように考えます。どうぞよろしくお願いいたします。


〔報道関係者退出〕


○事務局 それでは,宮澤弘座長に議事進行をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○宮澤(弘)座長 それでは,御指名でございますので,私が議事進行役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 議事を始める前に一つ申し上げますが,藤本哲也委員におかれましては,御都合により委員を辞退したい旨の御連絡がございました。法務大臣もこれを了承されたと承っております。御報告を申し上げます。

3.会議の公開等の在り方について(室内にテレビカメラを設置し,別室でモニターによる公開を行うことに決定した。)

〔報道関係者入室〕

4.委員自己紹介

○宮澤(弘)座長 それでは,自己紹介をしていただきたいと思います。
 まず,私自身から自己紹介をさせていただきますが,私はこれまで大体,地方自治,地方行政の仕事をしておりました。その関係で,自治事務次官をいたしまして,それから私の郷里が広島県でございますので広島県知事をいたしました。更に,参議院議員3期,議員生活をいたしました。
 以上でございます。
 それでは,本会議に相談役として御参加をいただいております後藤田相談役にお願いいたします。
○後藤田相談役 後藤田正晴でございます。法務大臣から,この改革会議の委員になるようにという御要請がございましたけれども,何しろ,高齢でございますので,相談役で参加させていただくようになったわけでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○宮澤(弘)座長 次に,座長代理の成田委員にお願いいたします。
○成田座長代理 私は,広告会社の電通の会長をやっております成田でございます。全く行刑に素人の私が,このような座長代理に選ばれて非常に緊張いたしております。先ほど来,いろいろとお話に出ておりますが,なかなかコミュニケーションは難しいなと思っている次第でございます。耳を大きくして皆さんの御意見を伺っていきたいと思っております。
○宮澤(弘)座長 曾野委員が所用で,早く席をお立ちになりたいというお申し出がございましたので,どうぞ,曽野委員。
○曽野委員 小説を書いておりまして,日本財団の会長をいたしております曽野綾子と申します。小説家は非常識を基本といたしまして暮らしております,それを少し訂正しつつ,生きております。皆様方に,人間についてお教えいただくということを楽しみにいたしております。どうぞよろしくお願いいたします。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございます。
 それでは,井嶋委員にお願いいたします。
○井嶋委員 委員の井嶋でございます。昨年秋,最高裁判所判事を定年退官いたしました。弁護士登録をいたしましたけれども,弁護士の方はまだ新米でございまして,ほとんど仕事はしておりません。最高裁判事に就任前には,約35年間,検事をいたしておりまして,その約半分が検察庁における捜査事務,そのまた半分が法務省の大臣官房あるいは刑事局における法務行政事務をしてまいっておりますが,問題の刑務所担当の矯正局には直接勤務いたしたことはございません。そういった意味で,私はいわば今回問題になります矯正局の周辺居住者といったような立場で本会議に参加させていただいております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○宮澤(弘)座長 それでは,高久委員にお願いいたします。
○高久委員 自治医科大学の学長をしています高久です。私自身は,今まで大学の病院あるいは国立国際医療センターという厚生労働省の病院にいまして,行刑運営ということには全く知識がございませんが,せっかく委員に指名されましたので,少し勉強させていただいて,行刑施設における医療体制について何らかの提言ができればと思っています。よろしくお願いいたします。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございます。
 順序が狂いまして申し訳ございません。次に,江川委員。
○江川委員 江川と申します。よろしくお願いします。私はいろいろ取材をして,それをメディアで御報告するということを仕事にしております。今まで,刑務所というのは,先ほど大臣がおっしゃったように,非常に閉ざされた世界だったと思いますし,それはお役所の側の方にも問題があったと思いますが,私たちジャーナリズムの世界に生きる者や,あるいは国民一般も,なるべく見ないようにしていたということがあるような気もします。そういうことから,まず刑務所とか,そういう施設が一体どういう状況にあるのか,例えば看守の方や服役中の方,そしていろいろな形でそれにかかわっている方々からお聞きするなどの調査をし,国民の前にそれを明らかにして,議論をオープンな形でできればいいなというふうに思っております。そして,そういう調査については,取材と相通じるところがあるでしょうし,それを広く伝えることで国民との間の橋渡し役という意味でのお手伝いができればいいなと思って参加をしました。よろしくお願いします。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 次に,大平委員。
○大平委員 弁護士の大平と申します。弁護士になりまして7年目で,本件委員に就任するということで,決まりましてから,私は,監獄法が制定されてからこれまで何回法案が提出されたとか,その法案の中身もすべて勉強させていただきました。しかし,幾ら私がどれだけ勉強しようと,私よりもはるかに何十年と経験を積んでおられます諸先輩の皆様方には到底足元にも及びません。私がこの委員の末席に置かせていただく唯一の理由といいますのは,私よりも若い世代,これからの日本をしょって立つ子供たちが,この国の在り方としまして,そして諸外国から見て恥ずかしくないような監獄行政とか拘禁行政について何か思うことを述べれて,お手伝いができればなと,そんなふうに考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
○宮澤(弘)座長 次に,菊田委員。
○菊田委員 座長に最初にお願いがあるのですけれども,「日本の刑務所」という岩波新書を出しておりまして,きょう,20冊ばかり持ってまいりましたので,委員の先生方にお配りしてよろしいでしょうか。
○宮澤(弘)座長 どうぞ。
○菊田委員 それでは配っていただきたいと思います。
 明治大学で三十数年間,犯罪学を教えておりますけれども,私は研究者として,人に言わせれば批判ばかりしているというふうに言われてまいりましたけれども,学者が批判しなければ,だれが批判するかというスタンスでやってまいりました。もちろん,いい面,すばらしいところは,私が言わなくても,それはだれでも認めることでございますので,そういうことでございますから,批判のための批判をするつもりは毛頭ございません。今回は,こういう形で出席させていただきまして,実現可能なことを,地についた形で提案なりして,それが実行されることを法務大臣には是非ともお願いしたいというふうに思っております。
 同時に,先ほど江川委員がおっしゃいましたけれども,日本では,受刑者に会わせないのですね。外国では幾らでもできるのですが,日本ではできないので,ホームレスの人で,刑務所にいた人,100人以上に会って,刑務所のことは聞いております。けれども,刑務官の方には,今までおろそかで余り聞いておりませんので,是非ともこの際,刑務官の方たちは一体どう考えているのか,どうすべきか,どういうことが実現可能かということを含めて聞く機会をこの際,設けていただければありがたいというふうに思っておりますので,よろしくお願いします。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 次に,久保井委員,お願いします。
○久保井委員 久保井でございます。私は41年間,弁護士をやっておりまして,昨年3月まで,日本弁護士連合会の会長を務めさせていただきました。このたび,法務大臣が,長年の歴史的な課題とも言うべき刑務所の改革に積極的に取り組まれる方針を打ち出されたことにつきまして,大変感銘を受けておりますし,敬意を表したいと思います。私自身,十分お役に立つかどうか,自信はありませんけれども,少しでも皆さんの意見を取り入れながらお手伝いをさせていただきたいというふうに張り切っておりますので,どうぞよろしくお願いします。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございます。
 その次は,滝鼻委員。
○滝鼻委員 滝鼻でございます。今新聞社に勤務しておりますけれども,かつて,十数年間,司法界を取材現場として担当したことがございます。そういう経験があって,今回御指名いただいたのだと思いますが,その十数年間にわたる司法界の取材の中で一番過疎地といいますか,足を運ばなかったところが刑務所でございます。特に矯正行政についてははほとんど,何か問題があったときには取材いたしましたけれども,日常的な取材というのはほとんどしませんでした。それが実情でした。したがいまして,今回どれほど御協力できるかわかりませんけれども,いろいろな御報告,お話を伺って,適切な判断をしてまいりたいと思います。公開の法廷を除いては,ほとんど,検察庁,裁判官室,そういうところが取材対象でありましたから,私の取材の対象のほとんどは非公開でございました。
 以上でございます。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 それでは,野崎委員。
○野崎委員 野崎でございます。私はかつて法務省の人権擁護行政にかかわったことがございまして,恐らくそのことが縁になって,このたびの委員を仰せつかることになったのではないかというふうに考えております。人権行政にかかわったということは,私の人生にとりましては大変な出来事でありまして,その後,人権擁護推進委員会の委員も務めさせてもらいましたし,密かに人権問題というのは自分の生涯のテーマだというふうに考えてきております。
 御承知のように,人権については各国の憲法にいろいろ規定があるわけですけれども,これはいわゆる国家と市民といった,つまり縦の関係について規定しているのが主でありまして,人権問題というのはそういうところからスタートしたのだということがよく分かるわけであります。しかし,先進国におきましては,それは一応解決されて,今や市民間の問題,例えば日本では同和問題でございますとか,あるいは幼児虐待の問題,家庭内暴力の問題,外国人の問題といった,つまり市民対市民の関係について議論が論じられるようになり,審議会でも主にそういうところを議論してまいったという気がします。ところが,最近この問題が明らかになりまして,まだ日本にこんな問題が残っているのかということは,私にとって非常にショッキングなことでありました。ですから,私としてはこの問題に一生懸命取り組んでいきたいというふうに考えております。
 平成8年に裁判所を退官しまして,弁護士のまねごとをしておるわけですけれども,会社法の関係でいいますと,いろいろな不祥事件が起きて,結局,今,企業の中ではガバナンスということとコンプライアンスということが非常に強調されております。どの企業もコンプライアンス,ガバナンスに関するセクションというのは非常に大きくして,きちんとしたものにしていこうという努力がなされております。
 そういう観点から見ると,監獄,刑務所問題については,ガバナンスに関係するものは監獄法で,正にその改正というものがなかなかうまくいかずにきておる。それから,コンプライアンスの問題は,職員の人々がどういうふうに自分の仕事をやっていくかということを,まずルールにして,それをちゃんと実行していくということにつながっていくような気がします。企業法の中で論じられていることが,行刑の世界ではまだ十分に,というより,非常に未発達のままで放置されているということでございますので,そういう観点から,ここでいろいろ発言をさせていただきたいというふうに考えております。
○宮澤(弘)座長 次に,長谷部委員。
○長谷部委員 長谷部でございます。東京大学法学部で憲法を教えております。よろしくお願い申し上げます。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 次に,広瀬委員。
○広瀬委員 テレビ朝日の広瀬でございます。名古屋で受刑者が続けざまに死亡したという事件は,私にとって大変驚きでありました。恐らく,刑務所に詳しい方は,その種のことはあり得ることだという受けとめ方だったかもしれません。いずれにしても,今回,100年ぶりぐらいに監獄法の見直しが行われるとすれば,大変貴重な機会でありまして,私みたいな素人でも,この改革に貢献できればと思っております。よろしくお願いします。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 次に,宮澤(浩)委員。
○宮澤(浩)委員 宮澤といいます。現在,慶應義塾大学の名誉教授をしております。慶應に四十数年おりまして,65歳の定年で中央大学に移りまして,総合政策学部で4年ほど勤めました。それも定年になりまして,今は慶應義塾大学で大学院の学生を相手に講義を一週間に一回やっております。ほかに,弁護士の資格を持っていますが,実は,今度の5月に生まれて初めて法廷に出るという,専ら会費だけ納めていた弁護士であります。
 私は刑務所とは非常に縁が深くて,若いころ菊田君の影響もあったのではないかと思いますが,刑事政策を勉強するには刑務所,少年院等々を見学しなければいけないということを考え,恐らく,現役のころ,学生を連れて全国の80%以上の刑務所と90%以上の少年院,それから半分ぐらいの鑑別所を見学して,いろいろ現場のことを学んでまいりました。現在は府中刑務所で篤志面接委員というものをやっておりまして,主としてドイツ語をしゃべる受刑者の悩みを聞いたり,法的な問題に答えたりというようなことをやっております。
 私にとっても,日本の刑務所について勉強してきて,いろいろ長短があるわけです。しかし,今度の事件は起こるべくして起きたのかなとも思ったり,どうしてこんなことが起こったのだろうと思ったりいたしました。一つは,日本の場合,刑務所を規律する法律が古過ぎる。ドイツの法律が実は今の刑務所の法律のもとにあるわけですが,去年5月にベルリンに行って,モアビットという刑務所を見学してきました。ここの刑務所の高級役人だったクルト・フォン・ゼーバッハという人が明治21年に日本に来て,監獄官練習所の教授をしたり,ドイツの監獄学を教えたりした,その人の活躍した場の,その当時の建物が残って,しかも,今も使われているわけであります。ただ,その中での被収容者の生活に対する規律は,日本の現行の監獄法とは大分違って,かなり自由であります。その辺の差がなぜ生じたのかなというようなことを考えたいと思うし,一つのかぎは,もしかすると,ヨーロッパ人権裁判所というものが,ヨーロッパの矯正関係者に大きな影響を及ぼしているのではないか。というのは,受刑者から人権裁判所に充てた請願といいましょうか,手紙は一切,施設が触れることはできないわけですね。そして,いろいろな苦情を人権裁判所に提起して,人権裁判所からドイツのしかるべき当局に,こういう問題についてチェックするという連絡があって,それが一つのコントロールになっているのかもしれないなというふうな気がしております。
 いずれにしても,まだまだ勉強しなければならない問題がたくさんあるわけで,この機会をおかりして,私自身も一生懸命勉強したいと思っております。
 以上です。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 以上で自己紹介は終わりました。ありがとうございました。
 先ほど少し時間をとりまして,大変申し訳ないのでございますけれども,せっかくおいでをいただきましたので,大体きょうは5時ぐらいまでおつき合いをいただければ幸いだと思っております。どうかひとつよろしくお願いいたします。

5.行刑運営の実情に関する中間報告について(事務局報告)

○宮澤(弘)座長 そこで,順序といたしましては,お配りを申し上げております議事次第に5といたしまして,「行刑運営の実情に関する中間報告について(事務局報告)」というものがございます。これは事務局が,今回の問題にかんがみまして,いろいろ調査,検討した中間の報告でございます。中間報告でございますが,今後どういう事項をどう検討すべきかというようなことも中に書き込まれております。実は予定といたしましては,中間報告の御報告を申し上げて,それについて御質問をいただきたいと,こういうふうに考えておりましたけれども,ちょっと時間が大分なくなってまいりました。そこで,恐れ入りますが,中間報告は既に文書として差し上げてございますので,お読みいただいた上で,何か御質問等がございますれば,どうかひとつ,事務局の方に御連絡をいただきたいということで,予定には中間報告についての事務局報告と書いてございますけれども,そういうことで,本日はそういうことを申し上げる余裕がございませんので御理解をいただきたいと思います。

6.意見交換

○宮澤(弘)座長 そこで,6の意見交換と書いてございますが,意見交換の方に移らせていただきたいと思います。本日は第1回のことでございますので,大体,三つぐらいの項目について御意見を承れればいいのではなかろうか。別にそれに拘束されるわけではございませんが。
 第1点は,委員の方々の,この問題についての基本的な考え方と申しますか,あるいはこれにお取り組みになる姿勢ということでございます。
 第2点は,検討事項。どういう事項をこれから検討すべきであるか。これは先ほど申しました法務省の部内の中間報告の中にも,それはそれなりに書かれておりますけれども,しかし委員として今後どういう事項を検討すべきかということです。
 第3点は,今後の審議に当たってどのような方法で検討するのかということです。無論,こういう会議の形式でいろいろ御議論を闘わせていただくということが中心でございますけれども,あるいは法務省にも各国の資料とか,そのほかの資料もあるようでございますから,そういう資料,調査ということもございましょうし,あるいは,現地について調査をするというようなことも必要であろうかと思います。それから更に,こういう問題についてのヒアリングと申しますか,特に学識経験,まあ皆様方が正に学識経験者でおありになることは申し上げるまでもございませんが,学識経験者等に来ていただいてヒアリングをしていくというようなことも,その方法の一つでございます。
 以上申しましたように,1番目は,委員の方々の,この問題についての基本的な考え方と申しますか,取組の姿勢。2番目は,検討事項でございます。検討事項は法務省部内で調査,検討したものだけでいいのか,あるいはそれ以外にも検討すべき事項があるのかというようなことも含めまして,検討事項の問題。3番目は,検討方法と申し上げてよかろうかと思いますけれども,ここで議論を闘わせていただくというばかりでなくして,ヒアリングをしたり現地調査をしたりということが,ある程度必要ではなかろうかと思います。
 以上の3点を頭の中に置いていただきまして,いろいろお考えを御開陳いただければ幸いだと思います。どなたからでも結構でございますが,どうかひとつ,以上の3点について御意見をいただきたいと思います。
○高久委員 私は4時過ぎには出なければならないものですから,恐れ入りますが先に意見を言わせていただきます。
 私の経歴から考えまして,当然,この会議の中で刑務所内の医療体制の在り方についていろいろ勉強させていただいて,意見を述べさせていただく,あるいは提言をさせていただくことになると思います。その場合,刑務所の現状について全く知りませんので,日本の現状あるいは先進諸外国の刑務所の中の医療問題についての調査資料のようなものを勉強させていただければ非常に有り難いと思っていますし,できれば,時間的に言ってそれほど多くの場所が可能とは思いませんが,少なくとも代表的な1・2か所をお伺いして,そこに収容されている方々に対する医療体制は現在どういうふうになっているのか,あるいはどういう問題点があるのかということを現場で勉強させていただければと,そう考えています。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございます。いかがでございましょうか。
○曽野委員 私は法務省のこういう委員会に,もう伺わないようにしようと思っているのに,またもや,意志が弱いというのか,ポイントがずれるのか,伺ってしまったのですが,なぜ伺わないようにしようと思うのか申し上げましょう。ここで論じられるのは,いつも人権なのです。私は「人権」という言葉が最近かなり嫌いになりまして,私の子供のころに「スフ,人絹」という嫌な言葉がありました。「人権」と聞くと,それしか思い出せない老人です。
 人権はもちろん,予算制度を整備する上で必要だと思いますが,法務省の会議でいつも,言葉一つ出てこないのが「愛」なんです。私は人権で事は片づかないと思っております。しかし,ここで「愛」と言うと,ばかにされそうな気もしまして,実は余りそういうことを言うのはよそうかなとも思うのでございますけれども,愛というものがなければ,人間のすべてのことというのは解決しないと,私は思っているのです。そのような問題について既に現場の方々は御苦労なさっていらっしゃると思いますが,それを伺いたい。
 それからまた,私は,恐らく江川委員もそうでいらっしゃると思いますけれども,徹底した現場主義です。現場を見ないことには何一つ言えない。それゆえに,今日は私は何も申し上げられません。私は今までに短編数編と,長編の連続殺人事件を書きまして,そのときに,あんぱんは主食と認められるのか嗜好品と認められるのかということさえ分からずに,一々電話をかけて確認しながら書いていました。これは留置場によって違うということが分かったのでございますけれども。そんな人間でございますので何一つ申し上げられません。できるだけ多くの現状の知識をお与えいただきたいと願っております。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。いかがでございましょうか。
○菊田委員 座長が先ほど申されました3点の中の第1点でございますけれども,基本的考え方というよりも,この会議の性格として確認しておきたいことがございます。
 一つは,年内に答申ということをおっしゃいましたけれども,これは今早急にやらなければならない問題でももちろんあると思います。同時に,かなり長期的な展望として提示しなければならない問題もあろうかと思いますので,年内という限定はもう少し緩やかにお考え願いたいという印象を持っております。
 それから,今まで刑事施設法案もだめになっておりますし,その前に,いろいろな法案ができておりましたけれども,全部だめになっております。今回の問題というのは,この先,印象としては法制審議会には余り関係ないということもしれませんけれども,その辺は,国会にすぐに行くのか,あるいは法制審議会の刑事法部会というものがありますが,その関係というのはどうなっているのかということについても明確な,要するに私の言いたいのは,答申を出しました,その答申の結果の拘束力というものをある程度示していただければ有り難いという気持ちでございます。
 それから,拘禁二法案というものがございます。これは代用監獄と言われていますけれども,その代用監獄というものと行刑改革というものがどのように関係があるのか。私の個人的な意見は,代用監獄の問題は別途議論の対象にしてもらいたい。これと一緒にしてもらっては-大変な問題でございますので。行刑というのは範囲が広いですけれども,刑務所問題ということに限定していただきたいということを希望として申し上げたいと思います。
 あと,検討事項といたしましては,一番大きく出ておりますのは,不服申立の第三者機関の設置。この点については具体的にお願いしたいというふうに思っております。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
○江川委員 関連でいいですか。
○宮澤(弘)座長 どうぞ。
○江川委員 今,菊田委員が,刑務所問題に限定してというふうにおっしゃいましたが,私はそれには反対なのです。というか,少なくとも私は,刑事司法というのは一つの流れとして考えることが大事だと思います。最初に大臣が,こういう理念でやっていくのだ,改善更生のことも含めて,おっしゃいましたけれども,その理念は,刑事司法全体に貫かれるべきでしょうし,刑事司法の在り方も捜査から始まって,検察,裁判,刑務所,そして社会復帰と,こういうふうになっていく流れの中でとらえるべきではないかなと思うわけです。中に入れられて処罰される人にとっても,あるいは犯罪被害者にとっても,その全体を考えて議論をしていく必要があるのではないかなと私は思うわけです。
 それから,先ほど曽野委員がおっしゃったように,現場についてきちんと押さえてということ。これは,ほかの方も言っていらっしゃいましたし,私もそれをやりたいのですけれども,いろいろな施設を見学したり,あるいは服役中の方や看守の方々にインタビューやアンケートのようなものができればいいなと思っています。何人か,そういう考え方の方がいらっしゃれば,例えば小委員会みたいなものをつくって,調査をやっていくということも,やり方としてはあるかなと思っています。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。いかがでございましょうか。
○成田座長代理 私は,ここに検討事項の例等々を拝見して,これは結構だと思います。ただ,先ほど大臣が,どうあるべきかというようなことを言われましたけれども,また,曽野委員も「愛」という言葉を言われました。私は,会社に入って50年になるのでありますが,組織というものには何か一つの哲学あるいはビジョンがあって,そのもとに,そこで働く人たちが一つの仕事をしていくというものがあるのであります。ですから,この仕事に携わる方々が実際に何をするのだというような教育が伝えられていくと。明治41年にできたこの制度が,何年か前まではうまくいった。しかし,今日,もう教育の現場,生活の環境が変わっているときに,こういうシステムでいいのか。そういうことにまでディスカッションを広げていったらいいのではないか。人間というのは,夢なり希望なり,そういうもので生きていく。そして,収容された人たちを本当に更生させていくためには,今何が必要なのかだろうかということ。個々にあるでしょうけれども,そういう夢みたいなものが私は,この制度の中で考えられていったらいいのではないかというような気がいたします。全く素人の意見で申し上げましたけれども,そういうことを,いろいろ読んでいまして感じましたので,一言申し上げます。
○野崎委員 一番大切なことは,どうしてこんなことが起きてしまったのかということを追求することだと思いますね。同じ制度を持っていながら,ある刑務所ではこういうことが起きてしまっている。あるところでは,さほどそういう状況は起きていない。なぜかということをまず考え,それから知ることが必要だろうと私は思います。
 先ほど,曽野委員から,人権は嫌いだということを言われたので,私は人権屋として非常に困るのですけれども,人権ということを考えたときに,基本にあるものは愛だし思いやりだと,私はずっとそういう考えできています。ですから,そういう配慮が欠けると,どうしても例えば学校の先生が体罰を加えるようになる。あるいは刑務所で,要らぬ処罰を加えるようになる。そうすると,だんだんそれがエスカレートしていくというところがあります。サディスティックな行為というのはだんだんエスカレートしていきます。私らのように戦争中に小中学校を経験した者にとっては,体罰を加える先生というのがだんだんだんだんエスカレートしていくというのをよく見てきたことです。本当にそれは必要だったのかというと,決してそうではなかったのですね。なぜそんなことになってしまうのかということをよく考えないといけない。
 この問題は人権一般の問題でありまして,例えばこのごろは幼児を両親が虐待するということだって別に珍しくなくなってきました。家庭内暴力などもごく普通のことになっている。それから,面白がって浮浪者を襲う。根にあるものは同じなんですね。その中で特に自由を拘束されて,自由を奪われて拘禁されている人に対して暴力を加えるというのは非常に恥ずべき行為なのですね。それが現実に発生している。それは刑務官の意識の問題が非常に変わってきているのかもしれないし,あるいは,あるところの刑務所では変わってしまっているのかもしれない。そういったことをまず,よく分析した上で,ではこれからどうするのかということを考えていかないといけない。そのためには,ヒアリングも大切でしょうし,現場を見ることも大切でしょうし,そういうものを短い期間にやって,世の中の批判に耐え得る対案,方策を打ち立てていくのが肝心であろうというふうに考えております。
○久保井委員 私は,今この問題を契機に,何としても国際的に恥ずかしくない,立派な刑務所をつくっていくという努力を国民みんながする必要があるだろうと思います。
 基本的な考え方ですが,私は,なぜ名古屋の事件が起きたか,この名古屋事件の意味することをよく考え必要があるのではないかというふうに思います。結論から言いますと,刑務所だけが今社会から問われているのではないというふうに思います。野崎委員がおっしゃいましたけれども,直前に雪印の凄まじい事件が発生して,企業の不祥事というものが非常に大きな問題となりました。続いて日本ハムあるいはまた東京電力の問題。そして企業だけではなくて,東京女子医大の手術ミスの証拠隠滅事件で刑事事件になったりいたしましたし,また,警察の不祥事については警察刷新会議が改革にメスを入れられた。弁護士会も,非常に恥ずかしいことながら,不祥事がかなりの数に上っていて,そんなことを放置していていいのかということで,今国会で弁護士法の改正ということで,綱紀懲戒手続の見直しということをやらされております。要するに,今,正に,不正を許さないという世論が国民的にあらゆる面で巻き起こってきている。この問題については聖域はなくなってきている。警察ですら改革を求められている。
 刑務所というものは,恐らく大半の国民は,犯罪者だから少々乱暴な扱いをされてもやむを得ないのではないかというような考え方で,薄々は,かなり問題のある扱い方をしているということはあるかもわからないけれども,見て見ぬふりをしている側面があるのではないか。ところが,企業,行政,大学,弁護士会,警察も全部,不正を正さなければいけない時代になってきたときに,刑務所だけ,今までどおりほっておくわけにはいかなくなってきた。これはどうしても手をつけざるを得なくなった。そういう世論が盛り上がってきたところに名古屋の事件が発生したので,非常に大きな国民的な問題になったのではないか。
 もう一つ言えることは,企業の不祥事を摘発したのは,内部告発というものが長い間,これは裏切り行為として評価されてきていたわけですけれども,一,二年前から,内部告発は裏切りではないんだ,それを正当に積極的に評価して受けとめて,企業の姿勢を正すという方向に行かざるを得ないのだということ,各会社もそういう方針転換をせざるを得ないことになってきた。そういうことがあるために,一挙に社会の透明化,あらゆる組織の透明化を我々国民としてやることを迫られているというふうに思います。その中での問題ですから,刑務所の中で不正行為,人権侵害,あるいは暴行をなくするということは,日本社会の透明化の一つの試金石みたいな形で,どうしても達成していく必要がある問題になってきているのではないかと思います。
 きょう配られているのは名古屋の事件のペーパーですけれども,国会で配られているペーパーでは1,592件の10年間の死亡例,死亡帳が配られて,そしてその中で,四百八十何件が変死か何かで,解剖が68件で,名古屋の事件と似たような事件があちこちで,ずっと10年間見ただけでも発生している。しかしそれが問題にならずにきたというのは,社会の透明化を求める声が弱かった。それが,ここ二,三年前から,あらゆる組織について透明度が求められることになって,日本の国際的な信用もそれにかかっている。そういうことになってきたので,私はこの改革は,いろいろ改革しなければならないことはあります。そして法務省のペーパーの問題提起は非常にすばらしい,敬意を表します。しかし,一点に絞るのであれば,国民の見えるところで刑務所を運営していく。密室性を打破する。分かりやすく言うと,国民にガラス張りの刑務所の運営をしていくというか,国民が参加する形で,そこで暴行,脅迫が行われているかいないか,ある程度国民が分かるような形で運営する。そういう密室性を打破するということをどうしてもこの際,しなければいけないのではないかと思います。
 それは,一つは情報公開。刑務所がどういうルールによって運営されているか。各種の訓令,通達,いろいろな基準が山ほどありますけれども,そういうものも全部ディスクローズする。そしてまた,年間のその刑務所の運営実績についても白書のような形で発表されるかどうかは別として,要するに,外に分かるような刑務所に転換する。そこをすれば,恐らく明るいところでは悪いことはにくいのですね。明るい刑務所にすれば,そういうことはかなり防げるのではないかというふうに思います。したがって,単に受刑者の不服の申立てを実効化させる,苦情処理の申立てを確実に処理するという,そういう限定したことだけではなくて,刑務所全体の運営に社会が参加していく。きょうのこの会議は正に国民の皆さんの代表が集まっておられるのですが,こういう国民の代表の集まっている会議を,この改革が終わった後も,刑務所の運営に関する国民の代表の会議のような形でフォローしていくというような,密室性を打破する手段として,あるいはもっと言うなら,国民が一緒になって刑務所を運営していくような,そういう在り方,刑務所の在り方をここで徹底的に意見交換して合意に達する必要があると思います。
 そのためには,日本の刑務所を見ていただけでは分からないですから,アメリカ,ヨーロッパの刑務所がどうなっているか。これを委員が出張して全部見るということは不可能ですから,資料を取り寄せて見るとか,今まで調査したものがあれば,そういうものから事務当局で整理して御報告いただくとか,場合によったら,この十何人の委員がそれぞれ担当してヨーロッパ,ドイツ,アメリカ,イギリスなど1か所ずつぐらい,3泊4日ぐらいあったら行けるでしょうから,見学に行くというようなことも-よそはどういうふうに乗り切っているのか。もっと悪いところもあるかもわからないから,参考にならないところもあるかもしれませんけれども,少なくとも開かれた刑務所運営がなされようとしたら,国際的なそういう知恵も取り入れる必要があるのではないかというふうに思います。
 その他,例えば革手錠をやめるべきだとか,保護房の使い方をもう少し厳密にすべきだとか,対症療法的な改革は恐らく,ここまできた以上はやらざるを得ないと思いますし,やることになるでしょうが,根本は密室性を打破していく。確かに密室性を打破したら刑務官はしんどいですけれども,もうそういう時代が来ている。きょうの会議でも公開でやるべきかどうか議論があって,かなりいい方向に結論が出ましたけれども,公開で取り組んでいく。改革の作業だけではなくて,刑務所の運営自体を公開で取り組んでいくような視点を持つ必要があるのではないかと思っております。
○滝鼻委員 先ほど,この問題については刑務所問題だけに限るべきだというお話がありましたけれども,私もそれについては反対です。やはり刑事司法の流れの中で,捜査から始まって,起訴,刑罰の執行まで,その刑事司法の流れの中で刑務所問題を,今回の名古屋事件を中心とした行刑の見直しをするべきだというふうに思います。というのは,今回の事件について法務省の中間報告あるいは若干の報道などを見ますと,日本の刑務所は現実的には無法状態だと思うのですね。無法状態というのは,決して違法行為が横行しているという意味の無法状態ではなくて,法律そのものが,もう機能を失っているのではないかというふうに感じます。特に,今から約100年前にできた法律によって,その後,法務省あるいは矯正局がいろいろな運用で,省令とか施行細則などをつくって,どんどんどんどん,法律によらないもので刑務所が運営されてきたというところに非常に問題があって,法務省が数々の課題を出されておりますけれども,その法律自体をしっかりと考えなければならない。単に刑務所問題で,この改革会議を終わらせてはならないというふうに思います。これが私の,この問題に取り組む考え方でございます。
○広瀬委員 座長がおっしゃった三つのうちの二つ目の検討事項について私の考えを申し上げたいと思います。
 今回,法務省から出されました調査検討委員会の最後のところに,今後の検討事項というものがあります。その中には,職員の人権意識を改革するだとか,職員の執務環境を改善する等,対症療法的なことはいろいろ書かれております。しかし,基本的に刑務所内で職員は受刑者にどういう姿勢で臨むべきか。つまり秩序を守るために厳しくなるのがいい職員なのか,そうではなくて,規則どおりきちんと刑が執行されれば,それでよしとすべきなのか。そういう基本的なところが全く今のところ,日本にはないわけです。つまり,監獄法にはそういう,プリズナーに対する対処の仕方というのは一切書かれていない。したがいまして,ここにあります検討事項は,法務省内の調査検討委員会はこれでいいかもしれないけれども,この会議の方はもっと基本的なところ,監獄法が合わないとすれば,どこが合わなくて,どういう改正をすべきだとか,そちらの方を検討すべきではないかなという気がいたします。ただし,年内ということですから,よほど集中的にやらないと,対症療法的なものも一緒にやるとなると,恐らく時間がないだろうという気がいたします。座長あるいは座長代理のところで,そのあたりは十分お話し合い願いたいと思います。
○井嶋委員 長年,刑事司法に携わってまいりました私といたしましては,今回の事件が刑事司法の究極の目的を達成すべき場面,つまり,刑罰の執行という重要な場面で,こういう不祥事が起こったということに大変ショックを受けるわけであります。先ほど来,一連の刑事司法の手続の中で見ろという御意見がございますけれども,正に刑事司法の一連のものが,ある意味で空中分解しかねないような問題なのだという認識をまず持つべきだろうというふうに思います。
 そういった意味におきまして,今回の不祥事を起しました刑務当局の責任というのは極めて重大だというふうに私自身も認識をいたしております。ただ,それが一般的な問題なのか個別の問題なのかということは,今後また議論がされると思いますが,いずれにいたしましても,大変重大なことを起したという点では非常に遺憾に思っておるところでございます。したがいまして,この検討委員会が検討事項として出してまいりました問題点につきましては,本当に真摯な態度で真剣に議論をして,その原因を追求し,あるべき姿を策定するということが,この会に求められておるわけでありまして,誠に責任は重大であると考えております。
 他方,御案内のように,最近受刑者が非常に増加したりしております。それによって引き起こされております過剰収容の問題もございます。また,刑務官の人員の不足,その他職務上の環境の問題等もございます。こういった問題を冷静な態度で分析し,バランスよく議論していくことも,この会議において求められる重要なことだろうというふうに思いまして,原因追求,責任追及のみに偏することなく,将来の本当にあるべき行刑の姿を,指針を職員に示すということが何より求められているのだということを一言申し上げておきたいと思います。
 そういう意味でみますと,調査検討事項として出されております事項は,バランスよく検討されて出てきておりますので,これ以外にないとは言いませんけれども,これをまずしっかり真摯に議論していくということが,本会議としては適切なのではないかというふうに思いますが,すべての根源は,どなたか言われましたとおり,明治41年の監獄法で行刑をしてきたということに尽きるわけでありまして,この際は,ひとつ監獄法の改正を視野に入れた,抜本的な日本の行刑の在り方の改革を検討するという視点を失ってはならないというふうに考えております。したがって,検討事項としては当面これで進めていただきたい。
 それから,方法論でありますけれども,確かに現場の実態の認識とか現場の知識という者を抜きにして議論は進められませんので,それ相応の実態の調査なり説明なり,資料の配付なりは必要だろうというふうに思いますけれども,ただ,ここはあくまで,将来のあるべき姿を示せという問題でございますので,余り実態調査に時間をかけ過ぎることもいかがかと思います。コンパクトに要領よく実態を我々に示していただいた上で,少なくとも将来に向かった議論を一日も早くできるようにしたいということもあわせて申し上げておきたいと思います。
○菊田委員 今,滝鼻委員,江川委員から,刑務所だけはなくて幅広くという,これは総論としてはおっしゃるとおりでございますけれども,先ほど申し上げたのは,刑事施設法案というものができまして,留置施設法案というものと抱き合わせになって国会に出まして,二つともだめになったのですね。そういう経緯がございます。この先,留置施設法案というのは,いわゆる代用監獄というものは廃止すべきだという意見と,そのまま恒久化すべきだという意見と,大きく分かれております。それで,当面,弁護士会というのは大変な勢いで代用監獄に反対を表明しているわけです。そういう中で,両方とも人権問題だということでやるということは,とてもじゃないけれども具体性が見えてこない。そういう意味で,私は,今与えられている行刑,とりわけ刑務所問題について集中すべきだというふうに申し上げているわけです。
 それから,実態の点についても,おっしゃるとおりでございますけれども,私,一つの提案としまして,革手錠をビデオで撮られたのが実際に法廷に出ております。これはぜひとも,委員の方に画面を見ていただいて,いかにして革手錠というものが受刑者のために保護房で使われたかということのひどさを実感として見ていただければというふうに提案したいと思います。
○宮澤(浩)委員 もう,皆さんいろいろなことを言われましたので,終わりの方になるにしたがって,しゃべる材料がないというような感じになってくるのですが,まず,留置の問題もあわせてというのは,ちょっと待ってほしい気がするわけです。なぜならば,今,日本の現実として実際に多くの留置人が収容されているのは刑事留置場,つまり警察関係の法規ですから,事務局に警察関係の人がいるかどうか知りませんけれども,そういう意味では手薄なのではないか。しかしそれは実は大変重大な問題なんですよね。なぜかというと,刑事留置場,つまり未決拘禁に関する法律というものはないわけで,すべて刑事法の規定を類推して人権が拘束されているという,非常に不自然な状態がずっと続いているわけであります。やはりそういうのは,我々法律家として反省しなければならないなという,そういう問題がありますので,これを一緒に行刑改革と交ぜてやるとなると,本当に時間がほとんどないのではないかな,議論が非常に錯綜するのではないかなというふうに恐れます。
 それからもう一つ,今までの議論で出てこなかった問題があるのですが,これは監獄法も古いですが,刑法も古いわけです。というのは,御案内のとおり,我が国の自由刑は懲役と禁固で,刑法上,懲役は義務として作業しなければならないとあるわけです。実際に,自由刑の97%ぐらいが懲役なわけです。ということはつまり,日本の刑務所では受刑者に作業をさせる必要があるわけでして,それが比較的工場とかそういう社会資源があるところの刑務所ですと,いいのでありますが,北海道とか九州というように,一般社会でも仕事がないところの刑務所の作業課の職員の苦労というのは大変なものがある。彼らは,社会を明るくする運動とか,そういうときに一般の人に刑務作業の製品を売るというだけではなくて,土日を返上して製品を売りに行ったり,あるいは今まで刑務作業を提供してくれている中小企業に,どうぞ打ち切らないでくれ,何とか継続してくれというようなことで電話をかけまくるといったような,そういうことをやっているわけですよね。
 一方,ヨーロッパやアメリカはどうかというと,過剰収容という問題があるからかもしれませんけれども,論文などを読みますと,ドイツでは,「我が州では」と,作業義務があるのですが,刑務所内の失業が50%であるといって威張っているわけです。他の州では75%である。しかるに,我が州では50%だなんていうようなことが言われているぐらい,日本の作業係の刑務官の苦労と比べて,そういう意味で随分違うなという感じがします。
 それからもう一つ,日本は職員は昔ながらの意識で,担当さんというようなことでもって,自分の担当する受刑者に対して,ある意味では親身な処遇をしているわけですよね。だんだん人数が増えたから,それが実際に行われているかどうかは知りませんけれども,少なくとも多くの職員はそういう気持ちでいるのですが,そいう気持ちを実現する社会的背景がだんだんなくなっている。つまり,行政改革によって職員の数が減らされる,収容者は多くなる,この矛盾をどうしたらいいか。私ははっきり申して,民営刑務所の問題を一つ考えなければ,この問題は片づかないのではないかなと思います。
 もう一つは,刑務所の法律も古いですが,実は,その刑務所をコントロールする監獄学の考え方というのが古いのですね。ドイツの施設に行って,彼らと議論するときに,昔のクローネの教科書に出てくるような刑務官の意識だとか受刑者に対する態度を見たかったら,日本へ来たらどうだと。日本以上にプロイセン的なものを見たかったら,韓国に行って見たらどうだというような,笑い話のようなことを言うぐらい,要するに法律も古いのですけれども,受刑者に対する職員の一種の監獄学的な発想が非常に古い。ヨーロッパ,特にドイツやオーストリアの場合には,処遇は処遇チームの職員がやることであって,我々は闘争しないように,ただ,見ているだけにすぎないというようなことで,ハンドトーキーなどを持って,ぶらぶらコントロールしているというのが現実なわけですね。そういう意味で,日本は,律儀さもあるのかもしれません。その律儀さを裏づけるだけの適当な数の職員と収容者ということであれば,ある程度日本的な意味での職員のエトスは発揮できるのかもしれないけれども,その数のバランスが崩れたら,やらなければならないという気持ちだけはあって,実際に身動きができない,そういう精神心理的なフラストレーションが,ああいう事件として出てしまったのではないかなというふうに思います。
 そういう意味で,この問題は決して小手先で解決できる問題ではなくて,刑務所の社会学あるいは刑務所の心理学,あるいはいわゆる犯罪教育学といいましょうか,そういういろいろな面から考えて,よりよいことを実現するように,我々は必死になって自分たちの脳みそを絞りたいと思います。
 外国に見学に行くというのは必ずしも賛成しません。日本も同じでして,外国から見学に来たいというときには,いいところを見せようしますよ。どうにもらならない施設をどうぞなんて見せる人はいないわけで,特に……。
○宮澤(弘)座長 済みませんが,お話の途中でございますが,まだ申し上げたいことがございますので,おまとめをいただけませんでしょうか。
○宮澤(浩)委員 そういう意味で,どうぞ,広く徹底的な議論をさせていただきたいと思います。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございます。
 いろいろ貴重な意見をいただきましてありがとうございました。そこで,本日の御審議はこの程度にいたしたいのでございますが,議論の進め方についての総括をというか,御提案をいたしますので,お聞きいただきたいと思います。
 議論の進め方については,最初の二,三回は,矯正の実態を把握することに重点を置いて,要するに施設を視察したり,そういうようなことが入るわけでございますが,夏以降に論点整理をしながら議論を深めていくというような,今のところの大体の方向で,やってみまして,無論,変化が生じたりするときは変えなければいけませんが,そういうようなことではいかがだろうかと思います。
 それから,次回の会議までにそういうことの中身を御連絡申し上げたいと思うのでありますが,次回は我が国の矯正の現状あるいは特色という実態について,法務省にはビデオテープ等の資料もあるようでございますから,そういうようなものも,あわせて諸外国の事例等もございましょうから,そういうこともあわせまして検討をすることにしたらどうだろうか。それに関連して,有識者,皆様方は正に有識者でいらっしゃいますけれども,ほかの有識者からのヒアリングなども行うということにしてはいかがであろうか。なお,申し上げたいことだけどんどん言って恐縮でございますが……。
○森山法務大臣 済みません。私は司法制度改革の方に行かなくてはなりませんので,どうもありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。


〔法務大臣 退席〕

○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 そういうような方向で大体よろしければ,次回の会議までにもう少し具体的に,今のような考え方を詰めてまいりまして,例えば,どういう方に来ていただいてヒアリングを行うかというようなことも入ると思います。これはやるとすれば,私どもの方に御一任をいただきたいのですけれども,あるいはこういう人はどうかという御意見があれば,事務当局にどうぞおっしゃっていただくというようなことで,次回はそういう実態というものの検討をポイントにしてやっていったらどうであろうか。もし格別の御異論がございませんでしたら,大体そのようなことで進めていきたいと思います。
 余計なことを途中で入れまして,長谷部委員はまだ御発言がされていないということで,済みません,どうぞ。
○長谷部委員 1点だけ。私は実態と関係のない机上の空論で勝負をする学者でございます。冒頭,森山法務大臣のお話の中で,また野崎委員等を始め,多くの委員も指摘された問題とも関連することだと思うのですが,憲法学者が制度づくりをするときの議論として,よく考える現象としてグループポラライゼーションというものがあります。これは,同じような傾向とか同じような考え方の人をひとところに集めて,周りから遮断しておくと,その最初の傾向なり考え方かどんどんどんどん過激化していくという現象でございます。これは宗教結社とか政治のセクトなどでよく起こる話です。悪いことばかりではありませんで,よい方向に働くこともあります。例えば大学などはもともとそういうことをねらっているわけです。お勉強大好きという変な人たちを集めておくと,変なこともやるかもしれませんけれども,いいこともやるかもしれない。監獄という制度も恐らくそういうグループポラライゼーションというのがかなり起こりやすい,そういう環境にあるのだろうと思います。したがいまして,こういうグループポラライゼーションが起こるにしても,悪い方向に起こらないようにするにはどうすればいいのか。これは,いろいろな先生方がおっしゃったとおり,例えば外の風を入れるとか,あるいは多様な要素,多様な考え方が取り入れられるような制度づくりをするということ。これは人事ですとか救済制度を含めて考える。今,そういうことが必要なのだろうと思います。そのための方法としては,座長がおまとめになりましたとおり,実態を踏まえた,あるいは比較制度を踏まえた検討が必要であろう。そのことだけを申し上げたいと思います。
○宮澤(弘)座長 スピーディーにやっていただきまして,まだ若干時間がございますが,もし御発言がございますれば,御発言をいただきたいと思います。


(閉会)


○宮澤(弘)座長 御発言がなければ,きょうはこの辺で散会させていただきます。今申しましたように,次回につきましては,もう少し具体的な案をつくりまして,また御連絡をいたしたいと思います。どうもありがとうございました。


午後4時38分 閉会
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