検索

検索

×閉じる
トップページ  >  政策・審議会等  >  省議・審議会等  >  その他会議  >  行刑改革会議 第2回会議

行刑改革会議 第2回会議

日時: 平成15年5月19日(月)
14時03分~16時44分
場所: 法務省第1会議室



午後2時03分 開会


○宮澤(弘)座長 それでは,ただいまから,行刑改革会議の第2回会議を開催いたします。
 今回は,ヒアリングの第1日目ということでございます。人選については,先般,御一任をいただいておりますが,まず第1番目に,矯正局から,我が国の行刑の事情や特色などについて,また,これと対比をいたしまして,諸外国の行刑事情,これらについて説明をしてもらうことにいたしております。次に,国際的な人権擁護団体でございますアムネスティ・インターナショナル・ジャパンから,国際的視点から見た日本の行刑についてお話をしてもらうことにいたしております。その上でいろいろ議論をいたしたいと思っております。
 そして,ただいま申しましたようなヒアリングの後に,今後の会議の進め方につきまして御議論をいただきたいと思っております。
 それでは,報道関係の方が退室されるまでの間,しばらくお待ちください。

(報道関係者退室)
○宮澤(弘)座長 それでは,議事を始めます前に,委員の異動について申し上げます。
 長谷部委員が御都合により委員を辞退されました。一方,新たにお二人の方々にこの会議に御参加いただくことになりました。まず,お二方に自己紹介をしていただきまして,この会議に向けた基本的な考え方等につきまして御発言をいただきたいと思います。
 まず,50音順で,瀬川委員にお願いいたします。
○瀬川委員 同志社大学の瀬川でございます。私は刑事法の専攻でございまして,特に犯罪学,刑事政策という部門でございます。私の考え方というよりは関心でございますけれども,三つほどございます。
 まず第1は,やはり法律家としては,監獄法の改正といいますか,いかにその役ができるのかといいますか,実りある成果を得られるのかということでございます。刑務所改革,それから受刑者の法的地位といいますか,その点についての学界の関心といいますか,それは非常に高うございますので,この点も今回の会議でいろいろな形で実りある成果につなげていきたいというふうに思っております。
 もう1点は,やはり信頼されるといいますか,開かれた刑務所をいかにつくるかということでございまして,その点は,私は,外部からということがよくあるのですけれども,やはりまずは刑務所内部からの改革といいますか,それが非常に重要だと思っておりますし,自己評価といいますか,その点と,もう一方では,いろいろな場面で言われているように,第三者評価といいますか,外部からのチェック,その点も大事だ,両面からこの問題を考えていきたいというふうに思っております。
 3番目でございますが,矯正と保護の連携ということを考えておりまして,矯正というのは刑務所,少年院でございまして,保護というのは社会内処遇といいますか,仮釈,保護観察なのですけれども,この点をいかに連携させるかというのが非常に重要な問題で,今回は刑務所の問題が中心ですけれども,社会内処遇も射程に入れながらといいますか,それを視野に入れながら考えていきたいということでございます。
 以上,三つ関心を持っております。よろしくお願いいたします。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 それでは,南委員,お願いいたします。
○南委員 新たに委員に就任させていただきました,一橋大学名誉教授の南でございます。専攻は,行政法,環境法及び租税法でございます。中でも,私は,行政不服申立て,行政訴訟など,国民の権利救済の制度に関心を持って研究をしてまいりました。また,実務としましても,国税不服審判所の組織,審査の手続の立案に当たりました。また,総務省の公害等調整委員会委員を13年間務めました。現在は内閣府政府調達苦情検討委員会の委員長を務めております。
 現行の監獄法は明治41年に制定されましたが,その前身であります明治5年の監獄則は,イギリスの植民地の監獄を範としたものでありまして,その緒言には,「獄は人を仁愛する所以にして人を拘禁するものにあらず。人を懲戒する所以にして人を痛苦するものにあらず。」という理念が掲げられております。また,いかにも日本的でありますが,従来,家父長的な信頼関係に支えられまして運営されてきたのでありますが,最近におきましては,このような思想や意識というものが崩れつつあるように感ぜられるのであります。また,国民の側においても,ある程度の身体的な懲戒というものはやむを得ないといって認容するような傾向があることは否めないところであると思います。
 監獄は,行政法学上,閉鎖的営造物(ゲシュロッセン・アンシュタルト)と呼ばれておりまして,法律で定める必要のない行政部内の施設とされまして,独立性,閉鎖性,密室性が高くて,外部の監視の目が行き届かない施設でありまして,これが今回のいろいろな不祥事の原因であると思います。
 私が専攻しております行政法学の見地から申しますと,主として,大きく分けまして三つの問題点があると思います。
 第1には,監獄の行政組織法上の位置づけというものが極めて不明確でございます。行政管理研究センターが発行しております「行政機構図」というものを見ましても,法務大臣,法務省矯正局,矯正管区,刑務所,それから監獄といったような組織系統というものが分かりにくくて,指揮監督系統と責任の所在があいまいになっていると思います。
 第2に,監獄の性質,目的からしまして,ある程度受刑者の人権制限はやむを得ないのでありますが,しかし乱用されてはならないのでありまして,法律において人権制限の要件,手段,限界などが定められる必要があると思います。
 第3に,受刑者の不服についての審査手続,審査機関というものが不備,不完全であります。もっとも,現行法が定めています情願制度は,実は単なる請願ではありません。本来は受刑者の権利と考えられていたのであります。このことは戦前の正木先生の御本であるとか,あるいは戦後の重松先生の御本にも書かれているところでありますが,情願が請願と同様に運用されていたというところに問題があろうかと思います。
 そのほか,問題は多岐にわたることでありますが,行刑制度は国民の安全確保という観点からも最重要な課題でありますので,是非,今回,抜本的な改革を行う必要があろうと思います。
 多少長くなりましたが,これをもってごあいさつにかえさせていただきます。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 次に,前回一任をいただきまして,モニターによる公開を行うことになりました。前回の委員の方々の御意見もございますが,記者クラブに限定せずに,報道の方に別室でモニターにより公開することといたしたいと思っております。御理解をいただきたいと思います。

1.我が国及び諸外国の行刑事情について(法務省矯正局の説明)

○宮澤(弘)座長 議事に入ります。
 まず,我が国及び諸外国の行刑事情について,法務省矯正局の柴田元始官房参事官から説明をしていただきます。
○柴田参事官 ただいま御紹介いただきました矯正局の柴田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日,私どもの方では,今,テレビの画面で映し出されておりますけれども,「我が国及び諸外国の行刑事情について」ということをかいつまんで御説明申し上げたいと思っております。
 具体的な御説明に入ります前に,あらかじめ申し上げておきたいことがございますが,それは,本日のプレゼンテーションの目的は,我が国の行刑の在り方をお示しすることにあります。これは,我が国のこれまでの行刑の在り方を擁護する,そういうためのものではございません。むしろ行刑改革を考えていく上で批判の対象とされ,更に,今後の改革の対象とされようとしている日本の行刑とはどのようなものなのか,特に諸外国との行刑と比べどのような点に特徴があるのか,これを明らかにすることに本日のプレゼンテーションの目的がございます。
 そういうことを前提といたしまして,これからの説明について大雑把に申し上げますと,第1部と第2部に分かれております。冒頭,矯正局においてあらかじめ制作しておりました広報用ビデオを御覧いただきたいと思っております。このビデオは,広く国民の方々に行刑実務についての理解を深めていただくために制作したものでございまして,現在,過剰収容にある行刑施設において,日々,受刑者の処遇に当たっている現実の刑務官の姿を見ていただき,これを分かりやすくまとめたものでございます。上映時間は約20分間でございます。
 次に,ビデオが終わりましたら,引き続き第2部といたしまして,海外の行刑事情につきまして,特にアメリカ,イギリス,フランス,ドイツ,スウェーデンにおけます収容状況や刑務所の事故,職員関係,予算など,当局で可能な限り把握しておりますデータに基づいて御紹介し,あわせて我が国の行刑の特徴として挙げられることを逐次御説明していきたい,このように考えております。
 では,まずビデオの方を御覧いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。


(ビデオ上映)


 どうもありがとうございました。
 ただいま御覧いただきましたとおり,我が国の行刑施設は過剰収容という厳しい状況下にございますが,このような中にありながらも,刑務官は受刑者の生活全般に目を配り,ある意味で彼らとの間に信頼関係を築きながら,その信頼関係を基盤として受刑者の改善更生,社会復帰へ向けたさまざまな働きかけを行っております。また,そうすることによりまして,同時に,国民の安全な生活を陰でしっかりと支えてきたということが我が国の行刑の伝統として挙げることができるのではないかと思っております。
 では,次に,このような我が国の行刑につきまして,諸外国における行刑と比較しながら説明していきたいと思っております。
 以後の説明は,テレビを御覧いただいても結構でございますし,あらかじめお配りしておりますプレゼンの資料をしたためたものがございますので,いずれを御覧いただいても結構でございます。
 先ほど御案内のとおり,御紹介する諸外国は,アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ及びスウェーデンの5か国といたしますが,国によりましては,特定のトピックについてのデータが得られなかったり,若干古いデータしかなかったりした場合もございました。また,刑事政策の在り方や行刑の位置づけというものは国によって大なり小なり異なっておりますし,データのとり方についても国によって異なる部分もございますので,各国のデータを単純に横に並べただけで比較を行うことは非常に困難なことですし,まして,その優劣を簡単に判断できるという問題ではございません。
 ということで,このような制約はございますけれども,我が国の行刑の特色について理解を深めていただくためには,海外との比較を行うことは決して無為なことではないと思われますので,以上,るる申し上げました点につきまして十分御理解いただいた上で,以下,説明を進めさせていただきたいと思います。
 〔スライド説明 以下,画面ごとにS)の表示〕
S) 最初のスライドでございますが,1990年から2002年までの期間における行刑施設の収容人員の推移を示しております。赤色が我が国,青がアメリカ,紫がイギリス,緑がフランス,そして茶がドイツをそれぞれ示しております。
 アメリカの収容人員がけた違いに多うございます。約140万人弱でございます。その関係上,同じグラフの中におさめるということで,アメリカだけ左側の縦軸を便宜使用させていただいております。したがいまして,アメリカの実際のグラフの位置は,この見かけよりも約10倍の高さになるということができるかと思います。
 行刑施設の収容人員は,フランスを除く諸外国においてもおおむね増加傾向にございますが,アメリカを除く諸外国の中では,我が国の行刑施設の収容人員が,ここ数年,比較的強い増加傾向にあるということがお分かりいただけるのではないかと思います。
S) このスライドは,先ほど御説明しました収容人員の推移を,今度は収容率という観点からその推移を見たものでございます。収容率と申しますのは,簡単に申し上げますと,収容人員を行刑施設の収容能力で除した数をその割合で示したものでございます。
 アメリカは収容人員が顕著に増加しているわけでございますけれども,にもかかわらず収容率の方は近年低下傾向にあります。これは,収容人員の増加に応じまして行刑施設の新設や増設を進め,収容能力の増強が順次図られているためであります。
 一方,我が国の収容率は,特に1990年代半ばから急激に上昇しております。これは,我が国行刑施設の収容能力の増強が収容人員の増加スピードに追いついていないということを示しているのではないかと思われます。
S) 次は,各国における人口10万人当たりの行刑施設の収容人員を示したものでございます。我が国は約48名となっておりまして,比較対象国の中では最も低い値となっております。先ほど収容人員のことを申し上げましたが,アメリカは我が国の約10倍というふうになっております。
S) これは行刑施設の職員数を比較したものでございます。我が国の職員の数は約1万7,000名というふうになっておりまして,比較いたしました国の中では,スウェーデンに次いで少ない人員となっております。
 なお,ドイツにつきましては,連邦全体の職員の数が残念ながら入手できませんでしたので,便宜,ベルリン州の数字を参考までに掲載してございますので,お許しいただきたいと思います。
S) これまで収容人員と職員の数というのを御紹介いたしました。この資料は,各国における行刑施設の職員の負担率という観点からの資料でございます。
 職員負担率と申しますのは,簡単に申し上げますと,一人の職員がどれくらいの数の被収容者を受け持っているかを示した割合でございます。したがいまして,職員負担率が高ければ高いほど,収容人員に比べて職員数が少なく,各職員の負担が大きいということができるかと思います。ただし,現場の刑務官がどのくらいの被収容者を受け持っているかということを正確に比較することが大変難しゅうございますので,ここでは便宜,被収容者を行刑施設の全体の職員の数で割った数字を負担率とさせていただいております。
 これによりますと,我が国の行刑施設の職員負担率は4.0となっておりまして,関係国の中で最も大きくなっております。つまり,先ほどのビデオでも御紹介申し上げましたけれども,少ない職員で多くの被収容者を担当しているということがこの数字の上から証明できるのではないかと思っております。
S) これは,そうした職員,全体数は先ほど申し上げましたが,それの内訳を出したものでございます。行刑施設に勤務しております職員の職種別の構成比を示したものでございまして,水色の部分が公安職の職員,言いかえますと被収容者の戒護に当たる刑務官の数というふうに見ていただいて結構かと思います。我が国では,職員全体に占める刑務官の割合は約90%と非常に高くなっております。これは,我が国の行刑が担当制と申しますか,つまり,その刑務官が担当する被収容者について,施設内での生活のほとんど全般にわたりまして世話をしながら処遇を行う,こういった制度に基づくものであると考えられます。
S) そういった行刑施設でございますが,ではどれくらいの予算を一人当たり使っているかというのを比較した資料がこの資料でございます。これによりますと,日本では年間約263万円ということになっております。その国の経済事情等がありますので,これが高いか安いかというのはいろいろ比較が困難でございますが,少なくとも日本円に換算いたしまして比較した中では一番低いコストで運営されているということになろうかと思っております。
S) この資料は,各国の行刑施設における保安事故のうち,特に逃走,自殺,職員に対する暴行,こういった事案の年間発生件数を示したものでございます。
 まず,逃走事故の発生件数でございますが,御覧のとおり,我が国の逃走件数は3件という極めて少ない数字となっております。次に自殺事故の発生件数でございますけれども,スウェーデンは極端に低い数字が出ておりますが,我が国も他の国に比べますと非常に少ないということになっておりまして,これを見る限りにおきましては,我が国の行刑施設は,先ほど申し上げましたような,身柄を適切に確保いたしまして,治安の最後のとりでとしての行刑施設の本来的な機能を十分に果たしていると言えるのではないかと思っております。
 また,職員に対する暴行でございます。この発生件数につきましては,ドイツ,スウェーデンについては,データが残念ながら入手できませんでした。御覧のとおりのような数字でございまして,非常に低い数字になっております。
S) 次を御覧いただきたいと思います。この資料は行刑施設内における被収容者の一日の動作時限をあらわしたものでございます。ここでは,刑務作業が義務化されております我が国と,刑務作業が義務化されていないフランス,これを便宜対比させていただきました。フランスは施設の警備度等によりまして動作時限も異なるということでございますので,ここではあくまでも一つの例として御承知いただきたいのでございますけれども,我が国の場合,刑務作業が一日の中心となっているということがお分かりいただけると思いますし,他方,作業を行わないフランスの場合,このように自由な時間が大幅に増えているということが言えます。制度が変われば,被収容者の一日の生活がこれほどまでに変わるのかという点で,極めて興味深い例ではないかと思います。
S) この資料は各国における刑務作業の性格ないし位置づけを示したものでございます。我が国の場合は,刑法で「所定の作業を行う」というふうに定められておりまして,刑罰の内容そのものになっておりますので,その点,諸外国に比べますと大きく違っているということが言えようかと思っております。
S) この資料は,そうした刑務所内における作業を実施して,被収容者に対してどれぐらいのお金が支払われるかということを示したものでございます。日本円に換算したもので,1か月の平均額でございます。日本の場合は極端に金額が少ないという形になっておりますけれども,先ほど申し上げましたような,刑務作業と申しますのは刑そのものであるという考え方にあります関係上,その作業を行うことによりまして支払われる金銭,あくまで恩恵的,奨励的なものである,そういった考え方に基づいておるわけでございます。ほかの国と大きな差があることがお分かりいただけると思います。
S) この資料は施設内において被収容者の行動範囲がどう違うかということを,日本と外国の場合を端的に比較したものでございます。ここに掲げてあります3つの例は,日本では実は許されていない。けれども,ほかの国では許可されることがある行動を例示したものでございます。例えば,電話による外部との通信,喫煙,それから部屋の中に私物のラジオやCDの所有が許されます。
S) これは分類制度について説明したものでございます。まず警備分類について御説明申し上げたいと思います。警備分類と申しますのは,簡単に申し上げますと,行刑施設ごとに警備の度合いに変化を持たせまして,逃走などのリスクの高い者は警備度の高い施設に収容し,リスクの低い者は警備度の低い施設に収容するという制度でございます。我が国の行刑施設では,この警備分類を採用しておりませんで,全国数十箇所ございますが,警備の程度は施設ごとにそれほど変わりません。これに対しまして,警備分類方法はさまざまでございますが,諸外国におきましては,何らかの形で警備分類が採用されているということがお分かりいただけるかと思います。
S) これは同じ分類制度でも,収容分類という観点から比較した資料でございます。これは簡単に申し上げますと,例えば性別,年齢,刑期の長短,刑名など,主に固定的な基準によりまして個々の被収容者を分類して収容する制度でございます。どこの国においても,いわゆる性別による分類や未成年であるとか成年であるといった分類は採用されておりますけれども,このほか,我が国においては,犯罪の傾向の進みぐあいによりまして,A級とかB級というように呼称しておりますけれども,犯罪性の少ない,あるいは進んでいるというような分類を行ったり,それから刑が8年以上でありますと,例えばL級。それから懲役刑ではなくて禁錮刑の場合はI級というふうに便宜分類して処遇しているということでございます。これらの収容分類は,警備の合理化や悪風感染の防止,施設の特殊化あるいは専門化に役立っております。
 このほか,資料化しておりませんけれども,こういった収容分類のほかに,個々の被収容者の処遇上の必要,例えば職業訓練,生活指導,それから専門的な治療処遇を行う必要があるものとか,あるいは養護的な処遇を行う必要がある。そういった処遇上の分類を先ほど申し上げました収容分類とあわせまして処遇を行っております。
S) ここから数枚は各刑務所,これは府中刑務所でございますけれども,独居房というものがございまして,これをほかの国と比較させていただきました。まず御紹介しますのは,府中刑務所の独居房でございます。我が国は,いわゆるベッドというものは置いておりません。畳を敷いてございます。御覧いただきますと,布団がありまして,奥の方には比較的大きな窓,ちょっと見づらいですけれども目隠しがございまして,外から自由に見られないような仕組みになっております。あと,生活に最低限度必要なトイレと流し台がそれぞれ備えてあるというような構造になっております。これは比較的新しい施設の独居房の状態でございます。
S) これに対しまして,やや古い独居房を御紹介いたします。これは東京拘置所,現在改築中でございますが,やや古いものもまだ残っておりまして,その古い舎房棟の独居房がどうなっているかというものを御紹介したものでございます。やはり畳が敷いてありまして,最低限度必要なものがあります。先ほど御紹介しました府中と,ほとんど余り変わらない。写真では余り違いが分からないのですけれども,これが大体日本における,いわゆる独居房の代表的な例でございます。全国にございます行刑施設は大体こういう傾向でございます。
S) これはフランスのストラスブール拘置所という施設の少年区にあります雑居室でございまして,ここには二段ベッドが置いてありましたり,廊下側の扉,すなわち職員が見る方の扉からベッドが見えないような目隠しがあったり,日本とはかなり様相を異にしている造りとなっております。
S) これはオーストラリアのシュバーツァウ女子刑務所という施設の単独室でございます。これまでの単独室とは全然違っておりまして,非常に広くて観葉植物がたくさん置いてあったりして,非常に明るい雰囲気となっております。
S) これは写真としては最後でございますけれども,イギリスのウスク刑務所という施設の単独室でございます。若干,窓が小さくて,薄暗い印象はございますけれども,部屋の中は日本の刑務所の単独室よりはかなり広くなっております。ベッドや机,クローゼットなどまで設置されているというのが,お分かりいただけるかと思います。
S) そういった日本の行刑というものがいろいろな形で運営されておるわけでございますけれども,これはいわゆる国際人権B規約の我が国の第4回政府報告書に対します人権委員会の最終見解のうち,パラグラフ27というところを御紹介したものでございます。我が国の行刑施設に対しまして懸念する点が何点かあるというものを掲げたものでございます。時間の関係上,内容についての御説明は省略させていただきますが,規則あるいは行動規制が懸念される事項であるというふうに表明されております。
(スライド終了)
 以上,足早に御覧いただきましたが,これまで行刑運営にかかわります幾つかの側面について,我が国と諸外国と対比いたしまして説明してまいりましたが,一口に行刑と申しましても,国によって,その在り方はさまざまであるということの一端がお分かりいただけたのではないかと思っております。今回のプレゼンテーションは,そういった関係から,行刑の実情を極力客観的にお示しすることを目的として説明させていただきました。多々不十分な点はございましたが,以上をもちまして,私からの説明を終了させていただきます。御静聴,ありがとうございました。何か御質問がございましたら,承ります。
○宮澤(弘)座長 どうもありがとうございました。矯正局よりの説明は以上で終わりでございますが,何か説明等に関連して御質問等がありますれば。
○江川委員 4点あるのですけれども,1点目は,データによっては何年のものかが書いてないので,特に7ページから10ページまでの数字が何年のものか,分かったら,後でも結構なので教えていただきたいと思います。
 2点目は,この資料集の14ページの被収容者の行動範囲で,日本の施設では許可していなくて,諸外国の行刑施設では許可していることの例ということで,こういうことが許可されている国もあるというふうに言われましたけれども,例えば比較された国々の中で,外部との電話による通信を許可している国,していない国。それから,喫煙はどちらでもいいですけれども,ラジオやCDの所有について許可,不許可の事例,どの国が許しているのかを教えていただきたい。
 3点目は,日本の刑務所の独居房の写真が2枚,新しいものと,古いものと見せていただきましたけれども,これを見ていると,新しい方が狭くなっているような感じがしたのですけれども,そういう広さに変化があるのかどうか。
 4点目は,これは質問というか,お願いなのですけれども,先ほどのビデオの中で,担当者の方が,規律の遵守の目的について,弱い者を守るためにも規律が必要なのだ,それが第一なのだということをおっしゃっていました。名古屋の事例でもいろいろ規則違反とか,例えばノートの使用に関する規則違反などで問題になったようなことがあったようなのですけれども,規則集,規律集というものがもしあるのであれば,そういうのを見せていただくのは可能であるかどうか,教えてください。
○柴田参事官 まず,7ページから10ページまで,御説明しますと時間がかかりますので,後で,出典が何であるかということをまた資料化して御説明したいと思います。
 それから,行動が許される国,これはすぐ分かりますので,よろしゅうございましょうか。
○江川委員 はい。
○柴田参事官 外部との電話は,アメリカ,イギリス,ドイツ,フランスが,外部との通信手段として電話による通信が許可されることがあるというふうに聞いております。
○江川委員 フランスとスウェーデンはされないということですか。
○柴田参事官 スウェーデンについては情報が入手できませんでしたので,これがオーケーであるか,オーケーでないかというのは分かっておりません。
 それから,ちなみに喫煙は余り御関心がないということでしたが,アメリカ,イギリス,フランス,ドイツでございます。
 ラジオ,CDの件でございますが,これはイギリスの所内規則から引っ張り出したものでございますので,その他の国についてはまだ調べ切れておりません。
○江川委員 フランスは電話はだめなのですね。
○柴田参事官 いえ,大丈夫です。
○高久委員 8ページ目の専門職というのは,どういう専門職かということと,11ページ目の,これは素人の質問ですけれども,フランスの場合で,閉房というのはどういうことなのか,教えていただきたいと思います。
○柴田参事官 専門職は,医者,カウンセラー,作業の指導官,教官,ソーシャルワーカーといったものが専門職ということで括ってございます。ただし,日本はソーシャルワーカーとかカウンセラーという,はっきりした職種はございませんので,これは主として外国の例の方が一般的かと思っています。
 それから,フランスの閉房,いわゆる部屋に入って何をしているかというのは,残念ながら,どういう行動をしているのかというのは把握できておりません。
 それから,江川委員から先ほどあと二つほど御質問があったと思いますけれども,面積ですが,狭いと見えるのは写真の関係でそう見えるわけでして,大体一人当たり1m×2.5mというのが,人が寝るために必要な生活スペースということで,寝る場所は,建物を建てるときにそういう計算をしているのですけれども,それにあと生活スペース,先ほど申し上げましたトイレ,流し台などを入れますと大体5m2ぐらいでしょうか。数字が間違っておりましたら,後で正確な数字に訂正しますが,大体5m2ぐらいで,最近,東京拘置所などはもっと広くなっておりまして,なるべく広くするような工夫をしております。
 それから,規則集については,事務局の方と御相談させていただきまして対応させていただきたいと思います。
○宮澤(弘)座長 矯正局からの説明に,なお御質問はございますか。
○南委員 ここでは独居房の写真はございましたが,別に雑居房というものがございますね。雑居房というのはどのぐらいなのかということです。できれば写真を見せていただきたいと思いますが。
○柴田参事官 できれば次の会議までに御提供申し上げます。
○南委員 それと,もう一つ,これも次の会議で結構ですが,名古屋の事件を見ますと,いずれも保護房というところで事件が起きておりますが,保護房というのは一体どんなもので,そして,どういう場合に収容されるのか。その根拠規定などをお教えいただければと思います。これも次回で結構です。
○柴田参事官 承知いたしました。
○宮澤(弘)座長 そのほかに御質問はございますか。
○瀬川委員 2点あるのですが,12ページから13ページにかけて刑務作業のことをおっしゃって,我が国の場合は,作業賞与金のことを「恩恵」というふうに言われました。それはそれで結構なのですけれども,諸外国の場合は,出されている金額が少し理解しにくいところがあるのですが,これは賃金として払われてといいいますか,労働に対する報酬として払われていると見ていいのですか。
○柴田参事官 少なくとも分かっておりますのは,外国語を訳すときに,例えばこれが賃金あるいは報酬ということがはっきり分かっているようなところは,多分これは賃金なのだろうなというふうに私ども理解しているわけでございますけれども,先ほどビデオを見ていただきましたような,日本のように刑に定められた内容の一つとして強制的に刑務作業をやっているのとちょっと違うところが,外国の場合はございまして,例えばドイツですと,刑罰の内容ではないけれども,行刑法令上,受刑者は作業または労作を行う義務を負うというようなことが規定上明らかになっているようでございますが,ドイツは,就業率と申しますか,100%の作業が確保できていないようでございます。多分これは,分かりませんけれども,ドイツの併合の問題だとか社会状況などいろいろあるのだと思うのですけれども,そういったときに,働きたいけれども働けない。一方,たまたま作業が与えられたという差がある場合に,金額が大きいから,これは賃金かどうかというのは,私の方からそこまではっきり御説明申し上げるものはございません。少なくとも,日本は恩恵という形をとっておりますけれども,外国はそうではないのかもしれません。その程度のことぐらいしか説明ができません。申し訳ございません。
○瀬川委員 もう一点,行刑施設の職員数なのですが,これを見ますと大変驚異的な数字だと思いますけれども,ただこれも昼間と夜で違いがあるのではないか。夜は,これで言うともっとひどい状況といいますか,夜間に職員がどの程度刑務所に張りついているかという問題についてはすごく重大な問題のように思うのですが。
○柴田参事官 負担率4というのは,例えば全体で7万人収容者がいる。職員が1万7,000人いる。これを単純に割った数字をそれぞれ各国比較しただけでございます。委員がおっしゃるように,例えば昼間ですと,先ほどビデオで御覧いただきましたように,工場で数十名の中に職員が一人でございますが,夜になりますと,独居房,雑居房など,被収容者が寝泊りしているたくさんの箇所を受け持ちまして,200名,部分的には300名ぐらいを一人で見て回っているという状況ですので,負担率はそういう点から考えますと明らかに高くなります。
○宮澤(弘)座長 時間もありますので,矯正局に対する質問はもう一問だけ。どうぞ。
○滝鼻委員 10ページの保安事故の発生件数のところでお聞きしたいのですが,この数字自体はわかりますが,このほかに保安事故というカテゴリーに入らないのかもしれませんが,刑務所あるいは拘置所における病死の件数。
 もう一つは,対職員暴行とは全く反対の,今回問題になっているような職員による暴行事件はどのぐらいあったのか。顕在化したケースですね。
 また,収容者同士の暴行というか殴り合いの件数は何件あるのか。日本においては分かると思うのですが,比較論として諸外国が分かったら数字としてお願いします。
○柴田参事官 外国は多分無理かもしれません。努力はいたしたいと思います。日本の場合はおっしゃったようなデータは集めることはできると思います。
○宮澤(弘)座長 ではこれで最後にいたします。
○久保井委員 直接,この資料に関する御質問ではないのですけれども,今回の改革会議は名古屋の事件を契機にスタートしたわけですけれども,先ほどのような理念に基づいて刑務所が正しく運営されておれば,こういう事件は起きなかったはずですけれども,こういう事件が現実には起きているわけですが,その点について矯正局としては何が原因だとお考えになっているのか,参考のためにお聞かせいただきたいと思います。
○柴田参事官 これはいろいろな切り口がございまして,多分,多種多様な原因が考えられると思いますが,私個人の考え方ということで,お許しいただけるならば,述べさせていただきたいと思います。
 先ほど,どなたかの委員がおっしゃっていました監獄則で定めてある「獄とは,仁愛するところにして,残虐するものにあらず」という精神規定がありまして,実はこれは昭和21年の新しい憲法ができましたときに「監獄法運用ノ基本方針ニ関スル件」という古い通達がございます。私どもは,採用になったときに,これをよく拳拳服膺させられたものでございますが,その中にも,先ほど南委員がおっしゃった「獄とは何ぞ」という古い言葉がありまして,これを私としては座右の銘として-先ほどビデオの中で,看守長が最後に,「彼もまた人たるを知るべし」ということを言いましたが,多分同じ考え方なのだろうと思うのですが,非常に大きな組織でございますので,多数の収容者を受け持っている職員が,そういう考え方を常に同じレベルで意識を持つことがなかなかできない。これがまず一つ原因ではないかなと思っています。
 それから,職員のうち80%ぐらいが一般職員でございますので,幹部と一般職員との組織的な構造上の問題といいますか,情報がすっと入らないといいますか,これはどこの組織でも多分同じ問題を抱えているのだと思うのですけれども,そういうことが合わせ重なって起きたのではないかなというふうに思います。今回の名古屋で,あってはならないような大きな事件が起きたわけでございますけれども,ほかのことをずっと,やりましても,そこが残るのではないかなというふうに,私自身は考えております。
○江川委員 同じレベルで持つことができないということは教育の問題だと思うのですけれども,刑務官に対する教育,例えばどういうふうに扱っていくのかとか,心理学などがどういうふうに教育されているのかということを示す資料を,次回までにお示しいただくことは可能でしょうか。
○柴田参事官 承知いたしました。
○宮澤(弘)座長 矯正局からの説明に対する質疑については,残念でございますが,この程度にいたしたいと思います。
 次に,アムネスティからヒアリングの予定でございますが,準備が多少必要でございますので,5分程度休憩をさせていただきます。


(休憩)


○宮澤(弘)座長 会議を再開いたしたいと思います。

2.国際的視点から見た日本の行刑について((社)アムネスティ・インターナショナル日本からのヒアリング)

○宮澤(弘)座長 次は,国際的視点から見た日本の行刑について,アムネスティ・インターナショナル日本の寺中事務局長からお話を伺うことにいたします。
○寺中事務局長 今御紹介いただきました,アムネスティ・インターナショナル日本の事務局長をやっております寺中でございます。この席で,いろいろなことを話させていただける機会をいただきまして非常に感謝しております。ありがとうございます。
 今回,名古屋事件が契機になりまして,日本の行刑の問題がどうなっているのかということがいろいろ取りざたされているわけでありますけれども,それを国際的な視点から見た場合にはどうなっているのかということをプレゼンテーションするのが私の役割であるというふうに聞いております。そのお話に関しまして,私どもの方では,実は1998年,国際人権規約の規約人権委員会というところから最終勧告というものが出されておりまして,その前の段階で,アムネスティ・インターナショナルの方で,日本の刑事施設における残虐な懲罰ということで,特に懲罰的な色彩を持つ,懲罰である軽へい禁と,それから懲罰的に使われる保護房の使用について関心を表明しております。きょうお手元に,そのときの,98年のレポートが届いているかと存じます。
 注意していただきたいのですけれども,名古屋事件よりも前に,多くのこのような,保護房ないし軽へい禁等の懲罰を利用した人権侵害というものが多発していた。それが日本の矯正の現状であったということは,まず念頭に置いておかなければいけないだろうと思います。したがいまして,私どもとしては,名古屋事件は氷山の一角でしかない,実際には多くの同じような事件が各地で起きているというふうに感じております。
 そして更に,多くの事件のケースをそれぞれ見ていきますと,一つの特徴が出てきます。まず,一番大きな問題は,ほとんどのケースの場合,いわゆる担当制ですね,担当の刑務官の方が,その受刑者をいろいろ監督するという中で,非常に限られた数の人数のコミュニティができ上がってしまう。その中で,きめ細かな対応ができるというふうに,中間報告でもそのように書かれておりましたけれども,逆に,それは狭い社会の中で何が起きても,その中で隠されてしまう,隠蔽されてしまう,そういう可能性も生んでしまうわけですね。
 そこに,外からの目が非常に入りにくいということがもう一つ挙げられます。日本の刑務所の担当職員の種類ですけれども,先ほどもプレゼンの中でありましたけれども,多くがいわゆる保安関係の刑務官ということになります。そして専門家がパーセンテージとしては非常に少ないということが指摘できると思います。皆さんのお手元に,被拘禁者最低基準規則等を含めましたガイドラインをお送りしてあると思うのですけれども,例えば,被拘禁者最低基準規則の49というのがあるのですが,この1のところには,「職員には精神科医,心理学者,ソーシャルワーカー,教師,職業指導者等の専門家ができる限り,十分な数だけいなければならない」とあるのですね。現在の日本のこの状態,一人の担当の中で全部をコーディネートしていくというやり方で,狭い社会の中で閉じているやり方,これが果たして十分な数の専門家を入れているという状況になるのかどうか。このあたりは国際基準に照らして問題になってくる箇所でもあるというふうに考えています。
 1998年には,国際基準からして,特に人権規約に照らして,どういうところが問題なのかということが最終勧告で出されています。しかしながら実際には,国際的なガイドラインといいますのは人権規約だけではないのですね。人権規約は,日本が批准しておりますので法的な拘束力を持つ条約です。もう一つ,拷問等禁止条約というものも,日本は既に批准しておりますから,1999年以降は法的拘束力を持つものということになるのですが,法的拘束力にかかわらず,ガイドラインという形でつくられたもの,先ほど言いました被拘禁者最低基準規則というのは,第1回犯罪防止会議で採択されたガイドラインですが,こういったものも重要な原則として援用されることがあります。
 似たようなものの中に,被拘禁者保護原則というものもございます。あと,刑務作業に関する原則,開放処遇に関する原則といったような形で,いわゆるガイドラインと称するものは山のように実は存在しております。犯罪防止会議が開かれれば,そこの段階でガイドラインが採択されるといったような傾向もありますから,どんどん増えていく状況ではあるのですが,その中に例えば医療に関するガイドラインといったものもありますし,それから,これは刑務官も含みますが,法執行官や警察官などが,どのように行動するべきかという行動倫理綱領のようなものも,国際的な基準としては存在しております。
 そういうものの全体の中で,現在の日本の行刑がどうであるかということを考えなければいけないのですけれども,その中では,非常に特徴的に言えるのが,私ども,98年のレポートの中でも何度も指摘しておりますけれども,狭い社会の中で多くの人権侵害というものが,対職員から受刑者に対してほとんど言いがかりのようになされている場合すらあると。それは多分個別の事例でしょうから,ケースバイケースで,さまざまな理由があるのでしょうけれども,しかしそれを許してしまう状態というものが実際には存在している。そして,情願制度のような不服申立制度というものは確かにあるのですけれども,残念ながら日本の場合,そのような不服申立てとか,問題になったときに,それを訴える先というものが基本的には法務省の中になってしまう。したがって法務省の職員によって行われた人権侵害に対して,法務省に対して文句を言うという形になりますので,場合によっては,そこは握りつぶされてしまう危険もあるわけです。
 こういうことを避けるためには,外部的にも避けているんだよということを示すためには,どうしても必要なのが第三者機関の設置です。この第三者機関というのは,結局,法務省以外のところに根拠を持ち,そして実際に刑務所の中をどういう形であれ,とにかく自由に査察するということが認められていなければいけないわけですね。この一番典型的な例がヨーロッパにございます。この間,実は,そのヨーロッパの原則がどちらかというと国際的な原則になったような,そういう拷問等禁止条約の選択議定書というものが12月に採択されたのですけれども,もともとヨーロッパにありました拷問等防止条約と呼ばれるものは,これもお手元の資料集の中に入っておりますけれども,これはいつでも好きなときに拷問等防止委員会というものが調査に入れるのですね。調査に入りまして,誰とでも会うことができる。制限なしに会うことができる。そして,実際に,ここの専門家あるいは委員の方とお話ししたことがあるのですけれども,実際には,そこの国にまず行くよということは事前に通告はします。国に対して通告はしますけれども,どの施設に行くかということは通告しません。そして,通告を受けたその国のどこかの施設に突然訪ねていくわけですね。そこの段階で,すべてのサービスを査察委員会に対しては提供しなくてはならない。それは締約国の義務であると。このような自由なアクセスというものが保障されているわけです。
 これは,国際的な委員会が査察をするという制度ですから,いわゆる第三者の一つになるわけですね。当然,このようなシステムは国内にも存在します。国内にもいわゆるオンブズパーソンといったような性格のものを持っているところもありますし,それから,刑務所訪問委員会といったような形で訪問して,それでそこの調査をする。あるいは,訪問した段階で,不服申立てを受けることもできる。日本の場合,それができているのは,法務省の巡閲官が行って,巡閲官に対して情願するといったような形がとられているのですが,結局,それは法務省の中だけでしかないのですね。ですから,第三者機関が入ることが諸外国においては基準ですし,それが国際的な基準でもあるということになります。
 では,国際的な基準としては何があるのかということを疑問に思われる方もいると思いますけれども,これに関しましては,「国内人権機関に関するパリ原則」というものが存在しております。本日,皆さんのお手元に,別の時に使われた資料を本人の同意を得て配らせていただいたのですけれども,「【山崎資料3】パリ原則から見た「人権擁護法案」の問題点」という資料がございます。人権擁護法案は現在国会で審議中ですけれども,この人権擁護法案は,もともとは1998年の人権規約委員会からの勧告の中で,第三者委員会がないではないかと。そういうものを持たないと人権擁護にならないよということが言われたのですね。その際に,人権擁護委員という制度,現在ありますけれども,これがあるよという形で指摘はあったのですが,この人権擁護委員は法務省の管轄下にあるのだから,これは第三者委員会ではない。そういうことがはっきり明言されています。そのあたりにつきましては,私がこのパリ原則に関して書きました記事を添付させていただきましたけれども,この中に若干詳しく,パリ原則と引き比べてどの辺が問題かといったようなことを指摘しております。ただ,この場は人権擁護法案の問題を指摘するところではございませんので,人権擁護法案とは別に,どのような形で第三者機関が必要なのかという視点で,この山崎資料も含めて見ていただきたいと思います。
 パリ原則で言う人権擁護委員会あるいは国内人権委員会というものの性格は,一つ目は,当該行政機関から独立していること。したがって,日本でいえば法務省から独立していること。これがまず最大の条件です。
 その次は,各種の専門家が入っていること。すなわち,専門家が専門的な目で見ていくことが必要です。
 それから自由なアクセスが保障されていること。先ほど言いました拷問等防止条約にありますような,そういう自由なアクセスが保障されていること。
 また,これはできれば憲法的,少なくとも法律的に定められた組織であること。そして,ここで言う,憲法的,少なくとも法律的というのは,それを作るための立法がありさえすればよいということを言っているわけではありません。これはどういうことかというと,憲法に記載されるということは,行政機関から独立しているということの保障にもなります。あるいは,立法という形で立法機関に付属させるというやり方をとっているところもあります。したがいまして,いわゆる第三者機関としては,行政機関から完全に独立していることを法的にも保障するということが,ここでは内容として言われているのですね。ですから,立法すれば済むという話ではないわけです。
 それから,政府とは異なった立場で,すなわち行政とは異なった立場で意見を言うことができます。どのような意見かというと,例えば各種条約の批准を促進させる,あるいはその履行を促進させる,それから人権教育を促進させる,そういった役割も第三者機関は持つことができます。
 そして更に,これは幾つかの国には十分ではないのですけれども,パリ原則の中で言われていることとしては,こういう国内人権機関は,事件を訴訟に持っていくことができるというのがあります。それはどういうことかといいますと,例えば刑務所職員から暴行を受けた,そういう事件が起きたとします。人権委員会がそれを聞きます。そしてその状態を発見していく。ところが,それが実際には立件されないというようなことが起きる。その場合に人権委員会は別途訴訟に持っていって,そして裁判にかける,そこまで権限があるということですね。日本で言うと付審判請求に近い,そういう制度だろうと思って,そのように書いているのですけれども,それくらいの強い権限というものがパリ原則に定められている国内人権委員会というものが認められています。
 こういう強い権限を持った第三者機関が,日本の刑務所を査察することができる,そのシステムを作らないことには,まず現在の狭いコミュニティの中で作られてしまっている隠蔽体質は,なかなか改善されないということが言えるかと思います。実は所内規則というのが各刑務所にあるわけですが,所内規則であれ,あるいは中で保護房をどのような形の基準で使うものであれ,そういったようないわゆる通達で行われていたさまざまな法的根拠は,私ども見たいということを何度も実は申し入れたわけですが,90年代はずっと,実際に刑務所などを訪問しまして,それを見せてくれという話をしましたけれども,基本的には公式には見せてもらっておりません。すなわち,そういう実際上どのような基準で物事が行われているのかという基準が非常に不透明であるということ。狭い社会の中でさまざまなことが行われても,なかなか外に出にくいということ。そして,第三者の目が,第三者機関のような形で訪問で,入って来れないということ。これらが日本の刑務所の現在の閉鎖体質というものを作り上げている。そして刑務所内においても実際にはそういう専門家がたくさん関与して,そして物事をうまく動かしていくというような体制よりは,どのように管理するかというやり方で,個々人の担当さんの力量に負うところが大きいという体質,それによって低い職員の稼働率というもので賄っているのだということが言えるのかもしれませんけれども,経済効率に引っ張られて,結果的にはそのような人権侵害の温床を作り上げてしまっているということが日本の刑務所に関しては,言えるのではないかと思います。
 余り長くお話をするよりは,皆さんの質疑応答の方に時間をとりたいと思っておりますので,もう少しで終わらせていただきたいと思うのですけれども,先ほど申し上げました,拷問等禁止条約というのは,日本は実は1999年に批准しているのですけれども,加入しているのですね,アクシードしているのですけれども,拷問等禁止条約に関しては,選択議定書というものが昨年12月に成立しております。この選択議定書はどういう内容のものかと申しますと,刑務所や,そういう行政施設,あるいは拘禁施設内に対する査察制度を定めております。この査察制度に関しては,国内機関,国際機関,両方のやり方で査察ができるというような内容になっているのですけれども,したがって,これによって拷問を防止するための具体的な措置が一応整ったという意味で非常に画期的な選択議定書なのですね。ところが,日本はこれをまだ署名,批准の手続に入っておりませんし,実際には,このドラフト段階では割合と協力的な姿勢を示していただいたのですけれども,経済社会理事会,人権委員会といったような機関でこれが採択されていく最中には反対投票しているのですね。したがって,日本に関して言うと,こういう選択議定書をつくるのは反対であるという意思表示をしてしまっている。そして,無制限なアクセスというもの,刑務所に対して第三者機関が無制限にアクセスしていくことに対しては非常に強い抵抗が現在でも国際的にもされているということなどが挙げられると思います。
 拷問等禁止条約は98年の段階ではまだ批准しておりませんでしたので,拷問等禁止条約の批准を我々は求めたわけですが,現在我々その選択議定書の批准促進ということで,日本政府に対してその部分を求めております。
 それから,懲罰として使われている軽へい禁,それからまた保護房。これは懲罰ではないのですけれども,懲罰ではないにもかかわらず,実際には些細な所内規則の違反などを理由として,保護房に入れるというようなことが実は横行しているというふうに言われております。保護房に入れられたときに,ある刑務官が言った言葉が,この中に引用されております。6ページに書いてあります。これは実は粗訳ですので,余りきれいな訳にはなっていないのですけれども,府中刑務所のある刑務官が言ったとされる発言です。「…今までに50人以上手錠をかけて保護房にぶち込んできたけど,実際に俺に向かってきて,暴行の気勢が本当にあったのは二人しかおらんかった。…本当は俺だって,こんな役はやりたくないけどな,でも誰かが憎まれ役をやらなならんでしょう。…こうやって,何かちょっとしたことでもあれば手錠をされて,保護房で苦しい目にあわされるんだぞということを分からせないとかないと,下の職員が苦労することになるんだ」この言葉は,図らずも,保護房が実際には懲罰的,見せしめ的に使われているということを示しております。
 それから,軽へい禁も保護房も,中に入れられたときには,例えば外に出て運動をすることなどが認められておりません。これは明らかにガイドラインの違反です。ガイドラインには,どのような場合であれ,作業に従事していない間,外で一定期間,運動することができる,そのようにしなさいというふうに書いてあるわけです。
 『法曹時報』に毎年載っています「矯正の現状」,法務省矯正局から出てきているものですけれども,この中には,どのような国際的な基準というものが現在存在しているのかといったようなことの一覧が載っております。毎年載っているわけですれども,この一覧の中に,当然この最低基準規則も含めて,ざっと記載されております。そして刑事施設法案を作る,つまり監獄法を改正して刑事施設法案を作ろうとしていく最中には,このガイドラインを十分に吟味し,そしてそれに合うように作ったというふうに,この中でも書かれております。実際,「資料 監獄法改正」という非常に大部の書類が2冊出ておりますけれども,これは非常に古いものなのですが,これは法務省矯正局が作ったものとしては白眉のできで,非常に中身が濃いんですね。すべての国際基準でこのようなことが言われている。これをどのようにして実現するかといったようなことを対照しております。
 しかし,懲罰の部分に関しては,やはり同じようにきちんとした運動が確保される状態にはなっておりません。そして戒具の使用などに関しても,ガイドラインは,そのような戒具の使用は必要最低限にとどめるべきであるというふうに書かれているにもかかわらず,現実の運用はそうはなっていないということが,ほぼ明らかであります。それに対して対策はとられておりません。
 ここでぜひ,私の方から申し上げたいのは,98年に人権規約委員会は,日本に対して最終勧告というものを出しました。最終勧告というのは要するに最終見解というもので,Concluding Observationということですが,98年にこの勧告が出て,それ以降,改正はされておりません。日本の矯正当局は,この勧告を受けて,それに対して改善策をとらないという状態でこれまできました。これは不作為です。そして,この不作為の結果,今回の名古屋事件が公になったというふうに私たちアムネスティは考えています。国際基準から見て,既に言われていたことだったわけですね。ですから,名古屋事件で,こんなことが起きてしまった,大変なことだ,これは本当に特別なことなので,これまでそんなことはなかったというようなことは決して言えません。これまでもあったことが98年にも言われ,そして勧告されたことが,実際には改善策がとられなかったがゆえに,再び起きてしまったというのが現状だと思います。
 それぐらいにいたしまして,私どもの方から申し上げることは終わりにさせていただきまして,皆さんからの御質問を受けたいというふうに思います。ありがとうございました。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。ただいま寺中事務局長から御説明のありました件につきまして御質問,御意見があればどうぞ。
○久保井委員 今回の名古屋の事件発生の原因が,外部の目が入りにくいという隠蔽体質に根本的な原因があるのではないかというお話があったと思います。拷問禁止条約に基づく選択議定書,国外あるいは国内の査察制度を設けるべきだという,その選択議定書を批准している国はどこと,どこでしょうか。日本は批准していないのですね。
○寺中事務局長 していません。12月に採択されましたので,現在は署名段階にあります。条約といいますのは,署名して批准をします。そして批准が数か国に達すれば,数か国というか,この場合は20か国なのですが,20か国に達すれば発効いたします。条約が発効してから,その条約に入る,締約国になることを加入といいます。日本の場合は,拷問等禁止条約に関しては加入いたしました。すなわち,発効後に入りました。拷問等禁止条約の選択議定書は,現在,署名段階ですので,まだ発効はしておりません。
○久保井委員 日本政府は反対をしたとおっしゃいましたけれども,賛成している国はどこと,どこでしょうか。
○寺中事務局長 どことどこというよりも,反対した国が非常に少なかったのですね。ただ,若干,投票行動は経済社会理事会と人権委員会,第三委員会,国連総会本会議で,それぞれ,実は投票行動が入り組んでおりまして,概略的に申し上げますと,否定的だった国はアメリカ,オーストラリア,日本,あとは中東諸国,アフリカの諸国,そういったところが主でした。ほかの国々は非常に強力にこれを推進しておりまして,ヨーロッパはほぼ一致してこれを推し,そしてまた,ラテンアメリカ諸国もかなり強くこれを推して,コスタリカなどはずっと提案国になっておりました。
 日本の場合の投票行動を,もう少し正確に申し上げますと,国連総会第三委員会,ここは人権関係に関する,国連総会での意思を最初に問うところですけれども,そこの段階では反対しております。しかしながら,その次の国連総会本会議におきましては,日本政府は保留をいたしました。したがって最終的には反対を回避したということが言えるかと思います。
 その最中に,日本政府は,反対に至るまでに多くの修正動議等を出して,幾つかの抵抗をしております。例えば,財源をどこで確保するのかとか,どこが責任を持つのかといったようなこと。あるいは,この決議をここで決定するのは時期尚早であるといったような修正動議などを出していますが,これらはいずれも否決されております。
○江川委員 2点あるのですけれども,1点目は,先ほど,日本の刑務所の場合は専門家が少ないというふうにおっしゃいましたけれども,例えば諸外国との比較で,どこの国は例えばカウンセラーが何人,日本は何人,そういったような数字的な比較というものができれば,それを教えていただきたい。
 2点目は,規則の問題で,日本の場合は入手できないとおっしゃいましたけれども,海外の場合は入手が可能なのでしょうか。可能だとすれば,お持ちのものを見せていただくことは可能かどうかということです。
○寺中事務局長 まず,数字的に専門家がどれくらい入っているかというのは,私の方ではそういう数字を持っておりませんので,それはお答えしかねるのですけれども,ただ,少なくともカウンセラーとか心理技官等が処遇に参加するというようなことは非常によく行われております。これは恐らく,この説明はしておいた方がいいだろうなと思うのですけれども,日本の場合は刑務作業というのは義務でございます。矯正局の先ほどの説明の中でもありましたけれども,これは刑の内容ですので,特殊な理由がない限り,やめることはできません。そうしますと,処遇のための時間というのがないのですね。いわゆる,さまざまな教育やカウンセリングなどを行おうとすると,刑務作業時間外で行わなければいけません。したがって非常に時間が限られている。だから関与も少ないということは言えるかと思います。ほかの国々の場合は,刑務作業自体は強制されているものではありますけれども,しかし,その強制の具合は,日本のように刑の内容ではありませんので,これを時間的に短縮することとか,その時間をまるごと処遇に充てることなど,そういったようなことが実は可能です。したがって,そういう形で,かなり多くの処遇技官の関与というものが可能になっている。これは日本の法制度上の問題であるという部分も否定できません。
○江川委員 データは,お帰りになってもないということですか。
○寺中事務局長 私どもの方では,幾つかの国,例えばイギリスなどはどれくらいかというようなことについては,探せば多分出てくるかと思います。幾つかの国はありますけれども,そういうものを包括的には集めておりませんので,それでちょっとお答えしかねるというふうに申し上げました。
 もう一つ,規則の部分ですが,これはほとんどの国は規則は入手できます。イギリスの場合は,所内に入った人には必ずパンフレットが配られまして,どのような形で所内で生活するのかというようなことを書いたハンドブックがありまして,これは一般に市販されております。したがいまして,私どもでも購入することができます。
 更には,イギリスの場合,刑務所の中でどのように生活するべきか。そのときに,もし不服があった場合にはどういう申立てをすればいいのかといったようなハンドブック,これはちょっと高価なものですけれども,こういうものも入っておりますし,こういうものを一般に市販し,ないし図書館等で手に入れることもできます。図書館というのは,矯正施設内の図書館ですね。ですから,内部にいる人が使うこともできるし,外部にいる人が,どのような規則があるのかということを見ることも当然可能です。懲罰になるのはどういう場合かといったようなことも,そういう意味では客観的な基準というものが一応存在しております。
○宮澤(弘)座長 アムネスティ・インターナショナルの寺中さんに,なお御質問はございましょうか。
○久保井委員 私ばかり質問して申し訳ありませんが,日本の刑務所は明治41年の監獄法以来,約100年たっているのですが,100年前は国際水準に合わせた刑務所,つまりドイツのプロイセンの刑務所が一つの手本になっているというようなことで,国際レベルと整合性があったと思うのですけれども,100年たった今日,国際レベルとの間に非常に大きな乖離,遅れが生じた。それを今直そうということで,この会議が開かれているのですけれども,その乖離がなぜ生じたのか,お考えがあったら,参考にお聞かせいただきたい。
○寺中事務局長 例えば改善,社会復帰という理念に関しましても,旧監獄法ですね,現在の監獄法よりも前の監獄法は非常に先進的なもので,当時においても国際水準を十分に満たしていたというふうに言われております。現在の監獄法も,その流れは汲んだ形でつくられておりますし,その中でいろいろなことが動かされております。しかし,現実には,監獄法どおりの運用がされているのかというと,そうではありません。監獄法は,法としては存在していますけれども,監獄法施行規則,これはまだ通常の施行規則でいいのですけれども,そのほかに重要なものとしては行刑累進処遇令,それから受刑者分類規定といったようなものが非常に重要な位置づけを持った通達として存在しています。そしてこのような通達が,実はそれ以外にもたくさんの通達があるわけで,そういう通達が山のように集まって,そして現在の監獄の行刑体制というものを造り上げております。
 通達がたくさん集まって造り上げた行刑体制が,国際水準との間で乖離を生じてしまっているということになるのだろうと思いますし,その背景には,まず世界中の行刑体質が基本的には開放,そして改善,社会復帰に関しても受刑者の法的地位をはっきりさせ,そして本人たちの自主性というものを涵養する方向に進んだこと。そして,もう一つは自由刑の純化。すなわち,自由刑というのは自由を奪うという刑罰ですけれども,自由を奪うという一点においてどのように考えるかというふうにして作り上げていって,それ以外の要素についてはできるだけ排除する。そういう方向での行刑システムというものを施行したということが多分挙げられるだろうと思います。もちろん,自由刑の純化に関してはいろいろな異論があります。自由刑の完全純化というものが果たして可能なのかどうかといったような議論もありますけれども,国際的な水準に関して言えば,人間の自由を奪うのは最小限度にとどめなければならないという一種の流れがあり,そして,拷問や強制労働などは極力それを回避するのだという方向で進んできたのだろうと思います。
 もう一つ,例えば刑務作業などは日本の場合は義務になっているわけですけれども,義務でない場合は,結局は作業を行い,その作業の報酬を得るという形になりますので,基本的には賃金制というものが原則です。受刑者の賃金制というものを原則にしている反面,日本の場合は,これがいわゆる報奨金という形の性格づけをされていますよね。これはいろいろな面があって,別に悪いことばかりではないのかもしれませんけれども,賃金制に持っていったということは,基本的には労働は労働の権利であると。その労働の権利というのを奪うものではないという発想がそこの段階にもあったのだろうというふうに思います。したがって,受刑者の権利を最大限に尊重し,それを涵養していくという方向に国際基準が動いていく中,どのようにして受刑者を管理し,受刑者に対して恩恵を与えるのかという方向で考えていった旧監獄法の流れというものとが,そごを来したのだろうというふうに思います。
○宮澤(浩)委員 先ほどの御発言の多くは,私も実は賛成したい点の多い御発言でありました。実は,この名古屋の事件が起こりまして,若干の仲間と,いわゆるEUに属する国の中で,我々のできるドイツ語圏についてインターネット等を使って,どういう状況であるのかというのを調べている最中であります。ドイツ,オーストリア,スイス,それからフランスは新潟大学の女性の先生がおられるので,その方からヒアリングをしたりしているのですが,私が思うには,EUというのは一種の特殊なグループで,法的にも社会的にも経済的にも政治的にも,大体同じようなものでありますから,でこぼこがないというようなことで,ああいうような統一基準のようなものができやすいのかなという感じがいたすわけです。
 それで,個人としては,国際受刑者移送条約,あれはEUの関係のところにオブザーバーとして日本が入るという形で法律ができたというような経緯もあるわけで,我々は確かにアジアの中にある国だけれども,そういう国際的な水準というのはこれから,せめてEUぐらいを水準として考えなければいけないのではないかなというようなことを私自身は基本的にはそう考えているわけです。そういう意味で,御発言には同意することができます。
 御質問したい点があるのですが,それは,今日いただきました資料の中で,6ページに,先ほど御案内がありました府中刑務所の刑務官が受刑者に対して「言ったとされる発言」とありますが,別にそんなことを事を荒立てて,揚げ足をとるつもりはありませんが,「言ったとされる発言」というのはどういう情報なのかなということが,私にとっては関心があるのです。なぜかというと,私も実はたくさん施設見学をしているのですが,そのときに,私を連れていってくれたり,あるいは一緒に引率した学生を連れていってくれたりして,いろいろ説明する方は管理部長とか,そういうような方々でして,実際に受刑者に接するクラスとはなかなかお話をする機会がない。後で懇親会か何かで,暇な方が集まって,ビールが入って,つるっとしゃべるようなことはあるのですが,それはオフィシャルな発言ではないというようなことで,実際にその処遇に対応する人はどんな行動をするのかなというのが分からないので,こういう発言があると,面白いな,データとしてどこから出てくるのかなと思ったのです。「言ったとされる」というのはどういう意味なのですか。
○寺中事務局長 8ページから9ページにかけて,府中刑務所の事件のケースを書いているのですが,府中刑務所の事件の最中に,このようなことを言われたというふうに言っているのですね。これは言われた側が,このようなことを言われたというふうに述べているものです。ですから,「言ったとされる発言」としか言いようがないのですけれども,ちなみにこの事件は,この段階ではまだ係争中でしたので,そのときの主張自体をここには書かせていただいたというものです。ですから,言ったそのままではないかもしれません。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。誠に済みませんけれども,あと少し予定がございますものですから,アムネスティ・インターナショナルのヒアリングはこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。

3.会議の進め方等について

○宮澤(弘)座長 次に,今後の会議の進め方につきまして皆様方の御意見を伺っておきたいと思っております。そういっても,大まかなスケジュールでございます。恐らく,将来もいろいろな条件の変更があって,スケジュールが変わってくることは十分予想されるわけでございますけれども,皆様方,それぞれ大変御多忙の方々でいらっしゃいますので,大体,このときにはこういうことをやってという大まかなスケジュールだけをということで,事務当局が考えましたものをまず申し上げますので,それを聞いていただいて,その上でいろいろな御意見を賜りますれば幸いだと思います。事務当局から説明をさせます。
○杉山次長 事務局次長の杉山でございます。お手元に「行刑改革会議の今後の進め方について(案)」というものをお配りしております。資料の中に会議進行関係というインデックスをつけておりますが,この案につきましては,宮澤座長の指示を受けまして,事務局において相談しながら作成した,今後の大まかなスケジュールの案でございます。
 大きく言いまして,年内に改革の方向性をという大臣からの指示がございますので,これを踏まえまして,夏までにヒアリングなどを通じて,我が国の行刑の実情についての認識を共通化する。ともに問題点を洗い出すという作業を行いまして,秋からは分科会をつくるなどして,それぞれの論点について議論を深め,11月ころからは行刑改革会議としての意見についての協議を行うという構成になっております。お手元の資料に書きましたように,本日は第2回会議ということになっておりますが,この第2回から7月の第4回会議までの間に,本日のアムネスティからのヒアリングに加えまして,元受刑者,刑務官,それから矯正医療の関係者の方々からのヒアリング。あるいは,ここには具体的には書いてありませんけれども,以前,監獄法に代えて刑事施設法案というものが立案された経緯がございまして,結局,日の目を見なかったわけでございますけれども,その際の立案に携わった方などから,その当時の,新規立法に向けての考え方,理念というものについてお話をいただくということも有用だと考えております。
 こうしたヒアリングなどに加えまして,会議の合間に刑務所の視察を考えております。お手元の紙には,府中,八王子医療刑務所,川越少年刑務所の3か所,計4回の視察の日程が組まれておりますけれども,一部の委員の方から,この会議が招集された発端となった名古屋刑務所の視察を是非とも行うべきだというような御意見も出されておりますので,現在この3か所のほかに名古屋刑務所の視察も検討しておりまして,日程調整をしております。ですから,御都合のつく方は御参加いただきたいと思っております。
 いずれにいたしましても,このように,7月の会議までにヒアリングや視察を通じて,矯正の現状について認識していただくとともに,この会議で取り上げるべき論点は何かということについて委員の皆様からの書面での御意見などもちょうだいしながら,効率的に議論を進めまして,9月の第5回の会議までには取り上げるべき論点を整理し,これに応じた形で分科会を,これは一応三つ程度考えておりますけれども,作りまして,それ以後,本会議で総論的な論点を議論し,これと並行して各分科会で各論的な議論を行うというような形で取り上げた論点についてまとめ上げていくことがよいのではないかということで,御提案させていただいているところでございます。
 もとより,分科会は三つでよいのか,この程度の開催日数でよいのかという問題はありますけれども,いずれにしても,年内に方向性をという宿題を考えますと,秋口からは,前回お決めいただいた,毎月第3月曜日という月一回の議論では恐らく間に合わないだろうということで,分科会の頻度などについてはもちろん未定ですけれども,比較的皆様の御都合がつくと伺っております月曜日につきまして,9月からは前広に御予定を空けていただけると幸いだと思っております。
 いずれにいたしましても,このように秋口から全体会議で総論的な論点を議論し,分科会で個別の論点を議論するというような形で議論を進めまして,12月の会議では行刑改革会議としての意見を取りまとめたい,このような大まかな進め方を考えて提案したものでございます。
 以上でございます。
○宮澤(弘)座長 ただいま事務当局から説明をしていただきました。今後,ヒアリングを何度か行い,あるいは施設の視察等を行うことについては無論でございまして,これらについて具体的な御意見を今後伺うことにいたしたいと思いますが,先ほど事務当局が御説明いたしました,第5回会議を9月8日に予定しておりますけれども,そこで「取り上げるべき論点整理」「総論的な論点についての議論」ということを提起してございます。実は,私ども事務当局は,大分いろいろ議論をしたのでありますけれども,9月8日において取り上げるべき論点整理を行うということについては,タイミングとしてどうだろうかということが実は,私ども自身もいささか危惧を持って考えております。今後の情勢の変化によってはスケジュールも変わることは十分あるわけでございますけれども,今御説明を申し上げました大まかなスケジュールについて御意見がございますれば,どうか賜りたいと思います。
○久保井委員 大きな方向といいますか考え方としては,事務局の提案で結構かと思いますが,私は是非,これに付け加えていただきたいと思いますのは,今回の改革は一言で言いますと,我が国の刑務所を国際水準に引き直すといいますか,国際的水準から遅れている部分を,せめてヨーロッパ並みにという話が先ほどありましたけれども,そういうものに引き上げるというのが,どうしてもしなければならないことだろうと思います。そのためには,本日,お二人の方から海外の刑務所の数字的な問題あるいは若干の制度の説明はいただきましたけれども,できれば,海外の視察,ヨーロッパの刑務所はどうなっているのか。特に100年前にドイツの刑務所を模範として日本の監獄法が制定されながら,ドイツの方は大変進んでおる。日本はそのままだというようなことがなぜ起きたのか,私は疑問に思いますけれども,どちらにしても,4~5日間費やせばできることだろうと思いますので,是非,海外視察を,これは全員というわけにはいかないでしょうけれども,可能な委員だけでも,ひとつ行くことにしていただきたいと思います。
○宮澤(弘)座長 御発言がございましたことは記録にとどめておきまして,いずれまた御相談をいたす機会があるかもしれません。
○成田委員 私は法律の専門家でもないのでありまして,今日のお二方のお話は非常に参考になりました。今後,行刑というのはこうあるべきなのかなという思いを強くしております。菊田委員からいただいた本を読みながら,なるほどねというような感じでおるのでありますが,私はこの会議で早くやってもらいたいと思うのは,行刑というのは一体何なのだろうか。先ほど来,懲罰だ,懲戒だ,いや,社会復帰だ,いや,自由刑だと,いろいろ話が出ておりますけれども,本質的にどうあるべきなのだというものを明快にすべきではないだろうか。こういう議論をして,そしてそういうものが決まれば,それでは,何をするのだというようなことを次に考えていけるのではないかと私は考えるのです。それで,できるだけ早く,4回,5回ではなくて,この次の会議あたりで,どうあるべきか,そういう共有するもの,要するに遅れたと言われる日本の行刑を戻すために,どういう形で持っていくのだというようなことを皆さんとお話し合って,話を進めていったらどうかというような気がするのであります。
○宮澤(弘)座長 ただいま成田委員から御発言がございましたが,それにつきまして御意見がある方はどうぞ。
○久保井委員 私は成田委員の意見に賛成ですけれども,それに加えて,なぜ名古屋の事件が発生したのか,その原因について,この委員の中で腹蔵なく意見交換をする機会を持つ必要もあるのではないかと思います。
○宮澤(弘)座長 今,成田委員の御発言と関係がございますか。
○菊田委員 関係はございませんが,スケジュールについて説明させていただきたいと思います。
○宮澤(弘)座長 はい。
○菊田委員 今,成田委員がおっしゃったことは,かなり時間の要することであり,また,それぞれの方の考え方がありますので,共通ということは非常に難しいように思いますが,しかし,そういうことでかんかんがくがく議論されることは非常に大事なことだと私は思います。
 私が本日,皆さんのところに,12ページにわたりまして行刑改革会議で議論すべきことをまとめさせていただきました。これはもとより,事務当局の方から,法務大臣が年末までに答申をということと,三つの分科会を設けるということをお伺いしましたので,そういうことを一つの基本として,私なりに予定を,こうあるべきではないかということを皆さんの検討材料にしていただきたいと思いまして,配付させていただいた次第です。
 それで,簡単に説明をさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
 一つは,この行刑改革は非常に大きな課題でございまして,緊急に取り組むべき課題というものは年末までに答申するということを目標にすべきだと思います。ただ,その他の内容そのものにつきましては,何しろ100年近くの監獄法の聖域なき改正を目指すということでございますから,これはとても年末までにできることではなかろうと思います。したがって,そういう個別的な問題については,別途,2,3年かかってもやらなければならないものが出てくるはずだというふうに思っております。
 それから,第二点に,先ほど申し上げました分科会ということ,これは,こういう大きな会議では議論できない分野もございますので,私もそういう御意見に賛成いたします。ただし,三つの分科会全部に出席するということは不可能でございますけれども,いずれにしましても,分科会ができて,その専従以外にも,他の分科会にも自由に出席し,議論に参加できるというような形のものにしていただければ有り難いというふうに思います。
 それから,分科会の具体的な三つの柱でございますけれども,三つの分科会を事務当局がお示しになりました。中身は聞いておりませんけれども,私個人としましては,一つは人権侵害を根絶する分科会。非常に抽象的でございますけれども,具体的には受刑者の権利義務の明確化ということ,さらには不服申立制度を含むようなことが,この分科会の柱だろうと思います。
 二つ目の分科会は,何と言っても,刑事施設は市民に開かれたものでなければならないということでございますので,その中身としてはいろいろなことが考えられる。カウンセラーの問題,市民参加というものも,こういうところで入ってくると思いますし,あるいは職員の執行の明確化も,この分科会でやるべきことだろうと思います。
 三つ目は,現在問題になっておりますところの刑事医療施設の抜本的改革を柱にした分科会を作るべきだと思います。
 あと,私が特に事務当局にお願いしたいのは,この際,全受刑者というわけにはいかないと思います。何千人ということで結構だと思いますけれども,日本の受刑者,それから刑務官にアンケート調査を実施していただきたいと思います。現場の意見を吸い上げて,どういうところにどういう問題があるのか。受刑者を含む現場の人の意見も参照しながらデータを集めるということが緊急に必要であろう。イギリスでも,改革の段階でそういうことがなされて,それが大きな柱,資料となったことがございます。それは是非とも実行していただきたい。今まで日本では,これがやられたことはかつてありません。
○宮澤(弘)座長 座長自身が案を提案申し上げて,どうだったかというふうに首をひねったようなというふうに,先ほどお話を申し上げましたけれども,率直に申しまして,先ほど成田委員のお話がございましたように,一体,行刑改革というのはどうあるべきなのか,当然あるべき姿があるだろうと思います。あるいは矯正とは一体何かという根本論,基本論をもう少し,今の段階からお互いに闘わせる必要がある。実は先ほど事務当局の案として御説明を申し上げましたけれども,ここで御覧をいただきますと,9月8日の第5回会議で「取り上げるべき論点整理」「総論的な論点について議論」ということになっていますが,これでは遅いのではなかろうか。成田委員がおっしゃいましたように,そもそもいろいろな方の意見を聞いたり,施設を見ることは必要でございます。それと同時に並行して,行刑改革のあるべき姿というものを,もう少しあらゆる機会をとらえてお互いに議論すべきではなかろうか。そういう方向で,例えば第5回会議に至って論点整理などが出てくるというのは,少し遅いと思いますので,もう一度その点は,組替えを私はさせていただいたらどうかと思いますけれども,それらについて御意見なり御指示があればと思います。
○菊田委員 ちょっと待ってください。私が今申し上げているのは,まだ私の発言は終わっていないのですが。
○宮澤(弘)座長 ごく簡単にお願いします。
○菊田委員 そういう議論をしていただくことは結構でございます。でも,今申し上げたことを具体的に並行してやっていただかなければ,ずっと,終わってから,終わってからでは,何しろ一つの大きな柱は年末までということでございますので,御配慮願いたいということを申し上げているわけです。
○宮澤(弘)座長 当然だと私は思います。
○菊田委員 この先,今申し上げたアンケートの件と諸外国の視察もぜひとも実行していただきたいと思います。
 それからあと,ここに文書で提出しておりますので,是非ともこれを見ていただいて,今後の議論の対象にしていただきたい。そもそも,聖域なき改革ということからいきますと,例えば刑法上の懲役をどうするかという問題もあるわけですね。そうすると,これは行刑改革の分野としては非常に大きな課題です。けれども,私どもとしては,とにかく刑法改正上の懲役をどうするかということまで,例えば「自由刑」ということに言葉を変える,刑法の改正にも言及するというところまで踏み込んでいかなければ,本来の意味の改革というのは出ててこない。日本の場合は懲役というものが基本にあって,強制労働というところから多くの弊害が出ている。諸外国の例を見ても,このような懲役と禁錮刑を分けている国はないわけです。そういう点から見ても,刑法の方は刑法の問題だから,それはできませんというようなことではなくて,聖域なき改革ですから,そういうことも視野に入れて検討していかなければならないだろうと思っております。
○広瀬委員 この会議は骨太の案を決めればいいと思うのですよね。成田委員のおっしゃるように,早目に,問題点はこういうところだよということを我々自身が頭に描けるような状況にして,それから視察などを進めていけばいいと思うのです。
 ただ,ひとつお願いしたいのは,ここに宮澤座長あての親展などありますように,今の状況を一日も早く何とかしてくれというのが被拘束者の気持ちだと思うのですね。我々が半年やっているうちに,また一人とか二人とか死者が出たのでは全く申し訳ない話で,さきに,ここの但木次官が中心になって中間報告をまとめて,革手錠は即刻やめますというのがありました。同じように,我々の判断を待つまでもなく,事務局で,森山大臣の指揮のもとに直ちにできるもの,例えば電話で家族に通話することは結構ですよとか,その種のリストをつくってもらう。それが省内の規則だ何だで,できるものか,法改正を要するものだとちょっと別になりますけれども,その種の改善案と,つまりどういう手続をすればできるかということをはっきりしたリストを,この1か月ぐらいで作ってもらって,次回にきちんと説明してもらうというのはどうですか。
○宮澤(弘)座長 なかなか難しい御注文で,私自身が,それを出せますというようなところまではちょっと申し上げかねますけれども,今,御意見があったことは十分頭の中に入れておきます。
 本当は,自分ばかりがしゃべっては余りいけないのかもしれませんけれども,まず,基本的に行刑改革というものはいかにあるべきかというような根本論を,事務当局が出した案が不十分だったものですから,あえて申し上げました。成田委員のおっしゃるように,私もそれであってしかるべきだと思いますので,そういう方向でもう一度組み直すということでよろしゅうございましょうか。

(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○宮澤(弘)座長 それではそれはそういうことにさせていただきたいと思います。
○菊田委員 先ほど私が申しましたアンケートは是非お願いしたいと思います。
○宮澤(弘)座長 先ほど具体的な御提案で,アンケート調査をしたらどうであろうかという御提案がございました。ヒアリングでございますと,3人か5人の方々の意見を承れるだけであって,アンケート調査であればかなり広い方々に対するお考えなり意向の打診ができるわけでございますから,これも皆様方の御賛同をいただければ,アンケート調査を行う。アンケート調査はかなり技術的な面もございますので,皆様方の御同意を得られれば,これから事務当局としてはアンケート調査の準備をいたしまして,次回にでも,こういうアンケート調査をやっていきたいということをお諮りすることができればということですが,いかがでございましょうか。
○成田委員 それから,座長にお願いしたいのですが,先ほど広瀬委員から出ました,できるものと,できないものがあるでしょうということ。我々はどういうことを考えているのかということなども整理して,何か結論が出たものがあれば,これを逐次発表するだとか,そういうようなことも必要なのではないですかね。
○宮澤(弘)座長 今,御発案がございましたけれども,法律を改正したり制度を改正したりしなくても,今の体制でできることがあるではないかと。恐らく今の御提案はそういうことであろうと思いますので,もしそういうことがあれば,これはしなければならないと私は思います。これにつきましても,今のような御提案がございましたもので,次回までに,一体,何が,どうできるかということを御提示を申し上げることができれば,やらせていただきたいということでございますが,よろしゅうございますか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○宮澤(弘)座長 それから,俺たちが言ったのはどうしたとおっしゃる,それも申し上げなければいけないのかもしれませんけれども,外国の話は,私は法務省自身として外国のかなり資料は持っていると聞いておりますので,まず法務省の資料を全部洗いまして,その上で,こういう資料がないではないかということになれば,外国に行くか行かないかは別にして,それの探求をしていくということが必要ではないか。今,ここで外国に行くというわけにはなかなかまいりません。
○菊田委員 その件についてよろしいですか。もちろん,法務省はいろいろな資料を持っています。私も個人的には持っています。けれども,現実に受刑者がどういう不満をどういうふうにして刑務所内でやっているのかということについては,現場を見まして,そしていろいろな実務家に話を聞くということが,特に諸外国については,規則だけではいかないのではないか。そういう意味で,可能ならば現実を見たいということでございます。
○宮澤(弘)座長 私は,やや消極的なことを申し上げたわけですが,その御発言は御発言として,また,今ここで議論するわけにもまいりませんので,いずれ議論をする機会があろうと思います。
○但木事務局長 それでは,ただいま座長から御指示がありましたので,事務当局で確認させていただきます。
 一つは,成田座長代理からお話のございました,日程のある程度の組替え,特に行刑がいかにあるべきかという大きなテーマについて議論する場をできるだけ早く設けるということを念頭に入れまして,日程について若干の再検討をさせていただきたいと思います。
 第2番目は,アンケートでございますが,これは刑務官,受刑者,双方に対してどのようなアンケートを行うか,対象をどのぐらいにするかを検討するとともに,受刑者あるいは刑務官の人たちが,アンケートに答えることに不安感を抱かないような手続,手段はどのように工夫できるか,それらについて次回までに検討いたしたいと思います。
 それから,広瀬委員から,現段階ででき得ることについて整理してみなさいという御指示がございました。次回までに広瀬委員の御指摘のような,今,空白期でございますので,ルールができ上がるまでの間に,今やっておかなければならないことはどういうようなことがあるか,それについて私どもの方で洗い直してみまして,次回,この場で皆さんの御議論の対象にさせていただければというふうに思っております。
 大体,以上3点の御指示があったというふうに考えてよろしゅうございましょうか。
○宮澤(弘)座長 今の3点,よろしゅうございますか。
○菊田委員 現実の通達とか指示,所内規則などを可能な限り,我々が手に入れられる手段をとっていただかないと,議論そのものがなかなかできないと思うのです。その点についてはひとつ御検討を願いたいと思います。
○但木事務局長 もちろん,私たちができ得る限り,現状についてはすべて皆さん方に,まず御理解をいただいた上でと思っていますので,最大限のことをいたします。
○宮澤(弘)座長 それでは,3点を中心に事務当局とも十分相談いたしまして,次回に具体案ができましたものがあれば,それをお示しして議論をしていただく,こういうことにしたいと思います。
 もう一つ,御提案をいたしましたテーマに関する第3回及び第4回のヒアリングの人選につきましては-3回,4回は,前から,ヒアリングをするということで計画をしておりました-ただいまの御意見等を踏まえて検討させていただきます。最終的には,私と成田座長代理に御一任をいただきたいと存じます。
 いかがでございますか。大分スピードアップして申し訳ございませんでしたが,5分ぐらい時間が出ましたので何か御意見はございますか。
○成田委員 曽野委員の御意見をお聞きしたいです。
○曽野委員 私は,今,皆様方が実に,現場と,いろいろ核心を突いたことをおっしゃってくださっていると思って感謝しております。ただ一つひっかかるのは,今おっしゃいましたね。一体,刑とは何かという問題になりますと,これは当然,例えば「EU並み」という言葉の背後にはキリスト教的なものがあるわけです。私は自分はキリスト教ですけれども,決してそれを売り込もうとか,そういうふうには思っておりませんが,許しの問題が入ってくるのです。非常に悲痛な許しのもとに受刑者というものを扱わねばならないという共通のコンセンサスがあるわけでございます。そういうものなしにやりましても,一部大変ではないかという考えがございます。
 もう一つ,公開の席で,私はそんなことはしゃべれません。皆さんが聞いていらっしゃるところで,深い話などは嫌ですね。そういうことを話すなら,どこか,安いところで結構でございますが,箱根か何かの温泉で,非公開でゆっくりしゃべらせていただきたいです。それだけでございます。
○宮澤(弘)座長 会費が幾らぐらいならできるか,聞いてみます。(笑声)
 それでは,まだ少し時間がございますが,今日はこれで閉会にしてよろしゅうございましょうか。今日は大変実りのある会議でございました。ありがとうございました。


午後4時44分 閉会