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その他会議

日時: 平成15年6月16日(月)
14時07分~17時09分
場所: 法務省第1会議室



午後2時07分 開会


○宮澤(弘)座長 ただいまから,行刑改革会議第3回会議を開催いたします。
 今回はヒアリングの第2回目ということで,人選につきましては一任をいただいておりますが,本日は4名の有識者の方々からお話を伺いたいと思っております。
 なお,本日,法務大臣は国会対応のために,やむを得ず欠席されると聞いております。また,後藤田相談役におかれましても,所用のため午後4時に退席されるようでございます。
 まず,刑務所での経験を有する2名の方にお話をしていただき,質疑応答を行い,その後,府中刑務所において工場担当をしている第一線の刑務官の方と,監獄関係法令の改正にも携わった元幹部からお話を伺い,質疑応答を行いたいと思います。
 また,ヒアリング終了後,前回の会議で決めました行刑の理念,基本的なビジョンについての御議論をいただき,更に行刑改革の当面の改善策,受刑者や刑務官に対するアンケートについて御議論をいただきたいと思います。
 本日は,今申し上げましたように,かなり内容が盛りたくさんでございますので,委員の皆様方には格別,円滑な議事進行に御協力をいただきたいと思います。
 それでは,報道の方が退室されるまで,しばらくお持ちください。

1.我が国行刑の実情について(安部譲二氏及び花輪和一氏からのヒアリング)

○宮澤(弘)座長 それでは議事に入ります。
 最初に,刑務所での生活を体験されたお二方から,現実の刑務所の生活についてお話をいただきたいと思います。
 まず,昭和50年秋から54年まで府中刑務所に在監し,この経験をもとに「塀の中の懲りない面々」「塀の中のプレーボール」等々,数々の刑務所に関する作品を書かれております安部譲二さんから15分程度お話をいただきたいと思います。安部さん,どうぞよろしくお願いいたします。
○安部氏 安部譲二です。どうぞよろしくお願いします。
 私の日本での服役経験は,昭和54年で,幸いなことに最後になりました。もう今から20数年前になります。ですから,私が今からお話しできることは,昭和54年秋までの日本の刑務所はどういうことであったかということで,考えてみますと,私の初犯は昭和30年に18歳で,今は廃所になりました大津刑務所にぶち込まれたのが初めてです。そしてそのころの処遇を考えると,昭和41年にぶち込まれたときには,細部が幾つか変化していました。そして,前刑の昭和50年からの服役では,また更に幾つか,昭和41年とは変わっていたところがあります。例えば,昭和30年の刑務所には,新入の検査をするところに大きなはかりがございまして,17貫500目のところに赤い線が入っていて,その線を超えると,支給される飯が一等食,大きくなりました。私は昭和41年に刑務所に行かなければならなくなったときに,入所のときに17貫500目を過ぎているように未決監でコントロールしたものです。ところが,行ってみますとはかりがありません。いつからこれやめたんだと怒鳴りました。そしたら,正確には分からないけれども4,5年前だと言われたのを覚えています。
 そういうふうに,これは一例ですけれども,そういう非常に細かいところではいろいろ変わっています。そして,これはもう,作家になるときに,さらし放題にさらした恥ですから,今さら隠すことも何もありません。申し上げますけれども,私は海外でも何回かの服役経験がございます。一番最近で行ったのは,作家になってから,ある出版社のそそのかしにのって,「海外版 塀の中の懲りない面々」をやれということで,カリフォルニアのチノー刑務所に2週間,体験入所をいたしました。囚人たちには,サンフランシスコでホールドアップをやって,5年くらったというふれこみです。看守たちはみんな,私が体験入所の日本の前科者の作家であるということを承知していましたけれども,アメリカの看守はとても芝居気のある連中で,新入の検査では私を丸裸にして尻の穴まで調べました。そして,エイズ病棟に1,700人のエイズ患者のいる刑務所で2週間過ごしたんです。何と,驚いたことに,刑務所の中には囚人がコレクトコールで外部にかけられる電話機がずらりと並べてありました。そして,相手がコレクトコールに応じないと通じませんから,癇癪を起こした懲役が投げつけるので,とっても頑丈な電話機が備えてあったのが,私にはとってもおかしかったんです。
 日本の刑務所は時代によって,いろいろ細かいところが変化しますけれども,諸外国の看守と受刑者の関係における大きな差は,日本の看守は一たん入所した懲役の自由をすべて奪うというところから始まっているのです。一遍すべての自由を奪って,そうしておいて,従順にする懲役にほんの少しずつ自由を返してやる。それによって支配しコントロールしていくのです。ですから,刑務所に入った懲役が何もとがめられずに自由にできることは二つしかないといいます。それは,息を吸って吐くことと,夜寝て夢を見ること。それ以外は全部反則とされて,看守の虫の居所が悪ければ,鼻唄をハミングすることも,自分に与えられたパンをとっておいて舎房の窓から小鳥に投げてやることも,それから日常的な友好的な会話を囚人同士が交わすことも反則とされるのです。一遍すべての自由を奪って,少しずつ小出しに自由を戻してやる,その手口に基づいて日本の刑務所は運営されています。外国でも,厳しいことは一緒です。法律違反をした者を逃げ出さないように確実に捕まえておくためには,当然ながら厳しくなければならないのでしょう。厳しさは一緒です。けれども,人間の基本的自由というものに考えが及ぶか及ばないかの大きな差が,日本の刑務所の看守と外国の看守との一番の違いです。
 僕は昭和54年に出所して,56年に,それまで過ごしたやくざの世界から足を洗いました。そして決めたんです。堅気の裾に加えてもらったら,もう法律違反はすべて犯すまい。なぜなら,とがめられて,もう二度と刑務所には行きたくない。日本の再犯懲役の再々犯率は,統計のとり方にもよりますけれども,90%を超えています。一度刑務所に入った者は,生きている間に必ず二回は懲役に,再度懲役に来るということです。初犯者の再犯率は毎年ほぼ50%前後と聞いています。これは最初に初犯刑務所に落ちた懲役は,その半分はずるくなったのか,改心したのか,二度と懲役には来ないのです。僕はおかげさまで,統計によるわずかな再々犯を犯さない幸運者で,ことしで66歳になりました。僕に関して言えば,堅気になった以上,もうあのように,高圧的に自由を奪われるのはまっぴらごめんです。ですから,酒を飲んで車を運転することも,喧嘩を売られそうなところへ出掛けていくことも,もう刑務所には行きたくないから,控えています。そして,このままずっと刑務所には行きません。
 何をしゃべっているか分かりませんけれども,一番申し上げたかったのは,明治41年に制定された監獄法は,多少の改定はあったでしょうが,21世紀を迎えた今日でも厳然としてあるという事実です。いろいろな無理があります。ひどさがあります。どんなに日本の刑務所の管理が非人道的であるかということの証明は府中刑務所にあります。府中刑務所には,日本の法律に違反して実刑判決を言い渡されたすべての外国人懲役が収容されています。私は前刑では,英語の片言をしゃべることから,その連中の係を仰せつかりました。何と,韓国人以外の外人懲役は,カンカン踊りという,朝夕繰り返された裸検診もなければ,髪の毛を坊主刈りにされることもなく,寝具も分厚いマットレスで,おまけに食べるものまで外国人懲役は別の食堂で,日本人懲役とは違う動物性たんぱく質の豊富なものを与えられていました。それはなぜでしょう。日本人の懲役にしているようなことをすれば,大使館から抗議が来るからです。僕はほかの国の刑務所も知っています。ほかの国の刑務所では,国籍によって処遇の違うことは全くありませんでした。これは大げさにいえば国辱的なことであると,私は思っています。
 確かに法律違反を犯した罪人です。いいものを食わせてくれ,自由をもっと与えてくれ,そうは言いかねるのです。それに乗じて,外国人の懲役にできないような処遇をしている法務省は国辱的なことを,ほうかむりしてやっている。きょう,森山法務大臣がお見えでないのは残念です。
 これだけ申し上げて,あとは最近の刑務所を御存知の花輪さんに代わります。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 次に,去年映画化され,『キネマ旬報』という映画雑誌で第2位を獲得した話題の映画「刑務所の中」の原作を書かれました花輪和一さんからお話を伺いたいと思います。
 花輪さんは,平成7年10月から平成9年9月までの間,函館少年刑務所に在監し,そのときの経験談を「刑務所の中」に書かれておいでになります。なお,花輪さんは,御自分でお話しになられるのが苦手で,対談方式で話を,意を伝えたい,こういうお話でございます。こういう御希望でございますので,成田座長代理から対談方式の質問をしていただいて,それでお話し合いをしていただきたいと思います。花輪さん,どうぞよろしくお願いいたします。
○花輪氏 始めまして,花輪です。今回,このような席にお招きいただいて,誠に有り難いといいますか,恐縮というか,何と申し上げていいか分かりませんけれども,委員の先生方で疑問の点がありましたら,何でも御遠慮なく御質問ください。可能な限りお答えしたいと思います。
○成田座長代理 私,座長代理を務めています成田でございます。きょうは私が質問者ということでよろしくお願いします。
 先生の本,読みました。
○花輪氏 ありがとうございます。
○成田座長代理 3年の実刑判決を受けられたということですが,差し支えなければ,どのような事件だったのですか。
○花輪氏 銃砲刀剣類不法所持と火薬類取締法違反でした。
○成田座長代理 どこの刑務所でしたか。
○花輪氏 最初は札幌刑務所で違法なことをしまして,そこでちょっと懲罰を務めてから,函館に移監になりました。
○成田座長代理 矢継ぎ早にどんどん御質問いたしますけれども,寒さ,暑さや部屋の広さなど,刑務所での生活環境についてはいかがでしたか。何か困った点や改めた方がいいと思われることはありませんでしたか。
○花輪氏 いや,全然なかったですね。強いて言えば,2級者に貸与される2級者ボックスというものがありまして,布団を敷いて眠っていて寝返りをうつと,それが手に当たる場合があって,ちょっと邪魔だというぐらいでした。ほかには何も感じたことはなかったです。
○成田座長代理 実を申し上げますと,私たち,この委員の中で何人かの方々と,この間見学に行ったんです。
○花輪氏 ああそうですか。函館にですか。
○成田座長代理 いえいえ,府中です。そのときに,非常に清潔でクリーンな感じがしましたし,外から見る部屋はいいなと。それと,食事も全く同じ食事をしたのですが,かなりいい食事だという思いをしました。
○花輪氏 現在の自分の食生活と比べたら雲泥の差ですね。
○成田座長代理 やっぱり,いいですか。
○花輪氏 バラエティーが豊富ですよね。
○成田座長代理 本を拝見しますと,甘い物が少ないと。
○花輪氏 そうですね。甘い食べ物のことを「甘しゃり」と言うのですけれども,例えば自分で仕事をしているときとか休憩時間,不意に自分で自分に質問するんですよ。「今自分は何を思っているか」と。そしたら,答えはいつも,「甘しゃりが食いたい」,ただそれだけですね。
○成田座長代理 それと,刑務所の中で移動のときに行進をする,こうしなければならないという規律,秩序があるようですけれども,これについてはどのようにお感じになっていますか。
○花輪氏 最初は全員手足がそろわなくて戸惑いますよね。強いて言えば軍隊みたいな行進なんだけれども,最初は手足がそろわなくて困りますけれども,慣れてしまえば,それでも別に不都合はないという気がしました。
○成田座長代理 安部先生のお話を伺うと,もう自由が完全に束縛されているということですが,やはりそういう面は強いですか。
○花輪氏 刑務所の心理的なものを見ているのではないかと思いますね。例えば,イライラしているとか,むしゃくしゃしている精神状態の場合,受刑者はやはり行動に出ると思うのですよ。行進するときも,それが体に出て,手足がそろわないとか。それを見つけて,受刑者の行動を見て精神状態を早期発見して,工場に出さないようにするとか。工場には機械など,私の場合は木工だから彫刻刀などがありまして,凶器にもなりますからね。そういう点にすごく気を遣って,行進なども厳しくやって,精神状態を注意深く見ると,私個人的にはそう感じました。
○成田座長代理 著作に,受刑者同士で連絡先を教え合ったということで,軽へい禁というのですか,こういう懲罰がありますが,これはどのようにお感じになりますか。
○花輪氏 すごい体験をしたなという気がしましたね。刑務所でないと,ああいう体験はできないと思います。私の場合は10日間の正座でした。正座といっても,疲れるとあぐらをかいていいし,あぐらをかいていて疲れると,また正座と。それを10日間,交互に繰り返す。でも,ここで,娑婆で,そういうふうに一日座り続けろと言われても,できないですよね。1万円あげるからやれといってもできない。やはり刑務所でなければ,ああいうことはできなかったから,すごくいい体験じゃなかったかなと思いますね。
○成田座長代理 刑務所の規則のうちで,守るのが辛かった,あるいはこういう規則は改めてもらった方がいいのではないかというようなことはありませんでしたか。
○花輪氏 私個人は全然ないんですよね。他の受刑者はあると思いますけれども,私個人には何もないのですよね。申し訳ないのですが。
○成田座長代理 先生は木工所で鎌倉彫りをおやりになったと。こういう刑務作業というのはあった方がいいと思いますか。
○花輪氏 あった方がいいのではないですかね。部屋の中に入った受刑者はやることがないですから。仕事がないと,すごく手持ちぶさたになるし,退屈しちゃうのではないでしょうかね。例えば,アンパンを1個あげるから,残業を2時間やらないかと言われたら,大概の人がやりたがると思いますね。それぐらい甘しゃりが不足しているというか。他にやることもないですし。
○成田座長代理 この作業の内容,刑務作業の時間,作業賞与金等々をもらって,どういうようにお感じになりましたか。
○花輪氏 額が少ないと言えば少ないと思いますけれどもね。人間,みんなエゴがあるから,お金の額は多い方がいいのではないかなとは思いますけれども。ただ,キャピックというのがあって,それがどのぐらい収益を上げているか,私は不案内ですので,作業賞与金が多いか少ないかについては何とも言えないですよね。
○成田座長代理 それから医療関係ですけれども,刑務所内で治療をお受けになったことはあるんですか。
○花輪氏 足にできものができて治療を受けました。
○成田座長代理 私,この間行ったところでは,割と医療施設が整っておりまして,そういうものを見て,なるほど,そういう点では変わってきたのかなという思いを強くしたものですから。
 それから,工場担当あるいは刑務所の職員の方々にはどのような印象を持っておられますか。
○花輪氏 工場担当の人,職員,刑務官ですね,受刑者から「おやじ,おやじ」と言われていますけれども,一生懸命やられていると思いますね。ささいなことでもないがしろにしないで,本当にいいじゃないというくらい,真面目にやられていますね。例えば,爪切りを借りる場合,工場でないと借りられないのですよね。工場のお昼休みだったかな,爪切りにも2種類あって,木の札がついていて,足と手の札がついていて,足用と手用の爪切りがあるわけですね。手用の爪切りで足の爪を切るとだめだし,足用の爪切りで手の爪を切るとだめだし,工場の担当台の前で爪切りを借りるときには,許可を受けてから借りて,爪を切っている人がいて,自分がちょっと用があって,話しかけながら,ついうっかり,その爪切りを使ってしまったんですよね。それをおやじが見つけて,「花輪!」と言われて担当台の前に行って,許可を受けずに爪切りを使ったろうと怒られました。そのくらいはいいんじゃないかと思いますけれども,そういうふうに真面目にやっていますよね。
○成田座長代理 今,「おやじ,おやじ」と言われますが,それは何ですか。本当にそういう気持ちを持たれる。人によりけりですか。
○花輪氏 自分も初めて体験したのですけれども,まず警察の留置場で,年のいった被告が,若い警察官に水をもらうときに,「おやじさん,水ください」とか言っていて,何でおやじさんなのかなと不思議に思っていましたけれども,みんな,拘置所でも担当のことをおやじと言いますね。「おやじさん」と言われた刑務官は気を悪くするのかなと思ってみていたら,別に気を悪くしなくて,だから何で「おやじ,おやじ」と言うのか,自分ではよく分からないですね。やっぱり親しみがあるのかもしれないです。
○成田座長代理 私ども,この行刑改革についてどのようにしたらいいかということで,皆さん方お集まりになって,今日お話を伺ったのですが,安部さんの話とかなり,時代差があるのかどうなのか,安部さんの場合は,日本の刑務所なんてこんなことはないぞと。
○花輪氏 安部さんの言われていることも正しいと思いますね。自分の場合は何なのだろう。分からないですね。ただこのように,先生方がお集まりになって一生懸命やられているのだから,すごく尊いことだと思いますけれども,どういうふうに刑務所を変えればいいのかというのは,よく分からないですね。やはり刑務所は厳しくなければ刑務所とは言えないだろうし,人間は欲があるから,一つあげれば,もっと欲しい,もっと欲しいと,際限なくいってしまうから,線を引いてこの辺というものを決めないと,刑務所というのは厳しければ厳しいほどいいのではないかなと,私は思いますけれどもね。
 自分が刑務所に入る前に,刑務所の中は悪いことをした人,悪事を働いた人が入っているところだから,オーラがどろどろしているのではないかと思って入ってみたら,最初に拘置所に入って驚いたのは,何か違う。何というのかな,クリアというのかな,割とすっきりとした感じがしましたね。札幌刑務所に行ったら更に空気がクリアというのかな,例えば高い山に登山して,だんだん高く上っていくと,お花畑がありますよね。そういうところはすごく空気が澄んでいて,きれいで,澄み渡って,クリア,そういう感じが札幌刑務所ですごくしましたね。例えば,朝,工場に出されるときに,座って正座して静かにしているわけです。そうすると,どこか遠くの方の工場で,別の舎房から工場に受刑者が出される際の号令などが聞こえるわけですね。例えば「気をつけ,前へ倣え,前へ進め」というのが,「オーエ,ウーエ」というふうに聞こえるわけですよ。それで,イチ,ニ,イチ,ニと受刑者が移動していく。それを聞いているときなどは,すごくクリアだなと思って,何でクリアなのかな,今でも分からないです。だからそこが想像していた刑務所と違っていました。
○成田座長代理 どうも,長いことありがとうございました。
○宮澤(弘)座長 成田座長代理,ありがとうございました。
 それでは,お二方,いろいろお話をいただきましてありがとうございました。これから,お二方からいろいろ承りましたので,それらに関係いたしまして,お二方に御質問があればどうぞ,遠慮なくお求めいただきたいと思います。
○江川委員 質問ですが,二つあるのですが,両方にお伺いできればと思います。
 一つは,刑務所にいらっしゃる間に,自分のやった事件のことについて考えたり反省したり,そういうような時間や機会というのはありましたでしょうか。
 もう一点は,いろいろな作業をされていたと思うのですけれども,その作業というのは社会復帰に役に立ちましたか。
○宮澤(弘)座長 どうぞ,お二方,自由に質問に対してお答えいただきたいと思います。
○安部氏 僕の場合は,服役している間に自分の罰せられた犯罪のことについて考えもしました,研究もしました。けれども,そのときには,今とはステータスが違います。僕はやくざでしたから,法に触れて刑務所に送られるというのは,いわば覚悟の上だったんです。ですから,考えたことは,今回はあえなくつかまってしまったけれども,今度は何とかうまく目をくぐってやろうと思うだけでした。とっても程度の低い,恥ずかしいことですけれども,僕は正直に言って,それしか考えませんでした。
 作業の経験が足を洗うときに役に立ったかということは,僕の場合は意外にも大変役に立ちました。僕も花輪さんと同じように木工所で働きましたので,去年亡くなりました私の師匠の山本夏彦は,長く『室内』という家具とインテリアの専門誌を発行していまして,それが日本で一番歴史のある専門誌ということで,刑務所の木工所が定期購読しておりました。昭和30年代のころから並んでいまして,それを暇にあかせて読んで,「おお,何てすごいエッセイを書く方よのう」と,舌を巻いていたら,昭和58年に突然お電話をいただきまして,「君,うちで連載をしませんか」と。私は「いたします。いたします」。それが僕の初めての連載でした。そして,あれは間違いなく,刑務所の木工所でずらりと並んでいた『室内』という雑誌のバックナンバーを読みふけった結果,山本夏彦を知り,そして弟子にしてもらったんです。ですから,僕にとっては府中の木工所で働いたことは意外な結果を生んだので驚いています。
○花輪氏 反省時間はいっぱいありますよね。拘置所でもありますし,刑務所の中でもありますし。時間はたっぷりありました。
○江川委員 時間の問題ではなくて,例えばカウンセリングだとか指導だとか,そういう機会があったかということなんですが。
○花輪氏 カウンセリングとかは,食堂に宗教家の名前などいっぱい張ってありましたから,心に苦悩があって,カウンセリングを受けたいと思えば,工場担当,いわゆるおやじに申し込めば,それはできると思いますね。
 作業が役に立ったかというのは,私は木工所で鎌倉彫りをやっていまして,鎌倉彫りは彫刻刀でばらの花とかいろいろな花をボリュームをつけて彫るわけですね。見本があって,最初は簡単なものから練習して,20日ぐらいするとだんだん彫れるようになって,みんな本当にうまく彫れるようになりますね。もうプロ級になりますよ。だから,出てからこれは生かせばいいのになと思うけれども,できないんですよね。なぜできないかというと,自分のオリジナリティーがないから。自分で好きな花をスケッチして,自分でデザインして,このように彫ろうという,そこがあればみんなプロとして通用するぐらい,彫る技術はすごくありますね。
○江川委員 これを彫りなさいというものをやるわけですか。
○花輪氏 そうです,型紙があって。
○菊田委員 花輪さんにお伺いしたいのですが,本を読みました。非常にリアルな本で本当に驚きましたけれども,頭の中で描いたものを出てから書かれたというふうに聞いていますけれども,書く上で資料を持ち出すとか,いろいろ苦労がありましたら,その点についてお伺いしたいのですが。
○花輪氏 拘置所でいっぱいスケッチして,札幌刑務所で,検査で,これはだめだと言われて,切り取られてしまいまして,だから,もう刑務所の中では絵を描いてはいけないのだなというのがありましたから,描きたいと思いましたけれども描けなかったですね。だから一生懸命記憶して,出てからすぐ,忘れないうちにノートに書きました。でも,どうしても分からないところがあって,例えば畳の敷き方ですね。あれはノートに分からないように書いて出てきました。
○菊田委員 つまり若干の資料は隠して持ち出したということですね。
○花輪氏 いえ,見ても分からないように,検査されても分からないように。例えばノートは反対側にして,上下を逆にして,簡単に何が書いてあるのか分からないような感じで,畳の敷き方とか書いてきましたね。
○菊田委員 それはもっと堂々と持ち出せるようにすべきだったとか,あるいは持ち出せたら,もっといいものが書けたという思いはないですか。
○花輪氏 それはもう当然ですよ。もう自由に書いていいということであれば,もっとすごい,いいものが書けたのになというのが残念ですね。非常に残念です。
 それから,安部さんの話にも出ましたけれども,木工所に『室内』という月刊雑誌の1年間のバックナンバーがありまして,普通,本を読まないような受刑者も,『室内』だけは借りて読むんですよね。何でみんな借りて読むのかなと思ったら,安部さんの連載しているエッセイが目当てで,みんな読んでいましたね。
○広瀬委員 安部さんにお尋ねしたいのですけれども,府中で受刑者同士のいじめを目撃したり,いじめられたことがありましたか。
○安部氏 どの程度のいじめをお考えになっているのか分かりませんけれども,いじめそのものは何回も目撃したり,自分自身が経験しました。
○広瀬委員 恐らく,花輪さんが,必ずしも刑務所は厳しくない,厳しさが大事だ,秩序が大事だと言われたのは,恐らくいじめだとかそういうものがあって,そういうものを防止するためには,相当厳しい監視が必要で,歩調をとって歩かせるのも,そうした団体の規律の中で個人的ないじめを防止していこうという,そういう政策かなという気もしたのですが,その辺はどう思いますか。
○安部氏 多少似ているところがあるのは,私立学校の運動部的なものがあるんです。それはやくざの組織にも共通することで,与えられた命令を何にも考えずに反射的に従うと,そういう習慣を私立学校の運動部でも新入生にしています。やくざの組織でも,新しく入ってきた者に同じ仕込み方をします。刑務所も全く同じです。ですから,上の者の命令に何も考えずに反射的に従う人間を作ろうとしているのだと僕は思っています。
○広瀬委員 もう一つお聞きしたいのですが,独居房に入れられている人たちを見ていますと,みんなと一緒のところに入れていたのでは,他の人たちに随分迷惑をかけるのだろうなというような人も随分おりました。事実どうなんですか。雑居房で,こんなのと一緒ではかなわんなというようなケースがかなりあるんですか。
○安部氏 僕は一つの代表で,よほどお願いしないと雑居房には移してもらえない懲役でした。それは私が,自分では分かりませんけれども,大変どうも寝言を言うようなんです。それは女房に聞いても,そう言うんですから,寝言を言うんでしょう。それから,僕は,他人はどうか知りませんけれども,このごろ回数は減りましたけれども,やくざのころは,とてもうなされることが多かったんです。それは絶叫して目が覚めたりしたことがしばしばありました。雑居房の連中にとっては,きっと迷惑だったんでしょう。僕は夜間独居という,昼間は工場でみんなと一緒に働き,夜寝るときには独居というのが,前刑では3年ぐらい続きました。だから,僕の場合は確かに雑居に入れたらみんなの安眠が妨げられたり,不愉快の種になったんでしょう。いろいろなやつがいます,ほんとに。腋臭のやつもいれば,いろんなやつがいます。刑務所のことを一昔前には「寄場」と言いました。方々から人が寄せ集められてくるところです。いろんなやつがいますから,本来は,みんな独居にした方が,僕はいいと思います。行ったことはありませんけれども,初犯刑務所の黒羽刑務所は,独居房が非常に多いと聞いています。
○広瀬委員 どうもありがとうございました。
○久保井委員 お二人にお尋ねしたいのですけれども,名古屋の刑務所で刑務官による暴行事件が非常に不幸な結果をもたらして,そのために,この改革会議がスタートしたのですけれども,ああいう不幸な事件が起きたことについて,その原因はどういうところにあるとお考えか。あるいはまた,そういう事件をなくするためには,どういう方法をとったら改善されるか,何か御意見がありましたらお尋ねしたいと思います。
○安部氏 僕自身は,ひどく悪い看守に出くわしたことがありません。それは僕が懲役に来てしまったら,できる限りの我慢をして,早く出所することだという考えを持っていたので,言ってみれば卑怯な,官に迎合する懲役だったからだとも思います。同囚の話によると,たとえ半分に割り引いて聞いても,極悪非道な看守がいることは確かです。たまたま,名古屋刑務所で発覚したような事件は,あって不思議ではありません。僕がそういう目に遭わなかったのは,僕の卑怯な性格によるものだと思っています。
○花輪氏 名古屋刑務所のことは自分は分からないですね。ただ,死亡した受刑者はどういう受刑者だったのか,それを知らないと何とも言えないと思いますね。だから,その受刑者をよく知っている受刑者から,あの死亡した受刑者はどういう受刑者だったんですかと聞いてみないと分からないと思いますが,自分が思うに,その死亡した受刑者は,自分で自分を憎んでしまったんではないでしょうかね。自分で自分を憎んでしまって,もう生きていてもしようがないから死にたかったというか,それで死んじゃったんではないかなというふうに思うんですけれども。もし死にたくなければ,その状況を切り抜ける道,助かる道は幾らでもあると思うんですよ。例えば,看守から暴行を受けた場合に,死にたくなければ,土下座して,わんわん泣きながら「すいません,勘弁してください」と言えば,人間だから,もうそれ以上はできないと思うんですけれどもね。何でそういうふうにできなかったのか,そこがすごく不思議です。
 あと,刑務所の中のいじめは,工場の担当のおやじが,今娑婆でいじめがすごく問題になっているから,この塀の中でのいじめは絶対許さんぞと,すごく厳しく言っていましたね。いじめがあったというか,雑居房で前から入っている古い人がいて,新入が入ってくると,結構命令的な押しの強い古参の受刑者が新入に,本を買え買え,この本を買え買えとかいって命令するわけですよ。それが嫌で,新入がおやじに,「先生,いじめられています」と言ったら,警備隊によって,目の前に仮釈放が迫っているんだけれども,懲罰房に引っ張られて仮釈取消になったというのを見ました。
 あと,雑居房で同調できない受刑者は,例えば自分が体験したのは,いびきのすごい人がいましたね。いびきのすごい人は,工場の担当に申し上げると,そのことは上に諮ってみて善処するということになって,2,3日してから,そのいびきの人は独居房に移されました。
○大平委員 弁護士の大平です。府中に服役されていました安部さんにお尋ねしたいのですけれども,単刀直入にお伺いします。現在,担当制についてどう思われますか。刑務官が担当制になっていますよね。だから「おやじさん」と呼んだり,「担当さん」と呼んだり,自分の担当の刑務官というのは決められますよね。なぜこういうことを聞くかといいますと,安部さんが,担当の顔色ばかりを見ていた,迎合するようなことをしていたとおっしゃいました。先ほど花輪さんもおっしゃいましたけれども,年の若い人に対して「おやじさん」と呼んでいる。私はこれはもう,弱者が強者に対する迎合,へつらいでしかないと思うのですよ。そういうふうになる原因について担当制が関係あるのではないかと,いろいろなことを思うものですから,お考えを聞かせていただきたいのです。
○安部氏 担当制度があるから看守のことを「先生」と呼んだり「おやじさん」と呼んだり,担当制度があるから懲役が官吏におもねるようになる,へつらうようになる,迎合するようになるとは僕は考えません。なぜ看守が「先生」と呼ばれ,「おやじさん」と呼ばれ,それが正式な職名でないにもかかわらず,とがめられないか。そこに本質的な問題があると僕は思います。懲役がいなくなった,応報刑から教育刑に変わって,みんな受刑者になったんだから懲役なんてノートに書くなと,教育課の看守は言います。けれども,それが日本の役人のいつもの手口で,「全滅」を「玉砕」と言い代えたり,「敗戦」を「終戦」と言い代えたり,更には「懲役」を「受刑者」と言い代える,日本のお役人の小手先の手口なんです。ですから,僕たちが裁判所で言い渡されたのは,懲らしめ働かせる懲役刑なのに,なぜ「懲役」ではなくて「受刑者」に変わったんでしょうか。そういう小手先の名称の変更をして,守り続けなければいけない看守の,何と申しましょうか,権威と申しますか,そういうことに懲役の迎合とおもねりと,そういったものに発生原因があると僕は考えます。
○宮澤(弘)座長 お二方に対してまだ御質問もあるかと思いますが,先がございますので,大変恐縮でございますが,お二方に対する質問はこれで終わりにいたします。どうも,御多忙のところおいでいただきありがとうございました。

2. 我が国行刑の実情について(府中刑務所処遇部処遇部門看守部長持田健一氏及び龍谷大学客員教授鴨下守孝氏からのヒアリング)

○宮澤(弘)座長 次に,府中刑務所で第一線の工場担当をしておいでの刑務官である持田健一看守部長,そして矯正局総務課長補佐等として監獄法関係法令の改正作業に携わり,その後,仙台,大阪矯正管区長を歴任され,現在,龍谷大学法学部客員教授をなさっておいでの鴨下守孝さんからお話を伺い,その後,お二方に対する質疑応答を行いたいと思います。
 まず,持田看守部長から15分程度でお願いいたします。
○持田氏 府中刑務所で工事担当をしております持田と申します。
 私は,昭和61年1月に看守を拝命しまして,警備隊というところに配属され,昼間は面会,診察の連行,夜間については病舎,また一般舎房の巡回視察等の勤務についておりました。その後,F級(外国人受刑者)の図書室,F級の新入訓練係等,外国人受刑者の処遇を約5年ほど経験し,その後,現在所属する工場区へ配置変えになりました。ここでは,9箇工場ありまして,その工場の工場交代を約2年半。その後,木工場の副担当を約2年半,そして養護工場の担当を約1年半,経験しまして,昨年3月に現在の工場を受け持つようになりました。
 現在,私が受け持っている受刑者は74名です。うち25名が外国人受刑者。この中には日本語がまるっきり分からない者,また,片言程度の日本語しか分からない者も含まれております。日本人受刑者は49名おりますが,その中には暴力団関係者が17名,覚せい剤等,薬物による後遺症を有する者が19名,好訴性と呼ばれる受刑者が2名入っております。
 また,74名のうち,その6割以上が当所で規律違反行為をして懲罰を経験し,中には工場を転々と変わっている者も含まれております。その中で日々勤務をしているわけですが,その内容を簡単に話させていただきます。
 まず,朝,彼らを工場へ連れて行き,作業を始めます。作業が始まると役席を回り,その日の受刑者の顔等を見て,体調の変化,また心情の変化を確認します。その後,彼らから出願のあった願せん,これに受刑者の指印をとり,帳簿に記載の上,事務室に回します。受刑者からの出願は日によって量も内容も異なります。投薬や診察また処遇に対する不満等,様々なものがあります。多い日では30件以上,また,一人で10件以上の出願をしてくる者もおります。事務処理としては膨大な量を抱えております。
 その他,担当保管品,彼らが使用する日用品を私が保管しているわけですが,その担当保管品の払い出し,また翌日の出願のための願せん受付。また,そうしている間にも,彼らのトイレの時間になり,事務処理をやめ,トイレの前での立会,また,昼食,副食の配食。この副食の量が均等に配分されているか,そういったことを確認するために食堂に入り,また入浴,運動等,連呼で工場全体を移動させたり,また作業中の規律違反行為の摘発。休憩時間等になりますと,派閥構成がないかとか,いろいろな動静を把握し,また,相談を持ちかけてくる者の心情把握等も行っております。月単位で申しますと,その他に行刑成績の評価,作業等工の審査等も行っており,受刑者が希望する日用品の購入手続も行っております。
 ここ何年かで収容人員が増加して,私の受け持つ工場も人員が増加しました。管理定員は60名ですが,先ほども申しましたとおり,現在74名の受刑者がおります。最高で87名まで受け持っておりました。数年前から予想されていたことですが,職員の間では,80名を一人で見るのは無理じゃないか,80名過ぎれば職員は2人になるだろうというような話もしたことはありましたが,実際には一人で受け持つというのが現実であります。しかも,増えるのは処遇困難な受刑者が多く,日本語が分からない外国人受刑者,また粗暴性や好訴性を有する受刑者等がほとんどです。
 そのような中でやはり大変なのは,増える事務処理を行いながら,彼らの動静,また心情把握をすることだと思います。この事務処理については,その日どうしても行わなければならないという事務処理です。その事務処理をしている中で,作業中に職員の目を盗んで規律違反行為を行う者,また,休憩や運動中に暴力団関係者による派閥形成が行われていないかとか,その辺のことも,細かい動きをチェックして動静を把握するように努めております。しかし,短い時間ですので,全員の動静また心情を把握することは,はっきり言ってできておりません。中には不安そうに相談事を持ちかけてくる受刑者もおり,できる限りの助言やアドバイス等を行っているのですが,やはり私の経験不足,また技術不足ということで,彼らに的確なアドバイス等ができているとは言えません。
 しかも,私としては激励の意味を込めて,受刑者の肩をポンと叩いたことが,それを見ていた他の受刑者から,職員が暴行しているというように訴えられたこともあります。そういう難しい中で,今後彼らの心情を把握する上で,もう少しそのやり方等を深く考えて,私自身がより的確なアドバイス,助言等を行えるように,これからもっと経験をして,また,処遇の技術を向上させていかなければいけないと思っております。
 こういう毎日の勤務の中にも,達成感とも言える,やりがいを感じる部分もあります。それは,懲罰を繰り返し,私の工場に来た者ですが,その後,軽微な反則は別として,再び私の工場から懲罰を受けることなく満期まで就業し,社会復帰していった者がいました。その者から,社会において正業につき,今こういうふうにして頑張っていますという一枚の葉書をいただいたときには,やはりうれしく思いました。遠くは英国からの手紙であり,これは懲罰を何度も繰り返し,私の工場でもいろいろな問題を起したF級受刑者でしたが,ほとんど日本語は通じず,そのF級受刑者は英語で話すものですから,私は英語は得意な方ではないので,何を言っているのか,余りよく分からないといった毎日を過ごしていましたが,やはり身振り手振りを交えて,片言の英語でも言っていたことが,そのF級受刑者の心には通じたのかなと,そういう手紙を手にしたときに少しうれしく思いました。
 しかし,残念なことに,こういったことは少なく,ほとんどの者が懲罰を繰り返し,私の工場からいなくなり,また,出所しても戻ってきてしまう。戻ってきても,「また戻ってきました。またお世話になります」という言葉を聞いてしまう。これは非常に残念に思っております。
 収容人員が増えて規律違反も増えております。毎日のように,現場では非常ベルが鳴り,受刑者同士の喧嘩,職員への暴行等の事案が発生しております。こうしている間にも,私の工場で喧嘩が起き,非常ベルが鳴っているかもしれません。数年前まで,工場勤務者は手錠,警棒等を携帯しておりましたが,現在は何も持っておりません。いざ,喧嘩,職員への暴行等が起こったとしても,この身一つで制圧をしなければならないのです。そういった面で,今後,衆情が悪化した場合,非常に不安に思うこともありますが,そういった手錠,警棒等を持っていなくても,何とかその場を止められるように,気持ちを強く持って勤務をしております。
 このような現状ではありますが,日々,上司から,また現場の工場担当を第一線から退かれた先輩から,気力が湧くようなアドバイスや言葉をいただいておりまして,今後,何名の,またどういう受刑者を処遇していくことになるかは分かりませんが,工場担当として,より高いレベルの処遇技術を身につけるべく日々努力をして,今後も勤務を続けていきたいと思います。
 以上です。
○宮澤(弘)座長 次に,鴨下さんから,監獄関係法令改正の際の基本的な考え方等についてお話を承りたいと思います。なお,監獄関係法令改正の資料につきましては,お手元に刑事施設法案の概要のペーパーなどを鴨下さんのレジュメとともに配付しておりますので,御参考にしていただければ幸いだと思います。それでは,鴨下さん,20分程度でお話をお願いいたします。
○鴨下氏 ただいま御紹介いただきました鴨下であります。先ほどの紹介の中にもありましたように,私はこの3月末,37年間の刑務官生活を終了しまして,現在は大学で矯正関係の講座を受け持ち,あるいは中央研究所というところで矯正関係の研究を続けている者であります。37年のうち17年間は,法務省において監獄法改正作業に携わらせていただきました。年代でいきますと,昭和44年から平成6年までの間であります。言うなれば,私の青年期,壮年期の大半は監獄法改正作業に捧げたことになります。しかし,残念ながら,法案は国会に上程され,衆議院法務委員会で各党二巡の審議が終わったところで廃案になってしまいました。今からでは遅いですが,「青春を返してもらいたい」と叫びたくなるような思いであります。
 それはともかくといたしまして,私は,法案が廃案になってから現場に戻りまして,累犯の府中刑務所も含めて6施設の所長を経験した後に,仙台,そして最後は大阪の管区長を務めて,刑務官を去りました。その間,私は,法改正で実現できなかった被収容者の処遇の改善と職員の勤務体制の改善に,現行法令の枠という限界はありましたけれども,勤務した施設で全力を挙げて取り組んだつもりでおります。ところで,現在問題になっておりますいろいろな問題,その詳細は私は把握しておりませんが,なぜ起きるのかということについて若干申し上げたいと思います。一番の根本的な問題は,レジュメにも書かせていただきましたように,現行の監獄法は明治41年制定,施行という,余りにも古い法律でありまして,被収容者に保障されるべき権利自由,あるいは受刑者処遇制度の中身,そして,行刑施設の管理運営に関する中身についても明文の規定が全くないか,あるいは極めて不十分であるために,現在のように一般社会の権利意識あるいは被収容者の権利意識,そういったものが強まる中で,適切な処遇の実施が非常に困難になっているということであります。これを補うために,法務省は多くの訓令,通達等によって規制を強めて,刑務官にそれを守るようにということで,手続面で指導を行い,そして間接的に被収容者の権利を保護しようという方向で,これまできているのでありますけれども,法律に権利保障について規定がない限り,それも限界がありまして,更に手続面の規制の強化というのは,過剰収容によって心身の負担が大きい刑務官の負担をますます大きくしているところであります。
 更に,平成6年に階級制-刑務官は階級制が現在ありますが,それを残したままに専門官制が導入されましたために,被収容者の処遇の最前線では多くの矛盾を生じさせております。規律秩序の維持は内部規則で階級制に基づく職務執行を義務づけております。しかし,他方,看守部長の一部と副看守長は矯正処遇官というものに発令されまして,被収容者処遇に当たっております。私どもの国の行刑は,欧米諸国と違いまして,先ほどの持田看守部長さんの話にもありましたように,刑務官が規律秩序の維持と被収容者の処遇の二つをあわせて行っている特色があります。このような階級制と専門官制の二重構造が,実際の場面で指揮命令系統を混乱させたり,あるいは組織的な対応を円滑,適正に行いにくくしているという現実があることは事実であります。
 第4に,刑務官の職務執行に関する権限が法的に明らかでないということが問題を複雑にしていると考えます。
 一つは,現行法は武器の使用と逃走者の逮捕以外,刑務官の権限規定を置いておりません。
 二つは,問題になりました戒具の使用あるいは保安上の取調べ独居拘禁,あるいは保護房収容拘禁でもいいのですが,それらにつきましては被収容者の処遇に変更を伴うということから,規律秩序維持に関するものであっても,所長の権限として規定されております。実際には,所長が直接行使することができるわけではありません。指示・命令を受けて刑務官が組織で対応することになるわけですが,しかし,現行法令では実体法と組織法の関連が必ずしも明らかでないために,所長の権限として規定されているものを下部の職員が実施していることが問題としてマスコミ等に指摘されているということも事実であります。
 三つは,被収容者に対する指示,命令,指導,制止,あるいは制圧,連行等の行使を所長の権限として考えることは非常に無理があります。裁判例でも,これらの即時強制的な作用,行為は,刑務官の権限として適法性,違法性の判断がなされているところであります。
 四つは,刑務官についても警察官職務執行法のように法律で,その職務執行に関する権限規定を設けなければ,被収容者の権利保護を全うすることはできないし,刑務官自体の権利保護にも欠けることになるのではないかと思います。
 今日,いろいろ指摘されているような問題発生の要因は,一部に言われているような,刑務官の資質だとか能力の問題ではないと私は思っております。こういった法制度の不備であるとか,被収容者に対する適切な処遇の実施と厳正な規律の維持,そして,被収容者の人権への配慮といったもののバランスを欠く今の状況,それから先に指摘した問題が構造的に錯綜して発生しているということで,このような状況が改善されない限り,問題の解決はないと思います。
 現行法令のもとで,いかに手続面の規制を強めても,運用上の改善の努力をしても,それはおのずと限界がありまして,社会全体の激しい変化と権利保護の意識の変化に対応していくことは非常に難しいと思います。この意味で,明治41年に制定,施行されて以降,一度も実質的な改正が行われず,犯罪者を処遇し,その権利自由を保障する法的根拠としての機能を十分に果たしていない現行監獄法令の全面改正は急務であると考えます。
 3番目に,監獄法改正の必要性について申し上げます。我が国の行刑は,明治に近代行刑を歩み始める以前の江戸時代の人足寄場の時代から,今日まで一貫して人道主義に基づき,犯罪者の改善更生及び社会復帰を図ることを行刑の基本理念として今日まできております。この改善更生及び社会復帰を行刑の基本理念とすることは,1955年の国連の被拘禁者処遇最低基準規則等の決議にも明らかでありますし,また,1966年のいわゆる人権B規約,これは日本の国内でも批准,発効されておりますが,その第10条3項にも明記されているところであります。この行刑の基本理念とされております改善更生及び社会復帰を図るための処遇を円滑適正に行うためには,適切な処遇環境と安全で平穏な生活環境が確保されなければならず,厳正な規律秩序の維持が不可欠であります。また,過剰矯正あるいは過剰な規律秩序維持作用の行使は被収容者の権利自由を侵害することになりますので,人権への配慮が当然求められております。これらの法的な安定性を確保するためにも,行刑法令にこういったことが具体的に明記される必要があると考えます。
 被収容者の権利保護の観点から,自由権の拡大保障ばかりを主張する学者や法曹人がおります。人権への配慮は,自由権にとどまるものではありません。生存権,社会権,財産権などにも配慮がなされなければなりません。また,権利自由は無制限なものではありません。社会的な義務を果たさなければ権利自由を主張することができないと一般に考えられております。一般社会では,これを公共の福祉による制約といわれていますが,拘禁関係のもとでは,収容の目的,規律秩序の維持,施設の管理運営上一定の制約があるということは,最高裁の判例が繰り返し示しているところであります。
 刑務所の中では受刑者にできる限り自由を与えるべきだと主張する,こういう人たちの主張は,刑務所の中を無法地帯にして,強者による弱者に対する暴力行為や,際限のない権利主張が規律上の紊乱を招き,欧米で頻繁に発生しているような大規模な暴動を発生させ,多数の犠牲者を生むような事態を招くことを意図しているのではないかと疑いたくなります。
 被収容者の権利保護の観点から,早期の監獄法全面改正を図る場合の主な項目としては,次のことが挙げられると思います。
 まず第1に,被収容者に保障される権利自由の具体的な内容及びこれを制限することができる根拠と限界を明らかにすることであります。
 第2に,刑務官の保安上及び処遇上の職務執行権限の内容と限界を具体的に示すことであります。
 第3に,被収容者の衣食住の生活水準の保障を具体的に明記することであります。
 第4に,未決勾留者,受刑者及び死刑確定者の法的な地位,収容の性質・目的の違いを明記することが必要であると思います。
 第5に,受刑者に対する社会復帰処遇の具体的な内容と実施方法を明らかにすることが必要であると思います。
 第6に,権利侵害に対する実効性ある救済を保障するために,民事・行政訴訟あるいは告訴,告発,人権侵害申立てその他一般国民が申し立てることができる権利救済制度の利用を制限してはならないことを確認的に明記し,更に裁決処理期間を短期間に限定した行刑内部の不服救済制度を整備し,別に,いつでも,どのような内容の苦情でも上級監督機関に秘密裏に申し出ることができる制度を整備することが必要であろうかと考えます。
 第7に,附則において,3年ないし5年ごとに改正法の見直しを行う旨の規定を設け,問題があれば改正していくことを明記すべきであると考えます。
 これらの改正点の多くは,平成5年に衆議院の解散により審議未了で廃案となって以来,再提出できないでおります刑事施設法案にも多くの部分が具体化されているところでありますが,今日的な状況を考えますと,更に修正することがあってもよいのではないかと考えます。
 監獄法改正作業のこれまでの経過と問題点について,次に述べたいと思います。
 過去の経過を見ても明らかなように,内外に法改正の必要性が叫ばれ,作業に着手しても,成案として示すと反対論が強まり,改正は実現しませんでした。その廃案となった刑事施設法案について言えば,反対の理由は,改正の内容が不十分である,あるいは規律を偏重している,あるいは代用監獄制度を存置している,あるいは弁護人の接見交通権を制限している,あるいは死刑制度の存置をしている,あるいは留置施設法案の抱合せ上程になっているなどということで,いずれも誤解に基づくものであったり,行刑法分野マターでは解決することができないものであり,どう考えても,反対のための反対としか言いようのない理由でありました。
 批判者の中には,ごく一部の出所者や不満を持ちつつ退職した元職員の偏った言い分だけをうのみにして,あたかもそれが行刑全体の問題であるかのように批判の理由としたり,時代錯誤の欧米崇拝主義から脱却できず,既に破綻に瀕している欧米諸国の行刑制度の採用を主張して反対する者もおりました。
 特に,欧米諸国において,行政分野に対する一般市民の直接関与の方法として長い歴史があります市民オンブズマン制度の行刑分野への導入というものを強く主張し,第三者委員会による不服処理制度の採用を主張する者がおりました。現在でもいるかと思います。例えば,イギリスの場合,これに該当するものとして,各施設ごとに設けられている訪問者委員会制度があります。しかし,これは,イギリス監獄法制定当時は,不服の裁決や懲罰権までも有するものでありましたが,その実効性への疑問あるいは迅速な処理の困難性などから,数度の改正を経て,現在では,施設内の視察・調査権,不服申立ての聴取権のみに縮小されております。
 また,イギリスでは,行刑法令に基づく訪問者委員会とは別に,全国組織でプリズン・オンブズマンの制度が組織化されております。これも被収容者の不服は聴取することができますが,行刑当局に勧告し,その回答,しかもこの回答は義務づけられたものではありませんが,それがあれば被収容者に通報するという程度にとどまりまして,いわゆる不服申立処理権限はないとされております。
 現に7万人を超える被収容者を1万7,000人の職員が,十分とは言えない設備のもとで,週休2日制も満足に確保されないまま,24時間勤務体制という過酷な勤務条件で被収容者処遇を行っているということを考慮し,厳しい批判を受ける問題がなぜ発生したかについて,広い視野で行刑の実情を理解し,問題点を明らかにして,一日も早い行刑法の全面改正を実現する必要があると考えます。
 つけ加えますが,これはマスコミ報道で私が知ったところでありますが,受刑者及び刑務官にアンケート調査を実施するということが報道されております。この点について,若干時間をオーバーするかもしれませんが,私見を述べさせていただきます。
 昭和62年の犯罪白書に,これは昭和61年7月に総理府が実施した,犯罪及び犯罪者処遇に関する世論調査の結果と,受刑者及び受刑者の家族を対象とした同じ内容のアンケート調査の結果が比較公表されております。これはそれぞれの意識の違いが非常にはっきりと見られまして,私は実務家として大変参考になりました。
 真に行刑改革の参考とする調査を実施するのであれば,受刑者と刑務官だけを対象とした調査に加え,一般国民,特に犯罪被害者及びその家族が行刑に対し何を期待し,どこに問題意識を持っているかを問う必要があると考えます。それらの結果の公表とあわせて,行刑改革の構想を示すことができれば,国民の理解と協力が得られるものと考えます。受刑者と刑務官だけのアンケート調査,その結果いかんによっては,刑務官と受刑者の間に不信感が強まり,行刑の円滑適正な運用に重大な支障を生じさせるおそれがあるというのが,長年の私の刑務官の経験からの感想であります。
 以上で終わります。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 今お二方のお話を承ったわけでございますが,今のお二方のお話につきまして,御質問,御意見等がございましたら,どうぞお願いいたします。
○高久委員 持田さんにお伺いしたいのですけれども,先ほどの安部さんからのお話では,これは大分前の話だと思うのですけれども,日本人と外国人とで処遇に非常に大きな相違があって,それはある意味では国辱だとおっしゃったのですけれども,現在は日本人と外国人とで取扱いに差があるのでしょうか。それは犯罪者の取扱いですね。
 もう一つお伺いしたいのは,本来60名の懲役者対象が,今70数名ということは,勤務時間というのは,個人でも結構ですし,平均でも結構ですが,皆さん方,刑務官の方は一日何時間ぐらい勤務されているのか。平均ですね。その二つをお伺いしたいと思います。
○持田氏 F級受刑者と日本人との差ということですが,ほとんどその処遇に関して差はないと思っております。ただ,宗教的な食事等の面で言えば,F級受刑者と日本人に差があるということは言えますが,それ以外には差はないと思います。
 また,勤務時間についてですが,通常,朝,私どもは7時半に出勤し,点呼を受け,現場につくわけですが,夕方の点呼が5時30分。ただ,その5時30分に退庁できるかというと,ほとんどそういう日はありません。大体早くても6時半,7時。というのは,その日どうしても済まさなければいけない,先ほども申しましたが事務処理,これがどうしても終わらない,終わらなければ翌日の事務処理に差し支えるということから,どうしてもその日残ってやらなければいけない。また,あわせて言いますと,月でいうと,先ほども言った行刑成績の評価等については,これも通常であれば勤務時間中に行うことですが,とても昼間そういう時間はなく,休日に出勤して,ひとり工場で成績をつけるといったようなことが現実であります。
○宮澤(弘)座長 先ほど,鴨下さんでございましたか,アンケート調査の御意見というか御質問がございましたが,当会議におきましては,アンケート調査を行うという方向でただ今いろいろ検討をいたしております。
○瀬川委員 鴨下さんにお聞きしたいのですけれども,これまでの監獄法改正というか,その全面改正についてですけれども,90年代のことを話をされたと思うのですけれども,80年代も山場があったというふうに記憶しているのですが,それはどうでしょうか。
○鴨下氏 法改正作業は戦後も,昭和22年からずっと続けられておりまして,何回も成案は得ております。私が44年に当省へ配置がえになって作業を行い始めてからも,47年の刑事施設法案第3次案,それから50年の行刑及び未決勾留執行法案,こういったものがありました。いずれも,改正刑法草案に沿ってか,現行刑法に沿ってかということで法案の中身が少し変わっておりましたが,その後,法制審議会に諮問するということで,骨子となる要綱案,これも私どもも携わらせていただきました。そういった長年の経過がずっと続いているのですが,公になったのは,57年に国会に上程された刑事施設法案ということになろうかと思います。
○瀬川委員 その場合に,先ほど,私,大変思い切った指摘をされたと思うのですけれども,全面改正に前回至らなかったという点について,少し強調された面があると思うのです。例えば,留置施設法案の抱合せ上程とか代用監獄制度の存置ということの批判があって,そのために改正がうまくいかなかったのが90年代だと思うのですが,今回,全面改正を,監獄法の改正を我々が考えるときに,また同じような愚を犯すといけないというか,そういう点からお聞きしたいのですけれども,90年代の改正がうまくいかなかった理由と,それまでの改正がうまくいかなかった理由,何かそこに違いがあるのか,同じものがあるのか,この点いかがでしょうか。
○鴨下氏 私の記憶では,ほとんど違いはないんじゃないかと思います。と申しますのは,現行刑法のもとでの改正法案ということになりますと,これは従来からやってきたこと,いわゆる行刑及び未決勾留執行法案は別ですけれども,それ以外の法案はほとんど現行刑法のもとでの法案ということでやってきました。ですから,代用監獄の問題ももちろん入っておりますし,御批判がありました弁護人接見交通権の問題等につきましても同じです。留置施設法案というのは突然出てきたようなものでありまして,これは他省庁の問題ですので,私どもがどうこう言うわけにはいきませんが,それは非常に唐突な感じを持たれた方は多かったのではないかと思います。そこがちょっと違うかなと思います。
○江川委員 持田さんにお伺いしたいのですけれども,先ほど花輪さんという受刑の経験のある方が,名古屋の事件について,あれは被害者の方にも問題があったんじゃないかということをおっしゃったのですね。それで,問題があるというか,大変処遇の困難な人というのは府中にも本当にたくさんいると思います。私がこの間伺ったときも,おしっこを持って立っているような人もいましたので,そういうような人たちをたくさん扱っていらして,持田さんが個人的に,名古屋の事件を聞いたときに,そのやってしまった,それは結果としては本当に行き過ぎたことになっているけれども,何か気持ちは分かるよなという感じはありましたか。それとも,あの看守は特別ひどいんだといって,関係ないという気持ちだったでしょうか。それが1点です。
 もう一つは,何人ぐらいの定員というか,持っている人が何人ぐらいだったら本当に十分にその人たちの気持ちも聞いたり,いろいろなことができるのになと,定員が幾らというんじゃなくて,理想とする人数は,持田さんはどれぐらいかというのを教えてください。
○持田氏 まず,名古屋の事件については,マスコミ報道等によってしか私の方も分かりませんし,その実情すら把握していないのが現実です。ただ,そのマスコミ報道等をそのまま考えるとすれば,名古屋刑務所の職員のことはまるっきり,どういう勤務をしているのかさえも分かりませんが,そうせざるを得ない何かがあったのかもしれないなと思う程度でありまして,実際に自分が受け持っている受刑者,今のところそこまでのひどい者はいませんし,仮にそれが府中でということも今のところ考えたことはありません。
○江川委員 「このやろう」とか思ったりしたことはないですか。
○持田氏 「このやろう」とか,そういう感情がどうしても先走ってしまうと,やはり普段の言葉にも出てしまいますから,なるべくそういう感情を表に出さないというか,そういう気持ちになることは正直ありますけれども,それを表面に出さず,適正に処遇できるように普段から考えてはいます。
○江川委員 あと,理想とする人数について。
○持田氏 人数でいえば,40名から50名というのが,通常の業務をする中で,心情把握等をするのに限界じゃないかと思っております。
○宮澤(弘)座長 大変恐縮でございますけれども,きょうは先の予定が立て込んでおりますので,お二人に対する御質問なり御意見の開陳はこの程度にさせていただきたいと思います。どうぞ御了承ください。本日はどうもありがとうございました。
 10分ほど休憩をいたします。


(休憩)


○宮澤(弘)座長 それでは,再開をいたします。
 何か御発言が……。
○菊田委員 2~3点なのですが,1点は,発言するときに,黙って手を挙げて,座長から指名いただくというような方式をとっていただければ有り難いと思います。つまり,声の大きい者だけが発言できて,(笑声)私なんかの気の弱い者が発言できないというのはちょっと困るので,(笑声)それは守っていただければと。
 第2点目は,先ほども参考人の意見がありましたけれども,私,第1回目の会議のときに,未決は除外すべきだということを申し上げたのですけれども,それは代用監獄との関係で申し上げたのですが,その後いろいろ考えてみますと,皆さんも既に共通認識でしょうけれども,受刑者と未決拘禁を離して考えることはできない,やはりこれは範疇の中に入れて,今後の議題にしていただきたいというのが2点目です。
 第3は,一昨日報道がありました,要するに今回の事件についての調査報告ですね。私は若干期待していたのですが,期待以上に,全然,何もなかったという報告でした。全国の刑務所の不祥事に対する調査報告が報告されましたですね。私は,これは,素人ですけれども,ざっと書類を見ましても,保護房でどういうことがなされていたかと,非常に我々疑問を持っている点が多々あったわけです。そういうことについて,何もなかったという報告なのですが,まあ,それは調査報告ですから,それを信じるほかないですけれども,名古屋の事件にしても,今,裁判にかかっています。それがどう決着が出るかはまだ今後の先ですけれども,最終的には,積極的に,死亡に至った事件というのは何もなかったんだということになる可能性が出てきているのですよ。私は,そういう調査自体の客観性,それから,その報告自体の中身の真偽性という点が,今ある刑務所の実態だと思えるのです。受刑者にしてみれば,我々にしてみても,臭い物にいかにふたをするかということに精力を費やすというシステム,そのことが今の刑務所というものを問題にしていると,私はそういうふうに思いますので,こういう報告というものをどうしようということではありませんけれども,一つの肝に銘じて,これをむしろ足場として行刑改革を真剣に取り組むようにしたいなという私の意気込みでございますので,御理解願いたいと思います。
○宮澤(弘)座長 この報告の問題につきましては,必要があれば後ほど事務当局の方からお話を申し上げることになろうと思います。ただ,私は,最後におっしゃいましたけれども,今,聖域なしに我々は徹底的に議論しようと言っているわけでございますから,こういう報告自身,大いにこれについていろいろ批判をし,議論をしたらいいだろうと思います。
 それから,議事進行でございますけれども,実は私は率直に申しますと,少し楽観し過ぎていたのかもしれません。と申しますのは,大抵こういう会議でございますと,御発言になりたい方は,おっしゃるように手を挙げられます。そうすると,座長なり司会者が指定をしなければ発言をなさっては困る,私ども司会者はそれを許さない,これが普通の会議でございまして,私は少し楽観し過ぎたと申し上げましたのは,これだけの方がおいでになって,しかもいろいろたくさんの問題を議論していくのだから,私が御指名を申し上げた方だけしか発言できないという非常にきついことを申し上げるよりも,恐らくその間に皆さん方の間に,お一人の方だけがどんどん沢山おしゃべりにならないで,おのずから秩序ができるのではないかと,私は今日まで期待をいたしておりました。しかし,どうもなかなか秩序もできそうもないものですから,あるいは私が御指名を申し上げた方以外は発言をしてもらっては困る,これはルールでございましょうからね。だから,そういうことであれば,そういうふうにいたしたいと思います。
○菊田委員 ありがとうございました。

3.行刑の基本的な理念・ビジョンについて

○宮澤(弘)座長 それでは次に,行刑の基本的な理念・ビジョン,かねてからそういうことを大いに議論しなければならないというお話がある点でございますが,それにつきまして御議論をちょうだいいたしたいと思います。
 まず,お手元に配付いたしました資料につきまして,事務局から説明をいたさせます。
○杉山次長 事務局次長の杉山でございます。
 本日,行刑の基本的な理念・ビジョンという大きな議論を行うということに決定いたしました。あるいは何もお手元に準備しないで御議論いただくのもよいかとも考えたのですが,何も議論の足がかりがないのではかえってやりにくいだろうということで,御用意したものが3点ございます。ただいまの鴨下先生の関係のヒアリング資料の下に置いてあると思うのですが,漢字仮名まじり文で1枚物,「監獄法運用ノ基本方針ニ関スル件」という表裏の1枚物がございます。それと,その下に「行刑の目的に関する最高裁判例」,それから,その下に「各国等における行刑の目的に関する規定」という3点ございます。この3点を一応御用意いたしました。
 これらの資料でございますけれども,まず最初の「監獄法運用ノ基本方針ニ関スル件」というのは,現在も生きている通達でございまして,終戦後,現行憲法制定直前に出されましたもので,昭和21年1月4日付のものでございます。そして行刑の基本方針を示したものでございまして,監獄法自体が明治の法律でございますけれども,これを終戦後の新憲法の精神のもとでどのように運用していくかということの基本方針が示されたものでございます。
 その第一,「凡ソ刑務官ノ」というところで始まる文章,ここで基本的な精神というものが述べられておりまして,その後,第二,2段目になりますけれども,ここに行刑の精神に基づく3原理として,人権尊重,更生復帰,自給自足ということが挙げられております。人権尊重に関しては,第二の(イ)というところで,受刑者は自由を剥奪されるほかには固有の人権を失うものではない,これを尊重すべきであって,行刑の目的に反しない限り意見陳述権を認めるべきであるというようなことが書かれております。また,更生復帰の原理としては,処遇上,累進処遇その他の手段に準拠して改善更生を目指すべきだということが書かれております。また,自給自足の原理,(ハ)のところでは,受刑者に無為徒食させることなく,刑務作業により自給自足すべきということが書かれております。
 裏に参りまして,第三以下第十のところまで,逃走防止,給養や医療,勤労農民の育成,宗教的な情操の啓発,刑務作業の在り方,釈放時の在り方,あるいは刑務官の教養とか所長の心構えといったことについての基本的な考え方が出ております。
 この通達自体は現在も生きているものでございまして,刑務官の研修等でも引用されておると聞いておりますけれども,この方針や原理原則というものが現在も当てはまるものなのか,それとも何かこれに修正を加えていくべきものなのか,あるいは別の方向に向かうべきかといったようなことを議論の足がかりにするということがあるいは有効かと思いまして,これを御用意させていただいたというものでございます。
 2枚目のものが,「行刑の目的に関する最高裁判例」ということで,これは,刑罰の目的に関して一般論を述べた最高裁判例を,その部分,抽象論でございますけれども,引用したものでございます。懲役刑は,受刑者を一定の場所に拘禁して社会から隔離し,その自由を剥奪するとともに,その改善更生を図ることを目的とするものであるということが述べられております。
 3番目のものが,「各国等における行刑の目的に関する規定」ということでございまして,各国の行刑法にそれぞれ目的規定というのがあるわけでございます。ない国もございますけれども。当方で分かりました範囲で,イギリス,ドイツ,フランス,オーストリア,イタリア,オランダ,スウェーデン,アメリカ,カナダ,韓国というところの法律の規定を並べたものでございます。また,被拘禁者処遇最低基準規則あるいはB規約などといった国際準則中の行刑の目的に関連する項目についても若干抜き書きをしております。いろいろ表現は異なっておりますけれども,おおむね受刑者の改善更生ということを目的の大きな柱として立てているということがお分かりになると思います。
 これらの資料を一つの共通の題材といたしまして御議論いただければと思っております。以上です。
○宮澤(弘)座長 ただいま,行刑の基本的な理念・ビジョン,かねてからこういう基本問題について大いに議論を遂げなければいけないという皆様の御意見であったわけでございますが,それについて,事務当局といたしましては,それのよすがになるような資料というものを皆様方に御説明をいたしたわけでございます。
 そこで,この問題につきましては広く議論をいただかなければならない,そういう皆様方の御意向でもございましたし,十分承知をいたしておりますけれども,何分,本日のところも時間がそう十分あるわけではございません。そこで,20分程度で恐縮でございますけれども,そういう基本問題について,この際是非発言をしたいという方は発言をしていただいて,この点につきましては次回もまた議論をしていただかなければいけませんし,次回の会議までの間に,この点についての御意見を皆様方から書面で出していただいた方がいいだろう,この場限りでおっしゃっていただくのもよろしゅうございますけれども,次の会議までに書面で出していただいて,それに基づいて議論を続けるというのがよかろうかと私は思っておりますので,御了承いただければ,書面でいただくということにいたしまして,なお,先ほど申しましたように,この問題につきましては折に触れて常に議論をしていかなければいけないことでございますから,わずか20分ぐらいしか考えられませんけれども,この際,ここでそういうことについての御発言があればどうぞお願いいたしたい,こう思っております。
 それから,先ほど御注意がございましたが,これ以降は,私が御指名を申し上げた方のみが発言をしていただくと。どうもおのずから自然のままの秩序というのはなかなかできないものでございますから,そういうことにさせていただきます。御了承いただきたいと思います。
 まず,次の会議までに書面で出していただくということについては御異論ございませんね。

(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○宮澤(弘)座長 それでは,基本的にはそうさせていただきます。
 それでは,本日のところは,そういうことについても多少議論をしていただきたいというので少し時間をとってございますから,どうかその点について御発言の御準備のある方はお願いをいたしたいと思います。
○宮澤(浩)委員 実はこの問題は非常に難しくて,抽象的に議論するということが非常に戸惑いを感ずるぐらい,今実は大きく動いている問題じゃないかなという気がするのです。
 今日いただいた資料の年月日を見ても分かるとおり,1990年以降,各国ともにいろいろ言葉を修正したりしておりますね。その理由は何だろうかと考えますと,やはり90年代の半ば以降に,累犯性のある性犯罪者から子供が相当ひどい被害を受けているということがヨーロッパの場合は各国にございまして,これに対する立法者たちの,つまり政治家のレスポンスが,どちらかというと今までの刑事政策の流れとは違うような急速な変化をいたしました。それが,矯正の目的は一体何かというようなことを正面から議論するのに非常に難しいような世論ですね,関係者の方がいらっしゃるので非常に言いにくい言葉なのですが,マスコミが相当こういうものを何とかしなきゃならぬというふうな方向づけをしたということもありまして,それに立法者が対応したということもあります。そういうことで,かなり構成要件的に新しい罪も増えておりますし,刑も重くなっておりますし,そういう者をなるべく社会に出さないように,保安の程度を高くしようというようなことがある関係で,学者たちが若干びびっているような傾向が,例えばドイツ,スイス,オーストリアといったようなドイツ語圏に認められますので,ちょっと調べたものを出したいなと実は思って,この間,外国から帰ってきたのです。そんな関係で,先ほどの御発言で,そういう機会が与えられるというので,大変うれしいと思っております。
○宮澤(弘)座長 ほかに,この基本問題といいますか,御意見がございますでしょうか。
○久保井委員 行刑の基本理念を,それだけを抽象的に取り上げるのではなくて,もう少し幅を広げて,行刑改革はどういう方向でやるべきかといいますか,我々のこの刑務所改革会議は,改革をするとしたらどういう方向に向かうべきかというか,そういうところも含めて委員の先生に意見を出していただく方が,刑法の刑の目的なり刑務所の目的という抽象的な議論よりも実りがあるんじゃないかというふうに思います。
 中身の問題については,次回までに書面で出させていただくということになるわけですけれども,せっかく発言しましたので,1点だけ申し上げますと,私は,刑務所の目的がどこにあるとしても,受刑者を殴ったりけったりしてもいいという,そういう理論はないわけでありますから,そういうことをなくすということが必要だという点では,これは委員全員が恐らく一致しているところでしょうから,どうしたらそういう不祥事をなくすことができるかという観点から言いますと,刑務所の抽象的な目的というよりも,日本の刑務所の最大の問題点は,やはり閉鎖性,密室性,つまり外から十分に見えないというところに根本的な問題点があるんじゃないかと思いますので,開かれた刑務所,社会に開かれた刑務所,外から見える刑務所は,情報公開の時代,21世紀は正にそういうふうに言われていますから,そういう,国民も刑務所の運営にある程度参加して,そしてそういう不祥事,悪いことが,暴行とかそういうことがしにくいシステムを考える,そういう方向が今の時代には特に必要だろうというふうに思っていますけれども,それはまた次回までに書面を出させていただきたいと思います。
○菊田委員 今おっしゃった御意見に賛成,全くそのとおりですけれども,ここに出ております「監獄法運用ノ基本方針ニ関スル件」,この文書自体は,私は今日でも十分価値ある方針だというふうに思います。つまり,その後ろにありますように,「人ヲ仁愛スル所以ニシテ人ヲ残虐スル者に非ズ,人ヲ懲戒スル所以ニシテ人ヲ痛苦スル者ニ非ズ」,これは時代を通じて当然のことであるわけですね。ところが,今日こういう話題が出るということ自体,私はちょっと懸念というか,オーバーなことかもしれませんけれども,日本的行刑というものがあるというか,先ほどもいろいろ「おやじ」とかそういう話が出ましたけれども,日本的行刑ということで,国際的な一つの行刑目的というようなものとは違った,日本的という言葉をよく使われるわけですけれども,私はそれ自体が既に,先ほどのように,開かれた刑務所,これは国内だけじゃなくて国際的にも開かれた刑務所というものを一つの方針として目指さなきゃならないだろうというふうに総論的には考えております。
○宮澤(弘)座長 よろしゅうございますか。基本的には,どうぞひとつ次回までに文書で出していただいて,それをまとめて,議論の出発点にしたらいいと思います。
○江川委員 締切りはいつですか。
○宮澤(弘)座長 事務当局は,7月1日にしたいと言っております。
○江川委員 1日……。もうちょっと遅くなりませんか。
○宮澤(弘)座長 まあ,それを努力目標にしていただきましょう。7月は14日がこの会議の日だそうでございますから,7月1日ぐらいということでよろしくお願いをいたしたいと。恐縮でございます。そうお願いをいたします。

4.法務省による当面の改善策等について

○宮澤(弘)座長 そこで,もう時間もなくなってきて恐縮なのでございますが,今日二つこちらで決めていただくというか,意見をまとめていただきたいことがございます。
 一つは,この前以来テーマになっておりました,今でもやろうと思えばできることがあるではないか,そういうことは積極的にやったらよろしいというテーマでございます。もう一つは,アンケート調査をしようではないかということで,これも全般的な合意をいただいておりますが,その中身については,まだ多少それをブラッシュアップする点があるのかもしれません。その二つは是非本日皆様方の御意向に従ってまとめていきたいと思っておりますので,ひとつ御協力をいただきたいと思います。
 そこで,まず,法務省が直ちに実施できる方策として検討した案について,矯正局から説明をいたさせます。
○柴田官房参事官 官房参事官の柴田でございます。
 前回の第2回の会議で宿題となっておりました,矯正局の方で既に手を打った事項,それから,これから実施できる事項ということについて報告するようにという御指示がございましたので,今日はそれを取りまとめてまいりました。
 お配りしてありますペーパーは2種類ございまして,まず,「既に実施済みの措置」という1枚物のペーパーがございまして,全部で10項目書いてございます。時間の関係もございますので,余りこれを詳しく御説明する時間はございませんので,省略をさせていただきたいなと思いますが,この中の,実は後で御説明いたします,矯正局として直ちに実施に移すことができるということと若干重複しているところもございますので,その点もあわせ考えながら御覧いただきたいなというふうに思っております。
 では,もう一つの資料の,「「直ちに実施できる方策」について」ということについて少し,各論を織りまぜながら御説明を申し上げさせていただきたいというふうに考えております。
 全部で6項目を用意しておりますが,まず,「「保護房」収容中のビデオ録画等の義務化」でございます。これは,従来は主として書面で内容を記録にとどめる方式を採っておりました。今回の名古屋事件では,いわゆる記録だけでいろいろ問題が生じた,物的なものがというようなこともいろいろありましたものですから,当面,先ほど,実施済みの事項の中にも触れておりましたけれども,革手錠使用案件は全件報告させる,それから,革手錠使用中の期間はビデオ録画を義務づけることにしておりましたが,今回は,それに加えまして,革手錠を要しなくても,保護房に入るケースがございますので,その場合にも全件ビデオで録画をするということにしたいと考えたものでございます。これは,とりもなおさず,いわゆる証拠の確保といいますか,受刑者にとりましても,それからそれを執行いたします職員にとりましても必要な,客観的なデータになるわけでございますので,証拠としてこれを残したい,こういうことがその心でございます。
 ただ,これは府中刑務所を例にとらせていただきますけれども,あそこは15か房ほど保護房がございまして,先ほど持田看守部長が説明しておられましたが,ほとんど毎日のように非常ベルが鳴りまして,保護房を使っているというような実情があります。ほとんど毎日,全房が満杯状態。これを24時間,テープで残すということになりますと,ざっと計算しましても,年間大体3,000本から4,000本ぐらいのビデオテープが必要になろうかと。それから,いわゆる特別公務員暴行陵虐罪の公訴時効は7年でございますから,これを7年間残すということになりますと,これの7倍でございますので,3万巻近いものを新たに刑務所内のどこかに用意しなければいけない,保管する。そういうようなことになるものですから,もちろん,やるからにはどこかにスペースをつくって,これらを保管するといいますか,そういうことをしなければいけないのですが,何分にも多額の予算がかかりますので,予算要求も含めまして,予算の確保でこれを実施していきたいというふうに考えているものでございます。
 次が「C型肝炎の早期発見及びインターフェロンの投与等治療の充実」でございます。この医療の問題につきましては,別途矯正局の方で矯正医療問題対策プロジェクトチームというものを立ち上げまして,矯正医療はいかにあるべきかということで,実は今検討を重ねているところでございます。あえてここにC型肝炎とインターフェロンのことを掲げてございますが,これは将来の矯正を論ずる上で,そう大して論争になる部分でもありませんし,現在の国会でも,ここのところがいろいろ取り上げられたということもありますので,ここに書いてありますような健康診断,C型肝炎のスクリーニング,こういったところを少し十分な手当てをすることを考えるというふうに思いました。その理由は,御承知のように非常に覚せい剤使用事犯者が多うございますので,ありていな申し上げ方をいたしますと,いわゆる注射針の使い回しといいますか,そういうことで感染症という大きな問題が出てまいりますので,そういったことへの手当てをより厚くしようということを考えた次第でございます。
 ただ,インターフェロンというのは,これは生かじりで恐縮でございますが,非常に副作用の強い薬というふうに伺っておりまして,投与の仕方によっては,非常に精神的にもきつい症状が出るといいますか,甚だしい場合はうつになるということも伺っておりますので,当然のことながら医者が必要と認める治療の一環としてのインターフェロン,高額薬でございますので,これも予算要求等をいたしまして実施に移していきたいというふうに考えております。
 それから,これだけの件数といいますか,受刑者をいろいろ絞って検査いたしますけれども,医者が足りないとかいろいろな問題が同時に出ておりますので,これらの検査とか分析は外部に委託したいというふうに考えております。そういった経費も含めて考えております。
 3番目でございますけれども,「処遇(被収容者)関連情報の定期的な公表」でございます。先ほども御発言がございましたが,隠蔽体質,隠しているということがかねて言われておりまして,これは,マスコミ等に対して情報を提供することに不慣れである,あるいは各施設によって不統一である,十分と思っていても,それが足りなかったというような,いろいろ施設間の温度差といいますか,そういうことがございます。実は名古屋の件が出た際には,真ん中あたりに書いてございますが,死亡事案については既に公表するということで,その都度施設で公表いたしておりますけれども,今回はそれにとどまらず,積極的な公開,開かれた行刑とまではいかないかもしれませんけれども,ここに書いてありますような具体例を6項目ほど挙げてございます。こういった情報を定期的に,矯正管区というブロック機関が八つございますので,そこを通じまして国民に情報発信していきたいというふうに考えているものでございます。
 もう一つは,死亡事案以外でも特殊な事案がございます。いろいろ所内で,傷害事件でありますとか,職員がいろいろしでかした事案というものがございますので,そういったものもあわせてセレクトして公表していって,とかく隠蔽体質であるという言葉を,汚名を挽回したいというふうに考えております。
 4番目でございますが,これは「心理技官等専門職員による処遇困難者へのカウンセリングの実施」ということでございます。先回の御説明の中で,刑務官がほとんどを占めている行刑施設で,専門職員は非常に少ないというふうに説明を申し上げたかと思いますが,実は同じ矯正施設で,少年院や少年鑑別所に法務教官あるいは法務技官,心理を専攻したり,あるいは教育学を専攻した,そういった資格を持った職員がおりますので,これらの職員を使って,問題被収容者といいますか,定期的にこういった人たちのマンパワーによる面接を実施してみようということを考えています。もちろん今は,いわゆる制服の幹部職員が,折に触れて昼夜独居拘禁者でありますとか問題の被収容者に対しまして職権による面接を行っているのですが,やはり官服を見ますと,はっきりしたことも言わなくなるし,攻撃的になることもありますし,折からの過剰収容でなかなか手が回らなくなっているということもありますから,そういった意味では,職種の多い矯正組織でございますので,外からの力を借りるまでもなく,内部のそういったマンパワーを使おうと,少し科学的な手法を取り入れてみようかなということで考えた対策でございます。これはお金が要りません。
 5番目でございますけれども,「死亡帳記載の適正化等被収容者死亡時の対応」ということでございます。これまでも私ども施設では,受刑者,被収容者が亡くなった際には,それなりの手を尽くして,記録にとどめ,しかるべきところに通報をしてきているのですけれども,いろいろ死亡帳の記載の不統一であるとか,あるいは記載事項が足りなかったり,それから,検視についてもいろいろ施設によってやり方が違っている,あるいは,法令上は検察官及び警察署となっておりますけれども,そういった通報先の問題や司法検視を行う場合に,必ずしも取扱いが統一されていなかったところがあります。人の死という,最後の最後の手続であるならば,ここのところは各施設とも間違いのないような対応標準と申しますか,一つの形をつくっておけば,国民に対して誤解を与えたり,先ほどの隠蔽とか曲解とか,そういうことが少しはなくなるのではないかということを考えておりますものですから,ここに書いてございますような,いわゆる検察官等に通報すべき事案,内容について,少し検討して,これを明らかにしていこう。
 それから,死亡帳の記載事項につきましても,一つのマニュアルめいたものをつくって,最低限度これは記録してもらうというような形をとるということでございます。
 行政検視につきましても,先ほど申し上げたとおりでございます。これについても標準化していこうということでございます。
 最後でございますが,「矯正職員の『相談・提言窓口』の設置」ということでございます。これは,今までの改善しようとする内容と少し違うのですが,1万7,000人の行刑施設の中に,20%の幹部職員と80%の一般職員をもってなるピラミッド型の組織であるわけでございますが,これまでにセクハラ問題については,いろいろ社会的な大きな動きがございますから,それなりの窓口を作った手当てができております。相談窓口ができておりますけれども,矯正局としてトータル的な,一般職員を含めた現場職員の声がストレートに本省の方に入ってくるという仕組みが実は今までございません。いろいろ手紙をちょうだいしたり,そういったことは断片的にはあるのですけれども,システムとしてでき上がっていないものですから,当面は矯正局参事官あてにいろいろメールでありますとか,何でも結構ですけれども,こういう発言しやすい,風通しのよいルートを作ろうということで設けた案でございます。各施設でも,実はいろいろ相談制度でありますとか,幹部職員による面接というのもやっているのですが,必ずしも統一されておりませんし,はかばかしくないケースもあるものですから,この際こういった風通しのよい仕組みをひとつ作ってみたいなということでございます。
 以上,足早でございますが,6項目,矯正局として直ちに実施できる方策というものを取りまとめてみましたが,この直ちに実施できる方策というものを,実はこれは,今すぐやらなければならない,今やっておかなければいけない方策というふうに言葉を置きかえていただいてもいい内容というふうにしております。オープンにするということと,若干ながら科学的な手法を取り入れるということを,その心とした対策でございます。そのことを最後に申し上げて説明を終わりたいと思います。以上でございます。
○宮澤(弘)座長 ただいま矯正局から御説明を申し上げましたが,何か御質問なり御意見はございますか。
○江川委員 質問があります。処遇困難者へのカウンセリングは,内部の心理技官の方でおやりになるということで,その心理技官の数ですけれども,刑務所と少年院など合わせて3,400人というふうに伺っていますけれども,少年院なんかにいらっしゃる方は,それで結構手いっぱいだと思うんですよね。例えば,やってみて,外部のそういった手を借りるということも検討はされているのでしょうか。
○柴田官房参事官 例示としまして,鑑別所,少年院の教官,技官というふうに申し上げましたが,例えば処遇困難者は,最寄の刑務所に何十人かいれば,その何十人全部を見てもらうということは私ども考えておりませんで,各施設が大体,一種こういう周期がありまして,この収容者はそろそろ危ないなと,どこかで面接をかけてやった方がいいなというようなケースがありますから,そのときには最寄の技官の人に来ていただいて,一言,二言声をかけてもらうということを考えています。もちろん,今は少年院も鑑別所もそんなに暇ではございませんから,今考えていますのは,現役組がだめであれば,OBの人もおりますし,もちろんカウンセラーとかそういった方も民間の方はいらっしゃいますから,それも視野に入れております。
○南委員 現行の監獄法の中に,巡閲,巡視の制度がございますね。これは,明治5年の監獄則によりますと,毎月3回巡視することになっていて,それが後に,明治14年の監獄則の改正に当たって,これは,毎年3回か4回行うとなっている。現行の監獄法によりますと,少なくとも2年ごとに1回ということになっていますね。ところが,この巡閲,巡視の制度というのは,戦前に書かれた正木先生の本だとか,あるいは戦後の重松先生の本などを読んでみても,行刑密行主義というものから開放して,先ほどの開かれた刑務所じゃないですけれども,行刑密行主義のもとにある,そういう受刑者の権利侵害,不利益を救済し,調査して,また救済をし,そして,監獄が公正,適正に管理運営されているかを実地に指導することだといって,非常にこれを重要視されているわけです。現行法に根拠があるわけですから,もう少し回数を増やすとか,あるいは巡閲官に第三者性というものを持たせる。そして,それについての報告を公にするとか,そういうことであれば,これは直ちに実施できることではないかと私は考えるのですが。
 もう一つは,巡視の方は判事,検事が巡視することになっているのですが,これも,ほとんど行われていないようですね。こういうふうに現行法に根拠のあることですから,巡視,巡閲の制度をもう少し活用できないかなと思いますが。
○宮澤(弘)座長 座長が大変不手際で,申し訳ありません,余り時間がなくなりました。今の,できるものはすぐやろうじゃないかというのは,これは常識的に当たり前の話だと思いますが,矯正局がかなりいろいろ研究をし,検討をいたしまして,この程度のことはできそうだなということを御提案いたしております。これは,ひとつ是非矯正局としてやれということを御承認いただきたいと思います。それから,これだけではなくて,なおそれ以外にも項目として検討できることがあるに違いないと,ですから,それはそれで,これだけということでなくして,検討をいたさせることにしたいと思います。そういうことで,この問題は御了承を得たいと思いますが,よろしゅうございますか。
○久保井委員 このことについて,前回,柴田官房参事官ですか,外部との電話を外国では認めている。アメリカ,イギリス,ドイツ,フランスでは,それを認めているということで,その程度のことであれば,日本でもすぐできるじゃないかということになっていって,それならできることを拾い出そうということだったと思うのですが,この外部との電話の件はどうなりましたか。
○柴田官房参事官 私の方から,外部の電話であれば今すぐできるというふうに申し上げてはいないと思うのですが……
○久保井委員 そうではないのですけれども,日本ではやっていなくて外国ではやっていることの例として三つ挙げられた。一つは電話,二つはたばこ,もう一つはCDとかそういうものを持ち込むことはできると。その国は,どことどこの国かという説明をされたでしょう。そういうことなら日本でもすぐにできるじゃないかというような形にしていただけるのかなと私は思っていました。矯正局がやるとおっしゃったわけじゃないかもしれないけれどもね。
 それからもう一つ,すぐにできること,お金をかけなくてもできることとして,受刑者を名前で呼ぶということですね,番号ではなくて。そういうことであればすぐにでもできると思うので,その2点については,是非すぐにやってほしいと思います。
○柴田官房参事官 まず,電話の件は,これは現行監獄法で,いわゆる外部交通は面会と手紙しか規定されておりませんから,おっしゃるような外国で行っている電話というものが一体どういうカテゴリーに属するかというのは難しい問題でもありますし,折から行刑改革会議で,これからいわゆる不服申立とか,外部交通の在り方はいかにあるべきかということを御議論いただくテーマかというふうに存じておりますので,今回は久保井委員がおっしゃる,電話はどうだということですけれども,今すぐできるものとしては挙げませんでした。
 もう一つの,受刑者を名前で呼んでほしいということですが,どこの施設のことをおっしゃっているのかよく分からないのですが,およそ番号だけで処遇をしているというのは,私は現場では見たことがないのです。大体受刑者は名前を呼んでいると思います。ただ,朝夕の点検のときは,「何番」というふうに,職員と受刑者が正対しまして,朝晩のあいさつをするというようなことで,そのときは受刑者が自ら番号を言うということはありますが,「おい,何番」というのは,それはないと思いますけれども。
○宮澤(弘)座長 では,よく勉強してくださいよ。
○柴田官房参事官 はい。
○宮澤(弘)座長 それでは,この問題は大体今のようなことで対処いたしたいと思います。御了承いただきたいと思います。

5.受刑者及び刑務官に対するアンケートについて

○宮澤(弘)座長 それから,最後にアンケートの問題が,大きな問題ですが残ってしまいました。お手元にアンケート案が配付されておりますが,これは黒字と赤字ということでなっておりまして,黒字が事務当局の初めの案でございます。これに対して委員の方々からいろいろ御意見がございましたものですから,それを訂正いたしましたのが赤字の案でございます。菊田委員から御提案がございましたのは,アンケートの対象者が,おびえないで対応できるというようなことをちゃんとやらなければだめではないかと,お考えとしてはそういうことであったと思います。そういうこともございましたので,アンケートの対象者が正直に忌憚のない意見を書けるような雰囲気づくりといいますか,そういうことが必要であるということは我々も理解をいたしております。そこで,このアンケートの主体が,お役所,矯正当局ではなくて,行刑改革会議だということをはっきり私としてはさせたいと思って,そういうような対応をしたいと思っております。アンケートは開封されずにこの会議に届けられることなどを対象者に知らせるために,そういうこともいろいろ知恵を出したのでございますけれども,私,座長の名義で書簡をつけるということにいたしたいと思っております。
 それから,アンケートの対象となる受刑者につきましては,当初の事務当局の考えでは,一定期間に出所する全受刑者ということで考えておりましたが,皆様の御意見もございましたので,これに加えて,受刑者の分類級が偏らないような形で,特定の刑務所に在監中の全受刑者も対象にすることを考えております。このように事務当局としては,かなりいろいろ考えて改善をいたしております。どうか,その辺も御理解をいただきまして,これで話を進めるようなことができれば幸いだと思っております。
○宮澤(浩)委員 この座長の名義の手紙というのは,受刑者のアンケートにもおつけになるのでしょうか。
○宮澤(弘)座長 両方です。
○宮澤(浩)委員 そうすると,その場合には振り仮名か何かつけないとだめですよね。
○杉山次長 お手元のアンケートでございますが,受刑者用のアンケートの頭の手紙というのは,振り仮名の振ったもの,こちらがついているかと思います。「メモ」と書いてあります「受刑者及び刑務官アンケートの実施について」という実施要綱がありますが,その次の紙に受刑者用の,「私は,以前国会議員をしていた宮澤弘です。」という文で始まる手紙がございます。分かりますでしょうか。
○宮澤(浩)委員 ちょっと見当たりませんので,あるいは……。分かりました。
○杉山次長 今,お手元に行ったと思いますが,2種類作っておりまして,受刑者用と刑務官用の2種類書簡を用意しております。
○菊田委員 私は,アンケートをやる以上,委員が刑務所に行くべきだという主張をいたしましたけれども,通らなかったのですが,それは仕方ないといたしまして,何しろ精神的には受刑者というのは,どう利用される危険性があるかという危惧をいつも持っているはずです。ですから,これを少なくする努力をしなければいけない。今おっしゃったことで結構,有り難いと思っておりますけれども,私は,一つの提案として,委員の一人が当日,現場に行って,その集めたものを封印するのを見て帰るということを,受刑者にも来ていますよというぐらいのアナウンスをして回収するぐらいのことをやっていただければなと,改めて提案したいと思います。
 第2点は,ちょっとお伺いしたいのは,フェースシートですけれども,フェースシートと受刑者が書いた封筒との照合というのはどういうふうに技術的にやるのか,その辺が,誰が書いたか分かっていてフェースシートをつける,技術的なところはどうなっているのか分かりませんので,それを後でお伺いしたいと思います。
 それから,内容の点ですけれども,こちら,私どもで出しましたことについて,おおむね修正していただいたことを感謝したいと思っておりますが,一つだけ,私が申し上げたことで,実は,一番最初に,三つぐらいのうちの一つでもいいのですけれども,例えばの話ですが,「あなたはこの刑務所での処遇に満足していますか。あなたの気持ちは,次のうちどれに該当しますか」と,こういうものを私は一つ作りました。答えは七つありまして,「全く不満」というのから「全く満足」までの七つがあるのですが,こういうものをつけて欲しいと申し上げたのは,例えば,「全く不満である」という人は,後の個別的な質問に対してどういう意識があるかということを,クロス分析をする上で非常に重要になってくるわけです。逆に申しますと,「全く満足」という人は,食事についても,軍隊調についても,刑務所の秩序維持についてもすべて満足だということになるのか。つまり,刑務所太郎というのが一番満足しているのではないか,そういうクロス集計をする上に,私はフェースシートとしてそういう概略的なことを一つでもつけてもらいたいと思っているのですけれども,これは何らかの形で入れるとおっしゃったのですが,どういう形で入っているのか,お伺いしたいというのがございます。
 以上3点申し上げたいと思います。
○杉山次長 事務局の方から,3点目の満足かどうかという点でございますけれども,先生の方から提案をされたときに,その趣旨として,全体としての満足度というのは,要するに刑務所の規律,秩序の雰囲気がどうかという点での満足度を聞いているという,そういう御趣旨でございましたので,20という問に刑務所の規律,秩序について適正かどうかという漠とした質問をさせていただいているということでございます。
○菊田委員 それでは意味がなくなるんですよ。漠然とした答えじゃなくて,それに対して「満足」とか「不満足」とか「やや満足」だと七つぐらい答えの中身を持ってまいりますと,後で食事についてどうだとか,規律についてどうだとかという答えをした人とのクロス関係が統計上出てくるわけです。それをやらないと,最初の問が,そういう抽象的だと,後のクロス関係が出てこないのですね。あるいは今の設問だと,処理の仕方が非常に困難になって,機械的にできないと思われるので,ひとつ御検討願いたいと思います。
○宮澤(弘)座長 ただいま詳細にわたって菊田委員から御意見がございましたけれども……,どうぞ。
○曾野委員 今,先生がおっしゃいましたことでございますと,「あなたの結婚生活は非常に完全に満足であるか,全く不満足であるか」と,全く不満足なら離婚すればよろしいのでございますけれども,そういうことというのは人生にないと思いますね。ですから,そういう答え方をさせられるのだったら,どこかにインチキが出てくると思います。
○菊田委員 私の言っているのは,極端なことも含めて,可能な限り七つに分けているわけです。七つのうちどれかに該当した場合に,その人は,その後の個別的な答えについてどういう関係で意識が働いているかということを後で知る必要があるために,フェースシートとしてとりたい,こういう意味でございます。
○宮澤(弘)座長 いろいろな御意見が,こういう問題でございますからあると思うのでございますが,いかがでしょうか,今まで出ましたいろいろな意見も,私どもの検討の材料にいたしまして,成田座長代理と私にお任せをいただきたいと思います。御理解をいただきたいと思います。
○菊田委員 ただ,回答を得るときに,現場にだれか一人でも行くという件はいかがですか。
○宮澤(弘)座長 そこまで私どもは議論を尽くしておりませんから,先ほど申しましたように事務当局を中心に,座長代理の成田さんと私が入りまして,検討材料にしたいと思います。
○菊田委員 もう一つ,刑務官のアンケートですけれども,これは,諸外国でアンケートをとっているのもありますが,例外なく刑務官は自分でポストに投函します。やはりそれをやらないと,私は,それは施設側が不信というわけではありません,完璧なことをやってくださると思いますけれども,心理的に刑務官も,これが何か別なことに利用されるのではないかという悪い影響がありますので,是非とも,大した金ではないですから,有料で本人が投函できるようなシステムを考えていただきたいと思います。
○宮澤(弘)座長 それも検討の対象にさせていただきます。
○菊田委員 よろしくお願いします。
○宮澤(弘)座長 ほかの方々もいろいろ御意見がおありになって,先ほど御意見を伺いましたが,そういうこともなおおありになるだろうと思います。ここで意見を言ってくださいと申し上げると,いろいろな意見が出てくるに違いないと思いますけれども,そういうことで,いろいろな意見をそしゃくして,成田座長代理と私に最終的にはお任せをいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 不手際で少し時間が過ぎましたが,本日はこれで散会にいたしたいと思います。


午後5時09分 閉会