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トップページ > 省議・審議会等 > その他会議 > 行刑改革会議 第10回会議

行刑改革会議 第10回会議

日時: 平成15年12月22日(月)
16時05分~17時20分
場所: 法務省第1会議室



午後4時05分 開会


○宮澤(弘)座長 ただいまから行刑改革会議第10回会議を開催いたします。
 なお,本日,野沢法務大臣は予算折衝のため途中で退席される予定と承っております。

1.行刑改革会議の提言について決定・提出

○宮澤(弘)座長 前回の会議におきまして,事務局が取りまとめました提言案をもとに議論をしていただきました。最終的な修正については御一任をいただきましたが,その際の皆様の意見を踏まえて,最終的な提言の案を作成いたしました。お手元に配付してあります「行刑改革会議提言~国民に理解され,支えられる刑務所へ~」を御覧いただきたいと思います。前回の御議論を踏まえて修正した主な点について御説明を申し上げます。
 まず第1,「はじめに」の3ページの部分でありますが,前回欠席された曾野委員から,「今回の会議の検討に当たって,受刑者,刑務官,被害者,国民の立場からの悩みや苦しみを共有し,手を貸し合うことが必要だと考えたとの内容をつけ加えるべきだ」という一文をお送りいただきました。趣旨はそのとおりだと思いましたので,これをつけ加えております。
 また,前回の議論を踏まえ,24ページの「外部交通の拡大」の電話のところについて,その対象を拡大していく姿勢を示すために,「まず,開放処遇を受けている者から認めるなど」と表現を改めております。
 最後に48ページの「人事管理の在り方」に,職員が相談しやすい環境を整えるとともに,相談したことにより不当な取扱いをされることがないようにすべきであるということを加えました。
 そのほか,若干の字句の修正がございますが,実質的には変更点はございません。私も本日を迎えるに当たって,改めてじっくり読み直してみましたが,皆さんの御意見が盛り込まれた画期的な提言になったと確信をしております。
 では,これを当会議が法務大臣に提出する提言とすることについて,皆様の御了承をいただきたいと思います。よろしいでしょうか。いかがでございましょう。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○宮澤(弘)座長 異議がないようでございますので,これを当会議の提言としたいと思います。
 それでは,皆様を代表して,私から野沢法務大臣にこの提言をお渡ししたいと思います。
 野沢法務大臣。この提言は当会議の議論の集大成で,国民に理解され支えられる刑務所を作るための行刑改革の方向を示したものであります。私たちといたしましては,この提言の趣旨を最大限にくみ取っていただいて,省を挙げて不退転の決意で行刑改革を遂げていただきたいと思います。それでは,提言をお渡ししますので,大臣,窓際にお進みいただきたいと思います。
〔宮澤(弘)座長より法務大臣へ提言を手交〕

2.法務大臣あいさつ

○野沢法務大臣 ただいまちょうだいいたしました答申提言につきまして,私の方から御礼を兼ねましてごあいさつを申し上げます。
 本日,行刑改革会議における熱心な御議論の成果として,大変に的確な御提言をいただきました。まず,お忙しいところ,9か月間という短い期間に精力的な検討を重ねていただき,このような御提言をまとめていただいた宮澤座長を初めとする委員の皆様方,及び後藤田相談役に対しまして,厚く御礼を申し上げたいと思います。
 行刑改革の大きな目標は,国民に理解され,支えられる刑務所を作ることにあります。そしてそのためには,とかく閉ざされがちであった刑務所を,できる限り開かれたものとし,受刑者の人権が尊重されながらも必要な規律が保たれ,その改善更生がしっかりと行われることが大切であります。また,法務省の責任者であります私の立場からいたしますと,日々厳しい職務に精励している多くの矯正職員の過重な負担を少しでも軽減し,健全な状態で必要な職務を行うことができるような環境を整備することも重要であると考えるものであります。このたびの御提言は,これらの点についてバランスよく目を配っていただいたものでありまして,新しい時代の行刑にとって大いなる指針となるものと確信しております。
 行刑改革を成し遂げるため,今度は私たちがこの御提言を真摯に受けとめ,これを最大限尊重していかなければならないものと思っております。今後監獄法の全面的改正も含め,まだまだ検討を重ねていかなければならない問題があると思われますが,法務省といたしましては責任を持って不退転の決意で改革を実行に移してまいりたいと思います。また,直ちに実施できる方策につきましては,速やかに実行に移してまいります。
 委員の皆様方及び後藤田相談役におかれましては,今後法務省が行う具体的な行刑改革につきまして,是非とも御関心を持ち続けていただければ幸いであります。法務省では,省を挙げてこの御提言に示された事項を推進し,行刑改革を実行に移していくため,事務次官を委員長とする行刑改革推進委員会を設置することとしたいと考えております。委員の皆様方及び相談役には,この委員会の顧問に御就任いただき,節目節目におきまして改革の状況等について御報告をさせていただきたいと思いますので,この行刑改革会議の御提言に沿う改革が行われているかという観点からも御指導をいただければ幸いでございます。
 最後に,これまでの御労苦に対しまして重ねて御礼を申し上げまして,私のごあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。
○宮澤(弘)座長 どうもありがとうございました。ただいまの野沢法務大臣のお言葉の中に,「今後も関心を持ち続けていただきたい」との御発言がありました。我々としても,この提言がどのように実現されていくのか,行刑改革の行く末を見守っていきたいと考えております。
〔野沢法務大臣退室〕

3.直ちに実施できる方策について

○宮澤(弘)座長 ところで,矯正局ではこの会議の議論の推移を見て,提言の骨子(案)などに基づきながら,直ちに実施できる改善策を検討してきたとのことであります。この機に,これについて御紹介をしたいとのことでありますので,御報告をしてもらおうと思います。では,柴田官房参事官お願いします。
○柴田官房参事官 官房参事官の柴田でございます。よろしくお願いいたします。
 ただいま御提言をちょうだいいたしました後に,説明の機会を設けていただきまして,誠にありがとうございます。矯正局では,これまで直ちに実施できる6項目を,第3回会議におきまして御説明して以降,この会議におきます御議論の推移や,御提言の方向性などを踏まえまして,更に実施できる方策を模索してまいりましたが,このたび,その内容がまとまりましたので御報告に及ぶ次第でございます。
 ただいま席上に配付しておりますのがそうでございますが,先ほど御提言いただきました行刑改革の具体的提言の大きな項目に沿った10項目を,方策として取りまとめた形としております。以下,その内容の概略を御説明いたします。
 まず最初は,刑務作業の時間短縮による教育的処遇等の充実でございます。1日8時間の刑務作業時間を確保しようとする従来の処遇の在り方を見直しまして,個々の受刑者の必要性に応じて作業時間を短縮するなど,より柔軟な刑務作業の在り方を検討すべきであるとの提言がなされ,これを受けまして,その具体的方策として当面,一部の刑務所において刑務作業時間の短縮を行い,受刑者の改善,更生等のため,教育的処遇等の充実を図るべく施行いたします。
 次は,中国との受刑者移送条約の早期締結でございます。在日外国人受刑者については,積極的に受刑者移送を推進すべきとの提言がなされ,これを受けまして在日外国人受刑者のうち,その数が最も多い中国人受刑者の本国への移送の道を開くため,日中間における受刑者移送条約の早期締結等に向けまして,外務省と連携しつつ協議を開始することといたしたいと考えております。この問題は,先週12月18日に犯罪対策閣僚会議で決定されました犯罪に強い社会実現のための行動計画の中にも,このことが明記されております。
 次は,保護房のリニューアルでございます。現行の保護房は,採光面や空調設備等が必ずしも十分とは言えず,また仕様が画一的で披収容者の状態に応じた運用が困難であることから,「保護房の使用について検討すべき」との提言がなされまして,これを受けまして今後保護房に窓を設け採光を確保するとともに,空調設備を設置するなど居住環境を高めるほか,改善策の図に例示してありますような被収容者の状態に合わせた処遇を実施できる複数の仕様の単独室を設けることを考えております。
 次は外部交通取扱要領等の公表でございます。外部交通取扱要領等を広報すべきであるとの御提言がなされ,これを受けまして外部交通の円滑な実施を促進するため,法務省のホームページに面会,親書の発受,差入れ等につきまして,一般的留意事項,手続概要等を掲載することといたします。
 次は,受刑者釈放時アンケートの実施及びその結果公表でございます。現在各施設におきまして釈放時感想文やアンケートを実施しているところでありますが,様式に統一性がなく,また分析評価が困難でありますため,当局において質問事項を統一した上で釈放時アンケートを実施し,これに集計・分析を加えることによって受刑者の意見の傾向を把握し,その上で今後の施策等に反映させることといたします。これは,行刑改革会議で大型アンケートが実施されました。これを拝見いたしまして,受刑者からの声を体系的に吸い上げるシステムの必要性を痛感したというところから,この方策を取り上げました。
 次は,広報のための施設見学の制度化でございます。行刑施設の公開は,学術研究のほか正当な理由があると認められる場合に限りこれを参観として認めておりますが,開かれた行刑を目指す必要性から,広く国民に行刑行政について理解をいただくため,期間,公開範囲,人数等を適宜設定いたしまして,広報のための施設見学を実施することといたします。実際には,例えば府中刑務所で申しますと,平成14年度で144件,約3,600人の参観が行われております。施設によっていろいろと濃淡はございますが,これを全国展開いたしたいと考えているところでございます。
 次は,矯正施設における死亡事案の全件公表でございます。被収容者の死亡事案につきましては,これまで一定の基準のもとに公表してきたものでございますが,提言をちょうだいいたしまして,これまで対象外であった病死事案についても,無用な疑念を抱かれぬよう全件を公表することとします。ただし,公表の方法については,病死については件数が多いことや,被収容者のプラバシーや遺族感情等の問題もありますので,これを原則として各矯正管区における定期的な公表の機会に,施設別件数等を公表していく形で実施したいと考えております。なお,この資料の現状の中に「革手錠」という表現を使っておりますが,これは今年の2月から行っているものを体系的に並べたものでございまして,委員御承知のとおり,今年の10月から革手錠は廃止されまして,第2種手錠にとってかわっております。現在はこれで運用しております。
 次は,情願処理体制の暫定運用でございます。法務大臣に対する情願については,現在その件数の急増等に伴いまして,必ずしもそのすべてについて迅速かつ適正に処理することができない現状がございます。そのようなことにかんがみまして,情願のうち特に慎重な取扱いを要する違法又は不当な処分等に対する不服とその他の苦情等を峻別いたしまして,性質に応じためりはりのきいた取扱いをすることといたしたいと考えております。なお,この取扱いは,限りある職員を有効に使いたい,マンパワーを有効に使いたいということにも寄与することになります。
 次は,外部医療機関との連携体制の構築でございます。移送先病院の確保や医師の採用につきましては,これまで施設の努力により確保されてきたところでございますが,御提言をいただきまして,今後は中央レベルで厚生労働省と関係機関との協議会を開催するほか,司法レベルにおいても地元医師会等関係機関との協議会を開催し,医師の確保及び移送先病院の確保等のための体制構築を図ることといたします。
 最後でございますが,行動科学的な視点を取り入れた実務に即した人権研修でございます。これまでの人権研修は,主にいわゆる座学を中心に行ってきたところでございますが,今後はこれに加えまして民間に委託して行動科学を応用した非暴力的危機介入法の研修を導入するほか,社会心理学の実験紹介やロールプレイイング,それから事例研究を活用いたしまして,被収容者処遇を考える教材を作成し,これを各矯正施設に配付することといたしたいと考えております。
 以上で,説明を終わります。ありがとうございました。
○宮澤(弘)座長 どうもありがとうございました。

4.委員等からの発言

○宮澤(弘)座長 最後になりましたが,本日御出席いただきました委員の皆様と後藤田相談役に,この提言にかける思いなどを一言ずつ御発言いただきたいと思います。時間の関係がございますので,お一人3分程度でお願いをいたしたいと思います。時計回りの順序でお願いをしたいと思いますので,まず宮澤浩一委員からお願いをいたしたいと思います。
○宮澤(浩)委員 アルファベット順なら真中ぐらいかなと思っておりました。いきなり発言をさせていただくのは大変恐縮なのですが,私自身一生懸命自分の持っている知識が少しでもお役に立てればと思って御協力をいたしました。
 私個人の反省点といたしましては,外国,殊にドイツ語圏の施設などに若干の関心と知識を持っておりましたのにもかかわらず,やはり実務のことを考え,その妥協というようなことで,これまでの私の書いたものなどに必ずしもきちんとした形で書いていなかった,少しぼやかしたような表現をしていたというのが,私自身の弱さからくることなのだろうと思いますけれども,やはり今後この提言をいろいろなところで説明したり書いたりするときに,そういう留保なく,この提言を更に実現するには,こういう方法があり,こういう具体例が日本と文化的にも社会的にも経済的にも政治的にも比較可能な国々で行っているのであるということを書いたりしゃべったりして,少しでも我々国民,市民仲間の方々に訴えかけていきたいと思っております。以上です。
○宮澤(弘)座長 どうもありがとうございました。
 次に,南委員お願いをいたします。
○南委員 昔,尾佐竹猛という驚くべき博識の大審院判事がいらっしゃいました。東大法学部の講師も務められて,憲政史の講義を担当されております。その講義の中で,「徴兵,懲役,一字の違い,腰にサーベル手に鎖」という歌を披露された。これは,明治時代,徴兵令が施行されまして,兵隊にとられるというのは懲役に行くのと,監獄に入るのと同じぐらい嫌だ,かなわないという平民の壮丁,農民,商人の気持ちを率直にあらわした巷間のざれ歌だと聞いております。学生は,戦争中の昭和17年のことでありますので,尾佐竹先生こんなことを言って大丈夫なのだろうか,憲兵隊に引っ張られるのではないかと心配する者もあり,あるいはまた,いや大審院判事だから大丈夫だろうなどと話し合ったということを,私は先輩から聞きました。
 徴兵も懲役も,ともに強制的に苦役に服するわけでありまして,その点で共通しております。更に言えば,我々一般社会を娑婆と呼びまして,軍隊も刑務所も市民の目の届かない全く隔絶された閉鎖的な社会であるという点でも共通しています。ごく最近まで,ドイツの教科書などにも,刑務所は大学,病院とともに閉鎖的営造物と言われまして,その典型とされてまいりました。しかしいまや,大学も病院も厳しい市民の監視下のもとに置かれているわけであり,開放されてきております。刑務所も例外ではありません。刑務所に対するパブリック・コントロールも,このような時代の大きな潮流の中でとらえなければいけないと思います。
 今回の行刑改革会議でパブリック・コントロールの機関として,市民によるところの視察委員会であるとか,あるいは独立の不服審査会が提言されました。コントロールとか監視とか申しますと,第一線の矯正行政の足を引っ張るように思われるかもしれませんが,決してそうではありません。このようなコントロール機関が存在することによって,行施部内の自制能力,自己制御能力が高まりまして,ひいては矯正行政への一般国民の信頼をかち得ることにもなるわけであります。
 矯正行政の在り方について,私のような素人が法務省に何かと厳しい注文をつけたり,あるいは要望を申し上げましたが,私としてはよくここまで私たちの意見をお聞きいただいたと大変敬意を表している次第であります。しかし,この提言を今後どうやって実現するかということが重大な課題として残っているわけであります。先ほどの法務大臣のお話では,提言の実現に向けて省を挙げて不退転の決意で取り組むということであります。国際的に見ましても誇りとなり得る刑務所を実現していただきますよう,切にお願いをする次第でございます。以上でございます。
○宮澤(弘)座長 どうもありがとうございました。
 次に,広瀬委員お願いをいたします。
○広瀬委員 今回の提言は,決して革命的なものでもないし,あっと驚くような内容ではありません。むしろ極めて実践的,地味なもので,最大の特徴は,これに向かって実現しやすいという点だろうと思います。そうした内容を受けて,早速法務省ではどういう実行をするかという具体的な案を出してきました。この点について,大変敬意を表したいと思います。
 いずれにしましても,なぜ抜本的といいますか,例えば懲役とは何ぞやとか刑務所とは何ぞやという根本にわたる論議ができなかったといえば,それは古い監獄法があって,監獄法の改正という話になりますと,また停滞の泥沼に落ち込むだろうという懸念があったためだと思います。今後は,政府,すなわち行政と国会,ともに監獄法の見直しに着手していただきたいと思います。ともかくそこに至らない限度まで今回改善が図られるならば,私たちの意図は十分果たされたということができると思います。以上です。
○宮澤(弘)座長 どうもありがとうございました。
 次に,野﨑委員お願いをいたします。
○野﨑委員 最初に委員の顔ぶれをお聞きしたときに,随分大胆な人選をされたなという気がいたしました。そして,第1回の会議,初めの段階でそれぞれの意見が述べられたときに,果たして10か月でこれがまとまっていくのかしらということを非常に不安に思いましたけれども,この会議を通じて共通の認識というものがうまく醸成されて,本日を迎えることができたということは,非常に良かったと思っております。
 この提言には,「国民に理解され,支えられる刑務所へ」という副題がつけられております。刑務所の改革をするためには,国民の意識というものを十分にこれから変えていく必要があるということを痛感いたします。この会議の審議が続いておる過程において,新聞や雑誌でいろいろな意見が述べられた,またホームページにいろいろな意見が寄せられておるのですが,どちらかというと前向きの改革に対しては厳しいものが多く見られます。この提言に従った改革を実現していくためには,国民の意識というものをより進めていく,その方向に向けての啓発というものが何よりも必要であると考えます。今後とも,そういう努力を法務省や関係団体,各委員の方にもしていただきたいなと思いますし,私も機会があればそういう努力を今後とも続けていきたいなと考えております。
○宮澤(弘)座長 どうもありがとうございました。
 次に,滝鼻委員お願いをいたします。
○滝鼻委員 いわゆる名古屋事件をきっかけに,この矯正施設の改革論議が始まったわけでありますが,私といたしましては,時代の風がこの刑務所,70数か所にわたる日本の刑務所の中にも吹き込むよう,また流れ込むよう期待して,9か月の間,論議を積み重ねてきたつもりでございます。
 当初議論を始めたときには,この15人の委員それぞれ考え方にかなりの隔たりがあったかと思います。ではありますが,15人全員が新しい矯正施設の運営をどうすればいいか,その実現に向けて少しずつ歩み寄った結果,今日答申が出たのだと思います。
 この提言は,多分15人の委員,相談役の方々が少しずつ歩み寄った結果,これから国民の批判に耐えられるものとしてまとめられたのではないかと自負しております。私としましては,私を除くすべての委員,相談役の方々に,こういう点で深く心から感謝いたしたいと思います。ありがとうございました。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 次に,高久委員お願いいたします。
○高久委員 感想を述べさせていただきます。実はこの会議の委員につきましては,知り合いの厚生労働省の前の局長の方から依頼を受けまして,何となく「はい」と引き受けたのですが,第1回の会議に出まして,その後,日本弁護士連合会の医療体制に対する要望書を拝見しまして,これは大変なことを引き受けたなと後悔いたしました。しかし第3分科会の皆さん方の御意見を拝聴,参考にさせていただいて,更にまた事務の方々の御尽力で,私の主に担当させていただきました医療体制の在り方,人権意識の改革,人的,物的体制の整備ということについて,どうやらまとめることができましたし,また皆さん方の御賛同を得られたことを感謝しています。
 私自身,非常に勉強をさせられました。日弁連が中心になって開催されました2回のシンポジウムにも出席させていただきました。今まで私は文科省と厚生労働省の二つの委員会にはいろいろ出席していましたが,法務省の会議は初めてでして,世の中にはいろいろな考えの方がいらっしゃるなということがよく分かって,その点でも勉強させていただきました。
 この提言,特に私が関連した部分を読ませていただきますと,特に医療体制の整備あるいは最後の人的,物的体制の整備など,非常にお金がかかるという感じを強くしております。そういたしますと,法務省だけの問題ではなくて,当然財務省も関係するでしょうし,先ほど中国との関係で外務省との関係が矯正局から報告がありましたが,いずれにせよ国全体としてこの問題に取り組んでいく必要がある。そういうふうに思っています。また実際にこの提言を実施していく法務省の関係の方々,これから本当に御苦労様で,是非頑張ってこの提言の線に沿った行刑の改革を進めていただきたいと思います。
 最後に冗談ですが,今までのいろいろな省庁の会議の中で,会議の前にティーサービスがあるのはこの会議が初めてございました。どうもありがとうございました。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 次に,瀬川委員お願いをいたします。
○瀬川委員 今回の行刑改革の提言は,実に100年ぶりの刑務所改革の提言であります。私も一研究者としまして,できるだけ理想に近い提言というものを提示したいと思いまして,委員の方々と努力してまいりました。
 ただ,非常にオーバーヒートしたときもあり,活発な議論ができてよかったと思います。また同時に,こういう形で提言として実を結んだことは非常にうれしく思っております。ただその際に,提言をまとめるに当たって現実の壁といいますか,そういうものを感じたこともございました。現実の壁は,およそ三つあったと総括したいと思っております。
 一つめの壁は,100年間積み上げられた刑務所の基本構造というものがあります。この構造というのは悪い面だけではなくて,いい面もたくさん,すぐれた面を持っていたと思いますけれども,我が国独自の行刑の構造というか,そういうものがあって,それは,ともすれば規律維持といいますか,それを優先した形で進められてきた。その基本構造をどう打ち破るかというか,そういうためにこの提言がどういう形でそれに接合し調和していくかということは,今後の課題ではないかと思っております。
 2番目に,国民世論の壁というのはすごく感じました。当初はこの行刑改革というのは名古屋刑務所の事案を契機としていたかと思います。その際には刑務所改革というのはすごく熱があったと思いますが,その後,提言が明らかになるにつれて,先ほどほかの委員からもございましたけれども,厳しい意見というか,受刑者を甘やかし過ぎるとか,あるいは刑務所は療養所ではない,あるいはホテルではないんだという形で,強い厳しい意見が出てきましたので,この点で情報公開をもっと国民にしながら理解を求めて,今後現実的な改革をしていただきたいと思っております。おそらく情報を共有すれば,結論はできるだけ一つのものになるのではないかと思われますので,そういう点で,お互い共有し合いながら,いい我が国の刑務所といいますか,未来の刑務所づくりをしてもらいたいと思っております。
 第3の壁は,国家予算の壁です。特に第2分科会に私は属しましたけれども,常に悩まされた問題はこの問題でありまして,いわゆる視察委員会,それから不服申立てについてもそうなのですけれども,やはり人的,物的条件の飛躍的な改善というのはすごく必要であるというふうに痛感いたしました。刑務所というのは,保護観察所と並びまして犯罪対策の最終基地といいますか,要であります。ともすれば治安維持というと警察官の増員だけが論じられて,刑務所の職員とか保護観察官の増員というのは後退する,後ろにやられてしまいがちです。警察ももちろん大事ですけれども,同じように刑務所の職員あるいは保護観察官の増員というものが今後必須の課題であると考えられます。
 ただ,今回の改革案というのは,本当に先人の言葉で「立法は妥協である」という言葉を改めて思い起こされました。南先生もおっしゃいましたけれども,幾つか対立する場面もありましたけれども,こういう形でまとまったというのは喜ばしい。けれどもこの改革案はミニマムの提言であると思います。そういう意味でマキシマムの提言ではありませんので,今後内容が薄められないように,どんどん濃くなるような改革を進めていただきたいと思います。
 それから,既にこの改革案に対して批判というか問題点の指摘もあるようですけれども,いわゆるためにする議論というか,反対のための反対はともかくしまして,真摯な批判というのは今後も受け入れて,そういうものをそしゃくしながら十分検討して,今回の提言に,より厚みを増すようにしていただきたいと思っています。以上でございます。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 次に,久保井委員お願いいたします。
○久保井委員 私も審議の過程ではいろいろ御意見を申し上げましたけれども,でき上ったペーパーを改めて通読してみましてつくづくと思いましたのは,非常に画期的でよくできている。今の21世紀の日本の社会が受け入れていくといいますか,築いていく刑務所の一つの姿を提示することに成功したのではないか。もちろん100点満点ではありません,不十分な点もありますけれども,私はやはり歴史的なペーパーと言ってもいいのではないかというふうに評価しております。
 当初,この委員をお引き受けしたときの私の考えは,特別にこの問題に知識がありませんでしたので,ただ1点,名古屋のような事件を今後繰り返さないようにしなければならない。そのためには,どうするかということが私の念頭にありまして,私の最初の考えは,要するに外から見える,国民の目が行き届くガラス張りの刑務所,ガラス張りまでいかなくとも,明るいところでは悪いことはしにくいということがありますから,そういう閉鎖性をどこまで打破できるかということが鍵ではないか。つまり,刑務所なり職員と受刑者との関係を見直すということまでは必ずしも期待していなかったというか,非常に困難ではないか。つまり,一定の受刑者,犯罪者,刑が確定している者である以上,刑務所で厳しい規律のもとに鍛え直すという日本的な行刑は,ある程度やむを得ないのではないか。しかし,どんなにあれでも人権侵害は許されません。人権侵害にならない程度であれば,厳しい規律あるいは厳しい鍛え方というのは,ある程度やむを得ないのではないかという考え方で,その辺をどうしたらいいのかなと悩んでおりました。刑務所と受刑者との関係をどの程度の関係にすべきか。学校とどこが違うか,あるいは病院なり療養所とどこが違うのかというようなことについて悶々としておりましたけれども,日本の刑務所を数か所,それから外国の刑務所についても,私の場合はドイツ,フランスでありましたけれども,2か所見せていただきました。これも当初の予定になかったところを,法務省に無理にお願いして申し訳なかったと思いますが,その両者を見て非常に私は考え方がすっきりしてきたといいますか。どこがすっきりしてきたかと言いますと,残念ながら日本の刑務所の受刑者には表情が全くない。つまり暗い。能面のようなそういう顔をしている。それがドイツ,もともとドイツの刑務所を手本に日本の刑務所をつくったわけですけれども,ドイツの刑務所は閉鎖型の刑務所ですら受刑者の表情が非常に豊かだ。つまり,職員に対してもあいさつをする,あるいは我々のような外部からの訪問者に対しても「こんにちは」と言ってあいさつをするというような,そういうやわらかい人間関係,表情のある受刑者を見て,本当に更生をさせるためには,やはり嫌々ながら力で従わせるだけではなくて,この自発的・自律的な意志で,本当にもう一度社会の役に立つ人間になろうというふうに受刑者自身が思うように仕向けないと,結局はだめなのだということに気がつきました。その意味で,内外の視察は私にとって非常に大きなプラスというか,考え方を固める上においてプラスでありました。
 今回の提言は,そういう冒頭のはしがき,あるいは処遇の基本的な関係のところに書いていただいておりますが,そういうやわらかいといいますか,人間一度過ちを犯したけれども,それを反省して再び社会に役に立つ人間になろうというその自信と誇りを取り戻させるための,そういう方向で改革するのだという方向性が打ち出された。これは,単にガラス張りにするという,外から見えるということだけでなくて,刑務所の在り方について大きな転換を目指したものになっていると思います。これは非常に,私はいいことだと思います。
 日本の社会の人口はどんどん減っておりまして,高齢化しております。したがって,いったん過ちを犯した人間でも,やはりここで自信を取り戻してもらって,もう一度社会で社会の一員として役に立ってもらわなければ,日本の社会はもたない時代が来ている。そういう意味では,受刑者をそんなに大事にする必要ないのではないかという一般的な国民の批判に対して,十分に説得できるペーパーになっているのではないかという感じがいたします。
 しかし,実際にこれを実現していくということは,さまざまなお金もかかりますし,また矯正の現場の人に大きな負担をかけることにもなります。矯正の職員の方々は,非常にしんどい仕事を毎日繰り返してやっていただいていますが,私は新しい21世紀型のこのペーパーの提言するような刑務所になれば,職員としてのやりがい,社会的評価,価値,ステータスも上がってくると思う。だから,受刑者の人格を尊重してやっていくということは大変面倒くさいことかも分からないけれども,しかしその方が職員にとってもやりがいのある仕事になっていくのではないか,そういうことを期待したいと思います。
 いずれにしても,端的に申しまして最初に委員を引き受けたときに比べますと,すごく期待以上のものができ上がったのではないかというふうに喜んでおります。どうもありがとうございました。
○宮澤(弘)座長 どうもありがとうございました。
 次に,菊田委員お願いします。
○菊田委員 最初は,アンケートを実施していただく,あるいは審議の内容をリアルタイムで報告していただく,こういう点で非常に心地よいスタートを切っていただいたことを満足しております。
 今日に至るまで,私は皆さんと同じように80%ぐらい目標は達したかなという思いをしておりましたけれども,最終案を見て,また私が今まで発言したことを比較してみますと,ちょっと甘過ぎるなと。60点ぐらいじゃないかなと,私は自分なりに点数をしております。もちろん理想的なものができるわけはないし,新しい一つの改革が実現し,それを土台にして次のステップということもあり得るでしょうけれども,少なくとも廃案になった刑事施設法案を飛躍的に超えたものを実現しなければ,これは開かれた審議会の評価につながることだというふうに思っております。
 そういう点で,先ほど大臣がおっしゃいましたけれども,推進委員会をお作りになる,行刑委員会の委員が顧問になるということをおっしゃいましたけれども,私はこの推進委員会がどういうふうに作られていくのかまだ分かりませんが,法務省内だけでこれをお作りになるということであれば,私は少しこの際申し上げておきたい。司法制度調査会もそうですけれども,学者とか弁護士とか,そういう人たちがメンバーに入っております。開かれた刑務所,そしてこれから先,本当に相当な出費を伴う。これは先ほどから国民の理解ということをおっしゃられておる方が多いですけれども,国民の理解というのは非常に抽象的でして,今ある刑務所が本当に国民のためになるということは,私は刑務所それ自体が開かれた刑務所,そして人道化された刑務所,人権を重んじた刑務所ということになることによって,社会が人道化され,開かれた社会になるというふうに私は基本的にむしろ考えるべきだというふうに思いますので,あらゆる意味で,例えば財務省の障害だとか,いろいろな形で今60%のものが40%,30%に細々にされたのではたまらないので,そういう意味では,広い意味の支持を得ながら法案を作るという方向づけを改めて皆さんに問いかけて,その実現のためにお願いをしたいと思っております。
 いろいろと申し上げましたけれども,この先これを土台にして,新たな方向をそのステップとしてやっていただくということだけをお願いしたいと思っております。以上です。
○宮澤(弘)座長 どうもありがとうございました。
 次に,大平委員。
○大平委員 この委員の末席に加えていただきましたことを,まずお礼を申し上げたいと思います。また,私のような稚拙な意見にも傾聴に耳を傾けていただいたことにつきましては,今後の私の大きな励みとなっております。
 道を踏み外した者として一言だけ申し上げさせていただきます。いったん道を踏み外した者が立ち直るためには,やはり人間として認めていただく,これがなければなかなか立ち直ることが困難です。最後の砦であります刑務所で,もし非人間として扱われれば,その人たちは何を考えるかといいますと,確かに刑務所には来たくない,二度と来たくないという思いはいたします。しかし,犯罪を思いとどまろうとは思いません。捕まらない方法を考え出すだけです。そうなりますと,そういう人たちが社会に出てきますと,日本の治安はどんどんどんどん悪化していきます。ですから,最後の砦である刑務所において,その人たちが本当に人間としての心を取り戻せるように,そのために刑務所での施策を考えていただきたい。そのために,委員になってからこの何か月間発言してまいりました。
 何度も申し上げますが,刑務所はホテルではございません。この改革は,刑務所に収容されている人たちに権利だけを認める,そういう意味の改革ではありません。本当に人として何が必要なのか,更生のためには何が必要なのかという観点から,提言がかなり含まれておりますので,その点についてまだまだ国民の皆さんには御理解いただいてないと思います。この提言が実現されるには,かなりの困難も伴うと思います。ですから,事務局の方々に最後のお願いでございますが,どうか国民の方に理解していただけるように,そういう機会を多くこれからも持っていただけたらなと思います。本当にどうもありがとうございました。
○宮澤(弘)座長 どうもありがとうございました。
 次に,江川委員お願いいたします。
○江川委員 私は,このメンバーにならないかという話をいただいたときには,刑務所というふだんは見られない現場を見ることができるという興味と,月1回程度だからというような非常に気軽な気持ちからお引き受けしたところもあります。それが週1回の集まりになり,正直言うと,しんどいところもたくさんあったなという感じもしますけれども,現場を見たり,あるいは現場の人たちの声をいろいろな形で聞けたということは,本当によかったなと思います。特に刑務所へ,とりわけ府中刑務所に行ったことが,私は非常に衝撃的でした。先ほどもどなたかから出ましたけれども,一部受刑者の表情だとか,あるいは言動に,私は非常に衝撃を受けましたし,やはりこれでは反省どころではない,更生どころではないという感じも受けました。
 被害者のいる犯罪というのはたくさんあるわけで,被害者のことを考えれば,その受刑者にきちっと反省をしてもらう,あるいは社会の安全ということを考えれば,ちゃんと更生してもらうということがとても大事なわけで,そのためには受刑者の環境についても,もっともっと考えなければいけないなと思いました。あるいは行く先々で,看守の方たちの本当に悲鳴に近いような声をたくさん聞きました。そういう人たちの労働環境を改善することと,それから受刑者の人たちの環境を改善することは,決して対立するものではないということも,現場を知るにつれて思うようになりました。よく受刑者の人権の問題になってくると,被害者を差し置いてとか,そういうふうになりがちですけれども,人権というのはやはり究極のところでは対立していくものではなくて,回り回っていくものだなということをすごく実感をしました。
 ですから,今この提言の一部が報道されていろいろな声があります。そういうのを聞くと,実態を知らないからそういうことを言うのだというふうに思ってしまうのですが,でも,これは,つい昨日の私だったのだな,つまり実態を知らなかった私自身の声だなというふうにも思います。理解を求めていくためには,現状をよく知らせていくということが本当にますます大事になってくるのだろうなと思います。ですからそういう意味では,法務省などの当局のより一層の努力というのを期待したいなと思いますし,それから,これは現状を知ってしまった私自身の責任でもあるなということを改めて痛感しています。本当にいい機会を与えていただいて,どうもありがとうございました。
○宮澤(弘)座長 どうもありがとうございました。
 次に,井嶋委員。
○井嶋委員 この行刑改革会議が始まりました冒頭の段階で提出しました意見書で,私なりに現在行刑が当面しております問題点あるいはその認識をいろいろ書き連ねましたけれども,そのほとんどすべてについて,この提言が望ましい方向,極めて望ましい方向に集約されたということを大変うれしく思っておりまして,私は菊田先生とは違いまして大変満足をいたしております。
 この提言が実現されますれば,我が国の行刑の近代化,法律化,そして国際化といっておりました悲願が実現されることになるわけでありますし,また刑事司法制度の一番最終の段階を占めておりますこの矯正の場面において,大きな隘路となっておりましたが,これが解決されることになるという意味におきまして,大変重要な提言を作り上げたというふうに思っております。
 この改革会議の委員の皆さんが,本当に真摯に議論されましたことを心から敬意を表しますとともに,文字どおりすべてのデータについて,冒頭に要請しましたのですけれども,包み隠さず,すべてのデータを提出してくれました改革会議事務局及び矯正局の協力にも,改めて感謝をしたいと思います。
 この上は,法律化を要するものを含めて,一日も早い実現に向けた努力を傾注していただきたいと思います。新聞等の報道によりますと,先週犯罪対策閣僚会議というものが持たれまして,5か年の犯罪対策行動計画というものを策定したというふうに聞いておりますが,遅ればせながら,この本日の改革会議の提言をこの計画に取り込んでいただきまして,大きな意味での犯罪対策として,この提言の実現を加速させていただきたいということを私は特に要望しておきたいと思います。
 一つだけ注文がございます。それは,この提言をすべての刑務官に読んでほしいということであります。今回のアンケート調査を見ますと,刑務官の中にも多くの人が,現在やっております明治監獄法の行刑の現状というのは決してよくない,転換が必要であるということを意識している人が相当いることが分かりました。この提言の底流にあります基本的な考え方というものを,刑務官全員が真摯に受けとめてもらいたいというのが,私の強い希望であります。刑務官の意識の改革なくしては,この提言は実現しないということを強く申し上げたいと思うのであります。そういった意味で,今後の会同だとか研修といったような場面など,あらゆる機会をとらえて,この提言を職員の皆さん全員に周知させるようにしていただきたいというのが注文であります。以上です。
○宮澤(弘)座長 どうもありがとうございました。
 それでは,後藤田相談役お願いをいたします。
○後藤田相談役 9か月間,皆様方の大変熱心な御審議を相談役という立場で拝聴させていただいておったわけでございますが,私自身長い間こういった権力行政を担当しておっただけに,かえって私自身が啓発をさせられるといったような御意見が大変たくさんあったように思います。
 そういった中で,参考人としてお見えになった方々の御意見等も承りながら,何といいますか,人間というのは魔性とでもいいますか,悪魔性というものがあるわけです。したがって,権力を握ってそれを執行するという立場の者,これはそれぞれもちろん大変苦労はしておるのですけれども,やはり何といっても,その権力を厳格に執行したい,こういう気持ちがどうしても出てくる。ところがその対象となる人は,一つは迎合しようかなという気持ちになる人もおるし,あるいはあきらめの見地に立って表情のない人間になるといったような立場の人もおるかもしれません。それからまた,抵抗の気持ちを最後まで失わないといったような人もおるかもしれません。いずれにせよ,双方とも人間の気持ちの底にある悪魔性というものは否定できないのではないか。その間をどのように兼合いをとって,目的を達成するようにやるのかということは,私は大変難しい仕事だと思います。
 その際に,やはり何といっても,権力を持っている側,執行する側の方に,まずは意識の改革というものが求められるのではないか。そうすることによって,執行される対象となる人も,だんだん気持ちがやわらいでくるだろうし,人間の顔を持つようになるだろうし,あるいはまた反抗心もやわらいでくる,こういうことだろうと思いますが,いずれにせよ,これは意識の改革ということで,大変難しい仕事だろうと思います。それだけに,刑務官の皆さん方のお気持ち,それからまた現在の非常に人の足りない中で苦労していらっしゃることはよく分かるのですが,そこらを考えて,法務省としては人の面あるいは予算の面,施設の面,そして働きやすい環境を作ってあげるといったようなことで,そういったことが収容されている人の気持ちにも漸次反映していくという厄介な仕事でありますけれども,そのことを法務省の皆さん方に心からお願いを申し上げたいと思います。
 最後になりますけれども,9か月間における皆様方の熱心な御審議に重ねて敬意を表して,私のごあいさつを終わらせていただきます。誠にありがとうございます。
○宮澤(弘)座長 どうもありがとうございました。
 次に,ちょうど今予算時期でございますので,矯正の定員,予算の報告とお礼を大臣から申し上げたいということでございますので,お聞き取りいただきたいと思います。
○野沢法務大臣 先ほど中座をさせていただきまして,平成16年度予算におきます要員要求について財務大臣と最後の閣僚折衝を行ってまいりました。合理化55名に対しまして,増加要求902名。その内訳が,矯正の職員451の増,それから入管168の増,検察関係203ということで,合計いたしまして,この数字は沖縄復帰のときの見込み繰入れを除きますと,史上初めてという数字だそうでございますが,必ずしも喜べない増加ではございますけれども,いずれにいたしましても,いただきました答申を実効あるものにするために必要不可欠な要員増が認められましたことは,私どもといたしましても大変有り難いことでございますので,これを生かしまして今後努力してまいるつもりでございます。
 なお,先ほどからお話,話題になっておりますが,庁内に設けられます今後の取組みにつきまして,委員長を次官が担当いたしますので,ひとつ決意表明を兼ねてごあいさつをよろしくお願いします。
○事務次官 それでは,まず事務的な御報告を申し上げます。先ほど大臣が述べられたとおりでありまして,ただ,御案内のとおり,現在全部の政府が計画削減というものをやっておりまして,この削減分との差引きということが純増分ということになります。純増分で申しますと,矯正については平成13年まで実は純減でありまして,平成13年には純減54でございました。平成14年から,これではもう,そのころは既に被収容者増の傾向にございましたので,もたないということで,平成14年には純増2となりました。平成15年には,純増102となりました。しかし,それではなお到底現在の被収容者増の傾向には幾らアウトソーシングで民間に業務の一部をやってもらうにしても,それでは到底足りないということで,本年純増273を要求いたしました。大臣が先ほど申しましたとおり,この純増273全員につきまして定員が認められたということでございますので,法務省の要求はそのまま認めていただきました。
 それから,去る20日に閣議決定がございまして,緊急の補正予算というものの閣議決定がございました。これは本年度は景気対策補正はしないということでありますので,ほとんどが義務的経費の増額,どうしても払わなければならないものについての補正でございましたが,その中に施設費として350億円に上る補正予算が認められました。これは施設費としては補正予算の中ではたった一つの項目でありました。
 こういうように,増員につきましても施設につきましても,極めて重大な配慮をしていただけた非常に大きな理由は,やはり行刑改革会議を本当に皆さん御熱心に続けていただきまして,それなりにかなりのマスメディアもこれを報じ,あるいは国民的関心も高まり,あるいは政府の中の考え方も随分変えてきていただいたように思います。そのようなわけでありますので,本当に皆さん方に御礼申し上げますとともに,この改革が決して刑務官にとっても,また受刑者にとっても,それなりによくなっていく,改善していく改革であるということが非常に大きなメッセージとして発することができる,皆さんが人的,物的整備ということを非常に強く主張された成果が,少なくとも今度の予算の関係で出てきたということで,この改革会議の方向が受刑者にとっても,また刑務官にとっても改善になっていくというメッセージが送れたということを,私本当に思っております。これにつきましても,皆様方に深く御礼を申し上げます。
 なお,私,引き続いて行刑改革推進委員会の委員長という立場ということでありますが,これまで皆さん御提言いただいた内容をもう何としてもでも実現していきたいと思っております。節々で皆様方に是非お集まりいただいて,私たちの改革の方向につきまして御叱責を今後も受けていきたいと思っておりますので,どうかよろしくお願いいたします。
○宮澤(弘)座長 事務次官,御報告どうもありがとうございました。その御決意を,決して忘れないでください。お願いします。

5.座長あいさつ

○宮澤(弘)座長 最後になりましたが,私からこれまで行刑改革会議の座長を務めさせていただいて感じましたことなどを交えまして,一言ごあいさつを申し上げたいと思います。
 今回の行刑改革は,矯正行政に対する国民の信頼を回復することにその大きな目的がありました。国民の信頼を回復するには,何よりもまず改革に向けての過程が国民の目に触れることが大切だと思いました。一部の反対もございましたが,私がこの会議を全面的に公開することに踏み切りましたのも,こうした思いからでございました。国民に理解され,支えられる刑務所を作るため,適切な判断であったと思っております。
 今回の会議を通じて最も感じましたのは,刑務所の塀の高さでございました。刑務所が世間の関心から取り残され,閉ざされた世界であると感じました。私は今回行刑改革会議の座長となってから,初めて府中刑務所などを視察をいたしましたが,正直に申して大変な驚きでございました。大勢の受刑者が同じ服を着て隊列を組んで歩き,号令に従って一斉に行動することや,刑務官が所長に大声で報告をする姿など,いわゆる塀の外とはかなり違った秩序が形成されているように思いました。もちろんそれぞれに必要性があることは分かりますが,それにしても外の世界とかけ離れているとの印象を受けました。
 また視察では,刑務所内の仕事の大変さが同時に分かりましたが,著しい過剰収容である上,覚せい剤濫用の後遺症などで暴れたり奇行に入る受刑者が数多く,こうした受刑者に対応するため刑務官が休暇もろくにとれず,大変な環境のもとで苦労している姿が見えました。同時に,国民の大多数もこのような情景を知らないのではなかろうかと思いました。これまで刑務所の中に外の人の目が入らず,また刑務所の中の声が外の社会に伝わらない状況なのだと痛感をいたしました。
 そこで,今回の改革は,何よりも刑務所の内外で情報が行き来するようになることが,まずは最も重要なことだと考えたのであります。私としては,このような問題意識を持って,皆様の議論の交通整理をさせていただきました。論議の公開もその一環ですし,受刑者と刑務官についてかつてない規模の総合的なアンケート調査を行い,その中で忌憚のない意見が得られるよう,私自身の所感を用意するなど工夫を凝らしたことも,刑務所の内外の情報の往来を容易にするために大変意義のあることだったと思います。
 そして9か月の論議を経て,本当によい結果が生まれたと思っております。いわば刑務所の塀を低くするための改革として,一般の人から成る視察委員会を作るということは,外部の人の目を入れる点で極めて画期的なことだと思います。また,覚せい剤依存の受刑者を集め,治療的な処遇を集中的に行うこととした点も,それらの受刑者に適切な処遇を行うことが可能となるとともに,現場の刑務官にとっての負担の軽減にもつながる大きな改革だと考えております。
 このほか,数多くの具体的な提言をすることができました。ここにおられる委員の方々の御協力があったればこそでございます。今回多数決によらず,また両論併記になることもなく,委員の総意として提言が取りまとめられましたことは,誠に大きな意義を持つものだと思います。
 先ほど法務大臣に提言を提出いたしましたが,今後は法務当局において省を挙げてこの提言の趣旨を生かした改革を,不退転の決意で進めていくよう強く望みたいと思います。早急にできることは急ぎ実行に移していくとともに,速やかに監獄法の改正の検討に入るべきであり,改正への努力を一日たりとも怠ってはなりません。
 この行刑改革会議は,本日提言を提出したことで与えられた役割を終えたことになりますが,先ほど法務大臣から,法務省内に行刑改革推進のための委員会を置くので,その顧問に就任してほしいとの御依頼がありました。そして,これからの改革の節目節目に,私どもにその状況を報告していただけるとのお言葉がありました。私たちも,今回の論議を通じて,行刑について一見識を得たように思いますし,これからはこうした立場から,この改革を見守っていきたいと考えております。
 今後,私どもの提言が生かされて,行刑の改革が進むことを祈念しつつ,私のごあいさつといたします。
 行刑改革会議は,これで一応その任務を終えました。皆さんお疲れでございました。御苦労さまでございました。ありがとうございました。これで閉会といたします。


午後5時20分 閉会
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