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司法

Q90 「司法」の単元の位置付け

Q 「司法」の単元は、法教育においてどのように位置付けられるのですか。

 ⇒ 『報告書』12ページ(第3、1、(1)自由で公正な社会を支える「法」的な考え方を育てること)

A  法教育は、生徒に裁判に関する法律の条文を記憶させようとするものではなく、自由で公正な社会の担い手として必要なものの考え方をはぐくむことを目指しています。
 司法は、法に基づいて、公正な手続を通じて権利の救済を図ったり、あるいはルール違反に対処していくものですが、これまで、一般の人にとって縁遠いものと考えられてきました。それは、和を尊ぶ日本の文化の中で、裁判に対して嫌悪感を覚える人が少なくないことのほか、裁判は悪いことをした人に対して罰を与えるためだけの存在だという誤解にも基づいているように思われます。しかし、裁判には刑事裁判と民事裁判があり、特に民事裁判は、一般の人たちが権利を主張するために利用できる身近な道具です。国民の中に権利意識が定着しつつある現在、裁判は今後ますます重要性を増し、国民が裁判を積極的に利用することが予想されます。
 「司法」の単元では、司法の意義・特質を理解するとともに、法を主体的に利用して紛争を解決することの合理性・重要性を実感を持って学んでいきます。

Q91 「司法」を学ぶ必要性

Q なぜ「司法」を学ぶ必要があるのですか。

 ⇒ 『報告書』103ページ(第1、1法教育における「司法」の学習の必要性)

A  司法の学習は、従来、三権分立の学習の一環として、司法権の独立や違憲立法審査権の学習に重点がおかれる一般的な傾向がありました。しかし、司法の学習はそのレベルにとどまるものではありません。特に侵害された権利の回復やルール違反の対処にあたっては、裁判所が、公平な第三者として、適正な手続のもとで解決を図るということが実感をもって理解されることが大切です。そのためには、模擬的であっても、紛争の原因を分析し解決したり、紛争解決の過程で原告と被告とがお互いに議論を尽くしたりするような経験を積むことが欠かせません。

Q92 単元の4つの目標とその意義

Q 「司法」の単元の4つの目標とその意義について説明してください。

  ⇒ 「報告書」104ページ(第2、2単元の目標)

A  本教材は、「司法」の単元の目標を、次の4つとしました。
 第1に「様々な紛争解決の方法と比較しながら、裁判の仕組みについて関心を高める」ことです。紛争の解決方法には、裁判のほかにも、話し合いによる解決(和解や示談ともいわれます)などがあります。このような様々な紛争解決の方法との比較の観点に立つと、紛争の最終的解決方法としての裁判の意義やその限界についてもより深い理解を得ることが期待できます。
 第2に「具体的な紛争事例の中に、法的問題を発見し、紛争の原因や争点を分析・評価した上で、その内容に即した解決について考え判断させる」ことです。これは、いわば裁判の擬似体験であり、裁判の意義を実感として理解することを目指したものです。
 第3に「具体的な事例をもとに、法やルール違反への対処の在り方について考え判断させる」ことです。司法におけるルール違反の対処方法には、大きく分けて刑事裁判と民事裁判がありますが、それぞれの手続の意義について理解していきます。
 第4に「具体的な事例と関連付けながら、法に基づく公正な裁判の仕組みや機能について理解させる」ことです。これは、公正な裁判手続とはどのような構造を持っており、どのような機能を果たしているのかを理解することを通じて、司法の重要性を認識することにつながります。

Q93 司法の単元を通じて期待される教育効果

Q 司法の単元を通じ、4つの単元の目標のほか、どのような教育効果が期待されますか。

A  本単元によって期待される教育効果としては、生徒が、実際に紛争を解決するために必要な技能を習得することが挙げられます。例えば、具体的に起こっている紛争についてどのような解決が望ましいか考えることができる能力や、紛争解決を目指して、自分の意見を発表し、相手の意見を聞くといったコミュニケーション能力などを身に付けることが期待できます。また、生徒が、身近に起こっている紛争に関心をもち、公正な紛争解決に参加する態度を身に付けることは、平成21年5月までに実施される裁判員制度の将来の担い手として、必要な資質をはぐくむことにつながっていくと思われます。

1 第一時

Q94 紛争の意義と民事裁判

Q 紛争とは何ですか。民事裁判は、どんな紛争でも解決できるのですか。

 ⇒ 『報告書』107ページ(?第一時「紛争はどのように解決されるか」)

A  紛争とは、人と人との間に起こる議論・意見・見解の相違による争いのことをいいます。
 紛争には、法律で解決できるものとできないものがあります。法律で解決可能な紛争とは、究極的には、法に基づく裁判によって強制的に解決することができるものをいいます。例えば、第一時の指導案に記載されているように、お互いの好き嫌いや家事の役割分担などについては、法で強制できる性質のものではないので、裁判で解決できるものではありません。他方で、お弁当の取り合いや春菜のけがは、お弁当がどちらの物か(所有権がどちらにあるか)、あるいは、春菜がけがをしたのは秋穂に責任があるのかというものであり、法に基づく裁判によって解決することが可能な問題です。
 このように、民事裁判は、すべての紛争を解決できるわけではなく、ここに法や裁判の限界があります。

Q95 資料1の「友達同士のけんか」の内容を把握させる際の留意点

Q 第一時の「展開」部分で、資料1の「友達同士のけんか」の内容を把握させる際に、どのような点に留意して指導したらよいでしょうか。

 ⇒ 『報告書』107ページ(?第一時「紛争はどのように解決されるか」<学習内容「日常生活における紛争の具体例」>)、112ページ「資料1」

A  本時では、生徒がどれだけ割り当てられた役になりきることができるかが重要になりますが、そのためには紛争の内容を生徒が正確に理解できるように指導する必要があります。
 紛争の本質を正確につかむためには、時系列順に事実を並べるよりも、一定の観点から整理をした方がより分かりやすいと思われます。指導計画案に示された「誰が紛争に関係しているのか」「どんな紛争なのか」「いつ起こったのか」「どうして紛争が起きたのか」という観点は、紛争に関する事実を正確に捉えるためのものです。
 これらの観点から資料1を分析すると、次のように整理することができます。
 ○ 誰が紛争に関係しているのか(紛争の当事者は誰か):春菜と秋穂
 ○ どんな紛争なのか(紛争が起こった直接の原因):秋穂が自分のために作ったお弁当を、春菜が持って行ってしまった。お弁当を返してほしいと主張する秋穂に対して、春菜は自分のお弁当なのだと主張した。お弁当の取り合いになって、秋穂が春菜を振り払い、春菜が転んで手足をすりむいた。
 ○ いつ起こったのか(紛争が起こったときの状況):四季中学校の遠足の日の朝
 ○ どうして紛争が起きたのか(紛争が起こった本当の原因):春菜と秋穂は、幼なじみであったが、お互いの性格が合わなかった。これまでも、春菜は炊事をさぼっていて、代わりに炊事をやらされていた秋穂は怒っていた。
 授業の進め方としては、教師が時系列順に紛争の内容を簡単に確認した後、紛争の本質を捉えるための観点を生徒に考えさせて、発表させるとよいと思われます。

Q96 効率的で学習効果の高い授業を行うための工夫

Q 第一時の「展開」部分について、例えば40人規模のクラスで、効率的で学習効果の高い授業を行うための進め方の工夫としては、どのような方法がありますか。

 ⇒ 『報告書』113ページ(?第一時「紛争はどのように解決されるか」<学習内容「具体的紛争の解決」>)、113ページ「資料2」、114ページ「ワークシート1」

A  本時では、生徒を春菜、秋穂、夏郎のグループに分けて、役割演技を通して議論を深め、どのようにして紛争は解決されるのかについて、体験に基づいて実感させることをねらっています。したがって、生徒が実際にもめごとを解決していく過程を体験するという学習に十分な時間を取る必要がありますが、効率的に授業を進めないと、この体験学習の時間が足りなくなるおそれがあります。
 そこで、例えば40人規模のクラスを想定すると、授業の進め方について、次の3つのポイントに留意すると、効率的に学習できるものと思われます。
 第1に、授業が始まる前に、あらかじめクラスをいくつかのグループに分けておくと、スムーズに議論に入れます。40人規模であれば、5人で1グループ、全部で8グループを作るとよいようです。
 第2に、資料1の「紛争を分析する」という学習活動をできるだけ速やかに行うことが必要です。
 第3に、生徒たちが、資料2に示した紛争解決の方法を参考に、自分の役割だったらどのように主張するかを考え、作戦を立てる時間を十分にとることが大切です。

Q97 40人規模のクラスで役割演技を進めるための工夫

Q 第一時の「展開」部分について、例えば40人規模のクラスで役割演技を進める際の工夫にはどのようなものがありますか。

A  役割演技については、次の点に留意して進めるとよいでしょう。
 まず、5人の生徒を、春菜役2人、秋穂役2人、夏郎役1人として役割分担をします。どの生徒が春菜、秋穂、夏郎の役になるかを決めることに、いたずらに時間を費やさないことが大切です。
 次に、春菜役と秋穂役は、2人で協力し合って、資料2に示した紛争解決の方法に従い、自分の役割だったらどのように主張するかを考えます。この2人は、役割演技を実際に行う人と、それを観察し、紛争解決の発言を記録する人に分かれますので、あらかじめ、その分担を決めておくように生徒に指示をしておくとよいでしょう。
 春菜役と秋穂役は、役割になりきることが特に重要です。普通、けんかがここまで進めば、簡単に仲直りすることは困難です。対立している状況をよく頭に入れて、安易に妥協することなく、相手の言い分にきちんと耳を傾けながら、主張すべきことはきちんと主張するように指導するとよいでしょう。
 さらに、夏郎役は、資料2に示した紛争解決の方法に従い、どのように紛争解決が進んでいくかを予想します。生徒には、あらかじめ夏郎の役割を説明し、紛争解決の流れをよく把握するように指示をしておくとよいでしょう。また、夏郎役の生徒には、最終的にどのようにして紛争を解決すればよいか、自分で考えて、解決方法を記録しておくように指示しておきましょう。
 夏郎役は、春菜の怪我についてどのように解決すべきかという表面的な部分にとらわれすぎず、紛争の本当の原因をとらえて、春菜と秋穂の関係を修復するような解決方法を探すことが大切です(⇒Q95参照)。教師は、この点を念頭に置いて指導に当たるとよいでしょう。

Q98 話し合いによる解決と民事裁判による解決の違いを指導する際の留意点

Q 第一時の「まとめ」部分の<話し合いによる解決>と<民事裁判による解決>の違いを、どのような点に留意して指導したらよいでしょうか。

 ⇒ 『報告書』107ページ(?第一時「紛争はどのように解決されるか」<学習内容「紛争解決手段としての民事裁判制度」>)

A  個人と個人の間で生じる紛争の解決方法は、大きく分けて、話し合いによる解決(示談や和解ともいわれます)と、民事裁判等の第三者の判断による解決に分かれます。
 話し合いによる解決は、当事者が話し合った上で合意に達し、自分たちの力で紛争を解決するものです。個人と個人の間の紛争なら、私的自治の原則(⇒Q49参照)からしても、当事者の心情からしても、話し合いによる解決が望ましい場合が多いでしょう。
 しかし、話し合いによる解決は、あくまでも合意が必要ですから、当事者の一方が合意することを拒否すれば、紛争がいつまでも続くことになります。そこで、このような紛争を法に基づいて解決する手段として、民事裁判を使うことになります。
 民事裁判は、中立公正な第三者である裁判官が、紛争の当事者の言い分(主張)を聞き、証拠を見た上で、法に基づいて最終的な判断をする(判決)解決方法です。裁判所の判決があると、仮に当事者が判決に従わない場合でも、強制的に判決の内容を実現することができます(これを強制執行といいます)。もっとも、その紛争が、法に基づいて強制することになじまないような場合には、裁判によっても解決することはできません(⇒Q94参照)。
 話し合いによる解決と民事裁判による解決の大きな違いとしては、民事裁判は、法に基づいて、当事者のどちらが勝ちでどちらが負けかという黒白をはっきりつけるのに対し、話し合いによる解決は、どちらが勝ちかということを明確にせず、法律にもこだわらないで、柔軟に解決ができるという点をあげることができます。

2 第二時

Q99 「民事責任」、「刑事責任」、「行政責任」それぞれの意義の教え方

Q 第二時の「導入」部分で、「民事責任」、「刑事責任」、「行政責任」という言葉がでてきますが、それぞれの意義をどのように教えたらよいでしょうか。

 ⇒ 『報告書』108ページ(?第二時「当事者の主張を聞いて判断してみよう」)

A  「ルール違反を犯したことについて、法律上の責任をとる」というと、一般に、死刑・懲役・罰金などの刑事責任を思い浮かべることが多いのではないでしょうか。しかし、ルール違反に対しては、刑事責任のほか、民事責任や行政責任というものもあり、実際には刑事責任よりも民事責任や行政責任を問われることの方がはるかに多いのです。
 民事責任は、例えば、人に怪我をさせたときに、生じた損害を賠償(弁償)しなければならないというもので、個人と個人との間の問題です。
 刑事責任は、他人の物を盗むなど、重大なルール違反を起こしたときに、個人が国に対して負う責任です。
 行政責任は、例えば、駐車違反で反則切符を切られ、反則金を払わされたり、酒酔い運転をして免許停止・免許取消しになるというような、個人が行政上のルール違反を起こしたときに、国や地方公共団体に対して負う責任です。

Q100 「民事責任」、「刑事責任」、「行政責任」の関係

Q 「民事責任」、「刑事責任」、「行政責任」の関係をどのように教えたらよいでしょうか。

A  懲役などの大きな不利益を科す刑事責任は、その不利益の重大さゆえに、できるだけ抑制的に用いられるべきものです。そのため、刑事責任が私たちの生活に直接関係することは少ないのに対し、民事責任や行政責任は、意識して見ると、身近なところにたくさん存在しているはずです。
 これらの3つの責任は、必ずしもそれぞれ別個の場面で働くものではありません。ひとつのルール違反行為について、これらの責任が重複して発生することもしばしばあります。交通事故は、こうした3つの責任のすべてが発生しうる好例です。
 まず、刑事責任という点では、車で人に怪我を負わせた運転手は、刑事裁判で有罪とされると、罰金や禁錮などの刑の言い渡しを受けます(業務上過失致傷罪といいます)。民事責任という点では、運転手は、被害者に対して、損害を弁償する責任を負います。また、行政責任という点では、スピード違反等の交通法規上の反則を犯したということで、反則金を支払わなければならないほか、いわゆる減点をされることになり、場合によっては免許停止・取消しということもあり得ます。

Q101 民法第709条について説明する際の留意点

Q 第二時の指導案では、民法第709条について説明する箇所がありますが、専門的な領域なので、うまく説明する自信がありません。どのような点に留意して指導したらよいでしょうか。

 ⇒ 『報告書』109ページ(?第二時「当事者の主張を聞いて判断しよう」<学習内容「民事裁判による解決」>)

A  法教育は、法律の専門家ではない一般の人が、自由で公正な社会を支えるために必要なものの考え方を身に付けることを目的としているものです。したがって、ここでは民法第709条を取り上げているものの、その内容を教師が法理論的に理解することや、生徒に対して法理論を説明したりする必要はまったくありません。本教材に書かれている程度のことを説明できれば十分であり、生徒が細かい疑問をぶつけてきたとしても、「細かいことは必要なく、故意・過失によって、他人の権利に損害を与えたら、賠償(弁償)しなければならないことだけ押さえればいい」と対応すればよいと思われます。
 民法第709条について、一応の説明をしておくと、民法第709条は他人の権利や利益(生命、身体、財産等)に故意(わざと)、過失(うっかりして)によって損害を与えた場合には、その損害を弁償する責任があるというものです。
 交通事故を例にとると、加害者が自動車を運転中に誤って歩行者をはねて怪我を負わせた場合には、被害者の身体に対し、過失によって損害を与えたということになります。また万引きを例にとると、万引きをした者は、店の財産である商品を故意に盗んで、店に損害を与えたということになります。指導の際の留意点としては、「不法行為」という言葉を教える必要は特になく、身近な具体例を使って、「法律上も、間違ったことをしたら弁償しないといけないことになっている」という程度のことを、わかりやすく生徒に説明することが大切です。

Q102 ワークシート3─1を用いて指導する際の留意点と、生徒が想定外の主張をした場合の対応

Q 生徒がワークシート2に即して、ワークシート3にX・Yの主張を記述する際に、どのような点に留意して指導したらよいでしょうか。また、生徒が「センターラインをはみ出してきたダンプカーの運転手の責任を追及すべきだ」とか「民間の損害保険会社が対応してくれるはずだ」などと、第二時の指導案では想定していないような主張をした場合には、どのように対応したらよいでしょうか。

 ⇒ 『報告書』109ページ(?第二時「当事者の主張を聞いて判断してみよう」<学習内容「民事裁判による解決」>)、115ページ「ワークシート2」、116ページ「ワークシート3」

A  指導上留意すべき点としては、生徒が、登場人物それぞれの立場になりきってみて、事故状況の中から、その人物にとって有利となると考えられるものを抜き出し、主張として書き出していくようアドバイスすることが大切です。被害者のXさん側の立場からは、加害者Yさんがうっかりしていたということ(=過失)を裏付けるもの((1)(2))、発生した損害((5)(6))について主張し、加害者Yさん側の立場からは、自分はうっかりしていたわけではないこと((3))、Xさんにも落ち度があること((4))と主張するものに分かれます。
 生徒が想定していない質問をしてきた場合には、教師の知りうる範囲内で答えていくことは何ら問題はありませんが、はっきりしない場合には、個人的な意見と断った上で答えるか、後で調べておくなどと答えることでよいと思われます(⇒Q101参照)。
 ちなみに、上記のダンプカーの運転手の責任に関する質問については、ダンプカーの運転手にも故意・過失がある場合には、損害を賠償(弁償)する責任があることになります。
 また、損害保険会社が対応してくれるのではないかという点については、そもそもYさんが保険に加入しておらず、保険会社が対応してくれない場合もあります。いずれにしても、保険会社を取り上げないことにして、授業を進めるとよいでしょう。

Q103 弁護士の立場

Q ワークシート3において、「弁護士の立場になって」とありますが、弁護士の立場とはどのようなものですか。

 ⇒ 『報告書』109ページ(?第二時「当事者の主張を聞いて判断しよう」<学習内容「民事裁判による解決」>)、116ページ「ワークシート3」

Q 第二時の「展開」部分で、「あなたが裁判官だったら、Yさんに対して『Xさんにいくら支払え』という判決を下しますか」という設問がありますが、実際にどのくらいの損害賠償額になるのか、まったく見当がつきません。生徒も実際にはいくらになるのか知りたがると思いますが、どのような点に留意して指導すべきでしょうか。


A  弁護士の仕事は多岐にわたりますが、刑事ドラマなどでよく知られているように、刑事事件における被疑者(一般には「容疑者」と言われることもあります)や被告人(一般には「被告」と言われることもあります)の弁護をするほか、個人と個人が争う民事事件においては、紛争の当事者から依頼を受け、その代理人として活動します。弁護士は、市民の人権を守りながら、社会正義を実現するという使命があり、代理人として活動するにあたっても、厳しい自己規律が求められています。
 もっとも、ここではそのような弁護士の使命を厳格に意識する必要はなく、単に、冷静な目で事案を分析して、依頼者の利益になるよう、依頼者に代わって主張を行う立場という程度の理解でよいと思われます。

Q104 「あなたが裁判官だったら、Yさんに対して『Xさんにいくら支払え』という判決を下しますか」という設問に関する指導上の留意点

 ⇒ 『報告書』109ページ(?第二時「当事者の主張を聞いて判断しよう」<学習内容「民事裁判による解決」>)

A  法教育は、実生活上しばしば直面する正解のない問題について、生徒が自分たちなりに解決方法を考えるという体験を通じて、実社会を生きる力をはぐくむことを目指しています。ここで取り上げる交通事故での損害賠償額についても、正解はありません。正解は何かを知ろうとするよりも、教師と生徒たちとが一緒になって、自分たちにとって一番いいと思える解決方法を探すという姿勢で取り組むことが望まれます。
 一応の参考として、賠償額を決めるに当たって一般的に用いられる視点を紹介しましょう。実際に生じた損害の種類(死亡事故か傷害事故など)や程度(怪我が全治何週間か)等によって、発生した損害額がどれくらいになるかを計算した上で、被害者に落ち度があればその程度を考慮して、損害の何割を弁償しなければならないかを考えることになります。実際の裁判では、傷害事故の場合には数十万円程度から始まり、死亡事故の場合には、1億円を超えることもあります。
 なお、この事例では、Xの言い分としては、3か月分の治療費として60万円、これに怪我で仕事ができずに給料がもらえなかった分の30万円を、とりあえずの損害(合計90万円)として主張することに加えて、怪我で痛い思いをしたということ自体についての慰謝料も要求することが考えられますが、さらに議論が難しくなってしまうので、ここでは治療費と給料分を中心に考えさせるとよいでしょう。

Q105 示談、和解と、民事裁判との違いを説明する工夫

Q 実際の交通事故の解決には、示談や和解といった方法もとられていますが、民事裁判との違いをどのように説明すればよいでしょうか。

 ⇒ 『報告書』109ページ(?第二時「当事者の主張を聞いて判断しよう」<学習内容「まとめ」>)

A  実際の交通事故の解決においては、保険会社が間に入るなどして、話し合いによる解決(=示談や和解)が図られる場合が多いところです。民事裁判になるのは、事故の当事者や保険会社の間で、事故に関する事実認識や損害の額について折り合いがつかないため、公正な第三者として裁判所の判断が求められる場合ということになります。裁判と話し合いによる解決の違いについては、Q98に詳しく述べてありますが、簡単に言えば、示談や和解による解決は、当事者が納得した上での解決であるのに対して、裁判による解決は、当事者の納得とは関係なく、法に基づいて解決する点に特色があります。したがって、裁判は、当事者のどちらが勝ちか、いくら弁償すべきかを判断することはできても、当事者間の感情のもつれ等については解決できません。交通事故の解決で示談や和解という方法が頻繁に使われるのは、この点にも理由があると考えられます。

3 第三時

Q106 刑事責任の特徴や意義について考えさせる際の留意点

Q 第三時の「展開」部分で、ワークシート4に基づいて刑事責任の特徴や意義について考えさせることになっていますが、どのような点に留意して指導すればよいでしょうか。

 ⇒ 『報告書』110ページ(?第三時「民事裁判との比較を通じて刑事裁判の特徴を考えよう」<学習内容「刑事責任の特徴」>)、116ページ「ワークシート4」

A  刑事責任(刑罰)は、できるだけ抑制的に問われるべきものではありますが(⇒Q100参照)、生徒たちには、そもそも刑罰とはどんなもので、何のために存在しているのかを考えさせたいところです。
 刑罰は、歴史的に見れば、ハンムラビ法典の「目には目を、歯には歯を」という言葉に象徴されるように、ルール違反により被害を受けた人が、ルールを破った人に対して報復する手段として存在していました。しかし、それでは報復に対する報復を重ねることにもなりかねません。そこで、時代が下るに従って、より合理的・理性的な方法として、国家が、刑事裁判という厳格な手続を用いて、重大なルール違反者に対して制裁を加えるという形になったのです。
 では、なぜ国家が刑罰権を独占するようになったのでしょうか。それは、刑罰が、報復や被害者の救済のためだけに行われるのではなく、人々が幸せに共存できるよう、社会、ひいては国家の秩序を守るために使われる道具だからです。
 もっとも、刑罰は、それを受ける人に重大な不利益を及ぼすものであり、刑罰が濫用されるような事態は、絶対に避けなければなりません。刑罰の濫用を防ぐための手段や方法には様々なものがありますが、そのうちの最も重要なもののひとつが罪刑法定主義です(⇒Q107参照)。

Q107 「あらかじめルールをつくり、どのような行為をすれば、どのような処罰を受けるのか決めておく必要がある」ことを説明する工夫

Q 第三時の「展開」部分で、「あらかじめルールをつくり、どのような行為をすれば、どのような処罰を受けるのか決めておく必要がある」とされていますが、これを説明する工夫として、どのようなものがありますか。

A  この部分は、罪刑法定主義の意義についての学習ですが、これについては次のように説明することができるでしょう。
 刑罰は、社会、ひいては国家の秩序を守るために使われるものであることから、国家が刑罰権を独占することとされています。
 しかし、いくら刑罰が秩序を守ることができるからといっても、やたらに多用していいものではありません。刑罰は、それを受ける人にとっては重大な不利益です。刑罰が濫用される社会では、みんながいつもびくびくして生活しなければならなくなります。このような社会は、結局、秩序ある社会とはいえません。
 そこで、みんながびくびくして生活しなければならないような状態を避けるためにあるのが、「罪刑法定主義」です。これは、要するに、処罰の対象となる行為と、その行為を行った場合に受ける刑罰の内容を、ルールとして明確に示しておかなければならず、そのようなルールがないときには、道徳的に見て悪いことをしたとしても、刑罰を受けることはないという原則です。

Q108 ワークシート4で、Yさんが刑事責任を負うことを説明する工夫

Q ワークシート4について、Yさんが刑事責任を負うことを説明する工夫としては、どのようなものがありますか。

 ⇒ 『報告書』116ページ「ワークシート4」

A  ワークシート6の事例は、電車の中での言い争いがきっかけで、XさんがYさんに突き飛ばされて全治1か月の怪我をしたというものです。この場合、Yさんの突き飛ばすという行為によって、Xさんが怪我をし、治療費20万円等の出費を強いられたのですから、Yさんは民事責任を負い、Xさんの損害を賠償(弁償)しなければなりません。
 それでは、Yさんの刑事責任についてはどうでしょうか。罪刑法定主義からすると、まず明確なルールが定められている必要があるのですが、この事例については、刑法第204条というルールがあります(ワークシート6の参照条文)。これを読むと、「人の身体を傷害してはいけない」というルールが明確にわかります。このような明確なルールがあらかじめ定められているのに、Yさんは、Xさんに怪我を負わせたのですから、傷害罪に当たり、刑事責任を負います。そして、傷害罪についての刑罰は、「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」とされていますので、その範囲でYさんは処罰されることになります(なお、傷害罪についての罰則は、平成16年に現在のものに引き上げられました。それ以前は、「10年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」とされていました)。
 このように、刑事責任を考えるに当たってはまず処罰するための明確なルールが存在するかどうかを確認し、これに違反した人は、ルールに従って処罰しなければならないことが理解できるような説明を工夫するとよいと思われます。

Q109 捜査機関が犯人を捜して処罰を求める必要があることを説明する工夫

Q 第三時の「展開」部分で、捜査機関が犯人を捜して処罰を求める必要があるということを、生徒に分かりやすく説明する工夫にはどのようなものがありますか。

A  捜査機関が犯人を捜し、検察官が刑事裁判で処罰を求めるということを分かりやすく説明する工夫としては、以下のような説明が考えられます。
 国家が刑罰権を独占する関係で、適正迅速な刑罰の実現のため犯罪を捜査する権限も、国家の捜査機関が有することになっています。
 ただ、犯罪の捜査を受ける人の立場に立ってみると、逮捕によって自由を奪われたり、捜索という形で強制的に住居に立ち入られたりするなど、重大な不利益になるものです。したがって、捜査権限の行使に当たっては、それが不当な人権侵害にならないよう、厳格で適正な手続を経て慎重に行われる必要があります。
 そこで、逮捕や捜索などの強制力を伴う捜査を行うに当たっては、原則として、公正な第三者である裁判官が発付する令状(逮捕状や捜索許可状などがあります)に基づかない限り、行ってはならないことになっています。
 本時で扱っている事例でも、XさんがYさんの刑事責任を問いたいと思ったら、警察に届け出てYさんを探しだしてもらうことができます。仮に被害者が犯人を見つけ出しても、現行犯逮捕手続による以外は、自分で逮捕することは許されず、あくまでも警察に逮捕してもらう必要があります。警察は、Yさんを探し出し、逮捕する必要があると考えた場合でも、裁判官に逮捕状を出してもらわない限り、原則として逮捕することはできません。

Q110 検察官が刑事訴追することを説明する工夫

Q 第三時の「展開」部分で、刑事裁判の場合は検察官が訴えを起こすことを生徒に分かりやすく説明する工夫には、どのようなものがありますか。

A  民事裁判では被害者が加害者を訴えるのに対し、刑事裁判では検察官だけが訴えを起こすことができます。その理由を簡単に説明する工夫としては、以下のものが考えられます。
 刑事裁判は、犯罪という、社会全体の秩序を揺るがすような重大なルール違反があったかどうかを判断し、有罪であれば、どれだけの処罰を与えるべきかということを決める手続です。社会の正義や秩序を守るためには、まず捜査によって真犯人を見つけ出すことが重要ですが、それだけではなく、真犯人を訴えて刑事裁判の場で、その人(法律的には「被告人」と呼ばれます)が真犯人であることを証明して、裁判所の厳正な裁きを求め、裁判所が下した判決に基づき、その人に処罰を与えることが必要になります。
 この点、裁判所自身が訴えを起こし、裁判も行うという制度もあり得ます。しかし、訴えを起こす機関と判決を下す機関が同じだと、客観的で公正な判断であることに疑いを生じさせかねませんので、訴えを起こす機関と裁判をする機関は分けておく必要があります。
 我が国では、検察官が、社会の利益を代表して、刑事裁判を求める訴えを起こし、裁判所の判断を得るために立証活動を行っています。

Q111 検察官の立証責任を説明する工夫

Q 第三時の「展開」部分で、立証責任はすべて検察官にあることを生徒に分かりやすく説明する工夫には、どのようなものがありますか。

A  立証責任とは、事実を証明するべき責任を負うのは当事者のうちどちらかを定めた、裁判のルールです。立証責任を負っている当事者は、その事実を証明するだけの証拠を示せなければ、裁判に負けてしまいます。民事裁判では、問題となっている事実によって、訴える側(法律上「原告」といいます)が立証責任を負う場合もありますし、訴えられる側(法律上「被告」といいます)が立証責任を負う場合もあります。これに対して、刑事裁判では、被告人を有罪とするための事実は検察官が立証責任を負い、被告人は立証責任を負いません。
 刑事裁判で検察官が立証責任を負う理由を簡単に説明する工夫としては、以下のものが考えられます。
 犯罪は、社会の秩序を乱すものですから、社会に「犯人は即座に処罰しろ」という感情が起こるのは自然なことです。しかし、刑罰は、それを受ける人にとっては、非常に大きな不利益であり、もし無実の人が刑事責任を負わされることになれば、その人の人生を破壊してしまいます。社会の「処罰しろ」という感情に安易に従えば、多くの無実の人たちを悲惨な境遇におとしめるおそれがあることは、歴史が示すとおりです(中世ヨーロッパの魔女裁判などがその代表例です)。そのような歴史を教訓にして、法は、人に刑事責任を負わせるためには、慎重に慎重を重ねなければならず、有罪であることを示す証拠がなければ、いかに疑わしくても、被告人は無罪だと考えなければならないという原則を設けました。これが、「疑わしきは罰せず」という言葉に表される、「無罪の推定」原則です。
 このような無罪の推定原則のもとでは、検察官が、被告人が有罪であることの立証責任を負い、被告人は、自分が無罪だということを立証する責任を負いません。

Q112 「自分が裁判官だったら、どんなところに気を付けて裁判を進めますか」という設問について指導する際の留意点

Q 第三時の「展開」部分で、「自分が裁判官だったら、どんなところに気を付けて裁判を進めますか」という設問がありますが、どのような点に留意して指導すればよいでしょうか。民事裁判と刑事裁判では、審理において裁判官が気をつける点は違うのですか。

 ⇒ 『報告書』111ページ(?第三時「民事裁判との比較を通じて刑事裁判の特徴を考えよう」<学習内容「刑事裁判の原則」>)、118ページ「ワークシート5」

A  刑事裁判の特徴については、Q106~111を参照して下さい。
 民事裁判、刑事裁判ともに、裁判の手続があらかじめ定められたルールに則って行われること、当事者の言い分をよく聞かなければならないこと、証拠に基づいて事実を認定することなどは共通しています。大きな違いは、民事裁判では個人と個人という、基本的には対等な力関係にある当事者の間で手続が進みますが、刑事裁判では、一方の当事者が国家権力(検察官)になりますので、当事者間の平等をできる限り保障する必要がでてきます。
 そこで、被告人には、適正な裁判を受けられるように、自分の言い分をきちんと主張し、権利を守る手段が保障されています。具体的には、言いたくないことは言わなくてもいいという黙秘権や、弁護士に弁護してもらえるという弁護人選任権などです(お金がなくて弁護士を頼めない人には、国が弁護人をつけてあげるという国選弁護制度もあります)。
 また、刑事裁判の被告人に有罪判決を下すためには、無罪推定の原則(⇒Q111参照)のもと、一般人から見て、その被告人が犯罪を行ったことについて疑いを差し挟まない程度の証明があること、すなわち、「合理的な疑いを残さない程度」の証明が求められます。これに対して、民事事件においては、そこまで厳しいルールはありません。

Q113 民事裁判と刑事裁判の判決の違い

Q 民事裁判と刑事裁判とでは、裁判官の下す判決にどのような違いがありますか。

 ⇒ 『報告書』111ページ(?第三時「民事裁判との比較を通じて刑事裁判の特徴を考えよう」<学習内容「刑事裁判の原則」>)

A  民事裁判は、個人と個人との間の争いを最終的に解決しようとするものですから、判決の内容も、お金の支払いを命じたり、建物の明渡しを命じたりするなど、多岐にわたります。
 これに対し、刑事裁判は、国が人を処罰するかどうかに関するものですから、有罪か無罪か、有罪であればどんな処罰を行うのか(死刑や、懲役刑などの自由を制限するもの、罰金刑等があります)、執行猶予を付けるべきかなどを判断します。

Q114 黙秘権の意義

Q 第三時の指導案には、被疑者や被告人には黙秘権が認められると書いてありますが、「黙秘権を認めるべきではない」という生徒も少なくありません。黙秘権の意義をどのように説明すればよいでしょうか。

 ⇒ 『報告書』111ページ(?第三時「民事裁判との比較を通じて刑事裁判の特徴を考えよう」<学習内容「刑事裁判の原則」>)

A  罪を犯していない人は、堂々とやっていないと主張すればいいのであって、黙秘権を認める必要はないと思われるかもしれません。また、実際に犯罪を犯していれば、きちんと自白すべきだと考える人もいるかもしれません。その意味で、生徒がこのような疑問を持つのもうなずけるところです。
 しかし、黙秘権が認められていなかった近代以前においては、捜査官が拷問等によって自白を強要し、そのために無実の人が有罪とされた歴史があります(いわゆる「えん罪」)。こうした過去への反省から、罪を犯したと疑われている人(法律的には「被疑者」といいます)や疑われて刑事裁判を起こされている人(法律的には「被告人」といいます)には、無条件に黙秘権が認められるようになりました。世界的に見ても、黙秘権を保障している国が多くあります。
 このように、歴史を振り返ってみると、黙秘権の重要性を理解しやすいのではないかと思われます。
 なお、刑事裁判において被告人の権利を手厚く守ることの必要性については、Q112を参照してください。

Q115 刑事裁判と民事裁判で結論に差が出る場合があることを説明する工夫

Q 第三時の「展開」部分で、刑事裁判では無罪だが、民事裁判では損害賠償責任が認められるというように結論に差が出る場合があることを説明するとありますが、この点について分かりやすく説明する工夫には、どのようなものがありますか。

 ⇒ 『報告書』111ページ(?第三時「民事裁判との比較を通じて刑事裁判の特徴を考えよう」<学習内容「刑事裁判の原則」>)、118ページ「ワークシート5」

A  刑事裁判では無罪判決を得た人が、民事裁判では損害賠償を命じられるというケースが、ときおり報道されることがあります。これは、刑事裁判と民事裁判の違いに由来します。
 民事裁判は、原則として対等の立場にある個人同士が争い、裁判所がいずれの主張が正しいかを判断する手続です。
 これに対して、刑事裁判は、国家という強大な権力によって訴えられた個人(被告人)について、裁判所が、刑罰という制裁を用いるべきかどうかを判断する手続であり、慎重の上にも慎重を期する必要があります。それゆえ、刑事裁判では、「この被告人がこの事件において罪を犯した」ということについて、合理的な疑いを残さない程度の証明がない限り、有罪としてはならないことになります。
 このような違いから、刑事裁判では無罪となった被告人が、民事事件では敗訴するということが生じることになるのです。
 なお、民事裁判と刑事裁判の違いについては、Q106、110~112を参照してください。

Q116 裁判員制度導入の理由

Q 裁判員制度が導入された理由は何ですか。

 ⇒ 『報告書』111ページ(?第三時「民事裁判との比較を通じて刑事裁判の特徴を考えよう」<学習内容「裁判員制度について考える」>)

A  平成16年に法律が成立した裁判員制度は、平成21年5月までに実施されることになっています。
 これまでは専門家のみによる裁判が行われていましたが、裁判において法律の専門家でない国民の感覚をより反映させる趣旨から、裁判員制度が導入されることとなりました。これにより職業裁判官のもつ専門的な知識・経験と一般の市民がもつ様々な経験・感覚などが合わさって、一般市民の持つ感覚が裁判に反映されるようになり、司法に対する国民の理解と信頼が深まることになります。また、裁判員裁判を通じてルールを守ることについての社会全体の意識が高まることも期待されています。
 したがって、司法への国民の理解と信頼が深まることが、裁判員制度のポイントです。

Q117 法廷傍聴の方法及び留意点

Q 実際に法廷傍聴を実施するにはどうしたらよいでしょうか。また、傍聴する際には、どのような点に留意したらよいでしょうか。

 ⇒ 『報告書』106ページ(第2、4、?発展的学習教材―学習の深化・発展を図る場の設定イ)

A  裁判は公開されており、中学生であっても裁判を傍聴することは可能です。傍聴にあたっては、裁判所の許可その他の手続は必要ありません。しかし、どの事件が適当か、どのようにして法廷に入ればいいのかなど、不安に感じるところがあれば、各裁判所に問い合わせ、事前に便宜を図ってもらうことができます。法廷の構造がどうなっているか、裁判官のほか、弁護士や検察官がどのような役割を果たしているかということのほか、刑事裁判では被告人の発言や動きにも留意して傍聴するとよいでしょう。民事裁判と刑事裁判、いずれも傍聴できますが、手続の性質上、地方裁判所の刑事事件の第1回公判期日が比較的わかりやすいと思います。静かに傍聴しなければならないこと、写真を撮ってはいけないことはもちろんですが、裁判の様子をメモにとることは可能です。

Q118 模擬裁判を実施する際の留意点

Q 学校において模擬裁判を実施する場合に留意すべき点は何ですか。また、法律の専門家から指導・助言を受けることはできるのでしょうか

 ⇒ 『報告書』106ページ(第2、4、?発展的学習教材―学習の深化・発展を図る場の設定イ)

A  学校において模擬裁判を実施する場合には、当事者の言い分(主張)とそれを裏付ける証拠を分けて考える方法を学ぶこと、自分たちで考えて理由をつけた結論を出すこと、裁判の意義を考えさせることに留意する必要があります。逆に、証拠をどのように評価するか等については、基本的に自由に考えさせ、あまり専門家がするような判断に従う必要はないと思われます。
 模擬裁判というと、難しそうな印象をもたれがちですが、近年は、弁護士や検察官など法律の専門家の指導を得て、模擬裁判の取組が活発に進められるようになってきています。検察庁、日本弁護士連合会及び日本司法書士会連合会においては、検察官・弁護士・司法書士による授業や裁判紹介などを積極的に行っています。
 各地の弁護士会・司法書士会の中には、小学生・中学生向けのシナリオまで用意しているところもあります。地方裁判所や地方検察庁でも、裁判官や検察官による出張授業などを行っているところがありますので、お近くの関係機関に問い合わせてみてください。

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